説明

ガラス組成物、それから得られたガラス、並びに、ガラスの製造方法及び使用。

【課題】化学強化用のアルカリおよびアルミニウム高含有ケイ酸塩ガラス組成物の提供。
【解決手段】ガラス組成物は、モル%で、SiO2が64.5-73、Al2O3が6.5-11.5、B2O3が0-2、Na2Oが13-19、K2Oが0.3-1.2、MgOが3.5-7.2、ZnOが0.05-2.5、TiO2が0.05-1、Y2O3が0-0.6、Ga2O3が0-0.4、GeO2が0-1.2、並びに、SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3からなる群から選択される少なくとも1の成分であって含有量がSnO2が0-0.15、Sb2O3が0-0.1、Clが0-0.5及びSO3が0-0.3である成分を含む。前記ガラスは、化学強化後、その表面に圧縮応力300MPa以上、厚み40μm以上の圧縮応力層を備え、ディスプレイ製品のスクリーン表面の保護用のガラス材料として用いられうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸塩ガラス組成物、それから得られたガラス、並びに、前記ガラスの製造プロセス及び使用に関する。より詳しくは、本発明は、化学強化ガラス製品の製造に適した、アルカリおよびアルミニウム高含有ケイ酸塩ガラス組成物、それから得られたガラス、並びに、前記ガラスの製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のディスプレイ技術の開発に伴い、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、タッチスクリーン、プレイステーションポータブル(PSP)、液晶テレビジョン、液晶ディスプレイ機器、ノートブック液晶ディスプレイ、キャッシュディスペンサー及びマルチメディア情報照会装置等の数多くのフラットパネルディスプレイ製品が現れている。
【0003】
これらのフラットパネルディスプレイ製品において、アクリル酸樹脂又は従来のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスが、一般的なスクリーンの保護部材として使用されている。
アクリル酸樹脂は、低ヤング率であるため、スクリーン保護部材として使用された場合、基材の湾曲、及び、指等による押圧に対する反応性が悪いディスプレイになるという問題を引き起こす可能性がある。
従来のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、表面強度が低く、従って、スクリーン保護部材として使用された場合に、長期間の使用におけるスクリーンのキズの生じやすさ、さらには、ぼやけた視界、表示効果不足、およびスクリーンの好ましくない外観などの問題を引き起こす可能性がある。
【0004】
従って、フラットパネスディスプレイ製品のスクリーン表面を保護するための、キズがつきにくく、耐衝撃性のある材料の開発が要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、化学強化に適しているアルミノケイ酸塩ガラス組成物を提供することにある。前記ガラス組成物は、フロート法、フュージョン・オーバーフロー法、または、シート状ガラスにカットする方法のような、公知の形成方法を通じて種々の板ガラスの製造に使用することが可能である。
【0006】
本発明の一態様は、モル%で、SiO2を64.5-73、B2O3を0-2、Al2O3を6.5-11.5、Na2Oを13-19、K2Oを0.3-1.2、MgOを3.5-7.2、ZnOを0.05-2.5、TiO2を0.05-1、Y2O3を0-0.6、Ga2O3を0-0.4、GeO2を0-1.2、並びに、SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3からなる群から選択される少なくともいずれか一の成分であって含有量がSnO2が0-0.15、Sb2O3が0-0.1、Clが0-0.5及びSO3が0-0.3である成分を含むガラス組成物を提供する。
【0007】
本発明の他の一態様は、モル%で、SiO2を64.5-73、B2O3を0-2、Al2O3を6.5-11.5、Na2Oを13-19、K2Oを0.3-1.2、MgOを3.5-7.2、ZnOを0.05-2.5、TiO2を0.05-1、Y2O3を0-0.6、Ga2O3を0-0.4、GeO2を0-1.2、並びに、SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3からなる群から選択される少なくともいずれか一の成分であって含有量がSnO2が0-0.15、Sb2O3が0-0.1、Clが0-0.5及びSO3が0-0.3である成分を含み、20-400℃における膨張係数が80-100×10-7/℃、密度が2.5g/cm3以下、歪点が540℃を超え、溶融温度が1720℃以下であることを特徴とするガラスを提供する。
【0008】
好ましい実施形態としては、前記ガラスが、さらに、ヤング係数が70.5-75.5 GPa以下であることである。
【0009】
本発明にかかるガラスは、
a. 本発明に係るガラス組成物の供給、
b. 前記ガラス組成物の溶融、及び、その後における溶融されたガラス組成物の脱気および均質化、
c. 以下のステップのうちのいずれか一つの実施、
得られたガラス組成物のフロート法による板ガラスへの形成、及び、形成されたガラスのアニーリング、又は
得られたガラス組成物の形成用スチール型への注入、形成されたガラスのアニーリング、及び選択的な板ガラスへの形成、
並びに、
d 選択的な前記板ガラスの化学強化処理、
によって製造される。
【0010】
本発明にかかるガラスは、450-500℃のKNO3溶解塩中で5時間以上、化学強化される。前記ガラスは、例えば、圧縮応力300MPa以上の表面であって、40μm以上の圧縮応力層の厚みを備える。本発明にかかるガラスは、例えば、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、タッチスクリーン、プレイステーションポータブル(PSP)、液晶テレビジョン、液晶ディスプレイ機器、ノートブック液晶ディスプレイ、キャッシュディスペンサー及びマルチメディア情報照会装置等のディスプレイ製品のスクリーン表面の保護用のガラス材料として、ダメージから効果的に前記ディスプレイ製品のスクリーン表面を保護するため、及び、製品の寿命と使用効果とを延長するために使用されうる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、モル%で、SiO2を64.5-73、B2O3を0-2、Al2O3を6.5-11.5、Na2Oを13-19、K2Oを0.3-1.2、MgOを3.5-7.2、ZnOを0.05-2.5、TiO2を0.05-1、Y2O3を0-0.6、Ga2O3を0-0.4、GeO2を0-1.2、並びに、SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3の群から選択される少なくともいずれか一の成分であって含有量がSnO2が0-0.15、Sb2O3が0-0.1、Clが0-0.5及びSO3が0-0.3である成分を含む化学強化に適したアルカリおよびアルミニウム高含有ケイ酸塩ガラス組成物を提供する。
【0012】
本発明において、成分の含有量は、他の指定がない限り成分の総モル量をベースとしたモル%を意味する。組成物中の全成分の含有量の総計は100モル%であることは明らかである。
【0013】
本発明は、他の指定がない限り、室温および大気圧において実施される。
【0014】
SiO2は、ガラスの網状組織の主骨格であり不可欠なものである。SiO2は熱膨張係数およびガラスの密度を低下させ、歪点及び化学的安定性を改良し、化学強化の割合を増加させることが可能である。しかしながら、ガラスの融点が上昇すると、ガラスの粘度は上がる傾向にある。
本発明において、SiO2含有量は64.5-73%の範囲である。SiO2含有量が64.5%より低い場合には、低密度で高歪点を有するガラスを得ることが困難になり、加えて、前記ガラスは低耐化学的安定性、化学強化の割合の増加の不足、より高い熱膨張係数及び低い熱衝撃耐性を備える可能性がある。
SiO2含有量が73%を超える場合には、ガラスの高温粘度が増加する可能性があり、その結果、ガラスを溶融するために過度に高い溶融温度が必要となる。
従って、高ヤング率であって、急速な化学強化に適したガラスを得るためには、SiO2含有量は68-73%であることが好ましい。
【0015】
Al2O3は、中間酸化物であり、ガラス表面のイオン交換を促進するために、及び、前記ガラスの化学的安定性を大きく向上させるために使用されうる。また、ガラスの硬度及び機械的耐性を向上させるために必須の成分である。
Al2O3含有量は、6.5-11.5%の範囲である。Al2O3含有量が6.5%より低い場合には、イオン交換が効果的になされない可能性があり、それによって、前記ガラスのヤング率の向上及び機械的強度を阻害する。Al2O3含有量が多すぎる場合には、Al2O3は粘度を上昇させる傾向があるため前記ガラスの粘度が上昇する可能性があり、前記ガラスが融けにくくなり、耐失透性が悪化する。
従って、Al2O3含有量は11.5%未満、好ましくは9.6%未満である。
【0016】
B2O3は、本来、ガラス網状組織の骨格および溶融剤のどちらとしても働く。それは、高温における流動化作用、それによる前記ガラスの粘度低下作用、及び、ガラスの溶融の促進作用を示す。B2O3は、前記ガラスの溶融性を上昇させ、及び粘性を減少させるための必須の成分である。B2O3含有量が多すぎる場合には、ガラスの相分離への傾向が増加する可能性があり、ガラスの安定性の改善にとっては有害であり、ガラスのイオン交換率を減少させる可能性がある。従って、B2O3含有量は0-2%、好ましくは0-1.9%の範囲である。
【0017】
Na2Oは、ガラス表面上のイオン交換によって前記ガラスの化学強化を可能にする必須成分である。同時に、Na2Oは、可溶性の成分として、ガラスの溶融温度を低下させ、溶融したガラスの流動性を向上させ、ガラスの結晶化傾向を改善し、それによって、ガラスの溶融性及び成形性を増加させ、及びガラスの耐失透性を改善する。
Na2O含有量が13%未満である場合には、ガラスのイオン交換特性が乏しくなる可能性があり、強化効果が不十分になる可能性があり、イオン交換による望ましい圧縮応力層の形成が困難になる。Na2O含有量が多すぎる場合には、ガラスの熱膨張係数が大きくなりすぎて化学的安定性および熱衝撃耐性が低下する可能性がある。従って、Na2O含有量は13-19%、好ましくは13-17.5%、より好ましくは13-16%の範囲である。
【0018】
K2Oは、ガラスの高温粘性を低下させ、溶融性および成形性を上昇させることができる。化学強化において、Na+の相互拡散を通じてイオン交換率を増加させ、それにより望ましい圧縮応力、および、圧縮応力層の厚みの増加が達成できる。ガラス中に少量のK2Oが含まれる場合には、イオン交換特性はイオンの相互拡散を通じて向上されうる。K2O含有量が1.2%を超える場合には、イオン交換は阻害される可能性があり、強化効果は影響を受ける可能性がある。従って、K2O含有量は、0.3-1.2%、好ましくは0.3-1.1%の範囲である。
【0019】
MgOは、高温粘性を低下させ、化学的安定性を向上させ、およびその結果、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、ガラスの歪点及び引張弾性係数を上昇させる作用も有する。MgOは、本発明においてアルカリ土類金属の主な供給源である。MgO含有量が多すぎる場合には、ガラスの耐失透性は悪化する。従って、MgO含有量は、3.5-7.2%、好ましくは4-7%の範囲である。
【0020】
アルカリ土類金属酸化物は、ガラスを安定化し、結晶化から保護するが、イオン交換を阻害する。従って、MgO以外のいかなるアルカリ土類金属酸化物も、本発明にかかるガラス組成物中には含まれない。代わりに、イオン交換率を上昇させるのに適したZnO及びTiO2がガラスの安定性を向上させるために取り込まれる。
【0021】
ZnOは、ガラスの溶融成分である。それはガラスのイオン交換特性を改良することができ、特に、ガラスの圧縮応力を上昇させることができる。ZnO含有量が多すぎる場合には、ガラスは相分離を受けやすくなり、従って、ガラスの耐失透性は劣化する可能性がある。よって、ZnO含有量は0.05-2.5%の範囲である。
【0022】
TiO2は、ガラスのイオン交換特性及びガラス基板の機械的強度を改善させる作用を有している。一方、TiO2は、ガラス中に存在するFeイオン(Fe2+、Fe3+)の酸化還元状態を変化させる可能性がある。TiO2含有量が多すぎる場合には、ガラスの耐失透性は悪化する。よって、TiO2含有量は0.05-1%、好ましくは0.05-0.8%の範囲である。
【0023】
Y2O3は、ガラスの弾性係数およびイオン交換率を上昇させる成分である。その含有量は0-0.6%、好ましくは0-0.5%の範囲である。
【0024】
Ga2O3は、液相温度の低下およびガラスの溶融性及び化学的特定を向上させるのに有効である。Ga2O3の含有量は、0-0.4%、好ましくは0-0.1%の範囲である。
【0025】
GeO2は、ガラス骨格であり、Na+及びK+のイオン交換率およびガラスの歪み深さ(strain depth)を増加させて、ガラスの強度を向上させることができる。GeO2含有量は、0-1.2%、好ましくは0-1.1%の範囲である。
【0026】
ガラスの溶融性質の改善のため、及び、ガラスからガス内包物を排除するため、本発明に係るガラス組成物は、前記した成分に加えて、さらに、含有量がSnO2が0-0.15、Sb2O3が0-0.1、Clが0-0.5、及びSO3が0-0.3である、SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3からなる群から選択される少なくとも1つの浄化剤を含む。SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3の合計量は、好ましくは0.04-0.5の範囲である。
【0027】
本発明における成分の中で、Al3+、B3+、Y3+及びGa3+のすべては、Oとともに、4面体又は8面体を形成することができる。4面体が形成された場合、ガラスの網状構造は、多面体の大きい体積のせいで緩み、イオン交換が促進される可能性がある。Al3+、B3+、Y3+及びGa3+の配位状態は、ガラスに含まれる遊離酸素によって影響を受け、Na2O及びK2Oは係数1の酸素を供給し、MgO及びZnOは係数0.2の酸素を供給する。
本発明において、遊離酸素含有量は、Of=Na2O+K2O+0.2MgO+0.2ZnOとして定義されるOfとして表される。
【0028】
好ましい実施形態において、Al3+、B3+、Y3+及びGa3+の4面体構造を確実にするために、Ofの全量は、モル%で15-20に設定され、及び、
(Na2O+K2O+0.2MgO+0.2ZnO)/(Al2O3+B2O3+Y2O3+Ga2O3)の比率は1.5-2.6に設定される。
【0029】
本発明において、SiO2の全量は、モル%で、74.5-80の範囲である。SiO2、B2O3、Al2O3及びGeO2の全量が74.5未満である場合、ガラスの硬度及び衝撃耐性は良好ではなく、およびイオン交換率及び圧縮応力層の厚みも減少する。SiO2、B2O3、Al2O3及びGeO2の全量が80を超える場合、高温におけるガラスの粘度の上昇が生じ、ガラスを溶融させることが困難になる。本発明においてSiO2、B2O3、Al2O3及びGeO2の全量は、好ましくは76-80である。
【0030】
本発明係るガラス組成物の好ましい実施形態は、成分は、モル%で、SiO2が68-73、Al2O3が6.5-9.6、B2O3が0-1.9、Na2Oが13-17.5、K2Oが0.3-1.1、MgOが4-7、ZnOが0.05-2.5、TiO2が0.05-0.8、Y2O3が0-0.5、Ga2O3が0-0.1、GeO2が0-1.1、並びに、SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3からなる群から選択される少なくとも1つの成分であって、含有量がSnO2が0-0.15、Sb2O3が0-0.1、Clが0-0.2、及びSO3が0-0.3である成分を含む。
【0031】
より好ましい実施形態は、Ofの総量値が、モル%で15-19であって、
(Na2O+K2O+0.2MgO+0.2ZnO)/(Al2O3+B2O3+Y2O3+Ga2O3)の比率が1.6-2.6である。
【0032】
さらに好ましい実施形態は、SiO2+B2O3+Al2O3+GeO2の総含有量が、モル%で76-80である。
【0033】
加えて、本発明に係るガラス組成物は、ガラスのスクラッチ耐性及び化学的安定性を改善する作用を有するZrO2をさらに含んでいてもよい。しかし、過度に高含有量のZrO2を含む場合には、ガラスの溶融温度の上昇及びガラス中の不溶性物質の含有量の上昇を引き起こす可能性がある。従って、ZrO2含有量は、0.5未満、好ましくは0.3未満である。
【0034】
明らかに、本発明にかかるガラス組成物において、各成分の含有量の一般的な範囲、好ましい範囲、より好ましい範囲は、要求に応じて組み合わされることが可能であり、これらのガラス組成物も、従って、本発明の範囲に組み込まれる。
【0035】
本発明は、20-400℃における膨張係数が80-100×10-7/℃、密度が2.5g/cm3以上、歪点が540℃を超え、及び溶融温度1720℃以下であることを特徴とするアルカリおよびアルミニウム高含有ケイ酸塩ガラス組成物から得られるガラスをも提供する。
【0036】
好ましい実施形態において、ガラスはさらにヤング係数が70.5-75.5GPaである。
【0037】
前記ガラスはさらに、組成物中のNa2O含有量が13-17.5%の場合、20-400℃における膨張係数が80-94×10-7/℃、及び、組成物中のNa2O含有量が13-16%の場合、20-400℃における膨張係数が80-90×10-7/℃である。
【0038】
本発明にかかるアルカリおよびアルミニウム高含有ケイ酸塩ガラス組成物は、
a. 本発明にかかるガラス組成物の供給、
b. 前記ガラス組成物の溶融、及び、その後における溶融されたガラス組成物の脱気および均質化、
c. 以下のステップのうちのいずれか一つの実施、
得られたガラス組成物のフロート法による板ガラスへの形成、及び、形成されたガラスのアニーリング、又は
得られたガラス組成物の形成用スチール型への注入、形成されたガラスのアニーリング、及び選択的な板ガラスへの形成、
並びに、
d 選択的な前記板ガラスの化学強化処理、
によって製造されうる。
【0039】
本発明にかかるガラスの製造のための装置及び処理条件に関しては、先行技術を参照することができる。例えば、ガラス組成物の溶融工程は、1600℃以上の加熱炉の中で、5-50時間実施されうる。
ガラス板の形成は、フロート法およびフュージョン・オーバーフロー法等の、公知の成形技術によって実施されうる。
ガラスのアニーリングは、例えば、アニーリング炉中で600-700℃、1-3時間、その後、冷却速度1-5℃/分で450-550℃になるまで冷却し、さらに、加熱炉の電源を切り、加熱炉中で室温になるまでガラスを冷却することによって実施されうる。
さらに、“得られたガラス組成物の形成用スチール型への注入、形成されたガラスのアニーリング、及び選択的な板ガラスへの作成”の工程において、ガラスの切断または切削は選択的に目的の厚さのガラスを得るために行なわれる。
本発明において、ガラスの製造方法が特に限定されるものではない。
【0040】
前記ガラスは、450-500℃、5時間以上、KNO3溶融塩中で化学強化に付されてもよい。
そのようにすることで、表面の圧縮応力が300MPa以上、圧縮応力層の厚みが40μm以上にすることができる。化学強化の時間は、例えば、5-20時間、好ましくは5-10時間であってもよい。大きい圧縮応力およびガラス表面に形成された厚い圧縮応力層は有益である。例えば、圧縮応力は300-1000 MPaの範囲、圧縮応力層の厚みは40-100μmの範囲であってもよい。
化学強化された前記ガラスは、例えば、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、タッチスクリーン、プレイステーションポータブル(PSP)、液晶テレビジョン、液晶ディスプレイ機器、ノートブック液晶ディスプレイ、キャッシュディスペンサー及びマルチメディア情報照会装置等のディスプレイ製品のスクリーン表面の保護用のガラス材料として、ダメージから効果的に前記ディスプレイ製品のスクリーン表面を保護するため、及び、製品の寿命と使用効果とを延長するために使用されうる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本実施例は、単なる本発明の例示であって、いかなる意味においても本発明を制限するものではない。
【0042】
表1から6に、本発明における成分の含有量の異なる組み合わせが、ガラスの性能に対して及ぼす影響を明らかにする本発明の実施例を示す。表7は、本発明の範囲からはずれる比較例である。
【0043】
各実施例のガラスサンプルは、以下のように準備された。
高純度ケイ砂、アルミナ、ソーダ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ素、硝酸ナトリウム、酸化スズ、ピロアンチモン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ミラビル石、ZnO、TiO2、Y2O3、Ga2O3、GeO2等を含む使用された出発原料が、表1-7に記載された配合に従い材料として提供された。
500gのガラスを製造するように調整された前記材料は混合され、白金るつぼに入れられ、電気加熱タイプの加熱炉の中に置かれた。前記材料は1550℃、2.5時間溶融され、その後1600℃で2.0時間(1.5時間かけて溶融された際に一度かき混ぜた)、1650℃で1.5時間、計6.0時間高温溶融された。前記材料は排出前に一時間に一度攪拌された。脱気および均一化の後に、前記溶融ガラス組成物はスチール型内に成形のために注がれ、前記ガラスはアニール炉へ置かれ、600-700℃、2時間アニールされた。その後、前記ガラスが冷却速度1℃/分で500℃まで冷却された後、炉の電源を切り、さらに、炉中で室温になるまで前記ガラスは冷却された。アニーリング後、ガラスブロックが得られた。
【0044】
前記ガラスブロックは、性能テスト用に要求される種々のサンプルに加工された。
表1−7は、実施例および比較例中の酸化物の配合(モル%)の詳細及びガラスの特性を示す。
【0045】
(1)歪点Ts[℃]、ガラスが粘度1014.5ポアズの場合の温度;
(2)徐冷点Ta[℃]、ガラスが粘度1013ポアズの場合の温度;
(3)軟化点Tf[℃]、ガラスが粘度107.6ポアズの場合の温度;
(4)作業点Tw[℃]、ガラスが粘度104ポアズの場合の温度;
(5)溶融点Tm[℃]、ガラスが粘度102ポアズの場合の温度;
(6)屈折率nD
(7)20-400℃における平均熱膨張係数[10-7/℃];
(8)ヤング率E[GPa];および
(9)密度ρ[g/cm3]。
【0046】
ガラスの密度ρは、アルキメデス法によって測定された。20-400℃における熱膨張係数は、膨張計を用いて測定され、平均熱膨張係数によって示された。ガラスの徐冷点および歪点は、ASTM C598に準拠したbending beam法によって測定された。ガラスの軟化点はASTM C338-93に準拠した標準試験法によって測定された。ガラスの高温粘度は、ASTM C965-96に準拠した回転シリンダー粘度計を用いて測定された。作業点Tw及びTmはFulcher式(VFT式としても知られている)を用いて算出された。屈折率nDはアッベ屈折計によって測定された。
【0047】
表1−6のデータによれば、本発明にかかるガラスは、20-400℃における熱膨張係数が80-100×10-7/℃、密度が2.5g/cm3以下、歪点が540℃を超え、溶融点が1720℃以下である。また、本発明にかかるガラスは、ヤング率が70.5-75.5GPaである。
【0048】
表1−6は、組成物中のNa2O含有量が13-17.5%の時の20-400℃における熱膨張係数が80-94×10-7/℃、Na2O含有量が13-16%の時の20-400℃における熱膨張係数が80-90×10-7/℃であるガラスをも示す。
【0049】
得られたガラスブロックは、30×40×1.0mmのサイズに加工され、KNO3溶融塩中で、450℃、6時間、イオン交換された。表面の圧縮応力および圧縮応力層の厚みは、表面圧力計を用いて測定された。
表1−6によれば、本発明にかかるガラスサンプルは圧縮応力400-500MPa、圧縮応力層の厚み45-80μmであった。
【0050】
表7に示す比較例において、ガラスの不良は主に、過度に高い溶融温度、過度に低い歪点、不十分な化学的安定性、または、化学強化の不足を含むものである。従って、ガラスは、すべての性能において、本発明にかかるガラスと比べて悪化している。
【0051】
本発明にかかるガラス組成物の種々の実施例は、本発明に適用するためにすべて適していると評価されうる。特に、本発明にかかる種々の実施例は、特定の組み合わせに限定されることなく要求に応じて組み合わせられることは明らかである。

【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モル%で、
SiO2を64.5-73、
B2O3を0-2、
Al2O3を6.5-11.5、
Na2Oを13-19、
K2Oを0.3-1.2、
MgOを3.5-7.2、
ZnOを0.05-2.5、
TiO2を0.05-1、
Y2O3を0-0.6、
Ga2O3を0-0.4、
GeO2を0-1.2、並びに、
SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3からなる群から選択される少なくともいずれか一の成分であって含有量がSnO2が0-0.15、Sb2O3が0-0.1、Clが0-0.5及びSO3が0-0.3である成分、
を含む組成物であって、
SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3の総含有量が、好ましくは0.04-0.5の範囲であることを特徴とするアルカリおよびアルミニウム高含有ケイ酸塩ガラス組成物。
【請求項2】
Na2O、K2O、0.2MgO及び0.2ZnOの総量値がモル%で15-20であり、
及び、(Na2O+K2O+0.2MgO+0.2ZnO)/(Al2O3+B2O3+Y2O3+Ga2O3)の比率が1.5-2.6であることを特徴とする請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
SiO2、B2O3、Al2O3及びGeO2の総含有量がモル%で74.5-80であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス組成物。
【請求項4】
モル%で、
SiO2を68-73、
B2O3を0-1.9、
Al2O3を6.5-9.6、
Na2Oを13-17.5、
K2Oを0.3-1.1、
MgOを4-7、
ZnOを0.05-2.5、
TiO2を0.05-0.8、
Y2O3を0-0.5、
Ga2O3を0-0.1、
GeO2を0-1.1、並びに、
SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3からなる群から選択される少なくともいずれか一の成分であって含有量がSnO2が0-0.15、Sb2O3が0-0.1、Clが0-0.2及びSO3が0-0.3である成分、
を含む組成物であって、
SnO2、Sb2O3、Cl及びSO3の総含有量が、好ましくは0.04-0.5であることを特徴とする請求項1に記載のガラス組成物
【請求項5】
Na2O、K2O、0.2MgO及び0.2ZnOの総量値がモル%で15-19であり、
(Na2O+K2O+0.2MgO+0.2ZnO)/(Al2O3+B2O3+Y2O3+Ga2O3)の比率が1.6-2.6であることを特徴とする請求項4に記載の前記ガラス組成物。
【請求項6】
SiO2、B2O3、Al2O3及びGeO2の総含有量がモル%で76-80であることを特徴とする請求項4又は5に記載のガラス組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のガラス組成物から得られたガラス。
【請求項8】
20-400oCにおける膨張係数が80-100×10-7/℃、密度が2.5g/cm3以下、歪点が540℃を超え、及び溶融温度が1720℃以下であることを特徴とする請求項7に記載のガラス。
【請求項9】
ヤング係数が70.5-75.5GPaであることを特徴とする請求項7又は8に記載のガラス。
【請求項10】
前記ガラスは、厚さ0.5-2.0mmの板ガラスであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項11】
300MPa以上の圧縮応力及び40μm以上の圧縮応力層の厚みが、KNO3溶解塩中での化学強化後に、前記ガラス表面に成された請求項10に記載のガラス。
【請求項12】
a. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガラス組成物の供給、
b. 前記ガラス組成物の溶融、及び、その後の溶融されたガラス組成物の脱気および均質化、
c. 以下のステップのうちのいずれか一つの実施、
得られたガラス組成物のフロート法による板ガラスへの形成、及び、形成されたガラスのアニーリング、又は
得られたガラス組成物の形成用スチール型への注入、形成されたガラスのアニーリング、及び選択的な板ガラスへの作成、
並びに、
d 選択的な前記板ガラスの化学強化処理、
を備えた請求項7乃至11のいずれか一項に記載のガラスの製造方法。
【請求項13】
請求項7乃至11のいずれか一項に記載のガラスの、フラットパネルディスプレイ装置における使用。
【請求項14】
前記ガラスは、タッチスクリーンを備えたディスプレイ製品用の保護部材として作成されることを特徴とする請求項13に記載の使用。

【公開番号】特開2013−47174(P2013−47174A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−183632(P2012−183632)
【出願日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【出願人】(512218979)
【Fターム(参考)】