説明

ガラス瓶

【課題】支点部と作用部との離隔距離が異なる各種栓抜きを使用しても、口部が欠け難いようにする。
【解決手段】王冠キャップ3を口部2に係止自在であり、口部2が、開口先端の口縁部2Aと、その口縁部2Aに隣接すると共に口縁部2Aより小径に形成されて王冠キャップ3が係止自在な絞り部2Bとを備えて構成され、王冠キャップ3を開栓するための栓抜きSにおける、王冠キャップ3の上面に接当させて開栓操作の際に支点となる支点部Sbと、王冠キャップ3の縁部に引っ掛けて開栓操作の際に作用点となる作用部Saとの栓抜き側面視における離隔距離Rが、14.7mmより大きな値である場合に、栓抜きSによる開栓操作に伴う支点部Sbを中心とした作用部Saの回転軌跡が、口縁部2A外面より外側に位置するように絞り部2Bの外径を設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、王冠キャップを口部に係止自在であり、前記口部が、開口先端の口縁部と、その口縁部に隣接すると共に前記口縁部より小径に形成されて前記王冠キャップが係止自在な絞り部とを備えて構成してあるガラス瓶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガラス瓶としては、例えば、ビールや清涼飲料水を封入してあるものがその代表格であり、図1、図4に示すように、口部2に係止させてある王冠キャップ3を、栓抜きSを使用して開栓できるように構成されている。
また、このような従来のガラス瓶には、図8に示すように、前記口縁部2Aの最大外径L1が26.3mm(実質的には、製造誤差を見込んだ値となる)、前記絞り部2Bの最小外径L2が23.9mm(実質的には製造誤差を見込んだ値となる)と言う規格で製造されているものがあった(例えば、非特許文献1参照)。
因みに、ガラス瓶に対する各種規格があるのと同様に、栓抜きSには1994年まで日本工業規格(以後、単にJIS規格と言う)による寸法設定の規格があった。
栓抜きSは、図3に示すように、環状部S1と操作部S2とを一体に連設したものがよく知られており、環状部S1の内周部の一方に前記王冠キャップ3の上面に接当させて開栓操作の際に支点となる支点部Sbが備えられ、環状部S1の内周部の他方に王冠キャップ3の縁部に引っ掛けて開栓操作の際に作用点となる作用部Saが備えられていた。
王冠キャップ3の開栓に当たっては、図4に示すように、支点部Sbを王冠キャップ3の上面に接当させると共に、作用部Saを王冠キャップ3の縁部に引っ掛けた状態で、前記操作部S2を上昇させることで、前記支点部Sbを中心とした梃子の応用で作用部Saで王冠キャップを変形させながらガラス瓶の口部に対する王冠キャップの係止を解除するものである。
そして、上述のように1994年までの栓抜きSに対する前記JIS規格(例えば、非特許文献2参照)によると、図3(a)に示すように、環状部S1の内周離隔寸法を15mmと規定されており、この数値を、前記支点部Sbと作用部Saとの栓抜き側面視における離隔距離Rに換算すると、14.7mm(実質的には、製造誤差を見込んだ値となる)となり、この寸法設定によれば、開栓時に、口縁部を栓抜きで傷つけることなく操作を行うことが可能であった。
尚、この様な従来技術に関しては、当業者の間で広く知られているものであるが、該当する寸法設定に関して詳しく言及した特許文献は見あたらないので、先行特許文献は示していない。
【0003】
【非特許文献1】「びん口規格」日本ガラスびん協会
【非特許文献2】「王冠抜き」日本工業規格 JIS S 9023
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記栓抜きは、上述のように、前記JIS規格によって1994年までは、その寸法が規定されていたが、同年にその規格が開放され、それに伴って、前記支点部と作用部との離隔距離Rが、14.7mmより大きい設定の栓抜きも各種製造されるようになってきた(図3(b)参照)。
上述した従来のガラス瓶によれば、前記離隔距離Rが14.7mmより大きな設定の栓抜きを使用すると、図8に示すように、開栓時の支点部Sb周りの作用部Saの回転半径も大きくなり、それまでであれば開栓時に王冠キャップ3の縁部にのみ引っ掛かっていた前記作用部Saが、瓶の口部2にも引っ掛かかり易くなり、無理やり開栓操作を行うなど乱暴な開栓操作を行った場合、口部2が欠けるおそれがあった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、支点部と作用部との離隔距離が異なる各種栓抜きを使用しても、口部が欠け難いガラス瓶を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、王冠キャップを口部に係止自在であり、前記口部が、開口先端の口縁部と、その口縁部に隣接すると共に前記口縁部より小径に形成されて前記王冠キャップが係止自在な絞り部とを備えて構成してあるガラス瓶において、前記ガラス瓶に係止させた前記王冠キャップを開栓するための栓抜きにおける、前記王冠キャップの上面に接当させて開栓操作の際に支点となる支点部と、王冠キャップの縁部に引っ掛けて開栓操作の際に作用点となる作用部との栓抜き側面視における離隔距離が、14.7mmより大きな値である場合に、前記栓抜きによる開栓操作に伴う前記支点部を中心とした前記作用部の回転軌跡が、前記口縁部外面より外側に位置するように前記絞り部の外径を設定(通常より浅く形成)してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記栓抜きにおける、前記王冠キャップの上面に接当させて開栓操作の際に支点となる支点部と、王冠キャップの縁部に引っ掛けて開栓操作の際に作用点となる作用部との栓抜き側面視における離隔距離が、14.7mmより大きな値であっても、前記栓抜きによる開栓操作に伴う前記支点部を中心とした前記作用部の回転軌跡が、前記口縁部外面より外側に位置するように前記絞り部の外径を設定してあるから、1994年のJIS規格に則って製造された栓抜き以外にも、前記離隔距離が14.7mmより大きな値に製造された栓抜きであっても、開栓操作に伴って栓抜きの作用部が瓶の口部に引っ掛かることを回避でき、口部の欠けを未然に防止することが可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記口縁部と絞り部とは、絞り部の外径が口縁部の外径より小径となる相対関係を満たす範囲内で、前記口縁部表面の凸曲面と、絞り部表面の凹曲面との間の曲率の変曲点における接線が、瓶直径に沿う直線に対して55度以上の傾斜となるように形成してあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、前記接線が瓶直径に沿う直線に対して55度以上の傾斜となるように形成してあるから、変曲点より口縁部側の出っ張り方が緩やかになり、開栓操作に伴って栓抜きの作用部が瓶の口部に引っ掛かることをより回避し易くなり、口部の欠けを未然に防止する事が可能となる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記口縁部の外径が26.3mmであり、前記絞り部の外径が24.4mmであるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、本発明の第1又は2の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、より確実に、栓抜きの作用部が瓶の口部に引っ掛かることを回避しやすくなる。
因みに、前記26.3mm、24.4mmと言う各数値は、瓶製造上の精度を考慮すると、実質的には、夫々に±0.3mmの誤差を含むもので、即ち、実寸としては、口縁部の外径は26.0〜26.6mm、絞り部の外径は24.1〜24.7mmを意味している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0013】
図1は、本発明のガラス瓶の一実施形態品を示すもので、当該実施形態においては、ビール瓶を例に挙げて説明する。
【0014】
前記ビール瓶Bは、縦長形状の瓶本体1によって構成してあり、その上端部に口部2が形成されている。前記瓶本体1は、肩の部分から前記口部2にかけて徐々に小径に形成されている。
また、前記口部2には、王冠キャップ3が嵌められている。
【0015】
前記王冠キャップ3は、図4に示すように、外殻3Aが金属によって構成してあり、内周部には、前記口部2に対するシール用シート3Bが内嵌させてある。
そして、前記外殻3Aのスカート部分には、周方向に複数の襞4が連続的に形成してある。この襞4を設けてあることで、開栓時にスカート部分が周方向にスムースに伸縮変形することを許容でき、小さい力で開栓操作できるのである。
また、前記襞4は、下縁側程内径寸法が小さくなるように形成してあり、前記口部2に王冠キャップ3を外嵌させてある状態においては、口部2の絞り部2Bに、襞4内周の小径部分が嵌り込み、瓶内部の密閉を図っている。
当該王冠キャップ3の開栓には、栓抜きSが用いられ、栓抜きSの作用部Saをスカート部分の下縁に引っ掛けて押し上げることで、前記襞4が拡径方向に変形しながら瓶の口縁部2Aを乗り越えて外れる。
【0016】
次に、瓶の口部2について詳しく説明する。
前記口部2は、図2に示すように、開口上端の口縁部2Aと、その口縁部2Aの下方に隣接すると共に前記口縁部2Aより小径に形成されて前記王冠キャップ3が係止自在な絞り部2Bとを備えて構成してある。
因みに、口縁部2Aやそれに続く絞り部2Bは、共に、曲面の組み合わせによって滑らかな形状に形成してある。
前記口縁部2Aの最大外径寸法L1は、従来からのガラス瓶と同様に、26.3mmとして設定されている。
一方、前記絞り部2Bの最小外径寸法L2は、24.4mmとして設定されている。因みに、従来からのガラス瓶の場合は、絞り部2Bの最小外径寸法L2は、23.9mmに設定されていた。
但し、ここで説明に使用している各寸法値は、製造誤差を含まない設計値であるから、実質は、±0.3mmのガラス瓶製造上の誤差を含む値を指すものである。
また、前記絞り部2Bの最小外径の部分は、瓶上端から5.9mmの箇所に位置している。
そして、前記口縁部2Aと絞り部2Bとは、絞り部2Bの外径が口縁部2Aの外径より小径となる相対関係を満たす範囲内で、前記口縁部2A表面の凸曲面と、絞り部2B表面の凹曲面との間の曲率の変曲点Hにおける接線h1が、瓶直径に沿う直線h2に対して55度以上の傾斜角θとなるように形成してある。
【0017】
栓抜きSについて説明する。
栓抜きSは、図3に示すように、環状部S1と操作部S2とを一体に連設したものであり、環状部S1の内周部の一方に前記王冠キャップ3の上面に接当させて開栓操作の際に支点となる支点部Sbが備えられ、環状部S1の内周部の他方に王冠キャップ3の下縁部に引っ掛けて開栓操作の際に作用点となる作用部Saが備えられている。
王冠キャップ3の開栓に当たっては、上述のように、支点部Sbを王冠キャップ3の上面に接当させると共に、作用部Saを王冠キャップ3の下縁部に引っ掛けた状態で、前記操作部S2を上昇させることで、前記支点部Sbを中心とした梃子の応用で作用部Saで王冠キャップを変形させながら係止を解除するものである。
そして、前記支点部Sbと作用部Saとの栓抜き側面視における離隔距離Rは、14.7mmのものや、それ以上の寸法のものがあり、図5に、前記離隔距離Rが14.7mmの栓抜きの前記作用部Saの回転軌跡を、図6に、前記離隔距離Rが16.01mmの栓抜きの前記作用部Saの回転軌跡をそれぞれ表してみたが、何れの回転軌跡も、前記口縁部2Aに干渉することはない。
尚、栓抜きに対するJIS規格(JIS S 9023)が1994年に廃止されて以来、市場には、前記離隔距離Rが14.7mmの栓抜き以外にも、前記離隔距離Rが14.7mm〜16.01mmの範囲のものが出回っていると見られ、当該実施形態に挙げたビール瓶Bによれば、これら何れの栓抜きを使用しても、口欠けの心配がない。
【実施例1】
【0018】
瓶の口部における絞り部2Bの最小外径寸法L2と、その寸法の瓶の開栓操作の状況との関係を調べる実験を行った。
検体は、前記最大外径寸法L1は、26.3mmで、前記最小外径寸法L2を、23.8mm、24.0mm、24.2mm、24.4mmにそれぞれ設定した複数の瓶を用意して実験を行った。
使用した栓抜きは、前記支点部Sbと作用部Saとの栓抜き側面視における離隔距離Rが16.01mmのものを使用した。
開栓時の状況を、次の3ランクに分類して結果を集計した。
(A)瓶の口部に欠けが見られた。
(B)栓抜きが口部に引っ掛かる感触はあるものの、瓶の口部に欠けは生じなかった。
(C)栓抜きが口部に引っ掛かる感触は無く、瓶の口部の欠けも無く、スムースに開栓操作できた。
集計結果は、図7に示す通りであった。
この結果から分かるように、絞り部2Bの最小外径寸法L2は、24.4mmのものであれば、全ての検体に対して、瓶の口部の欠けが発生せずにスムースに開栓操作できる結果が得られた。
【0019】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0020】
〈1〉 前記ガラス瓶は、先の実施形態で説明したビール瓶に限るものではなく、例えば、清涼飲料水や、天然水等を封入した瓶であってもよく、要するに、ガラス製の瓶であって、王冠キャップによって栓がされているものであればよく、それらを総称してガラス瓶という。従って、瓶の形状や容量等は特に規定されるものではない。
【0021】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ビール瓶の要部を示す側面図
【図2】口部を示す側面図
【図3】栓抜きを示す説明図
【図4】開栓状況を示す側面視断面図
【図5】開栓状況を示す口部要部の側面視説明図
【図6】開栓状況を示す口部要部の側面視説明図
【図7】実験結果を示す説明図
【図8】従来のビール瓶の開栓状況を示す口部要部の側面視説明図
【符号の説明】
【0023】
1 瓶本体
2 口部
2A 口縁部
2B 絞り部
3 王冠キャップ
H 変曲点
h1 変曲点における接線
h2 瓶直径に沿う直線
R 離隔距離
S 栓抜き
Sa 作用部
Sb 支点部
θ 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
王冠キャップを口部に係止自在であり、前記口部が、開口先端の口縁部と、その口縁部に隣接すると共に前記口縁部より小径に形成されて前記王冠キャップが係止自在な絞り部とを備えて構成してあるガラス瓶であって、
前記ガラス瓶に係止させた前記王冠キャップを開栓するための栓抜きにおける、前記王冠キャップの上面に接当させて開栓操作の際に支点となる支点部と、王冠キャップの縁部に引っ掛けて開栓操作の際に作用点となる作用部との栓抜き側面視における離隔距離が、14.7mmより大きな値である場合に、前記栓抜きによる開栓操作に伴う前記支点部を中心とした前記作用部の回転軌跡が、前記口縁部外面より外側に位置するように前記絞り部の外径を設定してあるガラス瓶。
【請求項2】
前記口縁部と絞り部とは、絞り部の外径が口縁部の外径より小径となる相対関係を満たす範囲内で、前記口縁部表面の凸曲面と、絞り部表面の凹曲面との間の曲率の変曲点における接線が、瓶直径に沿う直線に対して55度以上の傾斜となるように形成してある請求項1に記載のガラス瓶。
【請求項3】
前記口縁部の外径が26.3mmであり、前記絞り部の外径が24.4mmである請求項1又は2に記載のガラス瓶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−197092(P2007−197092A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−54608(P2007−54608)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】