説明

ガラス板の梱包装置及び梱包方法

【課題】長時間保護シートを挟んでガラス板を保管しても、保護シートが倒れにくく、シート除去装置で効率よく保護シートを除去することができるガラス板の梱包装置及び梱包方法を提供する。
【解決手段】梱包装置は、保護シートをガラス板の間に挟んで複数のガラス板を支持し固定する支持部と、前記支持部に固定された複数のガラス板を、前記支持部と共に覆うコンテナ筐体部とを有するコンテナ本体と、前記コンテナ本体を包むように保護する、熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱材を含む断熱保護カバーと、を有する。梱包装置では、ガラス板の束を固定した支持部とコンテナ筐体部とを、断熱保護カバーが覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のガラス板を梱包する梱包装置及び梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」という)ではガラス基板として、厚さが例えば1.0mm以下である薄いガラス板が用いられる。近年では、 FPDガラス基板の大型化が進んでおり、例えば、サイズが2200mm×2500mmの第8世代と呼ばれるガラス板が用いられる。
【0003】
このようなガラス板は、多数のガラス板が束となって専用梱包装置に収納されて一度に納入先に搬送される。納入先では、Si薄膜等をガラス板に成膜して半導体素子等がガラス板に形成される。このような多数のガラス板の束を収納し搬送する上記梱包装置は、複数のガラス板を支持し固定する支持台と、支持台に固定される、ガラス板を覆うコンテナ筐体と、を備える。
【0004】
一般的に、ガラス板が上記支持台に載せられるとき、ガラス板のガラス表面には保護シートが被され、この保護シートの表面に別のガラス板が重ねられて積層される。すなわち、支持台に載せられた隣り合うガラス板間には、保護シートが挟められる。保護シートをガラス基板間に挟むのは、ガラス板表面に傷がつくことを防止するため、さらには、納入先でガラス板を一枚ずつ取り出す際、静電気によりガラス板同士が密着するのを防止するためである。そのとき、保護シートには、例えば保護紙や保護フィルムが用いられるが、以下の観点から、保護紙が好適に用いられる。保護フィルムの表面には有機物層が形成されているので、保護フィルムを用いた場合、ガラス板に疎水性の有機物層の一部がしばしば転写する。一方、ガラス板は、半導体素子等の形成の前処理として、塵や汚れを除去するためにガラス表面を洗浄するが、この洗浄のとき、疎水性を有する上記有機物層がガラス板に部分的に付着するため、ガラス板の洗浄は保護紙に比べて長くなる。これが保護フィルムは用いられない理由となっている。さらに、ガラス表面に付着した有機物層は、Si薄膜等の成膜の品質に影響を与えるため除去すべき対象でもあるので、洗浄に余分な時間がかかる。
【0005】
このような状況下、1枚以上のガラスシートを梱包し輸送するためのコンテナが提案されている(特許文献1)。当該コンテナは、ベース付きのパレットを有し、金属あるいは他の複合材料から製造されるフレームと、前記金属あるいは前記他の複合材料から製造され、前記1枚以上のガラスシートが密封可能に覆われるように前記パレットに固定されるカバーと、クッション部材を有する支持パネルおよび台座と、前記パレットの前記支持パネルに前記1枚以上のガラスシートを制御可能且つ調整可能に保持する拘束手段と、を備える。当該コンテナでは、1枚以上のガラスシートの様々なサイズに対応でき、且つ1枚以上のガラスシートは、間に隙間なく積み重ねられるよう構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−502661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記コンテナでは、上述のガラス板の間に挟む保護シートとして保護紙が用いられる。ガラス板を取り出す際、ガラス板の外側にはみ出した保護紙の上端部分を、シート除去装置を用いて吸引することにより、保護紙をガラス板から除去する。しかし、ガラス板を収納したコンテナを長時間保管した後、コンテナ内のガラス板を取り出そうとするとき、上記保護紙の上端部分は変形し、例えば、保護紙の上端部分が屈曲して倒れ、保護紙同士が重なってしまう場合がある。このような状態の保護紙は、シート除去装置を用いて1枚ずつ除去することを困難にする場合がある。
以上のように、ガラス板をコンテナ内に長時間保管すると、保護紙が屈曲して倒れてシート除去装置で効率よく保護紙を除去することができない、という不都合が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、従来の問題点を解決するために、長時間保護シートを挟んでガラス板を保管しても、保護シートの端が倒れにくく、シート除去装置で効率よく保護シートを除去することができるガラス板の梱包装置及び梱包方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、複数のガラス板を梱包する梱包装置である。当該梱包装置は、
保護シートをガラス板の間に挟んで複数のガラス板を支持し固定する支持部と、前記支持部に固定された複数のガラス板を、前記支持部と共に覆うコンテナ筐体部とを有するコンテナ本体と、
前記コンテナ本体を包むように保護する、熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱材を含む断熱保護カバーと、を有する。
【0010】
前記保護シートは紙からなる、ことが好ましい。
また、前記断熱保護カバーは、熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱層と、光を遮る遮光層を含む、ことが好ましい。
前記断熱保護カバーは、前記支持部及び前記コンテナ筐体部の形状に合わせた形状に加工されている、ことが好ましい。
【0011】
本発明の他の態様は、複数のガラス板を梱包する梱包方法である。当該梱包方法は、
保護シートをガラス板の間に挟んで複数のガラス板を支持部に固定し、
前記支持部に固定された複数のガラス板を、コンテナ筐体部により前記支持部と共に覆い、
前記支持部及び前記コンテナ筐体部を包むように熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱材を含む断熱保護カバーにより、前記支持部及び前記コンテナ筐体部を覆う。
【発明の効果】
【0012】
上記態様の梱包装置及び梱包方法によれば、長時間保護シートを挟んでガラス板を保管しても、保護シートの端が倒れにくく、シート除去装置で効率よく保護シートを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の梱包装置の一部の分解斜視図である。
【図2】本実施形態の梱包装置の他の部分の分解斜視図である。
【図3】図2に示す断熱保護カバーの断面を示す図である。
【図4】(a),(b)は、ガラス基板と保護紙との配置を説明する図である。
【図5】(a)は、本実施形態の梱包装置を用いたときの梱包装置内部の温度と湿度の時間履歴を示す図であり、(b)は、従来の梱包装置を用いたときの梱包装置内部の温度と湿度の時間履歴を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の梱包装置及び梱包方法について説明する。
【0015】
図1,2は、本実施形態のガラス板を収納する梱包装置10を示す図である。
梱包装置10は、ガラス板を複数重ねて傾斜した状態で梱包し、ガラス板を屋外あるいは屋内に長時間保管する装置である。
梱包装置10は、具体的には、支持台12と、コンテナ筐体14と、断熱保護カバー16(図2参照)と、を有する。支持台12とコンテナ筐体14は、コンテナ本体を形成する。支持台12は、保護シートをガラス板の間に挟んで複数のガラス板を支持し固定するコンテナ本体の支持部である。コンテナ筐体14は、この支持部に固定された複数のガラス板を、支持部と共に覆うコンテナ本体の筐体部、すなわちコンテナ筐体部である。
【0016】
支持台12は、パレット部12aと、背面部12bと、床部12cと、支持部12dと、を有する。
パレット部12aは、フォークリフト等の搬送機構によって梱包装置10全体を移動させることができる基台である。
パレット部12aの上には、床部12cが設けられる、床部12cは、ガラス板の束18の側面部と当接してガラス板を束18として載せる部分である。背面部12bは、ガラス板の束18の主面(最大面積を有する面)が当接する部分であり、床部12cの面に対して垂直に立設している。床部12cは、パレット部12aの面に対して0〜45度傾斜している。したがって、水平な地面に梱包装置10を置いたとき、背面部12bは地面(水平面)に垂直に立設しておらず、水平面に対して0〜45度傾斜している。
【0017】
ガラス板は、一枚ずつ、図示されない搬送装置により搬送されてガラス板の側面部が床部12cに当接するように支持台12に載せられ、既に載せられたガラス板に重ねられる。その際、背面部12bから床部12cに沿って並行に延びた両側の支持部12dによってガラス板の位置が規制されてガラス板が揃えられる。さらに、支持台12にガラス板を満載したとき、ガラス板の束18が移動しないように束18を背面部18bに向けて付勢する図示されない押さえ部材が設けられている。押さえ部材により、ガラス板の束18は背面部12b、床部12cに支持固定される。支持台12は、アルミニウム合金等の金属、樹脂あるいは複合材料で構成される。
【0018】
コンテナ筐体14は、アルミニウム合金等の薄板状の金属板(厚さは、0.5〜5mm)によって形成された筐体であり、前面14a,側面14b,14c、天井面14dを備える。コンテナ筐体14の各面は、ガラス板の束18が支持固定された背面部12b、床部12cに図示されない固定治具により固定される。これにより、ガラス板の束18は支持台12とコンテナ筐体14によって覆われてコンテナ筐体14の内部空間内に収納される。コンテナ筐体14の前面14aには、コンテナ筐体14を作業員が把持する取っ手14eが設けられている。
【0019】
断熱保護カバー16は、図2に示されるように、支持台12と一体化したコンテナ筐体14の上方から、コンテナ筐体を包むように保護する部分であり、支持台12とコンテナ筐体14の形状に合わせて加工されている。なお、「包む」とは、支持台12と一体化したコンテナ筐体14の全面を覆うように包む他、支持台12と一体化したコンテナ筐体14の上面および側面を少なくとも覆うように包むことを含む。断熱保護カバー16が支持台12と一体化したコンテナ筐体14の上面および側面を覆う場合、図2に示す断熱保護カバー16は、支持台12と一体化したコンテナ筐体14の底面を覆う部分がなくてもよい。
図2に示す断熱保護カバー16は、支持台12とコンテナ筐体14が一体化した形状に対応する形状をなし、部分的に切り込みが設けられている。この切り込みは、図示されないマジックテープ(登録商標)やファスナーにより閉じられるように断熱保護カバー16は構成される。
図3は、断熱保護カバー16の断面図である。断熱保護カバー16は、ポリエチレンからなる反射防止層16a、断熱層16b、及び、内層として遮光層16cを備える。
断熱層16bは、後述するようにガラス板の束18が固定された支持台12とコンテナ筐体14によって形成される内部空間内の温度及び湿度が急激に変化しないようにするために、熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱材が用いられる。例えば、空気層を含む樹脂などの断熱材が断熱層16bとして用いられる。また、ポリエチレン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、グラスウール、羊毛断熱材、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、あるいはポリスチレン(例えば、発砲スチロール)などが用いられる。断熱材は、熱伝導率が0.1W/m/K以下の範囲であれば、断熱効果を有するものであればいずれの材料を用いることもできる。また、断熱保護カバー16を支持台12とコンテナ筐体14の周りを覆うように包む作業効率の観点から、断熱材は軽量であることが好ましい。
【0020】
遮光層16cには、遮光効果を有する遮光材が用いられる。遮光材としては、アルミニウム、樹脂、樹脂混合物などを適用することができる。例えば、ポリ塩化ビニル等が例示される。遮光材としては、光を反射しないものがより好ましい。これは、作業の安全性を保つためである。例えば、遮光層16cが透明であれば、作業の安全性を保つということに加え、断熱保護カバー16内の状況を容易に視認して把握することできる。
【0021】
断熱保護カバー16の厚さが厚くなると、梱包装置10を覆う作業が困難となる。他方、断熱保護カバー16の厚さが薄くなると、十分な断熱効果が得られない。このため、断熱保護カバー16の厚さは、0.5mm以上3cm以下であることが好ましい。また、厚さが、1mm以上2cm以下、1mm以上1cm以下、2mm以上7mm以下、3mm以上5mm以下、であることがさらに好ましい。
断熱層16bの厚さは、0.5mm以上2cm以下、好ましくは1mm以上5mm以下であることが断熱効果を有効に発揮する点で好ましく、遮光層16cの厚さは、0.1mm以上1cm以下、好ましくは0.1mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0022】
このような梱包装置10に梱包されるガラス板の厚さは、0.01mm〜3mmであり、好ましい厚さの上限値は、1.5mm、1.0mm、0.8mm、0.5mmであり、最も好まし上限値は0.4mmである。一方、好ましい厚さの下限値は、0.2mmであり、より好ましくは0.1mmである。
【0023】
梱包装置10に梱包されるガラス板の種類は、ボロシリケイトガラス、アルミノシリケイトガラス、アルミノボロシリケイトガラス、ソーダライムガラス、アルカリシリケイトガラス、アルカリアルミノシリケイトガラス、アルカリアルミノゲルマネイトガラスなどが挙げられる。
梱包装置10に梱包されるガラス板は、例えば、フラットパネルディスプレイ(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)用のガラス板、太陽電池用のパネル、カバーガラスに使用されるガラス板である。なお、カバーガラスとは、例えば、AV(Audio Visual)機器や携帯端末機器等の表示画面や筐体を保護するために、ガラス板を化学的あるいは物理的に強化した強化ガラスである。
【0024】
このように、ガラス板を支持固定した支持台12と一体化したコンテナ筐体14を包むように断熱保護カバー16が保護するのは、支持台12とコンテナ筐体14とにより形成される、ガラス板が梱包されている内部空間の温度及び湿度の急激な変化を抑制するためである。
具体的には、ガラス板を複数束ねて梱包する場合、図4(a)に示すように、保護紙20を保護シートとしてガラス板22の間に挟む。このように保護紙20を挟むのは、ガラス板表面に傷がつくことを防止するため、さらには、ガラス板22が静電気を帯びて互いに密着するのを防止するためである。実際、支持台12に載せられた束18から最表面にあるガラス板22を取り出す際に、図示されないシート除去装置を用いてガラス板22の上方に突出した保護紙20の上端部分を、図中のAの方向から吸引して除去する。
しかし、梱包装置10内で長時間保管されたガラス板の束18に挟まれた保護紙の上端は、図4(b)に示すように、屈曲して前方あるいは後方に倒れて重なってしまう(図4(b)では前方に倒れている)。このため、図4(b)に示すようにAの方向からシート除去装置を用いて最表面にある保護紙20を1枚だけ除去することは困難になる。
このような保護紙20の屈曲と重なりを防止するために、断熱保護カバー16が用いられる。
【0025】
保護紙20はガラス板22の梱包に用いられて、支持台12とコンテナ筐体14とにより形成される略密閉された内部空間に長時間収納される。保護紙20は、元々、ある一定量の水分を含有しているが、上記略密閉された内部空間内の温度が上昇すると内部空間の飽和水蒸気圧が上昇し、保護紙20から水分が蒸発する。これが、保護紙20の上端部分が屈曲して倒れる原因である。したがって、梱包装置10の上記内部空間の雰囲気の飽和水蒸気圧の急激な変化を抑制することにより、保護紙の変形を防止することができる。断熱保護カバー16は、上記内部空間の温度の急激な変化を抑制することにより飽和水蒸気圧の急激な変化を抑制することができるので、断熱保護カバー16により、保護紙20の上端部分が屈曲して倒れることを抑制することができる。
また、保護紙の代わりに保護フィルムを用いた場合に、内部空間の飽和水蒸気圧の急激な変化により、保護フィルムがガラス板表面に吸着し、剥離しがたくなるという問題が生じる。断熱保護カバー16は、内部空間の温度の急激な変化を抑制することにより飽和水蒸気圧の急激な変化を抑制することができるので、保護フィルムのガラス板への吸着も、断熱保護カバー16を用いることにより抑制され得る。
このように、本実施形態の梱包装置10では、保護シートとして保護紙の他に保護フィルムを用いることができる。
【0026】
本実施形態の梱包装置10に用いられるガラス板22の大きさは、幅方向の長さが500mm〜3000mmであり、長手方向の長さが500mm〜3000mmである。ここで、ガラス板の大きさが大きくなるほど、ガラス板を梱包する梱包装置10の内部空間の体積も大きくなり、梱包装置10内の雰囲気中に含有可能な水分の絶対量が増える。つまり、大きなガラス板の梱包装置10ほど、内部空間の温度が上昇し、飽和水蒸気圧が上昇した場合に、保護紙20から水分が蒸発するので、保護紙の上端部分の屈曲による倒れ等の変形の問題が顕著となる。つまり、本実施形態では、第5世代(約1100mm×1300mm)以上、特に第7世代(約1870mm×2200mm)以上の大きさのガラス板に有用である。
さらに、ガラス板が大きくなるほど、ガラス板間に設けられる保護シートの大きさも大きくなる。例えば、保護シートとして保護紙を用いた場合、保護紙の自重が重いほど、保護紙が屈曲して倒れることが多くなる。このことからも、本実施形態に用いるガラス板、このガラス板に用いる保護シートが大きいほど有用であることが明らかである。
【0027】
本実施形態では、断熱保護カバー16は、図3に示すように断熱層16bと遮光層16cを含むが、遮光層16cを含まず断熱層16bを含む構成であってもよい。
また、断熱保護カバー16は、図2に示されるように、支持台12とコンテナ筐体14とが一体化した形状に対応した形状を有するが、断熱保護カバー16は、任意の形状をしたものであってもよい。断熱保護カバー16の形状は、例えば、支持台12及びコンテナ筐体14の形状に対応した袋状であってもよいし、シート状であってもよい。断熱保護カバー16の形状がシート状の場合、支持台12とコンテナ筐体14が一体化したものを、風呂敷のように包んでもよい。なお、断熱保護カバー16は、支持台12のパレット部12aの下側(地面側)の底面を必ずしも包む必要はなく、この場合であっても、上記内部空間の温度の急激な変化を抑制することにより飽和水蒸気圧の急激な変化を抑制することができる。
【0028】
このような梱包装置10では、まず、保護紙20およびガラス板22が順に支持台12に載せられる。所定の枚数のガラス板22が積層されると、ガラス板22の束18が移動しないように図示されない押さえ部材によりガラス板22の束18は支持台12に押圧される。こうして支持台12にガラス板22の束18は固定される。この後、支持台12に固定された複数のガラス板22の束18は、コンテナ筐体14により支持台12と共に覆われ、密閉された内部空間内に収納される。この後、支持台12及びコンテナ筐体14を包むように断熱保護カバー16は支持台12及びコンテナ筐体16を覆う。
このように、断熱保護カバー16が、ガラス板22の束18を支持固定した支持台12及びコンテナ筐体16を覆うので、ガラス板22を収納した内部空間の湿度の急激な変化を抑制することができる。したがって、保護紙の端が屈曲して重なるような変形は抑制される。
【0029】
上記実施形態では、図1に示すように、支持台12とコンテナ筐体14とを別々の構成要素とするコンテナ本体を用いるが、コンテナ本体の構成は、図1に示す形態に限られない。例えば、保護シートをガラス板の間に挟んで複数のガラス板を支持し固定する支持部と、この支持部に固定された複数のガラス板を、支持部と共に覆うコンテナ筐体部とが一体化したコンテナ本体を用いることができる。この場合、コンテナ筐体部の前面にシャッター等の開閉機構が設けられた開口部が設けられ、この開口部からガラス基板をコンテナ本体の内外に出し入れすることが好ましい。この場合においても、保護シートをガラス板の間に挟んで複数のガラス板を支持部に固定し、支持部に固定された複数のガラス板を、コンテナ筐体部のシャッター等を閉じることによりコンテナ筐体部および支持部により覆い、この後、支持部及びコンテナ筐体部を包むように断熱保護カバー16により、支持部及びコンテナ筐体部を覆うことができる。
【0030】
(実施例)
本実施形態の梱包装置10を用いて、断熱保護カバー16の有無の効果を調べた。
使用したガラス板22は、液晶ディスプレイ用ガラス基板(アルミノシリケイトガラス)で、2500mm×2200mm(幅×長さ)の大きさである。保護紙20は、2540mm×2273mm(幅×長さ)の、いわゆるパルプ紙(再生紙でない)からなる保護シートを用いた。ガラス板22は、50枚の束にして梱包装置に梱包した。梱包装置は、屋外に夕方から翌日の午前中まで約17時間置いた。
【0031】
図5(a)は、本実施形態の梱包装置10におけるガラス板の束を収納する内部空間の温度と湿度の履歴を示している。図5(b)は、従来の梱包装置、すなわち、断熱保護カバー16が用いられない梱包装置における、ガラス板の束を収納する内部空間の温度と湿度の履歴を示している。図5(a),(b)に示す例は、具体的には、夕方から深夜、翌朝、午前11時過ぎまでの温度と湿度の時間変化を示している。図5(a)に示す例と、図5(b)に示す例は、異なる日時に測定されたデータであるため、時刻がずれているが、概略同じ温度である。
翌朝気温が上昇すると、ガラス板の束を収納する内部空間の温度は上昇し、これに伴って湿度が低下する。断熱保護カバー16で支持台12とコンテナ筐体14を包んだ図5(a)に示す例では、湿度の低下は、断熱保護カバー16を用いない図5(b)に示す例に比べて急激ではない。この湿度の急激な変化の抑制により、図5(a)に示す例では、保護紙20の上端部分の屈曲は見られず、シート除去装置で保護紙20を除去することができた。図5(b)に示す例では、保護紙の上端部分が屈曲し、シート除去装置で保護紙20を除去することはできなかった。これより、本実施形態の効果は明らかである。
【0032】
以上、本発明の梱包装置及び梱包方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0033】
10 梱包装置
12 支持台
12a パレット部
12b 背面部
12c 床部
12d 支持部
14 コンテナ筐体
14a 前面
14b,14c 側面
14d 天井面
14e 取っ手
16 断熱保護カバー
16a 保護層
16b 断熱層
16c 遮光層
18 束
20 保護紙
22 ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラス板を梱包する梱包装置であって、
保護シートをガラス板の間に挟んで複数のガラス板を支持し固定する支持部と、前記支持部に固定された複数のガラス板を、前記支持部と共に覆うコンテナ筐体部とを有するコンテナ本体と、
前記コンテナ本体を包むように保護する、熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱材を含む断熱保護カバーと、を有する、ことを特徴とする梱包装置。
【請求項2】
前記保護シートは紙からなる、請求項1または2に記載の梱包装置。
【請求項3】
前記断熱保護カバーは、熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱層と、光を遮る遮光層を含む、請求項1または2に記載の梱包装置。
【請求項4】
前記断熱保護カバーは、前記支持部及び前記コンテナ筐体部の形状に合わせた形状に加工されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の梱包装置。
【請求項5】
複数のガラス板を梱包する梱包方法であって、
保護シートをガラス板の間に挟んで複数のガラス板を支持部に固定し、
前記支持部に固定された複数のガラス板を、コンテナ筐体部により前記支持部と共に覆い、
前記支持部及び前記コンテナ筐体部を包むように熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱材を含む断熱保護カバーにより、前記支持部及び前記コンテナ筐体部を覆う、ことを特徴とする梱包方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206763(P2012−206763A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75256(P2011−75256)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(598055910)AvanStrate株式会社 (81)
【出願人】(508250914)アヴァンストレート コリア インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】