説明

ガラス繊維の乾式ベール及び有機繊維の不織布を含む複合体

本発明は、乾式ガラス繊維の層と有機繊維の層を備えた複合体の製造方法に関する。この本発明の方法は、連続有機繊維の不織布と予め一体化されていない連続ガラス繊維のベールとの機械的ニードリング又は流体絡合、例えば水流絡合を行ってシートを作ること、次いでこのシートにバインダーを塗布することを含む。ここで機械的ニードリング又は流体絡合においては、有機繊維の不織布とガラス繊維のベールとを重ねて置き、それぞれニードル又は流体若しくは水の噴流を、有機繊維の不織布の側から送る。このような本発明の方法によって得られる複合繊維構造物は、剥離の傾向が小さく、またアスファルト又はビチューメンを含浸させて、屋根用又はシーリング用のカバー又は膜の分野で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根用又はシーリング用膜の分野で使用され、ガラス繊維のベールと有機繊維の不織布を含む複合繊維構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野の屋根用又はシーリング用のカバー又は膜は、ガラス繊維又はポリエステル繊維のベールなどの繊維構造体に、アスファルト又はビチューメンを含浸させることにより生産することができる。これらのガラス繊維は、高い引張強さ、低伸長時の高い引張応力を可能にするが、低い引裂き強さ及び低い耐衝撃穴あけ性を有する。さらにガラス繊維ベールは、その含浸構造体に加工中及び経時的な寸法安定性と、すぐれた難燃性を与える。
【0003】
ガラスベールは、それ自体周知の任意の技術、具体的にはいわゆる乾式技術によって得ることができる。この技術は、ブッシュから融解したガラスを引き出し、それを高圧の蒸気又は空気により細くしてフィラメントにし、そのガラス繊維をコンベヤ上に堆積させ、このベールに接着組成物を塗布し、このベールをオーブン中で乾燥し、次いでこのベールを所望の方法で包装することからなる。
【0004】
この最終製品は、厚さ約0.2〜0.8mmのかなり薄いシートの形態であり、一般にはロールとして包装される。そのバインダーは、尿素−ホルムアルデヒド又はメラミン−ホルムアルデヒド樹脂に基づく水性組成物由来のものである場合が多い。これらの樹脂は、その後のビチューメン含浸のための加工温度において、満足しうる温度耐久能を有する。
【0005】
しかしながらガラスベールは、比較的低い引裂き強さ及び耐衝撃穴あけ性という欠点を有する。これは使いやすさにとっては不利になり、特に処理して膜を形成する間又は例えば屋根の上に敷くときに、ユーザーに注意を払うことを要求する。
【0006】
この欠点を除くために、すぐれた引裂き強さを示す有機繊維に基づくベールを、その組立体に寸法安定性を与えるガラスメッシュと組み合わせた複合基板がある。
【0007】
ガラス繊維ベールの引裂き強さと耐衝撃穴あけ性を改良するために、それらを有機繊維、特にPET(ポリエチレンテレフタラート)などのポリエステルから作られる有機繊維と組み合わせることはすでに考えられてきた。
【0008】
欧州特許公開第0,763,505号は、自己架橋性ビニル添加剤で変性した尿素−ホルムアルデヒドバインダーにより強度を改良したビチューメン屋根板の製造用の湿式ガラス繊維マットについて開示している。このマットでは、繊維のうちの少しが、ガラス繊維から構成されるのではなく、具体的にはナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、又はポリプロピレン繊維などの有機繊維から選択されることができる。
【0009】
フランス特許公開第2,804,677号は、ビチューメン膜の作製に用いることができる繊維を基材とするベールについて教示している。ここでこのベールは、ガラスのステープルファイバーと、バインダーにより相互に接合され、且つ130℃における収縮が5%以下である有機繊維、特にPET繊維とを含む。しかしながら同一層内でガラスとPET繊維を組み合わせることによってこのようなベールの引裂き強さ特性をさらに改良する試みがある。
【0010】
国際公開第01/09,428号及び第01/09,420号は、ニードル接合によりガラスベールをポリエステルベールと組み合わせた構造体を提案している。この教示によればガラスベールは、それをポリエステルベールと組み合わせる前に、バインダーによって相互に組織的に接合されている。
【0011】
国際公開第01/09,421号は、似た構造体を提案しているが、そのガラスベールとポリエステルベールは、流体力学的ニードリングにより接合される。
【0012】
しかしながらこれらの構造体は、層間剥離する一定の傾向がある。
【0013】
米国特許第4522876号(Lydall)は、不織縫合紡織繊維の複合繊維織物について記載している。この複合繊維織物は、積層され縫合された有機紡織繊維の少なくとも1層の有機紡織繊維層と、積層され縫合された長さ1〜10mmのガラスステープルファイバーの少なくとも1層のガラス繊維層と、上記ガラス繊維層中に縫い込まれ且つ実質的にガラス繊維層に貫入して配列されている本質的に上記有機繊維層由来の有機繊維からなる複数個の縫合ステッチとを含む。最終ニードリングの間に、1平方インチ当たり少なくとも700ステッチが、そのガラス繊維層に貫入する。ステープルファイバーを使用するということは、徹底的なニードリングを必要とする。このような高密度のニードリングは、ステープルファイバーを結びつけるために必要だが、幾つかの理由できわめて有害である。すなわち、(a)ガラス繊維が必然的に損傷し、また(b)かなりの量のガラス繊維のダストが生産工場中に発生する。
【0014】
ドイツ実用新案第7739489U号は、合繊繊維のウェブと鉱物繊維のウェブを含むフェルトについて開示している。ニードリングは、有機ウェブの予備一体化のためにのみ提案され、両方の層を結合するためには提案されていない。両方のウェブは、バインダーのみによって接合される。
【0015】
米国特許第5,616,395号(Freudenberg)は、二層織物補強材の生産方法について開示している。この方法は、不織有機繊維布に基づく第1の層を用い、この不織布を機械的又は水力学的接合によって一体化し、そして熱安定化することにある。次いでカウンタ−グルーイング、又はニードリング、又はシーム編みのいずれかによって、この一体化及び熱安定化した第一層を、第二の鉱物繊維層と一緒にして組み立てる。これらのうち後者の2つの組立方法は、第二の鉱物繊維層が、鉱物フィラメントの格子状組織体又は布の形態の場合にのみ用いられる。このカウンタ−グルーイングによる第一の組立方法は、第二の鉱物フィラメント層が、連続又は不連続鉱物繊維の格子状組織体又は布の形態であろうと、あるいは鉱物繊維のスクリムの形態であろうと、その構造に関わらず使用される。従ってこの文書によれば、スクリムを使用する場合にニードリングは薦められず、またさらにニードリングを適用する場合は、カウンタ−グルーイングの後で適用する。この最後の方法は、必然的にそのニードリングマシンのニードルの強い目詰まりを引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、乾式連続ガラス繊維の層と連続有機繊維の層とを組み合わせた層間剥離に対して高度に耐久性のある繊維構造体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば有機繊維の層を、ベールとして堆積されたガラス繊維と重ねて置く。この段階ではガラス繊維は相互に接合していない。次いで一方が他方の上面に重ねて置かれたこれら2枚の構造体を、機械的ニードリング又は流体による絡合、例えば水流絡合を用いて接合する。ここでは、それぞれニードル又は流体若しくは水の噴流が、有機繊維の層に適用される。次いでこうして得られた二層体は、その個々の層のそれぞれの内部だけでなく、様々な層をしっかり結びつけるために、その組立体の結合力をさらに増すことを意図する化学的バインダーを塗布される。このバインダーは、例えば難燃性の改良、ビチューメンとの接着の向上などのために、さらに添加剤を含むことができる。
【0018】
本発明によれば、上記流体ジェット又はニードリングによる接合に先立って乾式ガラス繊維ウェブを予め一体化しないことは、この流体ジェット又はニードリングによる接合をより効果的にすることが分かった。これは、2つの異なる層間の繊維の相互貫入が大きいことを意味する。これに加えて、バインダーをこの2枚の繊維層を含む構造全体に塗布することは、この構造体の結合力を向上させるのに大いに寄与する。従って賢明にもただ1回のバインダー塗布を2種類の繊維が重ね置きされた後に行なった場合、最終構造体は層間剥離する傾向が少ない。さらに、ニードリング後のバインダーの塗布は、ニードリングが構造体に貫入する経路を創り出し、この経路がバインダーの含浸を容易にするので、より効果的であると述べている。
【0019】
機械的ニードリングは、比較的簡単で且つ費用効果が高いので、一般に水流絡合よりも好ましい。しかしながら水流絡合は、大量の水及び水圧のために、より平坦な製品に近づく方法であるかも知れない。
【0020】
「化学的接合」という表現は、それをニードル接合又はステッチ接合などの機械的接合と区別するために用いられることに留意されたい。化学的バインダーは、繊維間で橋かけを形成するように繊維の一部をしっかり被覆することを意図した生成物であるに過ぎず、融解ポリマーならばそれが可能なはずである。
【0021】
本発明に関して使用される有機繊維の不織布は、一般に40〜500g/m、特に80〜300g/mの範囲、例えば約150g/mの単位面積当たりの質量を有する。具体的にはこれは「ベール」であることができる。用語「ベール」は、不織の薄いシートを意味するものと解釈される。
【0022】
本発明は、乾式ガラス繊維の層と有機繊維の層とを備えた複合体の調製方法に関する。この方法は、下記の工程を含む:
(i)連続有機繊維の不織布と予め一体化されていない連続ガラス繊維のベールとを機械的ニードリング又は流体絡合、例えば水流絡合によって接合して二層体を作ること、ここでは、この有機繊維の不織布とガラス繊維のベールとを重ねて置き、それぞれニードル又は流体若しくは水の噴流を、有機繊維のベールの側から送る、次いで
(ii)上記二層体にバインダーを塗布すること。
【0023】
ガラス繊維ベールの製造は、乾燥技術によって、ガラス繊維ベールの製造の分野ではそれ自体在来のものである。これは、ガラスを繊維化すること、及びコンベヤ上でベールを形成することを含む。この段階では、ガラス繊維ベールは相互に接合していない。これは、この段階ではそれぞれのガラス繊維間で橋かけが形成されていないことを意味する。この段階ではガラス繊維ベールは、20〜150g/mの単位面積当たりの質量を有する。
【0024】
次に有機繊維の不織布とガラス繊維ベールとを、これらの一方を他方の上に置くことによって組み合わせる。この有機繊維の不織布をガラス繊維ベールの上に置いても、又はその逆でもよい。
【0025】
有機繊維の不織布は、ガラス繊維ベールと同時に生産されてもよい。
【0026】
しかしながら有機繊維の不織布を、事前に製造し、ロールの形態で保管してもよい。これは、有機繊維のロールを巻き出してガラス繊維ベールと組み合わせるもっと後の段階で使用される。
【0027】
次いで同じ速さで移動するこの2枚の重ねて置かれた構造体は、機械的ニードリング又は流体絡合接合装置を通過する。ニードル又は流体若しくは水の噴流は、これら2枚の重ねて置かれた構造体を、好ましくは有機繊維の不織布の側で突き刺す。これは、有機繊維の不織布がガラス繊維ベールよりもこの処理によく耐えることができることによる。このような機械的ニードリング又は流体絡合による接合は、有機繊維の一部をガラス繊維ベール構造に貫入させる。この貫入は、最終的な複合体内部において、これら2種類の繊維間にすぐれた結合力を提供する。例えば水流絡合による接合は、50〜600バール、特に100〜250バールの範囲、例えば約180バールの水圧で行うことができる。
【0028】
機械的ニードリングを使用することもできる。驚くべきことに比較的わずかなニードリングで十分であり、実際にこれは、繊維(特にガラス繊維)の損傷が少ないので好ましい。一般に、cm当たりの貫入数は、15〜150ステッチ/cmの間の範囲であり、75ステッチ/cm未満でさえ、また50ステッチ/cm未満でさえあることができる。好ましくはステッチの総数は、30〜75ステッチ/cmの範囲であり、これは従来技術、例えば米国特許第4522876号に開示されている範囲よりもかなり小さい。
【0029】
ニードリングは好ましくは、重ね合わされた層を横切るかかりのあるニードルを用いて行う。ここでこれらのニードルは、上記構造体中に在る間は、この構造体の移動方向に移動している。このような機械的ニードリングを行うには、例えばAsselin(グループNSC)により市販されているマシンタイプPA169、PA1500、又はPA2000などのニードリングマシンを用いることができる。これらの型の機械では、ニードルは、構造体中のニードルが移動中の構造体に追随することを可能にする水平成分を有する楕円運動を行う。
【0030】
このような特定のニードリングは、150m/分までの高い生産速度を可能にし、且つ構造体の望ましくない伸長を低減させる。
【0031】
次にバインダーを、両方の層を含む構造体に塗布する。この工程は一般には、バインダー前駆体を塗布し、続いてバインダー前駆体をバインダーに転化させる熱処理を行うことによって行われる。この場合、二層体は、例えばカスケード方式で塗布を行うバインダー前駆体塗布用装置を通過させる。ここでこのカスケード方式は、バインダー前駆体を二層体上に、液体状態(一般に溶液、乳化液、又は分散液の形態)又は泡沫状態で注いで含浸させることを意味する。またここでは、二層体を、バインダー前駆体を入れた液体浴又は泡沫浴中に浸漬し、次いで乾燥してもよい。最終的な構造体中のバインダーの存在は、最終的な用途、すなわち高温のビチューメン又はアスファルト(例えば190℃近い)の含浸においてよりすぐれた寸法安定性を与えるのに役立ち、また層間剥離抵抗を向上させるのにも貢献する。このバインダーは、ビチューメン又はアスファルトの含浸温度において安定である。
【0032】
このバインダーは、ガラス繊維ベール又はポリエステルベール用に通常使用される種類のバインダーであることができる。具体的には、ClariantのMowilith D50やWackerのVinnapas Z54のような中間高分子量の可塑化酢酸ビニル(PVAc);あるいはRohm and HaasのResin HF 05 AやBASFのAcrodur 950 Lなどの自己架橋性アクリル樹脂;あるいはRohm and HaasのAcronal S888SやPrimal HA 12又は16のようなアクリル樹脂類;あるいはBASFのスチレン−ブタジエン樹脂Lutofan DS 2380;あるいはUrecoll 150などの尿素−ホルムアルデヒド樹脂;あるいはBASFのSaduren 163のようなメラミンホルムアルデヒド樹脂であることができる。メラミンホルムアルデヒド樹脂については、欧州特許公開第379100号に、メラミン:ホルムアルデヒドのモル比が1:1〜1:3.5のメラミンホルムアルデヒド予備縮合物の使用が記載されている。本発明者等は、メラミン:ホルムアルデヒドのモル比が1:4〜1:6のこのようなメラミンホルムアルデヒド予備縮合物を用いると、この2層間において最大の層間剥離強度が得られることを見出した。バインダーの使用とニードリングの効果のおかげで、この得られた生成品は、層間剥離測定法DIN 54310では層間剥離することができない。このバインダーはまた、2又はそれよりも多くの種類の成分の混合物であることもでき、具体的にはアクリル樹脂及び/又はポリ酢酸ビニルと、尿素ホルムアルデヒド樹脂又はメラミンホルムアルデヒド樹脂との混合物を使用することができる。過剰のバインダー前駆体は、コンベヤベルトを通じて吸引によって除去することができる。
【0033】
熱処理工程の目的は、水を蒸発させ、且つ様々な成分間の起こり得る化学反応を引き起こすこと、及び/又はバインダー先駆物質をバインダーに転化させること、及び/又はバインダーにその最終的な構造を与えることである。この熱処理は140〜250℃、より一般的には180〜230℃に加熱することによって行うことができる。この熱処理時間は一般に2秒〜3分、より一般的には1分〜2分、例えば200℃で90秒である。この構造体は、空気がコンベヤベルトを通って循環するホットエアオーブン中で熱処理することができる。熱処理はまた、加熱されたロールと接触させることによって行うこともできる。このように加熱したロールを用いる場合、熱処理の間に比較的良好に構造体の寸法を保つことが可能であるので好ましい。
【0034】
2つの層(有機繊維の不織布及びガラス繊維のベール)に加えてこの構造体は、構造体の機械抵抗を向上させるために、両層の間に配置され、ヤーン又は格子状組織体で作られている中間層を有することができる。ヤーンを用いる場合、これら補強用のヤーンは一般に、製造方向と同じ方向を有する(長手方向のヤーン)。これら補強用のヤーン又は格子状組織体はまた、一方又は両方の主な層の中に含ませることもできる。2本の隣り合うヤーンの間隔は、3〜50mmの範囲であることができる。格子状組織体の場合は、それを構成するヤーンの間隔は3〜50mmの範囲であることができる。これらヤーン又は格子状組織体は、ポリエステル又はガラス、あるいは別の高弾性材料から製造することができる。これらヤーン又は格子状組織体は、他の2つの層の組み立ての間に適用することができ、上記2つの層の間、又は一方若しくは両方の主な層の内部に配置される。従ってこれらの補強用のヤーン又は格子状組織体は、これら2つの主な層と同じニードリング又はバインダー塗布の処理を受ける。本発明によるニードリングは、補強用の格子状組織体又はヤーンを損傷しないことが分かった。
【0035】
一般にこの最終複合体の単位面積当たりの質量は、63〜840g/m、より一般的には115〜550g/mの範囲である。この複合体は一般に、下記の要素を有する:
(a)ガラス繊維の可能なサイズ剤を含めて、20〜150g/m、より一般的には30〜100g/mのガラス繊維、
(b)40〜500g/m、より一般的には80〜300g/mの有機繊維、及び
(c)有機繊維の不織布をガラス繊維のベールと組み合わせる以前にその不織布中に含有されていた任意のバインダーを含めて、3〜190g/m、より一般的には5〜150g/mのバインダー。
【0036】
こうして得られた複合体は、下記の特性を有する:
(a)大きい引裂強さ、
(b)大きい引張強さ及び伸び、
(c)すぐれた難燃性、
(d)大きい耐衝撃穴あけ性、
(e)大きい耐層間剥離性、
(f)適切な空気透過性、及び
(g)ビチューメン又はアスファルトによる含浸の間の及び経時的なすぐれた寸法安定性。
【0037】
ガラス繊維の直径は、8〜20μmの範囲、特に10〜16μmの範囲である。これらは理論的には連続的である。これらの実際の長さは一般には10cm〜1mである。通常の当業者にとってこのような長さは、「連続繊維」(例えば10mmより短い長さを有して「短繊維」と呼ばれるステープルファバーに対して)に該当する。このガラス繊維は、例えばE−ガラス又はC−ガラス繊維であることができる。
【0038】
有機繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィンから作ることができるが、ポリエステル、より具体的にはポリエチレンテレフタラート(PET)から作られることが好ましい。これらの繊維の線密度は、2〜30dtex(1dtexは1キロメートル当たり1dgの繊維を表す)の範囲、特に3〜20dtexの範囲であることができる。有機繊維の不織布、従って最終的な複合体中に含有される繊維は、連続的である。
【0039】
ガラス繊維ベールと組み合わせるのに先立って、有機繊維の不織布を、ニードリング、カレンダ加工、水流絡合、又は化学的接合などのよく知られている手段によって予め一体化してもよい。「化学的」バインダーは、有機繊維の不織布の3〜25重量%の範囲の量で存在することができる。しかしながら好ましくは、有機繊維の不織布は、ガラス繊維ベールと組み合わされる以前は化学バインダーを含有しない。これは、この有機繊維の不織布が事前に単にニードリング又は水流絡合されることが好ましいことによる。有機繊維の不織布からバインダーがなくなることによって、二層体上においてより効果的に、ニードリング又は流体絡合による接合が行われる。これによれば更に、本発明による複合体生産の全作業は、ニードリング又は流体絡合により接合された二層体に行われるただ1回のみのバインダー塗布を必要とする。この場合、得られる最終複合シートでは、バインダーがその厚さを通じてほぼ均一に分布している。
【0040】
すべての場合に、ガラス繊維ベールと組み合わせるのに先立って、有機繊維の不織布を予備熱処理、例えばポリエステルの場合には一般に70〜240℃の温度での予備熱処理によって、寸法を安定化させる。これによれば、熱処理を伴う本発明による複合体製造工程の間にその寸法が大きくは変わらない。単独の有機繊維の不織布に対するこのような熱による予処理は例えば、有機繊維の不織布を、加熱された円筒ロールの間又は赤外線パネルの下を通過させることによって、あるいは同様の手段によって行われる。
【実施例】
【0041】
実施例1
ガラスベールを乾式技術により調製した。
【0042】
このガラスベールの表面密度は約50g/mであった。これはバインダーを含有していなかった。このベールをこの状態で、予め加工処理したPET型ポリエステルの不織布、すなわち巻き戻してガラスベールと組み合わせるリールとして事前に製造及び保管されたPET型ポリエステルの不織布と組み合わせた。このポリエステル不織布の単位面積当たりの質量は150g/mであった。このポリエステル不織布の製造においては、予めニードリングによって接合し、次いで180℃で熱処理することによって安定化させた。
【0043】
このPET不織布を、ガラスウェブ上に連続的に巻き出した。次いでこの2枚の重ね置きした布に、その上面、すなわちPET側を通して、水圧180バールでウォータージェット接合操作を施し、次いでこの組立体を、水及び20重量%のバインダーを入れたバインダー浴に通した。このバインダーは、重量単位で、尿素−ホルムアルデヒド樹脂(SadepanのSadecol L5271)を80%、アクリル樹脂(BASFのAcronal 280KD)を10%、ポリ酢酸ビニル(VinavilのVinavil KAR)を10%含む。過剰のバインダーを除去した後で、組立体を一連の加熱ロールの間で乾燥した。
【0044】
最終的な二層体は、バインダーを約16重量%含み、単位面積当たりの質量が240g/mであった。これは、ガラス繊維を約50g/m、PET繊維を約150g/m、バインダーを約40g/m含んでいた。
【0045】
この二層体は下記の特性を有していた:
(a)耐層間剥離:20N/5cm超、
(b)製造方向での20℃における引張強さ:600N/5cm、
(c)製造方向での180℃における引張強さ:160N/5cm、
(d)空気透過性:1700リットル/秒・m
【0046】
これはまた、すぐれた寸法安定性を示し、且つオーブンにおいて180℃で5分間の試験を行ったとき、少しの皺も示さなかった。これは、高温アスファルトを含浸させた場合のすぐれた寸法安定性を意味する。
【0047】
実施例2
この生成品は2段階で製造した。第一の段階、連続ポリエステル(PET)繊維を、それらが普通のマットIを形成するようにしてコンベアベルト上で繊維化することからなる。このマットの重量は160g/mであった。次いで、約15ステッチ/cmでこのマットを予備ニードリングした。その後、このマットを高温ロール装置上で熱処理して安定化した。第二の段階は、このマット上に、重量50g/mの連続ガラス繊維の第二のマットを形成することである。ポリエステルマットを、ガラスを細くして堆積させるプレナムチャンバにベルト上で通過させた。
【0048】
次いでこの二層体を下側からニードリングして、ポリエステル繊維をガラスマット中に、それをかき乱すことなく差し込んだ。ニードリング密度は42ステッチ/cmであり、貫入深さは9mmであった。生成品中の配向を避けるために、ハイパーパンチシステムを備えたディロ(Dilo)・ニードリングマシンを使用した。
【0049】
次の段階はバインダー塗布である。このバインダーは、メラミンホルムアルデヒド樹脂Saduren 163とスチレンブタジエン樹脂Lutofan DS2380との10/90の割合(乾燥重量に基づく)の混合物の水性分散液である。
【0050】
このバインダーをカスケードを通して塗布し、過剰分を吸引装置で除去した。付着したバインダーの固形分は10重量%であった。次いでその生成品を乾燥機に通して高温空気中で乾燥し、そしてバインダーを硬化させた。温度は約220℃であり、また滞留時間は2分であった。次いで製品を巻き取った。
【0051】
最終的な複合シートに関して下記の特性が測定された:
(a)耐層間剥離性:層間剥離不可能、
(b)製造方向での20℃における引張強さ:484N/5cm(横断方向は308N/5cm)、
(c)製造方向での180℃における引張強さ:174N/5cm。
【0052】
これはまた、すぐれた寸法安定性を示し、且つオーブンにおいて180℃で5分間の試験を行ったときに、少しの皺も示さなかった。これは、高温アスファルトを含浸させた場合のすぐれた寸法安定性を意味する。
【0053】
実施例3
実施例2と同じだが、ガラスマット形成の間に、長手方向の補強スレッドをガラス層の厚みの中間部に導入した。この補強材は、68texの連続ガラスヤーンであった。ヤーンの間隔は16mmであった。ニードルの貫入深さは12mmであった。
【0054】
下記の特性が測定された:
(a)耐層間剥離性:層間剥離不可能、
(b)製造方向での20℃における引張強さ:448N/5cm(横断方向は414N/5cm)、
(c)製造方向での180℃における引張強さ:181N/5cm。
【0055】
これはまた、すぐれた寸法安定性を示し、且つオーブンにおいて180℃で5分間の試験を行ったときに、少しの皺も示さなかった。これは、高温アスファルトを含浸させた場合のすぐれた寸法安定性を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)連続有機繊維の不織布と予め一体化されていない連続ガラス繊維のベールとの機械的ニードリング又は流体絡合、例えば水流絡合を行ってシートを作ること、ここでは前記有機繊維の不織布と前記ガラス繊維のベールを重ねて置き、それぞれニードル又は流体若しくは水の噴流をその有機繊維の不織布の側から送る、次いで
(ii)前記シートにバインダーを塗布すること、
を含む、乾式ガラス繊維の層と有機繊維の層を備えた複合体の製造方法。
【請求項2】
貫入数が15〜150ステッチ/cmの範囲の機械的ニードリングを適用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記貫入数が75ステッチ/cm未満であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記貫入数が50ステッチ/cm未満であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
機械的ニードリングを、前記重ね置きした層を横切るかかりのあるニードルによって行い、ここで前記ニードルが前記構造体中に在る間、前記ニードルがその構造体の移動方向に移動していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ヤーン又は格子状組織体から作られる中間層が、前記ガラス繊維の層と前記有機繊維の層との間に配置されるか、又はこれらの層の一方若しくは両方の中間部に含まれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記中間層が、ポリエステル繊維又はガラス繊維から作られていることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
バインダー前駆体の塗布、及び続く熱処理によってバインダーを塗布することを特徴とする、請求項1〜7いずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記有機繊維の不織布を、前記ガラス繊維との重ね置き以前に予め一体化しないことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記複合シートの単位面積当たりの質量が、63〜840g/mの範囲であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記複合シートの単位面積当たりの質量が、115〜550g/mの範囲のであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複合シートが、
(i)20〜150g/mのガラス繊維、
(ii)40〜500g/mの有機繊維、
(iii)3〜190g/mのバインダー、
を含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
製造速度が、少なくとも10m/分であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
乾式の予め一体化されていない連続ガラス繊維のベールの層と連続有機繊維の不織布の層とを備えた複合シートであって、前記層が、機械的ニードリング又は流体絡合、及び化学的接合によって相互に接合されている、複合シート。
【請求項15】
ヤーン又は格子状組織体から作られている中間層が、前記ガラス繊維の層と前記有機繊維の層との間に配置されるか、又はこれらの層の一方若しくは両方の中間部に含まれていることを特徴とする、請求項14に記載の複合シート。
【請求項16】
前記中間層が、ポリエステル繊維又はガラス繊維から作られることを特徴とする、請求項15に記載の複合シート。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法により得られる複合シート。
【請求項18】
前記バインダーが、複合シートの厚さを通じてほぼ均一に分布していることを特徴とする、請求項14〜17のいずれかに記載の複合シート。
【請求項19】
単位面積当たりの質量が、63〜840g/mの範囲であることを特徴とする、請求項14〜18のいずれかに記載の複合シート。
【請求項20】
単位面積当たりの質量が、115〜550g/mの範囲であることを特徴とする、請求項14〜19のいずれかに記載の複合シート。
【請求項21】
(i)20〜150g/mのガラス繊維、
(ii)40〜500g/mの有機繊維、及び
(iii)3〜190g/mのバインダー、
を含有することを特徴とする、請求項14〜20のいずれかに記載の複合シート。
【請求項22】
請求項14〜21のいずれかに記載の複合シートと、アスファルト又はビチューメンとを含む、屋根用又はシーリング用のカバー又は膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)重ねて配置されている連続有機繊維の不織布と予め一体化されていない連続ガラス繊維のベールとに、75ステッチ/cm未満の貫入数でニードルを前記有機繊維の不織布の側から送ることによって機械的ニードリングを行ってシートを作ること、次いで
(ii)前記シートにバインダーを塗布すること、
を含む、乾式ガラス繊維の主な有機繊維の主な、及び随意にヤーン又は格子状組織体から作られ、且つ前記2つの主な層の間に配置されるか、又はこれらの主な層の一方若しくは両方の中に配置されている中間層を備えている複合体の製造方法。
【請求項2】
前記貫入数が50ステッチ/cm未満であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記貫入数が15ステッチ/cm超であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記機械的ニードリングを、前記重ね置きした層の構造体を横切るかかりのあるニードルによって行い、ここで前記ニードルが前記構造体中に在る間、前記ニードルがその構造体の移動方向に移動していることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
(i)重ねて配置されている連続有機繊維の不織布と予め一体化されていない連続ガラス繊維のベールとに、50〜600バールの圧力で流体の噴流を前記有機繊維の不織布の側から送ることによって、流体絡合、例えば水流絡合を行って、シートを作ること、次いで
(ii)前記シートにバインダーを塗布すること、
を含む、乾式ガラス繊維の主な有機繊維の主な、及び随意にヤーン又は格子状組織体から作られ、且つ前記2つの主な層の間に配置されるか、又はこれらの主な層の一方若しくは両方の中に配置されている中間層を備えた複合体の製造方法。
【請求項6】
前記流体の圧力が100〜250バールであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ヤーン又は格子状組織体から作られる中間層が、前記ガラス繊維の層と前記有機繊維の層との間に配置されるか、又はこれらの層の一方若しくは両方に含まれることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記中間層が、ポリエステル繊維又はガラス繊維から作られていることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
バインダー前駆体の塗布、及び続く熱処理によって、前記バインダーを塗布することを特徴とする、請求項1〜いずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記有機繊維の不織布を、前記ガラス繊維のベールとの重ね置き以前に予め一体化しないことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記複合シートの単位面積当たりの質量が、63〜840g/mの範囲であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記複合シートの単位面積当たりの質量が、115〜550g/mの範囲のであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複合シートが、
(i)20〜150g/mのガラス繊維、
(ii)40〜500g/mの有機繊維、
(iii)3〜190g/mのバインダー、
を含有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
製造速度が、少なくとも10m/分であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
乾式の予め一体化されていない連続ガラス繊維のベールの主な層、連続有機繊維の不織布の主な層、及び随意にヤーン又は格子状組織体から作られ、且つ前記2つの主な層の間に配置されるか、又はこれらの主な層の一方若しくは両方の中に配置されている中間層を備えている複合シートであって、前記層が、ニードル又は流体を前記有機繊維の不織布の側から送る機械的ニードリング又は流体絡合、及び化学的接合によって相互に接合されている、複合シート。
【請求項16】
ヤーン又は格子状組織体から作られている中間層が、前記ガラス繊維の層と前記有機繊維の層との間に配置されるか、又はこれらの層の一方若しくは両方に含まれていることを特徴とする、請求項15に記載の複合シート。
【請求項17】
前記中間層が、ポリエステル繊維又はガラス繊維から作られていることを特徴とする、請求項16に記載の複合シート。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかに記載の方法により得られる複合シート。
【請求項19】
前記バインダーが、複合シートの厚さを通じてほぼ均一に分布していることを特徴とする、請求項15〜18のいずれかに記載の複合シート。
【請求項20】
単位面積当たりの質量が、63〜840g/mあることを特徴とする、請求項15〜19のいずれかに記載の複合シート。
【請求項21】
単位面積当たりの質量が、115〜550g/mあることを特徴とする、請求項15〜20のいずれかに記載の複合シート。
【請求項22】
(i)20〜150g/mのガラス繊維、
(ii)40〜500g/mの有機繊維、及び
(iii)3〜190g/mのバインダー、
を含有することを特徴とする、請求項15〜21のいずれかに記載の複合シート。
【請求項23】
請求項15〜22のいずれかに記載の複合シートと、アスファルト又はビチューメンとを含む、屋根用又はシーリング用のカバー又は膜。

【公表番号】特表2006−517267(P2006−517267A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501759(P2006−501759)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001109
【国際公開番号】WO2004/071760
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(501399290)サン−ゴバン ベトロテックス フランス ソシエテ アノニム (33)
【Fターム(参考)】