説明

ガラスフィルム積層体、ガラスフィルム積層体ロール、カラーフィルタ用画素付ガラスフィルム積層体およびガラスフィルム積層体の製造方法

【課題】ガラスフィルムの損傷を防止しつつ、ガラスフィルムの取扱い性を向上させたガラスフィルム積層体を提供する。
【解決手段】支持フィルム2と、支持フィルム2の一主面の全体に付着される粘着層3と、粘着層3を介して支持フィルム2と接合されるガラスフィルム4と、ガラスフィルム4の長手方向に沿ってガラスフィルム4の長手方向端部に連接される端部フィルム5と、前記ガラスフィルムおよび前記端部フィルムに粘着される第1のテープ部材と、を備えたガラスフィルム積層体1。ガラスフィルム4と端部フィルム5とを両者の長手方向に連接して、これらの両主面に第1のテープ部材6を粘着させるため、端部フィルム5との境界付近で、ガラスフィルム4の端部が割れるおそれが少なくなり、端部フィルム5にてガラスフィルム4を牽引する際に、ガラスフィルム4が傷つかなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持フィルムに粘着層を介してガラスフィルムが積層されたガラスフィルム積層体、このガラスフィルム積層体を巻き取って形成されたガラスフィルム積層体ロール、ガラスフィルム積層体のガラスフィルム上に複数色の画素が配置されるカラーフィルタ用画素付ガラスフィルム積層体、およびガラスフィルム積層の製造方法に関する。とりわけ、本発明は、製造工程でのガラスフィルムの損傷を防止するとともに、ガラスフィルムの取扱い性を向上させることができるガラスフィルム積層体、ガラスフィルム積層体ロール、カラーフィルタ用画素付ガラスフィルム積層体およびガラスフィルム積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子ディスプレイ、建築、家具装飾、電子デバイス、半導体デバイス、車体部材等には、従来から、ガラス板が多く用いられている。このうち、液晶ディスプレイ、電子ペーパー、有機ELディスプレイ等の電子ディスプレイに使用されるカラーフィルタには、一般的に、枚葉状のガラス板が基板として用いられており、このガラス板に、複数色の画素がパターン状に形成されて、カラーフィルタが製造されている。また、カラーフィルタの対向基板であるTFT基板若しくは電極基板、有機EL用表示素子基板、または太陽電池等にも、枚葉状のガラス板が用いられている。
【0003】
ところで、最近のガラス製造技術の進歩により、厚さが100μm程度の薄板のガラスフィルムが製造されるようになった。このガラスフィルムは、十分に薄いことから可撓性を有しており、ロール状に巻き取り可能である。例えば、このガラスフィルムをカラーフィルタの基板に用いる場合には、ガラスフィルムを巻き取ったロールから、所望の長さだけガラスフィルムを繰り出して連続的にカラーフィルタを製造することができ、枚葉状のガラス板を用いる場合に比べて、生産効率を向上させることができる。しかしながら、このガラスフィルムはその厚さが薄いことから、耐衝撃性が劣っており、製造工程中に損傷しやすいという問題がある。特に、リール状に巻き取ったガラスフィルムを繰り出す場合、ガラスフィルムの始端部に破損が生じやすい。
【0004】
このような問題の対策として、特許文献1では、ガラスフィルムの始端部に樹脂フィルムを取付けて、ガラスフィルムの繰り出し時には、樹脂フィルムが先頭となって、ガラスフィルムを牽引することで、ガラスフィルムの損傷防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−132350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、ガラスフィルムを露出させたままロール状に巻き取っており、ガラスフィルムの表面に傷が生じやすい。特許文献1には、ガラスフィルムの表面全体を樹脂フィルムで挟持する変形例も記載されているが、いったんガラスフィルムの表面を樹脂フィルムで覆ってしまうと、ガラスフィルムの表面を傷つけずに樹脂フィルムを剥離するのが困難になる。したがって、ガラスフィルム上に直接画素を形成してカラーフィルタを作製する場合のように、製造工程の中でガラスフィルムを露出させる必要がある場合は、その前工程でガラスフィルムの表面を樹脂フィルムで覆ってしまうと、その樹脂フィルムを剥離しなければならなくなり、その際、ガラスフィルムの表面を損傷してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラスフィルムの損傷を防止しつつ、ガラスフィルムの取扱い性を向上させたガラスフィルム積層体、ガラスフィルム積層体ロール、カラーフィルタ用画素付ガラスフィルム積層体およびガラスフィルム積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、支持フィルムと、
粘着層と、
前記粘着層を介して前記支持フィルムと接合されるガラスフィルムと、
前記ガラスフィルムの長手方向に沿って前記ガラスフィルムの長手方向端部に連接される端部フィルムと、
前記ガラスフィルムおよび前記端部フィルムに粘着される第1のテープ部材と、を備えることを特徴とするガラスフィルム積層体を提供する。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、ガラスフィルム積層体を巻き取って形成されたガラスフィルム積層体ロールにおいて、
前記ガラスフィルム積層体は、
帯状の支持フィルムと、
粘着層と、
前記粘着層を介して前記支持フィルムと接合されるガラスフィルムと、
前記ガラスフィルムの長手方向に沿って前記ガラスフィルムの長手方向端部に連接される端部フィルムと、
前記ガラスフィルムおよび前記端部フィルムに粘着される第1のテープ部材と、を有することを特徴とするガラスフィルム積層体ロールを提供する。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、ガラス積層体と、前記ガラス積層体上に配置されるカラーフィルタ用の複数色の画素と、を備え、
前記ガラス積層体は、
支持フィルムと、
粘着層と、
前記粘着層を介して前記支持フィルムと接合されるガラスフィルムと、
前記ガラスフィルムの長手方向に沿って前記ガラスフィルムの長手方向端部に連接される端部フィルムと、
前記ガラスフィルムおよび前記端部フィルムに粘着される第1のテープ部材と、を有し、
前記複数色の画素は、前記ガラスフィルムの対向する二主面のうち、前記第1のテープ部材が粘着される主面とは反対側の主面上に配置されることを特徴とするカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粘着層を介してガラスフィルムと支持フィルムを接合するため、ガラスフィルムが薄くても、ガラスフィルムの耐衝撃性が高くなる。また、支持フィルムを薄くすれば、ガラスフィルムの可撓性を損なうこともない。また、ガラスフィルムおよび端部フィルムに第1のテープ部材を粘着させるため、ガラスフィルムを端部フィルムに堅固に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態によるガラスフィルム積層体1の断面構造を示す断面図。
【図2】カラーフィルタ10の断面構造を示す断面図。
【図3】ガラスフィルム積層体1の製造装置の概略構成を示す図。
【図4】カラーフィルタ10用の画素付ガラスフィルム積層体20の断面図。
【図5】一比較例によるガラスフィルム積層体の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態によるガラスフィルム積層体1の長手方向に沿った断面構造を示す断面図である。図1のガラスフィルム積層体1は、支持フィルム2と、支持フィルム2の一主面の全体に設けられる粘着層3と、粘着層3を介して支持フィルム2に接合されるガラスフィルム4と、ガラスフィルム4の長手方向に沿ってガラスフィルム4の先端部4aおよび後端部4bに連接される端部フィルム5と、ガラスフィルム4および端部フィルム5に粘着される第1のテープ部材6と、少なくとも支持フィルム2および第1のテープ部材6とに粘着される第2のテープ部材7と、第1のテープ部材6と端部フィルム5との粘着面とは反対側の面で、ガラスフィルム4と端部フィルム5とに粘着される第3のテープ部材8とを備えている。
【0015】
図1では、ガラスフィルム4の先端部4aに端部フィルム5を連接した構造を示しているが、ガラスフィルム4の後端部4bにも端部フィルム5が連接されている。この端部フィルム5は、先端部5a側はリードと呼ばれ、後端部5b側はエンドと呼ばれることもある。本明細書では、支持フィルム2の長手方向の先端部2aおよび後端部2bと、粘着層3の長手方向の先端部3aおよび後端部3bと、ガラスフィルム4の長手方向の先端部4aおよび後端部4bを、それぞれ総称して長手方向端部と呼ぶ。
【0016】
図1のガラスフィルム積層体1は、可撓性に優れており、リード側の端部フィルム5をコアに巻き付けて、支持フィルム2付きのガラスフィルム4を順次巻き取ることで、ロール状にすることができる。このロールの作製方法の詳細については、後述する。
【0017】
支持フィルム2は、柔軟性のあるプラスチックで形成され、ガラスフィルム4への衝撃や局所的な加圧、歪みに対する脆弱性を補ってガラスフィルム4を補強するためのものである。単体のガラスフィルム4に異物が付着している状態でガラスフィルム4を巻き取ってロール状にすると、その異物の存在により、ガラスフィルム4に局所的な衝撃や圧力がかかったり、あるいはガラスフィルム4に傷ができたりし、それが要因となってガラスフィルム4が破損するおそれが高くなる。
【0018】
そこで、本実施形態では、ガラスフィルム4に支持フィルム2を貼り合せることにより、耐衝撃強度を増大させて、ガラスフィルム4の破損を防止している。また、ガラスフィルム4に支持フィルム2を貼り合せることにより、ガラスフィルム4が割れた場合であっても、ガラスの破片等の飛散を防止することができる。
【0019】
図1のガラスフィルム積層体1では、支持フィルム2および粘着層3の先端部2a、3aは、ガラスフィルム4の先端部4aおよび後端部4bよりも内側に配置されている。すなわち、ガラスフィルム4の先端部4aおよび後端部4bの上面には、粘着層3も支持フィルム2も配置されていない。
【0020】
第1のテープ部材6の長手方向の一端部6aは、支持フィルム2および粘着層3の長手方向の先端部2a、3aとガラスフィルム4の長手方向の先端部4aとの間に配置され、第1のテープ部材6の長手方向の他端部6bは、前記端部フィルム5上に配置されている。第1のテープ部材6は、ガラスフィルム4の粘着層3との接合面と、端部フィルム5の一主面とに粘着されている。
【0021】
第2のテープ部材7は、少なくとも支持フィルム2と第1のテープ部材6とに粘着されている。より具体的には、第2のテープ部材7は、支持フィルム2の対向する二主面のうち、粘着層3が設けられる主面とは異なる主面とそれに連なる一側面、第1のテープ部材6の対向する二主面のうち、ガラスフィルム4および端部フィルム5に粘着される主面とは異なる主面とそれに連なる一側面、および端部フィルム5の一主面に粘着されている。
【0022】
図1では、第2のテープ部材7が端部フィルム5に粘着される例を示しているが、第2のテープ部材7の先端部7aは、第1のテープ部材7の上面に配置されていてもよい。この場合、第2のテープ部材7は、支持フィルム2と第1のテープ部材6のみに粘着されることになり、端部フィルム5には粘着されない。
【0023】
第1〜第3のテープ部材6〜8の粘着力は、粘着層3の粘着力よりも高くすることを想定しているが、同程度の粘着力にしてもよい。
【0024】
また、第1のテープ部材6は必須であるが、第2のテープ部材7と第3のテープ部材8は省略してもよい。ただし、後述するように、支持フィルム2を剥離する目的で第1のテープ部材6を剥離する場合は、ガラスフィルム4と端部フィルム5の連接を維持するためには、第3のテープ部材8は必須となる。
【0025】
図1に示すガラスフィルム積層体1は、例えば液晶表示装置やEL表示装置などの表示装置用のカラーフィルタを作製するために利用できる。
【0026】
図2はカラーフィルタ10の断面構造の一例を示す断面図である。図2のカラーフィルタ10は、ガラスフィルム4と、このガラスフィルム4上に設けられた赤色画素11、緑色画素12および青色画素13、とを備えている。図2のガラスフィルム4は、図1と異なり、短手方向の断面構造を示している。
【0027】
通常、ガラスフィルム4上には、マトリックス形状にパターニングされたブラックマトリックス14が設けられており、各画素11、12、13は、ガラスフィルム4上のブラックマトリックス14により画定される各開口部内に形成されている。すなわち、ブラックマトリックス14の各開口部内に、赤色(R)画素用感光性材料、緑色(G)画素用感光性材料、および青色(B)画素用感光性材料により、赤色画素11、緑色画素12および青色画素13が形成されている。各画素11、12、13の配列は、図示しないが、ストライプ配列、デルタ配列(トライアングル配列)、正方配列(四画素配列)等の公知の配列とすることができる。このように異なる色からなる三つの隣り合う画素によって、画面上における一つの表示画素が形成されるようになっている。更に、黄色画素(図示せず)等を追加して4色以上の画素が形成されるようにしても良い。なお各画素11、12、13を形成する感光性材料としては、各色の顔料と溶剤と接合性樹脂(バインダー)とを含む顔料分散型の感光性樹脂組成物を用いることができ、ブラックマトリックス14を形成する感光性材料としては、遮光性を有する黒色の顔料を分散させた感光性樹脂組成物を用いることができる。
【0028】
また、図1に示すように、これらの画素11、12、13は、保護層15で覆われている。この保護層15上に、インジウム錫酸化物(ITO(Indium Tin Oxide))からなる透明電極膜16が形成されている。
【0029】
このようなカラーフィルタ10は、例えば、各画素11、12、13に対応して配列されたTFT等のスイッチング素子と液晶層とを含む液晶素子、および面光源と組み合わされて、液晶ディスプレイ(LCD)または電子ペーパー等に用いられる。この構成において、液晶はスイッチング素子によって制御されてシャッターとして機能し、面光源からの光を所望の色の画素のみを介して出射させる。このようにして、画面上にカラー映像が表示されるようになっている。
【0030】
図2のカラーフィルタ10内のガラスフィルム4は、図1に示したガラスフィルム積層体1のガラスフィルム4であり、図1のガラスフィルム4の粘着層3を介して支持フィルム2が接合されている側と反対側の面側が図2のガラスフィルム4の各画素11、12、13およびブラックマトリックス14が設けられている面側に対応している。
【0031】
このように、図1のガラスフィルム積層体1におけるガラスフィルム4は、例えば図2に示すカラーフィルタ10を作製する基板として用いることができる。
【0032】
次に、図1のガラスフィルム積層体1の各部材の材料について説明する。
【0033】
支持フィルム2の材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、セルローストリアセテート(CTA)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ノボルネン系樹脂、アリルエステル樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。中でも透明性や柔軟性などの特性からPET、PEN、COPが好適である。また、支持フィルム2の厚さは、3〜200μm、好ましくは、5μm〜200μmであることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム4の補強に必要な強度を確保することができると共に、支持フィルム2を有するガラスフィルム積層体1をロール状に巻き取ることが可能になる。
【0034】
粘着層3の材料としては、柔軟性を有するものであれば、特に限定されないが、アクリル系、スチレン系等の樹脂材料が好ましい。また、粘着層3の厚さは、5〜200μmであることが好ましい。このことにより、支持フィルム2とガラスフィルム4とを接合するために十分な粘着力を確保できると共に、ガラスフィルム積層体1としての光学特性の低下を防止できる。例えば、透過率の低下、着色、位相差の増加を防止できる。
【0035】
後述するように、本実施形態では、支持フィルム2に予め粘着層3を設けた、粘着層3付きの支持フィルム2を用いてガラスフィルム積層体1を作製する。
【0036】
ガラスフィルム4の材料としては、フィルム状に形成できるものであれば特に制限されないが、一般にディスプレイ用途に用いられるソーダライムガラス、無アルカリガラスが好ましい。このうち、無色で透明度が高く、線熱膨張係数が小さくて変形しにくい無アルカリガラスが好適である。また、ガラスフィルム4の厚さは、5〜300μmであることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム4を安定的に製造可能にし、取り扱い上最低限の強度を持たせることができると共に、ガラスフィルム4を有するガラスフィルム積層体1をロール状に巻き取ることが可能になる。
【0037】
端部フィルム5は、必ずしもガラスフィルム4と同じ厚さである必要はないが、図1で示すように、端部フィルム5とガラスフィルム4は、それぞれの長手方向に連接されて、第1および第2のテープ部材6、7で粘着されるため、それぞれの厚さに大きな差があると、段差ができて、第1および第2のテープ部材6、7の粘着力が弱くなったり、ガラスフィルム4の端部が傷つきやすくなる。よって、好ましくは、端部フィルム5とガラスフィルム4の厚さの差をできるだけ小さくする。
【0038】
端部フィルム5の材料は、支持フィルム2と同様の材料でよく、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、セルローストリアセテート(CTA)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ノボルネン系樹脂、アリルエステル樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。端部フィルム5は、ガラスフィルム4の両端部に連接されるものであり、透明性は要求されない。
【0039】
第1〜第3のテープ部材6〜8は、例えば、カプトン(登録商標)・ポリイミドフィルムにシリコーン系の粘着材を塗布したものであり、その粘着力は粘着層3の粘着力よりも高い。第1〜第3のテープ部材6〜8の膜厚は、1μm〜200μmであり、好ましくは30μm〜100μmであり、より好ましくは約50μmである。
【0040】
第1〜第3のテープ部材6〜8の外形サイズは、粘着対象である支持フィルム2、ガラスフィルム4、端部フィルム5の端部からはみ出さないことが前提条件である。より具体的には、第1〜第3のテープ部材6〜8の幅、すなわち、ガラスフィルム4および端部フィルム5の長手方向に直交する方向の長さは、ガラスフィルム4および端部フィルム5の短手方向の幅以下である。これに加えて、第2のテープ部材7は、支持フィルム2の上面とそれに連なる側面にも粘着されるため、第2のテープ部材7の幅、すなわち、支持フィルム2の長手方向に直交する方向の長さは、支持フィルム2の短手方向の幅以下である。第1〜第3のテープ部材6〜8の長手方向の長さは、ガラスフィルム積層体ロールから端部フィルム5を掴んで引き出す際に、その把持力で第1〜第3のテープ部材6〜8が剥離されない程度の粘着力を確保できるだけの長さが必要である。また、第1〜第3のテープ部材6〜8は、予め粘着材が塗布されたフィルムだけでなく、その他の種々の基材が適用可能であり、また、フィルム部材やシート部材等の基材に粘着材を挟んでガラスフィルム4や端部フィルム5に粘着させてもよい。すなわち、ガラスフィルム4と端部フィルム5に堅固に粘着可能な基材であれば、第1〜第3のテープ部材6〜8の具体的な材料および形態は問わない。
【0041】
次に、図1に示すガラスフィルム積層体1の製造装置について説明する。この製造装置は、ラミネータとも呼ばれる。図3はガラスフィルム積層体1の製造装置の概略構成を示す図である。図3の製造装置は、支持フィルム供給部21と、ガラスフィルム供給部22と、端部フィルム供給部23と、ニップローラ24と、巻取り部25とを有する。
【0042】
支持フィルム供給部21は、帯状の粘着層3付きの支持フィルム2を巻き付けたロール21aから所望の長さ分だけ粘着層3付きの支持フィルム2を繰り出す。
【0043】
ガラスフィルム供給部22は、帯状のガラスフィルム4を巻き付けたロール22aから所望の長さ分だけガラスフィルム4を繰り出す。端部フィルム供給部23は、帯状の端部フィルム5を巻き付けたロール23aから所望の長さ分だけ端部フィルム5を繰り出す。
【0044】
粘着層3付きの支持フィルム2を巻き付けたロール21は、粘着層3が露出したままだと、粘着層3が内周側の支持フィルム2に貼り付いてしまって、支持フィルム2を繰り出せなくなる。そこで、粘着層3の上面をカバーシートで覆った上でロール状に巻き取り、支持フィルム2を繰り出した後に、カバーシートを剥離するのが望ましい。カバーシートを剥離するには、支持フィルム供給部21に隣接して、カバーシートを剥離するための剥離部と、剥離されたカバーシートを巻き取って回収する回収部とを設ければよい。図3では、簡略化のために、剥離部と回収部を省略している。
【0045】
図3の製造装置を用いて図1のガラスフィルム積層体1を作製するには、まず、粘着層3付きの支持フィルム2のロール21a、ガラスフィルム4のロール22aおよび端部フィルム5のロール23aをそれぞれ、支持フィルム供給部21、ガラスフィルム供給部22および端部フィルム供給部23に取付ける。
【0046】
続いて、端部フィルム供給部23から端部フィルム5を繰り出して、端部フィルム5の先端部5aを巻取り部25のローラ付近まで移動させる。
【0047】
続いて、支持フィルム供給部21から粘着層3付きの支持フィルム2を繰り出すとともに、ガラスフィルム供給部22からガラスフィルム4を繰り出して、図1に示すように、ガラスフィルム4の先端部4aが支持フィルム2の先端部よりも突き出すように位置決めする。そして、ニップローラ24にて、ガラスフィルム4と支持フィルム2とを粘着層3を介して圧着する。
【0048】
続いて、第1のテープ部材6を、ガラスフィルム4の上面および端部フィルム5の上面とに粘着させる。続いて、第2のテープ部材6を、端部フィルム5の上面と、第1のテープ部材6の上面およびそれに連なる側面と、支持フィルム2の上面とに粘着させる。続いて、ガラスフィルム4の先端部4aに合わせて、端部フィルム5を切断する。また、ガラスフィルム4の粘着層3を介して支持フィルム2と接合した面とは反対側では、第3のテープ部材8を、ガラスフィルム4の底面と端部フィルム5の底面とに粘着させる。これにより、図1のガラスフィルム積層体1が作製される作製されたガラスフィルム積層体1は、巻き取りロール25aにより巻き取られて、ガラスフィルム積層体ロール25aが完成する。
【0049】
上述したガラスフィルム積層体ロール25aを用いてカラーフィルタ10を製造する場合には、まず、ガラスフィルム積層体ロール25aから図1の構造のガラスフィルム積層体1が繰り出され、ガラスフィルム4上に画素用感光性材料が塗布されて、乾燥(プリベーク)、露光、現像および硬化(ポストベーク)という一連の工程を繰り返される。そして、図2に示すように、ガラスフィルム4上に各色の画素11、12、13およびブラックマトリックス14が形成される。
【0050】
続いて、各画素11、12、13を覆う保護層15が形成され、保護層15上に透明電極膜16が形成されて、図4に示すカラーフィルタ10用の画素付ガラスフィルム積層体20が得られる。その後、支持フィルム2、粘着層3、端部フィルム5、および第1〜第3のテープ部材6〜8がガラスフィルム4から剥離されて、図2に示すカラーフィルタ10を得ることができる。
【0051】
このように、本実施形態では、ガラスフィルム4に支持フィルム2を貼り付けるため、ガラスフィルム4の耐衝撃性を向上させつつ、ガラスフィルム4の本来の可撓性を維持でき、ガラスフィルム4を傷つけずにガラスフィルム積層体1をロール状に巻き取ることができ、取扱い性が向上する。また、本実施形態では、ガラスフィルム4と端部フィルム5とを両者の長手方向に連接して、これらの両主面を第1および第3のテープ部材6、8と粘着させるため、端部フィルム5との境界付近で、ガラスフィルム4がむき出しにならなくなって、ガラスフィルム4の端部が割れるおそれが少なくなり、端部フィルム5にてガラスフィルム4を牽引する際に、ガラスフィルム4が傷つかなくなる。より具体的には、ガラスフィルム積層体1をロール状にしたものから、ガラスフィルム4を繰り出す際に、ガラスフィルム4よりも前側に端部フィルム5が配置されているため、端部フィルム5が先に繰り出されることになり、ガラスフィルム4を傷つけずにガラスフィルム4の繰り出しが可能となる。
【0052】
さらに、本実施形態では、第1のテープ部材6の上面側に第2のテープ部材7を配置して、この第2のテープ部材7を、支持フィルム2、第1のテープ部材6および端部フィルム5と粘着させるため、支持フィルム2、ガラスフィルム4および端部フィルム5を堅固に固定できるとともに、ガラスフィルム積層体1から支持フィルム2を剥離したい場合に、直接支持フィルム2を剥離するのではなく、第2のテープ部材7を剥離することで、合わせて支持フィルム2も容易に剥離でき、ガラスフィルム4を傷つけずに支持フィルム2の剥離を容易に行える。
ところで、図1において、第2のテープ部材7と第3のテープ部材8は必須ではなく、省略してもよい。すなわち、ガラスフィルム積層体1の完成後に支持フィルム3を剥離する必要がなければ、第2のテープ部材7と第3のテープ部材8がなくても構わない。
また、第2のテープ部材7は、少なくとも支持フィルム3と第1のテープ部材6に粘着されていればよく、必ずしも端部フィルム5と粘着させる必要はない。
【0053】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれない。したがって、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【実施例】
【0054】
本実施形態によるガラスフィルム積層体1の製造方法を用いて作製されたガラスフィルム積層体1と図5に示す構造を持つ比較例によるガラスフィルム積層体1の双方について、ガラスフィルム4に割れや傷が生じるか否かを確認した。
【0055】
本実施例では、支持フィルム2として、厚みが59μm、幅300nm、長さ10mのPETフィルムのロール21aを準備した。このPETフィルム上には粘着層3が塗布され、また、粘着層3の上面にはカバーシート16を剥離自在に貼り付けた。また、ガラスフィルム4として、厚さ75μm、幅300mm、長さ10mの薄板ガラス(日本電気硝子社製 OA−10G)のロール22aを準備した。また、端部フィルム5として、厚さ125μm、幅300nm、長さ10mのPETフィルムのロール23aを準備した。さらに、第1および第3のテープ部材6、8として、厚さ50μ、幅300nmのカプトンテープを準備した。
【0056】
続いて、支持フィルム2のロール21aと、ガラスフィルム4のロール22aと、端部フィルム5のロール23aをそれぞれ、図3の製造装置の所定場所に設置し、端部フィルム5の先端部5aを、巻き取りロール25aまで通紙した。
【0057】
続いて、ガラスフィルム4の先端部4aと支持フィルム2の先端部2aをニップローラ24の近辺まで繰り出して、図1に示すように、ガラスフィルム4の先端部4aが支持フィルム2の先端部よりも突き出すように位置決めして、ニップローラ24にてラミネートする。
【0058】
続いて、ガラスフィルム4の一主面、および端部フィルム5の一主面にカプトンテープを粘着させる。続いて、第2のテープ部材6を、端部フィルム5の上面と、第1のテープ部材6の上面およびそれに連なる側面と、支持フィルム2の上面とに粘着させる。続いて、ガラスフィルム4の先端部4aの位置に合わせて、端部フィルム5を切断して、裏面側からガラスフィルム4と端部フィルム5にカプトンテープを粘着させる。ガラスフィルム4の後端部側にも、同様の手順でカプトンテープを粘着させる。これにより、図1に示すガラスフィルム積層体1が作製された。
【0059】
続いて、作製されたガラスフィルム積層体1を、直径が6インチのコアに巻き取って、ガラスフィルム積層体ロール25aが作製された。
【0060】
本発明者は、本実施例の効果を確かめるために、一比較例によるガラスフィルム積層体1aを作製した。図5は一比較例によるガラスフィルム積層体1aの長手方向に沿った断面構造を示す断面図である。図5のガラスフィルム積層体1aは、ガラスフィルム4と、このガラスフィルム4の先端部4aおよび後端側の上面に配置された端部フィルム5と、ガラスフィルム4および端部フィルム5の上面に粘着されるテープ部材6aとを備えている。図5では、ガラスフィルム4の先端部4a側の断面構造だけを図示しているが、ガラスフィルム4の後端部側も同様の断面構造を有する。
【0061】
図5のガラスフィルム4と端部フィルム5の形状および材料は、上述した本実施例のガラスフィルム4と端部フィルム5の形状および材料と同じである。また、テープ部材6aも、本実施例の第1および第3のテープ部材6、8と同様の厚さおよび材料のカプトンテープを用いた。
【0062】
図5の一比較例によるガラスフィルム積層体1aは、ガラスフィルム4に支持フィルム2を貼り合わせていないため、本実施例よりも小さな衝撃でガラスフィルム4が割れるおそれがある。また、端部フィルム5が、ガラスフィルム4の先端部4aと後端部の上面に配置されているため、テープ部材をガラスフィルム4と端部フィルム5に粘着させたとしても、ガラスフィルム4と端部フィルム5に段差ができてしまい、不安定な構造となる。したがって、ガラスフィルム4の先端部4aや後端部4bが特に割れやすくなる。
【0063】
一比較例と比べて、本実施例によるガラスフィルム積層体1aは、ガラスフィルム4に支持フィルム2を貼り合わせているため、ガラスフィルム4の耐衝撃性が高くなり、割れにくい。また、ガラスフィルム4と端部フィルム5を両者の長手方向に連接させるため、両者間の段差が少なくなって構造的に安定し、ガラスフィルム4の端部が割れにくくなる。さらに、ガラスフィルム4に貼り合わせた支持フィルム2を剥離する際に、支持フィルム2上の第2のテープ部材7を剥離することで、合わせて支持フィルム2も剥離できるため、ガラスフィルム積層体1aを作製後に、ガラスフィルム4を傷つけずに支持フィルム2を剥離しやすくなる。さらにまた、端部フィルム5をガラスフィルム4または支持フィルム2と連接させる際に、両面側にテープ部材を粘着させるため、端部フィルム5とガラスフィルム4、あるいは端部フィルム5と支持フィルム2との連接強度を高めることができる。これらの効果は、一比較例では決して得られない。
【符号の説明】
【0064】
1、1a ガラスフィルム積層体
2 支持フィルム
3 粘着層
4 ガラスフィルム
5 端部フィルム
6 第1のテープ部材
7 第2のテープ部材
10 カラーフィルタ
11 赤画素
12 緑画素
13 青画素
14 ブラックマトリックス
15 保護層
16 透明電極膜
20 画素付ガラスフィルム積層体
21 支持フィルム供給部
22 ガラスフィルム供給部
23 端部フィルム供給部
24 ニップローラ
25 巻取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムと、
粘着層と、
前記粘着層を介して前記支持フィルムと接合されるガラスフィルムと、
前記ガラスフィルムの長手方向に沿って前記ガラスフィルムの長手方向端部に連接される端部フィルムと、
前記ガラスフィルムおよび前記端部フィルムに粘着される第1のテープ部材と、を備えることを特徴とするガラスフィルム積層体。
【請求項2】
前記第1テープ部材は、前記ガラスフィルムの前記粘着層との粘着面側で、前記ガラスフィルムおよび前記端部フィルムに粘着されることを特徴とする請求項1に記載のガラスフィルム積層体。
【請求項3】
前記支持フィルムおよび前記粘着層の長手方向端部は、前記ガラスフィルムの長手方向端部よりも内側に配置され、
前記第1のテープ部材の長手方向の一端部は、前記支持フィルムおよび前記粘着層の長手方向端部と前記ガラスフィルムの長手方向端部との間に配置され、前記第1のテープ部材の長手方向の他端部は、前記端部フィルム上に配置されることを特徴とする請求項2に記載のガラスフィルム積層体。
【請求項4】
少なくとも前記支持フィルムおよび前記第1のテープ部材に粘着される第2のテープ部材を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガラスフィルム積層体。
【請求項5】
前記第2のテープ部材は、前記支持フィルムの対向する二主面のうち、前記粘着層に粘着される主面とは異なる主面とそれに連なる一側面、前記第1のテープ部材の対向する二主面のうち、前記ガラスフィルムおよび前記端部フィルムに粘着される主面とは異なる主面とそれに連なる一側面、および前記端部フィルムの一主面に粘着されることを特徴とする請求項4に記載のガラスフィルム積層体。
【請求項6】
前記第1のテープ部材と前記端部フィルムとの粘着面とは反対側の面で、前記ガラスフィルムと前記端部フィルムとに粘着される第3のテープ部材を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガラスフィルム積層体。
【請求項7】
ガラスフィルム積層体を巻き取って形成されたガラスフィルム積層体ロールにおいて、
前記ガラスフィルム積層体は、
帯状の支持フィルムと、
粘着層と、
前記粘着層を介して前記支持フィルムと接合されるガラスフィルムと、
前記ガラスフィルムの長手方向に沿って前記ガラスフィルムの長手方向端部に連接される端部フィルムと、
前記ガラスフィルムおよび前記端部フィルムに粘着される第1のテープ部材と、を有することを特徴とするガラスフィルム積層体ロール。
【請求項8】
ガラス積層体と、前記ガラス積層体上に配置されるカラーフィルタ用の複数色の画素と、を備え、
前記ガラス積層体は、
支持フィルムと、
粘着層と、
前記粘着層を介して前記支持フィルムと接合されるガラスフィルムと、
前記ガラスフィルムの長手方向に沿って前記ガラスフィルムの長手方向端部に連接される端部フィルムと、
前記ガラスフィルムおよび前記端部フィルムに粘着される第1のテープ部材と、を有し、
前記複数色の画素は、前記ガラスフィルムの対向する二主面のうち、前記第1のテープ部材が粘着される主面とは反対側の主面上に配置されることを特徴とするカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体。
【請求項9】
一主面に粘着層が設けられた帯状の支持フィルムを、前記粘着層を介してガラスフィルムに圧着する工程と、
前記ガラスフィルムの長手方向に沿って前記ガラスフィルムに連接されるように、前記ガラスフィルムの長手方向端部と端部フィルムとを位置合わせする工程と、
第1のテープ部材を、前記ガラスフィルムおよび前記端部フィルムに粘着させて、前記ガラスフィルムの長手方向端部の位置に合わせて前記端部フィルムを切断する工程と、を備えることを特徴とするガラスフィルム積層体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−35156(P2013−35156A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171199(P2011−171199)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】