説明

ガラス基板を用いたタッチパネルの製造方法

【課題】 エッチング工程のないタッチパネルの製造方法の確立が望まれていた。
【解決手段】 本発明の製造方法は、透明電極膜11、21をエッチングすることなくマザーガラス板2、3から個別のタッチパネルと略同じサイズの片面全体に透明電極膜を有する上基板10と下基板20に切断する工程と、枠状の両面に位置検出電極32、34と引き出し電極33、35が形成され、その枠の一部より突出した端子板31に外部取り出し電極36、37を延在したフレキシブル配線板30を準備する工程と、下基板の外周部あるいはフレキシブル配線板30に接着層4を付着し、フレキシブル配線板を上基板と下基板の間に配置し、上下基板の外周部分を加熱加圧して接着を行い、同時に位置検出電極と透明電極膜とを電気的に接続する工程によりエッチング工程のないタッチパネルの製造方法を確立できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶や有機EL等のディスプレイ素子の上に配置されて、表示素子の表示内容に対応して指やペンを用いた押圧操作で情報を入力するガラス基板を用いたタッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルには、上基板および下基板がともにガラス板からなるガラス−ガラス構造のタッチパネルと、上基板がフィルムで下基板がガラス板からなるフィルム−ガラス構造のタッチパネルとがある。ガラス−ガラス構造のタッチパネルは上基板を薄いガラス板で構成するので、経時変化が少なく高級感がある。しかし、薄いガラス板が高価であり、材料費も高く且つ工程数も多くなり、フィルム−ガラス構造のタッチパネルに比べて高価になる。
【0003】
まず、従来のガラス−ガラス構造のタッチパネルの製造方法について説明する。
【0004】
特許文献1に示されるように、上基板および下基板に個別タッチパネルのほぼ12個分の面積を有するマザーガラス板からスタートする製造方法が開示されている。
【0005】
図5に示すように、それぞれの2枚のマザーガラス板に上基板と下基板に対応する素子区画50を3行×4列のマトリクス状に形成し、各素子区画にITO膜をフォトエッチングによりパターンニングして透明電極や位置検出電極58aを形成する。
【0006】
次に、マザーガラス基板の透明電極が形成された面に、各素子区画50にシール材をスクリーン印刷法等で印刷し、シール層51を形成する。シール層51には、その一部にシール材が印刷されていない開口部52を形成し、その両端から列方向にもシール層を形成する。マザーガラス基板の内側周縁部に全ての素子区画50を内側に囲い、シール層51より所定の間隔をあけて外周シール層53を形成する。
【0007】
更に、2枚のマザーガラス基板を所定の間隔に保持するために、一方のマザーガラス基板に球状のドットスペーサーを多数配設する。マザーガラス基板とマザーガラス基板を素子区画が互いに対向するように重ね合わせ、シール層および外周シール層を熱硬化等で接合し、個別タッチパネルを12個作製し、開口部を封止部材で封止する。
【0008】
更に、接合された一対のマザーガラス基板を浸漬させ外側表面にエッチング処理を施し、所望の厚さのガラス基板を形成し、洗浄して付着した汚れ等を除去する。その後、マザーガラス基板を行方向切断線54に沿って切断し、各行方向素子集合体をタッチパネル毎に切断する。
【0009】
しかし、この製造方法では、マザーガラス基板に形成された透明電極膜を個別タッチパネルごとの透明電極にエッチングする工程が不可欠である。
【0010】
特許文献2に示す製造方法では、図6に示すように、厚みが1.1mmのソーダガラス板からなる下基板に、ITO膜を成膜した後、エッチング加工によりパターンを形成し透明電極56とする。透明電極には電気的に接続される位置検出電極58aと引き回し電極58bを、銀ペースト膜を印刷、焼成して形成する。また下基板の下端部には、引き回し電極58bと、外部取り出し電極61を有するコネクタ60とを接続するための仮端子59を含むひさし部が形成される。
【0011】
次に、透明電極56の表面上に、フォトリソグラフィプロセスによりパターン形成し、ドットスペーサー57を形成する。
【0012】
その後、下基板の周辺部に上基板と下基板を貼り合わせるためのシール剤51を印刷し、その一部にシール剤の開口部52を設ける。
【0013】
更に、厚みが0.2mmのホウケイ酸ガラスからなる上基板に、下基板と同様に透明電極、位置検出電極および引き回し電極を形成する。上基板は、下基板のひさし部を露出するように下端部が切断される。従って、上基板の縦幅は、下基板の縦幅よりも短い。
【0014】
更に、上基板および下基板の透明電極を互いに対向させ、下基板のシール剤51に上基板を重ね合わせ上下基板とし、硬化治具にセットして焼成する。
【0015】
その後、徐冷工程を経て上下基板の周辺部がシール剤51で貼着される。上基板の引き回し電極58bも下基板に設けた仮端子59と電気的に接続される。
【0016】
そして、シール剤の開口部52より約1.2気圧の空気を注入し、上基板を外側に膨らませ、シール剤の開口部52を封止部材55で封止する。
【0017】
更に、下基板の仮端子59にコネクタ60の本端子を貼着し電気的に接続する。仮端子59の一部はコネクタ60の上方で露出されるので、ショートを防ぐためにフッ素樹脂でコーティングする。
【0018】
しかし、この特許文献2に記載された製造方法でも、透明電極のエッチングとドットスペーサーの形成時にエッチングが必要である。また、上基板と下基板の隙間を所定の間隔に保持するために、開口部より空気を封入して上基板を外側に膨らませる工程も必要である。更に、下基板の仮端子とコネクタの本端子とを接続し、露出した接続個所を防湿のためにコーティングする工程も必要である。
【0019】
続いて、従来のフィルム−ガラス構造のタッチパネルの製造方法について説明する。
【0020】
特許文献3に示されるように、上基板には可撓性を有する透明絶縁基材を用い、下基板にはガラス板の透明絶縁基板を用いたタッチパネルである。
【0021】
まず、ポリエチレンテレフタレートフィルムを上基板の透明絶縁基材として用い、その片面にITO膜を形成し、酸などでエッチング処理を行いITO膜の周縁部分を除去した後、シート状にカットして上基板とする。
【0022】
次に、ガラス板を下基板の透明絶縁基材として用い、上基板と同様にITO膜の形成、周縁部分の除去をした後に、ITO膜状にフォトエッチングプロセスで微細なドットスペーサーを形成した後、シート状にカットして下基板とする。なお、下基板には、ガラス板の他に、透明樹脂板や透明フィルムを用いる。
【0023】
更に、回路シートは、枠上の本体とその一辺において本体より20mmだけ枠外に外部接続部を一体的に突出してなる厚み25μmのポリイミドシートを絶縁基材として用い、その両面にその辺部に互いに平行に延びた一対のバスバーと引き回し回路を形成する。バスバーおよび引き回し回路は、導電性ペーストを使用しスクリーン印刷によって形成されたり、金属材料のみを使用しスパッタリング法やCVD法等により形成される。
【0024】
更に、上基板と下基板をITO膜の面を対向させ、その間に回路シートを挟み込み周縁部において両面テープからなる接着材料で貼り合せる。
【0025】
しかし、上基板に可撓性を有する透明フィルムを用いたタッチパネルでは、上下基板の貼り合わせ工程において上基板に撓みが生じやすいため、上基板と下基板に形成した透明電極を絶縁するドットスペーサーの形成が必要となる。
【0026】
従って、この特許文献3のタッチパネルでも、ITO膜の周縁部分を除去するエッチングとドットスペーサーの形成するためのエッチング工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2006−099247号公報
【特許文献2】特開2004−110748号公報
【特許文献3】特開2004−240662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上述したように、従来のガラスーガラス構造あるいはフィルムーガラス構造のタッチパネルの製造方法では、ドットスペーサーの形成や、透明電極膜のパターン形成のためにフォトエッチング工程が必ず必要となる。
【0029】
このフォトエッチング工程は、図7に示すように、最初に基板を洗浄し汚れを除去して乾燥させた後、基板にフォトレジストを塗布してその表面を乾燥させ、その後パターンを露光、現像し、露光されない部分のフォトレジスト層を除去し、残存したフォトレジスト層をマスクとして塩酸および塩化第2鉄等の溶液でエッチングを行い、残存するフォトレジスト層を水酸化ナトリウム等の溶液に浸して剥離した後、基板の洗浄を行い薬品や汚れを除去するといった一連の多くの工程が必要となる。
【0030】
これらの工程を有するエッチング設備は大きなマザーガラス板(例えば、240mm×380mm)を流すために大きな設備スペースを必要とし、具体的には、約60m前後の長さが必要であり、またライン速度は約180cm/min前後の時間を要する。このため、設備投資のコストを抑え、かつ最短工程数でのタッチパネルの製造を実現するために、エッチング工程のないタッチパネルの製造方法を確立することが望まれていた。
【0031】
また、上下基板を接着するシール剤に設けられた開口部より空気を封入し、上基板と下基板の隙間を所定の間隔に保持する封入工程の除外も望まれていた。
【0032】
そして、下基板の下端部に引き出し電極とコネクタの外部取り出し電極とを接続する仮端子を含むひさし部を設けるため、上基板と下基板の大きさは異なっていた。このため、マザーガラス板から個別タッチパネルの上下基板をカットするときに、上基板の一部をカットし廃棄処分としていたので、約18.4%の廃棄ガラスが生じており、廃棄ゼロを実現することも望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は上述した従来の問題点に鑑みてなされ、厚さの異なる2枚のマザーガラス板の片面全体に透明電極膜を形成し、前記透明電極膜をエッチングすることなくそれぞれの前記マザーガラス板から個別のタッチパネルと略同じサイズの片面全体に前記透明電極膜を有する上基板と下基板に分割する工程と、一主面にX方向の位置検出電極と引き出し電極を形成され、反対主面にY方向の位置検出電極と引き出し電極が形成された枠状のフレキシブル配線板であって、その枠の一部より突出した端子板に前記引き出し電極を延在させて外部取り出し電極を形成した前記フレキシブル配線板を準備する工程と、前記下基板の外周部あるいは前記フレキシブル配線板に接着層を付着し、前記フレキシブル配線板を前記上基板と前記下基板間に配置し、前記上基板および前記下基板の前記接着層および前記フレキシブル配線板のある外周部分を加熱加圧して、前記上基板と前記下基板の接着を行い、同時に前記位置検出電極と前記透明電極膜とを電気的に接続する工程とを具備することを特徴とする。
【0034】
また、本発明は、前記マザーガラス板は前記上基板あるいは前記下基板の大きさの略整数倍の大きさに設定されることを特徴とする。
【0035】
更に、本発明は、前記上基板と下基板の接着工程で、前記上基板のタッチ領域となる部分を加圧しないで前記上基板と前記下基板のギャップを前記フレキシブル配線板の厚みに維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明に依れば、透明電極膜をエッチングすることなくマザーガラス板から個別タッチパネルと略同じサイズの片面全体に透明電極膜を有する上基板と下基板に切断する工程と、枠状の両面に位置検出電極と引き出し電極が形成され、その枠の一部より突出した部分に外部取り出し電極を延在させたフレキシブル配線板を準備する工程と、下基板の外周部あるいは前記フレキシブル配線板に接着層を付着し、フレキシブル配線板を上基板と下基板の間に配置し、上基板および下基板の外周部を加熱加圧して接着を行い、位置検出電極と透明電極膜とを電気的に接続する工程の全3工程でエッチング工程のないタッチパネルの製造が可能となる。これにより、エッチング工程のないタッチパネルの製造方法を確立できる。
【0037】
また、ドットスペーサーの形成や、透明電極膜のパターン形成の工程が製造工程より除外されるので、一連の多くの工程を有するフォトエッチング工程が不要となり、工程数の大幅な削減や、それによる設備投資および製造のコストの大幅な減少に繋がる。
【0038】
具体的には、多くの工程を有するエッチング設備を排除できる結果、約60mあったエッチング設備のスペースを有効に利用でき、また、従来の製造方法では420秒要していた製造時間をほぼ半分の220秒まで縮めることができる。
【0039】
更に、上基板と下基板の接着工程において、上基板および下基板の接着層およびフレキシブル配線板のある外周部分を枠状に加熱加圧して接着を行うため、タッチパネルの中央部分は加熱加圧されないので、冷却の際に上基板のタッチ領域となる部分が下基板側に湾曲しない。これにより、上基板と下基板の隙間がフレキシブル配線板の厚みに保持されるので製造工程から封入工程を除外できる。
【0040】
更に、上基板と下基板の接着工程において、上下基板の接着と同時に、フレキシブル配線板の位置検出電極と上下基板の透明電極膜を電気的に接続することができる。これにより、従来の製造方法では独立して設けられていた位置検出電極と透明電極膜を接続する工程が除外できる。
【0041】
また、本発明に依れば、上基板と下基板の大きさを略同じサイズとし、マザーガラス板は個別タッチパネルの上基板あるいは下基板の大きさの略整数倍の大きさに設定される。フレキシブル配線板の枠の一部に外部取り出し電極を突出させ、上基板と下基板の間に配置させたので、従来のタッチパネルに設けていた下基板のひさし部が不要となる。これにより、マザーガラス板から上下基板をカットする際に上基板の一部をカットする必要がなくなり、ガラス板の廃棄をほぼゼロにできる。
【0042】
以上に詳述する効果により、本発明の製造方法で製造されたガラスーガラス構造のタッチパネルでは高価な薄いガラス板を用いても製造工程数が大幅に低減するのでフィルムーガラス構造のタッチパネルと十分に価格で対抗できるガラスーガラス構造のタッチパネルを実現できる大きな利点が生み出せる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1(A)〜(B)は、本発明のガラス基板を用いたタッチパネルの製造工程を説明する工程フロー図である。
【図2】図2(C)〜(D)は、本発明のガラス基板を用いたタッチパネルの製造工程を説明する工程フロー図である。
【図3】図3(A)は本発明の枠状のフレキシブル配線板の表面を説明する平面図であり、図3(B)はその裏面を説明する平面図である。
【図4】図4(A)は本発明のガラス基板を用いたタッチパネルを説明する平面図であり、図4(B)はその断面図である。
【図5】図5は、従来のガラス−ガラス構造のタッチパネルの製造方法を説明する図である。
【図6】図6は、従来のガラスーガラス構造のタッチパネルの製造方法を説明する平面図である。
【図7】図7は、一般的なフォトエッチング工程を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1〜図3を参照して本発明の製造方法について説明する。
【0045】
図1および図2は、本発明のガラス基板を用いたタッチパネルの各製造工程を説明する工程フロー図を示している。図3(A)は本発明の枠状のフレキシブル配線板の表面を説明する平面図であり、図3(B)はその裏面を説明する平面図である。
【0046】
本発明のガラス基板を用いたタッチパネルの製造方法は、厚さの異なる2枚のマザーガラス板2、3の片面全体に透明電極膜11、21を形成し、透明電極膜11、21をエッチングすることなくそれぞれのマザーガラス板から個別のタッチパネルと略同じサイズの片面全体に透明電極膜11、21を有する上基板10と下基板20に分割する工程と、一主面にX方向の位置検出電極と引き出し電極が形成され、反対主面にY方向の位置検出電極と引き出し電極が形成された枠状のフレキシブル配線板であって、その枠の一部より突出した端子板31に引き出し電極を延在させて外部取り出し電極を形成した前記フレキシブル配線板30を準備する工程と、下基板20の外周部あるいはフレキシブル配線板に接着層4を付着し、フレキシブル配線板30を上基板10と下基板20の間に配置し、上基板および下基板の接着層およびフレキシブル配線板のある外周部分を加熱加圧して、上基板と下基板の接着を行い、同時に位置検出電極と透明電極膜とを電気的に接続する工程とから構成される。
【0047】
最初に、図1(A)(B)に示すように、マザーガラス板2、3から上基板10と下基板20に切断する工程では、厚さの異なる2枚のマザーガラス板2、3の裏面全体に透明電極膜11、21となる酸化インジューム等を蒸着してITO膜を形成する。その後、ITO膜をエッチングすることなくそれぞれのマザーガラス板から個別タッチパネルと略同じサイズの裏面全体にITO膜を有する上基板10と下基板20に分割する。
【0048】
マザーガラス板2、3は、上基板10として厚みが0.2mmの透明な薄いガラス材を用い、下基板20として厚みが1.1mmの透明な厚いガラス材を用いる。それぞれのマザーガラス板2、3の裏面全体には、透明電極膜11、21がそれぞれに形成されている。マザーガラス板2、3のサイズは、上基板10および下基板20の大きさの略整数倍の大きさに設定され、個別タッチパネルの上基板10と下基板20とは略同じサイズになっている。具体的には、上基板10および下基板20のサイズは190mm×120mmであり、マザーガラス板2、3のサイズは380mm×240mmであるので、1枚のマザーガラス板より上基板および下基板は4枚切り出せる。
【0049】
これにより、従来必要であった下基板に外部電極を設けるひさし部が不要となり、ひさし部を露出するために上基板の一部をカットする必要がなくなるので、上基板および下基板に分割する際に、ガラス板の廃棄量をほぼゼロにできる。なお、マザーガラス板2、3の周辺部には欠けなどが発生するので、周辺部を数mm幅だけ除去する必要があり、この周辺部の切り落としが廃棄されるガラス板のすべてである。
【0050】
なお、上基板10と下基板20の大きさはタッチパネルの大きさに応じて適宜必要な寸法となる。
【0051】
上基板10は、厚さ0.2mmのマザーガラス板2の透明電極膜11をエッチングすることなく、片面全体に透明電極膜を残した状態で上基板10のサイズに分割される。
【0052】
下基板20も、厚さ1.1mmのマザーガラス板3の透明電極膜21をエッチングすることなく、片面全体に透明電極膜を残した状態で下基板20のサイズに分割される。
【0053】
本工程では、マザーガラス板2、3の透明電極膜11、21を設けた反対面をダイヤモンドカッターでスクライブして、その後に力を加えて割る。これにより、透明電極膜が終端まである状態で上基板10と下基板20を形成できる。従って、スクライブラインの周辺の透明電極膜を予め除去する必要がないので、エッチング工程を不要にできる。
【0054】
また、本工程では、従来のタッチパネルのように、上基板および下基板の透明電極膜にX方向およびY方向の位置を検出する位置検出電極と、各位置検出電極から各基板の周辺に沿って引き出し電極とを形成する必要がないため、上基板および下基板の透明電極膜を透明電極のパターンにエッチングする工程も不要である。
【0055】
この結果、基板を洗浄し汚れを除去して乾燥させた後、基板にフォトレジストを塗布してその表面を乾燥させ、その後パターンを露光、現像し、露光されない部分のフォトレジスト層を除去し、残存したフォトレジスト層をマスクとして塩酸等の溶液でエッチングを行い、残存するフォトレジスト層を水酸化ナトリウム等の溶液に浸して除去した後、基板の洗浄を行い薬品や汚れを除去するといった一連の工程を含むフォトエッチング工程が除外できる。
【0056】
次に、図3のフレキシブル配線板30を準備する工程では、一主面にX方向の位置検出電極32と引き出し電極33が形成され、反対主面にY方向の位置検出電極34と引き出し電極35が形成された枠状のフレキシブル配線板であって、その枠の一部より突出した端子板31に引き出し電極33、35を延在させて外部取り出し電極36、37を形成したフレキシブル配線板30を準備する。
【0057】
フレキシブル配線板30は、上基板および下基板のタッチ領域となる部分の外周を枠状に囲った形状であり、枠状部分は幅2.5mmで全周を一定幅で形成され、その枠状部分の一部より幅2.5mm、長さ15mmに長方形状に突出した外部取り出し電極用の端子板31が形成されている。フレキシブル配線板のベースフィルムには厚さ25μmのポリイミド樹脂を用いる。
【0058】
図3(A)に示すように、枠状のフレキシブル配線板30の表面側には、右辺および左辺に沿ってX方向の位置を検出するためのX軸位置検出電極32が2本設けられている。そして、X軸位置検出電極32から枠状のフレキシブル配線板30の周辺に沿ってX軸引き出し電極33で引き回されて、枠の一部より突出した端子板31に形成されたX軸の外部取り出し電極36に接続される。なお、X軸の外部取り出し電極36は端子板31の裏面にY軸の外部取り出し電極37と並べて設けられているので、スルーホール電極38を用いて表側の引き出し電極33と接続されている。
【0059】
図3(B)に示すように、枠状のフレキシブル配線板30の裏面側には、上辺および下辺に沿ってY方向の位置を検出するためのY軸位置検出電極34が2本設けられている。そして、Y軸位置検出電極34から枠状のフレキシブル配線板30の周辺に沿ってY軸引き出し電極35で引き回されて、枠の一部より突出した端子板31に形成された外部取り出し電極37に接続される。なお、Y軸の外部取り出し電極37は端子板31の裏面にX軸の外部取り出し電極36と並べて設けられている。
【0060】
フレキシブル配線板30に形成されたX軸あるいはY軸位置検出電極32、34、引き出し電極33、35および外部取り出し電極36、37はポリイミド樹脂上に接着された18μm厚の圧延銅箔とその表面に形成される電解メッキによる10μm厚の銅メッキ層と、その表面に形成された厚さ1〜5μmのNiメッキと、X軸あるいはY軸位置検出電極32、34および外部取り出し電極36、37上に選択的に形成された0.1μm厚の金メッキ層とで構成されている。
【0061】
そして、X軸位置検出電極32上に導電性接着剤をスクリーン印刷した後、X軸位置検出電極32を露出してフレキシブル配線板の表面を絶縁レジスト層で覆う。Y軸位置検出電極34の表面にも同様にして導電性接着剤を形成し、その表面を露出してフレキシブル配線板の表面を絶縁レジスト層で覆う。この絶縁レジスト層は、X方向の引き出し電極33と透明電極膜11との絶縁を行い、Y方向の引き出し電極35と透明電極膜21との絶縁を行う。
【0062】
なお、端子板31の裏面には約175μm厚のポリイミド樹脂フィルムを貼り付けて、外部取り出し電極36、37の補強を行っている。
【0063】
このようなフレキシブル配線板30はプリント基板製造メーカーから供給をされるので、タッチパネル製造メーカーではエッチング工程は不要である。
【0064】
更に、図2(C)に示すように、上基板10と下基板20の接着を行う工程では、下基板20の外周部あるいはフレキシブル配線板に接着層4を付着し、フレキシブル配線板30を上基板10と下基板間に配置し、上基板および下基板の接着層4およびフレキシブル配線板30のある外周部分を加圧して、上基板10と下基板20の接着を行い、同時にX軸あるいはY軸位置検出電極32、34と透明電極膜11、21とを電気的に接続する。
【0065】
本工程では、下基板20の透明電極膜21上であってその外周部に接着層4を付着する。接着層4はフレキシブル配線板30の厚さよりは少し薄く形成される。接着層4としては、ペット基板の両面にアクリル系の粘着層をコートした両面テープや、UV樹脂を用いると良い。
【0066】
その後、下基板20に付着した接着層4の内側にフレキシブル配線板30を配置する。フレキシブル配線板30の枠状の上端および左右端は接着層4の内側と接し、フレキシブル配線板30の突出した端子板31は接着層4の上面に重ねて置かれる。
【0067】
なお、フレキシブル配線板30に接着層4を付着する場合には、フレキシブル配線板30の両面に接着層4が設けられ、上基板および下基板の間に配置される。
【0068】
本工程では、図2(D)に示すように、上基板10と下基板20の接着層4を設けた部分を枠状に加圧して固定し、上基板10と下基板20の接着を行うので、フレキシブル配線板30の外側のみが加圧され、タッチ領域となる中央部は加圧されない。フレキシブル配線板30のベースフィルムは接着層4よりは少し厚く形成されているので、薄い上基板10は外側に引っ張られるために上基板10と下基板20のギャップは略フレキシブル配線板30のベースフィルムの厚みで規制される。このために上基板10と下基板20のギャップは、従来用いていたドットスペーサーやスペーサー用のビーズを用いなくても形成でき、このギャップが維持できることで接着層4には従来の開口部を設けることも必要なくなる。
【0069】
従来の製造方法では、上基板用および下基板用のマザーガラス板を硬化治具にセットし、マザーガラス板の外表面全体を加熱加圧するため、加圧と同時にマザーガラス板で形成された中空部の空気が熱膨張で排出された後に冷却され、上基板のタッチ領域となる部分が下基板側に向かって湾曲する。このため上基板と下基板のギャップが狭くなり、両基板のギャップを所定のギャップに戻すために、接着層の一部に設けた開口部より乾燥空気を封入し上基板を外側に膨らませる工程が必要となる。
【0070】
また、従来のフィルムーガラス構造のタッチパネルでは、フィルムで構成される上基板が下基板に密着するので、これを防止するために上基板と下基板を電気的に絶縁するドットスペーサーが必要となり、ドットスペーサーを形成する際にもエッチング工程が必要となる。
【0071】
これに対し、本発明の製造方法では、上基板10と下基板20の接着層4を設けた部分を枠状に加圧して固定し、上基板10と下基板20の接着を行うので、上基板10のタッチ領域となる部分には余分な熱や圧力がかからない。この結果、上下基板のギャップを保持する上述の封入工程やドットスペーサーの形成工程が一切不要となる。
【0072】
本工程では、フレキシブル配線板30のX軸あるいはY軸位置検出電極32、34が位置する部分をヒータヘッドで挟み、80℃〜120℃で2〜5秒加熱し、X軸位置検出電極32と上基板10の透明電極膜11とを、Y軸位置検出電極34と下基板20の透明電極膜21とを各位置検出電極の表面に付着した導電性接着材で電気的に接続する。導電性接着材としては貴金属系の接着材、例えば銀ペースト等を用いれば良い。
【0073】
なお、本工程で、上基板10と下基板20の接着と、X軸位置検出電極32およびY軸位置検出電極34と各透明電極膜11、21との電気的接続とを同時に行うことができる。
【0074】
以上のように、本発明の製造方法を用いれば、フレキシブル配線板30はプリント基板製造メーカーから供給をされる場合であっても、透明電極膜のエッチング工程やドットスペーサーの形成する工程が一切不要にできる。これにより、2つのエッチング工程が除外できるので、製造工程数を大幅に短縮できる効果が得られる。
【0075】
最後に、図4を参照して本発明の製造方法で製造したタッチパネルを説明する。図4(A)は本発明のガラス基板を用いたタッチパネルを説明する平面図であり、図4(B)はその断面図である。
【0076】
図4(A)に示すように、タッチパネル1は下基板20の透明電極膜21の外周に接着層4を付着し、その内側にフレキシブル配線板30を配置し、上基板10を重ねて配置した構造である。フレキシブル配線板30は枠状であって、表面に2本のX軸位置検出電極32と引き出し電極33を配置し、裏面に2本のY軸位置検出電極34と引き出し電極35を配置する。各位置検出電極は、上基板あるいは下基板の片面全体に残した透明電極膜と電気的に接続される。フレキシブル配線板の一部から突出した端子板31の外部取り出し電極36、37は枠状の本体と一体化され、上下基板の間に配置されているため、従来必要であった下基板に仮端子を設けるひさし部が不要となり、ひさし部を露出するために上基板の一部を切り落とす必要がない。
【0077】
図4(B)に示すように、タッチパネル1のX−X線断面図より、上下基板のギャップはフレキシブル配線板30の厚さhに保持されていることがわかる。また、フレキシブル配電板の表面あるいは裏面に形成された図示しない各位置検出電極と、上基板および下基板の透明電極膜11、21とが電気的に接続されていることもわかる。
【0078】
なお、図示はしないが、フレキシブル配線板30に接着層4を付着する場合には、フレキシブル配線板の位置検出電極32、34よりも外側で、フレキシブル配線板の両面に接着層4を設ける。上基板10および下基板20は、フレキシブル配線板30に設けた接着層4で接着される。
【0079】
これにより、タッチパネルのタッチ領域の任意の点を指またはペン等で押圧操作すると、その点において上基板の透明電極膜と下基板の透明電極膜とが接触してオン状態となる。この透明電極膜の抵抗値が検出され、その点のX座標およびY座標を知ることができる。座標情報はフレキシブル配線板の各引き出し電極、外部取り出し電極を介して入力装置のCPUへと送られ、座標情報に対応する処理が行われる。
【0080】
なお、押圧操作を止めると上基板の透明電極膜と下基板の透明電極膜とが離れてオフ状態となり、座標情報に対応する処理は終了する。
【符号の説明】
【0081】
1 タッチパネル
2 マザーガラス板
3 マザーガラス板
4 接着層
10 上基板
11 透明電極膜
20 下基板
21 透明電極膜
30 フレキシブル配線板
31 端子板
32 X軸位置検出電極
33 X軸引き出し電極
34 Y軸位置検出電極
35 Y軸引き出し電極
36 X軸外部取り出し電極
37 Y軸外部取り出し電極
38 スルーホール電極
50 素子区画
51 シール層
52 開口部
53 外周シール層
54 行方向切出線
55 封止部材
56 透明電極
57 ドットスペーサー
58a 位置検出電極
58b 引き回し電極
59 仮端子
60 コネクタ
61 外部取り出し電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さの異なる2枚のマザーガラス板の片面全体に透明電極膜を形成し、前記透明電極膜をエッチングすることなくそれぞれの前記マザーガラス板から個別のタッチパネルと略同じサイズの片面全体に前記透明電極膜を有する上基板と下基板に分割する工程と、
一主面にX方向の位置検出電極と引き出し電極を形成され、反対主面にY方向の位置検出電極と引き出し電極が形成された枠状のフレキシブル配線板であって、その枠の一部より突出した端子板に前記引き出し電極を延在させて外部取り出し電極を形成した前記フレキシブル配線板を準備する工程と、
前記下基板の外周部あるいは前記フレキシブル配線板に接着層を付着し、前記フレキシブル配線板を前記上基板と前記下基板間に配置し、前記上基板および前記下基板の前記接着層および前記フレキシブル配線板のある外周部分を加熱加圧して、前記上基板と前記下基板の接着を行い、同時に前記位置検出電極と前記透明電極膜とを電気的に接続する工程とを具備することを特徴とするガラス基板を用いたタッチパネルの製造方法。
【請求項2】
前記マザーガラス板は前記上基板あるいは前記下基板の大きさの略整数倍の大きさに設定されることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板を用いたタッチパネルの製造方法。
【請求項3】
前記上基板と下基板の接着工程で、前記上基板のタッチ領域となる部分を加圧しないで前記上基板と前記下基板のギャップを前記フレキシブル配線板の厚みに維持されることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板を用いたタッチパネルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate