説明

ガラス容器成形プロセスをモニタリングおよび制御する方法およびシステム

【課題】ガラス容器成形プロセスをモニタリングおよび制御する方法およびシステムを提供する。
【解決手段】各高温ガラス容器によって放出される放射は、成形機のすぐ後ろの測定装置で測定される。開示される方法は、ガラス容器間の測定値を正規化し、それにより、周囲条件を変更するガラス容器間の全体の温度のばらつきによる影響、および各ガラス容器ごとに特有の品質基準を与える、測定に影響する他のばらつきを取り除く。生産される各ガラス容器ごとのこうした基準を検討することによって、生産される容器の品質を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本特許出願は、2009年12月10日に欧州特許庁に出願した欧州特許出願第EP09075545.5号からの、35U.S.C.§119(a)下の優先権の利益を主張するものであり、その特許出願全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
[0002]本発明は、概して、ガラス容器の成形プロセスをモニタリングおよび制御するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]本発明は、ガラス容器成形プロセスをモニタリングおよび制御するための方法およびシステムに関する。成形プロセスは成形機によって実現され、その成形機は、独立した複数の区画を含むことができ、各区画は少なくとも1つの成形ステーションから構成される。その方法は、各高温ガラス容器によって放出される放射を成形機のすぐ後ろで測定するステップを含む。これらの測定値に基づいて、ガラス容器の品質を改善し、改善することで不良のガラス容器の生産数を減らすために、ガラス容器成形プロセスを調節するように情報および制御信号を生成することができる。
【0004】
[0004]こうしたタイプのシステムは、Dalstraに譲受された欧州特許第EP1525469B1号に開示されており、その特許には、ガラス製品の生産プロセスを分析およびモニタリングするシステムが記載されている。そのシステムは、近赤外(「NIR」)帯域の放射にのみ感応し、高温ガラス製品のNIR放射を測定し、少なくとも2つの測定帯域の平均放射強度を求め、この平均強度を基準値と比較し、測定帯域間の偏差を比較し、こうした比較に基づいて、必要なときにエラー信号を生成する。さらに、冷却曲線を計算し、冷却時間が異なることによるガラス製品の放射量の差を補償するために基準として使用する。
【0005】
[0005]しかし、そのシステムは、成形プロセスの変更ではなく、とりわけ周囲温度、周囲湿度、生産速度、冷却空気の温度、冷却空気の湿度、ガラス材料の組成、カメラの設定、空気中のばい煙およびちり、構成部品の汚染、ならびにガラス容器の重量など、様々な条件およびパラメータの変更によって引き起こされる赤外線量の変化がある場合でも、エラー信号を生成することがある。
【0006】
[0006]したがって、これらの条件およびパラメータは、例えば、システムが動作するのは昼か夜か、季節の違い、生産地、および/または成形機に応じて、測定した赤外線強度を大きく変える虞がある。
【0007】
[0007]その結果、絶えず変化する条件およびパラメータを補償するために、測定結果および生成したエラー信号を注意深くモニタリングし、条件およびパラメータをチェックし、基準値を調節するために、常に、操作者が存在すべきである。人件費が比較的高くなり、ガラス容器の成形プロセスが、労働条件が非常に好ましくない、極めて高温で騒々しい環境で行われるので、これは実用上の観点から非常に望ましくないことである。
【0008】
[0008]そのシステムの別の不利点は、以前に生産したガラス容器の生産を開始したときに、上記で言及した条件およびパラメータが変更されていることがあり、その場合は、以前の生産に使用した基準値および/または冷却曲線は、現在の生産には有用でない場合があることである。このような場合は、毎回、新規の基準および/または冷却曲線が必要となり、それにより、起動時間が非常に長くなり、したがって望ましくない。
【0009】
[0009]上記で言及した条件およびパラメータとは関係なく、高品質かつ安定した品質のガラス容器をそれにより生産できる、ガラス容器成形プロセスをモニタリングおよび制御する方法を提供することが望ましい。
【0010】
[0010]特有の基準を設けることも望ましく、その基準は、各成形ステーションでその基準で示すのと同じ品質のガラス容器を生産し、成形プロセスを起動するのに必要な時間を短縮するために、生産する容器のタイプの品質基準としての役割を果たす。こうした特有の基準を格納および使用して、異なる位置で同じ特定のガラス容器のタイプを生産する、同じ成形機または別の成形機をモニタリングおよび制御することができる。
【0011】
[0011]操作者の代わりに成形機を自動的に制御することによって、プロセスを常にモニタリングする操作者を有する必要性を無くすことも有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願第09075545.5号
【特許文献2】欧州特許第1525469B1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
[0012]上記で言及した目的を達成するために、本発明は、ガラス容器成形プロセスをモニタリングおよび制御する方法に関する。その方法は、高温ガラス容器によって放出される赤外線放射に感応するカメラで、高温ガラス容器によって放出される赤外線放射を成形機のすぐ後ろで測定する。カメラによって生成されるガラス容器の画像は、有限数の画像ラインで構成され、各画像ラインが有限数の画素を有し、
各成形ステーションから測定した各ガラス容器ごとに、
a.こうしたガラス容器に関するすべての画像ラインのすべての画素のデジタル値を合計することによって、各ガラス容器ごとに放射測定値の和を求めるステップと、
b.こうしたガラス容器に関するこのような画像ラインのすべての画素のデジタル値を合計することによって、各ガラス容器について各画像ラインごとにライン放射測定値を求めるステップと、
c.こうしたガラス容器の各画像ラインごとのライン放射測定値を、こうしたガラス容器に関する放射測定値の和で除算することによって、各ガラス容器ごとに測定値の比の曲線を求めるステップとを実行する。
【0014】
[0013]それにより、条件およびパラメータが変わる上記で言及した問題は、ライン放射測定値を放射測定値の和で除算することによって補償される。これを以下で説明することができる。例えば、高温ガラス容器の放射が空気中のいくらかのばい煙によって部分的に吸収されると、ガラス容器のライン放射測定値が低くなり、ガラス容器の合計測定値が低くなる。しかし、ガラス容器のライン放射測定値をガラス容器の放射測定値の和で除算することによって、ライン放射測定値は、事実上、ガラス容器間の放射測定値の和の差を補償するように正規化される(したがって、測定値の比の曲線は、ガラス容器間の放射測定値の和の差に影響を受けない正規化された曲線である)。これは、明らかに、従来技術のようにガラス容器に関する放射測定の絶対値を正規化することなしに使用する事例ではない。(測定値の比の曲線が、実際に次元値ではなく無次元の曲線であることに留意されたい。)
[0014]測定装置に近い成形ステーションから作られるガラス容器は、測定装置から遠い成形ステーションによるガラス容器と比較すると、測定装置までの移動距離が短く、これは時間があまりかからない。したがって、あまり冷却されず、その結果、温度がより高くなる(それに応じて合計の放射がより高くなる)。従来技術では、冷却曲線を使用して、このように異なる冷却時間を補償していた。しかし、この冷却曲線は、絶対測定値に基づいており、したがって、上記で言及した条件およびパラメータの変化に左右されやすい。本発明によれば、高温ガラス容器の測定値の比の曲線は、ガラス容器の温度を補償および正規化する。遠くに位置する成形ステーションからの(したがって、温度がより低い)ガラス容器が、測定装置により近い成形ステーションからの(したがって、温度がより高い)ガラス容器と同じガラス分布を有するときは、両方のガラス容器からの測定値の比の曲線は、従来技術の教示のように著しく異なるのではなく、同じになる。
【0015】
[0015]高温ガラス容器の測定値の比の曲線を、さらに基準曲線と比較することができる。その基準曲線は、特定のガラス容器の各タイプごとに特有であり、したがって、特定のガラス容器の各タイプごとの品質の尺度として働く。こうした特有の基準曲線を取得するためには、好ましい実施形態の方法は、
d.所定の数の高温ガラス容器に対する複数の測定値の比の曲線に基づいて、基準曲線を求める追加のステップを実行することができる。
【0016】
[0016]いくつかの高温ガラス容器に対する測定値の比の曲線を平均することは、いくつかのガラス容器の測定値の比の曲線を合計し、その和をガラス容器の数で除算することを含むことができる。ガラス容器の測定値の比の曲線は、ある期間にわたって、1つまたは複数の選択したステーションから、いくつかの生産サイクルにわたってまたは1つの生産サイクルのみにわたって平均することができる。
【0017】
[0017]成形機の設定が異なる様々な基準曲線を獲得することができ、それらの基準曲線のうち、最も品質の高いガラス容器を生産する、最も優れた基準曲線を選択することができる。その基準曲線を、同じ成形機または異なる成形機で同じ容器のタイプを後で生産するときに使用するために保存することができる。現在の生産性能を分析し、過去の生産と比較することもできる。所望の場合は、基準曲線を連続して更新することができ、その結果、同じ容器でさらなる高品質を実現することができる。
【0018】
[0018]本発明による別の好ましい実施形態の方法は、
e.こうした高温ガラス容器の測定値の比の曲線から基準曲線を減算し、その結果を基準曲線で除算することによって、各高温ガラス容器ごとに相対差曲線を求めるステップを含む。
【0019】
[0019]相対差曲線は、ガラス容器の測定値の比の曲線が基準曲線からはずれる程度および位置を簡単に示す。成形ステーションで生産されるガラス容器の品質を示すために、各成形ステーションごとに相対差曲線を表示することができる。生産されるガラス容器の品質が高いときは、相対差曲線はゼロに近くなる。すべてのステーションからのすべての容器の相対差曲線がゼロに近いときは、成形機によって生産されるすべての容器の品質が高くほぼ等しくなる。
【0020】
[0020]本発明による別の好ましい実施形態の方法は、
f.相対差曲線を所定の公差曲線と比較するステップと、
g.相対差曲線が少なくとも1つの点で公差曲線を超える場合に警告信号を生成するステップとを含む。
【0021】
[0021]相対差曲線を公差曲線と比較し、相対差曲線が公差曲線を超える場合に警告信号を生成することによって、成形ステーションによって生産されるガラス容器の品質が許容できるか、または容器が低品質のものであり、したがって許容できない程度まで低下しているかを簡単に判定することができる。
【0022】
[0022]公差曲線は一定でよく、そのため前記容器どの位置でも同じ量の偏差を許容可能である。しかし、公差曲線の値は、前記容器上の位置に応じて変わってもよい。したがって、例えば、公差(例えば、ガラスの厚さの公差)が重要である、容器の1つまたは複数の領域に関して、基準曲線からの偏差をあまり許容しないことが可能である。さらに、公差の値は正でも負でもよい。
【0023】
[0023]制御装置は、いくつかのプロセスパラメータによって各成形ステーションの成形プロセスを制御する。成形プロセスを自動的に制御するために、本発明による別の好ましい実施形態の方法が、
h.成形プロセスを自動的に制御するために、各高温ガラス容器の相対差曲線を制御装置に送信するステップを含む。
【0024】
[0024]ガラス容器の相対差曲線を各成形ステーションから制御装置に送信することによって、成形プロセスの変化およびエラーの検出後すぐに自動的にプロセスを調節することができる。調節は、相対差曲線が実質的にゼロに近づくようにして行う。
【0025】
[0025]高温ガラス容器が放射を放出するどの波長でも測定を実行することができる。しかし、容器ガラスからの3.0ミクロン未満の波長の放射が、ガラスの温度およびガラスの厚さの両方を示すので、特に、比較的厚いガラス容器を分析するときに、3.0ミクロン未満の波長でより正確な測定値を得ることができる。したがって、本発明による好ましい実施形態の方法は、前記測定が0.7と3.0ミクロンの間の波長で行われることである。
【0026】
[0026]本発明は、ガラス容器成形プロセスをモニタリングおよび制御する分析システムにも関する。そのシステムは、各高温ガラス容器によって放出される放射を成形機のすぐ後ろで測定するために少なくとも1つの測定装置を備える。その測定装置は、高温ガラス容器によって放出される放射に感応するライン走査またはエリアカメラを備えることができる。カメラによって生成されるガラス容器の画像は、有限数の画像ラインで構成され、各画像ラインが有限数の画素を有する。処理装置が、計算し、比較し、他の装置と連絡し、その処理装置はさらに、
a.こうしたガラス容器に関するすべての画像ラインのすべての画素のデジタル値を合計することによって、各ガラス容器ごとに放射測定値の和を求めるステップと、
b.こうしたガラス容器に関するこのような画像ラインのすべての画素のデジタル値を合計することによって、各ガラス容器について各画像ラインごとにライン放射測定値を求めるステップと、
c.こうしたガラス容器の各画像ラインごとのライン放射測定値を、こうしたガラス容器に関する放射測定値の和で除算することによって、各ガラス容器ごとに測定値の比の曲線を求めるステップとを実行するようにプログラムされる。
【0027】
[0027]放射の測定値が、環境、プロセス、および測定設備のパラメータおよび条件の変更と関係ないだけではなく、成形ステーション中の高温ガラス容器が作られる位置と関係ないようにするために、処理装置は上記で言及した動作を実行するようにプログラムされる。
【0028】
[0028]本発明によるさらなる好ましい実施形態の分析システムは、処理装置がさらに、
d.すべてのまたは選択した数の成形ステーションから作られる所定の数の高温ガラス容器に対して測定値の比の曲線を平均することによって、基準曲線を求めるステップを実行するようにプログラムされることである。
【0029】
[0029]いくつかの高温ガラス容器の測定値の比の曲線を合計し、その和を容器の数で除算することによって、特定のタイプのガラス容器に関して特有の平均測定値の比の曲線を取得する。平均測定値の比の曲線は、その特定のタイプのガラス容器の質に関する基準としての役割を果たす。それは、同じ品質要件の同じタイプのガラス容器を生産するときに、異なる位置の別の成形機に関して利用することもできる。
【0030】
[0030]本発明による別の好ましい実施形態の分析システムは、処理装置がさらに、
e.各高温ガラス容器の測定値の比の曲線から基準曲線を減算し、その結果を基準曲線で除算することによって、各高温ガラス容器ごとに相対差曲線を求めるステップを実行するようにプログラムされることである。
【0031】
[0031]相対差曲線を求めることによって、高温ガラス容器の品質を分析することができ、成形プロセスの不具合の、可能性のある原因を示すことができる。そのようにして、高温ガラス容器の測定値の比の曲線が基準曲線からはずれる程度および位置を簡単に理解することができる。生産されるガラス容器の品質を示し、成形プロセスの性能を示すために、各成形ステーションごとに相対差曲線を表示することができる。生産されるガラス容器の品質が高いときは、相対差曲線はゼロになるかまたは無視できるほど小さい。
【0032】
[0032]本発明による分析システムの別の好ましい実施形態は、処理装置がさらに、
f.各高温ガラス容器の相対差曲線を所定の公差曲線と比較するステップと、
g.相対差曲線が少なくとも1つの点で公差曲線を超える場合に、警告信号を生成するステップとを実行するようにプログラムされることである。
【0033】
[0033]このようにして、成形ステーションで生産されるガラス容器の品質が許容できるか否かを簡単に判定することができる。例えば、許容できない品質のガラス容器を不合格にするために警告信号を使用することができる。公差曲線は一定でもよく、ガラス容器上の位置に応じて変更してもよい。
【0034】
[0034]本発明による分析システムのさらに別の好ましい実施形態は、処理装置がさらに、
h.成形プロセスを自動的に制御するために、各高温ガラス容器の相対差曲線を成形制御装置に送信するステップを実行するようにプログラムされることである。
【0035】
[0035]処理装置は、各ガラス容器の相対差曲線を成形制御装置に送信し、その成形制御装置は、必要なときに1つまたは複数のプロセスパラメータを調節する。このようにして、プロセスパラメータの自動的な調節が、エラーまたは検出可能な不具合の検出後すぐに実現可能である。
【0036】
[0036]その測定装置は、高温ガラス容器が放射する波長に感応することができる。しかし、容器ガラスからの3.0ミクロン未満の波長の放射が、ガラスの温度およびガラスの厚さの両方を示すので、特に、比較的厚いガラス容器を分析するときに、3.0ミクロン未満の波長でより正確な測定値を得ることができる。したがって、本発明による分析システムの好ましい実施形態は、測定装置が0.7と3.0ミクロンの間の波長に感応することである。より具体的には、測定装置は、短波長赤外線(「SWIR」)カメラ、例えば512または1024画素のライン走査またはエリアSWIRカメラを使用する。
【0037】
[0037]本発明のこれらの利点および他の利点は、図面を参照すると最も良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】[0038]成形機および分析システムの実施形態の概略図を示す図である。
【図2】[0039]ガラス容器の画像を示す図である。
【図3】[0040]図2に示すガラス容器に関するライン放射測定値を示す図である。
【図4】[0041]図2に示すガラス容器に関する測定値の比の曲線を示す図である。
【図5】[0042]図2に示すガラス容器に関する基準曲線を示す図である。
【図6】[0043]図2に示すガラス容器に関する測定値の比の曲線と併せた基準曲線を示す図である。
【図7】[0044]図2に示すガラス容器に関する相対差曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[0045]図1に、ガラス容器成形機20が6つの独立した区画S1、S2、...S6を含み、各区画がそれぞれ2つの成形ステーション22および24を含むシステムの実施形態を示す。1つの生産サイクルで、成形機20は12個のガラス容器30を生産する。2つの溶融ガラスのゴブ32および34が、供給装置36によって同時に形成され、いわゆる粗型22および24に充填される。この実施形態の成形機20の各区画S1、S2、...S6は、2つの粗型22および24を含み、それらの粗型22および24中では、加工のタイプ(プレスブローまたはブローブロー)に応じてプレス成形または吹込み成形することによって、容器の前段階のもの、すなわちパリソンが形成される。形成したパリソンは、いわゆるブロー成形型26および28に移され、それらのブロー成形型26および28で、パリソンが吹込み成形されて、最終形状のガラス容器30になる。成形機20および供給装置36の機構は、それぞれライン52および54を通して制御装置38によって制御される。ガラス容器30は、コンベヤベルト50によって測定装置42を通って搬送され、その測定装置42は、高温ガラス容器30の画像を撮り、それらの画像をライン46を通して処理装置44に送信する。この実施形態では1つの測定装置42が使用されるが、測定装置42の数は、状況および実現する精度に応じて増やすことができる。しかし、1つの測定装置でも、実現される精度は相当高い。
【0040】
[0046]この実施形態の測定装置42、すなわちエリアカメラは、好ましくは短波長赤外線(「SWIR」)放射に感応する。図2に示す高温ガラス容器30のカメラによって撮られた画像は、例えば、512の画像ラインを含み、各画像ラインは、例えば200画素を含むことができる。
【0041】
[0047]処理装置44は、各ガラス容器30について、ガラス容器の画像中のすべての画素のデジタル値を合計することによって合計放射測定値を求める。図2に示すガラス容器の合計放射測定値は553である。次に、処理装置44は、各画像ラインについて200画素すべてのデジタル値を合計することによってライン放射測定値を求める。図2のガラス容器の画像に属するライン放射測定値を図3に示す。次に、処理装置44は、ライン放射測定値を合計放射測定値で除算することによって、本明細書で以下に示す測定値の比の曲線を求める。
【0042】
tot,s=ΣIx,y,s(x=1、2、...200、y=1、2、...、512)
y,s=ΣIx,y,s(x=1、2、...200)
ratio,y,s=(Iy,s/Itot,s)×100%
ここで、
tot,sは、ステーションsから作られるガラス容器の画像の放射測定値の合計であり、
x,y,sは、ステーションsから作られるガラス容器の画像の画素x、yのデジタル値であり、yは200のx画素を含む画像ラインを示し、x=1...200、y=1...512、s=1...12であり、
y,sは、ステーションsから作られるガラス容器の画像の画像ライン(y)に関するライン放射測定値であり、
ratio,y,sは、ステーションsから作られるガラス容器の画像の画像ラインyに関する測定値の比の値である。
【0043】
[0048]測定値の比の値は、簡単にするために百分率で表す。図4に示す測定値の比の曲線は、図2に示すガラス容器に属する。これらのステップを行う順番は、同じ結果に達する限り変えることができる。例えば、周囲のパラメータ(例えば空気中のばい煙)によって生じる、ガラス容器30から受ける放射の減衰量が、測定値の比の曲線に影響を及ぼさないことを容易に理解することができる。
【0044】
ratio,y,s=(αIy,s/αItot,s)×100%=(Iy,s/Itot,s)×100%
[0049]次に、処理装置44は、すべてのまたは選択した特定の成形ステーションによる、いくつかのガラス容器30からの測定値の比の曲線を平均することによって基準曲線を求める。この基準曲線は、生産するガラス容器のタイプに特有である。
【0045】
[0050]基準曲線の値は、以下に示すように導かれる。
【0046】
【数1】

【0047】
ここで、
reference,yは、ライン(y)に関する基準曲線の値であり、
Nは、考慮するガラス容器30の数である。
【0048】
[0051]同じまたは別の成形機で特定のガラス容器30の生産を開始するのに必要な時間を短縮するために、基準曲線を格納し、後で利用することができる。この例のガラス容器のタイプに属する基準曲線を図5に示す。図6に、図4の測定値の比の曲線と一緒にして基準曲線を示す。
【0049】
[0052]次に、処理装置44は、測定値の比の曲線から基準曲線を減算し、その差を基準曲線で除算することによって、相対差曲線を求める。これを以下に示す。
【0050】
ΔIs,y=((Iratio,s−Ireference,y)/Ireference,y)×100%
ここで、
ΔIs,yは、ステーションsから作られるガラス容器の画像のラインyにおける相対差の値である。
【0051】
[0053]相対差曲線は、ガラス容器の測定値の比の曲線が基準曲線からはずれる程度および位置を示す。処理装置44は、成形ステーションで生産されたガラス容器の品質を示すために、接続したモニタ(図示せず)上に各成形ステーションについて相対差曲線を表示することができる。図7に、図2のガラス容器に関する、図4に示す対応する測定値の比の曲線との相対差曲線を示す。
【0052】
[0054]こうした特有の例では、図7の相対差曲線は、ガラス容器の上側の部分で正の偏差を、ガラス容器の下側の部分で負の偏差を示し、これは、ガラス容器の上側の部分ではガラスが多過ぎ、ガラス容器の下側の部分ではガラスが少な過ぎることを示す。品質の高いガラス容器の場合は相対差曲線がすべての点でゼロに近くなる。
【0053】
[0055]続いて、処理装置44は、相対差曲線を所定の公差曲線と比較し、相対差の値が対応する公差の値を超える場合に警告信号を生成する。これを以下に示す。
【0054】
ΔIs,y<IT−,yまたはΔIs,y>IT+,yの場合に警告し、
ここで、
T−,yは、ラインyに関する負の公差値であり、
T+,yは、ラインyに関する正の公差値である。
【0055】
[0056]例えば、図1のライン56上で許容できない品質のガラス容器を不合格にするために警告信号を用いることができる。図7では、負の公差値が−30%に設定され、正の公差値が+30%に設定される。図7では、ライン300からライン380に関して相対差の値が正の公差値を超えるので、警告信号が生成される。
【0056】
[0057]成形プロセスを自動的に調節するために、処理装置44は、相対差曲線を各成形ステーションからライン48を越えて制御装置38に送信することができる。制御装置38は、各成形ステーションについて相対差曲線がゼロに近くなるまで、適切なプロセスパラメータを調節する。次いで、これは、操作者がプロセスを連続してモニタリングする必要なしに実現される。
【0057】
[0058]処理装置44は、各ガラス容器30がどの成形ステーションから作られるか分かるように成形機20およびコンベヤベルト50と同期される。
【0058】
[0059]上記で説明した実施形態は、単なる例としての役割を果たすものであり、決して本発明を限定するものではない。本発明の知識を与えられた当業者は、他の実施形態をすぐに実現できるであろう。したがって、本明細書で説明していない実施形態を実現する主題および方法論のどんな改変も、本発明の範囲に包含されると見なされる。
【0059】
[0060]本発明の前述の説明を、特定の実施形態およびその適用例に関して示し説明してきたが、例示および説明のために示しており、網羅的ではなく、特定の実施形態および開示した適用例に限定するものでもない。本明細書で説明したように、本発明に対するいくつかの変更、修正、改変、または改造を行うことができ、それらはどれも本発明の精神および範囲から逸脱しないことが当業者には明らかであろう。本発明の原理および実用的な適用例を最も良く示すために特定の実施形態および適用例を選択し説明した。それにより、当業者は様々な実施形態で、企図される特定の使用に合うような様々な修正形態と共に本発明を利用することができる。したがって、すべてのこうした変更形態、修正形態、改変形態、および改造形態は、添付の請求項が公平に、法的に、平等に付与される範囲に従って解釈されるときに、それらの請求項によって決定される本発明の範囲内に包含されるものと解釈すべきである。
【符号の説明】
【0060】
20 ガラス容器成形機
22、24 成形ステーション、粗型
26、28 ブロー成形型
30 高温ガラス容器
32、34 ゴブ
36 供給装置
38 制御装置
42 測定装置
44 処理装置
46、48、52、54、56 ライン
50 コンベヤベルト
S1、S2、S3、S4、S5、S6 区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス容器成形プロセスをモニタリングする方法であって、前記成形プロセスが、成形機によって実現され、前記成形機が複数の独立した区画を含み、前記各区画が、ガラス容器がそこで形成される少なくとも1つの成形ステーションを有し、この方法が、前記高温ガラス容器によって放出される放射に感応する測定装置で、前記成形機のすぐ後ろで高温ガラス容器によって放出される放射に比例するデジタル値を判定するステップを含み、前記測定装置が、各高温ガラス容器のデジタル画像を生成し、前記デジタル画像が、有限数の画像ラインで構成され、各画像ラインが有限数の画素を有し、各画素がデジタル値を有する方法において、
各成形ステーションから測定した各ガラス容器ごとに、
a.こうしたガラス容器に関するすべての前記画像ラインのすべての前記画素の前記デジタル値を合計することによって、各ガラス容器ごとに放射測定値の和を求めるステップと、
b.こうしたガラス容器に関するこのような画像ラインのすべての前記画素の前記デジタル値を合計することによって、各ガラス容器について各画像ラインごとにライン放射測定値を求めるステップと、
c.こうしたガラス容器の各画像ラインごとの前記ライン放射測定値を、こうしたガラス容器に関する前記放射測定値の和で除算することによって、各ガラス容器ごとに測定値の比の曲線を求めるステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
d.所定の数の前記ガラス容器に対する前記複数の測定値の比の曲線に基づいて、基準曲線を求めるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
e.各ガラス容器に関する前記測定値の比の曲線から前記基準曲線を減算し、その結果を前記基準曲線で除算することによって、各ガラス容器ごとに相対差曲線を求めるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
f.各高温ガラス容器の前記相対差曲線を所定の公差曲線と比較するステップと、
g.前記相対差曲線が少なくとも1つの点で前記公差曲線を超える場合に、警告信号を生成するステップとをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記成形機が制御装置によって動作され、
h.前記成形プロセスを自動的に制御するために、各高温ガラス容器の前記相対差曲線を前記制御装置に送信するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記測定装置が、0.7ミクロンと3.0ミクロンの間の放射波長に感応する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ガラス容器成形プロセスをモニタリングするシステムであって、前記成形プロセスが、成形機によって実現され、前記成形機が、制御装置によって制御され、複数の独立した区画を含み、前記各区画が、ガラス容器がそこで形成される少なくとも1つの成形ステーションを有し、このシステムが、前記高温ガラス容器によって放出される放射に感応し、前記成形機のすぐ後ろで各高温ガラス容器の画像を生成する少なくとも1つの測定装置であって、前記画像が有限数の画像ラインで構成され、各画像ラインが有限数の画素を有する、測定装置と、計算し、比較し、他の装置と連絡する処理装置とを備えるシステムにおいて、
前記処理装置がさらに、各成形ステーションから測定した各ガラス容器ごとに、
a.こうしたガラス容器に関するすべての前記画像ラインのすべての前記画素のデジタル値を合計することによって、各ガラス容器ごとに放射測定値の和を求めるステップと、
b.こうしたガラス容器に関するこのような画像ラインのすべての前記画素の前記デジタル値を合計することによって、各ガラス容器について各画像ラインごとにライン放射測定値を求めるステップと、
c.こうしたガラス容器の各画像ラインごとの前記ライン放射測定値を、こうしたガラス容器に関する前記放射測定値の和で除算することによって、各ガラス容器ごとに測定値の比の曲線を求めるステップとを実行するようにプログラムされることを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記処理装置がさらに、
d.すべてまたは選択した数の成形ステーションから作られる所定の数の前記容器に対する前記測定値の比の曲線を平均することによって、基準曲線を求めるステップを実行するようにプログラムされる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理装置がさらに、
e.各高温ガラス容器に関する前記測定値の比の曲線から前記基準曲線を減算し、その結果を前記基準曲線で除算することによって、各高温ガラス容器ごとに相対差曲線を求めるステップを実行するようにプログラムされる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理装置がさらに、
f.各高温ガラス容器の前記相対差曲線を所定の公差曲線と比較するステップと、
g.前記相対差曲線が少なくとも1つの点で前記公差曲線を超える場合に、警告信号を生成するステップとを実行するようにプログラムされる、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
各高温ガラス容器の前記相対差曲線が、前記成形プロセスを自動的に制御するように前記制御装置に送信される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記処理装置がさらに、
h.前記成形プロセスを自動的に制御するために、各高温ガラス容器の前記相対差曲線を前記制御装置に送信するステップを実行するようにプログラムされる、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記測定装置が、0.7ミクロンと3.0ミクロンの間の放射波長に感応する、請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
前記測定装置が、
短波長赤外線(SWIR)カメラを備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
I.S.機で形成された高温ガラス容器によって放出される放射を使用してガラス容器成形プロセスをモニタリングする方法であって、
前記ガラス容器の形成後すぐかつ冷却前に、各高温ガラス容器によって放出される放射を測定するステップと、
前記測定ステップに基づいて、各高温ガラス容器ごとにライン放射測定値曲線ならびに放射測定値の和を求めるステップと
前記ライン放射測定値曲線を前記放射測定値の和で除算することによって、各成形ステーションから各容器ごとに測定値の比の曲線を求めるステップとを含む、方法。
【請求項16】
複数の容器に関する前記測定値の比の曲線に基づいて基準測定値の比の曲線を求めるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記各高温ガラス容器の測定値の比の曲線から前記基準測定値の比の曲線を減算し、その結果を前記基準測定値の比の曲線で除算することによって、各高温ガラス容器ごとに相対差曲線を求めるステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
各高温ガラス容器の前記相対差曲線を所定の公差曲線と比較するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記相対差曲線が少なくとも1つの点で前記公差曲線を超える場合に、警告信号を生成するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記成形プロセスを自動的に制御するために、各高温ガラス容器の相対差曲線を使用するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記放射測定ステップが、0.7ミクロンと3.0ミクロンの間の放射波長に感応する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
I.S.機で形成された高温ガラス容器によって放出される放射を使用してガラス容器成形プロセスをモニタリングするシステムであって、
前記ガラス容器の形成後すぐかつ冷却前に、各高温ガラス容器によって放出される放射を測定する測定装置と、
前記測定値に基づいて、各高温ガラス容器ごとのライン放射測定値の曲線ならびに放射測定値の和を求める処理装置とを備え、
前記処理装置がさらに、前記ライン放射測定値の曲線を前記放射測定値の和で除算することによって、各成形ステーションからの各容器ごとに測定値の比の曲線も求める、システム。
【請求項23】
前記処理装置がさらに、複数の容器に関する前記測定値の比の曲線に基づいて基準測定値の比の曲線を求める、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記処理装置がさらに、各高温ガラス容器の前記測定値の比の曲線から前記基準測定値の比の曲線を減算し、その結果を前記基準測定値の比の曲線で除算することによって、各高温ガラス容器ごとに相対差曲線を求める、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記処理装置がさらに、各高温ガラス容器の前記相対差曲線を所定の公差曲線と比較する、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記相対差曲線が少なくとも1つの点において前記公差曲線を超える場合に、前記処理装置がさらに、警告信号を生成する、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
各高温ガラス容器の前記相対差曲線が、前記成形プロセスを自動的に制御するために使用される、請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
前記測定装置が、短波長赤外線(SWIR)カメラを備える、請求項22に記載のシステム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−121861(P2011−121861A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−275531(P2010−275531)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(598152242)エムハート・グラス・ソシエテ・アノニム (49)
【Fターム(参考)】