説明

ガラス板用合紙、合紙挟込ガラス、ガラス板の保護方法および運搬方法

【課題】ガラス板表面の汚染及びガラス板の損傷を防止することができるとともに、ガラス板から容易に剥離することが可能なガラス板用合紙を提供する。
【解決手段】密度が0.5〜1g/cm3であるガラス板用合紙であって、前記ガラス板用合紙が、基材層(b)と、前記基材層(b)の一面に設けられたポリオレフィンを主構成材とする表面層(a)と、前記基材層(b)の反対面に設けられたポリオレフィンを主構成材とする裏面層(c)とを有する熱可塑性樹脂延伸フィルムであって、且つ、前記表面層(a)及び前記裏面層(c)は、各々独立に、その表面にエンボス加工が施されているか、及び/又は相溶しない2種以上のポリオレフィンの混合物からなるガラス板用合紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を複数枚重ね合わせて保管・運搬する際に、個々のガラス板間に挟み込み、ガラス板の割れを防止するために緩衝材として用いるガラス板用合紙に関する。
本発明は特に、これらガラス板を「水平」にして複数枚重ね合わせて保管・運搬する際に、個々のガラス板間に挟み込むガラス板用合紙に関するものである。
本発明の合紙と対になって用いるガラス板としては、高層建築等に用いられる窓カラス板や、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタや薄膜トランジスタ(TFT)等に用いるガラス基板などを含む。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板を保管・運搬する際には、個々のガラス板を縦に立てて、ガラス板間を一定の間隔を設けるか、或いは重ね合わせ、転倒しないように架台にこれを固定し、場合によっては特許文献1、2に見られるように、軟質で緩衝性(クッション性)に富む高発泡ポリエチレンシート(エアフォーム)を緩衝材として用いて、これを実施してきた。
しかしガラス板を立てるこの方法では、敷地単位面積あたりのガラス板の保管量・運搬量に限りがあり、これらを一度に大量に保管・運搬することができなかった。また近年、これらガラス板は大型化の一途を辿っており、その大きさや自重の増大から、やはりガラス板を立てて取り扱う従来の方法で、これを運搬するなどの対応が困難になってきている。
【0003】
そのため、近年では大型化したガラス板を、立てて積むのではなく、水平に置き、これらを複数枚重ね合わせて保管・運搬する技術が可能か検討されている。
通常ガラス板は、面方向(面の法線方向)からの衝撃には極めて脆いために、これを水平に置いて運搬する方法では、縦方向の振動等により破損する危険性をはらむ。そのリスクを解消するために、個々のガラス板間にはガラス板の割れを防止するための緩衝材として、種々のガラス板用合紙を用いることが必須事項として検討されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1、2に見られるような、軟質で緩衝性に富む高発泡ポリエチレンシートはガラスを保護する緩衝材としては優れているものの、高発泡であるが故に、表面は吸盤状であり、高平滑なガラス板に高加重で接した後の引き剥がしが困難であり、また基材強度も弱いために引き剥がし時にシートが材破してこれを除去しきれない場合がある。
また特許文献2においては、用いるシートの静電気の帯びやすさによりガラス板にゴミや埃等の汚染物が付着しやすくなることを防ぐために、これに界面活性剤を含浸したり、帯電防止剤を配合して表面固有抵抗値を所定の値とすることも検討されているが、何れの場合も含有する薬剤の表面移行によりガラス面の汚染が問題となりやすいという欠点がある。
【0005】
また、天然紙(パルプ紙)を用いた場合には、これを構成するパルプ繊維の粗さや密度の調整により緩衝材として有効であり、且つガラス板に接した後の引き剥がしも容易となるが、天然紙が含有する薬剤(紙力増強剤等)の移行によるガラス面の汚染が問題となりやすく、また運送時に水濡れした場合には、基材強度の低下により引き剥がし時に材破して除去しきれない場合がある。
また、ガラス板の汚染防止の観点から、特許文献3に見られるように透明なPET樹脂フィルムを用いることも検討されている。しかし重ね合わせた際、平滑なもの同士の組み合わせのためにブロッキングをしやすく、高加重で接した後の引き剥がしが困難であり、また積み重ねて一体化した状態では一枚の厚いガラス板に見えて個々のガラス板を判別する視認性が悪いといった問題があった。
【特許文献1】特開2003−226354号公報
【特許文献2】特開2005−231657号公報
【特許文献3】特開2003−237833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術の課題を解決するために、ガラス板表面の汚染及びガラス板の損傷を防止することができるとともに、ガラス板から容易に剥離することが可能なガラス板用合紙を提供することを課題とする。特に、高層建築に用いられる窓カラス板や、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタや薄膜トランジスタ(TFT)等に用いるガラス基板などのガラス板を水平に複数枚重ね合わせて保管・運搬する際に、ガラス板の割れなどの損傷を防止するために、個々のガラス板の間に介装して用いるガラス板用合紙であって、更に合紙からの薬剤等の移行による埃付着等によるガラス板表面の汚染を防止し、且つブロッキングを防止して個々のガラス板の使用時にはガラス板との剥離を容易にできるガラス板用合紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するべく、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ガラス板用合紙として下記の特定の構成を有することで、ガラス板表面の汚染を防止し、且つブロッキングを防止しうるガラス板用合紙を提供しうることを見出し、本発明は完成した。
即ち、本発明は、密度が0.5〜1g/cm3であるガラス板用合紙であって、2枚のガラス板の間に前記ガラス板用合紙を挟み込んで、40℃、相対湿度80%の環境下に24時間水平に静置した後、前記ガラス板用合紙と接した前記ガラス板表面の水の接触角がいずれも5〜35°であり、また、2枚のガラス板の間に前記ガラス板用合紙を挟み込んで、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間水平に静置した後、上部のガラス板を垂直方向に持ち上げて前記ガラス板用合紙より引き剥がす際のガラス板の荷重を除いた最大荷重がいずれも0〜4Nであり、且つ、持ち上げた前記上部のガラス板に前記ガラス板用合紙が貼り付くことなくすぐに剥がれるガラス板用合紙を提供する。
【0008】
また、本発明は、密度が0.5〜1g/cm3であるガラス板用合紙であって、前記ガラス板用合紙が、基材層(b)と、前記基材層(b)の一面に設けられたポリオレフィンを主構成材とする表面層(a)と、前記基材層(b)の反対面に設けられたポリオレフィンを主構成材とする裏面層(c)とを有する熱可塑性樹脂延伸フィルムであって、且つ、前記表面層(a)及び前記裏面層(c)は、各々独立に、その表面にエンボス加工が施されているか、及び/又は相溶しない2種以上のポリオレフィンの混合物からなるガラス板用合紙を提供する。表面に凹凸を付与することにより、ガラス板表面に対する接触面積が調整されている。また、複層構造とすることによって、汚染防止性やブロッキング防止性に寄与する表面層(a)及び裏面層(c)に加えて、基材層(b)にて緩衝性、不透明性、軽量性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
液晶ディスプレイ等のカラーフィルタや薄膜トランジスタ(TFT)等に用いるガラス基板などに代表されるガラス板の間に本発明のガラス板用合紙を挟み込むことによって、ガラス板表面の汚染及びガラス板の損傷を防止することができる。また、本発明のガラス板用合紙は、ガラス板から容易に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下において、本発明のガラス板用合紙について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[本発明のガラス板用合紙の特徴]
本発明のガラス板用合紙は液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネル・ディスプレイの基板に用いられるガラス板の合紙に特に最適である。フラットパネル・ディスプレイ用のガラス板は、一般の建築用窓ガラス板や車両用窓ガラス等に比べて、より精細に目視観察される機会が多く、近年は高精細なディスプレイ用にも使用されることが多いことから、ガラス表面は紙ヤケ、紙肌や異物など不純物のないクリーンな表面を保持していることが求められ、品質要求レベルが非常に高い。そのため、ガラス搬送の際にガラス間に挟まれ、直接接する合紙にはガラスの汚染を抑制する性能が求められる。また、積載されたガラスを一枚ずつ取り外す際に、これに接する合紙が貼り付く事による合紙の除去工程を省くため、合紙にはガラスからの易剥離性(易除去性、易脱落性)が要求される。さらに、ガラス搬送時の衝撃によるガラスの破損を防止するため、ガラス板用合紙には緩衝性が要求される。本発明のガラス板用合紙はこれらの要求を満たすものである。
【0012】
本発明のガラス板用合紙は、透明なガラス板を水平に複数枚重ね合わせて保管・運搬する際に個々のガラス板間に挟み込み、ガラス板の割れを防止するために好ましく用いられる。本発明のガラス板用合紙をガラス板と合紙を交互に重ね合わせた状態で、40℃、相対湿度80%の環境下に24時間水平に静置した後、合紙と接したガラス板表面の水の接触角はいずれも5〜35°、好ましくは10〜30°、特に好ましくは20〜30°であり、且つガラス板と合紙を交互に重ね合わせた状態で、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間水平に静置した後、上部のガラス板を垂直方向に持ち上げて合紙より引き剥がす際のガラスの荷重を除いた最大荷重はいずれも0〜4N、好ましくは1〜3.5Nであり、且つ持ち上げたガラス板に下部の合紙が貼り付くことなくすぐに剥がれることを特徴とする。
【0013】
合紙からのガラス板表面への物質転移によるガラス板の汚染度合いを表す方法として、水の接触角の測定が好適なものとして挙げられる。洗浄された直後のクリーンなガラス板表面は水との濡れ性が良く、水の接触角は5°程度となるが、合紙との接触による汚染度合いが高くなるほど、この水の接触角が大きくなる傾向がある。
本発明では、ガラス板と合紙を交互に重ね合わせた状態で、40℃、相対湿度80%の高温多湿環境下にて24時間処置することで、合紙との接触による汚染度合いが大きくなるように促進試験を行い、その後のガラス表面のクリーン度を水の接触角の測定にて評価している。界面活性剤や帯電防止剤等を配合したシートや、紙力増強剤等を配合したパルプ紙等では、合紙表層に移行した薬剤成分によりガラス表面は大きく汚染されるため、水の接触角は大きくなる傾向にある。
ガラス板表面の水の接触角が35°を超えては、薬剤成分の付着によりガラス板表面の汚れが大きく、保管・運搬後にも更にガラス洗浄を行う後工程が必要となるために好ましくない。
【0014】
また、常温常湿環境下でガラス板と合紙が交互に重ね合わされた積層物から、各ガラス板を1枚ずつ取り出す際に、ガラス板と合紙との貼り付き(ブロッキング)が生じ、上部に持ち上げられたガラス板へ下部の合紙が貼り付いては、その合紙を除去する後工程が必要となるために好ましくない。このガラス板への合紙の貼り付き度合いを前記のガラス板の持ち上げの際の瞬間的な最大荷重により表すことができ、この最大荷重は小さいほど好ましく、さらには、実際に持ち上げる際の下部の合紙の挙動として、ガラス板に貼り付くことなくすぐにガラス板から剥がれることが好ましい。
【0015】
本発明では、ガラス板と合紙を交互に重ね合わせた状態で、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間処置した後、上部のガラス板を垂直方向に持ち上げて合紙より引き剥がす際のガラスの荷重を除いた最大荷重を評価している。同値が0Nなら、合紙はガラス板に一切貼り付くことなく、ガラス板から離れていることを示す。同値が4N以内であればガラス板と合紙はブロッキングすることなくガラス板自体の取り出しは容易であり、作業性は良好である。
【0016】
また本発明のガラス板用合紙では、持ち上げたガラス板に下部の合紙が貼り付くことなくすぐに剥がれることを特徴とする。ここで「持ち上げたガラス板に合紙が貼り付くことなくすぐに剥がれる」とは、重ね合わせた状態からガラス板を垂直に300mm/minの速度で持ち上げた際に合紙の全体が引きつられて持ち上がることがない状態を示すものであり、合紙の一部でも引きつられて持ち上がった場合は「貼り付き」として判定している。
【0017】
[本発明のガラス板用合紙の好ましい構成]
本発明のガラス板用合紙は、基材層(b)と、その両面側にポリオレフィンを主構成材とする表面層(a)及び裏面層(c)とを含む積層構造の熱可塑性樹脂延伸フィルムであって、ガラス板と合紙の積層状態において、ガラス板と接触する表面層(a)及び裏面層(c)には無機及び/又は有機フィラーを実質的に含まないことが好ましい。ガラス板と接触する層にフィラーを含有すると、これらフィラーによるガラス板の傷付きや、これらフィラーの表面層(a)及び裏面層(c)からの脱落によるガラス表面の汚染が問題となりやすい。そのため、表面層(a)及び裏面層(c)は樹脂原料、特にポリオレフィンを主構成材として、これを構成することが好ましい。
【0018】
(表面層(a)及び裏面層(c))
本発明のガラス板用合紙は、表面層(a)及び裏面層(c)を有し、その表面が特定の構造により凹凸を有するものであることが好ましい。表面の凹凸により、本発明の主たる目的であるガラス板表面の汚染防止と、ガラス板/合紙間のブロッキングを防止することができる。
具体的にはその表面にエンボス加工を施すか、或いは該層が相溶しない2種以上のポリオレフィンの混合物からなるか、或いはその両方を満たすかの方法により、表面層(a)及び裏面層(c)の表面には凹凸を付与する。
【0019】
表面層(a)及び裏面層(c)の表面に、従来公知の方法によりエンボス加工を施すことにより、前記のガラス板と合紙の積層状態におけるガラス板と合紙の接触面積の低下及びガラス板と合紙の接触面の面方向への通気性が向上し、前記のガラス板と合紙の積層時の汚染の低減、及び積層状態からのガラス板の取り出しの際のガラス板への合紙の貼り付きが軽減される。
【0020】
本発明におけるエンボス加工としては、溶融樹脂をシート成形する際にエンボスロールによって形状付与する方法、シートをエンボスロールやエンボス版にて加熱プレスする様な手法を用いることが可能であり、またエンボスとは合紙表面に対して水平方向の断面形状が線状、破線状、波線状、円形、楕円形、n角形(nは3以上の自然数)、任意のマークやデザイン(ロゴ等)の様な凹凸を採用することが可能であり、これらは本発明の所期の目的を達成できるものである限り、特に限定されるものでは無い。
【0021】
また、表面層(a)及び裏面層(c)が相溶しない2種以上のポリオレフィン(例えばポリエチレンとポリプロピレン等)の混合物からなることにより、エンボス加工を施さなくとも、表面に相分離構造に由来する微細な凹凸が形成され、ガラス板と合紙との積層状態において、ガラス板と合紙との接触面積の低下及びガラス板と合紙の接触面の面方向への通気性が向上し、エンボス加工を施したのと同様に、前記のガラス板と合紙の積層時の汚染の低減、及び積層状態からのガラス板の取り出しの際のガラス板への合紙の貼り付きが軽減される。
表面層(a)及び裏面層(c)は上記のエンボス加工と、上記の相溶しない2種以上のポリオレフィンの混合物からなることを、併用することもできる。
【0022】
こうして得られた表面層(a)及び裏面層(c)表面のJIS−P−8119:1998に基づくベック平滑度は10〜7,000秒の範囲であることが好ましく、30〜5,000秒であることがより好ましい。平滑度が10秒以上であれば、該合紙となるフィルムの製造が容易である。また7,000秒以下であれば、前記のガラス板と合紙の積層状態でのガラス板と合紙の接触面積を低減でき、前記のガラス板と合紙の積層状態からのガラス板の取り出しの際のガラス板への合紙の貼り付き防止が容易である。
【0023】
(基材層(b))
本発明のガラス板用合紙は、基材層(b)の両面側に上記の表面層(a)と裏面層(c)とを積層する熱可塑性樹脂延伸フィルムであることが好ましい。
基材層(b)はガラス板用合紙の支持体となる層であり、ガラス板用合紙の緩衝性、不透明性、軽量性を向上させることができる。
基材層(b)もまた、表面層(a)及び裏面層(c)と同様、ポリオレフィンを含み、より好ましくはポリオレフィンと無機及び/又は有機フィラーとを主構成材として含み、延伸成形により基材層(b)は内部に空孔を有する。
基材層(b)の下記式より求める空孔率は5〜50%であることが好ましく、20〜50%であることがより好ましく、30〜48%であることが特に好ましい。空孔率が5%以上であれば、ガラス板と合紙との積層状態において搬送される際の緩衝性が充分であり、ガラス板の破損を防止しやすい。空孔率が50%以内であれば熱可塑性樹脂延伸フィルムを安定して生産しやすい。
空孔率(%)=(ρ0−ρ)/ρ0×100 ・・・ (1)
(式中、ρ0は基材層(b)の真密度であり、ρは基材層(b)の密度を表す)
基材層(b)には必要に応じて、蛍光増白剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤(光安定剤)、紫外線吸収剤、染料、顔料、帯電防止剤、分散剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤などの各種公知の添加剤を配合してもよい。これらは本発明の主旨を逸脱しない範囲で配合するのが好ましい。
【0024】
また基材層(b)はフィラーを含み、これを延伸することにより、内部にフィラーを核とする空孔を形成することが好ましい。該空孔により、ガラス板用合紙の緩衝性、不透明性、軽量性を向上させることができる。
空孔率が5%以上であれば前記のガラス板と合紙との積層状態において搬送される際に、充分な緩衝性により保持されてガラスの破損を防止できる。50%以下であればフィルム生産時に延伸割れが発生しにくい傾向にあり、安定した生産が可能となる。また基材強度低下による引き剥がし時の材破も防止しやすい。
【0025】
[熱可塑性樹脂延伸フィルムとその構成材料]
本発明のガラス板用合紙には、少なくとも表面層(a)、基材層(b)、及び裏面層(c)を順に有する積層構造を含む熱可塑性樹脂延伸フィルムを使用することができる。熱可塑性樹脂延伸フィルムは、例えば表面層(a)又は裏面層(c)と、基材層(b)との間に他の熱可塑性樹脂フィルム層を付加的に含んでも良い。
【0026】
(熱可塑性樹脂)
上記表面層(a)、基材層(b)、及び裏面層(c)は、何れも熱可塑性樹脂を含むものである。これら熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0027】
これらの中でも、耐薬品性や生産コスト等の観点より、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、プロピレン系樹脂を用いることがより好ましい。
プロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体を用いることが好ましい。また、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとプロピレンとを共重合させた様々な立体規則性を有するプロピレンを主成分とする共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0028】
(無機フィラー及び有機フィラー)
無機フィラー(B)及び/又は有機フィラー(B’)は基材層(b)の延伸成形時に空孔を形成する目的から添加するものである。
本発明のガラス板用合紙を構成しうる熱可塑性樹脂延伸フィルムの基材層(b)に使用することができる無機フィラー(B)としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土、酸化珪素などの無機フィラー、無機フィラーを核としこの周囲にアルミニウム酸化物ないしは水酸化物を有する複合無機フィラー、中空ガラスビーズ等を例示することができる。中でも重質炭酸カルシウム、焼成クレー、珪藻土は安価で延伸時に多くの空孔を形成させることができるために好ましい。
【0029】
また有機フィラー(B’)としては、空孔形成の目的のために、マトリクスとして用いる上記の熱可塑性樹脂よりも融点又はガラス転移点が高く、且つ上記の熱可塑性樹脂に非相溶性の樹脂から選択して用いることが好ましい。有機フィラーの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、アクリル酸エステルないしはメタクリル酸エステルの重合体や共重合体、メラミン樹脂、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、環状オレフィンの単独重合体及び環状オレフィンとエチレンなどとの共重合体(COC)等を例示することができる。上記熱可塑性樹脂として結晶性ポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、有機フィラー(B’)として、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、環状オレフィンの単独重合体及び環状オレフィンとエチレンなどの共重合体(COC)より選択されるものを用いることが好ましい。
【0030】
(表面層(a)及び裏面層(c)の原料組成)
本発明のガラス板用合紙に用いることができる表面層(a)及び裏面層(c)は、上記の熱可塑性樹脂を主体に含み、実質的にフィラー(無機フィラー(B)及び/又は有機フィラー(B’))を含まないものである。ここで「実質的に含まない」とは原料配合として意図的に含まないとこを意味し、観察される量として0〜1重量%の範囲であることを意味する。
また、表面層(a)及び裏面層(c)が相溶しない2種以上のポリオレフィン(例えばポリエチレンとポリプロピレン等)の混合物からなる場合は、表面に相分離構造に由来する微細な凹凸が形成することができる。この場合、一方のポリオレフィン(例えばポリプロピレン)が25〜75重量%、もう一方のポリオレフィン(例えばポリエチレン)が25〜75重量%であることが好ましく、同値は30〜70重量%であることがより好ましい。
【0031】
(基材層(b)の原料組成)
本発明のガラス板用合紙に用いることができる基材層(b)は、上記の熱可塑性樹脂20〜90重量%と、無機フィラー(B)及び/又は有機フィラー(B’)10〜80重量%とを含み、好ましくは熱可塑性樹脂40〜80重量%と、無機フィラー(B)及び/又は有機フィラー(B’)20〜60重量%とを含み、更に好ましくは熱可塑性樹脂50〜80重量%と、無機フィラー(B)及び/又は有機フィラー(B’)20〜50重量%とを含む。
【0032】
[ガラス板用合紙の特性]
(圧縮率・圧縮回復率)
本発明のガラス板用合紙は下記の方法による圧縮率が10〜40%であり、且つ下記の方法による圧縮回復率が85〜100%であることが好ましい。圧縮率は20〜35%であり、且つ圧縮回復率は90〜100%であることがより好ましい。
ここでガラス板用合紙の圧縮率とは、荷重印加時の変形量を示すものであり、圧縮回復率とは荷重印加後の復元量を示すものである。
前記圧縮率が10%以上であれば、ガラス板と合紙の積層状態で搬送される際に、充分な緩衝性が保持されてガラス板の破損を起こす可能性を軽減できる。40%以下であれば前記のガラス板と合紙の積層状態において搬送される際に、合紙はガラス板の重量が荷重として印加されても容易に潰されることはなく、緩衝性が発揮されてガラス板の破損を起こす可能性を軽減できる。
前記圧縮回復率が85%以上であれば、ガラス板と合紙の積層状態で搬送される際に、合紙がガラス板に潰されずに緩衝性を保持して、ガラス板の破損を起こす可能性を軽減できる。
【0033】
ガラス板用合紙にその厚み方法へ1mm/minの速度で圧力を印加させて、応力が11kPaに達した時の厚み変位量(1)を測定し、圧縮率を(厚み変位量/元の厚み)として算出する。前記の11kPaの圧力が印加された状態から、1mm/minの速度で圧縮を開放し、0.04kPaに達した時の元の厚みに対しての厚み変位量(2)を測定し、圧縮回復率を((元の厚み―厚み変位量(2))/元の厚み)として算出する。
【0034】
(密度)
本発明のガラス板用合紙は、表面の凹凸や基材層(b)内部の空孔により、密度を調整することができる。密度の低減は自重の軽減のみならず、上記の圧縮率・圧縮回復率の増減に関連する。
本発明のガラス板用合紙のJIS−P−8124:1998に基づく密度は0.5〜1g/cm3であることが好ましく、0.6〜0.9g/cm3であることがより好ましい。密度が0.5g/cm3以上であれば生産時に延伸割れが発生しにくい傾向にあり、安定した生産が可能となる。1.0g/cm3以下であればガラスのガラス板と合紙との積層状態において搬送される際に、充分な緩衝性が保持されてガラス板の破損を起こす可能性を軽減できる。
【0035】
(不透明度)
本発明のガラス板用合紙は、JIS−P−8149:2000に記載の方法に基づき、標準黒色板を裏当てして測定した視感反射率を、標準白色板を裏当てして測定した固有視感反射率にて除した値を百分率で算出した不透明度が70〜100%であることが好ましく、80〜100%であることがより好ましい。不透明度が70%以上であれば、ガラス板と、合紙とを区別するための視認性が良く、ガラス板を個々に取り出す事が容易である。
【0036】
[ガラス板用合紙の製造法]
本発明のガラス板用合紙は、熱可塑性樹脂延伸フィルムとして当業者に公知の種々の方法及びそれらの組み合わせによって製造することができる。いかなる方法により製造されたガラス板用合紙であっても、本発明に記載された条件を満たすものである限り本発明の範囲内に包含される。
【0037】
本発明に使用しうる熱可塑性樹脂延伸フィルムの基材層(b)は熱可塑性樹脂と無機フィラー(B)及び/又は有機フィラー(B’)を所定の割合で混合し、押出し等の方法により製膜し、又は製膜後に熱可塑性樹脂の融点より低い温度、好ましくは5〜60℃低い温度条件下で1軸方向又は2軸方向に延伸を行うことにより得られる。
本発明に使用しうる表面層(a)及び裏面層(c)は熱可塑性樹脂を押出し等の方法により製膜し、又は製膜後に熱可塑性樹脂の融点より低い温度、好ましくは5〜60℃低い温度条件下で1軸方向又は2軸方向に延伸を行うことにより得られる。
延伸は、用いる熱可塑性樹脂の融点より5℃以上低い温度で実施するが、2種以上の熱可塑性樹脂を用いる場合でも、配合量(重量%)の最大を占める樹脂の融点より5℃以上低い温度で行うことが好ましい。
【0038】
これらの積層構造は、それぞれの層を個別に成形した後に積層することによって得られたものでもよいし、積層した後にまとめて延伸して得られたものでもよい。
本発明のガラス板用合紙は、例えば、基材層(b)の表裏面に表面層(a)と裏面層(c)の樹脂組成物を積層し、1軸乃至は2軸方向に延伸することにより、全層1軸方向もしくは全層2軸方向に配向した積層構造物として得ることができる。また基材層(b)を1軸方向に延伸した後、その表裏面に表面層(a)と裏面層(c)をそれぞれ積層し、異なる延伸軸に再度1軸延伸することにより、1軸/2軸/1軸方向に配向した積層構造物として得ることもできる。
各層を別個に延伸して積層することも可能であるが、上記のように各層を積層した後にまとめて延伸する方が簡便であり製造コストも安くなる。これらの方法により、本発明のガラス板用合紙を得ることが好ましい。
【0039】
延伸には、公知の種々の方法を使用することができる。
延伸の具体的な方法としては、ロール群の周速差を利用したロール間延伸、テンターオーブンを利用したクリップ延伸、テンターオーブンとリニアモーターを利用した同時二軸延伸、チューブラー法を利用したインフレ成形法などを挙げることができる。ロール間延伸によれば、延伸倍率を任意に調整して、任意の剛性、緩衝性、不透明性、軽量性を有するガラス板用合紙を得ることが容易であり好ましい。
【0040】
延伸倍率は特に限定されるものではなく、本発明のガラス板用合紙に所望する物性と、用いる熱可塑性樹脂の特性を考慮して決定する。ロール間延伸は通常は4〜11倍が好ましく、4〜10倍であることがより好ましく、5〜7倍であることがさらに好ましい。テンターオーブンを利用したクリップ延伸の場合は4〜11倍であることが好ましく、6〜9倍であることがより好ましい。これらを組み合わせた面積倍率としては、通常は4〜80倍であり、好ましくは4〜60倍、より好ましくは5〜50倍である。面積倍率を4倍以上にすることによって、低密度でより空孔が多い、且つ延伸ムラを防いでより均一な膜厚の熱可塑性樹脂延伸フィルムを製造することが容易になる傾向がある。また80倍以下にすることによって、延伸切れや粗大な穴あきをより効果的に防ぐことができる傾向がある。
【0041】
延伸後の熱可塑性樹脂延伸フィルムには熱処理を行うのが好ましい。熱処理の温度は、延伸温度から延伸温度より30℃高い温度の範囲内を選択することが好ましい。熱処理を行うことにより、延伸方向の延伸応力に起因する熱収縮率が低減し、製品保管時の巻き締まりや熱による収縮から生じるシートの波打ち等が少なくなる。熱処理の方法はロール加熱又は熱オーブンで行うのが一般的であるが、これらを組み合わせてもよい。これらの処理は延伸したフィルムを緊張下に保持された状態において熱処理するのがより高い処理効果が得られるので好ましい。本発明のガラス板用合紙の全厚は特に制限されないが、取り扱い上、40〜400μmが好ましく、50〜250μmがより好ましく、60〜95μmの範囲がさらに好ましい。
【0042】
本発明において、ガラス板用合紙の厚み(圧縮率測定においては、元の厚み)はJIS−P−8118:1998に記載の方法に従って測定した。またこれを構成しうる表面層(a)、基材層(b)、及び裏面層(c)各層の厚みは、得られたガラス板用合紙の断面を電子顕微鏡で観察して、その厚み比より求めた。
【0043】
[ガラス板への適用]
本発明のガラス板用合紙は、高層建築等に用いられる窓カラス板や、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタや薄膜トランジスタ(TFT)等に用いるガラス基板などを含む、透明、平坦で表面平滑で近年大型化が進むガラス板と対になって用いる際に、合紙の特徴である緩衝性、ガラス表面の汚染防止性、ガラスからの易剥離性が有効に作用するので有用である。特にガラス表面の汚染防止性の観点から、液晶ディスプレイ等のガラス基板に有用である。
加えて本発明の合紙は上記性能により、一般建築に用いられる窓ガラス、自動車用ガラス、ガラス瓶、ガラス製食器、照明用ガラス、ガラス製ハードディスク、フォトマスク(半導体製造用)、光ファイバーレンズ、グラスファイバー、グラスウール等のガラス製品用の緩衝材、保護材、梱包材としても有用であり、その使用に何ら支障は無い。
また本発明の合紙は対象の傷付き防止性、対象表面の汚染防止性、対象からの易剥離性などの性能により、液晶ディスプレイ等の導光板、プリズムシート、拡散シート、反射シート、光反射防止材などのガラス製品以外にも用いることができる。
【0044】
本発明のガラス板用合紙は、2枚のガラス板の間に挟み込んで使用する。これによって、本発明のガラス板用合紙は緩衝材の役割を果たし、ガラス板の傷つきや割れなどを防止し、ガラス板を保護することができる。このとき、2枚のガラス板は同じ種類のガラス板であっても異なる種類のガラス板であってもよい。また、2枚のガラス板の外側面にも、本発明のガラス板用合紙を適用しても構わない。3枚以上のガラス板を保護する場合は、ガラス板と本発明のガラス板用合紙とを交互に積層することができる。
【0045】
このようにして積層した合紙挟込ガラスは、積層したまま保管や運送することができる。保管・運送時の状態は、合紙挟込ガラスを水平にしておいてもよいし、垂直にしておいてもよい。合紙挟込ガラスを構成する少なくとも1枚のガラス板の重みが、他のガラス板にかかる状態であれば、本発明の効果をよりよく享受することができる。もっとも、本発明の効果を享受できるのは、水平状態にしている場合である。合紙挟込ガラスは、保管・運送時の状況やガラス板の用途等に応じて、さらに梱包してもよい。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は本発明を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0047】
[ガラス板用合紙の製造]
以下の手順に従ってガラス板用合紙(実施例1〜7、比較例1〜5)を製造した。表1に使用した材料の詳細を記載した。同表中の「MFR」はメルトフローレートを意味する。表2に各熱可塑性樹脂延伸フィルムの製造にあたって使用した材料の種類と配合量(重量%)、延伸条件、層数及び層の厚みを記載した。表2に記載される材料名は、表1に記載される材料名に対応している。
【0048】
(実施例1)
表2に記載の組成を有する配合物(b)を250℃に設定した押出機で溶融混練して、ダイよりシート状に押し出し、これを冷却装置にて70℃まで冷却して無延伸フィルムを得た。
次いで表2に記載の組成を有する配合物(a)を250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押し出し、これを前記無延伸フィルムの表面に積層して、これをゴムロールと、金属ロールよりなるエンボスロール(1インチあたり150線、グラビア型)との間に通し、表面層(a)表面に0.17mm間隔、15μm深さの連続ピラミッド形状のパターンのエンボス加工が施された積層体(表面層(a)/基材層(b))を得た。
次いで表2に記載の組成を有する配合物(c)を250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押し出し、これを前記積層体の基材層(b)側の表面に積層して、これをゴムロールと、金属ロールよりなるエンボスロール(1インチあたり150線、グラビア型)との間に通し、裏面層(c)表面に0.17mm間隔、15μm深さの連続ピラミッド形状のパターンのエンボス加工が施された積層体(表面層(a)/基材層(b)/裏面層(c))を得た。
【0049】
この積層体(a/b/c)を表2に記載の延伸温度(1)にまで加熱した後、ロール間延伸にて縦方向に5倍に延伸し、1軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムは延伸温度(1)より20℃高い温度で熱処理を行い、3層の1軸延伸フィルムを得て、これを実施例1のガラス板用合紙とした。
このガラス板用合紙は圧縮率が10%、圧縮回復率が94%、密度が1g/cm3、不透明度が90%、表面層(a)表面のベック平滑度が50秒、裏面層(c)表面のベック平滑度が50秒、基材層(b)の空孔率が10%であった。
【0050】
(実施例2)
各押出機の吐出量を変更する以外は、前記の実施例1と同様の方法で得られた3層の1軸延伸フィルムを、更に表2に記載の延伸温度(2)に加熱してテンター延伸機を用いて横方向に8倍に延伸し、延伸温度(2)より20℃高い温度で熱処理を行い、3層の2軸延伸フィルムを得て、これを実施例2のガラス板用合紙とした。
得られたガラス板用合紙の諸物性を表3に示す。
【0051】
(実施例3〜7、比較例2〜4)
実施例3〜7及び比較例2〜4として、表2に記載の組成を有する配合物(b)を250℃に設定した押出機で溶融混練して、ダイよりシート状に押出成形した後、冷却装置にて70℃まで冷却して無延伸フィルムを得た。
この無延伸フィルムを表2に記載の延伸温度(1)に加熱してロール間延伸にて縦方向に5倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムを得た。
次いで表2に記載の組成を有する配合物(a)を250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押し出し、これを前記縦1軸延伸フィルムの表面に積層して、これをゴムロールと、金属ロールとの間に通し、圧着して積層体(表面層(a)/基材層(b))を得た。
この際、実施例3〜7及び比較例2〜4において、それぞれ表2に記載の“表面エンボス形状”に従い、表面層(a)側表面に特徴付けを行った。
表2の“表面エンボス形状”の欄において、“無”は前記の金属ロールにエンボスパターンが施されていない平滑な光沢ロールを用いており、表面層(a)側表面にはエンボス加工は施されていない。また“凸”は前記の金属ロールに1インチあたり150線のグラビア型パターンが施されており、表面層(a)側表面には0.17mm間隔、15μm深さの連続ピラミッド形状のパターンのエンボス加工が施され、同様に“凹”は前記の金属ロールに1インチあたり150線の逆グラビア型パターンが施されており、表面層(a)側表面には0.17mm間隔、15μm深さの連続逆ピラミッド形状のパターンのエンボス加工が施されている。
【0052】
次いで表2に記載の組成を有する配合物(c)を250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押し出し、これを前記の積層体(a/b)の基材層(b)側表面に積層して、これをゴムロールと、金属ロールとの間に通し、圧着して積層体(表面層(a)/基材層(b)/裏面層(c))を得た。
この際、各実施例および比較例では、上述の表面層(a)側表面と同様に、裏面層(c)側表面にも特徴付けを行っている。即ち、表2の“表面エンボス形状”の欄において、“無”は前記の金属ロールにエンボスパターンが施されていない平滑な光沢ロールを用いており、裏面層(c)側表面にはエンボス加工は施されていない。また“凸”は前記の金属ロールに1インチあたり150線のグラビア型パターンが施されており、裏面層(c)側表面には0.17mm間隔、15μm深さの連続ピラミッド形状のパターンのエンボス加工が施され、同様に“凹”は前記の金属ロールに1インチあたり150線の逆グラビア型パターンが施されており、裏面層(c)側表面には0.17mm間隔、15μm深さの連続逆ピラミッド形状のパターンのエンボス加工が施されている。
この積層体(a/b/c)を表2に記載の延伸温度(2)にまで加熱した後、テンター延伸機を用いて横方向に8倍に延伸し、延伸温度(2)より20℃高い温度で熱処理を行い、積層体の各層(表面層(a)/基材層(b)/裏面層(c))が1軸延伸/2軸延伸/1軸延伸された、3層の複合延伸フィルムを得て、それぞれ実施例3〜7及び比較例2〜4のガラス板用合紙とした。
得られたガラス板用合紙の諸物性を表3にまとめて示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
(比較例1)
比較例1として、各押出機の吐出量を変更する以外は、前記の実施例1と同様の方法で得られたエンボス加工が施された無延伸の積層体(表面層(a)/基材層(b)/裏面層(c))を、表2に記載の延伸温度(1)にまで加熱した後、ロール間延伸にて縦方向に3倍に延伸し、1軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムは延伸温度(1)より20℃高い温度で熱処理を行い、3層の1軸延伸フィルムを得て、これを比較例1のガラス板用合紙とした。
得られたガラス板用合紙の諸物性を表3に示す。
【0056】
(比較例5)
比較例5として、高発泡ポリエチレンシートとして入手可能である(株)JSP社製の「ミラマットA(エース) #010」をガラス板用合紙に用いた。
得られたガラス板用合紙の諸物性を表3に示す。
【0057】
[ガラス板用合紙の試験]
実施例1〜7および比較例1〜5で得られたガラス板用合紙について、以下の試験を行ってガラス板用合紙としての適性を評価した。測定結果及び評価結果を表4にまとめて示す。
【0058】
(試験例1)ガラス汚染性:水の接触角測定
超音波洗浄器(東京硝子器械社製、商品名:超音波洗浄器FU−21H、寸法:240mm×140mm×100mm)にて5分間超音波洗浄したスライドガラス(松浪硝子工業社製、商品名:プレクリン・スライドガラス、寸法:76mm×26mm)2枚の間に、製造したガラス板用合紙をスライドガラスと同寸法にカットして挟み、これを水平に設置し、上部スライドガラスの上に600gの荷重をかけて、温度40℃、相対湿度80%の環境下で24時間保持した後、スライドガラスをガラス板用合紙から静かに剥がし、接触角測定器(協和界面化学(株)製、型式:CA−D)を用いて、スライドガラスのガラス板用合紙と接触していた面の水の接触角測定を行い、以下の基準に従いガラス汚染性の評価を行った。結果を表4に示す。
◎: 0°以上 20°以下
○:20°を超えて35°以下
×:35°を超える
【0059】
(試験例2)ガラスからの剥離性:剥離時の最大荷重測定
2枚のスライドガラス(松浪硝子工業社製、商品名:プレクリン・スライドガラス、寸法:76mm×26mm)の間に製造したガラス板用合紙をスライドガラスと同寸法にカットして挟み、上部スライドガラスの上に600gの荷重をかけて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間保持した後、荷重を外し、デジタルフォースゲージ(イマダ社製、商品名:デジタルフォースゲージZP−50N)を用いて上部スライドガラスを垂直に300mm/minの速度で持ち上げて下部ガラス板用合紙から剥がす際にかかる瞬間の最大荷重(スライドガラス1枚の荷重を除く)の測定を行い、以下の基準に従いガラス板との剥離を容易さの評価を行った。結果を表4に示す。
◎:0N以上 1N以下
○:1Nを超えて4N以下
×:4Nを超える
【0060】
(試験例3)ガラスからの剥離性:ガラスとガラス板用合紙の貼り付き挙動
上記の剥離時の最大荷重測定を10回行った際に、上方に持ち上げられるスライドガラスの下部に挟まれていたガラス板用合紙が、スライドガラスに貼り付き、スライドガラスと共に何回持ち上げられるかの測定を行い、以下の基準に従いガラス板との貼り付きの評価を行った。結果を表4に示す。
○:0回
×:1回でもスライドガラスとガラス板用合紙の貼り付きが起こった。
【0061】
(試験例4)緩衝性:圧縮率測定
引張試験機((株)島津製作所製、商品名:オートグラフAGS−5kND)に加圧ユニットを取り付け、製造したガラス板用合紙を速度1mm/minで厚み方向に圧縮していき、11kPaの応力を印加したときの厚み変位量を、CCDレーザー変位センサー((株)キーエンス製、商品名:LK3100)で測定して、圧縮率を(厚み変位量/元の厚み)から百分率として算出し、以下の基準に従い緩衝性の評価を行った。結果を表4に示す。
◎:20%以上35%以下
○:10%以上20%未満、35%を超えて40%以下
×: 0%以上10%未満、40%を超えて100%以下
【0062】
(試験例5)緩衝性:圧縮回復率測定
前記圧縮率測定において、11kPaの加圧応力を印加直後、速度1mm/minで厚み方向に圧縮を開放していき、応力が0.04kPaまで減少したときの元の厚みに対する厚み変位量をCCDレーザー変位センサーで測定して、圧縮回復率を((元の厚み―厚み変位量(2))/元の厚み)から百分率として算出し、以下の基準に従い緩衝性の評価を行った。結果を表4に示す。
◎:90%以上100%以下
○:85%以上90未満
×: 0%以上85%未満
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.5〜1g/cm3であるガラス板用合紙であって、
2枚のガラス板の間に前記ガラス板用合紙を挟み込んで、40℃、相対湿度80%の環境下に24時間水平に静置した後、前記ガラス板用合紙と接した前記ガラス板表面の水の接触角がいずれも5〜35°であり、
2枚のガラス板の間に前記ガラス板用合紙を挟み込んで、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間水平に静置した後、上部のガラス板を垂直方向に持ち上げて前記ガラス板用合紙より引き剥がす際のガラス板の荷重を除いた最大荷重がいずれも0〜4Nであり、且つ、
持ち上げた前記上部のガラス板に前記ガラス板用合紙が貼り付くことなくすぐに剥がれるガラス板用合紙。
【請求項2】
密度が0.5〜1g/cm3であるガラス板用合紙であって、
前記ガラス板用合紙が、基材層(b)と、前記基材層(b)の一面に設けられたポリオレフィンを主構成材とする表面層(a)と、前記基材層(b)の反対面に設けられたポリオレフィンを主構成材とする裏面層(c)とを有する熱可塑性樹脂延伸フィルムであって、且つ、
前記表面層(a)及び前記裏面層(c)は、各々独立に、その表面にエンボス加工が施されているか、及び/又は相溶しない2種以上のポリオレフィンの混合物からなるガラス板用合紙。
【請求項3】
基材層(b)がポリオレフィンと無機及び/又は有機フィラーとを主構成材として含み、基材層(b)は内部に空孔を有し、基材層(b)の下記式より求める空孔率が5〜50%であることを特徴とする請求項2に記載のガラス板用合紙。
空孔率(%)=(ρ0−ρ)/ρ0×100 ・・・ (1)
(式中、ρ0は基材層(b)の真密度であり、ρは基材層(b)の密度を表す)
【請求項4】
ガラス板用合紙の圧縮率が10〜40%であり、且つ圧縮回復率が85〜100%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス板用合紙。
【請求項5】
ガラス板用合紙の密度が0.5〜1g/cm3であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス板用合紙。
【請求項6】
標準黒色板を裏当てして測定したガラス板用合紙の視感反射率を、標準白色板を裏当てして測定した固有視感反射率にて除した値を百分率で算出した不透明度が70〜100%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス板用合紙。
【請求項7】
ガラス板用合紙の表面および裏面のベック平滑度が10〜7,000秒であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガラス板用合紙。
【請求項8】
複数枚のガラス板の間に請求項1〜7のいずれか一項に記載のガラス板用合紙を挟み込む工程を含むことを特徴とするガラス板の保護方法。
【請求項9】
複数枚のガラス板の間に請求項1〜7のいずれか一項に記載のガラス板用合紙を挟み込んだ合紙挟込ガラス。
【請求項10】
前記複数枚のガラス板のうちの少なくとも1枚のガラス板の自重が他のガラス板にかかる状態にあることを特徴とする請求項9に記載の合紙挟込ガラス。
【請求項11】
前記複数枚のガラス板と前記ガラス板用合紙が水平であることを特徴とする請求項10に記載の合紙挟込ガラス。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の合紙挟込ガラスを運搬することを特徴とするガラス板の運搬方法。

【公開番号】特開2008−296938(P2008−296938A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143376(P2007−143376)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】