説明

ガラス基板、太陽電池、有機EL素子及びガラス基板の製造方法

【課題】太陽電池や発光素子等の光学素子において、光の利用効率を改善することができるガラス基板及びガラス基板の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一面の長手方向に、突条と条溝との周期的な繰り返し構造を有するガラス基板であって、波長300nm〜800nmのヘイズ率が30%以上であることを特徴とするガラス基板。ガラス母材の少なくとも一面に、突条と条溝との周期的な繰り返し構造を形成し、次に、前記ガラス母材を加熱して前記突条及び前記条溝の長さ方向に延伸する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板、太陽電池、有機EL素子及びガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池基板や発光体、ディスプレイ用の基板においては、ガラス基板の表面に、光の波長と同等のサイズの周期的な凹凸構造(テクスチャ構造)を形成する粗面処理を行うことが行われている。太陽電池用基板においては、凹凸構造により入射光が散乱し、光の利用効率が高まる。また、発光体やディスプレイにおいては、有機EL素子等の発光素子から放出される光が凹凸構造により散乱され、外部へ放出される効率が高まる。
【0003】
基板を粗面処理する方法としては、サンドブラストによる方法、粗研磨による方法、ダイシングによる方法、化学的エッチングによる方法等がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−506330号公報
【特許文献2】特許第4049329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、凹凸構造のピッチを光の波長程度にすることで、より光の利用効率が高くなる。しかしながら、上記の粗面処理方法では、局所表面を見た場合には表面粗さが大きくなる。その結果、太陽電池用基板としては、半導体薄膜のカバレッジ不足により、変換効率が低下するという問題がある。また、電極パターニングにおいてレーザー光を用いる場合には、レーザー光が散乱されて電極が断線・ショートするおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、太陽電池や発光素子等の光学素子において、光の利用効率を改善することができるガラス基板やこれを用いた太陽電池や有機EL素子、及びガラス基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、少なくとも一面の長手方向に、突条と条溝との周期的な繰り返し構造を有するガラス基板であって、波長300nm〜800nmのヘイズ率が30%以上であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、少なくとも一面の長手方向に、突条と条溝との周期的な繰り返し構造を有するガラス基板であって、前記突条と条溝とのピッチが200nm〜10μm、前記突条の頂部と前記条溝の底部との段差が2μm以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のガラス基板であって、観察領域1μm以下において、前記突条の頂部と前記条溝の底部との間の算術平均粗さ(Ra)は、2nm以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス基板であって、前記ガラス基板は厚さが0.3mm以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板を用いたことを特徴とする太陽電池である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板を、基板または封止材に用いたことを特徴とする有機EL素子である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板を製造する製造方法であって、ガラス母材の少なくとも一面に、突条と条溝との周期的な繰り返し構造を形成し、次に、前記ガラス母材を加熱して前記突条及び前記条溝の長さ方向に延伸することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガラス基板の凹凸形状により入射光を散乱させることができ、光の利用効率が高まる。また、発光素子から放出される光が凹凸構造により散乱されるため、外部へ放出される効率が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ガラス母材の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】図1の拡大写真である。
【図3】延伸後のガラス基板の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】延伸後のガラス基板の30μm×30μmの範囲を示す原子間力顕微鏡(AFM)による観察像である。
【図6】延伸後のガラス基板の500nm×500nmの範囲を示す原子間力顕微鏡(AFM)による観察像である。
【図7】延伸後のガラス基板の100nm×100nmの範囲を示す原子間力顕微鏡(AFM)による観察像である。
【図8】延伸後のガラス基板の30μm×30μmの範囲を原子間力顕微鏡(AFM)により構成した3次元画像である。
【図9】本発明に係るガラス基板11を用いた太陽電池10を示す図である。
【図10】全光線透過率を示すグラフである。
【図11】散乱光線透過率を示すグラフである。
【図12】ヘイズ率を示すグラフである。
【図13】本発明に係るガラス基板21を用いたボトムエミッション構造の有機EL素子20Aを示す断面図である。
【図14】図13のXIV部の拡大図である。
【図15】本発明に係るガラス基板21を用いたトップエミッション構造の有機EL素子20Bを示す断面図である。
【図16】図15のXVI部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る延伸前のガラス母材には、石英ガラスやホウ珪酸ガラス等を用いることができる。
ガラス母材に突条と条溝との周期的な繰り返し構造(凹凸形状)を形成するには、例えば、ガラス表面の突条となる部分にマスキングを施し、次いでサンドブラストをガラス表面に対して行うことにより、マスキングを施さなかった部分に条溝を形成する方法がある。あるいは、粗研磨、ダイシング等の機械的加工による方法、ウェットエッチング、ドライエッチング等の化学的加工による方法等を用いてもよい。
【0017】
上記の凹凸形状を形成したガラス母材に対し、形成された突条及び条溝の長さ方向に延伸を行うことで、本発明に係るガラス基板が製造される。延伸の温度はガラス母材の材質により適宜変更され、軟化点〜軟化点よりも500℃高い温度の範囲内に設定して行う。軟化点〜軟化点よりも200℃高い温度の範囲内に設定して行うことが好ましく、軟化点〜軟化点よりも100℃高い温度の範囲内に設定して行うことがより好ましい。
【0018】
例えば、ガラス母材が石英ガラスの場合には、軟化点が1580℃程度であるので、約1680℃程度にて延伸を行うことが好ましい。あるいは、ガラス母材がホウ珪酸ガラスの場合には、軟化点が約815℃であるので、約915℃にて延伸を行うことが好ましい。
より軟化点に近い温度で延伸を行うことで、ガラス母材の凹凸形状を製造されるガラス基板に相似形状で残すことができる。
【0019】
このように製造したガラス基板では、ガラス母材に凹凸形状を形成した後、延伸を行うので、ガラス母材の形状を縮小した形状のガラス基板が形成される。このため、ガラス基板の表面粗さがガラス母材よりも小さくなる。また、リドロー法を用いて連続的に製造することができるので、ガラス基板を安価に製造することができる。
ガラス基板は、厚さが0.3mm以下であることが好ましい。厚さが0.3mm以下であれば、柔軟性があるので大きく変形させることができる(フレキシブル性)。
【0020】
製造されるガラス基板の凹凸形状は、突条と条溝とのピッチが200nm〜10μmであり、突条の頂部と条溝の底部との段差が2μm以下であることが好ましい。ピッチが200nm〜10μmで段差が2μm以下であると、太陽電池用基板においては、ガラス基板の凹凸形状により入射光を散乱させることができ、光の利用効率が高まる。また、発光体やディスプレイにおいては、有機EL素子等の発光素子から放出される光が凹凸構造により散乱され、外部へ放出される効率が高まる。
【0021】
製造されるガラス基板は、観察領域1μm以下において、Ra(算術平均粗さ:JIS B0601−1994)が2nm以下であることが好ましい。Raが2nm以下であると、太陽電池用基板として用いる場合に、半導体薄膜のカバレッジが良好となり、変換効率が向上する。また、電極パターニングにおいてレーザー光を用いる場合にも、レーザー光の散乱を抑制することができる。また、有機EL素子用基板として用いる場合には、電流のリークやショート、ダークスポットの発生を防止することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明する。
【実施例1】
【0022】
テンパックスフロート(ショットAG社登録商標)ガラスからなるガラス母材(幅75mm、長さ525mm、厚さ1.5mm)に対し、サンドブラストにより一方の面に幅30μmピッチ、深さ2.5μmの凹凸形状を形成した。その後、炉温915℃、線速1m/minで延伸を行った。延伸時の引き落とし率は1/5で、延伸後のガラス基板の幅は15mm、厚さは0.3mmであった。尚、引き落とし率を変えることで、基板厚さや基板表面に形成される凹凸形状のピッチを任意に変えることができるが、基板厚さを0.3mm以下とすればフレキシブルなガラス基板とすることができる。凹凸形状のピッチは可視光の波長に相当する400nm〜800nmが好ましいが、200nm〜10μmでも光の利用効率を高めることができる。
次に、基板表面に形成された凹凸形状のピッチをSEMで計測した。また、延伸後のガラス基板に形成された凹凸形状の深さ、及び表面粗さをAFMで計測した。
【0023】
図1はガラス母材のSEM写真であり、図2は図1の拡大写真である。図1、図2に示すように、ガラス母材に凹凸形状が形成されていることがわかる。
図3は延伸後のガラス基板の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、図4は図3の一部拡大図である。図3、図4に示すように、延伸後のガラス基板においても、ガラス母材に形成された凹凸形状が縮小された状態で保持されていることがわかる。本実施例においては、突条と条溝との周期構造のピッチが6.4μm、突条の頂部と前記条溝の底部との段差が0.5μmの凹凸形状が形成された。
【0024】
図5〜図7は延伸後のガラス基板の原子間力顕微鏡(AFM)による観察像であり、図8は延伸後のガラス基板の原子間力顕微鏡(AFM)により構成した3次元画像である。なお、図5、図8では30μm×30μmの範囲を示しており、図6では500nm×500nmの範囲、図7では100nm×100nmの範囲を示している。
各領域における表面粗さは、以下の通りであった。
【0025】
図5、図8に示す30μm×30μmの範囲(面積900μm)においては、Ra(算術平均粗さ)が208.675[nm]、Ry(最大高さ:JIS B0601−1994)が1.161[μm]、Rz(十点平均粗さ:JIS B0601−1994)が769.289[nm]、Rms(二乗平均荒さ:JIS B0601−1994)が236.936[nm]、Rp(最大山高さ:JIS B0601−1994)が660.074[nm]、Rv(最大谷深さ:JIS B0601−1994)が500.943[nm]であった。
【0026】
図5のAに示す20μm×20μmの範囲(面積400μm)においては、Raが209.867[nm]、Ryが1.179[μm]、Rzが543.942[nm]、Rmsが239.387[nm]、Rpが652.482[nm]、Rvが528.468[nm]であった。
【0027】
図5のBに示す10μm×10μmの範囲(面積100μm)においては、Raが203.624[nm]、Ryが786.288[nm]、Rzが237.094[nm]、Rmsが237.846[nm]、Rpが303.444[nm]、Rvが482.844[nm]であった。
【0028】
図6に示す500nm×500nmの範囲(面積250000nm)においては、Raが0.778[nm]、Ryが7.659[nm]、Rzが7.386[nm]、Rmsが0.994[nm]、Rpが3.783[nm]、Rvが3.876[nm]であった。
【0029】
図7に示す100nm×100nmの範囲(面積10000nm)においては、Raが0.351[nm]、Ryが3.984[nm]、Rzが3.670[nm]、Rmsが0.455[nm]、Rpが1.901[nm]、Rvが2.083[nm]であった。
【0030】
以上示したとおり、本発明によれば、突条の頂部と条溝の底部との段差が2μm以下であり、1μm×1μmの範囲においてRaが2[nm]以下となるガラス基板を得ることができる。
次に、実施例1のガラス基板、市販の平坦なガラス基板(比較例3)、平坦なガラス基板にテクスチャ構造の透明電極を設けた基板(比較例4)の全光線透過率、散乱光線透過率、ヘイズ率(=散乱光線透過率/全光線透過率×100)を測定した。結果を図10〜12に示す。
実施例1のガラス基板では、比較例3、4よりも全波長において散乱光線透過率が上昇しており、可視光波長領域においてヘイズ率が上昇している。このため、光の利用効率の改善が見込まれる。
【0031】
〔カバレッジ特性の評価〕
実施例1のガラス基板、サンドブラストでテクスチャ構造を作製した基板(比較例1)、粗研磨で作製したテクスチャ構造の基板(比較例2)の表面にプラズマCVDで薄膜シリコン層を成膜し、そのカバレッジ特性を評価した。成膜時の基板温度は200℃、膜厚は50nmであった。その結果、比較例1、2ではミクロ領域における表面粗さが大きいために薄膜シリコン層が基板表面を完全に覆うことができず、一部ガラス基板が露出している部分が見られた。
【0032】
それに対して、実施例1の場合、マクロ領域では表面粗さが大きいものの、ミクロ領域では表面粗さが小さいことから薄膜シリコン層がガラス基板表面を完全に覆うことができていることが確認できた。すなわち、比較例1、2のようにミクロ領域における表面粗さが大きい基板を用いて薄膜太陽電池を作製した場合、素子内にショートパスが発生し光電変換効率が大幅に低下する。しかし、実施例1の場合、ミクロ領域における表面粗さが小さいことから、ごく薄い半導体膜を作製した場合でも基板表面を完全に覆うことができ、その結果基板上に作製した薄膜太陽電池素子の内部にショートパスができないことから光電変換効率の低下が発生しない。
このように、本発明に係るガラス基板の製造方法では、従来の製造方法では成し得なかったミクロ領域の低表面粗さを安価でかつ容易に作製することができる。
【実施例2】
【0033】
〔太陽電池〕
図9は本発明に係るガラス基板11を用いた太陽電池10を示す図である。以下、太陽電池10の作製方法について説明する。
まず、上述した製造方法によって作製したガラス基板11の少なくとも凹凸形状が形成された一方の面に透明電極12を形成する。透明電極12としては一般的なITO(Indium Tin Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)、SnO(Tin Oxide)やそれらにドーパントを添加したものが用いられる。本実施例ではドーパントとしてGaを含むZnOを200nm作製した。
【0034】
次に、作製した透明電極12の上に半導体層13を堆積させる。堆積方法としてはプラズマCVD、熱CVDなど一般的に用いられる方法を適用することができる。また用途に応じて、半導体層13として多結晶シリコン薄膜、微結晶シリコン薄膜、非晶質シリコン薄膜、CIS系化合物半導体薄膜、色素増感型半導体層、有機半導体薄膜などの光電変換機能を有する材料を用いることができる。本実施例ではプラズマCVDにより厚さ合計500nmのp−i−n非晶質シリコン薄膜を形成した。
【0035】
次に、AgやAlなどの薄膜をスパッタリングなどによって成膜し、透明電極12の対電極14として作製する。本実施例では厚さ200nmのAg膜を形成した。また、各層を形成した後にレーザスクライブ法を用いて堆積された各層を選択的に除去し、隣接する構造と隔離するための溝を形成することにより一つの基板の中に集積構造を設け、取り出し電圧を上げることも可能である。以上の工程によって太陽電池10を作製する。
【0036】
本発明に係る実施例1のガラス基板、市販の平坦なガラス基板(比較例3)、平坦なガラス基板にテクスチャ構造の透明電極を設けた基板(比較例4)の3種類の基板を用いて、以上の手順により5mm四方の太陽電池セルを作製し、作製した太陽電池セルの短絡電流値を測定したところ、比較例3の基板を用いたセルでは11.2mA/cm2、比較例4の基板を用いたセルでは12.8mA/cm2、実施例1の基板を用いたセルでは13.7mA/cm2となった。実施例1の基板を用いた太陽電池セルでは、比較例3、比較例4の基板を用いたセルに比べて大きい短絡電流値が得られており、本発明に係るガラス基板では従来のガラス基板に比べて光の利用効率が改善されていることが分かる。
【実施例3】
【0037】
〔有機EL素子〕
図13は本発明に係るガラス基板21を用いたボトムエミッション構造の有機EL素子20Aを示す断面図であり、図14は図13のXIV部の拡大図である。以下、有機EL素子20Aの作製方法について説明する。まず、上述した製造方法によって作製したガラス基板21の凹凸形状が形成された側とは反対の平坦な面に透明電極22を形成する。透明電極22としては一般的なITO(Indium Tin Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)、SnO(Tin Oxide)やそれらにドーパントを添加したものが用いられる。本実施例では、ITOセラミックターゲット(In:SnO=90重量%:10重量%)から、DCスパッタリング法を用いて、厚み150nmのITO透明膜からなる陽極を形成した。その後、中性洗剤、脱イオン水、アセトン、イソプロピルアルコールを用い、順次超音波洗浄を行った後、紫外線オゾン方式で基板洗浄を行った。
【0038】
次に、透明電極22上に、抵抗加熱式真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに配置したN,N'-Di(1-naphthyl)-N,N'-diphenylbenzidine(α−NPD)と、別のモリブデン製加工ボートに配置したTris Aluminum(Alq3)を介して、真空チャンバー内を1×10−4Paの減圧状態として、厚み60nmのα−NPD膜からなる正孔輸送層23を形成した後、その上に厚み65nmのAlq3膜からなる発光層24を形成した。次に、真空チャンバー内を2×10−4Paの減圧状態として真空蒸着により、厚み100nmのAlからなる陰極25を形成して、緑色(主波長513nm)に発光する有機EL素子20Aを作成した。
【0039】
本発明に係る実施例1のガラス基板、市販の平坦なガラス基板(比較例3)を用いて、上記の手順により5mm四方の有機EL素子を作製した。これらの有機EL素子に6Vの電圧を印加した際の正面輝度を測定したところ、比較例3の基板を用いた素子では1300cd/m、実施例1の基板を用いた素子では1400cd/mであった。実施例1の基板を用いた有機EL素子では、比較例3の基板を用いた素子に比べて高い輝度が得られており、本発明に係るガラス基板では従来のガラス基板に比べて光の取出し効率が改善されていることが分かる。
【0040】
尚、本実施例ではボトムエミッション構造の有機EL素子20Aを作製したが、トップエミッション構造の有機EL素子に適用してもよい。図15はトップエミッション構造の有機EL素子20Bを示す断面図であり、図16は図15のXVI部の拡大図である。トップエミッション構造の有機EL素子20Bは、図15に示すように、平坦なガラス基板26の一方の面に、陰極25、発光層24、正孔輸送層23、透明電極22が順に形成されている。ガラス基板26の陰極25、発光層24、正孔輸送層23、透明電極22の積層体が形成された面の外周部に接着層27が設けられ、接着層27の上部に封止材28が設けられることで積層体が封止される。この封止材28に本発明に係るガラス基板を用いることで、ボトムエミッション構造の有機EL素子20Aと同様に光の取出し効率を改善することができる。
【0041】
このように、本発明に係るガラス基板を用いて作製された太陽電池は、従来の薄膜系太陽電池よりも高い光電変換効率とすることができる。また、本発明に係るガラス基板を用いて作製された有機EL素子は、従来の有機EL素子よりも高い光取出し効率とすることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 太陽電池
11 ガラス基板
11a 突条
11b 条溝
12 透明電極
13 半導体層
14 対電極
20 有機EL素子
21、26 ガラス基板
22 透明電極
23 正孔輸送層
24 発光層
25 陰極
27 接着層
28 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面の長手方向に、突条と条溝との周期的な繰り返し構造を有するガラス基板であって、
波長300nm〜800nmのヘイズ率が30%以上であることを特徴とするガラス基板。
【請求項2】
少なくとも一面の長手方向に、突条と条溝との周期的な繰り返し構造を有するガラス基板であって、前記突条と条溝とのピッチが200nm〜10μm、前記突条の頂部と前記条溝の底部との段差が2μm以下であることを特徴とするガラス基板。
【請求項3】
観察領域1μm以下において、前記突条の頂部と前記条溝の底部との間の算術平均粗さ(Ra)は、2nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス基板。
【請求項4】
前記ガラス基板は厚さが0.3mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板を用いたことを特徴とする太陽電池。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板を、基板または封止材に用いたことを特徴とする有機EL素子。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板を製造する製造方法であって、ガラス母材の少なくとも一面に、突条と条溝との周期的な繰り返し構造を形成し、次に、前記ガラス母材を加熱して前記突条及び前記条溝の長さ方向に延伸することを特徴とするガラス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−96367(P2011−96367A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246011(P2009−246011)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】