説明

ガラス基板運搬用合紙

【課題】各種物理的強度、クッション性、帯電防止性等に優れ、ガラス基板の運搬等の際に、破損したり折曲がったりせず、ガラス基板表面の清浄度をより確実に高く保つことができるガラス基板運搬用合紙を提供することである。また、天然有機物資源に対する依存度が低く、廃棄の際にも環境保護が図れるガラス基板運搬用合紙を提供することである。
【解決手段】脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層が積層されてなる積層体であって、少なくとも1層の発泡樹脂層と少なくとも1層の非発泡樹脂層又は発泡樹脂層が積層され延伸されてなる発泡二軸延伸シートからなることを特徴とするガラス基板運搬用合紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡二軸延伸シートからなるガラス基板運搬用合紙に関する。詳しくは、ガラス基板を所定の位置まで搬送する際、複数枚重ねたガラス基板の間に介在され、また、所定位置に搬送された後も、開梱時やガラス基板が使用に供されるまでの間、ガラス基板の間に介在されるガラス基板運搬用合紙に関する。
また、吸引機構を有する吸引パッドでガラス基板を吸引保持して所定位置に搬送する際にガラス基板表面と吸引パッドの吸着面との間に介在されるガラス基板運搬用合紙に関する。
【背景技術】
【0002】
厚さが薄く、長尺、広幅のガラス基板は、板ガラスメーカーで、ガラスタンク窯内のガラス融液を、成形用ロールによって、連続した広幅の板状体として引き出されて製造される。ガラス基板は、用途に応じた所定の厚さ、幅、長さにして使用に供される。ガラス基板の用途に関しては、画像表示機器用ガラス基板、太陽光発電システム用ガラス基板、自動車用ガラス基板、建材用ガラス基板等が挙げられる。画像表示機器用としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用等がある。
【0003】
上記の用途に使用されるガラス基板は、板ガラスメーカーで製造された後、ディスプレイメーカー(ガラス基板の使用者(ユーザー))等に、一般には複数枚を一群として梱包され搬送される。ガラス基板の厚さや大きさは用途により変わり、例えば、厚さが0.7mm程度のガラス基板の場合には、例えば、300mm×400mm、550mm×650mm、680mm×680mm、1000mm×1850mmの大きさのものが実用化されており、更に大面積化(大型化)される傾向にある。これらガラス基板は、板ガラスメーカーで製造された後、梱包され、ガラス基板の使用者等に運搬され、開梱されて、各種ディスプレイ基板等の用途に供される。
【0004】
これらガラス基板は、薄肉化、大型化されるに伴って、梱包、運搬、貯蔵、開梱等の作業の際に欠け、擦り傷、割れ等が生じ易いという問題がある。梱包作業の際の欠け、擦り傷、割れ等は、完全に生じないようにする必要がある。従来、板ガラスメーカーで製造されたガラス基板を梱包する方法としては、ガラス基板の間に紙を介在させて複数枚のガラス基板を梱包する方法、上面が開口した箱状の容器内に複数枚のガラス基板を縦に並べて収納し、樹脂製のクッション用シートを介在させて搬送する方法(特許文献1参照)、一枚のガラス基板を複数の吸引パッドを装備した吸引機構によって吸引保持し、吸引機構によって保持した状態でガラス基板収納容器に移送して収納する方法等が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、その表面に各種電子表示機能素子や薄膜が形成される用途では、特にガラス基板表面の清浄度が高いこと、かつ傷がないことが要求される。このため、洗浄処理した後のガラス基板の表面に傷をつけず、吸引パッドの吸引跡もつけない移送技術が提案されている(特許文献3)。
【0006】
特許文献3では、ガラス基板の合紙として発泡樹脂シートが用いられているが、その材質に関しては記載がない。また、梱包、運搬、貯蔵、開梱等の作業の際に、ガラス基板運搬用合紙が破損することなく、ガラス基板表面の清浄度をより確実に高く保てるような、ガラス基板運搬用合紙の化学的材質に関する報告はあまりなされていない。
【0007】
ガラス基板運搬用合紙としては、一般的には、紙やポリエチレン等のポリオレフィンが用いられている。しかしながら、かかる紙やポリマーは種々の機械的・物理的な強度に劣る場合があり、また、発泡樹脂シートとしたときに、更にガラス基板運搬用合紙としての強度に問題が生じる場合があった。
【0008】
また、特許文献3に記載されているような吸引パッドを用いたガラス基板運搬用の合紙として発泡樹脂シートを用いる場合、その好適な層構成、延伸の有無、延伸倍率、熱収縮応力、発泡倍率、各種物理的強度等に関しての検討も殆どなされていなかった。
【0009】
また、発泡樹脂シート(ガラス基板運搬用合紙)が帯電し易いと、ガラス基板の間から抜き取ったシートを再使用に供する際に、シートが取り扱われる雰囲気に浮遊している塵芥がシートに付着し易いという問題もあり、シートに帯電防止剤を含有させても、シートを再使用するために塵芥等を洗浄する際に、表面の帯電防止剤が洗い流されてしまい、帯電し易くなってしまうという問題もあった。
【0010】
更には、ガラス基板運搬用合紙はリサイクルが可能とはいうものの、大量に用いられるものであり、そのようなものが貴重な天然有機物資源に全て依存することは、省資源の観点からも問題があった。また、ガラス基板運搬用合紙はリサイクルが可能とはいうものの、最後には大量に廃棄されるものであり、環境保護の観点からも問題があった。
【0011】
一方、例えば、特許文献4には、化学発泡剤を配合し、発泡倍率1.07〜2.1倍、厚み0.1〜1mmとなるよう二軸延伸し、耐折強さが10以上の成形用スチレン系樹脂シートが開示されている。ここには、二軸延伸することによりスチレン系樹脂シートの強靭性等が改良されることが記載されているが、脂肪族系ポリエステルに関する記載はない。況してや、一般に、ガラス基板運搬用合紙に要求される特定の物性を確保しようとして、脂肪族系ポリエステルを用い、層構成、延伸の有無、延伸倍率、熱収縮応力、発泡倍率、各種物理的強度等を検討した技術は殆どなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−226354号公報
【特許文献2】特開2001−239488号公報
【特許文献3】特開2005−075482号公報
【特許文献4】特公昭64−006014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、ガラス基板の運搬等の際に、ガラス基板運搬用合紙が破損したり折曲がったりせず、ガラス基板表面の清浄度をより確実に高く保てるガラス基板運搬用合紙を提供することにあり、各種機械的・物理的強度、クッション性、帯電防止性等に優れたガラス基板運搬用合紙を提供することにある。
【0014】
また、特許文献3に記載されているような吸引パッドを用いたガラス基板運搬用に用いたとき、優れた機械的・物理的強度、クッション性、吸引保持性、帯電防止性等を有するガラス基板運搬用合紙を提供することにある。また、天然有機物資源に対する依存度が低く、廃棄の際にも環境保護が図れるガラス基板運搬用合紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層を有し、そのうち少なくとも1層を発泡樹脂層とし、更に二軸延伸した「特定の発泡二軸延伸シート」を用いることによって、特に、ガラス基板運搬用合紙に求められる特有の機械的・物理的強度等を全て達成することができ、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層が積層されてなる積層体であって、少なくとも1層の発泡樹脂層と少なくとも1層の非発泡樹脂層又は発泡樹脂層が積層され延伸されてなる発泡二軸延伸シートからなることを特徴とするガラス基板運搬用合紙を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層にポリ乳酸が含有されている上記のガラス基板運搬用合紙を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、非発泡樹脂層/発泡樹脂層/非発泡樹脂層の順に積層され、かつ両非発泡樹脂層の厚みの合計が積層体全体の厚みの1〜70%である上記のガラス基板運搬用合紙を提供するものであり、また、発泡樹脂層/非発泡樹脂層/発泡樹脂層の順に積層され、かつ非発泡樹脂層の厚みが積層体全体の厚みの5〜95%である上記のガラス基板運搬用合紙を提供するものであり、また、発泡樹脂層/発泡樹脂層/発泡樹脂層の順に積層され、かつ各発泡樹脂層の厚みが積層体全体の厚みの1〜98%である上記のガラス基板運搬用合紙を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、発泡剤と脂肪族系ポリエステルを含む樹脂組成物と、発泡剤を含まず脂肪族系ポリエステルを含む樹脂組成物とを別々の押出機で溶融混練して1つの口金から共押出させてシートを形成し、該シートを冷却後再加熱して二軸方向に共延伸することにより、少なくとも1層の非発泡樹脂層と少なくとも1層の発泡樹脂層を積層させ、必要により熱固定することを特徴とする上記のガラス基板運搬用合紙の製造方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、発泡剤と脂肪族系ポリエステルを含む樹脂組成物を、少なくとも2台以上の押出機で別々に溶融混練して1つの口金から共押出させてシートを形成し、該シートを冷却後再加熱して二軸方向に共延伸することにより、少なくとも2層以上の発泡樹脂層同士を積層させ、必要により熱固定することを特徴とする上記のガラス基板運搬用合紙の製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、複数枚のガラス基板を、上記のガラス基板運搬用合紙を介して積み重ね、パレット上に又は箱体内に配置することを特徴とするガラス基板運搬用合紙の使用方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、前記問題点を解消し上記課題を解決し、下記したように優れたガラス基板運搬用合紙を提供することができる。
(a)ガラス基板の梱包、運搬、貯蔵、開梱等の作業の際に、ガラス基板運搬用合紙が、破損したり折曲がったりせず、ガラス面にキズ・融着等の悪影響を与えたりせず、ガラス基板表面の清浄度をより確実に高く保てるガラス基板運搬用合紙を提供することができる。
(b)ガラス基板運搬用合紙として好適なように、層構成、延伸倍率、熱収縮応力、発泡倍率等を設定可能であり、そのように設定することによって、ガラス基板運搬用合紙として好適な各種機械的・物理的強度、クッション性等を実現できる。
(c)JIS K6911による表面固有抵抗値を、ガラス基板運搬用合紙として好適な範囲に設定でき、再使用する際に雰囲気中に浮遊している塵芥が付着し難く、ガラス基板表面の汚染をなくすことができる。また、再使用してもその表面固有抵抗値を維持できる。
(d)帯電防止剤を外層にのみ又は外層に多く配合することによって、製造原料コストを上げずに表面固有抵抗値を下げることができ、その結果上記(c)記載の効果が安価に得られる。
(e)発泡二軸延伸シートの透気度が適切な範囲になっている場合は、ガラス基板の上側に載置して、その上から吸引機構の吸引パッドでガラス基板を吸引保持することができる。
(f)発泡二軸延伸シートに通気細孔が全面に亘って穿孔されている場合は、吸引機構の吸引パッドによるガラス基板の吸引保持作業が容易であり、また、通気細孔が全面に亘って穿孔されていても、ガラス基板運搬用合紙として好適な各種機械的・物理的強度を維持できる。
(g)洗浄処理した後のガラス基板の表面に傷をつけず、移送する際に用いられる吸引パッドの吸引跡もつけないガラス基板運搬用合紙を提供することができる。
(h)貴重な天然有機物資源に対する依存度が低いため省資源化が可能である。
(i)廃棄の際、環境保護が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0024】
<脂肪族系ポリエステル>
本発明の「発泡二軸延伸シートからなるガラス基板運搬用合紙」は、脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層が積層されてなる積層体構造を有している。「脂肪族系ポリエステル」とは、実質的に芳香族環を含まない脂肪族のポリエステルをいい、乳酸等のヒドロキシカルボン酸;ヒドロキシカルボン酸の環状2量体;ラクタイド、グリコライド、ε−カプロラクトン等の環状エステル等の重縮合した構造を有するポリエステル、又は、脂肪族ジカルボン酸と(脂肪族及び/又は脂環式ジオール)とが重縮合した構造を有するポリエステル等が含まれる。更に、上記複数種類の原料化合物の共重縮合したポリエステルも含まれる。
【0025】
本発明における脂肪族系ポリエステルは、「ポリ乳酸」及び/又は「脂肪族ジカルボン酸と(脂肪族及び/又は脂環式ジオール)とが重縮合した構造を有するポリエステル」であることが好ましい。前者の「及び/又は」は、積層体の1つの層に含まれる脂肪族系ポリエステルが、「ポリ乳酸」単独又は「脂肪族ジカルボン酸と(脂肪族及び/又は脂環式ジオール)とが重縮合した構造を有するポリエステル」単独の場合も、両者の混合物である場合も含まれることを意味する。
【0026】
<<ポリ乳酸>>
本発明において用いる「ポリ乳酸」なる語の概念には、ポリ乳酸、乳酸−ヒドロキシカルボン酸共重合体等のコポリ乳酸、及び、ポリ乳酸と乳酸−ヒドロキシカルボン酸共重合体の混合物等のポリマーブレンドやポリマーアロイも包含する。「ポリ乳酸」の原料としては、乳酸類、ヒドロキシカルボン酸類等が用いられる。乳酸類の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの混合物、乳酸の環状2量体であるラクタイド等を挙げることができる。
【0027】
乳酸類と共重縮合可能なヒドロキシカルボン酸類としては、分子中に1個の水酸基と1個のカルボキシル基を有する化合物又はその誘導体であれば特に限定されるものではない。例えば、3−ヒドロキシブチレート、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等を挙げることができ、更に、ヒドロキシカルボン酸類の環状エステル、グリコール酸の2量体であるグリコライド等も挙げられる。環状エステルの具体例としては、例えば、6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトン等を挙げることができる。
【0028】
主にL−乳酸からなるポリエステルは、D−乳酸が6質量%以下のものが好ましく、3質量%以下のものが特に好ましい。融点は150〜180℃のものが好ましく、160〜170℃の範囲のものが特に好ましい。D−乳酸の含有量が多過ぎるものは延伸成形性が劣る場合がある。また、主にD−乳酸からなるポリエステルは、L−乳酸が6質量%以下のものが好ましく、3質量%以下のものが特に好ましい。融点は150〜180℃のものが好ましく、160〜170℃の範囲のものが特に好ましい。L−乳酸の含有量が多過ぎるものは延伸成形性が劣る場合がある。なお、ポリ乳酸におけるD−乳酸又はL−乳酸含有量は、クロムバック社製ガスクロマトグラフ、CP CYCLODEX B 236Mを用いて測定した値である。
【0029】
「ポリ乳酸」の製造方法としては特に限定はないが、例えば、乳酸類と要すればヒドロキシカルボン酸類の混合物を原料として直接脱水重縮合する方法、乳酸類やヒドロキシカルボン酸類の環状2量体及び/又は環状エステルを用いて開環重合させる方法等を挙げることができる。
【0030】
直接脱水重縮合して製造する場合、原料である乳酸類又は乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を、好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水重縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適した強度を持つ高分子量のポリ乳酸が得られる。
【0031】
「ポリ乳酸」の平均分子量や分子量分布は、実質的に発泡二軸延伸シートが製造可能であれば特に制限されない。「ポリ乳酸」の平均分子量は、ポリ乳酸を発泡二軸延伸させたシートが、厚み0.05〜1mmの範囲の少なくとも1点において、後述する十分な引張弾性率、衝撃強度、引裂強度及び/又は耐折強度を示すように設定されることが、ガラス基板運搬用合紙に損傷が与えられ難い点で好ましい。具体的には、重量平均分子量として、3万〜500万のものが好ましく、5万〜200万のものがより好ましく、10万〜100万のものが特に好ましい。また、MFR(ASTM D−1238による、荷重2160g、温度190℃)として、0.1〜100g/10分のものが好ましく、1〜50g/10分のものがより好ましく、2〜10g/10分のものが特に好ましい。平均分子量が小さ過ぎると、各種物理的強度が小さくなり実用に適さない場合があり、平均分子量が大き過ぎると、過剰な融解熱や押出トルクを必要とする等、加工性に劣る場合がある。
【0032】
<<脂肪族ジカルボン酸と(脂肪族及び/又は脂環式ジオール)とが重縮合した構造を有するポリエステル>>
本発明における脂肪族系ポリエステルは、上記した通り、「ポリ乳酸」及び/又は「脂肪族ジカルボン酸と(脂肪族及び/又は脂環式ジオール)とが重縮合した構造を有するポリエステル」であることが好ましいが、そのうち、「脂肪族ジカルボン酸と(脂肪族及び/又は脂環式ジオール)とが重縮合した構造を有するポリエステル」について説明する。
【0033】
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては特に限定はないが、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。また、これらの酸無水物であってもよい。また、これらの脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステル等の「脂肪族ジカルボン酸の誘導体」であってもよい。
【0034】
これらの中で、具体的には、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカン二酸、それらの酸無水物、それらの低級アルキル(例えば、炭素数1〜4のアルキル)エステル誘導体等が好ましく、コハク酸、コハク酸無水物、コハク酸の低級アルキル(好ましくは炭素数1〜4のアルキル)エステル誘導体、アジピン酸等がより好ましく、コハク酸又はアジピン酸が特に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
「脂肪族及び/又は脂環式ジオール」としては特に限定はないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中で、得られる脂肪族系ポリエステルの物性の面から、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール又は1,3−プロパンジオールが好ましく、1,4−ブタンジオール又はエチレングリコールがより好ましく、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0036】
脂肪族系ポリエステル中の「脂肪族及び/又は脂環式ジオール」の含有割合は、通常、脂肪族ジカルボン酸と実質的に等モルである。
【0037】
本発明における「脂肪族ジカルボン酸と(脂肪族及び/又は脂環式ジオール)とが重縮合した構造を有するポリエステル」は、脂肪族ジカルボン酸単位と脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位を主成分とすることが好ましいが、ヒドロキシカルボン酸単位が含まれていてもよい。ヒドロキシカルボン酸単位の全構成成分に対する割合の上限は、通常50モル%以下であり、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下であり、特に好ましくは5モル%以下である。ヒドロキシカルボン酸単位が多過ぎると、成形性が低下する場合がある。ヒドロキシカルボン酸単位の全構成成分に対する割合の下限は、通常0モル%以上であるが(含まれていなくてもよいが)、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは1モル%以上である。ヒドロキシカルボン酸単位がなかったり少な過ぎたりすると、機械物性の点で劣る場合がある。
【0038】
本発明における「脂肪族ジカルボン酸と(脂肪族及び/又は脂環式ジオール)とが重縮合した構造を有するポリエステル」に含有される上記ヒドロキシカルボン酸単位を構成するヒドロキシカルボン酸類としては、分子中に1個の水酸基と1個のカルボキシル基を有する化合物又はその誘導体であれば特に限定されるものではない。ここで用いられるヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の具体例としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、マンデル酸、サリチル酸、これらのエステル化合物、これらの酸塩化物、これらの酸無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
これらの中で、より好ましいものは、使用時の重合速度の増大が顕著で、入手が容易な点で、乳酸、グリコール酸又はカプロラクトンであり、特に好ましくは乳酸である。
【0040】
<<脂肪族系ポリエステルに含まれていてもよいその他の構成単位>>
本発明の脂肪族系ポリエステルには、分子中に3個以上のエステル形成性基(以下、「官能基」と略記する場合がある)を有する構成単位が含まれていてもよい。3個以上の官能基を有する(以下、「3官能以上の」と略記する場合がある)化合物としては、3官能以上の多価アルコール;3官能以上の多価カルボン酸、その無水物、酸塩化物、エステル化合物;3官能以上のヒドロキシカルボン酸、その無水物、酸塩化物、エステル化合物;からなる群から選ばれた少なくとも1種の「3官能以上の化合物」が挙げられる。
【0041】
3官能以上の多価アルコールとしては、具体的には例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
3官能以上の多価カルボン酸又はその無水物としては、具体的には例えば、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
3官能以上のヒドロキシカルボン酸類としては、具体的には例えば、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、特に、入手のし易さから、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸が好ましい。
【0044】
3官能以上の化合物の含有割合は、本発明の脂肪族系ポリエステルを構成する全構成単位の合計に対して、下限は合計で、0.0001モル%以上が好ましく、0.001モル%以上がより好ましく、0.005モル%以上が特に好ましく、0.01モル%以上が更に好ましい。また、上限は合計で、4モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、1モル%以下が特に好ましい。脂肪族系ポリエステル中の3官能以上の化合物の含有割合が多過ぎると、ポリマーの架橋が過度に進行し、安定にストランドを抜出せなくなる、成型性が悪化する、各種物性を損なう等の問題が生じる場合がある。また、脂肪族系ポリエステル中の3官能以上の化合物の含有割合が少な過ぎると、脂肪族系ポリエステルの重合反応の反応性が低下して、製造に負荷がかかり過ぎてコストが高くなる場合がある。
【0045】
本発明における脂肪族系ポリエステルには、物性を損なわない範囲で「他の化合物」を導入することもできる。「他の化合物」としては、スルホン基、リン酸基、アミノ基、硝酸基等の親水性基を有する化合物等が挙げられる。例えば、4−スルホン化−2,6−イソフタル酸等を挙げることができる。
【0046】
<<脂肪族系ポリエステルの物性と最も好ましい具体例>>
上記脂肪族系ポリエステルは、発泡樹脂層を少なくとも1層設けて多層体とし、二軸延伸シートとすることによって、ガラス基板運搬用合紙としての通常の厚みにした場合、引張弾性率、衝撃強度、引裂強度及び耐折強度の全てが、ガラス基板運搬用合紙に望まれる好適な数値を満たすことができる。これらの物理的・機械的強度は、紙;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂等では完全には得られない性能であり、脂肪族系ポリエステルがガラス基板運搬用合紙の材質として特にマッチングしていることを示している。具体的には、本発明の発泡二軸延伸シートは、全体の厚みを0.05〜1mmの範囲とし、(1)縦方向と横方向の熱収縮応力をいずれも0.10〜5.0MPaとなるように二軸延伸し、(2)発泡倍率を1.1〜3.0倍として、下記(3)〜(6)を同時に満たす。
(3)JIS K7127に準拠して測定した引張弾性率が2.3GPa以下
(4)衝撃強度が300kg・cm/cm以上
(5)引裂強度が3.0N/mm以上
(6)耐折強度が300回以上
本発明のガラス基板運搬用合紙(発泡二軸延伸シート)の物性に関しては後述する。
【0047】
更に、本発明によれば、石油等の貴重な天然有機物資源に対する依存度が低いため省資源化が可能であり、この性質は、大量に使用されるガラス基板運搬用合紙に対して、特に大きな特長となる。また、本発明によれば、廃棄の際に環境保護が図れる。この性質は、大量に廃棄されるガラス基板運搬用合紙に対して、特に大きな特長となる。従って、本発明に用いられる脂肪族系ポリエステルは、高い生分解性を有すること、又は、原料の少なくとも一部が植物から得られることが、より環境保護が図れ、天然有機物資源に対する依存度をより低くできる点でも好ましい。
【0048】
本発明に用いられる脂肪族系ポリエステルとして、最も好ましい具体例としては、特に限定される訳ではないが、ポリ乳酸、カプロラクトン−ブチレンサクシレート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペートサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート等が挙げられる。
【0049】
<<脂肪族系ポリエステルの樹脂層における存在>>
本発明の「発泡二軸延伸シートからなるガラス基板運搬用合紙」は、脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層が積層されてなる積層体構造を有している。脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層にポリ乳酸が含有されていることが、各種機械的・物理的強度に優れ、天然有機物資源に対する依存度が低く、環境保護が図れる点で好ましい。また更に、脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層に含有されている樹脂が実質的にポリ乳酸のみであることが特に好ましい。すなわち、脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層に、樹脂としてはポリ乳酸のみが含有されていることが、上記点から特に好ましい。
【0050】
また一方で、脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層の全ての層にポリ乳酸が含有されていることが、各種機械的・物理的強度に優れ、天然有機物資源に対する依存度がより低く、環境保護がより図れる点で好ましい。
【0051】
発泡二軸延伸シート全体における、ポリ乳酸と「脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族及び/又は脂環式ジオールとが重縮合した構造を有するポリエステル」との質量比は特に限定はないが、100:0〜30:70の範囲であることが上記点から好ましく、100:0〜50:50の範囲であることがより好ましく、100:0〜70:30の範囲であることが特に好ましい。
【0052】
<樹脂層に含まれる脂肪族系ポリエステル以外の成分>
本発明のガラス基板運搬用合紙は、積層体であって少なくとも1層の発泡樹脂層と少なくとも1層の「非発泡樹脂層又は発泡樹脂層」が積層され延伸されてなることを特徴とするので、発泡樹脂層用の組成物には発泡剤が含有されている。本発明で用いられる発泡剤としては、発泡体を得るために使用できるものであれば、いずれでもよく、化学発泡剤、物理発泡剤等を用いることができる。
【0053】
<<発泡剤>>
本発明における発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の揮発性発泡剤;炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、ジアゾアミノベンゼン等)、スルホニルヒドラジド化合物(ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシ−4,4‘−ビススルホニルヒドラジド等)、ニトロソ化合物(N,N’−ジニトロソペンタメチレントリアミン等)等の化学発泡剤(分解型発泡剤);二酸化炭素、窒素ガス等の気体;水等が挙げられ、これらの発泡剤を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
発泡成形の方法には、(1)化学発泡剤を添加して押出成形する方法、(2)発泡ガス原料を注入しながら押出成形する方法、(3)液状の発泡ガス原料を樹脂組成物に含浸させたものを押出成形する方法等を適用することができる。なかでも発泡剤のハンドリング性、二軸延伸時の安定性、及び発泡倍率の観点から、(1)の方法が好ましい。
【0055】
発泡剤の使用方法は、脂肪族系ポリエステルに配合し押出機に投入できるように高濃度のマスターバッチとして用いるのが好ましい。ここで、マスターバッチのベースポリマーは脂肪族系ポリエステルに限定はされない。
【0056】
上記発泡剤の配合量は、各発泡剤からの気体発生量及び発泡時の圧力等により適宜決めることができ、特に限定はないが、各層の脂肪族系ポリエステル100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.3〜3質量部が特に好ましい。発泡剤が少な過ぎると、柔軟性、緩衝性が得られないばかりでなく、シート表面外観も見劣りしてしまう場合があり、一方、多過ぎるとシート表面外観が悪化するばかりでなく、物理的な強度(衝撃強度、引裂強度、耐折強度等)が低下する場合がある。
【0057】
<<帯電防止剤と(持続的)帯電防止性>>
本発明の積層体であって延伸されてなる発泡二軸延伸シートからなるガラス基板運搬用合紙は、帯電防止性を有していることが好ましく、持続的帯電防止性を有していることが特に好ましい。発泡樹脂シート(ガラス基板運搬用合紙)が帯電し易いと、ガラス基板の間から抜き取ったシートを再使用に供する際に、浮遊している塵芥がシートに付着する場合がある。具体的には、JIS K6911に準拠して測定したシートの表面固有抵抗値を10〜1013Ωとすることが可能であり、従って10〜1013Ωであることが好ましい。より具体的には、流水で3分間洗浄後、脱脂綿で水滴を拭き取り、23℃、相対湿度50%で24時間状態調整後、JIS K6911に準拠して測定した表面固有抵抗値が10Ω〜1013Ωであることが好ましく、本発明においてはそのように設定できる。
【0058】
シートに帯電防止剤を含有させても、シートを再使用するために塵芥等を洗浄した際に、表面の帯電防止剤が洗い流されてしまえば、帯電し易くなってしまうが、本発明においては、かかる持続的帯電防止性も達成できる。本発明のガラス基板運搬用合紙(発泡二軸延伸シート)の表面固有抵抗値は、10〜1012Ωとすることも可能であり、従って10〜1012Ωであることが特に好ましい。
【0059】
帯電防止性や持続的帯電防止性を与えるために、脂肪族系ポリエステルを含む樹脂層には帯電防止剤が含有されることが好ましい。帯電防止剤は特に限定はないが、界面活性剤等の低分子量型帯電防止剤、高分子量型帯電防止剤等が挙げられる。
【0060】
表面固有抵抗値を過度に小さくしようとすると、帯電防止剤の使用量を多くする必要があり、帯電防止剤の過度の使用は、帯電防止剤がシート表面にブリードアウトし、シート表面を汚染するので、それがガラス基板を汚染する場合がある。表面固有抵抗値が大き過ぎると帯電し易くなり、ガラス基板運搬用合紙が使用される雰囲気に浮遊している塵芥が付着し易くなる場合がある。
【0061】
<<<低分子量型帯電防止剤>>>
界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、両イオン系、非イオン系に大別され、中でも、効果と経済性のバランスの良いアニオン系が好ましい。代表的には、1)脂肪酸塩類、2)高級アルコール硫酸エステル塩類、3)液体脂肪油硫酸エステル塩類、4)脂肪族アミン及び脂肪族アミドの硫酸塩類、5)脂肪族アルコールリン酸エステル塩類、6)二塩基性脂肪酸エステル塩類、7)脂肪酸アミドスルホン酸塩類、8)アルキルアリールスルホン酸塩類、9)ホルマリン縮合のナフタレンスルホン酸塩類等が挙げられる。
【0062】
また、熱に弱く高コストであるが帯電防止性が高いカチオン系としては、1)脂肪族アミン塩類、2)四級アンモニウム塩類、3)アルキルピリジニウム塩類等が挙げられる。更には、アニオン系の弱点である耐熱性をやや改良した両性イオン系としては、1)イミダゾリン誘導体類、2)カルボン酸アンモニウム類、3)硫酸エステルアンモニウム類、4)リン酸エステルアンモニウム類、5)スルホン酸アンモニウム類等が挙げられる。
【0063】
これら界面活性剤等の低分子量型帯電防止剤についても、発泡剤と同様にマスターバッチ化されたものを用いてもよい。ここで、マスターバッチのベースポリマーは脂肪族系ポリエステルに限定はされない。帯電防止性の付与方式としては公知の方法である[1]:練り込みタイプの帯電防止剤の使用、[2]:塗布タイプの帯電防止剤の使用、[3]:[1]と[2]の併用等が挙げられる。
【0064】
脂肪族系ポリエステルと「界面活性剤等の低分子量型帯電防止剤」との割合(低分子量型帯電防止剤を含む1つの層当りの質量比)は、脂肪族系ポリエステル/帯電防止剤=80/20〜99.5/0.5の範囲から選択することが好ましく、特に好ましくは90/10〜99/1である。低分子量型帯電防止剤が少な過ぎる場合は、帯電防止性や持続的帯電防止性が劣る場合があり、一方、多過ぎる場合は、それ以上の効果がでなかったり、帯電防止剤の過剰なブリードアウトによりガラス基板が汚染されたりする場合がある。低分子量型帯電防止剤がマスターバッチ化されている場合は、上記質量比は、ベース樹脂を除いた低分子量型帯電防止剤のみの質量比である。また、内層である等、その層の役割によっては、低分子量型帯電防止剤を含まない方がよい場合もある。
【0065】
<<<高分子量型帯電防止剤>>>
シート表面への帯電防止剤の過剰なブリードアウトによるガラス基板の汚染が防止できる点、特に洗浄を含む繰り返し使用で持続的帯電防止性が良好な点等から、高分子量型帯電防止剤が好ましい。高分子量型帯電防止剤としては、具体的には、ポリエーテルエステル系高分子量型帯電防止剤等のノニオン系高分子量型帯電防止剤;エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーやポリスチレンスルホン酸系高分子量型帯電防止剤等のアニオン系高分子量型帯電防止剤;ポリアクリルエステル系高分子量型帯電防止剤等のカチオン系高分子量型帯電防止剤等が好ましいものとして挙げられる。
【0066】
なかでも、帯電防止性能に優れる点で、ポリエーテルエステル系高分子量型帯電防止剤、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーが好ましく、ポリエーテルエステルアミド系高分子量型帯電防止剤、エチレン・(メタ)アクリル酸ランダム共重合体のカリウムアイオノマー等が特に好ましい。ここでエチレン・(メタ)アクリル酸ランダム共重合体のカリウムアイオノマーには帯電防止性能を上げる目的でグリセリンやポリエチレングリコールを含んでいてもよい。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸をいう。
【0067】
これら高分子量型帯電防止剤についても、マスターバッチ化されたものを用いてもよい。ここで、マスターバッチのベースポリマーは脂肪族系ポリエステルに限定はされない。帯電防止性の付与方式としては公知の方法である[1]:練り込みタイプの帯電防止剤の使用、[2]:塗布タイプの帯電防止剤の使用、[3]:[1]と[2]の併用等が挙げられる。
【0068】
脂肪族系ポリエステルと高分子量型帯電防止剤との割合(高分子量型帯電防止剤を含む1つの層当りの質量比)は、脂肪族系ポリエステル/高分子量型帯電防止剤=5/95〜99.5/0.5の範囲から選択することが好ましく、特に好ましくは60/40〜95/5である。高分子量型帯電防止剤が少な過ぎる場合は、帯電防止性や持続的帯電防止性が劣る場合があり、一方、多過ぎる場合は、それ以上の効果がでなかったり、コストが高くなり経済的に好ましくない場合がある。高分子量型帯電防止剤がマスターバッチ化されている場合は、上記質量比は、ベース樹脂を除いた高分子量型帯電防止剤のみの質量比である。また、内層である等、その層の役割によっては、高分子量型帯電防止剤を含まない方がよい場合もある。
【0069】
上記した界面活性剤等の低分子量型帯電防止剤;上記したポリエーテルエステル系高分子量型帯電防止剤、カリウムアイオノマー等の高分子量型帯電防止剤;等の帯電防止剤は、何れの層に含有させてもよいが、外層にのみ又は内層より外層に多く配合させることによって、発泡二軸延伸シートの帯電防止性能を下げずに帯電防止剤の使用量を減らすことができる。すなわち、製造原料コストを上げずに表面固有抵抗値を十分に下げることができる。特に、後述する発泡樹脂層/発泡樹脂層/発泡樹脂層の順で積層された発泡二軸延伸シートにおいては、上記した理由でその積層形態の効果をより発揮する。
【0070】
<<樹脂層に含まれ得るその他の成分>>
本発明のガラス基板運搬用合紙(発泡二軸延伸シート)には、本発明の目的を損なわない範囲で、アンチブロッキング剤、スリップ剤、充填剤、分散剤、分散助剤、内部潤滑剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、紫外線吸収剤、耐光剤、結晶核剤、離型剤、難燃剤、可塑剤、防曇剤、強化剤、増量剤、抗菌剤、防かび剤、顔料、染料、着色剤、表面ぬれ改善剤、流動性改良剤、増粘剤、上記帯電防止剤以外の界面活性剤、無機系フィラー、有機系フィラー、カーボンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、補強剤等の各種物質を配合してもよい。
【0071】
T−ダイ等の口金に対する追従性や表面外観を改良するための充填剤(例えば、タルク、シリカ、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)や気泡調整剤(例えば、多価カルボン酸等の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム若しくは重炭酸ナトリウムとの反応混合物等)を用いてもよく、これらは発泡剤同様マスターバッチ化されたものを用いてもよい。これら充填剤や気泡調整剤の配合割合は、各層の脂肪族系ポリエステル100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましい。
【0072】
樹脂層には、脂肪族系ポリエステルとの相溶性を損なわない限り、脂肪族系ポリエステル以外の他の樹脂も含有させることができる。他の樹脂としては、芳香族系ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリビニルアルコール等が挙げられる。ただ、脂肪族系ポリエステル以外の他の樹脂は実質的に含まないことが好ましい。ただし、ここでは、他の樹脂から上記高分子量型帯電防止剤は除くものとする(上記高分子量型帯電防止剤やそのマスターバッチのベース樹脂は脂肪族系ポリエステル以外の他の樹脂を含んでいてもよい)。これらの樹脂を実質的に含有すると、一般に相溶性が低いため、もしくは相溶化剤を併用してもまだ相溶性が不十分なため、二軸延伸が困難となり、可能な場合でも強度(特に、引裂強度と耐折強度)が低下してしまう場合があり、またコスト的に優れたシートの製造が困難となってしまう場合がある。
【0073】
<樹脂層>
<<樹脂層の構成>>
本発明の「発泡二軸延伸シートからなるガラス基板運搬用合紙」は、少なくとも1層の発泡樹脂層と少なくとも1層の「非発泡樹脂層又は発泡樹脂層」とが積層された構成であることが必須であるが、以下の(1)、(2)又は(3)の形態であることが好ましい。
(1)非発泡樹脂層/発泡樹脂層/非発泡樹脂層の順に積層され、かつ両非発泡樹脂層の厚みの合計が積層体全体の厚みの1〜70%であるガラス基板運搬用合紙。
(2)発泡樹脂層/非発泡樹脂層/発泡樹脂層の順に積層され、かつ非発泡樹脂層の厚みが積層体全体の厚みの5〜95%であるガラス基板運搬用合紙。
(3)発泡樹脂層/発泡樹脂層/発泡樹脂層の順に積層され、かつ各発泡樹脂層の厚みが積層体全体の厚みの1〜98%であるガラス基板運搬用合紙。
【0074】
具体的な層構成として、非発泡樹脂層/発泡樹脂層/非発泡樹脂層の順に積層される場合は、両非発泡樹脂層の厚みの合計が積層体全体の厚みの1〜70%とすることが好ましい。より好ましくは3〜45%、更に好ましくは5〜20%である。ここで、両非発泡樹脂層の厚みの合計が1%未満では二軸延伸安定性が保てなかったり、シートが強度不足になったりする場合がある。逆に70%より厚いとシートの剛性が高くなるばかりか、柔軟性、緩衝性が低下する場合がある。
【0075】
他の具体的な層構成として、発泡樹脂層/非発泡樹脂層/発泡樹脂層の順に積層される場合は、非発泡樹脂層の厚みが積層体全体の厚みの5〜95%とすることが好ましい。より好ましくは10〜65%、更に好ましくは15〜35%である。ここで、非発泡樹脂層の厚みが5%未満では二軸延伸安定性が保てなかったり、シートが強度不足になったりする場合がある。逆に95%より厚いとシートの剛性が高くなるばかりか、柔軟性、緩衝性が低下してしまい、シートの発泡外観、凹凸等も失われてしまう場合がある。
【0076】
他の具体的な層構成として、発泡樹脂層/発泡樹脂層/発泡樹脂層の順に積層される場合は、各発泡樹脂層の厚みが積層体全体の厚みの1〜98%とすることが好ましい。より好ましくは5〜95%、更に好ましくは10〜80%である。ここで、各発泡樹脂層のどこかの層の厚みが薄過ぎたり、逆に厚過ぎたりすると、共押出自身が困難であったり、可能な場合でも二軸延伸時に厚みの厚い層が破泡してシートに穴が開き、更には破断が発生する場合がある。また、層構成が非対称の場合、シートが反ったり、繰り返し使用中に変形したりする場合があり、層構成が対称の場合でも、シートの発泡外観、凹凸等が失われてしまう場合がある。
【0077】
少なくとも発泡樹脂層を有する多層体とすることによって、二軸延伸を組み合わせて、薄肉軽量化と強度保持と緩衝性のすべてを満たすことができる点で、特にガラス基板運搬用合紙として好ましい物性を実現することができる。
【0078】
<<ガラス基板運搬用合紙(各樹脂層)の製造例>>
本発明のガラス基板運搬用合紙の製造方法については、上記(1)と(2)のガラス基板運搬用合紙では、発泡剤と脂肪族系ポリエステルを含む樹脂組成物と、発泡剤を含まず脂肪族系ポリエステルを含む樹脂組成物とを別々の押出機で溶融混練して1つの口金から共押出させてシートを形成し、該シートを冷却後再加熱して二軸方向に共延伸し、必要により熱固定することにより、少なくとも1層の非発泡樹脂層と少なくとも1層の発泡樹脂層を積層させる製造方法が好ましい。
【0079】
また、上記(3)のガラス基板運搬用合紙については、発泡剤と脂肪族系ポリエステルを含む樹脂組成物を、少なくとも2台以上の押出機で別々に溶融混練して1つの口金から共押出させてシートを形成し、該シートを冷却後再加熱して二軸方向に共延伸し、必要により熱固定することにより、少なくとも2層以上の発泡樹脂層同士を積層させる製造方法が好ましい。
【0080】
上記(1)、(2)又は(3)の何れのガラス基板運搬用合紙であっても、別々の押出機で溶融混練して1つの口金から共押出させてシートを形成し、該シートを冷却後再加熱して二軸方向に共延伸することが好ましいが、更に以下のように製造することが特に好ましい。ただし、本発明は以下の具体的範囲には限定されず、本発明の思想の範囲内で変形が可能である。
【0081】
すなわち、例えば、ベース樹脂、帯電防止剤及び必要に応じてその他各種添加剤を所定量計量しながら二軸押出機にて溶融混練し、ペレット化して帯電防止剤含有マスターバッチを準備する。帯電防止剤の種類によっては市販のマスターバッチを使用することもできるし、市販品をそのまま使用することもできる。
【0082】
次に少なくとも2台の押出機を準備する。一方には、脂肪族系ポリエステル、帯電防止剤含有マスターバッチ等を秤量してブレンダーやタンブラーによって攪拌し、発泡剤を含まない脂肪族系ポリエステルのドライブレンド物として投入して溶融混練する。他方には、脂肪族系ポリエステル、帯電防止剤含有マスターバッチ、発泡剤マスターバッチ等を秤量して、ブレンダーやタンブラーによって攪拌し、発泡剤を含む脂肪族系ポリエステルのドライブレンド物として投入して溶融混練する。溶融混練の温度は特に限定はないが、150〜250℃が好ましく、180〜220℃が特に好ましい。
【0083】
次に、これら押出機に接続された1組のフィードブロック及びフィードブロックダイ、或いはマルチマニホールドダイ(これらのダイを総称して「T−ダイ」と称することがある)にて合流・積層させ、連続的に押出発泡させながら共押出する。発泡させながら共押出する際の樹脂温度は特に限定はないが、150〜230℃が好ましく、170〜210℃が特に好ましい。樹脂圧力は特に限定はないが、10〜40MPaが好ましく、15〜25MPaが特に好ましい。
【0084】
共押出しされたものは、冷却ロールで急冷する。冷却ロール温度は60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。次いで、少なくとも1層の発泡樹脂層と「少なくとも1層の非発泡樹脂層若しくは発泡樹脂層」とが積層された発泡原反シートを、好ましくは加熱ロールで再加熱し、ロール延伸法で縦延伸、続いてテンター法で横延伸し、連続的に共延伸(逐次二軸延伸)を行う。縦・横延伸温度は60℃〜90℃、特に70℃〜80℃が好ましく、二軸延伸後、必要により、110℃〜150℃程度の温度で数秒〜数分程度の熱固定を行ってもよい。そして最後にワインダー等にてロール状に巻き取る方法が好ましい。熱固定を行うと耐熱性が向上し、夏場等高温雰囲気下での寸法安定性が良くなる。
【0085】
ここで、本発明のガラス基板運搬用合紙は、少なくとも1層の発泡樹脂層と「少なくとも1層の非発泡樹脂層若しくは発泡樹脂層」が積層された構成であることが必須であるが、こうすることで、少なくとも1層の発泡樹脂層と少なくとも1層の非発泡樹脂層が積層された構成の場合には、発泡基材を二軸延伸しても、縦延伸時の端部からの破断や端部不良による横延伸時のチャック外れを抑えることが可能となり、二軸延伸安定性が確保され、歩留まり向上につながる。また同時に、ガラス基板運搬用合紙自体の強度も向上することとなる。即ち通常の押出発泡だけでは困難な薄肉軽量化が二軸延伸技術により可能となる。
【0086】
一方、発泡樹脂層と発泡樹脂層とが積層された構成の場合には、所望の層に帯電防止剤を配合することによって、帯電防止剤の全体の使用量を減らすことが可能であり、また非発泡樹脂層が積層された構成に比べ、よりシート全体としての柔軟性や緩衝性を高めることが可能であり、ガラス基板運搬用として好適な物性を備えることになる。発泡樹脂層のみからなるシートの二軸延伸安定性は、非発泡樹脂層が積層された構成より低下する傾向にあるが、(i)押出発泡品の特徴として厚さ方向で表面付近より中央付近の方の発泡倍率が高くなるので、発泡積層構成品は同じ厚みの単層発泡構成品に比べ、一つの層における厚さ方向の発泡倍率の振れを抑えることができ、縦・横延伸時のシート穴開きやそれに伴う破断を抑えることが可能となる。(ii)各層の発泡倍率を変えることで(例えば、3層構造で、両外層の発泡倍率を中間層のそれより低くする、或いはその逆にすることで)、縦延伸時の端部からの破断や、縦・横延伸時のシート穴開きやそれに伴う破断を抑えることが可能となり、二軸延伸安定性が向上し、結果として優れたガラス基板運搬用合紙を得ることができる。
【0087】
<ガラス基板運搬用合紙>
<<ガラス基板運搬用合紙の厚み>>
本発明に係るガラス基板運搬用合紙の厚みは0.05〜1mmが好ましい。軽量化と積載効率の観点から、より好ましくは0.08〜0.5mmであり、更に好ましくは0.1〜0.3mmである。シートの厚みが0.05mm未満では、シート自体の剛性が不足し、シートとして繰り返し使用する場合、折れたり皺が入り易くなったりする場合がある。一方、厚さが1mmを超えると、シートの嵩や、スタック高さが高くなり、結局保管スペースや輸送コストが高くなってしまい、作業性、リサイクル性、コスト等の観点から好ましくない場合がある。本発明のガラス基板運搬用合紙は、機械的・物理的強度等の物性を良好に保ちつつ、上記厚みを実現することが可能である。特に薄肉軽量化しても二軸延伸の安定性確保と、破れ等が起こり難いための強度確保が可能である。
【0088】
<<ガラス基板運搬用合紙の物性>>
本発明のガラス基板運搬用合紙は、発泡二軸延伸シート全体の厚みが0.05〜1mmであり、下記(1)〜(6)を同時に満たすことが好ましい。上記した各樹脂層の化学組成、発泡・非発泡を含む各樹脂体の構成(積層体の構成)、発泡倍率、延伸倍率、全体の厚み、延伸後の残留応力等を特定することによって、発泡二軸延伸シート全体の物性は、下記(1)〜(6)を同時に満たすことが可能となり、ガラス基板運搬用合紙として極めて優れたものとなる。
【0089】
(1)縦方向と横方向の熱収縮応力がいずれも0.10〜5.0MPa
本発明におけるガラス基板運搬用合紙の縦方向(シートの押出し方向、以下「MD」と記載することがある)と横方向(シートの押出し方向と直角方向、以下「TD」と記載することがある)の熱収縮応力は、上記項目を調整することにより、いずれも0.10〜5.0MPaとすることができ、従って0.10〜5.0MPaとすることが好ましい。MDとTDがいずれも0.20〜4.0MPaであることがより好ましく、0.30〜3.0MPaであることが特に好ましく、0.40〜2.0MPaであることが更に好ましい。
【0090】
熱収縮応力が小さ過ぎる場合は、ガラス基板運搬用合紙が裂けたり、破れ易くなったりする場合がある。一方、熱収縮応力が大き過ぎる場合は、ガラス基板運搬用合紙の剛性が高くなり過ぎ、柔軟性、緩衝性等の点から好ましくない場合がある。
【0091】
本発明において「熱収縮応力」とは、ガラス基板運搬用合紙が、ASTM D−1504に準拠した日理工業社製の「DN式ストレステスター」を使用して、熱収縮される際の最大荷重を測定し、その最大荷重の値から熱収縮前の該シートの断面積で除した数値(単位[MPa])を意味する。
【0092】
本発明のガラス基板運搬用合紙の「延伸」については、延伸工程を経ているものであれば、延伸倍率等に関し特に限定はない。本発明のガラス基板運搬用合紙のMDとTDの延伸倍率は、MDとTDの熱収縮応力の平均値が上記範囲に入るように定められていることが好ましい。好ましくはMD、TDいずれも1.1〜5.0倍、特に好ましくは1.5〜3.0倍である。また、ガラス基板運搬用合紙の用途に合わせた表面状態を達成するため、又は二次加工時に収縮させる目的で、MDとTDで熱収縮応力や延伸倍率に大きく差をつけ、異方性を持たせてもよい。
【0093】
上記の延伸倍率とは、ガラス基板運搬用合紙の試験片に記入した直線の長さが収縮前後で変化した割合であり、具体的には、延伸倍率=Y/Z、によって算出される値(単位[倍])を意味する。この式において、Yは、ガラス基板運搬用合紙の試験片に、定規及び筆記用具を用いて、MD及びTDに描いた直線の長さ[mm]を示し、Zは80℃(熱固定を行った試験片の場合は「熱固定温度+10℃以上融点未満の温度」)のシリコーンオイルバスに、上記試験片を3分間浸漬し収縮させた後の、上記直線の長さ[mm]を示す。尚、浸漬させた際試験片が丸まってしまう場合は、2枚の金網等に挟んで浸漬し、平坦な試験片として測定するものとする。
【0094】
(2)発泡倍率が1.1〜3.0倍
本発明における「発泡」とは、発泡倍率1.01倍〜20倍かつ気泡セルの平均長径10μm〜5000μmとなっているものをいう。
【0095】
本発明のガラス基板運搬用合紙の発泡倍率は、上記「発泡」の定義に入っていれば、所望するガラス基板運搬用合紙の用途、特性等に応じて選択でき特に限定はないが、1.1〜3.0倍とすることが好ましい。1.1倍未満では、シート外観、柔軟性、緩衝性、軽量性等が低下し、3.0倍を超えると、ガラス基板運搬用合紙(シート)の剛性、外観、表面均一性、二軸延伸安定性等が低下してしまう場合があり、特にシート厚みが薄い場合は、シート端部からの破断頻度が多くなり、二軸延伸の連続運転が不可能となってしまう場合がある。発泡倍率は、より好ましくは1.3〜2.8倍、特に好ましくは1.5〜2.5倍である。発泡倍率の制御は、発泡剤の種類、特に配合量、発泡押出時の樹脂温度、樹脂圧力等によって可能である。
【0096】
発泡倍率(P)は、JIS K7222に準拠して測定した発泡シートの密度(Q)と、JIS K7112に準拠して測定した、その発泡体材料の発泡させていない状態の密度(R)より、P=R/Qにより求める。発泡倍率Pは1つの発泡樹脂層のみの発泡前後の密度の比ではなく、シート全体の発泡前後の密度の比である。
【0097】
気泡セルの平均長径や平均アスペクト比は、発泡樹脂層が外層の場合は、シート面に対して垂線方向から電子顕微鏡で観察した写真を用いて計測する。一方、発泡樹脂層が内層の場合は、縦・横延伸倍率のうち大きい方向と平行なシート断面に対して電子顕微鏡で観察した写真を用いて計測する。従って、上記「平均長径」と「平均アスペクト比」における「平均」は個数平均である。
【0098】
この場合、気泡セルは延伸により扁平形状となっている。気泡セルのサイズについては特に限定されないが、平均長径を10〜5000μmにすることが好ましく、100〜3000μmにすることが特に好ましい。また、平均アスペクト比(=気泡セルの平均長径/気泡の平均短径)は1〜10にすることが好ましく、1〜5にすることが特に好ましい。発泡倍率、気泡長径の平均長さ、平均アスペクト比が上記範囲であると、前記した本発明の効果を奏し易い。
【0099】
気泡セルの大きさや形状の制御は、発泡剤の種類、配合量、特に発泡押出時の樹脂温度、樹脂圧力、特にMD、TDの延伸倍率等によって制御することが可能である。具体的には、縦延伸倍率及び/又は横延伸倍率が大きくなると平均長径は大きくなり、縦延伸倍率と横延伸倍率の差が大きくなる(異方性が大きくなる)と、それに応じて平均アスペクト比も大きくなる。
【0100】
(3)JIS K7127に準拠して測定した引張弾性率が2.3GPa以下
(4)衝撃強度が300kg・cm/cm以上
(5)引裂強度が3.0N/mm以上
(6)耐折強度が300回以上
本発明に係るガラス基板運搬用合紙は、JIS K7127に準拠して測定した引張弾性率が2.3GPa以下であり、衝撃強度が300kg・cm/cm以上であり、引裂強度が3.0N/mm以上であり、耐折強度が300回以上であることが好ましい。上記した各樹脂層の化学組成、発泡・非発泡を含む各樹脂体の構成(積層体の構成)、発泡倍率、延伸倍率、全体の厚み、延伸時の残留応力等を特定することによって、発泡二軸延伸シート全体の物性は、上記(3)〜(6)を同時に満たすようにできる。
【0101】
引張弾性率、衝撃強度、引裂強度及び耐折強度の全てを上記範囲とすることで、二軸延伸による薄肉軽量化を行っても適度な剛性と同時に強度(衝撃強度、引裂強度、耐折強度)を併せ持つことが可能となる。よって、取り扱い時に破れ等が起こり難く、繰り返し使用が可能となり、ガラス基板の間に挟まれた状態から抜き取る際に折れや皺が生じ難くなり、ガラス基板運搬用合紙として極めて優れたものとなる。引張弾性率、衝撃強度、引裂強度及び耐折強度は、実施例記載の方法で測定し、そのように測定したものとして定義される。
【0102】
上記した点で、引張弾性率は0.6〜2.2GPaがより好ましく、1.0〜2.1GPaが特に好ましい。また、衝撃強度は400kg・cm/cm以上がより好ましく、500kg・cm/cm以上が特に好ましい。また、引裂強度は4.0N/mm以上がより好ましく、5.0N/mm以上が特に好ましい。また、耐折強度は400回以上がより好ましく、500回以上が特に好ましい。上記した好ましい範囲、より好ましい範囲、特に好ましい範囲も、(3)〜(6)で組み合わされて同時に満たすことが更に好ましい。
【0103】
本発明のガラス基板運搬用合紙は、ガラス基板との静摩擦係数(ASTM−D1894に準拠)を1.0以下とすることが好ましい。ガラス基板との静摩擦係数が大き過ぎると、ガラス基板運搬用合紙がガラス基板から剥離し難く、ガラス基板の間に挟まれた状態からの抜き取りが難しく、ガラス基板運搬用合紙が破損し易くなる場合がある。
【0104】
<<ガラス基板運搬用合紙の通気細孔>>
本発明のガラス基板運搬用合紙は、通気細孔を有していることが好ましい。「通気細孔」は、後述する「穴」の場合も「切れ目」の場合も含まれる。通気細孔によって、吸引機構の吸引パッドによって、より好適にガラス基板の吸引保持することができる。通気細孔は、ガラス基板運搬用合紙の全面に亘って設けられていることが好ましい。全面に亘って設けられていることによって、吸引パッドの位置が制限されない。本発明のガラス基板搬送用シートは、シート全面に亘って通気細孔があり、JIS P−8117に準拠して測定された透気度が、60秒/100mL以下であるものが好ましく、30秒/100mL以下であるものが特に好ましい。透気度が大き過ぎると、このシートを上側に載置した状態でガラス基板を吸引パッドに吸引保持することが困難となる場合がある。
【0105】
透気度は、通気細孔の直径と通気細孔の存在密度とを組合せて、上記範囲に調節することができる。特に限定はないが、通気細孔の直径は50〜100μmの範囲が好ましく、通気細孔の存在密度は20〜50個/1cmの範囲が好ましい。シート全面に亘って通気細孔を穿孔するには、例えば、針植設板を使用する方法、針植設ロールを使用する方法、レーザー穿孔法等によることができる。板やロールに植設される細い針は、長さ方向に直角に切断した面を円形とし、先端を細くしたものが好ましい。通気細孔の直径は、細い針の直径、針をシートに刺す深さ等により調節することができる。
【0106】
針植設板を使用する方法は、平板の片面に面に対して直角に多数の細い針を植設した針植設板を使用する方法であり、針植設板を、広幅長尺のシートと同じ速度で移動させつつ、装備した自動駆動機構によって接近・後退可能に配置し、接近させた際に穿設させる方法である。複数枚の針植設板を1セットとし、シート上に複数セット準備することによって、シートに切れ目なく通気細孔を穿孔することができる。シートへの穿孔密度を調節するには、針植設板の針の数を増やす、針の数を増やし難い場合には、上の手順による穿孔操作を複数回繰り返せばよい。繰り返す際に、シートを裏返しにして穿孔することもできる。
【0107】
針植設ロールを使用する方法は、長尺の円形ロールの曲面状表面の切線に対して直角に、多数の細い針を植設した針植設ロールを、シートの移動速度と同じ線速度で回転させ、針植設ロールの針によってシートに穿孔する方法である。シートへの穿孔密度を調節するには、穿設したシートを裏返し、針植設ロールの針による穿孔操作を繰り返す方法によることができる。通気細孔の仕上がり状態は、針植設板及び/又は、針植設ロールを加熱する方法によって調節することができる。
【0108】
<<ガラス基板運搬用合紙の使用方法>>
本発明のガラス基板運搬用合紙は、複数枚のガラス基板をガラス基板運搬用合紙を介して積み重ね、パレット上に又は箱体内に配置させる使用方法に好適に用いられる。また、本発明のガラス基板運搬用合紙は、ガラス基板と吸引機構の吸引パッドとの間に介在され、吸引パッドに真空を適用することによって、ガラス基板を吸着面に吸引保持して、吸着保持した状態で所定位置に搬送する使用方法に好適に用いられる。また、所定位置に搬送された後もガラス基板の間に残されて、開梱、ガラス基板がディスプレイ基板等の使用に供されるまでの間、ガラス基板の間に介在されて、ガラス基板を保護する使用方法に好適に用いられる。
【0109】
吸引パッドは、駆動機構を装備した吸引機構によって、ガラス基板表面に対して前進・後退可能となり、ガラス基板を吸引保持した状態で回転・移動可能となる。ガラス基板を吸引保持した状態で、梱包用容器の位置に搬送し、真空の適用を解いて、ガラス基板をパレット上に又は箱体内に配置させ、梱包用容器の所定の位置に並べる。その後、複数枚のガラス基板を収納した梱包容器は、ガラス基板の使用者(ユーザー)側に搬送される。
【0110】
梱包容器はガラス基板の使用者(ユーザー)で開梱され、ガラス基板はディスプレイ基板等の用途に供される。ガラス基板搬送用シートは、ガラス基板の使用に伴ってガラス基板の表面から一枚ごとに剥離されるか、又は、ガラス基板の間に挟まれた状態から強制的に抜き取られる。この際、ガラス基板運搬用合紙の機械的・物理的強度が前記(3)〜(6)のように特定されているので、剥離する際や抜き取る際に破損することがない。
【0111】
また、この際、ガラス基板運搬用合紙の表面固有抵抗値、要すれば静摩擦係数等が前記範囲に調節されていれば、ガラス基板からより容易に剥離され、又は、ガラス基板の間からより容易に抜き取ることができる。
【0112】
剥離され又は抜き取られたガラス基板運搬用合紙は、積み重ねられ、梱包されて再使用に供されることも好ましい。再使用に供される前にガラス基板運搬用合紙は洗浄されるが、ガラス基板運搬用合紙に含有されている帯電防止剤、特に高分子量型帯電防止剤は、洗い流されることがないので、本発明のガラス基板運搬用合紙は優れた帯電防止性を維持できる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、マスターバッチを「MB」と略記する場合があり、マスターバッチを用いた場合の表中の質量%の値は、マスターバッチとしての質量%の値を示す。
【0114】
原材料としては、以下の特性を有する市販品を使用した。
<原材料>
[脂肪族ポリエステル系樹脂]
PLA−1:ポリ乳酸
浙江海正生物材料股分有限公司社製、商品名:REVODE101である。
このポリ乳酸(PLA−1)は、温度190℃、荷重2.16kgにおいてのメルトフローレート(以下、「MFR(190℃、2.16kg)」と記載する)が7.6g/10分である。
【0115】
PLA−2:ポリ乳酸
ネイチャーワークス社製、商品名:4032Dである。
このポリ乳酸(PLA−2)は、MFR(190℃、2.16kg)が2.6g/10分である。
【0116】
PBS:ポリブチレンサクシネート系樹脂
三菱化学社製、商品名:GSPla(FZ91P)である。
このポリブチレンサクシネート系樹脂(PBS)は、MFR(190℃、2.16kg)が4.5g/10分である。
【0117】
[帯電防止剤]
ASA−1(高分子量型):エチレン−メタクリル酸共重合物のカリウムイオンアイオノマー
三井デュポンポリケミカル社製、商品名:ENTIRA AS MK400である。これは、単身で配合しマスターバッチタイプではない。
【0118】
ASA−2(高分子量型):ポリエーテルエステルアミド
三洋化成工業社製、商品名:ペレスタット NC6321である。これは、単身で配合しマスターバッチタイプではない。
【0119】
ASA−3(低分子量型):アルキルスルホン酸塩系界面活性剤
花王社製、商品名:エレストマスターS−520である。これは、PS(ポリスチレン)をベースにして、アルキルスルホン酸塩系界面活性剤を20質量%含有するマスターバッチタイプである。
【0120】
[発泡剤]
FA−1:発泡剤
永和化成工業社製、商品名:ポリスレンES405である。これは、分解温度155℃であり、PS(ポリスチレン)ベースの40質量%マスターバッチタイプである。
【0121】
FA−2:発泡剤
永和化成工業社製、商品名:ポリスレンEE207である。これは、分解温度205℃であり、PE(ポリエチレン)ベースの20質量%マスターバッチタイプである。
【0122】
発泡二軸延伸シート、及び、この発泡二軸延伸シートから得られた成形品の評価項目と評価方法は以下の通りである。
<評価方法>
(1)縦方向と横方向の熱収縮応力(MD、TD)
実施例と比較例で得られたシートから、10mm×100mmの試験片(MDを長辺としたものと、TDを長辺としたもの)をそれぞれ5枚作成し、ASTM D−1504に準拠した日理工業社製の「DN式ストレステスター」を使用して、設定温度200℃の条件で熱収縮により生じる最大荷重を測定し、初期試験片の断面積で除した値を熱収縮応力(単位[MPa])とし、MD、TDの平均値を求め、「MD」、「TD」とした。
【0123】
(2)発泡倍率P
実施例と比較例で得られたシートを用いて、JIS K7222に準拠して測定した密度(Q)と、JIS K7112に準拠して測定した該シートを発泡させていない状態の密度(R)より、発泡倍率P(単位[倍])を、P=R/Qとして求めた。発泡倍率Pは発泡樹脂層のみの発泡前後の密度の比ではなく、シート全体の発泡前後の密度の比である。
【0124】
(3)引張弾性率
実施例と比較例で得られたシートから、JIS K7127に準拠した試験片タイプ2(幅10mm;MD及びTD)をそれぞれ5枚作成し、東洋精機社製「オートグラフDSS2000」を使用して初期クランプ間距離5cm、引張速度10mm/分の条件で測定し、MDとTDの平均値を引張弾性率(単位[GPa])とした。
【0125】
(4)衝撃強度
実施例と比較例で得られたシートから100mm×100mmの試験片を5枚作製し、JIS P8134に準拠した東洋精機社製「パンクチャーテスタ(先端は12.7mm丸球面ヘッドを使用)」を使用して、試験片の破壊に要したエネルギーの量(衝撃強度[kg・cm])を測定し、このエネルギー量を初期試験片厚さ[cm]で除した値を衝撃強度(パンクチャー衝撃強度、単位[kg・cm/cm])とし、MDとTDの平均値を求めた。この値が300kg・cm/cm以上であると衝撃強度が良好と判定し、300kg・cm/cm未満では劣ると判定した。
○:300kg・cm/cm以上
×:300kg・cm/cm未満
【0126】
(5)引裂強度
実施例と比較例で得られたシートから50mm×64mmの試験片(MDを長辺としたものと、TDを長辺としたもの)をそれぞれ5枚作製し、これら試験片の短辺(50mm)側の中央端から長辺と平行に長さが13mmの切れ込みを入れ、東洋精機社製「軽荷重引裂試験機」を使用して引裂いた時の強度を測定し、この強度を初期試験片厚さ[mm]で除した値を引裂強度(単位[N/mm])とし、MDとTDの平均値を求めた。この値が3.0N/mm以上であると引裂強度が良好と判定し、3.0N/mm未満では劣ると判定した。
○:3.0N/mm以上
×:3.0N/mm未満
【0127】
(6)耐折強度
実施例と比較例で得られたシートから15mm×150mmの試験片(MDを長辺としたものと、TDを長辺としたもの)をそれぞれ5枚作製し、JIS P8115に準拠した東洋精機社製「MIT耐揉疲労試験機」を使用して折り曲げ角±90°、折り曲げ速度175rpm、荷重1kgの条件で、破断するまでの折り曲げ回数を計測し、この回数を耐折強度(単位[回])とし、MDとTDの平均値を求めた。この値が300回以上であると耐折強度が良好と判定し、300回未満では劣ると判定した。
○:300回以上
×:300回未満
【0128】
(7)洗浄後の表面固有抵抗値
実施例と比較例で得られたシートから100mm×100mmの試験片を5枚作成し、流水で3分間洗浄後、脱脂綿で水滴を拭き取り、23℃、相対湿度50%で24時間状態調整した。次に、JIS K6911に準拠して、三菱化学社製「ハイレスターUP MCP−450型(JボックスUタイプ)」を使用し、印加電圧500V、測定時間60秒の条件で表面固有抵抗値(単位[Ω])を測定した。
【0129】
実施例1
両外層用として表1に記載した割合の樹脂組成物、高分子量型帯電防止剤、発泡剤(MB)を秤量し、タンブラーによって均一混合してドライブレンド物とした後、32mmφ押出機(プラ工研社製)に供給し、シリンダー温度最大215℃の条件で溶融した。一方、内層用として、表1に記載した割合の樹脂組成物、発泡剤(MB)を秤量し、タンブラーによって均一混合してドライブレンド物とした後、40mmφ押出機(プラ技研社製)に供給し、シリンダー温度最大215℃の条件で溶融した。
【0130】
上記各押出機に接続用導管を介して装着された2種3層フィードブロック(170℃設定)及び面長500mmの口金(コートハンガータイプ;170℃設定)からシート状に押出して、50℃に設定した冷却ロールで冷却して未延伸シートを得た。この時、フィードブロック直前に設けた日本ダイニスコ社製の樹脂温度・樹脂圧力計で、シート表面外観が最良となるよう押出機の設定温度を調整した。樹脂温度は両押出機共約180℃、樹脂圧力は両押出機共、約16MPa前後であった。
【0131】
得られた未延伸シートを卓上型二軸延伸機(雰囲気温度75℃)にて縦方向に約2.3倍、横方向に約2.3倍逐次二軸延伸し、厚さ0.3mmの全層発泡樹脂層で構成された二軸延伸発泡シートを得た。層構成比率は10/80/10であった。該延伸シートを多数枚作製し、上記(1)〜(7)の評価を行い、得られた結果を表1に記載した。
【0132】
実施例2
表1に記載した割合の樹脂組成物、発泡剤(MB)を用いた以外は実施例1と同様の手順で(但し、32mmφ押出機のシリンダー温度を最大170℃、40mmφ押出機のそれを最大180℃、フィードブロック及び口金の設定温度を160℃とし、層比率の変更は押出機回転数で変更し、延伸倍率は縦横共に2.5倍として)行った。樹脂温度は両押出機共約170℃、樹脂圧力は両押出機共15MPa前後であった。両外層が非発泡樹脂層、内層が発泡樹脂層で構成された厚み0.11mmの二軸延伸発泡シートを得た。層構成比率は5/90/5であった。上記(1)〜(7)の評価を行い、得られた結果を表1に記載した。
【0133】
実施例3
両外層用として表1に記載した割合の樹脂組成物、低分子量型帯電防止剤(MB)、発泡剤(MB)を秤量し、タンブラーによって均一混合してドライブレンド物とした後、40mmφ押出機(プラ技研社製)に供給し、シリンダー温度最大215℃の条件で溶融した。一方、内層用として、表1に記載した割合の樹脂組成物を秤量し、タンブラーによって均一混合してドライブレンド物とした後、32mmφ押出機(プラ工研社製)に供給し、シリンダー温度最大200℃の条件で溶融した。
【0134】
上記各押出機に接続用導管を介して装着された2種3層フィードブロック(実施例1とは流路が逆になるタイプ;170℃設定)及び面長500mmの口金(コートハンガータイプ;170℃設定)からシート状に押出して、50℃に設定した冷却ロールで冷却して未延伸シートを得た。この時、フィードブロック直前に設けた日本ダイニスコ社製の樹脂温度・樹脂圧力計で、シート表面外観が最良となるよう押出機の設定温度を調整した。樹脂温度は両押出機共約180℃、樹脂圧力は両押出機共13MPa前後であった。
【0135】
得られた未延伸シートから実施例1と同様の手順で(但し、延伸倍率は縦横共に約2.0倍とした)、両外層が発泡樹脂層、内層が非発泡樹脂層で構成された厚み0.4mmの二軸延伸発泡シートを得た。層構成比率は40/20/40であった。上記(1)〜(7)の評価を行い、得られた結果を表1に記載した。
【0136】
実施例4
表1に記載した割合の樹脂組成物、高分子量型帯電防止剤、発泡剤(MB)を用いた以外は実施例2と同様の手順で(但し、32mmφ押出機のシリンダー温度を最大190℃、40mmφ押出機のそれを最大215℃、フィードブロック及び口金の設定温度を170℃とした。樹脂温度は両押出機共180℃前後、樹脂圧力は両外層用が14MPa前後、内層用が11MPa前後であった。また延伸倍率は縦2.3倍、横2.0倍とし、延伸終了後150℃で30秒間の熱固定を行った)、両外層が非発泡樹脂層、内層が発泡樹脂層で構成された厚み0.15mmの二軸延伸発泡シートを得た。層構成比率は5/90/5であった。上記(1)〜(7)の評価を行い、得られた結果を表1に記載した。
【0137】
比較例1
表2に記載した割合の樹脂組成物、発泡剤(MB)を用いた以外は実施例2と同様の手順で(但し、二軸延伸は行わず)、両外層が非発泡樹脂層、内層が発泡樹脂層で構成された未延伸発泡シートを得た。シート厚みは0.7mmであった。上記(1)〜(6)の評価を行い、得られた結果を表2に記載した。なお、(5)引裂強度は上記記載の評価方法では、シートを完全に引裂くことができず、測定不可能であった。また、(7)は未実施とした。
【0138】
比較例2
表2に記載した割合の樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の手順で、全層が非発泡樹脂層で構成された厚さ0.11mmの二軸延伸非発泡シートを得た。上記(1)〜(7)の評価を行い、得られた結果を表2に記載した。
【0139】
比較例3
表2に記載した割合の樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の手順で(但し、両方の押出機のシリンダー温度を最大165℃、フィードブロック及び口金の設定温度を150℃とした。樹脂温度は両押出機共約160℃、樹脂圧力は両押出機共11MPa前後であった)、未延伸発泡シート得た。得られた未延伸シートの二軸延伸を試みたが、過負荷により延伸が困難であった。よって、このシートについては上記(1)〜(7)すべて未実施とした。
【0140】
比較例4
市販の紙(わら半紙、坪量48g/m)について、上記(1)、及び(3)〜(6)の評価を行い、得られた結果を表2に記載した。尚、延伸倍率は油浴温度140℃、熱収縮応力は180℃で測定を行った。また、(7)は未実施とした。
【0141】
比較例5
市販のポリエチレン発泡シート(積水化成工業株式会社製、商品名:ライトロンS)について、上記(1)〜(7)の評価を行い、得られた結果を表2に記載した。尚、延伸倍率は油浴温度105℃、熱収縮応力は120℃で測定を行った。
【0142】
比較例6
市販の高発泡ポリプロピレンシート(JSP株式会社製:商品名「Pボード」)について上記(1)〜(7)の評価を行い、得られた結果を表2に記載した。尚、延伸倍率は油浴温度140℃、熱収縮応力は240℃で測定を行った。
【0143】
【表1】

表1及び表2中、「PHR」は、per hundred resin、即ち樹脂組成100質量部に対する発泡剤(マスターバッチ)の混合量(質量部)を表す。
【0144】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層が積層された発泡二軸延伸シートからなるガラス基板運搬用合紙は、特に、ガラス基板の梱包、運搬、貯蔵、開梱等の作業の際に、破損したり折曲がったりせず、ガラス基板表面の清浄度をより確実に高く保てるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用のガラス基板の運搬用合紙として用いられることはもちろん、各種画像表示機器用、太陽光発電システム用、自動車用、建材用等のガラス基板の運搬用合紙として広く利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層が積層されてなる積層体であって、少なくとも1層の発泡樹脂層と少なくとも1層の非発泡樹脂層又は発泡樹脂層が積層され延伸されてなる発泡二軸延伸シートからなることを特徴とするガラス基板運搬用合紙。
【請求項2】
脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層にポリ乳酸が含有されている請求項1に記載のガラス基板運搬用合紙。
【請求項3】
脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層に含有されている樹脂が実質的にポリ乳酸のみである請求項1又は請求項2に記載のガラス基板運搬用合紙。
【請求項4】
脂肪族系ポリエステルを含む2層以上の樹脂層の全ての層にポリ乳酸が含有されている請求項1ないし請求項3のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙。
【請求項5】
非発泡樹脂層/発泡樹脂層/非発泡樹脂層の順に積層され、かつ両非発泡樹脂層の厚みの合計が積層体全体の厚みの1〜70%である請求項1ないし請求項4のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙。
【請求項6】
発泡樹脂層/非発泡樹脂層/発泡樹脂層の順に積層され、かつ非発泡樹脂層の厚みが積層体全体の厚みの5〜95%である請求項1ないし請求項4のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙。
【請求項7】
発泡樹脂層/発泡樹脂層/発泡樹脂層の順に積層され、かつ各発泡樹脂層の厚みが積層体全体の厚みの1〜98%である請求項1ないし請求項4のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙。
【請求項8】
発泡二軸延伸シート全体の厚みが0.05〜1mmであり、下記(1)〜(6)を同時に満たすことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙。
(1)縦方向と横方向の熱収縮応力がいずれも0.10〜5.0MPa
(2)発泡倍率が1.1〜3.0倍
(3)JIS K7127に準拠して測定した引張弾性率が2.3GPa以下
(4)衝撃強度が300kg・cm/cm以上
(5)引裂強度が3.0N/mm以上
(6)耐折強度が300回以上
【請求項9】
流水で3分間洗浄後、脱脂綿で水滴を拭き取り、23℃、相対湿度50%で24時間状態調整後、JIS K6911に準拠して測定した表面固有抵抗値が10Ω〜1013Ωである請求項1ないし請求項8のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙。
【請求項10】
発泡二軸延伸シート全体における、ポリ乳酸と「脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族及び/又は脂環式ジオールとが重縮合した構造を有するポリエステル」との質量比が、100:0〜30:70である請求項1ないし請求項9のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙。
【請求項11】
全面に亘って通気細孔を有し、JIS P8117に準拠して測定した透気度が60秒/100mL以下である請求項1ないし請求項10のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙。
【請求項12】
発泡剤と脂肪族系ポリエステルを含む樹脂組成物と、発泡剤を含まず脂肪族系ポリエステルを含む樹脂組成物とを別々の押出機で溶融混練して1つの口金から共押出させてシートを形成し、該シートを冷却後再加熱して二軸方向に共延伸することにより、少なくとも1層の非発泡樹脂層と少なくとも1層の発泡樹脂層を積層させ、必要により熱固定することを特徴とする請求項1ないし請求項6、請求項8ないし請求項11のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙の製造方法。
【請求項13】
発泡剤と脂肪族系ポリエステルを含む樹脂組成物を、少なくとも2台以上の押出機で別々に溶融混練して1つの口金から共押出させてシートを形成し、該シートを冷却後再加熱して二軸方向に共延伸することにより、少なくとも2層以上の発泡樹脂層同士を積層させ、必要により熱固定することを特徴とする請求項1ないし請求項4、請求項7ないし請求項11のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は請求項13のガラス基板運搬用合紙の製造方法を使用して製造されたことを特徴とするガラス基板運搬用合紙。
【請求項15】
複数枚のガラス基板を、請求項1ないし請求項11、請求項14のいずれかの請求項に記載のガラス基板運搬用合紙を介して積み重ね、パレット上に又は箱体内に配置することを特徴とするガラス基板運搬用合紙の使用方法。


【公開番号】特開2010−202196(P2010−202196A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46240(P2009−46240)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】