説明

ガラス基板表面清掃装置及びガラス基板表面清掃方法

【課題】 ガラス基板上に存在する異物(主としてガラスカレット)の各種サイズ(例えば、10μmから1000μmの範囲)に適宜対応しうる清掃機能を有するガラス基板表面清掃装置、方法を提供。
【解決手段】 ガラス基板50を支持し、第一の方向(図3中M)に前記ガラス基板を搬送するためのガラス基板支持搬送機構20と、前記第一の方向に対し交差する第二の方向(図3中N)に前記ガラス基板の表面上で摺動させて、前記ガラス基板表面に付着した異物300を除去するための清掃ベルト11を有するガラス基板清掃機構10とを有するガラス基板表面清掃装置100であって、前記清掃ベルト11が、当該表面に複数の三次元構造研磨材塗膜70と、当該塗膜間に位置する溝60とを有し、前記溝60の溝幅62が前記ガラス基板表面に付着した異物300の外形幅寸法より広いガラス基板表面清掃装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板を分断する分断装置において発生するガラス基板上に付着した異物(主として、ガラスカレット)のガラス基板表面清掃装置及びガラス基板表面清掃方法に関するもので、特に液晶パネルの製造工程において、偏光板の貼り付け工程前に液晶パネルを構成するガラス基板表面清掃装置、方法に関するものある。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板を分断する基板分断装置に付随するガラス基板上に付着した異物(主として、ガラスカレット)の清掃装置、方法としては、現在、ガラス基板に真空吸引手段を用いた装置、方法もしくは研磨材を用いた装置、方法等が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−94690号公報
【特許文献2】特開2005−81297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は、ガラス基板上に存在する異物(主としてガラスカレット)の各種サイズ(例えば、10μmから1000μmの範囲)に適宜対応しうる清掃機能を有するガラス基板表面清掃装置、方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるガラス基板表面清掃装置は、一態様として、ガラス基板50を支持し、第一の方向(図3中M)に前記ガラス基板を搬送するためのガラス基板支持搬送機構20と、前記第一の方向に対し交差する第二の方向(図3中N)に前記ガラス基板の表面上で摺動させて、前記ガラス基板表面に付着した異物300を除去するための清掃ベルト11を有するガラス基板清掃機構10とを有するガラス基板表面清掃装置100であって、前記清掃ベルト11が、当該表面に複数の三次元構造研磨材塗膜70と、当該塗膜間に位置する溝60とを有し、前記溝60の溝幅62が前記ガラス基板表面に付着した異物300の外形幅寸法より広いガラス基板表面清掃装置100として構成されている。
【0006】
ここに、「清掃」とは、ガラス基板上の異物(主としてガラスカレット)を除去することを意味する。「異物の外形幅寸法」とは、清掃ベルトをガラス基板上で摺動させる第二の方向(図3中N)における異物の最大外周幅を意味する。「溝」とは、三次元構造研磨材塗膜とそれに隣り合う他の三次元構造研磨材塗膜間に構成される隙間を意味する。「溝幅」とは、三次元構造研磨材塗膜の上部72とそれに隣り合う他の三次元構造研磨材塗膜の上部72との間隔を意味する。ガラスカレットとは、ガラス製品を破砕、切断等した際に生じるガラス屑を意味する。
【0007】
本発明の別の態様として、上記ガラス基板表面清掃装置100に使用される清掃ベルト11として構成されている。
【0008】
さらに、本発明の別の態様として、ガラス基板支持搬送機構を用いて第一の方向にガラス基板を搬送する工程、前記ガラス基板表面に付着した異物を除去するためにガラス基板清掃機構を有する清掃ベルトを、前記ガラス基板の表面上で前記第一の方向に対し交差する第二の方向に摺動させる工程を含むガラス基板表面清掃方法であって、前記清掃ベルトが、当該表面に複数の三次元構造研磨材塗膜と、当該塗膜間に位置する溝とを有し、前記溝の溝幅が前記ガラス基板表面に付着した異物の外形幅寸法より広いことを特徴とするガラス基板表面清掃方法として構成されている。
【発明の効果】
【0009】
この発明にかかるガラス基板表面清掃装置及び方法によれば、ガラス基板上の広範なサイズの異物(主としてガラスカレット)を、適宜効率的にかつ確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明にかかるガラス基板表面清掃装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明にかかるガラス基板表面清掃装置の全体構成を示す正面図である。
【図3】図3は、本発明にかかるガラス基板表面清掃装置のガラス基板の搬送方向(第一の方向、M)と清掃ベルトの摺動方向(第二の方向、N)との関係を示す平面図である。
【図4】図4は、本発明にかかるガラス基板表面清掃装置が具備した清掃ベルトの表面に設けられた構造化された複数の三次元構造研磨材塗膜を有した三次元構造研磨材層の一部を示す平面図である。
【図5】図5は、図4における切断線X−Xに沿った横断面図である。
【図6】図6は、清掃ベルトの三次元構造研磨材層に設けられた溝の溝幅がガラス基板表面に付着した異物(ガラスカレット)の外形幅寸法より広い場合の異物と溝との作用関係を示す模式断面図である。
【図7】図7は、清掃ベルトの三次元構造研磨材層に設けられた溝の溝幅がガラス基板表面に付着した異物(ガラスカレット)の外形幅寸法より狭い場合の異物と溝との作用関係を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で当業者の通常の知識に基づいて適宜設計の変更、改良等が加えることができると理解されるべきである。
【0012】
図1、図2は、例えば、特開2005−81297号公報に記載されている液晶パネルの製造工程における偏光板の貼り付け工程前に液晶パネルを構成するガラス基板の表面を清掃するに供する本発明の清掃装置を示したものである。図1において、ガラス基板表面清掃装置100は、ガラス基板支持搬送機構20とガラス基板清掃機構10とを備えている。ガラス基板支持搬送装置20は、ガラス基板を下方面側から支持し、ガラス基板を第一の方向(図3中M)に搬送するための搬入ローラシャフト21と搬出ローラシャフト22及びガイド23を有する。ガラス基板清掃機構10は、基板支持搬送装置20のほぼ中央上方に設けられ、無縁軌道を有する清掃ベルト11と、当該清掃ベルトに所定のテンションを与えながら回転させる為の従動ガイドプーリ13,14,15と駆動ガイドプーリ12を有して構成されている。駆動ガイドプーリは、駆動ガイドプーリに駆動力を与えるべく駆動モータ18に連結されている。また、清掃ベルト11は、ガラス基板の搬送方向(第一の方向、図3中M)に対して、交差する方向(第二の方向、図3中N)に配置されている。
【0013】
図2に示すように、摺動時に清掃ベルト11はガラス基板50上面に接して配置されており、また清掃ベルト直上には清掃ベルトにガラス基板への押付力を付加すべく荷重負荷装置30が配置されている。荷重負荷装置30としては、エアブロアタイプ、水圧タイプ等必要に応じていずれのものも用いることができる。荷重負荷は、0.01kg/cmから3kg/cmの範囲で調整できる。
【0014】
図3は、上記ガラス基板清掃装置においてガラスの搬送方向(第一の方向、図3中M)と清掃ベルトの摺動方向(第二の方向)との関係を示したものである。図3に示すように清掃ベルトのガラス基板上での摺動方向(第二の方向、図3中N)は、ガラス基板の搬送方向(第一の方向、図3中M)に対して交差する方向に設けられている。このように清掃ベルトを交差して配置するのは、ガラス基板に対し摺動面を広くとれ、またガラス基板の清掃ベルトへの突入時における衝撃を緩和させる為である。当該交差角度θ(図3)は、具体的には、約70°〜85°、もしくは、95°〜110°程度に設けられている。
【0015】
ベルト摺動速度、ガラス基板搬送速度は、ガラス基板の生産性、異物除去の程度を考慮して決められる。具体的には、ガラス基板の第二の方向(図3中N)のベルト摺動速度は、通常毎分10mから500mの範囲で調整でき、ガラス基板の第一の方向(図3中M)の搬送速度は、通常毎分0.1mから10mの範囲で調整できる。摺動速度/搬送速度の比の値は、通常、2から100である。よって、当該ガラス基板表面清掃装置において、異物除去は、主として第二の方向(図3中N)の清掃ベルトの摺動によりなされることになる。
【0016】
図4、5は、本発明の一実施態様として、ガラス基板清掃機構10に用いられる清掃ベルト11を示したものである。図4、5に示すように、本発明において用いられる清掃ベルト11は、表面に複数の三次元構造研磨材塗膜70と当該複数の三次元構造研磨材塗膜間に構成される溝60を有する研磨材層80と表面の背面側に研磨層を保持するバッキング層90から構成される。
【0017】
研磨材層は、前記したようにバッキング層90の上面に搭載された三次元構造研磨材塗膜70と溝から構成されている。
【0018】
三次元構造研磨材塗膜70の幾何学的形状は、立方体状、角柱状、円柱状、円錐状、角錐状、切頭角錐(角錐台)状、切頭円錐(円錐台)状などからなる群から選択される。これらの中で、好ましいのは、平坦な上面を有する切頭角錐・切頭円錐の形態を有したものである。切頭角錐・切頭円錐であれば、三次元研磨材塗膜の上面がガラス基板と面接触しガラス基板上に付着する異物除去が促進されるからである。
当該切頭角錐・切頭円錐の三次元構造研磨材塗膜70は、通常、精密成型により形成される。ここで、「精密成型」とは、国際公開第WO98/39142号に記載されているものと同じ意味であり、砥粒を含むバインダー前駆物質をバッキング層90上に製造ツールを用いて成型し、その後、バインダー前駆物質を硬化させて、三次元形状体を形成することをいう。
【0019】
このように精密成型された各切頭角錐の上部72の面積は、0.2mmから20mm、好ましくは、1mmから10mmである。当該切頭角錐の下部74は、上部より最大60%、より好ましくは最大40%、もっとも好ましくは最大20%大きい表面を有する。また、切頭角錐・円錐の高さ(図5中H)は、0.2mmから5mm、より好ましくは、0.3mmから3mmである。これら三次元研磨材塗膜70の形態は、最終的には、除去する異物の状態、すなわち異物の大きさ、基板への付着強度等を考慮して決められる。
【0020】
上記複数の三次元研磨材塗膜70は、バッキング層90の上面に通常第二の方向(図3中N)に等間隔で格子状、千鳥状等の規則性を持って整然と配置される。このように配置を、国際公開第WO98/39142号に記載されているものと同じ意味で「構造」と称するのでそれに対応して本明細書では、研磨材層、研磨材塗膜を三次元「構造」研磨材層、三次元「構造」研磨材塗膜と呼ぶ。
清掃ベルト11の構成材料はバッキング層90と三次元構造研磨材層80からなり、三次元構造研磨材層80は砥粒とバインダーから成る。
【0021】
バッキング層90は、清掃ベルトが長持ちし、異物除去(主としてガラスカレット)300が、ベルト全幅にわたって均一に行い得るように強度があり耐久性がある必要がある。清掃ベルト11がガラス基板に均一に合致し、もしくは、密着することができるように、強度があり可撓性、柔軟性が必要である。バッキング層の材料としては、ポリマーフィルム、紙、布、金属フィルム、バルカナイズドファイバー、及びこれらの積層体、処理品等を用いることができる。ポリマーフィルムの例は、ポリエステルフィルム、コポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム等である。紙の例は、強度向上のため、樹脂を含浸させたもの等である。布の例としては、樹脂繊維、綿繊維、ガラス繊維、及びこれらを組み合わせた繊維等から選択された繊維を用い、織布またはニット等をもちいることができる。尚、ポリマーフィルムについては、三次元構造研磨材塗膜の基材に対する接着を促進するためにエチレンアクリル酸共重合体のような材料で下塗りしてもよい。
【0022】
三次元構造研磨材層80はバインダーのマトリックスとその中に分散させた砥粒とを含む研磨材コンポジットを構成成分として有している。
【0023】
砥粒の寸法はガラス表面に深い傷を発生させないよう、細かいことが好ましい。例えば、その寸法は、平均粒径0.01〜10μm、好ましくは0.01〜5μmさらに好ましくは0.01〜3μmである。本発明に適する砥粒の例には、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、酸化セリウム、溶融酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウム、ゾルゲル酸化アルミニウム、シリコンカーバイド、酸化クロム、シリカ、ジルコニア、アルミナジルコニア、酸化鉄、ガーネット、炭酸カルシウムおよびこれらの混合物が含まれる。特に好ましいものは、モース硬度6以上のダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、酸化アルミニウム、シリコンカーバイド、酸化セリウム、シリカである。
【0024】
バインダーは硬化またはゲル化することにより研磨材層を形成する。本発明に好ましいバインダーの例には、フェノール樹脂、レゾール−フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、メラミン樹脂、アクリレート化イソシアヌレート樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリレート化ウレタン樹脂、アクリレート化エポキシ樹脂およびこれらの混合物が含まれる。バインダーは熱可塑性樹脂でもよい。
【0025】
特に好ましいものは、フェノール樹脂、レゾール−フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂である。
【0026】
バインダーは照射硬化性であってもよい。照射硬化性結合剤は照射エネルギーにより少なくとも部分的に硬化されるか、または少なくとも部分的に重合されうるいずれかのバインダーである。用いられるバインダーに依存して、熱、赤外線、電子線、紫外線照射または可視光照射のようなエネルギー源が用いられる。
【0027】
典型的には、これらのバインダーはフリーラジカル機構により重合される。好ましくは、これらは、アクリレート化ウレタン、アクリレート化エポキシ、α,β−不飽和カルボニル基を有するアミノプラスト誘導体、エチレン性不飽和化合物、少なくとも1個のアクリレート基を有するイソシアヌレート誘導体、少なくとも1個のアクリレート基を有するイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0028】
バインダーが紫外線照射により硬化される場合は、フリーラジカル重合を開始させるために光開始剤を必要とする。この目的に好ましい光開始剤の例には、有機パーオキシド、アゾ化合物、キノン、ベンゾフェノン、ニトロソ化合物、アクリルハライド、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、トリアクリルイミダゾール、ビスイミダゾール、クロロアルキルトリアジン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、チオキサントンおよびアセトフェノン誘導体が含まれる。好ましい光開始剤は2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−1−エタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンである。
【0029】
バインダーが可視光照射で硬化される場合は、光開始剤はフリーラジカル重合を開始させることが必要とされる。この目的のために好ましい光開始剤の例は、ここに参照として挙げる米国特許第4,735,632号、第3欄、第25行から第4欄第10行、第5欄第1〜7行、第6欄第1〜35行に記載されている。
【0030】
研磨材コンポジットは、未硬化または未ゲル化状態のバインダー中に分散された複数の砥粒を含有するスラリーから形成される。硬化またはゲル化において、研磨材コンポジットは固形化、すなわち予め定められた形状および予め定められた構造に固定される。
【0031】
研磨材コンポジットにおける砥粒のバインダーに対する混合比は、一般に、バインダー100質量部に対して約50〜1000質量部の砥粒、好ましくはバインダー100質量部に対して約100〜700質量部の砥粒の範囲である。この割合は砥粒の種類とサイズおよび用いるバインダーの種類に依存して変化する。
【0032】
研磨コンポジットは砥粒およびバインダー以外の材料を含んでよい。例えば、カップリング剤、湿潤剤、染料、顔料、可塑剤、フィラー、剥離剤、研磨補助剤およびこれらの混合物のような通常の添加剤である。
【0033】
研磨コンポジットはカップリング剤を含むことができる。カップリング剤を添加することにより、研磨コンポジットを形成するために用いるスラリーの粘度を低下させうる。本発明に好ましいこのようなカップリング剤の例には、有機シラン、ジルコアルミネートおよびチタネートが含まれる。カップリング剤の量は、一般に、砥粒の5質量%未満、好ましくは2質量%未満である。
【0034】
清掃ベルト11の三次元構造研磨材層80の溝60は、複数の三次元構造研磨材塗膜70間に形成されており、溝の形状は、バッキング層90の上面に搭載され構造化された三次元構造研磨材塗膜70の外周そのものとなる。よって、溝の深さは、切頭角錐の高さと同じ、0.2mmから5mmであり、好ましくは、0.3mmから3mmである。また、溝の幅は、0.3mm以上、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上である。
【0035】
発明にかかる清掃装置の清掃ベルトの溝寸法は、除去すべき異物(主としてガラスカレット)の寸法を考慮して決められる。図6、図7は、清掃装置の稼働時の異物(ガラスカレット)と清掃ベルトの溝60との関係を模式的に示したものである。図6に示すような溝幅がガラス基板表面に付着した異物(ガラスカレット)の外形幅寸法より広い場合、最初、ガラス基板上の異物(ガラスカレット)300の上部が研磨材層の構造化された複数の三次元構造研磨材塗膜70の上部72と接触しているに過ぎない(図6(a)参照)が、清掃ベルトがガラス基材上を摺動することで、清掃ベルト11の良好な可撓性に起因して異物(ガラスカレット)300は、溝内に包含され、溝に嵌合することになる(図6(b)参照)。ここで、「異物が溝に嵌合する」とは、異物の少なくとも上部の一部が三次元構造研磨材塗膜間に構成される溝内に包含され、ベルトの摺動により三次元構造研磨材塗膜より第二の方向(図3中N)に剪断力を受け得るようになる状態を言う。
【0036】
その後、溝内の異物(ガラスカレット)は、溝の側壁、すなわち良好な形状維持性を有する三次元研磨材塗膜70の側壁に衝突し(図6(c)参照)、最終的に異物(ガラスカレット)は、ガラス基板上から剥ぎ取られ溝内を移動して除去される(図6(d)参照)ことになる。
【0037】
一方、図7に示すような溝幅がガラス基板表面に付着した異物(ガラスカレット)300の外形幅寸法より狭い場合、最初、ガラス基板上の異物(ガラスカレット)の上部が研磨層の三次元構造研磨材塗膜70の上部72と接触している状態から、その後、清掃ベルトが摺動することで、異物(ガラスカレット)が、溝に到達しても、溝内に包含されることなく、研磨複合体の上部を滑るだけで、異物(ガラスカレット)は、ガラス基板上から剥ぎ取られることはなく、ガラス基板上に残留することになる。
【0038】
具体的ガラス基板表面清掃方法の一例は、次のようになる。本発明にかかるガラス基板表面清掃装置は、次の手順で操作される。
(1)最初に、ガラス基板50の同一製造ロットからガラス基板上の異物発生状況検査の為、サンプリングを行い、サンプルについて、異物の存在個数、異物の外形寸法を調査し、異物に関する情報を得る。
ここで、異物発生状況検査としては、光学顕微鏡による検査、画像処理装置を用いての検査等で行うことができる。
(2)清掃ベルトの摺動方向(第二の方向)における異物の外形幅寸法の製造ロットにおける最大値を予測し、その値以上の溝幅を有する清掃ベルトを選択し、清掃装置に装着する。
(3)一番目のガラス基板を搬送装置上に配置した後、ガラス基板表面清掃の作業効率等を考慮して、搬送方向(第一の方向、図3中M)に対する清掃ベルトの摺動方向(第二の方向、図3中N)の交差条件を決める。
(4)清掃ベルトをガラス基板の長手方向端部に、密着させた後、ガラス基板を搬送方向(第一の方向、図3中M)に搬送するとともに、清掃ベルトを摺動方向(第二の方向、図3中N)に摺動させる。
(5)一番目のガラス基板のガラス基板表面の清掃終了後、二番目以降のガラス基板を搬送装置上に配置し、以下(3)(4)の工程を繰り返す。
【0039】
次に、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例】
【0040】
(1)試験サンプル準備
1)実施例1、2
本発明にかかるガラス基板表面清掃方法用いるに適した三次元構造研磨材層を有する清掃ベルトを以下の方法で作製した。
【0041】
表1の配合の研磨材塗液をナイフコーターにより高さ約0.5mm、1辺の長さ約2mmの正方形の上部を有する切頭四角錐(四角錐台)の表面形状を有し、切頭四角錐(四角錐台)間の距離が約1.6mmのパターンを形成するためのポリプロピレン製の賦形フィルム(2MM−30−500)上に塗布し、その上に裏面に炭酸カルシウム粒子とウレタン樹脂を含む滑り防止コーティングを有する厚さ125μmの易接着処理ポリエステルフィルムをラミネートし紫外線を照射して接着剤を硬化させ、研磨フィルムと賦形フィルムとを分離した。この研磨フィルムを110℃で24時間加熱処理した後、室温に冷却して研磨フィルムを作製した。尚、易接着処理としては、エチレンアクリル酸共重合体で下塗りしたものである。
【0042】
【表1】

【0043】
2)実施例3、比較例1
住友スリーエム株式会社製 トライザクト(登録商標)ラッピングフィルム 5ミル 3ミクロン 酸化アルミニウム タイプ2
【0044】
この研磨材は実施例1と同一のフィルム基材上に高さ約0.35mm、1辺の長さ約1.3mmの正方形の上面を有する切頭四角錐(四角錐台)の表面形状の研磨材層を有し、切頭四角錐(四角錐台)の距離が約0.5mmであって平均粒径3μmの酸化アルミニウムを砥粒として含む。
(2)評価試験方法と評価試験結果
1)ガラス基板を用意し、その上で同一のガラス板2枚のエッジ同士を擦らせてガラスカレットを発生させてガラス基板の上に落とし、しばらく放置して付着させた。ガラス基板を、ガラス基板に付着したガラスカレットの寸法(外形幅寸法)が1.5mm以下で0.5mm以上の群と0.5mm未満の群に分類して、試験に供した。
【0045】
2)実施例1、2,3及び比較例1の研磨フィルムを幅約30mm、長さ2080mmのエンドレスベルトに加工し、清掃ベルトを作製した。この清掃ベルトを清掃装置に装着し、交差角度θ(図3)を、80°設定し、ベルト摺動速度は、100m/分の速度で走行させ、その下方にカレットを付着させた表面が研磨材表面に当たるようにガラス基板を搬送速度約6m/分で通過させた。このときベルトの背面から圧力約0.1MPaで水を供給してベルトに荷重をかけ研磨材表面をガラス基板の表面に押し当て、ガラス基板の表面にさらに水を供給してカレットを付着させた表面を清掃した。清掃後のガラス表面のカレットの残存の程度を表2に示した。
【0046】
【表2】

【符号の説明】
【0047】
10 ガラス基板清掃機構
11 清掃ベルト
12 駆動ガイドプーリ
13、14,15 従動ガイドプーリ
18 駆動モータ
20 ガラス基板支持搬送機構
21 搬入ローラシャフト
22 搬出ローラシャフト
23 ガイド
30 荷重付加装置
50 ガラス基板
60 溝
62 溝幅
70 三次元構造研磨材塗膜
72 (三次元構造研磨材塗膜の)上部
74 (三次元構造研磨材塗膜の)下部
80 三次元構造研磨材層
90 バッキング層
100 ガラス基板表面清掃装置
300 異物(主としてガラスカレット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板を支持し、第一の方向に前記ガラス基板を搬送するためのガラス基板支持搬送機構と、前記第一の方向に対し交差する第二の方向に前記ガラス基板の表面上で摺動させて、前記ガラス基板表面に付着した異物を除去するための清掃ベルトを有するガラス基板清掃機構とを有するガラス基板表面清掃装置であって、記清掃ベルトが、当該表面に複数の三次元構造研磨材塗膜と、当該塗膜間に位置する溝とを有し、前記溝の溝幅が前記ガラス基板表面に付着した異物の外形幅寸法より広いガラス基板表面清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス基板表面清掃装置に使用される清掃ベルト。
【請求項3】
ガラス基板支持搬送機構を用いて第一の方向にガラス基板を搬送する工程、前記ガラス基板表面に付着した異物を除去するためにガラス基板清掃機構を有する清掃ベルトを、前記ガラス基板の表面上で前記第一の方向に対し交差する第二の方向に摺動させる工程を含むガラス基板表面清掃方法であって、前記清掃ベルトが、当該表面に複数の三次元構造研磨材塗膜と、当該塗膜間に位置する溝とを有し、前記溝の溝幅が前記ガラス基板表面に付着した異物の外形幅寸法より広いことを特徴とするガラス基板表面清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−179539(P2012−179539A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43513(P2011−43513)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】