説明

ガラス板の製造方法及び装置

【課題】アシストロールがガラスリボンのエッジから脱落したり、脱落しない場合であってもガラスリボンエッジがアシストロールにより破損したりする等の不具合が生じないように耳部幅を狭くすることができるので、歩留り向上や品質向上を図ることができる。
【解決手段】フロート式のガラス板の製造装置10において、徐冷炉34の後段に設けられ、ガラスリボン表面の両側部をそれぞれ撮像して、撮像された画像からアシストロール30の押圧によって刻設される凹凸痕跡36の幅と、該凹凸痕跡36からガラスリボン18のエッジ18Aまでの凹凸痕跡外側部38の幅を検出する検出手段40と、検出した凹凸痕跡幅W3と凹凸痕跡外側幅W4に基づいてガラスリボン18をフロートバス14から引き出す引出し速度、アシストロール30の回転速度、アシストロール30の角度、アシストロール30の位置、アシストロール30のガラスリボン押圧力の因子を制御する制御手段42と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法及び装置に係り、特にガラス板を製造する際の歩留り向上や品質向上のためのオンラインによる必要データの検出及びそのデータに基づく制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板を製造するには、溶融炉から溶融金属浴上(フロートバス上)に流延されたガラスリボンの両側部に、溝や歯が付いた回転ロールであるアシストロールを押圧して、ガラスリボンの幅方向に張力を付与し、これによりガラスリボンが幅縮化するのを抑制しつつ流延方向(ガラスリボンの進行方向)に引っ張って薄板状に引き伸ばす方法が一般的である。薄板状に引き伸ばされたガラスリボンは徐冷炉内において室温まで徐冷される。そして、アシストロールで押圧されたガラスリボン両側部は裁断除去され、ガラスリボンの製品幅に形成される。
【0003】
フロートバス上を流れるガラスリボンのエッジを監視カメラでモニターして、ガラスリボンエッジの位置を検出し、ガラスリボンを所定の幅にするために溶融炉からフロートバス上に供給するガラス素地の流量を制御する方法が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭53−12919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガラスリボンエッジの位置を検出し、溶融炉からフロートバス上に供給するガラス素地の流量を調節するだけでは、ガラス板の歩留り向上を図ることは難しい。
【0005】
即ち、単にガラス素地の流量を少なくしてガラスリボンの幅を狭くしたのでは、アシストロールがガラスリボンのエッジから脱落したり、脱落しない場合であってもガラスリボンエッジがアシストロールにより破損したりする等の不具合が生じるという問題がある。
【0006】
そこで、出願人は鋭意研究したところ、上記不具合を解消するには、アシストロールがガラスリボン表面を押圧することでガラスリボン表面に刻設される凹凸痕跡の幅や、凹凸痕跡からガラスリボンのエッジまでの凹凸痕跡外側の幅を検出し、その結果に応じてガラスリボン両側部を狭くする必要があることを発見した。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、アシストロールがガラスリボンのエッジから脱落したり、脱落しない場合であってもガラスリボンエッジがアシストロールにより破損したりする等の不具合を生じないようにガラスリボン両側部を狭くすることができるので、ガラス板の歩留り向上を図ることができるガラス板の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成すべく、溶融金属のフロートバス上に流延されたガラスリボン表面の両側部を押圧するアシストロールによって前記ガラスリボンの幅方向に張力を付与して前記ガラスリボンの幅縮化を抑制しつつ、前記ガラスリボンを前記流延方向に引っ張って薄板状にするフロートバスと、薄板状にしたガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、を含むガラス板の製造装置において、前記徐冷炉の後段に設けられ、前記ガラスリボン表面の両側部を撮像して、撮像された画像から前記アシストロールによって前記ガラスリボン表面に刻設される凹凸痕跡の幅と、該凹凸痕跡からガラスリボンのエッジまでの凹凸痕跡外側の幅を検出する検出手段を有し、該検出手段は、投光器からガラスリボン表面に照射されたLED光がガラス表面で反射する反射散乱光を受光器で検出し、検出した画像を画像処理手段により画像処理することにより前記凹凸痕跡幅と前記凹凸痕跡外側幅を検出する反射光学系検出手段であり、前記検出された凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅に基づいて、前記ガラスリボンをフロートバスから引き出す引出し速度、アシストロールの回転速度、アシストロールの角度、アシストロールの位置、及びアシストロールのガラスリボン押圧力のうちの1つ以上を制御する制御手段を有することを特徴とする。
【0009】
ここで、徐冷炉の後段とは、ガラスリボンが徐冷炉から出た後を言う。また、アシストロールのガラスリボン押圧力とは、例えば溶融金属上のガラスリボンに対するアシストロールの押し下げ量を言う。また、アシストロールの位置とは、ガラスリボン幅方向に対するアシストロールの位置を言い、アシストロールの角度とはガラスリボンの流れ方向に対するアシストロールの向きをいう。
【0010】
アシストロールがガラスリボン表面を押圧することによってガラスリボン表面に刻設される凹凸痕跡を撮像し、その画像を画像処理することで、アシストロールが押圧している幅を凹凸痕跡幅として検出するようにする。また、撮像された凹凸痕跡から撮像されたガラスリボンエッジまでの凹凸痕跡外側幅を求めることで、アシストロールが押圧していない領域の幅を検出するようにする。これにより、凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅とのデータを容易に得ることができる。
【0011】
そして、検出した凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅に基づいて、ガラスリボンをフロートバスから引き出す引出し速度、アシストロールの回転速度、アシストロールの角度、アシストロールの位置、及びアシストロールのガラスリボン押圧力の5つの制御因子を制御できるようにする。
【0012】
制御は、作業者が手動で行ってもよく、凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅との変動許容幅を予め設定して、その変動許容幅から外れないように前記5つの制御因子を自動制御するようにしてもよい。
【0013】
これにより、アシストロールがガラスリボンのエッジから脱落したり、脱落しない場合であってもガラスリボンエッジがアシストロールにより破損したりする等の不具合を生じさせずにガラスリボン両側部の幅を狭くすることができるので、歩留り向上を図ることができる。
【0014】
ここで、ガラスリボン両側部とは、ガラスリボンの製品幅W2よりも外側の部分を言う。即ち、凹凸痕跡幅W3と、凹凸痕跡外側幅W4と、凹凸痕跡内側幅W6(凹凸痕跡からガラスリボンの製品幅位置までの幅)とを合わせた幅W5の部分を言う。
【0015】
前記検出手段は、光源としてレーザー光を使用することが考えられるが、レーザー光は照射幅が狭くスキャンする必要があり装置が大がかりになると共にレーザーは振れに弱い。本願発明では、スキャン走査を必要とせず、振れやガラスリボン幅の急激な変化にも強いLED光を使用した反射光学系検出手段を採用する。
【0016】
本発明において、前記検出手段は、投光器から照射されてガラスリボンを透過した透過光を受光器で検出し、検出した画像を画像処理手段により画像処理することにより前記凹凸痕跡幅と前記凹凸痕跡外側幅を検出する透過光学系検出手段を併用することが好ましい。
【0017】
反射光学系検出手段による凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅との検出に併用して、透過光学系検出手段でも凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅とを検出し、両者を照合することにより、検出の信頼性を向上することができる。透過光学系検出手段は、アシストロールの歯がガラスリボン表面に食い込んだ点状の歯形マークを容易に検出することができる。
【0018】
本発明において、前記検出手段は、検出雰囲気の温度が室温以上100℃以下の位置に設けられることが検出精度上好ましい。
【0019】
本発明は、前記目的を達成すべく、溶融金属のフロートバス上に流延されたガラスリボン表面の両側部を押圧するアシストロールによって前記ガラスリボンの幅方向に張力を付与して前記ガラスリボンの幅縮化を抑制しつつ、前記ガラスリボンを前記流延方向に引っ張って薄板状にする工程と、薄板状にしたガラスリボンを徐冷炉内で徐冷する工程とを含むガラス板の製造方法において、前記アシストロールの押圧によって前記ガラスリボン表面に刻設される凹凸痕跡の幅と、該凹凸痕跡からガラスリボンのエッジまでの凹凸痕跡外側の幅を検出する検出工程を有し、該検出工程は、投光器からガラスリボン表面に照射されたLED光がガラス表面で反射する反射散乱光を受光器で検出し、検出した画像を画像処理することにより前記凹凸痕跡幅と前記凹凸痕跡外側幅を検出する反射光学系検出工程であり、前記検出した凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅に基づいて、凹凸痕跡幅及び凹凸痕跡外側幅が所定の幅に維持されるように、前記ガラスリボンをフロートバスから引き出す引出し速度、アシストロールの回転速度、アシストロールの角度、アシストロールの位置、及びアシストロールのガラスリボン押圧力のうちの1つ以上を制御する制御工程を有することを特徴とする。
【0020】
検出した凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅に基づいて凹凸痕跡幅及び凹凸痕跡外側幅が所定の幅に維持されるように、フロートバスからガラスリボンの引出し速度、アシストロールの回転速度、アシストロールの角度、アシストロールの位置、及びアシストロールのガラスリボン押圧力の1つ以上を制御することにより、アシストロールがガラスリボンのエッジから脱落したり、脱落しない場合であってもガラスリボンエッジがアシストロールにより破損したりする等の不具合を生じさせずにガラスリボン両側部の幅を狭くすることができる。これにより、歩留り向上を図ることができる。
【0021】
なお、凹凸痕跡幅及び凹凸痕跡外側幅における所定の幅を幾つにするかは、製造するガラス板の種類やガラス板の厚み等によって異なるので、アシストロールがガラスリボンのエッジから脱落したり、脱落しない場合であってもガラスリボンエッジがアシストロールにより破損したりする等の不具合が生じないための凹凸痕跡幅及び凹凸痕跡外側幅の設定値を予め予備試験等により得るようにすればよい。
【0022】
なお、制御は、作業者が手動で行ってもよく、凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅との変動許容幅を予め設定して、その変動許容幅から外れないように前記5つの制御因子の1つ以上を自動制御するようにしてもよい。
【0023】
また、検出工程は、投光器からガラスリボン表面に照射されたLED光がガラス表面で反射する反射散乱光を受光器で検出し、検出した画像を画像処理することにより前記凹凸痕跡幅と前記凹凸痕跡外側幅を検出する反射光学系検出工程である。
【0024】
更には、前記検出工程は、投光器から照射されてガラスリボンを透過した透過光を受光器で検出し、検出した画像を画像処理することにより前記凹凸痕跡幅と前記凹凸痕跡外側幅を検出する透過光学系検出工程を併用することにより、検出の信頼性を一層向上できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガラス板の製造方法及び装置によれば、アシストロールがガラスリボンのエッジから脱落したり、脱落しない場合であってもガラスリボンエッジがアシストロールにより破損したりする等の不具合を生じないようにガラスリボン両側部を狭くすることができるので、ガラス板の歩留り向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明に係るガラス板の製造方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。ただし、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明のガラス板の製造装置10の一例を上方から示した概念図である。
【0028】
図1に示すように、溶融ガラスが、溶融炉12からフロートバス14内の溶融金属16上に供給される。溶融金属としては、錫が一般的に使用される。供給された溶融ガラスは、フロートバス上流側でガラスリボン18を形成し、アシストロール30によりガラスリボン18に幅方向外側に向いた張力が付与され、目標のガラス板厚みに形成される。
【0029】
アシストロール30は、図1の部分拡大図に示すように、ガラスリボン18表面の両側部を押圧すると共に、対をなすアシストロール30の回転軸32同士がハの字状に拡開している。
【0030】
図2(A)、(B)に示すように、ガラスリボン表面の両側部には、複数のアシストロール30が押圧した凹凸痕跡36がガラスリボン18の進行方向に形成される。
【0031】
図1に示されるように、フロートバス14において目標のガラス厚みに成形されたガラスリボン18は、リフトアウトロール20で溶融金属の浴面から引き出され、徐冷炉34内を徐冷ロール26で搬送され、室温近い温度まで徐冷される。
【0032】
かかるガラス板の製造において、凹凸痕跡外側幅W4を狭くすることにより歩留りアップに寄与できるが、狭くし過ぎると、アシストロール30がガラスリボン18のエッジ18Aから脱落したり、脱落しない場合であってもガラスリボンエッジ18Aがアシストロール30により破損したりする等の不具合が生じ易くなる。これにより、ガラス板を安定して製造できないという不具合が発生する。
【0033】
また、ガラスリボン18の凹凸痕跡幅W3が狭くなり過ぎると、アシストロール30が凹凸痕跡36部分に集中的に食い込むことになる。これにより、アシストロール30がガラスリボン18を突き破り易くなる。また、残留歪を発生させ、ガラスリボン18に反りが発生し易くなる。更には、徐冷炉34内においてガラスリボン18が破損し易くなる。
【0034】
そこで、本発明では、徐冷炉34の後段に、凹凸痕跡幅W3及び凹凸痕跡外側幅W4を検出するための検出手段40と、検出手段40で検出した凹凸痕跡幅W3及び凹凸痕跡外側幅W4の検出データに基づいて、ガラスリボンをフロートバス14から引き出す引出し速度、アシストロール30の回転速度、アシストロール30の角度、アシストロール30の位置、アシストロール30のガラスリボン押圧力の5つの制御因子を適切に制御する制御手段42を備えるようにした。これにより、上記不具合を防止する。
【0035】
なお、100℃以下の検出雰囲気を確保できれば、徐冷炉34内に検出手段40を設けてもよい。
【0036】
次に、検出手段40の詳細について説明する。
【0037】
図3(A)は、ガラスリボン18の両側部のうち進行方向から見た右側部を検出するための検出手段40を示したものであり、同じものが進行方向左側部にも設けられる。
【0038】
検出手段40は、主として、投光器44Aと受光器44Bとからなる反射光学系装置44と、画像処理装置46、表示装置48とで構成され、投光器44Aからガラスリボン表面の両側部のうちの検出領域49に照射した正反射光を受光器44Bで受光することにより、検出領域49を撮像する。投光器44AとしてはLED光源を好適に使用することができ、受光器44BとしてはCCDエリアセンサを好適に使用できる。光源は、LED以外を光源としたファイバー光源であってもよいが、使用環境(100℃以下の雰囲気等)を考慮すると、LED光源が好ましい。
【0039】
また、リアルタイムな制御を行うためには、受光器44Bによる撮像回数を1分間隔以下にすることが好ましい。検出領域49は、ガラスリボンの両側部を含む領域である。
【0040】
以下、図4のステップフロー図にしたがって画像処理装置46による凹凸痕跡幅W3と凹凸痕跡外側幅W4との算出方法を説明する。
【0041】
ステップ1では、反射光学系装置44の投光器44Aから照射された正反射光が受光器44Bに受光され、検出領域49の画像が採取される。反射光学系装置44は、ガラスリボン18幅方向に移動可能に構成されており、これにより検出領域49内のガラスリボン18の幅方向に渡り撮像する(図3)。
【0042】
ステップ2では、採取された画像は電気信号に変換されて画像処理装置46に入力され、採取された画像のうち、ガラスリボン幅方向に対応する指定領域51について2値化処理を行う。指定領域51は、ガラスリボン18の進行方向の幅で画素数が640画素(1画素:0.25mm)前後になることが好ましい。
【0043】
図5(A)は、ステップ2における2値化処理を説明する図であり、Y軸が輝度の大きさ示し、X軸がガラスリボン18幅方向の位置を示す。2値化処理の閾値設定は中間値法が採用され、最高輝度と最低輝度の中間の輝度を閾値とし、閾値よりも大きい輝度の画素を1(白)とし、小さい輝度の画素を0(黒)として2値化画像を得る。
【0044】
次にステップ3において2値化画像からノイズを除去するノイズ除去処理を行う。ノイズ除去は、注目する画素の黒(0)又は白(1)と、注目画素の上下左右に位置する画素の黒(0)又は白(1)とを対比することによって、注目する画素が画像かノイズかを判定する4連結法を採用することが好ましい。これにより、ノイズが除去される。なお、8連結法を採用することもできるが、4連結法はノイズ除去処理の時間を短縮化することができる。
【0045】
次に、ステップ4においてラベリング処理を行う。ラベル処理は、隣接する黒(0)の画素同士、及び隣接する白(1)の画素同士を、1つの塊としてラベルする方法である。
【0046】
次に、ステップ5において、予め設定された塊の面積の閾値よりも小さい面積の塊は不要ラベルとして不要ラベル除去する。また、指定領域51から外れる塊に対しても不要ラベル除去する。
【0047】
次に、ステップ6において、中心点列処理を行う。中心点列処理とは、図5(B)に示すように、ラベルされた複数のラベルAごとにY座標の中心点Bを求め、中心点B同士を図5(C)に示すように線で結んでいく。これにより、図3(B)に示すように、アシストロール30の凹凸痕跡並びにその外側及び内側のガラス表面状態を示すパターン(以下、凹凸パターン線図という)を得る。なお、図3(B)は、分かり易いように図示化したものである。そして、凹凸パターン線図が表示装置48に表示される。
【0048】
次にステップ7〜14では、得られた凹凸パターン線図を使用して、ガラスリボン18のエッジ18A、凹凸痕跡36の外側端及び凹凸痕跡36の内側端を求め、凹凸痕跡幅W3及び凹凸痕跡外側幅W4を算出する。
【0049】
先ず、ステップ7において、細分化処理を行う。即ち、図6(A)に示すように、凹凸パターン線図をガラスリボン18のエッジ18Aの側から所定間隔(例えば2.5mm間隔)で所定区間長さ(例えば5mm)になるように、即ちA[i](i=0,1,2…N)の区間数に細分化する。
【0050】
次にステップ8において、凹凸痕跡外側幅W4が該当する凹凸傷痕外側部判定処理を、細分化された各区間に存在する線が直線と見做せるかどうかを最小二乗法により判定する。これは、図6(A)において凹凸パターン線図の左端、即ちガラスリボン18のエッジ18A側から各区間について直線かどうかを判定していくが、例えば10mm以上の直線区間が連続している部分を凹凸痕跡外側部であると認識し、直線式L1とする(図6(B)参照)。
【0051】
次に、ステップ9において、ステップ8の場合と同様に、凹凸痕跡内側幅が該当する内側部判定処理を行う。これは、図6(A)において凹凸パターン線図の右端から、即ちガラスリボン18の中央部側から細分化された各区間に存在する線が直線と見做せるかどうかを判定していき、例えば10mm以上の直線区間が連続している部分を凹凸痕跡内側部であると認識し、直線式L2とする(図6(B)参照)。
【0052】
次に、ステップ10において、ガラスリボン18のエッジ18A位置の確定処理を行う。即ち、直線式L1の左端の画像座標に、エッジ18AのR値(予め設定したエッジ曲率半径)を足した画像座標をエッジ18A位置と確定する。
【0053】
次に、ステップ11において、凹凸痕跡36の外側端の判定処理を行う。即ち、図6(C)に示すように、直線式L1を右方向に延長した延長線aと、凹凸パターン線図との高さの差Δを求める。そして、その差Δが予め設定した所定値Kよりも大きい値(Dj)となる回数が予め設定した所定回数M以上連続して発生したときに、凹凸パターン線図が直線式L1から乖離したとして、Djの初期点を凹凸痕跡36の外側端と認定する。
【0054】
次に、ステップ12において、ステップ11と同様に、凹凸痕跡36の内側端の判定処理を行う。
【0055】
次に、ステップ13及び14において、上記得られたエッジ18A位置の画像座標、凹凸痕跡36の外側端の画像座標、凹凸痕跡36の内側端の画像座標から、凹凸痕跡幅W3と凹凸痕跡外側幅W4を算出する。なお、画像座標とガラス板製造装置10の装置座標との倍率関係は予め求めておく。
【0056】
これにより、凹凸痕跡幅W3と凹凸痕跡外側幅W4のデータをオンラインで得ることができ、得られたデータは制御手段42に逐次入力される。制御手段42は、得られた凹凸痕跡幅W3と凹凸痕跡外側幅W4のデータに基づいて、凹凸痕跡幅W3及び凹凸痕跡外側幅W4のそれぞれが所定の幅に維持されるように、ガラスリボン18をフロートバス14から引き出す速度を可変するためのリフトアウトロール20及び徐冷ロール26の回転速度を可変する駆動部50A、アシストロール30の回転速度を可変する駆動部50B、アシストロール30のロール角度を可変する駆動部50C、アシストロール30のロール位置を可変する駆動部50D、アシストロール30のガラスリボン押圧力を可変する駆動部50Eの5つの制御因子(図1参照)の1つ以上の駆動部を制御する。なお、検出手段40で検出した凹凸痕跡幅W3と凹凸痕跡外側幅W4のデータに基づいて、作業者が手動で上記5つの制御因子を適切に設定するようにしてもよい。
【0057】
凹凸痕跡幅W3及び凹凸痕跡外側幅W4における所定の幅を幾つにするかは、製造するガラス板の種類やガラス板の厚み等によって異なるので、アシストロール30がガラスリボン18のエッジ18Aから脱落したり、脱落しない場合であってもガラスリボンエッジ18Aがアシストロール30により破損したりする等の不具合が生じないための凹凸痕跡幅W3及び凹凸痕跡外側幅W4の設定値を予め設けておけばよい。
【0058】
これにより、アシストロール30の脱落やガラスリボンエッジ18Aの破損等の不具合を生じさせずにガラスリボン両側部の幅W5を狭くすることができるので、歩留り向上を図ることができる。
【0059】
尚、本発明の実施の形態では、検出手段として反射光学系の検出手段40のみを示したが、透過光学系の検出手段を併用し、検出結果を照合させることにより、検出の信頼性を向上させることができる。
【0060】
図7(A)は、透過光学系の検出手段の透過光学系装置60の概念図であり、図7(B)は、透過光学系装置60によって得られる画像の模式図である。
【0061】
図7(A)に示すように、ガラスリボン18の下方に設けられた投光器60Aからガラスリボン18を透過した透過光を、ガラスリボン18の上方に設けた受光器60Bで検出し、画像を得る。これにより、透過光学系装置60では、アシストロール30の歯がガラスリボン18の表面に食い込んだ点状の歯形マークが繋がった線列31として画像化される。この場合、ガラスリボン18と投光器60Aとの間にスクリーン64(すりガラス状)を配置することで、線列31を明瞭化することができる。したがって、図7(B)における線列31の左端から右端までが凹凸痕跡幅W3となり、ガラスリボン18のエッジ18Aから線列31の左端までが凹凸痕跡外側幅W4になる。即ち、反射光学系の場合と同様に、W3とW4の値を得る。
【0062】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0063】
図1に示すように、溶融ガラスを溶融炉12フロートバス14上に供給し、所定の厚さのガラスリボン18に成形する。次に、徐冷炉34にてガラスリボン18を室温付近まで徐冷した後に、反射光学系装置44でガラスリボン表面の内側部を撮像し、画像処理装置46により凹凸痕跡幅W3と凹凸痕跡外側幅W4を検出する。
【0064】
次に、得られた凹凸痕跡幅W3と凹凸痕跡外側幅W4のデータに基づいて、凹凸痕跡幅W3及び凹凸痕跡外側幅W4のそれぞれが所定の幅に維持されるように、ガラスリボン18をフロートバス14から引き出す速度、アシストロール30の回転速度、アシストロール30のロール角度、アシストロール30のロール位置、アシストロール30のガラスリボン押圧力のうちの1つ以上を制御する。
【0065】
これにより、アシストロール30がガラスリボン18のエッジ18Aから脱落したり、ガラスリボンエッジ18Aがアシストロール30により破損したりする等の不具合を生じさせることなく、ガラスリボン両側部を狭くすることができ、ガラス板の歩留りが向上する。
【0066】
さらに、凹凸痕跡36と凹凸痕跡外側部を検出する検出手段として、反射光学系の検出手段40に加えて、透過光学系の検出手段を併用する。その結果、検出の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のガラス板の製造装置の全体構成及びアシストロールがガラスリボンを押圧している部分を拡大して示す概念図
【図2】ガラスリボンに形成される幅方向の凹凸痕跡を主として説明する説明図である。
【図3】凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅の反射光学系の検出手段の概念図である。
【図4】画像処理のステップフロー図である。
【図5】図5(A)は画像処理において中心点法による2値化処理を説明する説明図、図5(B)は画像処理における中心点列処理を説明する説明図、図5(C)は中心点列処理された中心点同士を線でつないだ図である。
【図6】図6(A)は画像処理において細分化処理を説明する説明図、図6(B)は画像処理において凹凸痕跡外側部の判定処理を説明する説明図、図6(C)は画像処理において凹凸痕跡端の判定処理を説明する説明図
【図7】透過光学系装置の概念図及び得られた画像の模式図
【符号の説明】
【0068】
10…ガラス板の製造装置、12…溶融炉、14…フロートバス、16…溶融金属、18…ガラスリボン、20…リフトアウトロール、26…徐冷ロール、30…アシストロール、32…アシストロールの回転軸、36…凹凸痕跡、38…凹凸痕跡外側部、40…検出手段、42…制御手段、44…反射光学系装置、44A…投光器、44B…受光器、46…画像処理装置、48…表示装置、60…透過型光学系装置、60A投光器、60B…受光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属のフロートバス上に流延されたガラスリボン表面の両側部を押圧するアシストロールによって前記ガラスリボンの幅方向に張力を付与して前記ガラスリボンの幅縮化を抑制しつつ、前記ガラスリボンを前記流延方向に引っ張って薄板状にするフロートバスと、薄板状にしたガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、を含むガラス板の製造装置において、
前記徐冷炉の後段に設けられ、前記ガラスリボン表面の両側部を撮像して、撮像された画像から前記アシストロールによって前記ガラスリボン表面に刻設される凹凸痕跡の幅と、該凹凸痕跡からガラスリボンのエッジまでの凹凸痕跡外側の幅を検出する検出手段を有し、該検出手段は、投光器からガラスリボン表面に照射されたLED光がガラス表面で反射する反射散乱光を受光器で検出し、検出した画像を画像処理手段により画像処理することにより前記凹凸痕跡幅と前記凹凸痕跡外側幅を検出する反射光学系検出手段であり、
前記検出された凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅に基づいて、前記ガラスリボンをフロートバスから引き出す引出し速度、アシストロールの回転速度、アシストロールの角度、アシストロールの位置、及びアシストロールのガラスリボン押圧力のうちの1つ以上を制御する制御手段を有するガラス板の製造装置。
【請求項2】
前記検出手段は、投光器から照射されてガラスリボンを透過した透過光を受光器で検出し、検出した画像を画像処理手段により画像処理することにより前記凹凸痕跡幅と前記凹凸痕跡外側幅を検出する透過光学系検出手段を併用することを特徴とする請求項1のガラス板の製造装置。
【請求項3】
溶融金属のフロートバス上に流延されたガラスリボン表面の両側部を押圧するアシストロールによって前記ガラスリボンの幅方向に張力を付与して前記ガラスリボンの幅縮化を抑制しつつ、前記ガラスリボンを前記流延方向に引っ張って薄板状にする工程と、薄板状にしたガラスリボンを徐冷炉内で徐冷する工程とを含むガラス板の製造方法において、
前記アシストロールの押圧によって前記ガラスリボン表面に刻設される凹凸痕跡の幅と、該凹凸痕跡からガラスリボンのエッジまでの凹凸痕跡外側の幅を検出する検出工程を有し、該検出工程は、投光器からガラスリボン表面に照射されたLED光がガラス表面で反射する反射散乱光を受光器で検出し、検出した画像を画像処理することにより前記凹凸痕跡幅と前記凹凸痕跡外側幅を検出する反射光学系検出工程であり、
前記検出した凹凸痕跡幅と凹凸痕跡外側幅に基づいて、凹凸痕跡幅及び凹凸痕跡外側幅が所定の幅に維持されるように、前記ガラスリボンをフロートバスから引き出す引出し速度、アシストロールの回転速度、アシストロールの角度、アシストロールの位置、及びアシストロールのガラスリボン押圧力のうちの1つ以上を制御する制御工程を有するガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記検出工程は、投光器から照射されてガラスリボンを透過した透過光を受光器で検出し、検出した画像を画像処理することにより前記凹凸痕跡幅と前記凹凸痕跡外側幅を検出する透過光学系検出工程を併用することを特徴とする請求項3のガラス板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−126386(P2010−126386A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301483(P2008−301483)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)