説明

ガラス毛細管への液状試料の封入手段及びこの封入手段による液状試料の測定分析機器用ガラスカプセル

【課題】 封止材を用いることなく所定量の液状試料をガラス毛細管に封入する手段を提案し、測定分析機器用の点検液、試薬等の液状試料をガラスカプセルとしてユーザーに提供可能とする。
【解決手段】 ガラス毛細管10の一端を加熱して片側封止し、注射針14をガラス毛細管10の開口他端から挿入して液状試料をガラス毛細管10内に注入し、ガラス毛細管10の他端を加熱して本封止し、所定量の液状試料を封入する。この液状試料の封入手段によって所定量の液状試料を封入した測定分析機器用ガラスカプセルを製作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医学や薬学、化学等の分野におけるガラス毛細管への液状試料の封入手段及びこの封入手段によって所定量の液状試料を封入した測定分析機器用ガラスカプセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医学や薬学、化学等の分野において、液状試料の成分の測定分析にガラス毛細管が広く用いられている。例えば、新生児黄疸の回復状態は、血液のビリルビン濃度を分光分析らより測定することで診断され、血液の採血及びそのビリルビン濃度の測定分析に、光の透過性能、均質性、寸法精度、剛性等からガラス毛細管が使用されている。
【0003】
一方、ビリルビン濃度の測定装置であるビリルビン分析器は、光源の経年変化等の対策として定期的な機器の点検、校正、精度の調整が必要とされ、機器の点検には生体である血液の代わりの点検液が用いられている(特許文献1、特開2003−149143号公報参照)。この点検液は、容器に収容して機器に付属あるいは別途販売され、定期的な機器の点検のために、点検液をガラス毛細管に採取し、ガラス毛細管の両端にパテ状封止材を充填し、ガラス毛細管に点検液を封入する作業がユーザー自身で行われている。
【特許文献1】特開2003−149143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パテ状封止材による封止は、ガラス毛細管への液状試料の封入手段として一般的に用いられているが、こうした液状試料の封入作業は、収容容器の蓋の忘れ、これに伴う水分蒸発による点検液の濃度の変質、毒性を有する点検液のこぼれ、これを取り扱う作業者の危険を伴い、何よりも煩わしい作業である。
【0005】
この発明は、封止材を用いることなく所定量の液状試料をガラス毛細管に封入する手段を提案し、測定分析機器用の点検液、試薬等の液状試料をガラスカプセルとしてユーザーに提供可能とし、上記の課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載のガラス毛細管への液状試料の封入手段は、ガラス毛細管10の一端を加熱して片側封止し、注射針14をガラス毛細管10の開口他端から挿入して液状試料をガラス毛細管10内に注入し、ガラス毛細管10の他端を加熱して本封止し、所定量の液状試料を封入するものである。
【0007】
請求項2に記載のガラス毛細管への液状試料の封入手段は、ガラス毛細管10の両端を加熱し、スロート13を形成して液止め加工し、ガラス毛細管10の一端を液状試料に浸漬して吸い上げ、液状試料をガラス毛細管10内に注入し、ガラス毛細管10の両端を再度加熱して本封止し、所定量の液状試料を封入するものである。
【0008】
請求項3に記載の液状試料の測定分析機器用ガラスカプセルは、請求項1又は2に記載のガラス毛細管への液状試料の封入手段によって所定量の液状試料を封入して製作するものである。
【0009】
請求項4に記載の液状試料の測定分析機器用ガラスカプセルは、請求項3に記載の測定分析機器用ガラスカプセルを、ビリルビン分析器及びその点検液15に適用するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明のガラス毛細管への液状試料の封入手段は、ガラス細工加工により、封止材を用いることなく液状試料をガラス毛細管10に封入し、所定量の液状試料を封入したカプセル状するもので、点検液15、試薬等の液状試料の測定分析機器用ガラスカプセルを簡単に製作することができる。ガラスカプセルとすることで、液状試料の安定性、安全性、保管性等の便宜を図り、その取り扱いを容易とすることができる。
【0011】
また、ビリルビン分析器及びその点検液15に適用し、点検液15をガラスカプセルとしてユーザーに提供すれば、点検液15の付属が不要となり、ユーザーは点検液15の封入作業の煩わしさから解放され、点検液15の変質、こぼれ、作業者の危険がなくなり、品質が均質な点検液15により点検精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下にこの発明の実施の形態を、図面を用いて具体的に説明する。
図面は、ビリルビン分析器の点検、校正、精度の調整のために用いる点検液15を封入したガラスカプセル20を製作する手順を示したもので、図1及び2は、請求項1に記載の封入手段による工程を示す。図1(a)に示す所定の寸法のガラス毛細管10を用い、このガラス毛細管10の一端を(b)に示すようにバーナ16で加熱し、(c)に示すように端部11を切り離して片側封止する。
【0013】
次に、図2(d)に示すように、点検液15を吸引した注射器の注射針14をガラス毛細管10の開口から挿入し、点検液15をガラス毛細管10内に注入する。この点検液15を収容したガラス毛細管10の開口他端を、(e)に示すようにバーナ16で加熱し、(f)に示すように端部12を切り離して本封止する。以上の工程でガラス毛細管10の両端を封止し、(g)に示す所定量の点検液15を封入したガラスカプセル20が製作される。なお、予め所定の全長に製作(切断)されているガラス毛細管を使用する場合は、端部11、12を切り離す必要はなく、両端をそのまま細工して封止することができ、これは次例においても同様である。
【0014】
図3から5は、同じくビリルビン分析器の点検用ガラスカプセル20を製作する手順で、請求項2に記載の封入手段による工程を示す。図3(a)に示す所定の寸法のガラス毛細管10を同じく用い、このガラス毛細管10の両端を(b)に示すようにバーナ20で加熱し、スロート13を形成して液止め加工する。
【0015】
次に、図4(c)に示すように、ガラス毛細管10の一端を液状試料15に浸漬し、他端から液状試料15を吸い上げ、(d)に示すように点検液15をガラス毛細管10内に注入する。この点検液15を収容したガラス毛細管10の両端を、(e)に示すようにバーナ16で再度加熱し、(f)に示すように端部11、12を切り離して本封止する。以上の工程でガラス毛細管10の両端を封止し、(g)に示す所定量の点検液15を封入したガラスカプセル20が製作される。
【0016】
こうして製作したガラスカプセル20は、ビリルビン分析器の点検用としてユーザーに提供される。その結果、点検液15の付属が不要となり、ユーザーは点検液15の封入作業の煩わしさから解放され、点検液15の変質、こぼれ、作業者の危険がなくなる。ガラスカプセル20は取り扱いに優れて品質が均質であるから点検精度の向上が図られ、ビリルビン分析器の製品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の封入手段の最初の工程を示す説明図。
【図2】次の工程を示す説明図。
【図3】この発明の別の封入手段の最初の工程を示す説明図。
【図4】次の工程を示す説明図。
【図5】さらに次の工程を示す説明図。
【符号の説明】
【0018】
10 ガラス毛細管
13 スロート
14 注射針
15 点検液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス毛細管10の一端を加熱して片側封止し、注射針14をガラス毛細管10の開口他端から挿入して液状試料をガラス毛細管10内に注入し、ガラス毛細管10の他端を加熱して本封止し、所定量の液状試料を封入するガラス毛細管への液状試料の封入手段。
【請求項2】
ガラス毛細管10の両端を加熱し、スロート13を形成して液止め加工し、ガラス毛細管10の一端を液状試料に浸漬して吸い上げ、液状試料をガラス毛細管10内に注入し、ガラス毛細管10の両端を再度加熱して本封止し、所定量の液状試料を封入するガラス毛細管への液状試料の封入手段。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガラス毛細管への液状試料の封入手段によって所定量の液状試料を封入した液状試料の測定分析機器用ガラスカプセル。
【請求項4】
測定分析機器がビリルビン分析器で、液状試料がその点検液15である請求項3に記載の液状試料の測定分析機器用ガラスカプセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−225462(P2007−225462A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47711(P2006−47711)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(591095063)株式会社府中技研 (1)
【Fターム(参考)】