説明

ガラス研磨方法及びこれに用いる積層シート

【課題】ガラス研磨を行った後、ガラスをパッドから剥離させる時に、ガラスの割れを防止可能なガラス研磨方法を提供する。
【解決手段】定盤1の表面に、少なくとも、ウレタンシート20とエラストマーシート21からなる積層シート2を貼り付ける工程と、積層シート2の表面に研磨対象のガラスGを貼り付ける工程と、ガラスGの表面を研磨する工程と、研磨工程後、ガラスGと共に積層シート2の端部を定盤1から剥離させる工程と、剥離工程の途中でガラスGと積層シート2の間に空気層Aを形成させた後、ガラスGのみを積層シート2から分離させる工程と、を有し、ウレタンシート20は、表面スキン層20aとセル層20bからなり、表面スキン層20a側にガラスGを貼り付け、セル層20b側をエラストマーシート21と結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シートを用いてガラスを研磨する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかるガラス研磨方法を図1により簡単に説明する。このガラス研磨装置は、ガラス保持部100と、ガラス研磨部200から構成される。ガラス保持部100は、金属製の定盤1と、この定盤1の上に貼り付けられる保持パッド2と、保持パッド2の上に貼り付けられるガラスGと、から構成される。定盤1はアーム101により可動に構成される。保持パッド2の例としては、例えば、下記特許文献1に開示されるものが公知である。
【0003】
ガラス研磨部200には、研磨パッド201が取り付けられ、不図示のモーターにより回転可能に構成される。実際にガラス研磨を行うときは、ガラス保持部100とガラス研磨部200を向かい合わせ、研磨パッド201によりガラスGの表面を研磨する。研磨した後、再び、ガラス保持部100と、ガラス研磨部200を離間し、ガラスGを保持パッド2から剥離させる。
【0004】
ここで、剥離する時の様子を図6に示す。ガラスGの端部を手で持って、保持パッド2から徐々に引き剥がしていく。ここで、ガラスGと保持パッド2との密着状態を緩和させるため、エアガンによりガラスGと保持パッド2の間に空気を送り込むようにする場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−326714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成は、次のような問題点がある。ガラスGを剥離するために徐々に引
き剥がすとき手前に引き剥がす力でガラスGが割れる可能性がある。また、エアガンで空気を送り込んだ場合も、ガラスGが振動し、ガラスGが割れる可能性がある。研磨対象となるガラスGは厚みが薄いもので0.3mm程度である。そして、さらなる薄型化の要求により、さらにガラスGが割れる確率が高くなる。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、ガラス研磨を行った後、ガラスをパッドから剥離させる時に、ガラスの割れを防止可能なガラス研磨方法及びこれに用いる積層シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係るガラス研磨方法は、
定盤の表面に、少なくとも、ウレタンシートとエラストマーシートからなる積層シートを貼り付ける工程と、
前記積層シートの表面に研磨対象のガラスを貼り付ける工程と、
前記ガラスの表面を研磨する工程と、
研磨工程後、前記ガラスと共に前記積層シートの端部を定盤から剥離させる工程と、
前記剥離工程の途中で前記ガラスと前記積層シートの間に空気層を形成させた後、前記ガラスのみを前記積層シートから分離させる工程と、を有し、
前記ウレタンシートは、表面スキン層とセル層の積層構造を有しており、前記表面スキン層側に前記ガラスを貼り付けていることを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成によるガラス研磨方法の作用・効果を説明する。まず、定盤の上に積層シートが貼り付けられ、さらに、その上に研磨対象のガラスが更に貼り付けられる。なお、これらを貼り付ける順番は、上記の順番に限定されるものではない。この状態でガラスを研磨パッドにより研磨し、研磨した後、ガラスを積層シートから剥離させる必要がある。このとき、まず、ガラスと積層シートを共に、定盤から引き剥がす。この剥離工程で、ガラスと積層シートのたわみ剛性の違いにより、ガラスと積層シートの間に空気層が形成される。この状態になれば、ガラスを積層シートから自然に分離させることができる。このように、ガラスを無理なく剥離できるので、ガラスが割れる確率を減らすことができる。その結果、ガラス研磨を行った後、ガラスをシートから剥離させる時に、ガラスの割れを防止可能なガラス研磨方法を提供することができる。
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係る積層シートは、
少なくとも、ウレタンシートとエラストマーシートからなり、さらに、前記ウレタンシートは、表面スキン層とセル層の積層構造を有しており、前記表面スキン層側に前記ガラスを貼り付けていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成による作用・効果はすでに述べた通りであり、ガラスを無理なく剥離できるので、ガラスが割れる確率を減らすことができる。また、ウレタンシートのスキン層の吸着特性を利用してガラスを貼り付けることができる。さらに、ウレタンシートのセル層側をエラストマーシートと結合することで、エラストマーシートの表面に存在する凹凸をセル層で吸収することができる。これにより、ガラスを平坦な状態で積層シートの表面に保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ガラス研磨装置の構成を示す概念図
【図2】積層シートの断面構成を示す図
【図3】積層シートの効果を説明する図
【図4】ガラスを定盤にセットした時の状態を示す側面図
【図5】ガラスを積層シートから剥離させる時の手順を示す図
【図6】従来技術においてガラスを剥離させる時の手順を示す図
【図7】積層シートの別実施形態の断面構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るガラス研磨方法及び装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。なお、ガラス研磨装置の構成は、従来技術において説明した図1と基本構成は同じである。研磨対象となるガラスは、研磨を必要とするガラスであり、特に厚みの薄いガラスにおいて、本発明は有用である。
【0014】
<ガラスの貼り付け構成>
図1に示すガラス研磨装置のガラス保持部100にガラスGを保持した時の状態を図2に示す。定盤1の表面に積層シート2が貼り付けられており、更に、その積層シート2の表面にガラスGが貼り付けられている。
【0015】
<積層シートの構成>
積層シート2の断面構成を図2に示す。積層シート2は、ウレタンシート20とエラストマーシート21が積層されており、これらを粘着剤層22により結合して一体化している。あるいは、ホットメルトにより接着して一体化してもよい。エラストマーシート21の一方の面は定盤1に貼り付ける面である。エラストマーシート21の他方の面は、粘着剤層22を介してウレタンシート20と結合される。
【0016】
ウレタンシート20は、表面スキン層20aと、セル層20bにより構成されている。表面スキン層20aには、緻密な微細孔が形成されている。セル層20bは、内部に形成され、発泡孔が多数形成される。セル層側が粘着剤層22を介してエラストマーシート21と結合される。
【0017】
ウレタンシート20としては、湿式製法による表面スキン層とセル層を保有するウレタンシートあるいは乾式製法による表面スキン層とセル層を保有するウレタンシートが使用される。エラストマーシート21としては、スチレンエラストマーシートあるいはその他の素材のエラストマーシートが使用される。これらの任意の組み合わせにより積層シート2が構成される。どのように組み合わせるかは、作業者が必要とする研磨品質や作業性により決めることができる。
【0018】
エラストマーシートは、強い自己粘着性を有し、そのままで定盤1に貼り付けることができる。
【0019】
<積層シートの作用>
図3は、積層シート2の作用を示す図である。図3(a)は、エラストマーシート21のみでガラスGを吸着させた場合を示す。エラストマーシート21は、表面を洗浄するなどして、定盤1に対して繰り返し密着および剥離できる機能を持続することができる。しかし、内部にセル層を有していないので、弾性に乏しい。従って、エラストマーシート21自身に少々の凹凸がある場合に、そのままガラスGを貼り付けて研磨すると、研磨されたガラスGの平滑性に斑を与えてしまう。一方、図3(b)に示すように、ウレタンシート20はセル層20bを有しており、これをエラストマーシート21に貼り付けることで、凹凸を吸収し、貼り付けたガラスGの平滑性に斑を与えることなく研磨作業を行うことができる。
【0020】
<ガラス研磨方法>
次に、実際にガラスGを研磨する時の手順を説明する。図4は、ガラスGを定盤1にセットした時の状態を示す側面図である。まず、定盤1の表面に積層シート2を貼り付ける。積層シート2の素材は前述の素材が選択される。
【0021】
次に、積層シート2の表面にガラスGを貼り付ける。なお、積層シート2は、研磨されるガラスGの形状に合わせたシート材として形成される。また、サイズについては、積層シート2の表面積は、ガラスGの表面積よりと同じか少し大きくなるように設定しておくことが好ましい。これにより、ガラスGを剥離する時の操作が行いやすくなる。
【0022】
上記の例では、定盤1の表面に順番に積層シート2とガラスGを貼り付けたが、予め、積層シート2とガラスGを貼り付けておき、これを定盤1の表面に貼り付けるようにしてもよい。
【0023】
図4のようにセットされた後、図1にも示すように、研磨パッド201により、ガラスGの表面を研磨する。研磨工程は従来と同じ方法で行うことができる。
【0024】
<ガラスの剥離工程>
次に、研磨工程が終了した後、ガラスGを積層シート2から剥離させる時の手順を図5により説明する。
【0025】
図5(a)に示すように、矩形の積層シート2の四隅のうちの1つを保持し、徐々にはがしていく。この時、積層シート2とガラスGが一体となって剥がれていく。一定の面積(約1/4)程度剥がすと、図5(b)に示すように、ガラスGと積層シート2の間に空気層Aが形成し始め、ガラスGが積層シート2から剥離し始める。これは、ガラスGと積層シート2のたわみ剛性の差に基づくものである。
【0026】
この状態になれば、積層シート2の剥離動作を終了し、ガラスGを積層シート2から引き剥がす。空気層Aが形成されているので、無理なく剥離させることができる。ガラスGを完全に分離した後、図5(c)に示すように、積層シート2を元の状態に戻す。
【0027】
以上の方法によれば、エアブローなどを用いないでガラスGを剥離させることができ、ガラスGが割れることを防止することができる。従って、薄いガラスでも剥離時の割れを防止することができ、歩留まりを向上させることができる。また、剥離するまでの時間も短縮化することができ、図6の場合に比べ、本発明の構成によれば短時間で剥離させることができ、作業効率も改善される。
【0028】
<積層シートの実施形態>
本発明に係る積層シートは、図2に示す構造に限定されるものではなく、図7に示す構造のものを採用してもよい。この積層シート2は、ウレタンシート20とエラストマーシート21の間にPET(ポリエチレンテレフタレート)シート23が介在している。PETシート23とウレタンシート20あるいはエラストマーシート21は、粘着剤層22あるいはホットメルト等による接着により、一体化されている。あるいは、PETシート23の上に、直接ウレタンシート20とエラストマーシート21を成形して一体結合させてもよい。PETシート23を設けることにより、積層シート全体のたわみ強さが増すという利点がある。
【0029】
<別実施形態>
本発明において、積層シート2やガラスGの貼り付け及び剥離、また、ガラスGの貼り付け及び剥離操作については、作業員が手動で行ってもよいし、ロボットを用いて機械により自動的に行ってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 定盤
2 積層シート
20 ウレタンシート
20a 表面スキン層
20b セル層
21 エラストマーシート
22 粘着剤層
23 PETシート
100 ガラス保持部
200 ガラス研磨部
201 研磨パッド
A 空気層
G ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤の表面に、少なくとも、ウレタンシートとエラストマーシートからなる積層シートを貼り付ける工程と、
前記積層シートの表面に研磨対象のガラスを貼り付ける工程と、
前記ガラスの表面を研磨する工程と、
研磨工程後、前記ガラスと共に前記積層シートの端部を定盤から剥離させる工程と、
前記剥離工程の途中で前記ガラスと前記積層シートの間に空気層を形成させた後、前記ガラスのみを前記積層シートから分離させる工程と、を有し、
前記ウレタンシートは、表面スキン層とセル層の積層構造を有しており、前記表面スキン層側に前記ガラスを貼り付けていることを特徴とするガラス研磨方法。
【請求項2】
請求項1に係るガラス研磨方法において使用される積層シートであって、
少なくとも、ウレタンシートとエラストマーシートからなり、さらに、前記ウレタンシートは、表面スキン層とセル層の積層構造を有しており、前記表面スキン層側に前記ガラスを貼り付けてしていることを特徴とする積層シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107168(P2013−107168A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254052(P2011−254052)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000003425)株式会社東洋クオリティワン (18)
【出願人】(395018424)株式会社大番 (2)
【Fターム(参考)】