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ガラスブランク、ガラスブランク製造方法、情報記録媒体用基板製造方法および情報記録媒体製造方法
説明

ガラスブランク、ガラスブランク製造方法、情報記録媒体用基板製造方法および情報記録媒体製造方法

【課題】ガラスブランクから情報記録媒体用基板を作製した場合に、平面性に優れると共に、ガラスブランクの薄板化により加工量を低減させても凹跡の発生も抑制すること。
【解決手段】円板状の薄肉部10と、この薄肉部10の周縁部に沿って、薄肉部の両面に対して凸部12U、12Dを形成するように設けられた厚肉部12と、を有し、薄肉部10の直径方向において、薄肉部10の直径方向に対する、一方の面側の凸部12Dの径方向の幅W1が、他方の面側の凸部12Uの径方向の幅W2よりも大きいガラスブランクおよびその製造方法、ならびに、当該ガラスブランクを用いた情報記録媒体用基板製造方法および情報記録媒体製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスブランク、ガラスブランク製造方法、情報記録媒体用基板製造方法および情報記録媒体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体などの情報記録媒体用の基板として、ガラス基板が広く利用されている。このようなガラス製の情報記録媒体用基板の製造方法としては、板状の素板ガラスから円板状にガラスを切り出す方法の他に、溶融ガラスを一対の成形型でプレスする方法(いわゆるダイレクトプレス法)や一旦製品に近い大きさに作製したガラスを再加熱して熔解し、より精密にプレスしなおす方法(いわゆるリヒートプレス)で作製されたガラスブランクを所定の形状に加工し、情報記録媒体用基板を作製する。
【0003】
このようなプロセスを経て作製される情報記録媒体用基板は、所定の厚みを有し、かつ、反りが殆ど無いことが必要である。これに加えて、コストダウンに対応するためには、ガラスブランクから情報記録媒体用基板を作製する際の研磨代を小さくすることが重要である。このため、ガラスブランクには、薄肉化のみならず、平面性の更なる向上(反りの低減)が求められている。平面性向上というニーズに対応するために、本出願人によりプレス直後に略板状となった軟化状態のガラスを再プレスする反り修正工程を実施することで、ガラスブランクの反りを修正する技術が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、プレス成型時に発生した反りは、程度の差はあれどもガラスブランクに残留する。よって、このような反りを有するガラスブランクに対して、両面から圧力を加えた状態で研削しても、印加していた圧力を解除した時点で反りが再び発生してしまう。この問題を解決するために、ガラスブランクをラップ研磨する際に、ラップ研磨時にガラスブランクの両面に加わる圧力を受け止めることを目的とした肉厚部を、ガラスブランクの外周端等に設ける技術が、本出願人により提案されている(特許文献2の請求項1、段落0013、図2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3286956号
【特許文献2】特許第3714501号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら本出願人により提案された技術は、ガラスブランクや、最終製品である情報記録媒体用基板の反りを抑制する上で、非常に有用である。しかしながら、特許文献2に記載の技術を利用して、円板状の薄肉部の周縁部の両面に凸を成すように厚肉部を設けたガラスブランクを用いて情報記録媒体用基板を作製する際、コストダウンを図るためにガラスブランクを薄板化させていき、ガラスブランクの加工量を低減させていくと、当該基板の片面に、外周端に沿ってリング状に形成される凹跡が発生することがある。このような凹跡が残った基板は、情報記録媒体用の基板としては使用できない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、平面性に優れ、ガラスブランクの薄板化により加工量を低減させても凹跡の発生が抑制された情報記録媒体用基板を作製できるガラスブランクおよびその製造方法、ならびに、当該ガラスブランクを用いた情報記録媒体用基板製造方法および情報記録媒体製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明のガラスブランクは、円板状の薄肉部と、この薄肉部の周縁部に沿って、薄肉部の両面に対して凸部を形成するように設けられた厚肉部と、を有し、薄肉部の直径方向に対する、一方の面側の上記凸部の径方向の幅が、他方の面側の上記凸部の径方向の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
本発明のガラスブランク製造方法は、鉛直方向に対して相対的に移動可能に配置された一対の成形型として、プレス成形時に軟化状態のガラスと接触し、円形状の中央部、および、当該中央部の周縁側に中央部に対して凹みを成すように設けられた外縁部を有するプレス面を備えた第一の成形型と、プレス成形時に軟化状態のガラスと接触し、第一の成形型の中央部よりも直径の小さい円形状の中央部、および、当該中央部の周縁側に当該中央部に対して凹みを成すように設けられた外縁部を有するプレス面を備えた第二の成形型とを用い、鉛直方向下方側に配置される成形型を第一の成形型とし、鉛直方向上方側に配置される成形型を第二の成形型として、軟化状態のガラス塊を、第一の成形型のプレス面上に配置した後に、第一の成形型のプレス面と第二の成形型のプレス面とにより、ガラス塊を、第一の成形型プレス面の外縁部にまで到達するようにプレスする第一のプレス工程、および、鉛直方向下方側に配置される成形型を第二の成形型とし、鉛直方向上方側に配置される成形型を第一の成形型として、軟化状態のガラス塊を、第二の成形型のプレス面上に配置した後に、第一の成形型のプレス面と第二の成形型のプレス面とにより、ガラス塊を、第一の成形型プレス面の外縁部にまで到達するようにプレスする第二のプレス工程、から選択されるいずれか一方のプレス工程を少なくとも経て、本発明のガラスブランクを製造することを特徴とする。
【0010】
本発明のガラスブランク製造方法の一実施態様は、プレス工程を経て、略板状となった軟化状態のガラスに対して、反りの発生を抑制する反り抑制工程を実施することが好ましい。
【0011】
本発明の情報記録媒体用基板製造方法は、本発明のガラスブランク、および、本発明のガラスブランク製造方法により製造されたガラスブランクから選択されるいずれかのガラスブランクの両面を、研削加工及び/又は研磨加工を行う工程を少なくとも経て、情報記録媒体用基板を製造することを特徴とする。
【0012】
本発明の情報記録媒体製造方法は、本発明の情報記録媒体用基板製造方法により作製された情報記録媒体用基板の主表面上に、情報記録層を形成する情報記録層形成工程を少なくとも経て、情報記録媒体を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、平面性に優れ、ガラスブランクの薄板化により加工量を低減させても凹跡の発生も抑制された情報記録媒体用基板が作製できるガラスブランクおよびその製造方法、ならびに、当該ガラスブランクを用いた情報記録媒体用基板製造方法および情報記録媒体製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態のガラスブランクの一例を示す模式断面図である。
【図2】本実施形態のガラスブランクの他の例を示す模式断面図である。
【図3】本実施形態のガラスブランクの製造方法に用いられる一対の成形型の一例を示す模式断面図である。
【図4】従来のガラスブランクを用いて情報記録媒体用基板を作製した際に、凹跡が発生する原理を説明するための説明図である。
【図5】従来のガラスブランクを用いて情報記録媒体用基板を作製した際に、凹跡が発生する原理を説明するための説明図である。
【図6】従来のガラスブランクを用いて情報記録媒体用基板を作製した際に、凹跡が発生する原理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(ガラスブランクおよびその製造方法)
−ガラスブランク−
本実施形態のガラスブランクは、円板状の薄肉部と、この薄肉部の周縁部に沿って、薄肉部の両面に対して凸部を形成するように設けられた厚肉部と、を有し、薄肉部の直径方向に対する、一方の面側の上記凸部の径方向の幅が、他方の面側の上記凸部の径方向の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
本実施形態のガラスブランクでは、薄肉部の両面に対して凸部を形成する厚肉部が設けられている。よって、ラップ研磨時に、ガラスブランクを挟持するように配置された一対の研削盤(ラップ定盤)により、ガラスブランクの両面に加えられる押圧力が、この肉厚部のみによって受け止められる。この状態でラップ研磨が進んで肉厚部が削られ、さらに薄肉部も削られることにため、研削盤から受ける押圧力によって、ガラスブランクを弾性変形させずにラップ研磨することができる。そのため、ガラスブランクをラップ研磨で平坦に加工すれば、研削盤による押圧力を取り除いてもガラスの平坦性は保たれる。一方、弾性変形した状態でラップ研磨すると、ガラスブランクを平坦に加工したつもりでも、研削盤による押圧力を取り除くと、ガラスの変形が戻り、平坦性が得られない。したがって、ラップ研磨工程を経て得られる情報記録媒体用基板の平面性に優れる。
【0017】
これに加えて、本実施形態のガラスブランクでは、薄肉部の直径方向に対する、一方の面側の凸部の径方向の幅が、薄肉部の他方の面側の凸部の径方向の幅よりも大きい。これは、ガラスブランクのプレス直後の冷却過程におけるガラスの反りに対して、効果的に反りを抑制できるように配置したものである。以上のことから、本実施形態のガラスブランクでは、情報記録媒体用基板を作製した場合に、ガラスブランクが有する反りや変形に起因して発生する凹跡を抑制することができる。
【0018】
このような凹跡の発生を抑制できる効果について、本実施形態のガラスブランクと従来のガラスブランクとを対比させつつ、以下に図面を用いてより具体的に説明する。図4〜図6は、従来のガラスブランクを用いて情報記録媒体用基板を作製した際に、凹跡が発生する原理を説明するための説明図である。ここで、図4および図5中に示すガラスブランク100は、円板状の薄肉部110と、この薄肉部110の両面に対してリング状の凸部112U、112Dを形成する厚肉部112とを有する点では本実施形態のガラスブランクと共通する。しかし、ガラスブランク100の一方の面側Dの凸部112Dの径方向の幅と、他方の面側Uの凸部112Uの径方向の幅とが同一である点で、本実施形態のガラスブランクと異なるものである。図4は、一対の成形型(上型および下型)によりプレス成型された直後であって、上型がガラスブランク100から離間する直前における高温状態のガラスブランク100Hの直径方向における断面形状を示す模式断面図である。なお、図4中、上型および下型については記載を省略してある。図5は、図4に示すガラスブランク100Hがガラス転移温度Tg以下の温度域まで冷却された後のガラスブランク100Cの直径方向における断面形状を示す模式断面図である。図6は、図5に示すガラスブランク100Cに対して、ラップ研磨等の後工程を実施することにより得られた情報記録媒体用基板102(端面加工前の状態)の直径方向における断面形状を示す模式断面図である。なお、図4〜図5中、符号Uで示される面は、プレス成型時に上型と接触している面または接触していた面を意味し、符号Dで示される面は、プレス成型時に下型と接触している面または接触していた面を意味する。以下の説明においては、符号Uで示される面を「上面」、符号Dで示される面を「下面」と称す場合がある。
【0019】
図4に示すように、プレス直後の高温状態を維持しているガラスブランク100Hにおいては、ガラスブランクは金型の形状が転写されており反りが発生していない。しかし、プレス後に、上面側と下面側の冷却過程が異なると、ガラスの熱収縮の差によるガラスブランクの反りが顕著となる。それゆえ、図4に示すガラスブランク100Hが冷却されると、図5に示すように、上面側に反るように湾曲したガラスブランク100Cとなる。
【0020】
このため、このガラスブランク100Cを用いて、情報記録媒体用基板102を作製した場合、ガラスブランク100Cの薄肉化により研磨代が小さくなると、下面の角部114Cの部分および上面の中央部に凹跡114P、114Qが発生してしまう(図6)。
このような凹跡114P、114Qは、ガラスブランク100Cの反りが大きい程、および/または、ガラスブランク100Cをより薄肉にするほど(すなわち、情報記録媒体用基板102を作製する際の研磨代が小さくなるほど)顕著になる。
【0021】
また、ガラスブランク100Cの反りを修正するために、ガラスブランク100Cに対して、特許文献1等に示されるような反り修正プレスを実施する場合がある。この場合、反り修正プレスは、変形可能な温度とされたガラスブランク100Cの薄肉部110の上面側全体(図5中に示す符号RPで示す領域)を反り修正プレス部材でプレスする。
【0022】
図1は、本実施形態のガラスブランクの一例を示す模式断面図である。なお、図中に示す符号RP、U、Dは、図4〜図6中に示したものと同様である。図1中に示すガラスブランク1は、円板状の薄肉部10と、この薄肉部10の周縁部に沿って、薄肉部10の両面に対してリング状の凸部12U、12Dを形成する厚肉部12とが設けられている点では図4および図5に例示した従来のガラスブランク100と共通する。しかし、ガラスブランク1は、ガラスブランク1の一方の面側Dの凸部12Dの径方向の幅W1が、他方の面側Uの凸部12Uの径方向の幅W2よりも大きい点で、従来のガラスブランク100と異なる。
【0023】
すなわち、凸部12Uの幅W2は、図4および図5に例示する従来のガラスブランク100の場合と同様に、ラップ研磨時に、研削盤により印加される押圧力を受け止めるという機能(押圧力受止め機能)が確保できるように決定される。これに対して、凸部12Dの幅W1は、この押圧力受止め機能に加えて、従来のガラスブランク100よりも、ガラスブランク1の剛性を更に向上させるという観点も考慮して決定される。すなわち、ガラスブランクの高温状態のプレス直後の状態から、ガラスブランク1の上面と、上型とが離間しガラス転移温度Tg以下に冷却される過程でのガラスブランクの反りに対して、あらかじめ温度履歴からガラスブランクが反る方向を求めておき、その方向に対して各々の面に設けられる凸部12U、12Dの幅を変えることで、ガラスの反りを抑制する。
このため、このガラスブランク1を用いて、ラップ研磨等の後工程を実施することにより情報記録媒体用基板を作製した場合、ガラスブランク1の薄肉化により研磨代を小さくしても、図5および図6に示すような反りに起因する凹跡114Pの発生も抑制される。
【0024】
また、ガラスブランク1に対しても、従来と同様に反り修正プレスを実施してもよい。この場合、反り修正プレス領域RPは、その最外周端が、凸部12Dの内周側側面(図1中の点線で示されるライン)よりも外側に設定される。そして、このような状態で反り修正プレスを実施した場合、薄肉部10のみならず、厚肉部12の一部(直径方向において、凸部12Uの内周側側面よりも内周側で、かつ、凸部12Dの内周側側面よりも外周側の部分)にも、押圧力を印可しても良い。
【0025】
なお、図1に示すガラスブランク1では、幅の狭い凸部12Uが設けられた側の面が、プレス時において上型と接触し、さらに反り修正プレスを実施する場合は、反り修正プレス部材でプレスされる側の面(上面)とされている。反り修正プレス時、ガラスブランク1の上面は、プレス成形で使用した上型とは別の部材でプレスされる。反り修正プレス時、ガラスブランク1の厚肉部12の粘度は薄肉部10に比べて低く、厚肉部12をプレスすると厚肉部12を変形させてしまうおそれがあるため、上方から薄肉部10のみをプレスすることが好ましく、しかも薄肉部10を広範囲にわたりプレスすることが好ましい。しかし、反り修正プレスは前述のように上型とは別の部材でプレスするため、部材が僅かに位置ずれを起こした状態で薄肉部10全域をプレスすると厚肉部12の一部もプレスするおそれが生じる。そこで、厚肉部12をプレスせずに、ガラスブランク1上面を広範囲にわたりプレスするには、幅の狭い凸部12Uが上面になるように、すなわち、薄肉部10の面積の広い側が上面になるようにプレス成形することが望ましい。反り修正プレスを実施しない場合は、幅の狭い凸部12Uが設けられた側の面は、プレス時において、上型と接する面であってもよいし、下型と接する面であってもよい。いずれの場合であっても、ガラスブランク1の直径方向に対して、相対的に厚肉となる領域の割合が増加して剛性が更に向上し、反りが抑制されるからである。
【0026】
また、図1に示すガラスブランク1では、凸部12Dの内周側側面は、薄肉部10の下面に対して垂直を成す面である。しかしながら、凸部12Dの内周側側面は、図2に示すように凸部12Dの頂上部側から、薄肉部10の下面側へと裾野が広がるように、薄肉部10の下面に対して傾斜した面12Sであってもよい。この場合の傾斜角(図2中に示す角度θ)は傾斜した面12Sと凸部12Dの頂上面とが交差する部分の破損防止の観点から、30度以上90度未満であることが好ましい。さらには40度以上80度未満であることがより好ましい。
【0027】
ここで、凸部12Uの幅W2は、ラップ研磨時における圧力受止め機能を確保する観点から、特許文献2の段落0008にも例示されるように2.0mm前後とすることができるが、具体的には1mm〜6mmの範囲内とすることが好ましく、1mm〜4.5mmの範囲内とすることがより好ましい。幅W2を1mm以上とすることにより、凸部12Uによりラップ研磨時における圧力受止め機能を確実に発揮させることができる。また、幅W2を4.5mm以下とすることにより、ラップ研磨時における研磨レートの必要以上の低下を防いで、情報記録媒体用基板の製造効率の低下を防止することができる。
【0028】
ガラスの熱履歴から、ガラスブランク1が反る方向をあらかじめ求めておき、ガラスブランク1が反って凸面になる側をW1、凹面になる側をW2と定義する。このとき、凸部12Uの幅W2に対する凸部12Dの幅W1の比(W1/W2)は、1.0以上であることが好ましく、さらには2.0以上が好ましく、3.0以上が一層好ましい。加えてガラス加工の加工容易性(ラップ加工の加工時間)から、W1/W2は6.0以下が好ましく、さらには5.0以下がより好ましく、4.5以下が一層好ましい。
【0029】
凸部12Uの高さ(図1中、符号H1で示される薄肉部10の上面を基準面とした高さ)は特に限定されないが0.05mm〜0.1mmの範囲内が好ましい。凸部12Uの高さを0.05mm以上とすることにより、凸部12Uによりラップ研磨時における圧力受止め機能を確実に発揮させることができる。また、凸部12Uの高さH1を0.1mm以下とすることにより、ラップ研磨時における研磨代の必要以上の増大を防いで、情報記録媒体用基板の製造効率の低下を防止することができる。
【0030】
凸部12Dの高さ(図1中、符号H2で示される薄肉部10の下面を基準面とした高さ)は特に限定されないが0.05mm〜0.1mmの範囲内が好ましい。凸部12Dの高さを0.05mm以上とすることにより、凸部12Dによりラップ研磨時における圧力受止め機能を確実に発揮させることができる。また、凸部12Dの高さH2を0.1mm以下とすることにより、ラップ研磨時における研磨代の必要以上の増大を防いで、情報記録媒体用基板の製造効率の低下を防止することができる。
【0031】
また、既述したように、図4、図5に例示したような従来のガラスブランク100から情報記録媒体用基板102を作製した場合において、凹跡114P、114Q発生は、ガラスブランク100の薄肉化、すなわちガラスブランク100のアスペクト比(ガラスブランク100の直径dに対する薄肉部110の厚みtの比率、t/d)が小さくなるほど顕著になる傾向がある。しかしながら、本実施形態のガラスブランク1は、従来のガラスブランク100と比べて直径方向に対する肉厚な部分の割合が大きい。このため、本実施形態のガラスブランク1は、従来のガラスブランク100よりもアスペクト比が小さくなっても剛性の低下が小さく、反りも少ないため、凹跡114Pも発生し難しい。この点を考慮すれば、本実施形態のガラスブランク1のアスペクト比は、0.018以下であることが好ましく、0.013〜0.017の範囲がより好ましい。本実施形態のガラスブランクでは、アスペクト比を0.018以下としても、従来のガラスブランク100では、発生が避け難かった凹跡114P、114Qの発生をより確実に抑制することができる。なお、アスペクト比の下限は特に限定されるものではないが、アスペクト比が小さ過ぎる場合はプレス時にガラスを薄く延伸させることが困難となり、ガラスブランクの製造自体ができなくなるなど、実用上の観点から、0.010以上とすることが好ましい。なお、本願明細書において、アスペクト比を決定するために用いる厚みtとは、図1や図4に示すように薄肉部10、110の厚みを意味する。なお、本実施形態のガラスブランクでは、アスペクト比を0.018以下としても、凹跡114Qの発生をより確実に抑制することができるが、この凹跡114Qは、最終的に、情報記録媒体用基板102の中央部に穴あけ加工が施される場合は、残存していてもよい。凹跡114Qは、穴あけ加工により除去されるため穴開け加工も経た情報記録媒体用基板(完成品)では、凹跡114Qが残らないためである。
【0032】
−ガラスブランク製造方法−
本実施形態のガラスブランク1は、ダイレクトプレス法により作製される。ここで、プレス成形に際しては、一対の成形型として、プレス成形時に軟化状態のガラスと接触し、円形状の中央部、および、当該中央部の周縁側に中央部に対して凹みを成すように設けられた外縁部を有するプレス面を備えた第一の成形型と、プレス成形時に軟化状態のガラスと接触し、第一の成形型の中央部よりも直径の小さい円形状の中央部、および、当該中央部の周縁側に当該中央部に対して凹みを成すように設けられた外縁部を有するプレス面を備えた第二の成形型とを用いる。一対の成形型は、例えば、鉛直方向に対して相対的に移動可能に配置されたものとすることができる。
【0033】
この場合、以下の(1)または(2)に示すいずれか一方のプレス工程を少なくとも経ることにより、本実施形態のガラスブランクを作製することができる。
(1)鉛直方向下方側に配置される成形型(下型)を第一の成形型とし、鉛直方向上方側に配置される成形型(上型)を第二の成形型として、軟化状態のガラス塊を、第一の成形型のプレス面上に配置した後に、第一の成形型のプレス面と第二の成形型のプレス面とにより、ガラス塊を、第一の成形型プレス面の外縁部にまで到達するようにプレスするプレス工程(第一のプレス工程)
(2)鉛直方向下方側に配置される成形型(下型)を第二の成形型とし、鉛直方向上方側に配置される成形型(上型)を第一の成形型として、軟化状態のガラス塊を、第二の成形型のプレス面上に配置した後に、第一の成形型のプレス面と第二の成形型のプレス面とにより、ガラス塊を、第一の成形型プレス面の外縁部にまで到達するようにプレスするプレス工程(第二のプレス工程)
【0034】
ここで、図3は、本実施形態のガラスブランクの製造方法に用いられる一対の成形型の一例を示す模式断面図であり、具体的には、成形型をそのプレス面に対して直交するように切断した場合の断面について示したものである。図3に示す一対の成形型は、上型20と下型30とから構成され、プレス時には、上型20は鉛直方向上方側に配置され、下型20は鉛直方向下方側に配置される。上型20は、円形状の中央部22A、および、中央部22Aの周縁側に中央部22Aに対して凹みを成すように設けられたリング状の外縁部22Bを有するプレス面22を備える。下型30は、円形状の中央部32A、および、中央部32Aの周縁側に中央部32Aに対して凹みを成すように設けられたリング状の外縁部32Bを有するプレス面32を備えている。ただし、下型30のプレス面32の中央部32Aの直径は、上型20のプレス面22の中央部22Aの直径よりも小さい。なお、一対の成形型は、各々、一つの部材で構成してもよく、複数の部材を組み合わせて構成してもよい。複数の部材を組合わせて構成する場合、各部材を相互に固定したものとしてもよいし、各部材を相互に可動な状態で成形型を構成してもよい。
【0035】
図1に例示したような本実施形態のガラスブランク1を製造する場合は、軟化状態のガラス塊を、下型30のプレス面32の中央部32A上に供給した後、上型20と下型30とにより、このガラス塊を、上型20のプレス面22の外縁部22Bにまで到達するようにプレス成形する。なお、図1に示すガラスブランク1と同形状のガラスブランクを得る上では、鉛直方向に対する上型20と下型30との配置関係は、上下逆であってもよい。
【0036】
このため、プレス工程を経た後に、略板状となった軟化状態のガラスに対して、反りの発生を抑制する反り抑制工程を実施することが好ましい。反りの発生を抑制する反り抑制工程では、大別すると、(1)一旦発生した反りを、外力を加えて強制的に修正する方法(反り修正プレス)、および、(2)プレス直後の略板状となった軟化状態のガラスの上下両面の冷却条件の乖離を防いで、上下両面を略同一の条件で冷却する方法の少なくとも一方が利用できる。
【0037】
(1)の反り修正プレスとしては、既述したように、図1に示すようなガラスブランク1を得た後に、これを変形容易な温度まで再度加熱した状態で、平坦な一対の基板で押圧して、外力によって平坦な形態になるように変形させる方式や、プレス成形直後の軟化状態のガラス(形状としては、図1に例示する本実施形態のガラスブランク1と同形状のガラス)を平坦な一対の基板で押圧して、外力によって平坦な形態になるように変形させる方式が挙げられる。
【0038】
ここで、反り修正プレスを行う際の、ガラスブランク1の内部の温度としては、ガラス転移温度Tgよりも高い温度であることが好ましい。これにより、ガラスブランク1が適度に変形容易な柔らかさを有するため、ガラスブランク1に外力が加わっても割れやヒビが発生するのをより確実に抑制できる。なお、ガラスブランク1の内部の温度の上限は特に限定されないが、実用上はガラス転移温度Tg+80℃以下とすることが好ましい。これにより、反り修正プレスを実施した後にも、ガラスブランク1が柔らかく変形しやすい状態を維持することが困難となるため、反り修正プレス後の再度の変形を抑制できる。反り修正プレスで使用する平坦な基板の温度は、ガラスの割れを防止しつつ、基板にガラスが融着するのを防止する観点から400〜650℃の範囲内とすることが好ましい。
【0039】
また、(2)の上下面均熱冷却は、プレス成形後に、上面から上型が離間した直後の略板状となった軟化状態のガラスの上面に、近接または接触するように下型と同程度の温度に加熱された平面状の部材を配置した状態で、略板状となった軟化状態のガラスの温度が変形困難な温度(すなわち、ガラス転移温度)以下となるまで冷却することにより行われる。このような冷却を実施すれば、プレス成形後の略板状となった軟化状態のガラスの両面の冷却条件の乖離が抑制され、両面でほぼ均等な熱収縮が起こるため、反りの発生が抑制できる。
【0040】
次に、プレス工程も含めた本実施形態のガラスブランク1の製造方法の典型例について以下に説明する。まず、溶解、清澄、攪拌均一化されたこれらガラス材料からなる溶融ガラスを、流出ノズルから一定の流出速度で連続して排出させ、この溶融ガラス流をシアと呼ばれる切断機によって、常に一定質量の軟化状態のガラス塊が得られるように周期的に切断する。切断された軟化状態のガラス塊は流出ノズル直下で待機している下型のプレス面上に供給(キャスト)される。流出ノズルから排出される溶融ガラスは、軟化した状態であり、その粘度は0.3〜100Pa・s程度である。なお、下型の温度はガラス塊の温度よりも低温ではあるが、ガラス塊の温度が急降下してプレス不能とならない温度に調温される。なお、下型のプレス面には、キャストされる溶融ガラスのプレス面に対する潤滑性を向上させるために、必要に応じて予め窒化ホウ素(BN)粉末などの固体潤滑剤を付着させておいてもよい。
【0041】
上記キャストが終わって軟化状態のガラスをそのプレス面上に載置した下型は、上型が待機しているプレス位置に移送されて、上型及び下型によりプレス成形される。この際の上型および下型の温度、プレス圧力、プレス時間は、ガラス転移温度等のガラスの熱物性や、作製するガラスブランクの直径・厚み等を考慮して適宜設定する。たとえば、上型の温度を250〜550℃、下型の温度を350〜650℃に設定することができる。プレス時の加圧力については数GPa程度を目安にできるが、特にこの範囲に限定されるものではなく、適宜調整することができる。
【0042】
プレス成形を終えると、成形品上面が上型から離型され、成形品を載置した下型は成形品を下型から取出す位置(テイクアウト位置)に移送される。なお、プレス位置とテイクアウト位置との間で下型を停留させて、下型上の成形品の上面を押し型で押圧し、成形品の反りを修正する反り修正プレスを実施してからテイクアウト位置に下型ごとを移送してもよい。あるいは、プレス位置からテイクアウト位置へと下型が移送される間に、下型上に載置された成形品の上面に近接または接触するように、下型と同程度の温度に加熱され、かつ、成形品の上面全体を覆う平板状の部材を配置することで、ガラスの温度履歴を調整してもよい。
【0043】
また、成形品は除歪するためにアニール炉に入れられてアニールされる。そして、このような一連の工程を経ることで本実施形態のガラスブランクを得ることができる。また、必要に応じて、アニール後のガラスブランクに対して反り修正プレスを実施してもよい。
【0044】
−ガラス組成−
本実施形態のガラスブランク1のガラス組成としては、これを用いて作製される基板や情報記録媒体に応じて適宜選択できるが、たとえば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラスなどを挙げることができる。また、これらのガラスは加熱処理により結晶化する結晶化ガラスであってもよい。
【0045】
なお、アルミノシリケートガラスとしては、SiOが58質量%以上75質量%以下、Alが5質量%以上23質量%以下、LiOが2質量%以上10質量%以下、NaOが5質量%以上18質量%以下を主成分として含有するアルミノシリケートガラス(ただし、リン酸化物を含まないアルミノシリケートガラス)を用いてよい。たとえば、SiOが62質量%以上75質量%以下、Alが5質量%以上20質量%以下、LiOが2質量%以上8質量%以下、NaOが6質量%以上15質量%以下、ZrOが0質量%以上8質量%以下を主成分として含有するアモルファスのアルミノシリケートガラスとしてよい。
【0046】
(情報記録媒体用基板製造方法)
次に、本実施形態のガラスブランク1を用いて、情報記録媒体用基板(以下、単に「基板」と略す場合がある)を製造する場合について説明する。この場合、本実施形態のガラスブランク1をラップ定盤で挟持した状態でラッピングするラッピング工程を少なくとも経て、情報記録媒体用基板を製造することができる。また、ガラスブランク1を構成するガラスが熱処理により結晶化可能なガラス組成を有する場合は、上記工程の他に、略板状ガラスを加熱することにより結晶化させる結晶化工程を組み合わせることもできる。なお、情報記録媒体用基板の製造の一典型例としては、たとえば、(1)ラッピング工程、(2)穴あけ工程および端面加工工程、(3)主表面研磨工程、(4)化学強化工程を実施することができる。なお、これらの工程順は入れ替えても良い。
【0047】
(1)ラッピング工程
ラッピング工程では、ガラスブランク1の両主表面をラッピング加工することで、ディスク状のガラス素板を得る。このラッピング加工は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置により、アルミナ系遊離砥粒などを用いて行うことができる。
【0048】
(2)穴あけ工程および端面加工工程
次に、ダイヤモンドドリルを用いて、このガラス基板の中心部に円孔を形成し、ドーナツ状のガラス基板を得る。ガラス基板の外径部および内径部に面取加工および研磨加工を行うことが出来る。
【0049】
(3)主表面研磨工程
主表面に対して、残留したキズや歪みの除去を主たる目的とした研磨工程を実施する。研磨液としては、たとえば、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカを用いることができる。
【0050】
(4)化学強化工程
情報記録媒体用基板の作製に用いる略板状ガラスが、リチウムやナトリウムなどのアルカリ金属を含むガラスからなる場合は、前述のラッピング工程および研磨工程を終えたガラス基板に、化学強化を施すのが好ましい。化学強化工程を行うことにより、情報記録媒体用基板の表層部に高い圧縮応力を生じさせることができる。このため、情報記録媒体用基板の表面の耐衝撃性を向上させることができる。
【0051】
化学強化は、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムを混合した化学強化溶液にガラスを浸漬することによって行う。これによりガラス基板の表層のリチウムイオンおよびナトリウムイオンが、化学強化溶液中のナトリウムイオンおよびカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。
【0052】
これらの一連の工程については、この順番でなくても良い。これらを経て作製された情報記録媒体の表面粗さは、Raでサブナノメーターのオーダーとすることができる。なお、表面粗さは、条件を選択することにより適宜調整することができる。なお、以上の工程を経て得られた情報記録媒体用基板は、公知の磁気記録、光記録、光磁気記録等の公知の各種記録方式を採用した情報記録媒体の作製に用いることができるが、特に磁気記録媒体の作製に用いることが好適である。
【0053】
(情報記録媒体製造方法)
このようにして得られた情報記録媒体用基板の主表面上に、情報記録層を形成する情報記録層形成工程を少なくとも経ることで、情報記録媒体を製造することができる。なお、磁気記録媒体を作製する場合は、情報記録層として磁気記録層が設けられる。この磁気記録媒体は、水平磁気記録方式および垂直磁気記録方式のいずれであってもよいが、垂直磁気記録方式であることが好ましい。垂直磁気記録方式の磁気記録媒体を作製する場合は、たとえば、情報記録媒体用基板の両面に、Cr合金からなる付着層、FeCoCrB合金からなる軟磁性層、Ruからなる下地層、CoCrPt−TiO合金からなる垂直磁気記録層、水素化炭素からなる保護層、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を、この順に順次成膜することができる。なお、付着層、軟磁性層、下地層、垂直磁気記録層は、スパッタリング法により成膜することができ、保護層は、スパッタリング法やCVD法(Chemical Vapor Deposition法)により成膜することができ、潤滑層は浸漬塗布法により成膜することができる。また、付着層から保護層までの成膜は、各層の連続成膜が可能なインライン型または枚葉型のスパッタリング装置を用いることができ、潤滑層の成膜は浸漬塗布装置を用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下に本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0055】
(プレス成型装置)
各実施例および各比較例のガラスブランクの作製においては、外周縁に沿って等間隔に複数個の下型が配置され、プレスに際しては、一方向にインデックス回転する回転テーブルを備えたプレス装置を用いた。このプレス装置では、回転テーブルのインデックス回転する方向に沿って、下型が停留する所定の位置に、(1)溶融ガラスを下型プレス面上に供給する位置P(cast)、(2)下型プレス面上に供給された溶融ガラス(ガラスゴブ)をこの下型プレス面の上方に配した上型と当該下型とを用いてプレスする位置P(press)、(3)位置P(press)で成形されたガラスブランクをその上面から、上型とは別物品である反り修正プレス型を用いて、プレス(反り修正プレス)する位置P(press#2)、(4)成形したガラスブランクを下型プレス面から取り出す位置P(take−out)が割り当てられている。
【0056】
このプレス装置は、下型を16個備え、各々の下型が停止する位置が回転テーブルの外縁部であってその周方向に等間隔に設けられている。ここで、下型が停止する位置を、回転方向に1番〜16番の番号を付し、位置P(cast)を1番目とすると、位置P(press)は3番目、位置P(press#2)は4番目、位置P(take−out)は12番目である。
【0057】
下型および上型としては、プレス面が円形状の中央部と、この中央部の周縁部に中央部に対して凹みを成すように設けられた外縁部とから構成される成形型(外縁凹タイプの成形型)、または、プレス面が平坦面のみからなる成形型(全面フラットタイプの成形型)を用いた。そして、各実施例および各比較例のガラスブランクの作製に際しては、作製するガラスブランクの形状に応じて、上型や下型として利用する成形型として、外縁凹タイプの成形型または全面フラットタイプの成形型を選択した。また、外縁凹タイプの成形型を用いた場合は、作製するガラスブランクの形状に応じて、中央部の直径や、周縁部と中央部との段差を変えた成形型を適宜利用した。
【0058】
また、反り修正プレスに用いた反り修正プレス型のプレス面の直径については、図1に示すガラスブランク1や図4に示すガラスブランク100のように、上面U側に凸部12U、112Uが設けられるガラスブランクを製造する場合は、凸部12U、112Uが設けられていない薄肉部分(図1中に示すRPで示される領域を意味)のみをプレスできるものを用いた。なお、この場合、マージン(図1中の記号Mで示される長さ)が1.5mmとなるようにプレス面の直径を選択した。一方、図1や図4において、上面U側に凸部12U、112Uが設けられないガラスブランクを製造する場合は、上面全面がプレスできるように反り修正プレス型のプレス面の直径を選択した。
【0059】
(実施例1)
−ダイレクトプレス−
アルミノシリケートガラスを溶融した溶融ガラスを、下型のプレス面上に供給した後、上型と下型とによりプレスすることにより図1に示す断面形状を有するガラスブランク1を得た。このガラスブランク1の薄肉部10の厚みtと直径dの比、すなわちアスペクト比(t/d)や、凸部12Uの幅W2、高さ、凸部12Dの幅W2、高さは、W1/W2は、表1に示す通りである。また、直径dは66.0mmであり、これは他の実施例および比較例で作製したガラスブランクでも同様である。
【0060】
実施例1においてダイレクトプレス法によりガラスブランク1を作製する際には、各工程を以下の手順で実施した。すなわち、P(cast)にて下型上に溶融ガラスを供給し、下型停止位置P(press)にてプレスを行い、下型停止位置P(press#2)において、上方に配した反り修正プレス型で下型プレス面上のガラスブランク上面を反り修正プレスし、下型停止位置P(press#2)からP(take−out)へと下型が移動する過程で、下型上に積置した状態で略板状となったガラスを自然放冷し、下型停止位置P(take−out)にて冷却された略板状となったガラスブランクを取り出し、下型停止位置P(take−out)から再び下型停止位置P(cast)へと下型が循環移送される。なお、取り出されたガラスブランクは徐冷炉に入れ、常温まで冷却した。
【0061】
ここで、主要な製造条件は以下の通りである。
・ガラス転移温度Tg:485℃
・ガラスの平均線膨張係数:95×10−7/K(100〜300℃)、98×10−7/K(300〜Tg℃)、37×10−6/K(Tg〜530℃)
・溶融ガラスを下型のプレス面上に供給する際のプレス面の温度:500℃
・プレス時の上型プレス面の温度:450℃
・下型上に投入される溶融ガラスの粘度:40Pa・s
・プレス時間(ガラスに圧力を加える時間):1秒
・反り修正プレス時間:1秒
・上型および下型のプレス面を構成する材料:鋳鉄(コーティング処理無し)
・下型からガラスブランク1をテイクアウトする際のガラスブランク1の温度:520℃
【0062】
−情報記録媒体用基板の作製−
以上のプロセスを経て得られたガラスブランク1については、(1)ラッピング工程、(2)穴あけ工程および端面加工工程、(3)主表面研磨工程および(4)化学強化工程を実施し、その後、洗浄して情報記録媒体用基板(外径:65.0mm、厚み:0.635mm、中心穴内径:20.0mm)を得た。得られた情報記録媒体用基板については、凹跡、平面度について評価すると共に、ラッピング加工に要した時間を元に、加工容易性についても評価した。
【0063】
(実施例2〜11)
ガラスブランク1の作製に際して、凸部12D、12Uの形状が表1に示すものとなるように、使用する成形型を適宜変更した以外は、実施例1と同様にしてダイレクトプレスを行った。また、得られたガラスブランク1を用いて情報記録媒体用基板を作製する際の条件も実施例1と同様とし、情報記録媒体用基板を得た。
【0064】
(比較例1)
図4に示すガラスブランク100を作製した。ガラスブランク100の作製に際して、凸部112D、112Uの形状が表2に示すものとなるように、使用する成形型を適宜変更した以外は、実施例1と同様にしてダイレクトプレスを行った。また、得られたガラスブランク100を用いて情報記録媒体用基板を作製する際の条件も実施例1と同様とし、情報記録媒体用基板を得た。
【0065】
(比較例2)
上下両面に図1や図4に例示するような凸部が無く、両面が平坦面からなるガラスブランクを作製した。このガラスブランクの作製に際しては、使用する成形型を適宜変更した以外は、実施例1と同様にしてダイレクトプレスを行った。また、得られたガラスブランク100を用いて情報記録媒体用基板を作製する際の条件も実施例1と同様とし、情報記録媒体用基板を得た。
【0066】
(比較例3,4)
図4において下面に凸部112Uが無いガラスブランクを作製した。このガラスブランクの作製に際しては、凸部112Dの形状が表2に示すものとなるように、使用する成形型を適宜変更した以外は、実施例1と同様にしてダイレクトプレスを行った。また、得られたガラスブランク100を用いて情報記録媒体用基板を作製する際の条件も実施例1と同様とし、情報記録媒体用基板を得た。
【0067】
(比較例5,6)
図4において上面に凸部112Dが無いガラスブランクを作製した。このガラスブランクの作製に際しては、凸部112Uの形状が表2に示すものとなるように、使用する成形型を適宜変更した以外は、実施例1と同様にしてダイレクトプレスを行った。また、得られたガラスブランク100を用いて情報記録媒体用基板を作製する際の条件も実施例1と同様とし、情報記録媒体用基板を得た。
【0068】
(評価)
各実施例および比較例で得られた情報記録媒体用基板について、凹跡および平面度の評価を行った。また、ラッピング加工時の加工容易性についても評価した。結果を以下の表1および表2に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
なお、表1および表2中、凹跡および平面度の評価方法および評価基準は以下の通りである。
−凹跡−
情報記録媒体用基板表面の凹跡は、1000枚のサンプルについて暗室環境下にて、目視検査用光源(オリンパス社製 長寿命ハロゲン光源装置 ILK−7C)の光を基板の表面に照射して、基板の外周端に沿ってリング状の凹跡が観察されるか否かや、その程度を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:1000枚中、凹跡は1枚も観察されない。
○:1000枚中、凹跡が1枚以上5枚未満の範囲で観察される。
△:1000枚中、凹跡が5枚以上20枚未満の範囲で観察される。
×:1000枚中、凹跡が20枚以上観察される。
【0072】
−平面度−
10枚のサンプルにて、凸部を除いた部分の平面度を測定しその平均値を求めた。なお、平面度は、XYステージに載せたサンプルを移動させながら、レーザーフォーカス式変位計で1mmピッチに変位を測定して求めた。そしてこの測定値の傾き補正した後に得られた変位の最大値と最小値との差をサンプル毎に求め、この値の平均値を平面度とした。評価基準は以下の通りである。
◎:4μm未満
○:4μm以上10μm未満
△:10μm以上20μm未満
×:20μm以上
【0073】
−加工容易性(加工時間)−
ラッピング加工に要した時間を、実施例1でのラッピング加工時間を基準に相対評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:加工時間が実施例1に対して+5%未満
○:加工時間が実施例1に対して+5%以上+10%未満
△:加工時間が実施例1に対して+10%以上+15%未満
×:加工時間が実施例1に対して+15%以上
【符号の説明】
【0074】
1 ガラスブランク
10 薄肉部
12 厚肉部
12U、12D 凸部
12S 傾斜した面
14C 角部
20 上型
30 下型
22 プレス面
22A 中央部
22B 外縁部
32 プレス面
32A 中央部
32B 外縁部
100、100H、100C ガラスブランク
102 情報記録媒体用基板
110 薄肉部
112 厚肉部
112U、112D 凸部
114C 角部
114P、114Q 凹跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の薄肉部と、
該薄肉部の周縁部に沿って、上記薄肉部の両面に対して凸部を形成するように設けられた厚肉部と、を有し、
上記薄肉部の直径方向に対する、一方の面側の上記凸部の径方向の幅が、他方の面側の上記凸部の径方向の幅よりも大きいことを特徴とするガラスブランク。
【請求項2】
鉛直方向に対して相対的に移動可能に配置された一対の成形型として、
プレス成形時に軟化状態のガラスと接触し、円形状の中央部、および、当該中央部の周縁側に上記中央部に対して凹みを成すように設けられた外縁部を有するプレス面を備えた第一の成形型と、
プレス成形時に軟化状態のガラスと接触し、上記第一の成形型の中央部よりも直径の小さい円形状の中央部、および、当該中央部の周縁側に当該中央部に対して凹みを成すように設けられた外縁部を有するプレス面を備えた第二の成形型とを用い、
鉛直方向下方側に配置される成形型を上記第一の成形型とし、鉛直方向上方側に配置される成形型を上記第二の成形型として、
軟化状態のガラス塊を、上記第一の成形型のプレス面上に配置した後に、上記第一の成形型のプレス面と第二の成形型のプレス面とにより、上記ガラス塊を、上記第一の成形型プレス面の外縁部にまで到達するようにプレスする第一のプレス工程、および、
鉛直方向下方側に配置される成形型を上記第二の成形型とし、鉛直方向上方側に配置される成形型を上記第一の成形型として、
軟化状態のガラス塊を、上記第二の成形型のプレス面上に配置した後に、上記第一の成形型のプレス面と第二の成形型のプレス面とにより、上記ガラス塊を、上記第一の成形型プレス面の外縁部にまで到達するようにプレスする第二のプレス工程、から選択されるいずれか一方のプレス工程を少なくとも経て、
ガラスブランクを製造することを特徴とするガラスブランク製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のガラスブランク製造方法において、
前記プレス工程を経て、略板状となった軟化状態のガラスに対して、反りの発生を抑制する反り抑制工程を実施することを特徴とするガラスブランク製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のガラスブランク、および、請求項2または3に記載のガラスブランク製造方法により製造されたガラスブランクから選択されるいずれかのガラスブランクの両面を、
研削加工及び/又は研磨加工を行う工程を少なくとも経て、情報記録媒体用基板を製造することを特徴とする情報記録媒体用基板製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の情報記録媒体用基板製造方法により製造された情報記録媒体用基板の主表面上に、情報記録層を形成する情報記録層形成工程を少なくとも経て、情報記録媒体を製造することを特徴とする情報記録媒体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−63474(P2011−63474A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214715(P2009−214715)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】