説明

ガラス基板表面の加工方法

【課題】UV領域以下の短波長の露光に用いられる反射型フォトマスク用Tiドープ低熱膨張石英ガラス基板につき、平坦度≦100nm、表面の自乗平均平方根粗さ≦0.15nmRMSを同時に満足する加工法を提供する。
【解決手段】不活性ガスと反応ガスとの混合ガス中にガラス基板を配し、ガラス基板に対向して設けた電極に高周波電圧を印加して生成した局所的なプラズマによって反応ガスのラジカルを生成し、ガラス基板とラジカルとを化学反応させて生成する反応生成物の揮発量を、予め測定したガラス基板の表面形状データを基に制御してガラス基板表面を高平坦化する方法において、ガラス基板がTiドープ低熱膨張石英ガラスであり、混合ガス全量に対して酸素系ガスの存在が0.01vol%以下で加工を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造に用いられるフォトマスク用ガラス基板に関し、特に、紫外波長領域以下の短波長の露光に用いられる反射型フォトマスク用低熱膨張ガラス、特にTiをドープした石英ガラス基板の高平坦、高平滑加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子等の高集積化や微細化の要求は年々高くなっており、回路パターンを転写する時に用いられるフォトマスク用ガラス基板の表面形状も露光精度に大きく影響し、ガラス基板表面形状に対して高い平坦性が要求される。
【0003】
近年、半導体産業において、光源から得られる露光用光も短波長化が進み、次世代露光用光としてEUV光(Extreme Ultra Violet:極端紫外線光)が有望視されてきている。ここで、EUV光とは、軟X線領域または真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には、波長が0.2〜100nm程度の光のことを指す。
【0004】
軟X線領域または真空紫外線領域の波長帯の光の場合、光学レンズ系の透過率低下が問題になるので、照明光学系、投影光学系、マスクすべてが反射型光学系により構成される。この反射型マスク基板に関して、平坦度、面粗度、欠陥サイズ、熱膨張係数等の性能が要求されているが、露光パターンの高精細化に伴い、平坦度、面粗度の要求が、極端に厳しくなって来ており、6025サイズのマスク基板(152mm×152mm×6.35mm)で、平坦度30〜100nm、表面の自乗平均平方根粗さ0.15nmRMSが求められている。(SEMI規格P37−1012)
ここで、熱膨張係数に関しては、石英ガラスにTiを数wt%添加することにより達成することが分かっており、このTiがドープされたガラスがガラス基板の素材として有望視されている。平坦度に関して、このような厳しい要求性能を従来の水、研磨砥粒、研磨布を用いた両面研磨法等の機械研磨法で行うことは不可能に近いと考えられる。
【0005】
研磨面圧と相対的運動速度の均一化等の工夫により基板の平坦化を高めてきたが、従来の研磨方法では、基板全面を同時に研磨しながら平坦化するため、部分的な形状を平坦化するための制御が極めて難しい。また、傷の発生を防ぐために柔らかい研磨布を用いているため、基板外周部の加工が進み、平坦化ができない。
【0006】
一方、シリコンウエハやSOI(シリコン・オン・インシュレータ)の加工では、局所的なエッチングを行い、表面を平坦化して、TTV(Total Thickness Variation)やLTV(Local Thickness Variation)といった表面形状を改善するプラズマエッチング方法が考案されている。これは、予めウエハの厚さ分布を測定した後、その厚さ分布に応じてウエハ上のプラズマの走査速度を制御することにより、エッチングの除去量を制御し、ウエハ厚みを均一化することによって、ウエハを高平坦化する方法である。
【0007】
このプラズマエッチング方法をガラス基板の加工に適応することが考えられる(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。これらの特許文献はプラズマエッチングを用いてガラス基板を加工することのみに触れられており、本発明に関わるTiをドープした低熱膨張石英ガラスの表面粗さ悪化に関する加工問題や酸素系ガスについて、一切触れられてない。
【0008】
また、プラズマエッチングにおける加工ガスに関わる技術としては、例えば特許文献3を例示することができる。この文献にはプラズマエッチングの加工面における残留不純物を低減するために、SF、CF、CCl等のハロゲン化物を含む加工ガスに酸素、オゾン等の酸化剤を添加する発明が開示されている。しかしながら、プラズマエッチングされる材料はSiまたはTiであり、この発明は、これらの表面に付着する付着物の発生メカニズムを検討し、そのエッチング残留不純物の低減を図るためになされたものであるので、本願発明とは異なるものである。
【0009】
【特許文献1】特開2002−316835号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2002−318450号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平7−331449号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の機械加工方法で、Tiドープ石英ガラス基板を加工した場合、表面粗さ0.15nmRMSを達成することは可能であるが、平坦度100nm以下を達成することは非常に厳しい。また、プラズマエッチングを用いた方法では、平坦度100nm以下の加工は望めるが、ガラス基板表面に揮発物が付着し、表面粗さが悪化し、表面の自乗平均平方根粗さ0.15nmRMS以下を達成することはできない。このように該Tiドープ石英ガラス基板の平坦度と表面粗さを同時に達成する方法は現在のところ存在せず、反射型フォトマスク用の低熱膨張ガラス基板の供給に対応できないという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、次世代の紫外波長領域以下の短波長の露光に用いられる反射型フォトマスク用低熱膨張ガラス基板、特にTiをドープしたガラス基板の平坦度100nm以下、表面の自乗平均平方根粗さ0.15nmRMS以下を同時に満足した加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上述のような現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、不活性ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中にガラス基板を配設し、該ガラス基板に対向して設けられた加工電極に高周波電圧を印加することによって生成した局所的なプラズマによって該反応ガスのラジカルを生成し、該ガラス基板と該ラジカルとを化学反応させて生成する反応生成物の揮発量を、予め測定したガラス基板の表面形状のデータを基に制御し、該ガラス基板表面を高平坦化する方法において、ガラス基板がTiをドープした低熱膨張石英ガラスであり、混合ガス全量に対して酸素系ガスの存在が0.01vol%以下であることを特徴とするガラス基板表面の加工方法に関する。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、不活性ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中にTiドープ石英ガラス基板を配設し、該ガラス基板に対向して設けられた加工電極に高周波電圧を印加することによって生成した局所的なプラズマによって該反応ガスのラジカルを生成し、該ガラス基板と該ラジカルとを化学反応させて生成する反応生成物の揮発量を、予め測定したガラス基板の表面形状のデータを基に制御し、該ガラス基板の表面形状を高平坦化し、具体的には、凸形状の大きい部分は、エッチング量を多く、凸形状の小さい部分や凹形状の部分はエッチング量を少なくするように走査速度を制御し、ガラス基板の表面形状を平坦化する方法である。
【0016】
本発明では、不活性ガスと反応ガスとの混合ガス中の酸素濃度に着眼し、混合ガスを使用するに際し、混合ガス全量に対して酸素系ガスの存在が0.01vol%以下であることを特徴とする。酸素系ガスの存在を0.01vol%以下にすることより、本発明で用いるガラス基板上にエッチングの際、付着物が析出することなく、表面粗さも加工前表面粗さを維持することが可能となった。好ましい酸素系ガスの含有量は0.005vol%以下である。また、本発明においては、特許文献3に示される残留不純物の生成も観察されなかった。これは、Tiをドープした低膨張ガラスの場合、シリコンウェハーと異なりガラス内に酸素原子を有しているためと考えている
一方、酸素系ガス存在量が混合ガス全量に対して、0.01vol%より多いと低熱膨張石英ガラス基板上に付着物が析出し、表面が荒れる現象が起きる。この付着物を元素分析により分析した結果、石英ガラスにドープしたTiと酸素が反応して生成した酸化チタンであることが分かった。
【0017】
本発明でいう酸素系ガスとは、酸素原子を含有するガスであり、具体的には、Oガス、Oガス、COガス、NOガスを例示することができ、これらより選択される2種以上の混合ガスも含むものである。注目すべき酸素系ガスとしては、Oガスである。
【0018】
本発明で用いるガラス基板としては、Tiをドープした低熱膨張石英ガラスであり、Tiのドープ量としては8wt%以下が望ましく、5wt%以下がより望ましい。Tiのドープ量が8wt%を超えると、Ti酸化物の偏析がガラス中に発生し、プラズマでエッチングした際、加工量が計算値と異なり、平坦度の悪化や表面粗さの悪化を生じる場合がある。
【0019】
局所化したプラズマエッチングで高平坦化する前の、Tiをドープした熱膨張性ガラス基板の表面粗さは、事前に自乗平均平方根粗さ0.15nmRMS以下にしておくことが望ましい。これは、プラズマでエッチングする範囲が表面粗さの周期に比較し大きいため、粗さ成分の除去ができないことより予め高平滑化しておく必要があるためである。
【0020】
高平滑化する方法としては、例えば、両面研磨機または片面研磨機を用いて、研磨パッドを貼り付けてある研磨定盤表面に、砥粒を分散した研磨スラリーを流しながらガラス基板を押圧し両者を移動させ加工する最終研磨工程において、軟質研磨パッドと平均粒子径30nm以下のコロイダルシリカ研磨砥粒を分散した研磨スラリーを用いて研磨を行うことによって得ることができる。
【0021】
続いて、上述の高平坦化処理が施されていてもよい、Tiをドープした低熱膨張性ガラス基板を局所化したプラズマエッチングにより高平坦化する。
【0022】
ここで、装置のステージ上にガラス基板を固定する際、ガラス基板の外周すべてに、プラズマ安定化用ガラス板を設置することが望ましい。更に望ましくは、安定化用ガラス板の幅を、少なくともプラズマを静止させた際に加工される領域以上の長さとし、かつ、安定化用ガラス板の厚みをガラス基板の厚みに相当させる。これは、プラズマで加工される領域の一部が安定化用ガラス板以外の部分に触れるとインピーダンス整合が取れず、加工量が加工前表面形状を基に計算し求めた所定の加工量と変わってしまうのを防止し、また、プラズマがガラス基板をすべて走査し終わり、プラズマのガラスに触れる領域がすべてガラス基板から抜けるための幅が必要であるからである。
【0023】
更に、安定化用ガラス板の厚みは、ガラス基板の厚みとの差が±100μm以内にすることが望ましい。
【0024】
プラズマ安定化用ガラス板としては、比誘電率が3〜5である石英ガラスや、Tiや希土類元素をドープした石英ガラスが望ましい。比誘電率が、この値から外れるとインピーダンス整合が取れず、加工量が変わって平坦化ができないことがある。
【0025】
ここで、比誘電率は、JIS−C−2141に準拠した25℃の大気中、周波数1MHzでの値を表す。
【0026】
プラズマの走査方法としては、例えば、X−Yのいずれか一方向は直線走査させ、他方の方向はプラズマの加工領域以上の幅にステップ走査させ、所定の時間プラズマをガラス基板外に滞在させた後、逆方向に直線走査させ、直線走査とステップ走査を繰返し行いガラス基板全面を走査する方法が望ましい。所定時間ガラス基板外にプラズマを滞在させないと、逆に直線走査し始めの部分で熱が蓄積し、加工量が増え、加工前表面形状を基に計算し求めた所定の加工量が得られず、平坦化ができないことがある。
【0027】
本発明におけるプラズマ発生方法としては、電極間でガラス基板を挟む構造にし、高周波電力によって基板と電極の間にプラズマを発生させる方法であり、プラズマを局所化するためHeガス等の不活性ガスを導入し、1気圧以上の高圧下で行えばよいが、特に限定されるものではなく、他のプラズマ発生方法でも構わない。プラズマの移動は、プラズマを発生させる電極を移動させるケースとガラス基板を載せたX−Yステージを移動させるケース、あるいは両方を同時に移動するケースのいずれでも構わない。
【0028】
本発明で使用する反応ガスとしては、CFガス、SFガス、NFガスが望ましい。
【0029】
本発明の加工方法により、Tiをドープした低熱膨張性ガラス基板の表面平坦度を100nm以下、好ましくは50nm以下で、表面粗さを0.3nmRMS以下、好ましくは0.15nmRMS以下としたガラス基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の加工方法を使用することによって、次世代の紫外波長領域以下の短波長の露光に用いられる反射型フォトマスク用低熱膨張ガラス基板の要求性能である平坦度100nm以下、表面粗さ0.15nmRMS以下を同時に満足した低熱膨張ガラス基板を提供することが可能となる。
【実施例】
【0031】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1
加工用材料としてラップ研磨加工後のサイズ152×152×6.35mmのTiをドープした低熱膨張石英ガラス基板を用意した。
【0033】
このガラス基板を研磨パッドが上下定盤に貼り付けてある4ウェイ両面同時研磨機にキャリアに挿入し設置後、砥粒を分散した研磨スラリーを流しながらガラス基板を押圧し両者を移動させ加工した。最終研磨工程において、軟質研磨パッドと平均粒子径30nm以下のコロイダルシリカ研磨砥粒を分散した研磨スラリーを用いて研磨を行った。
【0034】
この両面研磨を施したTiをドープした低熱膨張石英ガラス基板の平坦度をレーザー干渉式の測定機で測定したところ、平坦度は、基板の端から5mmを除いた142×142mmの範囲内で、612nmであり、ガラス基板の中央部が高い形状であった。また、加工前のガラス基板表面の自乗平均平方根粗さを原子間力顕微鏡(AFM)の視野1μmで測定したところ、0.15nmRMSであった。
【0035】
更に、Tiドープ量を高周波誘導結合プラズマ(ICP)を光源とした発光分析法により測定した結果、4.4wt%であった。
【0036】
装置のX−Y方向に平行移動可能なステージ上に、この平坦化したガラス基板の1辺がステージのX方向と平行になるようにこのガラス基板を設置し、低熱膨張石英ガラス基板周辺部でのプラズマを安定化させるために、ガラス基板4辺の外周すべてに、プラズマ安定化用ガラス板を設置し保持した。
【0037】
本実施例では、プラズマ安定化用ガラス板として、比誘電率4.0、幅60mm、厚み6.35mmのTiをドープした低熱膨張石英ガラス板を用いた。
【0038】
この低熱膨張石英ガラス基板の表面形状を基にプラズマの走査速度を求めるが、その際プラズマを静止してプラズマがガラス基板に触れている領域が加工する単位加工形状を用いるが、その単位加工形状は、長さ50mm、幅15mmであった。
【0039】
本実施例では、電極間でガラス基板を挟む構造とし、高周波電圧を印加して基板と電極の間にプラズマを発生させる方法を用いたが、プラズマを局所化するために、加工チャンバー内にHeガスを圧力が770torrになるまで導入し、反応ガスとしてCFガスを用いた。装置内から分析用の混合ガスを直接採取し、混合ガス中の酸素量をガスクロマトグラフィーで分析した結果、30ppmであった。また、加工電極を高速に回転させ、反応ガスを巻き込み、加工効率をあげた。
【0040】
このプラズマの単位加工形状の長手方向(50mm)を直線走査に使用し、短手方向(15mm)をステップ走査方向に使用した。具体的には、表面形状を基に求めた走査速度で、ガラス基板上をプラズマの長手方向をX−YステージのX方向に連続的に直線移動させ、Y方向には1mmピッチで短手方向にステップ走査させ、その位置で30秒プラズマを静止させ、その後、X方向の逆方向に連続的に直線移動させるという様にプラズマを逆方向に走査し始める前に30秒静止させ、ガラス基板全面を加工した。
【0041】
全面を加工し終わった低熱膨張石英ガラス基板の平坦度をレーザー干渉式の表面形状測定機で、基板の端から5mmを除いた142×142mmの範囲内を測定したところ平坦度50nmであった。
【0042】
また、加工後のガラス基板表面を光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果、付着物は観察されず、AFMにてガラス表面の自乗平均平方根粗さを測定したところ,表面粗さ0.15nmRMSであり、平坦度、表面粗さ共に反射型フォトマスク用低熱膨張ガラス基板の要求性能を満たしていた。
【0043】
実施例2
加工用材料としてラップ研磨加工後のサイズ152×152×6.35mmのTiをドープした低熱膨張石英ガラス基板を用意し、実施例1と同様にして仕上げポリッシュ研磨加工を実施した。
【0044】
このTiをドープした低熱膨張石英ガラス基板の平坦度をレーザー干渉式の測定機で測定したところ、平坦度は、基板の端から5mmを除いた142×142mmの範囲内で、450nmであり、ガラス基板の中央部が低い形状であった。加工前の表面の自乗平均平方根粗さをAFMの視野1μmで測定したところ、0.15nmRMSであった。また、Tiドープ量をICP発光分析法により測定した結果、4.4wt%であった。
【0045】
装置のX−Y方向に平行移動可能なステージ上にガラス基板の1辺がステージのX方向と平行になるようにこのガラス基板を設置し、低熱膨張石英ガラス基板周辺部でのプラズマを安定化させるために、ガラス基板4辺の外周すべてに、プラズマ安定化用ガラス板を設置し保持した。本実施例では、プラズマ安定化用ガラス板として、比誘電率4.0、幅60mm、厚み6.35mmのTiをドープした低熱膨張石英ガラス板を用いた。
【0046】
この低熱膨張石英ガラス基板の表面形状を基にプラズマの走査速度を求めるが、その際プラズマを静止してプラズマがガラス基板に触れている領域が加工する単位加工形状を用いるが、その単位加工形状は、長さ45mm、幅14mmであった。プラズマを発生させる構造は実施例1と同様にし、加工チャンバー内にHeガスを圧力が770torrになるまで導入し、反応ガスとしてCFガスを用いた。装置内から分析用の混合ガスを直接採取し、混合ガス中の酸素量をガスクロマトグラフィーで分析した結果、0.01vol%であった。また、加工電極を高速に回転させ、反応ガスを巻き込み、加工効率をあげた。
【0047】
このプラズマの単位加工形状の長手方向(45mm)を直線走査に使用し、短手方向(14mm)をステップ走査方向に使用した。具体的には、表面形状を基に求めた走査速度で、ガラス基板上をプラズマの長手方向をX−YステージのX方向に連続的に直線移動させ、Y方向には1mmピッチで短手方向にステップ走査させ、その位置で30秒プラズマを静止させ、その後、X方向の逆方向に連続的に直線移動させるという様にプラズマを逆方向に走査し始める前に30秒静止させ、ガラス基板全面を加工した。
【0048】
全面を加工し終わった低熱膨張石英ガラス基板の平坦度をレーザー干渉式の表面形状測定機で、基板の端から5mmを除いた142×142mmの範囲内を測定したところ平坦度65nmであった。また、加工後の基板表面を光学顕微鏡とSEMにより観察した結果、付着物は観察されず、AFMにて、表面の自乗平均平方根粗さを測定したところ,表面粗さ0.15nmRMSであり、平坦度、表面粗さ共に反射型フォトマスク用低熱膨張ガラス基板の要求性能を満たしていた。
【0049】
実施例3
加工用材料としてラップ研磨加工後のサイズ152×152×6.35mmのTiをドープした低熱膨張石英ガラス基板を用意し、実施例1と同様にして仕上げポリッシュ研磨加工を実施した。
【0050】
このTiをドープした低熱膨張石英ガラス基板の平坦度をレーザー干渉式の測定機で測定したところ、平坦度は、基板の端から5mmを除いた142×142mmの範囲内で、560nmであり、ガラス基板の中央部が低い形状であった。加工前の表面の自乗平均平方根粗さをAFMの視野1μmで測定したところ、0.15nmRMSであった。また、Tiドープ量をICP発光分析法により測定した結果、7.9wt%であった。
【0051】
装置のX−Y方向に平行移動可能なステージ上にガラス基板の1辺がステージのX方向と平行になるようにこのガラス基板を設置し、低熱膨張石英ガラス基板周辺部でのプラズマを安定化させるために、ガラス基板4辺の外周すべてに、プラズマ安定化用ガラス板を設置し保持した。本実施例では、プラズマ安定化用ガラス板として、比誘電率4.0、幅60mm、厚み6.35mmのTiをドープした低熱膨張石英ガラス板を用いた。
【0052】
この低熱膨張石英ガラス基板の表面形状を基にプラズマの走査速度を求めるが、その際プラズマを静止してプラズマがガラス基板に触れている領域が加工する単位加工形状を用いるが、その単位加工形状は、長さ45mm、幅14mmであった。プラズマを発生させる構造は実施例1と同様にし加工チャンバー内にHeガスを圧力が770torrになるまで導入し、反応ガスとしてCFガスを用いた。装置内から分析用の混合ガスを直接採取し、混合ガス中の酸素量をガスクロマトグラフィーで分析した結果、0.01vol%であった。また、加工電極を高速に回転させ、反応ガスを巻き込み、加工効率をあげた。
【0053】
このプラズマの単位加工形状の長手方向(45mm)を直線走査に使用し、短手方向(14mm)をステップ走査方向に使用した。具体的には、表面形状を基に求めた走査速度で、ガラス基板上をプラズマの長手方向をX−YステージのX方向に連続的に直線移動させ、Y方向には1mmピッチで短手方向にステップ走査させ、その位置で30秒プラズマを静止させ、その後、X方向の逆方向に連続的に直線移動させるという様にプラズマを逆方向に走査し始める前に30秒静止させ、ガラス基板全面を加工した。
【0054】
全面を加工し終わった低熱膨張石英ガラス基板の平坦度をレーザー干渉式の表面形状測定機で、基板の端から5mmを除いた142×142mmの範囲内を測定したところ平坦度84nmであった。また、加工後の基板表面を光学顕微鏡とSEMにより観察した結果、付着物は観察されず、AFMにて、表面の自乗平均平方根粗さを測定したところ,表面粗さ0.15nmRMSであり、平坦度、表面粗さ共に反射型フォトマスク用低熱膨張ガラス基板の要求性能を満たしていた。
【0055】
比較例1
加工用材料としてラップ研磨加工後のサイズ152×152×6.35mmのTiをドープした低熱膨張石英ガラス基板を用意し、実施例1と同様にして仕上げポリッシュ研磨加工を実施した。
【0056】
このTiをドープした低熱膨張石英ガラス基板の平坦度をレーザー干渉式の測定機で測定したところ、平坦度は、基板の端から5mmを除いた142×142mmの範囲内で、510nmであり、ガラス基板の中央部が高い形状であった。加工前の表面の自乗平均平方根粗さをAFMの視野1μmで測定したところ、0.14nmRMSであった。また、Tiドープ量をICP発光分析法により測定した結果、4.4wt%であった。
【0057】
装置のX−Y方向に平行移動可能なステージ上にガラス基板の1辺がステージのX方向と平行になるようにこのガラス基板を設置し、低熱膨張石英ガラス基板周辺部でのプラズマを安定化させるために、ガラス基板4辺の外周すべてに、プラズマ安定化用ガラス板を設置し保持した。本実施例では、プラズマ安定化用ガラス板として、比誘電率4.0、幅60mm、厚み6.35mmのTiをドープした低熱膨張石英ガラス板を用いた。
【0058】
この低熱膨張石英ガラス基板の表面形状を基にプラズマの走査速度を求めるが、その際プラズマを静止してプラズマがガラス基板に触れている領域が加工する単位加工形状を用いるが、その単位加工形状は、長さ42mm、幅13mmであった。プラズマを発生させる構造は実施例1と同様にし加工チャンバー内にHeガスを圧力が770torrになるまで導入し、反応ガスとしてCFガスを用いた。装置内から分析用の混合ガスを直接採取し、混合ガス中の酸素量をガスクロマトグラフィーで分析した結果、0.02vol%であった。また、加工電極を高速に回転させ、反応ガスを巻き込み、加工効率をあげた。
【0059】
このプラズマの単位加工形状の長手方向(42mm)を直線走査に使用し、短手方向(13mm)をステップ走査方向に使用した。具体的には、表面形状を基に求めた走査速度で、ガラス基板上をプラズマの長手方向をX−YステージのX方向に連続的に直線移動させ、Y方向には1mmピッチで短手方向にステップ走査させ、その位置で30秒プラズマを静止させ、その後、X方向の逆方向に連続的に直線移動させるという様にプラズマを逆方向に走査し始める前に30秒静止させ、ガラス基板全面を加工した。
【0060】
全面を加工し終わった低熱膨張石英ガラス基板の平坦度をレーザー干渉式の表面形状測定機で、基板の端から5mmを除いた142×142mmの範囲内を測定したところ平坦度77nmであった。また、加工後の基板表面を光学顕微鏡とSEMにより観察した結果、付着物が少量観察され、AFMにて、表面の自乗平均平方根粗さを測定したところ,表面粗さ1.32nmRMSであり、表面粗さが悪化した。
【0061】
比較例2
加工用材料としてラップ研磨加工後のサイズ152×152×6.35mmのTiをドープした低熱膨張石英ガラス基板を用意し、実施例1と同様にして仕上げポリッシュ研磨加工を実施した。
【0062】
このTiをドープした低熱膨張石英ガラス基板の平坦度をレーザー干渉式の測定機で測定したところ、平坦度は、基板の端から5mmを除いた142×142mmの範囲内で、527nmであり、ガラス基板の中央部が高い形状であった。加工前の表面の自乗平均平方根粗さをAFMの視野1μmで測定したところ、0.15nmRMSであった。また、Tiドープ量をICP発光分析法により測定した結果、4.4wt%であった。
【0063】
装置のX−Y方向に平行移動可能なステージ上にガラス基板の1辺がステージのX方向と平行になるようにこのガラス基板を設置し、低熱膨張石英ガラス基板周辺部でのプラズマを安定化させるために、ガラス基板4辺の外周すべてに、プラズマ安定化用ガラス板を設置し保持した。本実施例では、プラズマ安定化用ガラス板として、比誘電率4.0、幅60mm、厚み6.35mmのTiをドープしした低熱膨張石英ガラス板を用いた。
【0064】
この低熱膨張石英ガラス基板の表面形状を基にプラズマの走査速度を求めるが、その際プラズマを静止してプラズマがガラス基板に触れている領域が加工する単位加工痕形状を用いるが、その単位加工痕形状は、長さ38mm、幅10mmであった。プラズマを発生させる構造は実施例1と同様にし加工チャンバー内にHeガスを圧力が770torrになるまで導入し、反応ガスとしてCFガスを用いた。装置内から分析用の混合ガスを直接採取し、混合ガス中の酸素量をガスクロマトグラフィーで分析した結果、0.1vol%であった。また、加工電極を高速に回転させ、反応ガスを巻き込み、加工効率をあげた。
【0065】
このプラズマの単位加工形状の長手方向(38mm)を直線走査に使用し、短手方向(10mm)をステップ走査方向に使用した。具体的には、表面形状を基に求めた走査速度で、ガラス基板上をプラズマの長手方向をX−YステージのX方向に連続的に直線移動させ、Y方向には1mmピッチで短手方向にステップ走査させ、その位置で30秒プラズマを静止させ、その後、X方向の逆方向に連続的に直線移動させるという様にプラズマを逆方向に走査し始める前に30秒静止させ、ガラス基板全面を加工した。
【0066】
全面を加工し終わった低熱膨張石英ガラス基板の平坦度をレーザー干渉式の表面形状測定機で、基板の端から5mmを除いた142×142mmの範囲内を測定したところ平坦度95nmであった。また、加工後の基板表面を光学顕微鏡とSEMにより観察した結果、付着物が多量に観察され、白色干渉式の顕微鏡にて、表面の自乗平均平方根粗さを測定したところ,表面粗さ89nmRMSであり、表面粗さが大幅に悪化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中にガラス基板を配設し、該ガラス基板に対向して設けられた加工電極に高周波電圧を印加することによって生成した局所的なプラズマによって該反応ガスのラジカルを生成し、該ガラス基板と該ラジカルとを化学反応させて生成する反応生成物の揮発量を、予め測定したガラス基板の表面形状のデータを基に制御し、該ガラス基板表面を高平坦化する方法において、ガラス基板がTiをドープした低熱膨張石英ガラスであり、混合ガス全量に対して酸素系ガスの存在が0.01vol%以下であることを特徴とするガラス基板表面の加工方法。
【請求項2】
ガラス基板のTi元素のドープ量が8wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板表面の加工方法。
【請求項3】
ガラス基板の加工前表面の自乗平均平方根粗さが0.15nmRMS以下であることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板表面の加工方法。

【公開番号】特開2006−76816(P2006−76816A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260991(P2004−260991)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(596041995)
【Fターム(参考)】