説明

ガラス管の製造のためのホウケイ酸ガラス組成物並びに該組成物をガラス管の製造のために及びランプ用の外管として用いる使用

【課題】ベロ法もしくはダンナー法などの慣用の方法によって管引きして、ガラス管を形成でき、これらのガラス管が形状変化(収縮及び屈曲)を受ける傾向と700℃までの更なる加工温度で互いにくっつく傾向が、理想的にはほとんどないガラス組成物を提供する。
【解決手段】酸化物を基礎とするモル%で、SiO2 74〜81、B23 8.5〜14.5、Al23 0.5〜3.5、Na2O 1.5〜3.5、K2O 1.0〜2.0、Li2O 0〜1.0、MgO 0.5〜1.5、CaO 0.5〜1.5、BaO 0〜0.6、TiO2 2.0〜3.5、ZrO2 0〜1.0、及び清澄剤として、Sb23 0〜0.15、CeO2 0〜0.5、SnO2 0〜0.5を含み、かつ0.4<Na2O/(Na2O+K2O)≦0.72のモル比を有する、ホウケイ酸ガラスによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプ用の外管の製造のために特に好ましい最適化された加工特性を有するガラス組成物並びにこのガラスを管の製造のために及びランプ外管のために用いる使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に普及したタイプの蛍光ランプは、低圧ガス放電の原理に従って駆動する。ここで、少量の水銀及び希ガスを含むガス混合物は、真空にした中空空間中に導入される。水銀原子は励起され、次いで紫外線(UV)を放出する。これは、容器内部に通常適用される蛍光体コーティングによって可視光に変換される。ガス充填された容器は、好ましくは、可視光に対して非常に透過性のガラスから構成される長形の薄い円筒管及びその壁部として構成される。数ミリメートルの外径を有する小型化された蛍光ランプは、スクリーン及び視覚的表示装置類(VDUs)並びに他のディスプレイエレメントの背景照明のためにしばしば使用される。上述の蛍光体コーティングは、ガラス管の内表面上に焼き付けられる。従って、相応する蛍光ランプは、発光団ランプ(luminophore lamps)とも呼ばれる。
【0003】
ランプの製造において、特に蛍光体層の焼き付けにおいて達する温度は、時として700℃までになりうる。かかる温度は、通常、かかる目的のために使用される殆どのガラスの転移温度を大きく上回る。従って該ガラスの強度と安定性は低下する。
【0004】
蛍光体層の焼き付けの間に必要とされる高温は、時として、この目的に通常使用されるガラスのガラス転移温度(T)を約150℃まで上回る。この高い焼き付け温度のため、使用されるガラスのガラス構造は変化し、それは形状の変化をもたらすことがあり、またガラス表面に変化をもたらすことがある。ガラス管を加工して蛍光ランプを得る場合に、これらは収縮により長さに変化が起こることがあり、屈曲に至ることがあり、又は接触するガラス管同士が互いに接触点でくっつくことがある。これらの全ての望ましくない作用は、ランプ製造のために一般に高度に自動化されたプロセスにおいては高度に不所望であり、かつ厄介である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、ベロ(Vello)法もしくはダンナー(Danner)法などの慣用の方法によって管引きして、ガラス管を形成でき、これらのガラス管が形状変化(収縮及び屈曲)を受ける傾向と700℃までの更なる加工温度で互いにくっつく傾向が、理想的にはほとんどないガラス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、請求項1に示されるガラス組成物によって解決される(特に記載がない限り、示される割合は、酸化物を基礎とするモル%である)。
【0007】
すなわち、前記課題は、以下の割合(酸化物を基礎とするモル%で):
SiO2 74〜81
23 8.5〜14.5
Al23 0.5〜3.5
Na2O 1.5〜3.5
2O 1.0〜2.0
Li2O 0〜1.0
MgO 0.5〜1.5
CaO 0.5〜1.5
BaO 0〜0.6
TiO2 2.0〜3.5
ZrO2 0〜1.0
及び清澄剤として
Sb23 0〜0.15
CeO2 0〜0.5
SnO2 0〜0.5
を含み、かつ0.4<Na2O/(Na2O+K2O)≦0.72のモル比を有する、ホウケイ酸ガラスによって解決される。
【0008】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスにおいて、モル比0.4<Na2O/(Na2O+K2O)<0.70である。
【0009】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスにおいて、log(η)が12である軟化温度が、少なくとも570℃、好ましくは580〜620℃である。
【0010】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスにおいて、モル比B23/(B23+Σアルカリ金属酸化物)が、≦0.76であり、好ましくは0.6〜0.7である。
【0011】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスにおいて、モル比SiO2/Al23が、<105であり、好ましくは70〜100である。
【0012】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスにおいて、熱伝導率が、>0.97W/m・Kである。
【0013】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスにおいて、モル比(CaO+MgO+BaO)/(Li2O+Na2O+K2O)が、0.35を上回り、0.8の最大値までである。
【0014】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスにおいて、3.4×10-6/K〜4.3×10-6/Kの熱膨張率α20/300を有し、かつ少なくとも1170℃の動作点WPを有する。
【0015】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスにおいて、積B23・(Li2O+Na2O+K2O)が、45〜65の範囲にある。
【0016】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスにおいて、モル比Al23/(Li2O+Na2O+K2O)が、0.15〜0.6の範囲にある。
【0017】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスは、ガラス管の製造のために使用される。
【0018】
好ましい一実施形態においては、本発明によるホウケイ酸ガラスは、蛍光ランプ用の及び低圧ガス放電ランプ用の外管として使用される。
【0019】
二酸化ケイ素SiO2の含有率は、74〜81モル%である。
【0020】
ホウ素酸化物B23の割合は、8.5〜14.5モル%である。このホウ素の含有率は、蛍光ランプ、特に低圧ガス放電ランプの外管の製造に使用される他のガラスと比較して相対的に低い。このことは、第一に、原材料コストと製造コストに好ましい効果を有し、そして第二に、互いに接触するガラス管同士の接触点の上記の互いのくっつきも低減される。ガラス表面のくっつきは、ホウ素の堆積がガラス表面に存在する場合に、特に大きい程度で生ずることが見出された。この効果は、比較的低いホウ素含有率の選択によって低減される。
【0021】
アルミニウム酸化物Al23の割合は、0.5〜3.5モル%である。
【0022】
アルカリ金属酸化物として、本発明のガラスは、ナトリウム酸化物Na2Oを1.5〜3.5モル%の割合で、かつカリウム酸化物K2Oを1.0〜2.0モル%の割合で含有する。
【0023】
該ガラスは、任意に、低い割合のリチウム酸化物Li2O、好ましくは0ないし約1モル%を含有してもよい。リチウム酸化物は、ナトリウム及びカリウムの酸化物と比較して相対的に高価な原材料であるので、その割合を、低く保つことが好ましい。
【0024】
存在するアルカリ土類金属酸化物は、マグネシウム酸化物MgOを0.5〜1.5モル%の割合で、カルシウム酸化物CaOを同様に0.5〜1.5モル%の割合であり、一方で、バリウム酸化物BaOは、全体として任意に、0〜0.6モル%の割合で存在してよい。
【0025】
とりわけガラスの紫外線透過に作用する二酸化チタンTiO2は、2.0〜3.5モル%の割合で存在する。
【0026】
加えて、0〜1.0モル%の割合の二酸化ジルコニウムZrO2は、任意に、本発明のガラス中に存在してよい。ZrO2は、本発明のガラスの水による侵食の耐性を高める。
【0027】
さらに、慣用の清澄剤を、本発明のガラスに通常の量で添加することができる。ここでの可能性は、特に、アンチモン酸化物Sb23を0〜0.15モル%の割合で、及び/又はセリウム酸化物CeO2を0〜0.5モル%の割合であり、またスズ酸化物SnO2を同様に0〜0.5モル%の割合である。それに加えて又はその代わりに、塩化物及び硫酸塩などの慣用の揮発性の清澄剤を、ガラス溶融物に添加してもよい。ガラスのヒ素不含の清澄を実施することが好ましく、その結果として、該ガラスは、全くヒ素酸化物As23を含有しないことが好ましい。アンチモン酸化物がチタン含有ガラスの清澄のために使用される場合に、これは、アンチモン酸化物の高い酸化電位のため、ガラスの不所望な変色をもたらさない。不所望なイルメナイト(FeO・TiO2)の形成は、それにより大きく減少される。
【0028】
ガラス溶融物の製造のための多くの出発材料及び原材料は、付随する成分もしくは不純物として鉄酸化物Fe23を含有する。ガラスの鉄含有率(酸化物を基礎として)は、好ましくは300ppmの最大量に制限される。
【0029】
冷陰極蛍光ランプは、例えば外部電極を用いて(EEFL(外部電極蛍光ランプ)型として知られる)製造されるか、又は内部電極を用いて(CCFL(冷陰極蛍光ランプ)型として知られる)製造される。特に、内部電極を有するランプの場合には、金属電極又はそれらの金属接続ワイヤは、気密な様式で外管を貫通してそれに接合される必要がある。比較的大きい温度変化が起きたときに接続点で生ずる応力によるランプの破壊を避けるために、接合された金属とガラスの2つのコンポーネントの膨張率は、互いに適合させる必要がある。本組成を有する本発明のガラスは、リードスルー(lead−throughs)用の材料としてしばしば使用されるタングステン上への融着に特に適している。その20〜300℃の範囲にある平均熱膨張率αは、好ましくは3.4〜4.3×10-6/Kの範囲にある。
【0030】
アルカリ金属イオンは、その小さいサイズのため、ガラスの他の多くの成分よりもガラス構造内で高い移動度を有することが知られている。また、様々なアルカリ金属は、互いに異なる移動度を有することも知られている。特に高温では、例えば蛍光体層の焼き付けに際して生じうる大きな温度変化又は高い温度勾配の場合に、これは、ガラス構造中のアルカリ金属イオンのマイグレーションの増大をもたらしうる。特に、ガラス表面でのアルカリ金属分布の局所的な不均一性の結果として、これらの現象は、ガラスの不所望な収縮又は互いのくっつきを引き起こすことがある。ガラスの特に好ましい加工特性は、Na2O対(Na2O+K2O)のモル比が>0.4〜≦0.72の範囲にある場合に得られることが見出された。上述のモル比の上限は、好ましくは<0.70である。
【0031】
それらのアルカリ金属含有率の比率は、所定の温度でのガラスの粘度ηにも影響する。log(η/dPas)が12である温度は、軟化点と呼称される。本発明のガラスの場合には、それは、少なくとも570℃であることが好ましく、580〜620℃の範囲が特に好ましい。高い軟化点は、特に高温プロセスにおける、ガラス管の形状安定性と加工特性にとって望ましい。
【0032】
粘度ηが104dPasである温度として定義される、本発明によるガラスの動作点(working point)WPは、好ましくは少なくとも1170℃である。
【0033】
アルカリ金属であるナトリウム及びカリウムに加えて、リチウム及びその化合物も、ガラスの製造のための可能性のある原材料である。比率B23/(B23+Σアルカリ金属酸化物)は、例えば溶融成形もしくは熱間成形、例えばダンナー法もしくはベロ法によるガラス管の管引きの場合と同じ高さの温度でガラス表面の蒸発速度に大きい影響を有する。本発明のガラスの場合に、その比率は、好ましくは<0.76、特に好ましくは0.6〜0.7である。望ましくない比率の場合には、例えばランプ製造におけるガラスの加工には、特に、加熱されたガラス表面が互いにくっつくことによって悪影響が及ぼされることがある。
【0034】
ガラス自由表面からの、特にアルカリ金属ホウ酸塩の蒸発の程度に影響を及ぼす又はそれを記載する更なるパラメータは、積(B23・Σアルカリ金属酸化物)によって与えられる。それは、好ましくは45〜65の範囲にある。
【0035】
Si23/Al23のモル比は、ガラスの溶融挙動に決定的である。その比率が高くなると、ガラスはより容易に溶融可能となる。本発明のガラスの場合に、その比率は、好ましくは<105、特に70〜100である。
【0036】
必要とされる熱、例えば蛍光体コーティングのための焼き付け工程のための加熱の間に必要とされる熱の非常に迅速かつ一様な吸収を保証するために、0.97W/m・Kより大きい最低熱伝導性の値が好ましい。
【0037】
アルカリ土類金属酸化物の合計の、アルカリ金属酸化物の合計に対するモル比は、当業者に、ガラス構造に対する情報と結合に対する情報を提供する。2つの上述の合計の比率は、好ましくは、0.35を上回るが、0.8を上回らない。
【0038】
ガラスの溶融性に影響する更なるパラメータは、アルミニウム酸化物の、アルカリ金属酸化物の合計に対するモル比である。本発明によるAl23/(Na2O+K2O+Li2O)の比率は、好ましくは0.15〜0.6の範囲にある。
【0039】
本発明によるガラスの組成と、それらの重要な特性及びパラメータの5つの例を、以下の2つの表に示す。全ての割合は、酸化物を基礎とするモル%である。
【0040】
ガラスの耐水性の相対的な定性的評価:
【表1】

"+" 良好;"++" より良好;"+++" 非常に良好
【0041】
前記表に列記された例はすべて、清澄剤としてアンチモンを使用して清澄した。考えられる代替的な清澄剤は、特にセリウム及びスズであり、その2つは、個別でも、互いの組み合わせでも、他の慣用の清澄剤との組み合わせでもよい。しかしながら、アンチモンによる清澄が好ましく、それは特にチタン含有ガラスの場合に好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の割合(酸化物を基礎とするモル%で):
SiO2 74〜81
23 8.5〜14.5
Al23 0.5〜3.5
Na2O 1.5〜3.5
2O 1.0〜2.0
Li2O 0〜1.0
MgO 0.5〜1.5
CaO 0.5〜1.5
BaO 0〜0.6
TiO2 2.0〜3.5
ZrO2 0〜1.0
及び清澄剤として
Sb23 0〜0.15
CeO2 0〜0.5
SnO2 0〜0.5
を含み、かつ0.4<Na2O/(Na2O+K2O)≦0.72のモル比を有する、ホウケイ酸ガラス。
【請求項2】
モル比0.4<Na2O/(Na2O+K2O)<0.70であることを特徴とする、請求項1に記載のホウケイ酸ガラス。
【請求項3】
log(η)が12である軟化温度が、少なくとも570℃、好ましくは580〜620℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のホウケイ酸ガラス。
【請求項4】
モル比B23/(B23+Σアルカリ金属酸化物)が、≦0.76であり、好ましくは0.6〜0.7であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のホウケイ酸ガラス。
【請求項5】
モル比SiO2/Al23が、<105であり、好ましくは70〜100であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のホウケイ酸ガラス。
【請求項6】
熱伝導率が、>0.97W/m・Kであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のホウケイ酸ガラス。
【請求項7】
モル比(CaO+MgO+BaO)/(Li2O+Na2O+K2O)が、0.35を上回り、0.8の最大値までであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のホウケイ酸ガラス。
【請求項8】
3.4×10-6/K〜4.3×10-6/Kの熱膨張率α20/300を有し、かつ少なくとも1170℃の動作点WPを有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載のホウケイ酸ガラス。
【請求項9】
積B23・(Li2O+Na2O+K2O)が、45〜65の範囲にあることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のホウケイ酸ガラス。
【請求項10】
モル比Al23/(Li2O+Na2O+K2O)が、0.15〜0.6の範囲にあることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のホウケイ酸ガラス。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のホウケイ酸ガラスを、ガラス管の製造のために用いる使用。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のホウケイ酸ガラスを、蛍光ランプ用の及び低圧ガス放電ランプ用の外管として用いる使用。

【公開番号】特開2013−43830(P2013−43830A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186361(P2012−186361)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】