説明

ガラス板梱包用パレット

【課題】パレット上に積層されたガラス板積層体に被せられた袋体の開口部を密封するゴムバンドなどの締付バンドの上方への抜けを確実に防止し、ガラス板積層体の清浄性を維持する。
【解決手段】ガラス板積層体Gを覆うように上方から袋体4を被せるとともに、袋体4の開口部を締付バンド5で締め付けて密封することにより、ガラス板積層体Gを梱包するガラス板梱包用パレット2であって、袋体4を介して締付バンド5を圧接させる被圧接部26を、ガラス板積層体Gの全周を包囲するように基台部21の上面に連続的に設けるとともに、締付バンド5の上端部に係合して締付バンド5の上方への抜けを規制する突出部26aを、被圧接部26に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を輸送或いは保管する際に、ガラス板を梱包するための梱包技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ用のガラス基板や、太陽電池用のガラス基板を初めとする各種ガラス板を輸送或いは保管する形態としては、パレット上に複数枚のガラス板を縦姿勢(略鉛直姿勢)で積層した状態で梱包する形態が公知になっている。
【0003】
この種の梱包形態としては、例えば下記の特許文献1に開示のものが挙げられる。すなわち、同文献では、ガラス板を垂直方向に載置するための載置面と、この載置面の後端部から垂直方向に延びる背もたれ面とを備えてなる断面L字型の保持台(パレット)上に、複数枚のガラス板を間に合紙を介在させながら背もたれ面に平行となるように立て掛けて縦姿勢で積層することが開示されている。
【0004】
そして、この種のガラス板は、表面の清浄性が要求されることが多いため、塵埃等の付着による汚れや傷が商品価値の低下を招く。そのため、特許文献1では、上述のように複数枚のガラス板を保持台上に積層した後、そのガラス板積層体に包装袋を上方から被せるとともに、保持台の側周部に亘ってゴムバンドを掛け渡すことで包装袋の開口端を密封し、外部からの塵埃等の侵入を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−142856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の梱包形態の場合には、同文献の図1に図示されているように、ゴムバンドが掛け渡される保持台(パレット)の側周部が上下方向に平坦であるため、ゴムバンドが上方に簡単に抜け、包装袋内の気密性を確保できなくなるおそれがある。
【0007】
また、ゴムバンドが上方に抜けると、弾性復元力によってゴムバンドが収縮してガラス板積層体に衝突し、ガラス板積層体が破損するおそれがある。
【0008】
そこで、ゴムバンドの上方への抜けを抑制するために、硬質のゴムバンドを使用して締め付け力を高めることも考えられるが、ゴムバンドを硬質にしすぎると、ゴムバンドが伸び難くなる。そのため、ゴムバンドを保持台の側周部に掛け渡す際の作業性が極端に悪くなり実用的ではない。
【0009】
なお、上記では、パレット上に複数枚のガラス板を縦姿勢(略鉛直姿勢)で積層した状態で梱包する形態を例にとって説明したが、パレット上に複数枚のガラス板を横姿勢(略水平姿勢)で積層した状態で梱包する形態においても、同様の問題が生じ得る。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑み、パレット上に積層されたガラス板積層体に被せられた袋体の開口部を密封するゴムバンドなどの締付バンドの上方への抜けを確実に防止し、ガラス板積層体の清浄性を維持することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために創案された本発明は、基台部上に設けられた下部支持部の支持面によって、複数枚のガラス板を積層してなるガラス板積層体の下部を下方から支持した状態で、前記ガラス板積層体を覆うように上方から袋体を被せるとともに、該袋体の開口部を締付バンドで締め付けて密封することにより、前記ガラス板積層体を梱包するガラス板梱包用パレットであって、前記袋体を介して前記締付バンドを圧接させる被圧接部を、前記ガラス板積層体の全周を包囲するように前記基台部に連続的に設けるとともに、前記締付バンドの上端部に係合して該締付バンドの上方への抜けを規制する突出部を、前記被圧接部に設けたことに特徴づけられる。なお、上記の「締付バンド」には、帯状のものと、紐(線)状のものとが含まれる。
【0012】
このような構成によれば、袋体を介して締付バンドを圧接させるための被圧接部が、ガラス板積層体の全周を包囲するように基台部に連続的に設けられているので、締付バンドをガラス板積層体の全周を包囲するように連続的に掛け渡すことができる。その結果、袋体は締付バンドによって被圧接部に押し付けられ、袋体の開口部は確実に密封される。そして、締付バンドの上端部に係合して締付バンドの上方への抜けを規制する突出部が、被圧接部に設けられているので、締付バンドの上方への移動が突出部によって規制される。したがって、締付バンドによる袋体の開口部の密封状態を安定的に維持することが可能となる。
【0013】
上記の構成において、前記被圧接部が、前記被圧接部が、五角形以上の多角形の輪郭又は円形の輪郭を有することが好ましい。ここで、上記の「円形」には、真円や楕円が含まれる。
【0014】
このようにすれば、被圧接部が三角形や四角形の輪郭を有する場合に比して、締付バンドによる締め付け力を被圧接部の全周に亘って効率よく作用させ、締付バンドの緩みを抑えることができる。これは、次の2つの理由によるものと考えられる。まず第一には、面積が同一である場合には、被圧接部の輪郭が三角形や四角形である場合に比して支点間距離が短くなるため、締付バンドの緩みが抑えられるためである。なお、ここでは、被圧接部の輪郭が円形の場合は、支点が無限に存在し、支点間距離が零であるとする。そして、第二には、被圧接部が五角形以上の多角形や円形の輪郭を有する場合には、被圧接部に掛け渡した締付バンドの折り曲げ角度が緩やかになるため、締付バンドの締め付け力を阻害する摩擦抵抗が小さくなり、締付バンドによる締め付け力が無駄なく作用するためである。
【0015】
上記の構成において、前記被圧接部が、前記基台部の上面に形成されていることが好ましい。
【0016】
ここで、ガラス板梱包用パレット単体、又はこのパレットにガラス板積層体を梱包した梱包体を移動させる際には、フォークリフトが使用される場合が多く、パレットの基台部にはフォークリフトのフォーク(ツメ)を挿入するためのフォーク挿入口が形成されているのが一般的である。そのため、ガラス板積層体に被せた袋体が基台部のフォーク挿入口に掛かっていると、フォーク挿入口に挿入されるフォークによって、袋体が破れるおそれがある。そこで、上記の構成のように、被圧接部を基台部の上面に形成することで、基台部の上面よりも下方にあるフォーク挿入口に袋体が掛からないようにすることが好ましい。
【0017】
上記の構成において、前記被圧接部の上端部が、前記下部支持部の支持面よりも下方に位置することが好ましい。
【0018】
ここで、下部支持部の支持面と同一平面上に、ガラス板積層体の底面が位置することになる。そのため、下部支持部の支持面よりも被圧接部の上端部が上方に位置していると、ガラス板積層体の大きさによっては、被圧接部と干渉してしまう。そのため、この場合には、パレットに積層可能なガラス板の大きさが被圧接部によって制約される。そこで、上記の構成のように、被圧接部の上端部は、下部支持部の支持面よりも下方に位置していることが好ましい。このようにすれば、ガラス板積層体が被圧接部に干渉することがなくなるため、被圧接部によって、パレットに積層可能なガラス板の大きさが制約されず、種々の大きさのガラス板を梱包対象とすることが可能となる。
【0019】
上記の構成において、ガラス板梱包用パレットを上下方向に段積みする際に上方のガラス板梱包用パレットを支持するための支柱が前記基台部上に立設されており、該支柱の内側に前記被圧接部が設けられていてもよい。
【0020】
このようにすれば、ガラス板方梱包用パレットを上下方向に段積みすることが可能となるため、輸送効率や保管効率が向上する。しかも、段積み用の支柱の内側に被圧接部が設けられるので、支柱が立設されていても、ガラス板積層体に袋体を被せ且つその袋体の開口部を締付バンドによって密封することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、パレット上に積層されたガラス板積層体に被せられた袋体の開口部を密封する締付バンドの上方への抜けを確実に防止することができるので、ガラス板積層体の清浄性を安定的に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るガラス板梱包用パレットにガラス板積層体を梱包した状態を示す右側面図である。
【図2】本実施形態に係るガラス板梱包用パレットを示す左前方斜視図である。
【図3】図2のガラス板梱包用パレットを示す右後方斜視図である。
【図4】図1のガラス板梱包用パレットの被圧接部を示す概略平面図である。
【図5】図1の状態における被圧接部を示す縦断面図である。
【図6】被圧接部の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、以下では、梱包対象のガラス板が、太陽電池用のガラス基板である場合を例にとって説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るガラス板梱包用パレットを用いてガラス板積層体を梱包した梱包体を示す側面図である。なお、同図では、説明の便宜上、後述する支柱24や側部押え板25を省略している。この梱包体1は、縦姿勢で積層した複数枚のガラス板からなるガラス板積層体Gをパレット2上に梱包したものである。なお、ガラス板積層体Gに含まれる複数枚のガラス板の相互間には、図示しない保護シート(紙や発泡樹脂シートなど)が介在している。また、ガラス板積層体Gは、2本の結束バンド3でパレット2に固定されている。
【0025】
この梱包体1では、ガラス板積層体Gに袋体4が上方から被せられ、袋体4の下端開口部が締付バンド5で締め付けられた状態で密封されている。これにより、外部空間(袋体4の外側の空間)の塵埃等がガラス板積層体Gに付着するのを防止するようにしている。
【0026】
ここで、締付バンド5には、帯状や紐状のものが含まれ、且つ、袋体4に対して弾性力でもって締め付け力を作用させるもの(例えばゴムバンドなど)の他、袋体4を縛るようにして締め付け力を作用させるもの(例えばラッシングベルトなど)も含まれる。
【0027】
パレット2は、図2に示すように、ガラス板積層体Gが配置される基台部21と、基台部21に配置されるガラス板積層体Gの下部を支持する下部支持部22と、ガラス板積層体Gの背面部を支持する後部支持部23とを基本的な構成として備え、全体として側面視で略L字状を呈している。
【0028】
下部支持部22の支持面および後部支持部23の支持面には、それぞれガラス板積層体Gに傷や破損が生じるのを防止するために緩衝材Sが敷設されている。
【0029】
基台部21上面の四隅には、支柱24がそれぞれ立設されており、これら支柱24によって上方のパレット2を下方から支持する構成とされている。すなわち、このパレット2は、上下方向に段積み可能となっている。なお、図3に示すように、支柱24のうち前方側の2本は、基台部21に対して着脱自在とされており、ガラス板積層体Gの梱包作業時や開梱作業時に作業の邪魔になる場合には、前方側の支柱24を取り外して後方側の支柱24の外側方に収容可能とされている。
【0030】
また、ガラス板積層体Gの幅方向のズレを防止するために、ガラス板積層体Gの幅方向両側部には、側部押え板25が設けられている。この側部押え板25は、ガラス板積層体Gの幅方向寸法に応じて、例えばネジ部材による回転操作などによって、ガラス板積層体Gの幅方向に位置調整が可能とされている。
【0031】
そして、上述のように、ガラス板積層体Gに袋体を被せて外部空間の塵埃等の侵入を阻止するためには、袋体4の下端開口部を確実に密封する必要がある。そこで、基台部21の上面には、図4に示すように、ガラス板積層体Gに被せられる袋体4を介して締付バンド5を圧接させる被圧接部26が設けられている。
【0032】
この被圧接部26は、ガラス板積層体Gの配置エリアの全周を包囲するように基台部21上面に連続的に設けられている。そして、被圧接部26によって包囲された領域は、基台部21の上面によって封鎖されている。
【0033】
詳細には、この実施形態では、被圧接部26は五角形以上の多角形の輪郭線(図示例では八角形の輪郭線)に沿って設けられている。このようにすれば、締付バンド5を被圧接部26の周囲に掛け渡して袋体4を締め付けた場合に、締付バンド5による締め付け力を被圧接部26の全周に亘って均等に作用させ、締付バンド5の緩みを抑えることが可能となる。この場合、被圧接部26のうち、多角形の頂点に対応する部分は、滑らかに湾曲していることが好ましい。
【0034】
なお、基台部21上面の四隅に立設された支柱24によって囲繞される空間の内側に被圧接部26が設けられているため、支柱24が立設されていても、ガラス板積層体Gに袋体4を被せ且つその袋体4の開口部を締付バンド5によって密封することができる。付言すれば、ガラス板積層体Gに袋体4を被せた状態で、袋体4の外側に支柱24が位置することになる。
【0035】
また、被圧接部26には、図5に示すように、上下両端から外側方に向かって突出した突出部26aが設けられており、断面コ字形の溝形状を呈している。そのため、この突出部26aの間に配置される締付バンド5は、突出部26aによって上下方向のズレが規制されることになる。したがって、締付バンド5による袋体4の下端開口部の密封状態を安定的に維持することができる。
【0036】
ここで、被圧接部26の突出部26aは、図6に示すように、締付バンド5の上方側にのみ形成してもよい。また、突出部26aの形状や突出量は、締付バンド5の上方への移動を規制できる範囲であれば特に限定されるものではない。なお、突出部26aは、被圧接部26の全周に亘って形成してもよいが、締付バンド5の上下方向のズレ、特に上方へのズレを防止すれば十分であるため、被圧接部26の上端部に断続的に形成してもよい。
【0037】
そして、この被圧接部26は、図1に示すように、基台部21の上面に形成されているので、基台部21の上面よりも下方にあるフォーク挿入口21aに袋体4が掛かり難くなる。そのため、基台部21のフォーク挿入口21aにフォークリフトのフォークを挿入した際に、フォークが袋体4を突き破るという事態を防止することができる。
【0038】
また、被圧接部26の上端面は、下部支持部22の支持面よりも下方に位置している。そのため、ガラス板積層体Gの大きさに拘わらず、ガラス板積層体Gの底面が、被圧接部26に干渉することがない。したがって、被圧接部26によって、パレット2に積層可能なガラス板の大きさが制約されることがなく、種々の大きさのガラス板を梱包することが可能となる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。例えば、上記の実施形態では、複数枚のガラス板をパレット2上に縦姿勢(略鉛直姿勢)で積層して梱包する場合を例にとって説明したが、複数枚のガラス板をパレット2上に横姿勢(略水平姿勢)で積層して梱包するようにしてもよい。
【0040】
また、上記の実施形態では、被圧接部26を、五角形以上の多角形の輪郭線に沿って設ける場合を説明したが、被圧接部26を、真円や楕円などの円形の輪郭線に沿って設けるようにしてもよい。
【0041】
さらに、上記の実施形態では、締付バンド5が袋体4と別体である場合を説明したが、締付バンド5は袋体4に予め取り付けられて一体化しているものであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 梱包体
2 ガラス板梱包用パレット
21 基台部
22 下部支持部
23 後部支持部
24 支柱
25 側部押え板
26 被圧接部
26a 突出部
4 袋体
5 締付バンド
G ガラス板積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部上に設けられた下部支持部の支持面によって、複数枚のガラス板を積層してなるガラス板積層体の下部を下方から支持した状態で、前記ガラス板積層体を覆うように上方から袋体を被せるとともに、該袋体の開口部を締付バンドで締め付けて密封することにより、前記ガラス板積層体を梱包するガラス板梱包用パレットであって、
前記袋体を介して前記締付バンドを圧接させる被圧接部を、前記ガラス板積層体の全周を包囲するように前記基台部に連続的に設けるとともに、前記締付バンドの上端部に係合して該締付バンドの上方への抜けを規制する突出部を、前記被圧接部に設けたことを特徴とするガラス板梱包用パレット。
【請求項2】
前記被圧接部が、五角形以上の多角形の輪郭又は円形の輪郭を有することを特徴とする請求項1に記載のガラス板梱包用パレット。
【請求項3】
前記被圧接部が、前記基台部の上面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板梱包用パレット。
【請求項4】
前記被圧接部の上端部が、前記下部支持部材の支持面よりも下方に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス板梱包用パレット。
【請求項5】
ガラス板梱包用パレットを上下方向に段積みする際に上方のガラス板梱包用パレットを支持するための支柱が前記基台部上に立設されており、該支柱の内側に前記被圧接部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス板梱包用パレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−246147(P2011−246147A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119253(P2010−119253)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【出願人】(510144801)株式会社電気硝子物流サービス (1)
【Fターム(参考)】