説明

ガラスペースト組成物、及び、プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】耐シートアタック性、ガラスリブとの密着性及び耐サンドブラスト性に優れ、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができるガラスペースト組成物、及び、該ガラスペースト組成物を用いてなるプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】プラズマディスプレイの製造に用いるガラスペースト組成物であって、メチル(メタ)アクリレートに由来するセグメントと、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと、無水酸反応エステルモノマーに由来するセグメントとを有する(メタ)アクリル共重合体、ガラス微粒子及び高沸点溶剤を含有するガラスペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐シートアタック性、ガラスリブとの密着性及び耐サンドブラスト性に優れ、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができるガラスペースト組成物、及び、該ガラスペースト組成物を用いてなるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPともいう)は、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で電極間にプラズマ放電させ、放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を放電空間内の蛍光体に当てることにより発光を得るものである。
背面ガラス基板にはプラズマから電極を保護する目的で電極上に誘電体層が形成され、更にその表面に蛍光体層を塗工するガラスリブが形成されている。また、蛍光体層の表面積を稼ぐために、ガラスリブは、サンドブラストを用いて凹型ストライプ状に成形されている。背面ガラス基板表面に誘電体層とガラスリブとが形成されたものを背面板という。
【0003】
従来、PDPの生産プロセスでは、特許文献1に開示されているように、背面ガラス基板の表面にエチルセルロース樹脂をバインダーとする誘電体層用ペーストを塗工、乾燥した後、加熱して脱脂・焼成を行うことで誘電体層を形成し、更に誘電体層の表面に、アクリル樹脂やエチルセルロース樹脂等をバインダー樹脂とし、低融点ガラスを分散させ、溶剤を含有させたペーストを塗工し、乾燥後、ドライフィルムレジストをラミネートし、露光させてアルカリ水で現像後、加熱乾燥させ、サンドブラストを用いて凹型ストライプ状に成形した後、リブ上部に残ったレジストフィルムをアルカリ水で洗い流し、加熱して脱脂・焼成を行うことでガラスリブを形成していた。
しかしながら、このようなプロセスでは、ガラスリブとレジストフィルムの密着性が低いため、細いリブを加工するときには、サンドブラスト中にリブ先端からレジストフィルムが剥がれやすく、細いリブ加工することが難しい等の問題があった。
【0004】
そこで、特許文献2には、バインダー樹脂として、アクリル樹脂及びエチルセルロース樹脂を含有するガラスペースト組成物を用い、スクリーン印刷を複数回繰り返すことでリブ形状を作製する方法が開示されている。しかしながら、このような方法では、壁面が切り立って幅が狭く高さの高い、高アスペクト比の隔壁を有する背面板を形成することは困難であった。
【0005】
結局、現状では、特許文献3に示すような耐サンドブラスト性を有するレジスト材料を用い、サンドブラスト法によって切削を行うことで背面板を作製する方法が広く行われている。しかしながら、この方法では、先にも述べたレジスト材料(DFR)の露光、現像、除去、乾燥といった工程が必要となり、背面板製造効率が非常に悪いという問題があった。また、ガラスリブとレジスト材料との密着性が悪く、歩留まりが低くなっていた。更に、レジストを除去する工程として、燃焼工程やアルカリ洗浄工程等が必要となり、結果的に背面板の製造単価の上昇や、製造効率の低下を招いていた。
従って、PDPを製造する際のレジスト材料として用いた場合に、耐シートアタック性や耐サンドブラスト性に優れ、ガラスリブとの密着性が高く、かつ、PDPの製造工程を効率化することが可能なガラスペーストが必要とされていた。
【特許文献1】特開平11−349348号公報
【特許文献2】特開平11−92171号公報
【特許文献3】特開2004−126073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、耐シートアタック性、ガラスリブとの密着性及び耐サンドブラスト性に優れ、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができるガラスペースト組成物、及び、該ガラスペースト組成物を用いてなるプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プラズマディスプレイの製造に用いるガラスペースト組成物であって、メチル(メタ)アクリレートに由来するセグメントと、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと、無水酸反応エステルモノマーに由来するセグメントを有する(メタ)アクリル共重合体、ガラス微粒子及び高沸点溶剤を含有するガラスペースト組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、メチル(メタ)アクリレートに由来するセグメントと、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと、無水酸反応エステルモノマーに由来するセグメントとを有する(メタ)アクリル共重合体と、高沸点溶剤とを有するガラスペースト組成物をレジスト材料として用いた場合、シートアタックを生じさせることがなく、ガラスリブとの密着性及び耐サンドブラスト性を改善することが可能となることを見出した。
また、このようなガラスペースト組成物をレジスト材料として用いることで、レジストを露光・現像してパターンを形成する工程やレジストを剥離する工程を行うことなく、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明において(メタ)アクリルモノマーは、アクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーの何れであってもよい。
本発明のガラスペースト組成物は、メチル(メタ)アクリレートに由来するセグメントと、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと、無水酸反応エステルモノマーに由来するセグメントとを有する(メタ)アクリル共重合体を含有する。
【0010】
上記(メタ)アクリル共重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントを有する。このようなセグメントを有することで、水酸基密度が高められ、ガラス微粒子の表面との間で強い相互作用を発揮し、溶剤乾燥後、強度の高い被膜を形成することができる。これにより、耐サンドブラスト性を大幅に改善して、より精細な形状のガラスリブを形成することができる。また、ガラスリブとの密着性及び耐シートアタック性にも優れるものとなる。
【0011】
上記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート、グリセロールモノアクリレート等が挙げられる。なかでも、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートを用いることが好ましい。
【0012】
上記(メタ)アクリル共重合体中の上記水酸基含有メタアクリルモノマーの含有量の好ましい下限は65重量%、好ましい上限は90重量%である。65重量%未満であると、得られる皮膜の強度が不充分となることがあり、90重量%を超えると、溶剤の選択範囲が狭くなり、プロセス適性が満たされない場合がある。
【0013】
上記(メタ)アクリル共重合体は、無水酸反応エステルモノマーに由来するセグメントを有する。上記無水酸反応エステルモノマーに由来するセグメントは、カルボキシル基を有することでガラスとの相互作用性を飛躍的に高めることが可能となり、本発明のガラスペースト組成物を塗布、乾燥させた後の乾燥膜強度が飛躍的に高まり、耐サンドブラスト性が向上する。
一方、カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸やメタクリル酸等も考えられるが、これらを上記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと併用して共重合体とした場合、極性が高くなりすぎ、溶剤との相互作用が強くなるため、ゲル化等の問題が発生しやすくなったり、共重合体の焼結性が極端に悪くなったりする。従って、アクリル酸やメタクリル酸等を用いる場合は、その組成比をあまり高めることができないが、上記無水酸反応エステルモノマーを用いる場合は、ガラスとの相互作用性が高められ、ゲル化の問題や焼結性の悪化を招きにくく、その組成比を高めることができる。
なお、上記無水酸反応エステルモノマーとは、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに無水酸をエステル反応させることにより得られるモノマーのことをいう。
【0014】
上記(メタ)アクリル共重合体は、メチル(メタ)クリレートに由来するセグメントを有する。これにより、焼成時に分解の起点となって熱分解性を良好にさせることができる。また、水酸基含有モノマーに少量添加することで、樹脂のガラス微粒子への密着力が高まり、耐サンドブラスト性が良好となる。
【0015】
上記(メタ)アクリル共重合体中の上記メチル(メタ)アクリレートに由来するセグメントの含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は30重量%である。1重量%未満であると、低温分解性や耐サンドブラスト性といった効果が充分に発揮されず、30重量%を超えると、耐サンドブラスト性が低下することがある。より好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は15重量%である。
【0016】
上記(メタ)アクリル共重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー及びメチルメタクリレート以外の共重合可能な(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントを有していてもよい。
上記共重合可能な(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、グリシジルメタアクリレートやグリシジルアクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、メチルアクリレートやエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでも、炭素数が10以下の(メタ)アクリルモノマーが好ましく、分解性に優れる(メタ)アクリルモノマーがより好ましい。
【0017】
上記(メタ)アクリル共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算による重量平均分子量としては、上記(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度に依存するが、好ましい下限は5000、好ましい上限は20万である。5000未満であると、本発明のガラスペースト組成物に充分な粘度が得られず、20万を超えると、糸曳き性などが悪化し、取り扱い性が極端に悪くなることがある。ガラス転移温度が室温よりも高い(メタ)アクリル共重合体においては、より好ましい上限は10万、更に好ましい上限は5万である。
なお、ポリスチレン換算による重量平均分子量の測定は、カラムとして例えばSHOKO社製カラムLF−804を用いてGPC測定を行うことで得ることができる。
【0018】
本発明のガラス分散ペースト組成物における上記(メタ)アクリル共重合体の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は45重量%である。5重量%未満であると、ガラス微粒子を充分に分散させることができず、得られる被膜の表面性が悪くなる場合があり、45重量%を超えると、熱分解性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0019】
上記(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度の好ましい下限は−50℃、好ましい上限は120℃である。−50℃未満であると、サンドブラスト時に問題が発生することがある。また、塗工できるほどの粘度を得るために大量の樹脂を必要とするため、脱脂・焼成の際に時間がかかる。120℃を超えると、溶剤への溶解性が悪くなることがある。
【0020】
上記(メタ)アクリル共重合体の重合方法としては特に限定されず、通常の(メタ)アクリルモノマーの重合に用いられる方法が挙げられ、例えば、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等が挙げられる。
【0021】
本発明のガラスペースト組成物は、ガラス微粒子を含有する。
上記ガラス粉末の組成としては特に限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラス等の各種ガラスが挙げられる。特に、融点が600℃以下の低融点ガラスであることが好ましい。
【0022】
また、上記ガラス微粒子に対して、ガラス以外の無機微粒子を併用してもよい。無機微粒子としては特に限定されず、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y、Gd)BO:Eu等の蛍光体、カーボンブラック、金属錯体等が挙げられる。
【0023】
本発明のガラスペースト組成物における上記ガラス微粒子及び無機微粒子の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限が10重量%、好ましい上限が80重量%である。10重量%未満であると、粘度が充分に得られないことがあり、ガラス微粒子等に対して樹脂が多いためにサンドブラスト時に悪影響があることがある。80重量%を超えると、ガラスガラス微粒子等を分散させることが困難になることがある。
【0024】
本発明のガラスペースト組成物は、高沸点溶剤を含有する。
上記高沸点溶剤は、沸点が150℃以上、300℃未満であることが好ましい。沸点が150℃未満であると、本発明のガラスペースト組成物を塗工する際に溶剤が揮発してしまうため、粘度が変わり安定した塗工ができないことがあり、300℃以上であると、塗工後、ペースト中の溶剤を乾燥させる段階で多大な時間や熱エネルギーが必要となることがある。より好ましくは280℃以下である。
【0025】
上記高沸点溶剤は、比重が1.0以上、1.35未満である。比重がこの範囲から外れると、シートアタックが生じたり、塗工しにくくなることがある。ここで比重とは、4℃又は20℃における水の密度と20℃又は25℃におけるその溶剤の密度との比を意味する(編者:浅原照三、「溶剤ハンドブック」、講談社、1996年1月20日第14刷)。
【0026】
上記沸点が150℃以上300℃未満、かつ、比重が1.0以上1.35未満の高沸点溶剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコールジアセテート、炭酸プロピレン、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール等のジオール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、サリチル酸メチル、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、2−フェノキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、フェノキシアセテート、フェノキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド等が挙げられる。
なかでも、特にシートアタックを生じにくいことから誘電率が25以上であることが好ましく、誘電率が25以上の溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド等が挙げられる。特に、毒性も低く、200℃以下で乾燥することができるため、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトンが好適である。なお、これらの溶剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
本発明のガラスペースト組成物は、密着促進剤を含有してもよい。
上記密着促進剤としては、特に限定されないが、アミノシラン系シランカップリング剤が好適に用いられる。
上記アミノシラン系シランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
アミノシラン系シランカップリング剤以外にも、グリシジルシラン系シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、その他シランカップリング剤であるジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等も好適に用いることができ、これらを複数用いても良い。
【0028】
本発明のガラスペースト組成物は、塗工後のレベリングを促進させる目的でノニオン系界面活性剤を含有することが好ましい。
【0029】
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されないが、HLB値が10以上20以下のノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ここで、HLB値とは、界面活性剤の親水性、親油性を表す指標として用いられるものであって、計算方法がいくつか提案されており、例えば、エステル系の界面活性剤について、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとし、HLB値を20(1−S/A)等の定義がある。具体的には、脂肪鎖にアルキレンエーテルを付加させたものが好適であり、具体的には例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が好適に用いられる。なお、上記ノニオン系界面活性剤は、熱分解性がよいが、大量に添加するとガラスペースト組成物の熱分解性が低下することがあるため、含有量の好ましい上限は5重量%である。
【0030】
本発明のガラスペースト組成物の製造方法としては特に限定されず、従来公知の攪拌方法が挙げられ、具体的には例えば、上記(メタ)アクリル共重合体と、ガラス微粒子と、高沸点溶剤と、必要に応じて加えた他の成分とを3本ロールミル等で攪拌する方法等が挙げられる。
【0031】
本発明のガラスペースト組成物の応用として、分散させるガラス微粒子の代わりに、セラミック粉末を用いたときのセラミックペースト組成物、蛍光体粉末を用いたときの蛍光体ペースト組成物、導電性粉末を用いたときの導電ペースト組成物、ガラス粉末又はセラミックス粉末を用いたときのグリーンシートとして用いることもできる。このような用途で用いることにより、エチルセルロースをバインダー樹脂として用いたグリーンシートと重ね合わせて同時に脱脂・焼成することができる。
すなわち、シートアタックを生じないという特徴を活かし、今まで個別に焼結プロセスが必要であったグリーンシート上に導電ペーストでパターンを描く工程、電極シート上に誘電体ペーストをカバーする工程、リブシート上に蛍光体ペーストをスクリーン印刷する工程等を簡略化することが可能である。
また、未焼結リブ上にインクジェットで蛍光体ペーストを印刷したり、オフセット印刷で電極を印刷した上に誘電体層をスクリーン印刷する等、異なる印刷法を組み合わせるときにも応用することができる。例えば、サンドブラストレジストパターンをフォトリソ工程で描く工程をスクリーン印刷に置き換える等である。
【0032】
また、本発明のガラスペースト組成物は、誘電体層形成用のペーストとしても用いることができる。本発明のガラスペースト組成物は、シートアタックを生じないため、誘電体層形成用ペーストを塗工した後、脱脂・焼成工程を行わず、ガラスリブ層形成工程を行った場合であっても、誘電体層形成用ペーストからなる層(誘電体前駆層)が、ガラスリブ形成用ペーストの溶剤によるシートアタックによって破壊されることがない。また、極めて優れた耐サンドブラスト性を有することから、ガラスリブ形成用ペーストを塗布、乾燥させた後にサンドブラスト処理を行い、切削を行っても、誘電体前駆層が破壊されることがない。これにより、脱脂・焼成工程を複数回行う必要がなく、製造工程を簡略化することが可能となる。
【0033】
本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、ガラスペーストを塗工し、乾燥させることにより、ガラスリブ前駆体層を形成した後、上記ガラスリブ前駆体層上に本発明のガラスペースト組成物を所定のパターンを印刷し、乾燥させる工程、加熱によって硬化させた後、サンドブラストにより上記ガラスリブ前駆体に凹型形状を形成させる工程、及び、上記ガラスリブ前駆体を加熱して脱脂・焼成する工程を有する方法である。
【0034】
本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、上述したように従来レジスト材料として用いられるドライフィルムレジスト(DFR)に代えて、本発明のガラスペースト組成物を用いることにより、従来のようにレジストの露光・現像工程を行わなくても、精細なパターン形状のガラスリブを形成できることから、製造工程を大幅に簡略化することができる。また、凹型形状を形成させる工程後に、アルカリ洗浄等のレジスト除去工程を行わなくてもよいため、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができる。また、歩留まりが改善し、より精度が高いプラズマディスプレイパネルを製造することが可能となる。
なお、各工程については、本発明のガラスペースト組成物を用いることと、レジスト除去工程を減らすこと以外は、従来のプラズマディスプレイパネルの製造方法と同様の操作を行うことができる。また、ガラスリブ形成用のガラスペーストとしては、本発明のガラスペースト組成物に含有される溶剤と反応しにくいものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、耐シートアタック性、ガラスリブとの密着性及び耐サンドブラスト性に優れ、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができるガラスペースト組成物、及び、該ガラスペースト組成物を用いてなるプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、メチルメタクリレート(MMA)5重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)65重量部、無水酸反応エステルモノマーとして2−メタクリロイロキシエチルコハク酸(共栄社化学社製、HOMS)30重量部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン、有機溶剤として工業用アルコール100重量部とを混合し、モノマー混合液を得た。
【0038】
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した。重合開始剤をアルコールで希釈した溶液を加えた。また重合中に重合開始剤を含むアルコール溶液を数回添加した。
【0039】
重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、(メタ)アクリル樹脂のアルコール溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は表1のとおりであった。
このようにして得られた(メタ)アクリル樹脂のアルコール溶液に対し、表1に記載した溶剤にて溶剤置換を行い、表1の組成比になるように配合し、高速分散機で分散させてビヒクル組成物を作製した。
【0040】
得られたビヒクル組成物に対して、ノニオン系界面活性剤としてBL−25(日光ケミカル社製)、平均粒子径2.0μmのガラス微粒子(SiO:32.5%、B:20.5%、ZnO:18%、Al:10%、BaO:3.5%、LiO:9%、NaO:6%、SnO:0.5%)を表1に記載した組成比になるよう添加し、ガラス微粒子分散ペーストを得た。次いで、高速撹拌装置を用いて充分混練し、3本ロールミルにてなめらかになるまで処理を行い、ガラスペースト組成物を作製した。
【0041】
(実施例2、5〜7、比較例1〜3)
モノマー混合比を表1のように変更したこと以外は実施例1と同じ方法にてビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。なお、表1のHEAは2−ヒドロキシエチルアクリレートを表す。
【0042】
(実施例3、4)
無水酸反応エステルモノマーとして2−メタクリロイロキシエチルマレイン酸(デグサ社製、HEMAM)を用い、モノマー混合比を表1になる様に変更したこと以外は実施例1と同じ方法にてビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作成した。
【0043】
(比較例4)
モノマー混合比を表1のように変更し、溶剤としてテルピネオールを用いたこと以外は実施例1と同じ方法にてビヒクル組成物及びガラスペースト組成物を作製した。
【0044】
<評価>
実施例及び比較例で得られたビヒクル組成物、及び、ガラスペースト組成物について以下の評価を行った。結果を表1〜表2に示した。
【0045】
(評価用基板の作製)
エチルセルロース(シグマアルドリッチ社製、STD100)をテルピネオール溶液中に溶解させ、樹脂固形分が16%のエチルセルロース含有ビヒクル組成物を作製した。次いで、軟化点が約550℃のガラスフリットとエチルセルロース含有ビヒクル組成物とをガラスフリットが50重量%、エチルセルロース含有ビヒクル組成物が50重量%となるよう混合した後、高速攪拌機で混練し、3本ロールミルを用いて滑らかになるまで処理することで、ガラスペーストを作製した。
得られたガラスペーストをアプリケーターを用い、5ミルの設定で15cm×15cmのソーダガラス基板に塗工し、120℃オーブンにて30分乾燥させ、ガラス層が形成された評価用基板を作成した。
【0046】
(1)耐シートアタック性
評価用基板に実施例及び比較例で作製したビヒクル組成物を、スポイトを用いて1滴塗布し、オーブンにて150℃、60分乾燥させ、溶剤を除去し、加熱することで、乾燥させた。その後、評価用基板のガラス層の状態を顕微鏡を用いて観察し、以下の基準で評価した。
○:ガラス層の亀裂が無く、周辺の緻密な乾燥膜に変化のないもの
×:エチルセルロース樹脂の溶解によりガラス層に亀裂が見られるもの
【0047】
(2)基板密着性
ライン&スペースが30/600μmのスクリーン版を用いて、実施例及び比較例で得られたガラスペースト組成物を、評価用基板上に印刷した。オーブンにて150℃、60分乾燥させ溶剤を除去し、加熱することで、乾燥させることで30μm幅の印刷像を有するサンプルを得た。
得られたサンプルをNaCOの5重量%溶液に5分間浸漬し、取り出した後、オーブンにて120℃、30分間乾燥させ、硬化させた印刷像の剥がれ状態を観察した。
【0048】
(3)耐サンドブラスト性
サンドブラストによる削れにくさを定量的に評価するため以下に示す評価法を行った。
スライドグラス上の中央に直径300μmの真鍮線をセロハンテープにて両端を評価用基板から浮きの無い様固定し、実施例及び比較例で得られたガラスペースト組成物を、6ミルの設定で塗工し、オーブンにて150℃、60分間乾燥させ溶剤を除去し、加熱することで、乾燥させ、真鍮線を埋め込んだ硬化ガラス粉膜を得た。
その後、引張試験機にて真鍮の剥離角度を90°になるスライドジグを用いて真鍮線を引張速度200mm/分で剥離する試験を行い、溝を形成する際に必要な抵抗値を定量し以下の基準で評価した。
○:剥離試験力が0.8N以上
×:剥離試験力が0.8N未満
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表2に示すように、実施例で得られたビヒクル組成物、ガラスペースト組成物においては、何れも良好な結果が得られた。
一方、無水酸反応エステルモノマーを用いなかった比較例1、メチルメタクリレートを用いなかった比較例2、及び、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを用いなかった比較例3は、何れも基板密着性及び耐サンドブラスト性が悪く、比較例4は塗布時にガラス層を破壊してしまうためにレジスト材料としては適さないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、耐シートアタック性、ガラスリブとの密着性及び耐サンドブラスト性に優れ、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができるガラスペースト組成物、及び、該ガラスペースト組成物を用いてなるプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイの製造に用いるガラスペースト組成物であって、
メチル(メタ)アクリレートに由来するセグメントと、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと、無水酸反応エステルモノマーに由来するセグメントとを有する(メタ)アクリル共重合体、ガラス微粒子及び高沸点溶剤を含有する
ことを特徴とするガラスペースト組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル共重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントを65〜90重量%、無水酸反応エステルモノマーに由来するセグメントを5〜30重量%含有することを特徴とする請求項1記載のガラスペースト組成物。
【請求項3】
無水酸反応エステルモノマーは、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、又は、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸であることを特徴とする請求項1又は2記載のガラスペースト組成物。
【請求項4】
高沸点溶剤は、比重が1.0以上1.35未満であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のガラスペースト組成物。
【請求項5】
高沸点溶剤は、誘電率が25以上であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のガラスペースト組成物。
【請求項6】
ガラスペーストを塗工し、乾燥させることにより、ガラスリブ前駆体層を形成した後、前記ガラスリブ前駆体層上に請求項1、2、3、4又は5記載のガラスペースト組成物を所定のパターンを印刷する工程、
加熱によって乾燥させた後、サンドブラストにより前記ガラスリブ前駆体に凹型形状を形成させる工程、及び、
前記ガラスリブ前駆体を加熱して脱脂・焼成する工程
を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【公開番号】特開2009−108203(P2009−108203A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282287(P2007−282287)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】