説明

ガラス繊維バグフィルタの収納体

【課題】ガラス繊維バグフィルタをコンパクトに収納することが可能であり、省スペース化が図れる。
【解決手段】ガラス繊維を素材とした中空円筒状のろ布本体11とろ布本体の上端又は下端の少なくとも何れか一方に装着された円環部材12とを備えたガラス繊維バグフィルタ10を、長手方向に円環部材を中心として、折れ曲がり角が形成されないように且つ底面が外側に露出するように全長を渦巻き状に捲回したガラス繊維バグフィルタ収納体であって、少なくとも3面を有してガラス繊維バグフィルタを収納する収納容器34を備え、収納容器により形成された収納空間内に捲回したガラス繊維バグフィルタが収納されてなるか若しくは前捲回したガラス繊維バグフィルタの外周囲を固定部材により囲繞してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維をろ布素材として中空円筒状に形成されたガラス繊維バグフィルタの収納体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、含塵気流から塵や粉体をろ過・捕集する装置としてバグフィルタを用いた除塵装置が広く用いられている。通常、このような除塵装置は、有底円筒状又は中空円筒状のバグフィルタが装置内に複数吊り下げられた状態で使用され、装置内に導入された含塵ガスがバグフィルタの外部から内部に通過する際に、ガス中の塵や粉体が外表面に捕集されるようになっている。ろ布素材としては、ガラス繊維やPTFE及びその他有機系繊維の織布又は不織布が一般的に用いられるが、例えば各種排ガスの除塵に用いられるバグフィルタのように、使用環境が比較的高温下である場合には、耐熱性に優れ且つ安価なバグフィルタとして、ガラス繊維の織布が好適に採用される。
【0003】
しかし、ガラス繊維バグフィルタは耐折れ性の面で他のバグフィルタよりも劣っているという問題がある。除塵装置の使用中にバグフィルタの破損が生じると、一時的に集塵されない排ガスが大気中に放出される惧れがあるため、定期的にバグフィルタを交換することで、このような不具合を未然に防止するようにしているが、最近はコスト低減のためにも交換周期を長くすることが望まれている。そこで、耐久性の向上を図ったバグフィルタのろ布素材について、特許文献1(特開平6−39220号公報)、特許文献2(特開2005−133272号公報)等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−39220号公報
【特許文献2】特開2005−133272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2は、ろ布素材自体の耐久性を向上させる技術であり、使用前に折り畳み保管することによる耐久性の低下に関しては言及されていない。即ち、使用前に折り畳んだ状態で、特に数個を積み重ね長期保管すると、耐久性を向上させたろ布素材であっても折り目部分の引張り強度が著しく低下し、バグフィルタ使用中に破断するという欠点が残る。図8に従来のガラス繊維バグフィルタの収納状態を示す。図8(a)、(b)に示すように、ろ布本体11を折り畳んだ際に、折り目15の折り角θが0°に近い鋭角で折れ曲がることとなり、さらに最も負荷がかかる両端折り目部分が点として応力集中するため、ガラス繊維の強度低下が引き起こり耐久性の低下につながる。
ところが、この長期保管に伴う強度低下についてはこれまで有望な対策が無かったため、ガラス繊維バグフィルタを採用する場合は以下の方法を採らざるを得なかった。
(1)更新時期に必要数量を購入し、一度に全てのバグフィルタを交換する。
(2)予算的に必要数量の確保が困難な場合は、段階的に購入し長期保管しておいたバグフィルタを短寿命で用いる。
(3)購入可能な数量の範囲で適宜バグフィルタを交換していく。
【0006】
バグフィルタ更新によるろ布交換においては、例えば、廃棄物焼却炉のように連続運転で稼働率が高いものは作業時間を確保しにくく、また頻繁に交換する場合は交換コストが増大するため、ある程度の数量をまとめて交換することが効果的となる。この際、通常のガラス繊維バグフィルタの寿命は数年であることから、数年毎に交換を行うことになる。
ところが、上記(1)〜(3)は以下のような問題がある。
(1)の場合は、数年後毎にまとまったバグフィルタ購入費用が必要となることから自治体等では予算確保の面で負担となる。(2)の場合は、長期保管により強度低下したバグフィルタを用いるため寿命が短くなり、ろ布交換頻度が高くなることでコスト増大に繋がる。(3)の場合は、バグフィルタを一定量毎に頻繁に交換する作業が発生するため、交換作業コストが割高となるとともに廃棄物焼却炉等においては稼働率の低下となる。
【0007】
例えば排ガス処理に用いられるバグフィルタは、ガス処理量等の条件によるが、一般的に直径10〜20cm、長さが4〜6m程度の中空円筒形であり、さらに一基の除塵装置につき数十〜数百本程度必要とされるため、長期保管する際には折り畳むことが不可欠である。このように一基の除塵装置に対してバグフィルタが多数必要とされるため、保管する際に場所を取るという問題もあった。一般にガラス繊維バグフィルタは、除塵装置への取付けを簡易にするため、ろ布本体の上端側に金属製のスナップリングが縫い込まれて底面が共布により閉塞された構成、又は、下端側若しくは上端側と下端側の両方に金属製のスナップリングが縫い込まれた構成を有する。従って、ろ布本体はコンパクトに折り畳めても、スナップリングが嵩張り省スペース化が困難であるという問題も有していた。
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、ガラス繊維バグフィルタを折り畳んで長期保管しても極端な強度劣化を生じることがなく、さらに省スペース化を図ることができるガラス繊維バグフィルタの収納方法及び該収納体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、ガラス繊維を素材とした中空円筒状のろ布本体と該ろ布本体の上端又は下端の少なくとも何れか一方に装着された円環部材とを備えたガラス繊維バグフィルタを、長手方向に前記円環部材を中心として、折れ曲がり角が形成されないように且つ底面が外側に露出するように全長を渦巻き状に捲回したガラス繊維バグフィルタ収納体であって、
少なくとも3面を有して前記ガラス繊維バグフィルタを収納する収納容器を備え、該収納容器により形成された収納空間内に前記捲回したガラス繊維バグフィルタが収納されてなることを特徴とするガラス繊維バグフィルタ収納体を提案する。
【0009】
又本発明は、ガラス繊維を素材とした中空円筒状のろ布本体と該ろ布本体の上端又は下端の少なくとも何れか一方に装着された円環部材とを備えたガラス繊維バグフィルタを、長手方向に前記円環部材を中心として折れ曲がり角が形成されないように且つ底面が外側に露出するように全長を渦巻き状に捲回したガラス繊維バグフィルタ収納体であって、
前記捲回したガラス繊維バグフィルタの外周囲を固定部材により囲繞してなることを特徴とするガラス繊維バグフィルタ収納体を提案する。
【0010】
本発明によれば、ガラス繊維バグフィルタを、長手方向に前記円環部材を中心として折れ曲がり角が形成されないように且つ底面が外側に露出するように全長を渦巻き状に捲回したガラス繊維バグフィルタ収納体であるために、折り角θが0°に近い鋭角で折れ曲がることがなくなり、長期に亘る保管においてろ布破断の起点となる極端な強度低下箇所がなくなる。また手間が掛からず簡単に収納でき、また梱包時間が短縮される。また、螺旋状に折り畳む場合には、円環部材が中心に位置するように折り畳むことが好ましい。
【0011】
本発明では、ガラス繊維バグフィルタを、長手方向に前記円環部材を中心として渦巻き状に捲回したガラス繊維バグフィルタ収納体であるために、ずれによるろ布折れ曲がりの発生防止を図ることができる。
【0012】
さらにこれらの発明において、前記円環部材収容空間に乾燥剤を配置することが好ましい。
本発明によれば、ガラス繊維バグフィルタの水蒸気による応力腐食を防止することができ、湿度上昇等の保管条件の変化に関わらず、品質を維持した長期保管が可能となる。
【0013】
又本発明によれば、仕切り壁を用いた場合と同様に、折り角θが鋭角で折れ曲がることがなくなり、長期に亘る保管においてろ布破断の起点となる極端な強度低下箇所がなくなる。また、ろ布本体が連続的にカーブを描いて渦巻き状になるように捲回しているため、全体が立方体に近いコンパクトな形状となり、収納空間の削減が図れるとともに、巻き取りを固定するだけの簡単な器具で済む。さらに収納容器の一面以上を開放してもよく、これによりバグフィルタの出し入れが容易となり、これら容器はダンボール等の中に積層して運搬保管することができ、バグフィルタ自体には荷重がかからず強度低下を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
以上記載のごとく本発明によれば、ガラス繊維バグフィルタの長期保管による強度低下を防止できる。さらに、長期保管したバグフィルタでも新品同様の寿命が確保でき、ろ布交換頻度増大によるコストアップがなくなり経済的である。これによりバグフィルタの交換時に予算的に必要数量を一気に確保することが困難な場合でも、段階的に購入し長期保管することが可能となり、予算確保の負担が軽減される。またその結果、バグフィルタの交換作業に伴う廃棄物焼却炉のような稼働率の低下を抑制できる。さらにまた、本発明ではガラス繊維バグフィルタをコンパクトに収納することが可能であり、省スペース化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の参考例1に係るガラス繊維バグフィルタの折り畳み状態を示し、(a)は治具を介装したバグフィルタの斜視図、(b)は(a)のA−A線断面を示す模式図である。
【図2】本発明の参考例1に係るガラス繊維バグフィルタ収納体を示し、(a)は治具を直線的に配置した図、(b)は治具を位置ずれ配置した図、(c)は2の治具にバグフィルタを捲回させた図である。
【図3】本発明の参考例1の他の形態に係り、(a)は半円筒状治具の斜視図、(b)は円筒状治具の斜視図、(c)は一体型治具の斜視図、(d)は(a)の治具にバグフィルタを捲回した状態を示す側面図、(e)は(c)の治具にバグフィルタを捲回した状態を示す側面図である。
【図4】本発明の参考例2に係るガラス繊維バグフィルタの折り畳み状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の参考例3に係るガラス繊維バグフィルタ収納体を示し、(a)は収納棚に収納した状態を示す斜視図、(b)は側断面図である。
【図6】本発明の実施例に係るガラス繊維バグフィルタ収納体を示し、(a)は収納容器に収納した状態を示す側面図、(b)は斜視図、(c)は別の形態を示す斜視図である。
【図7】ガラス繊維バグフィルタの概略斜視図である。
【図8】従来のバグフィルタ収納状態を示し、(a)はバグフィルタの折り畳み状態を示す斜視図、(b)は折り角θを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の参考例1に係るガラス繊維バグフィルタの折り畳み状態を示す図、図2は本発明の参考例1に係るガラス繊維バグフィルタ収納体を示す図、図3は本発明の参考例1の他の形態に係るガラス繊維バグフィルタ収納体を示す図、図4は本発明の参考例2に係るガラス繊維バグフィルタの折り畳み状態を示す図、図5は本発明の参考例3に係るガラス繊維バグフィルタ収納体を示す図、図6は本発明の実施例に係るガラス繊維バグフィルタ収納体を示す図、図7はガラス繊維バグフィルタの概略斜視図である。
【0017】
図7に示すように、本実施例に係るガラス繊維バグフィルタ10は、ろ布本体11と、該ろ布本体11の上端側開口部に装着された円環部材12と、下端側開口部を塞ぐ底面13と、から構成される。前記底面13側にも円環部材12が装着されていてもよい。該円環部材12は円環状に形状保持される材質、例えば金属等が用いられ、さらに弾性を有することが好ましい。前記ろ布本体11はガラス繊維クロスを素材とし、これを中空円筒状に縫製して形成される。一例として、焼却炉排ガス処理の除塵装置に用いられるガラス繊維バグフィルタ10は、ろ布本体11の内径が100〜200mm、長さが約4〜6mの長尺状に形成され、これが一基の除塵装置に200〜1000本程度吊架される。
尚、本実施例では、ろ布本体11の上端側に円環部材12を装着し、底面を塞いだ構成としているが、これに限定されるものではなく、上端若しくは下端の少なくとも一方に円環部材12が装着された中空円筒状若しくは有底円筒状であれば何れでもよく、他にも下端側に円環部材12が装着されて底面が開放された構成、下端と上端の両端に円環部材12が装着された構成等がある。
【参考例1】
【0018】
図1及び図2に本参考例1に係るガラス繊維バグフィルタ収納体を示す。図1(a)に示すように、まず中空円筒状のろ布本体11を平坦状に軽く潰した後、該ろ布本体11の一端側を他端側へ重合させるようにして長手方向に折り畳む。この時、折り目15の内側に緩衝用治具20を当接させた状態で折り畳む。該緩衝用治具20は、図1(b)に示すように、該治具20を挟持したバグフィルタ10の折り角θ’の鋭角が緩和され、略R状となるような大きさ、形状を有する。緩衝用治具20の形状としては、例えば円柱型、楕円柱型、半円柱型、筒型等が挙げられる。また緩衝用治具20は、平坦状に潰したろ布本体11の幅と略同一若しくは僅かに長い寸法を有するものとする。該緩衝用治具20の材質は、金属、プラスチック、ウレタンやゴムなどの高分子材料、紙、布等の何れでもよく、他にも気泡性シートをろ布本体11に折り込んで折り角θ’を緩和するようにしてもよい。
【0019】
具体的なガラス繊維バグフィルタ収納体10の構成を図2に示す。
図2(a)は、ろ布本体11に緩衝用治具20を当接させて、該緩衝用治具20が折り目内側に位置するように折り畳む。これをろ布本体11の一端側から長手方向に順次行い、全長を折り畳んで蛇腹状とする。本参考例では、緩衝用治具20は鉛直方向に略一直線状に位置するようにバグフィルタ収納体10に介装される。
図2(b)は、(a)と同様にろ布本体11に緩衝用治具20を当接させた状態で長手方向に蛇腹状に折り畳んでおり、この時、緩衝用治具20を鉛直方向に位置ずれさせて配置している。これにより、折り畳んだバグフィルタ収納体10の厚みが小さくなり、コンパクト化が図れる。
図2(c)は、円環部材12側から折り畳みを開始し、折り目内側に緩衝用治具20を当接させて折り畳む。所定間隔だけ離間させた2の緩衝用治具20にろ布本体11を捲回させ、底面13が外側に露出するように折り畳む。本実施例では、一本のガラス繊維バグフィルタ収納体10に対して2の緩衝用治具20のみ使用する。これにより、緩衝用治具20の使用数を低減できるとともに、収納体10の省スペース化が図れる。
【0020】
また、参考例1の他の形態を図3に示す。図3(a)は半円筒状治具の斜視図、(b)は円筒状治具の斜視図、(c)は一体型治具の斜視図、(d)は(a)の治具にバグフィルタを捲回した状態を示す側面図、(e)は(c)の治具にバグフィルタを捲回した状態を示す側面図である。
図3(a)に示すように、緩衝用治具21は、所定間隔だけ離間させた2の半円筒部材21aを棒状結合部材21bで結合して一体化した構造を有し、該半円筒部材21aの曲面は互いに外側に向けられて結合されている。該半円筒部材21aの離間距離はろ布本体11の折幅に相当する。該緩衝用治具21を用いたガラス繊維バグフィルタ収納体10を図3(d)に示す。同図に示すように、半円筒部材21a、21aの間に形成された円環部材収容空間210に円環部材12を収容し、さらに該円環部材12に連結されるろ布本体11を緩衝用治具21に捲回してバグフィルタ収納体10を形成する。これにより、バグフィルタ収納体10の内部に環状部材収容空間が形成されるとともに、ろ布本体11の折り目がR状となり、折り角θ’が緩和されて長期保管時の強度低下を防止することができる。
同様に、図3(b)に示す緩衝用治具22は、2の円筒部材22aを棒状結合部材22bで結合して一体化した構造を有する。このように、折り目15に当接する部材22aは、ろ布本体11の折り目を緩和させる形状、大きさであれば何れでも良く、図3(a)と同様の効果を得ることができる。
【0021】
図3(c)に示す緩衝用治具23は、一の板状部材の両端側を曲折させて、中央に環状部材収容空間230を形成させた構造を有する。該緩衝用治具23を用いたガラス繊維バグフィルタ収納体10を図3(e)に示す。同図に示すように、環状部材12を環状部材収容空間230に収容した状態でろ布本体11を緩衝用治具21に捲回し、バグフィルタ収納体10を形成する。これにより、図3(a)、(b)の場合と同様の効果を得ることができる。
【0022】
また、本実施例において、緩衝用治具20、21、22、23内部又は表面、若しくは円環部材収容空間210、230に乾燥剤を配置するようにしてもよい。乾燥剤としては、シリカゲル、生石灰、塩化カルシウム、ゼオライト等が挙げられる。これにより、ガラス繊維バグフィルタの水分による応力腐食を防止することができ、湿度上昇等の保管条件の変化に関わらず、品質を維持した長期保管が可能となる。
また、ガラス繊維バグフィルタ収納体10をアルミ、ビニール等の梱包材料により通気遮断梱包することも好適である。これにより、バグフィルタ収納体10が水蒸気に曝されることがなく、完全な応力腐食の防止が期待できる。このとき、ドライ空気、窒素によるパージをしてもよい。尚、この乾燥剤の利用については、以下の参考例2〜実施例においても適用可能である。
【参考例2】
【0023】
図4に本参考例2に係るガラス繊維バグフィルタを示す。本参考例は、可撓性を有する長尺棒状の緩衝用治具24を用い、該緩衝用治具24をろ布本体11の長手方向に沿って挿入し、長手方向の2箇所の折り目に当接させる。その後、ろ布本体11を長手方向に折り畳むことで折り角を緩和し、長期保管時の強度低下を防止する。本実施例によれば、ろ布本体11の幅方向の折り目15を緩和できるとともに、緩衝用治具24により長手方向の折り目に対してもその強度低下を防止可能である。
【参考例3】
【0024】
図5に参考例3に係るバグフィルタ収納体を示す。図5(a)は収納棚に収納した状態を示す斜視図、(b)は側断面図である。
本参考例では、予めろ布本体11の長手方向に複数回折り畳んだバグフィルタ10を、収納棚30に収納し、保管する。
収納棚30は、支柱31に固定された仕切り板32が所定間隔に複数配置された構造を有する。該仕切り板32は環状部材12の高さより大きい間隙を有する。この間隙がバグフィルタ収納空間となる。
仕切り板32は、収納されたバグフィルタ10の少なくとも一部を支持し、複数収納したバグフィルタ10の互いの荷重が加わらないようにする。例えば、該仕切り板32は、図5(a)に示すようにバグフィルタ10の全面を支持するように構成してもよいし、図5(b)に示すようにバグフィルタの折れ目15部分のみを支持するように構成してもよい。また、前記仕切り板32は水平方向若しくは鉛直方向の何れの方向にも設置可能であり、それぞれの仕切り板は解体することができる。
また、前記収納棚30を、ダンボール箱40に収納する場合には、下方のバグフィルタには荷重がかからないように配置することが好ましい。
【0025】
本参考例によれば、仕切り板32により固定された収納空間を形成することにより、ろ布本体11の折り目15に自重以外の荷重がかからないため、極端な強度低下を防止できる。
また、仕切り板32を収納したダンボール40等を積層して保管することが可能となり、保管スペースを低減できる。特に仕切り板32をダンボール40内に挿入する場合、保護が必要な折り畳み部分以外は板が存在しないように構成することも好適であり、これにより全体のコンパクト化が図れる。
尚、本参考例3では、上記した参考例1及び参考例2に記載したバグフィルタ収納体10を、前記収納棚30に収納することも好ましく、より一層の強度低下防止が達成できる。
【実施例】
【0026】
図6に本実施例に係るバグフィルタ収納体を示す。図6(a)は収納容器に収納した状態を示す側面図、(b)は斜視図、(c)は別の形態を示す斜視図である。
本実施例では、まずバグフィルタのろ布本体11を平坦状に軽く潰した後、環状部材12を中心にして、折れ曲がり角が形成されないように連続的に巻き取り、底面13が外側に露出するように全長を捲回する。その後、収納容器34により形成された収納空間に前記バグフィルタ10を収納する。
収納容器34は、少なくとも3面以上を有し、前記バグフィルタ10に荷重が加わらないように固定空間を形成する構成となっている。該収納容器34は複数のバグフィルタが収納される大きさであってもよい。さらにリング状の容器に収納することや外周をマジックテープ(登録商標)等で巻いて収納されてもよい。
【0027】
本実施例の具体的構成としては、図6(b)に示すように、バグフィルタの3側面において夫々の面の一部のみを囲繞する容器34や、図6(c)に示すような底面と3側面からなる容器などが挙げられる。
本実施例によれば、参考例3と同様に、折り角θ’が鋭角で折れ曲がることがなくなり、長期に亘る保管においてろ布破断の起点となる極端な強度低下箇所がなくなる。また、ろ布本体が連続的にカーブを描いて渦巻き状になるように捲回しているため、全体が立方体に近いコンパクトな形状となり、収納空間の削減が図れるとともに、巻き取りを固定するだけの簡単な器具で済む。さらに収納容器34の一面以上を開放することによりバグフィルタの出し入れが容易となり、これら容器はダンボール等の中に積層して運搬保管することができ、バグフィルタ自体には荷重がかからず強度低下を防止できる。
【0028】
(強度比較試験)
比較例として従来の方法で長期保管したガラス繊維バグフィルタを用い、本実施例にて長期保管したガラス繊維バグフィルタとの強度比較試験を行った。試験は、最も荷重の加わる折り目部分を含むろ布本体11の引張り強さ測定(たて方向)を行い、両者の残存強度測定を行った。
比較例として、バグフィルタを平坦状に潰した後、長手方向に6つ折(6層)に折り畳んだものをダンボールに8個(横2列×高さ4段)入れて梱包し、ダンボールを4段積みとした状態で、通風のよい湿気の無い箇所で1年保管したガラス繊維バグフィルタを用いる。
【0029】
本実施例には、参考例1Aとして図2(c)、参考例1Bとして図3(e)、参考例2として図4、参考例3として図5(a)、実施例として図6(c)に夫々示すバグフィルタ収納体を用いた。参考例1A、1B、参考例2、参考例3については、比較例と同様に長手方向に6つ折(6層)に折り畳んだものをダンボールに8個(横2列×高さ4段)入れて梱包し、ダンボールを4段積みとした状態で保管した。実施例は、ダンボールに8個(縦2列×横2列×高さ2段)入れて梱包し、ダンボールを4段積みとした状態で保管した。また、何れの実施例でも、通風のよい湿気の無い箇所で1年保管したガラス繊維バグフィルタを用いた。
【0030】
測定方法は、試験装置:定速荷重引張り試験機、試験片:長さ250mm、幅25mm つかみ治具間隔:150mm、引張り速度:20cm/minとした。
測定結果を以下に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
このように、比較例では引張り強さが低下するのに対し、実施例では引張り強さの低下がほとんどなく、長期保管が可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ガラス繊維バグフィルタを用いる除塵装置全般に適用できるが、特に高温雰囲気での使用に適しており、焼却炉、溶融炉、ガス化炉等の各種熱処理炉における排ガス処理設備や製薬・化学工業設備などに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
10 ガラス繊維バグフィルタ
11 ろ布本体
12 円環部材
13 底面
15 折り目
20、21、22、23、24 緩衝用治具
210、230 円環部材収容空間
30 収納棚
32、33 仕切り板
34、35 収納容器
40 ダンボール箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維を素材とした中空円筒状のろ布本体と該ろ布本体の上端又は下端の少なくとも何れか一方に装着された円環部材とを備えたガラス繊維バグフィルタを、長手方向に前記円環部材を中心として、折れ曲がり角が形成されないように且つ底面が外側に露出するように全長を渦巻き状に捲回したガラス繊維バグフィルタ収納体であって、
少なくとも3面を有して前記ガラス繊維バグフィルタを収納する収納容器を備え、該収納容器により形成された収納空間内に前記捲回したガラス繊維バグフィルタが収納されてなることを特徴とするガラス繊維バグフィルタ収納体。
【請求項2】
ガラス繊維を素材とした中空円筒状のろ布本体と該ろ布本体の上端又は下端の少なくとも何れか一方に装着された円環部材とを備えたガラス繊維バグフィルタを、長手方向に前記円環部材を中心として折れ曲がり角が形成されないように且つ底面が外側に露出するように全長を渦巻き状に捲回したガラス繊維バグフィルタ収納体であって、
前記捲回したガラス繊維バグフィルタの外周囲を固定部材により囲繞してなることを特徴とするガラス繊維バグフィルタ収納体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−93615(P2011−93615A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256330(P2010−256330)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【分割の表示】特願2005−305582(P2005−305582)の分割
【原出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】