説明

ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物及び成形体

【課題】機械的強度、耐衝撃性に優れた成形体を製造可能で、加工性に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリアミド樹脂と、(B)ガラス繊維とを含むポリアミド樹脂組成物であって、前記(B)ガラス繊維は、下記(b−1)のガラス繊維及び下記(b−2)のガラス繊維を含む、ポリアミド組成物。
(b−1):カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを含む共重合体を含む集束剤を含有するガラス繊維。
(b−2):ポリカルボジイミド化合物を含む集束剤を含有するガラス繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリアミド樹脂やポリエステル樹脂は、優れた機械的特性(機械的強度、剛性や耐衝撃性等)を有することから、様々な産業分野で利用されている。
特に、ポリアミドは、機械的特性を高める目的で、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維や層状無機化合物等の無機化合物フィラーと複合化して用いられることが多い。このうち、無機化合物としてガラス繊維と複合化する場合には、ポリアミドと複合化した際の界面状態を改質するために、シランカップリング剤やフィルム形成剤が一般に用いられている。
【0003】
さらに、ポリアミド樹脂の機械的特性を一層向上させる技術として、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する技術が注目されている。
例えば、無水マレイン酸及び不飽和単量体の共重合体並びにシラン系カップリング剤を主たる構成成分とするガラス繊維集束剤で表面処理したガラス繊維と、ポリアミド樹脂とを複合化する。これにより、耐不凍液性を向上させるという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、シランカップリング剤の末端にアリル基を導入した化合物を使用することにより、溶融ポリアミド樹脂中のガラス繊維の流動性を高める技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、ポリカルボジイミド樹脂、ポリウレタン樹脂やシランカップリング剤を用いて、ガラス繊維表面とポリアミド樹脂との耐水性を高める技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−128479号公報
【特許文献2】特開2000−303359号公報
【特許文献3】特開平9−227173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車部品や各種電子部品等にポリアミド樹脂組成物を用いる場合、機械的強度、耐衝撃性及び加工性が高いレベルで求められる。
しかしながら、上記従来の技術では、かかるレベルに達するポリアミド樹脂組成物を安定的に得ることができない。そのため、上記の部品に適用可能なガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の安定供給に対する要求が高まっている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、機械的強度、耐衝撃性に優れた成形体を製造可能で、加工性に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂を含み、かつ所定のガラス繊維を含む、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
〔1〕
(A)ポリアミド樹脂と、(B)ガラス繊維とを含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記(B)ガラス繊維は、下記(b−1)のガラス繊維及び下記(b−2)のガラス繊維を含む、
ポリアミド組成物。
(b−1):カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを含む共重合体を含む集束剤を含有するガラス繊維。
(b−2):ポリカルボジイミド化合物を含む集束剤を含有するガラス繊維。
【0009】
〔2〕
前記(A)ポリアミド樹脂中、カルボキシル基末端濃度に対するアミノ基末端濃度の比を表すxと、前記(b−2)の成分濃度に対する前記(b−1)の成分濃度を表すyとが、
下記式(1)を満たす、前記〔1〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
0.5≦x/y≦2.0 ・・・(1)
【0010】
〔3〕
前記(A)ポリアミド樹脂中、カルボキシル基末端濃度に対するアミノ基末端濃度の比が0.5を超える、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
【0011】
〔4〕
前記(A)ポリアミド樹脂の、カルボキシル基末端濃度が50μmol/g以上である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
【0012】
〔5〕
前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記(B)ガラス繊維が1〜200質量部である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
【0013】
〔6〕
前記(A)ポリアミド樹脂が、
ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I及びポリアミド9T、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選択される一種以上である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
【0014】
〔7〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物を用いた成形体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、機械的強度、耐衝撃性に優れた成形体を製造可能で、加工性に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0017】
〔ポリアミド樹脂組成物〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂と(B)ガラス繊維とを含むポリアミド樹脂組成物である。
前記(B)ガラス繊維は、下記(b−1)、(b−2)を含有している。
(b−1)カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを含む共重合体を含むガラス繊維集束剤を含有するガラス繊維。
(b−2)ポリカルボジイミド化合物を含むガラス繊維集束剤を含有するガラス繊維。
【0018】
以下、本実施形態の、ポリアミド樹脂組成物の各構成要素について詳細に説明する。
【0019】
((A)ポリアミド樹脂)
ポリアミドとは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。
以下に制限されないが、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられる。
ポリアミドとしては、1種で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0020】
以下、(A)ポリアミド樹脂の原料について説明する。
(A)ポリアミド樹脂の原料としては、ラクタム、ω−アミノカルボン酸が挙げられる。
ポリアミドの構成成分である単量体としてのラクタムは、以下に制限されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタムやドデカラクタムが挙げられる。
一方、ω−アミノカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸が挙げられる。
なお、ラクタム又はω−アミノカルボン酸として、それぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
【0021】
また、(A)ポリアミド樹脂の原料としては、ジアミン及びカルボン酸が挙げられ、(A)ポリアミド樹脂は、これらの縮合により得られる。
まず、上記のジアミン(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミンや2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミンやm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
上記のジカルボン酸(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
上記した単量体としてのジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用し、縮合してもよい。
【0022】
上述した原料により製造されるポリアミドについて、下記に説明する。
ポリアミドとしては、以下に制限されないが、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドが挙げられる。
好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I及びポリアミド9T、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選択された1種以上である。
【0023】
前記共重合ポリアミドとしては、以下に制限されないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2−メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物が挙げられる。
【0024】
ポリアミドの末端基としては、一般にアミノ基、又はカルボキシル基が存在する。
これらの末端基の比は、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度、靭性及び加工性を向上させる観点から、アミノ基末端濃度/カルボキシル基末端濃度(=x)が0.5を超えることが好ましい。
【0025】
また、前記アミノ基末端濃度/カルボキシル基末端濃度の下限について、より好ましくは0.60を超える値であり、さらに好ましくは0.65以上である。
一方、アミノ基末端濃度/カルボキシル基末端濃度の上限について、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.90以下である。
【0026】
また、ポリアミドの末端のカルボキシル基の濃度は、好ましくは50μmol/g以上であり、より好ましくは50〜150μmol/gであり、さらに好ましくは50〜100μmol/g、さらにより好ましくは50〜80μmol/gである。
末端カルボキシル基の濃度が上記した範囲内の場合、機械的強度を有意に向上させることができる。
【0027】
ここで、本明細書における末端アミノ基及び末端カルボキシル基の濃度は、1H−NMRにより測定される、各末端基に対応した特性シグナルの積分値によって求めることができる。
【0028】
さらに、ポリアミドの末端基を別途調整してもよい。かかる調整方法としては、公知の方法を用いることができる。
以下に制限されないが、例えば末端調整剤を用いる方法が挙げられる。
具体例として、ポリアミド重合時に所定の末端濃度となるように、モノアミン化合物、ジアミン化合物、モノカルボン酸化合物及びジカルボン酸化合物よりなる群から選択される1種以上を溶媒に添加する方法が挙げられる。
これらの成分の溶媒への添加時期については、末端調整剤として本来の機能を果たす限り特に制限されず、例えば、上記したポリアミドの原料を溶媒に添加する際があり得る。
【0029】
前記末端調整剤としてのモノアミン化合物としては、以下に制限されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン、並びにこれらの任意の混合物等が挙げられる。
特に、反応性、沸点、封止末端の安定性や価格等の観点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
前記末端調整剤としてのジアミン化合物は、上述したポリアミドの材料として挙げたものを、使用できる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
前記末端調整剤としてのモノカルボン酸化合物としては、以下に制限されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸が挙げられる。
これらのカルボン酸化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記末端調整剤としてのジカルボン酸化合物としては、以下に制限されないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸及びスベリン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4'−ジカルボン酸及び4,4'−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位(ユニット)が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
((B)ガラス繊維)
ガラス繊維(前記(B)の成分)は、下記(b−1)及び(b−2)を含む。
(b−1)カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを含む共重合体を含むガラス繊維集束剤を含有するガラス繊維。
(b−2)ポリカルボジイミド化合物を含むガラス繊維集束剤を含有するガラス繊維。
ここで、前記「ガラス繊維集束剤を含有するガラス繊維」とは、ガラス繊維集束剤で表面処理されることによって得られるガラス繊維を意味する。
【0034】
ここで、上記(A)ポリアミド樹脂中、「アミノ基末端濃度/カルボキシル基末端濃度」を表すxと、上記(B)ガラス繊維中、「(b−1)の成分濃度/(b−2)の成分濃度」を表すyとが、下記式(1)を満たすことが好ましい。
0.5≦x/y≦2.0 ・・・(1)
上記x/yは、より好ましくは0.65〜2.0であり、さらに好ましくは0.65〜1.5である。上記した範囲内の場合、加工時の目やに起因の異物数の低減や、機械的強度の向上の観点から好適である。
【0035】
<(b−1)ガラス繊維>
(B)ガラス繊維を構成する(b−1)成分について説明する。
(b−1)は、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを含む共重合体を含むガラス繊維集束剤を含有しているガラス繊維である。
前記ガラス繊維集束剤に含有されている共重合体を構成する「カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体」としては、以下に制限されないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸や無水シトラコン酸が挙げられ、中でも無水マレイン酸が好ましい。
前記ガラス繊維集束剤に含有されている共重合体を構成する前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とは、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体を意味する。このような不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートが挙げられる。中でもスチレンやブタジエンが好ましい。
【0036】
これらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、及びこれらの混合物がより好ましい。
【0037】
また、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体との共重合体は、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましい。
また、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の流動性向上の観点から、より好ましくは2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは5,000〜500,000である。
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0038】
<(b−2)ガラス繊維>
次に、(B)ガラス繊維を構成する(b−2)成分について説明する。
(b−2)は、ポリカルボジイミド化合物を含むガラス繊維集束剤を含有するガラス繊維である。
この(b−2)のガラス繊維のガラス繊維集束剤に含有されているポリカルボジイミド化合物は、一以上のカルボジイミド基(−N=C=N−)を含有する化合物を縮合することにより得られる。
【0039】
前記ポリカルボジイミド化合物の縮合度は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。前記ポリカルボジイミド化合物の縮合度が1〜20の範囲内にある場合、より均一な水溶液又は水分散液が得られる。さらに、縮合度が1〜10の範囲内にある場合、より一層均一な水溶液又は水分散液が得られる。
【0040】
また、前記ポリカルボジイミド化合物は、部分的にポリオールセグメントを持つことが好ましい。ポリオールセグメントを持たせることにより、ポリカルボジイミド化合物が水溶化し易くなり、ガラス繊維の集束剤として一層好適に使用可能となる。
【0041】
前記カルボジイミド化合物は、ジイソシアネート化合物を3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド等の公知のカルボジイミド化触媒の存在下で脱炭酸反応させることによって得られる。
前記ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネート、並びにそれらの混合物を用いることが可能である。以下に制限されないが、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
そして、これらのジイソシアネート系化合物をカルボジイミド化することによって、末端に2つのイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物が得られる。
これらのうち、反応性向上の観点からジシクロヘキシルメタンカルボジイミドが好適に使用可能である。
【0042】
末端に2つのイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物に対し、さらにモノイソシアネート化合物を等モル量カルボジイミド化させる方法、又はポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと等モル量反応させてウレタン結合を生成する方法等によって、末端にイソシアネート基を1つ有するポリカルボジイミド化合物が得られる。
モノイソシアネート化合物としては、以下に制限されないが、例えば、ヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネートやシクロヘキシルイソシアネート等が挙げられる。
前記ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、以下に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルやポリエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0043】
<その他のガラス繊維集束剤成分>
上述した(b−1)ガラス繊維、(b−2)ガラス繊維のそれぞれに含有されているガラス繊維集束剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等をさらに使用してもよい。これらは1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記<その他のガラス繊維集束剤成分>としての前記ポリウレタン樹脂は、ガラス繊維の集束剤として一般的に用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)やイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが好適に使用できる。
【0045】
前記アクリル酸のホモポリマーとしては、重量平均分子量1,000〜90,000であるものが好ましく、重量平均分子量1,000〜25,000であるものが好ましい。
【0046】
アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する前記アクリル酸と共重合体を形成するモノマーとしては、以下に制限されないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く。)。上記したモノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
【0047】
アクリル酸のホモポリマー及び/又はコポリマーの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩としては、以下に制限されないが、具体例として、トリエチルアミン、トリエタノールアミンやグリシンが挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
【0048】
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000〜50,000の範囲が好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、ポリアミド樹脂組成物とした際の機械的特性向上の観点から、50,000以下が好ましい。
【0049】
また、ガラス繊維集束剤溶液には、ガラス繊維の表面処理剤として、シランカップリング剤を、さらに含有させてもよい。
前記シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。
中でも、上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0050】
<ガラス繊維集束剤の調製>
上述した(b−1)、(b−1)のガラス繊維に含有されるガラス繊維集束剤は、上述したそれぞれの必須成分に、必要に応じてポリウレタン樹脂、シランカップリング剤、潤滑剤を加え、水で希釈することにより得られる。
潤滑剤としては、目的に適した通常の液体又は固体の任意の滑剤材料が使用可能である。
例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系もしくは鉱物系のワックス、又は脂肪酸アミド、脂肪酸エステルもしくは脂肪酸エーテル、又は芳香族系エステルもしくは芳香族系エーテル等の界面活性剤が使用可能である。
【0051】
上記(b−1)のガラス繊維に含有されているガラス繊維集束剤は、それぞれ固形分として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体との共重合体1〜5質量%、ポリウレタン樹脂1〜5質量%、シランカップリング剤0.1〜1質量%、及び潤滑剤0.01〜0.5質量%を水で希釈し、全質量を100質量%に調整することにより、調製することが好ましい。
【0052】
上記(b−2)のガラス繊維に含有されているガラス繊維集束剤は、それぞれ固形分として、ポリカルボジイミド化合物1〜5質量%、ポリウレタン樹脂1〜5質量%、シランカップリング剤0.1〜1質量%、及び潤滑剤0.01〜0.5質量%を水で希釈し、全質量を100質量%に調整することにより、調製することが好ましい。
【0053】
また、(b−1)及び(b−2)のガラス繊維に含有されているガラス繊維集束剤は、所望により、アクリル酸のホモポリマー、又はアクリル酸とその他のモノマー成分とのコポリマーを好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%、及び活性アミノ基を主鎖骨格にもつ反応型ポリウレタン樹脂を好ましくは1〜5質量%、より好ましくは2〜4質量%、及びカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とその他の不飽和ビニル単量体との共重合体を好ましくは1〜5質量%、より好ましくは2〜4質量%含むように調製してもよい。
【0054】
また、上記(b−1)及び(b−2)のガラス繊維に含有されているガラス繊維集束剤において、所望により、アクリル酸モノマーのホモポリマーもしくはアクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを好ましくは1〜10質量%(より好ましくは2〜5質量%)、及び/又は活性アミノ基を主鎖骨格にもつ反応型ポリウレタン樹脂を好ましくは1〜5質量%、より好ましくは2〜4質量%、さらに含むように調製してもよい。
【0055】
上記(b−1)のガラス繊維に含有されているガラス繊維集束剤において、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体との共重合体の配合量は、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の機械的強度向上の観点から1質量%以上であることが好ましく、ガラス繊維の集束性向上の観点から5質量%以下であることが好ましい。
上記(b−2)のガラス繊維に含有されているガラス繊維集束剤において、ポリカルボジイミド化合物の配合量は、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の機械的強度向上の観点から1質量%以上であることが好ましく、ガラス繊維の集束性向上の観点から5質量%以下であることが好ましい。
上記(b−1)及び(b−2)のガラス繊維に含有されているガラス繊維集束剤において、ポリウレタン樹脂の配合量は、ガラス繊維の集束性向上の観点から1質量%以上であることが好ましく、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の機械的強度向上の観点から5質量%以下であることが好ましい。
【0056】
上記(b−1)及び(b−2)のガラス繊維に含有されているガラス繊維集束剤において、アクリル酸のホモポリマー、及びアクリル酸とその他のモノマー成分とのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級のアミン塩より選択された1種以上のポリマーの配合量は、耐水強度を必要とする分野においては、吸水時のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の機械的強度向上の観点から1質量%以上が好ましく、ガラス繊維の集束性、該組成物の色調、外観及び表面平滑性を向上させる観点から10質量%以下であることが好ましい。
【0057】
上記(b−1)及び(b−2)のガラス繊維集束剤中のシランカップリング剤の配合量は、ガラス繊維の集束性向上、及びガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の機械的強度向上の観点から0.1〜1質量%が好ましい。
また、上記(b−1)及び(b−2)のガラス繊維に含有されているガラス繊維集束剤中の潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点から0.01質量%以上であることが好ましく、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の機械的強度向上の観点から0.5質量%以下であることが好ましい。
【0058】
<(b−1)、(b−2)のガラス繊維の製造方法>
(b−1)及び(b−2)のガラス繊維は、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維に付与して製造したガラス繊維ストランドを乾燥することによって連続的に製造できる。
前記ガラス繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
ガラス繊維集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%付与(添加)する。ガラス繊維の集束を維持する観点から、ガラス繊維集束剤の添加量が、ガラス繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。
一方、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、ストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0059】
(ポリアミド樹脂組成物のその他の成分)
上記した成分の他に、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに他の成分を添加してもよい。
例えば、ガラス繊維以外の無機充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤、染色剤や顔料等を添加してもよいし、他の熱可塑性樹脂を混合してもよい。
ここで、上記した他の成分はそれぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本実施形態の効果をほとんど損なわない好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0060】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
ポリアミド樹脂組成物は、所定の押出機を用いて、(A)ポリアミド樹脂と、(B)ガラス繊維、及び所定のその他の成分とを、(A)ポリアミド樹脂を溶融させた状態で、混練することにより製造できる。
(B)ガラス繊維としてチョップドストランドを用いる場合、上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口から(A)ポリアミド樹脂を供給して溶融させた後、下流側供給口からチョップドストランドを供給して溶融混練する方法を用いることが好ましい。また、ガラス繊維ロービングを用いる場合も、公知の方法で複合することができる。
ここで、上記(A)成分(ポリアミド樹脂)100質量部に対し、上記(B)成分(所定のガラス樹脂)の含有量は、好ましくは1〜200質量部であり、より好ましくは5〜150質量部であり、さらに好ましくは15〜100質量部である。上記した範囲内の場合、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の流動性及び外観が共に一層優れたものとなる。
【0061】
〔ポリアミド樹脂組成物を用いた成形体〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、特に制限されることなく、例えば、射出成形による各種部品の成形体として利用できる。
【0062】
〔ポリアミド樹脂組成物を用いた成形体の用途〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の成形体は、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用の各種部品として好適に使用できる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原料の調製、測定方法及び製造方法を以下に示す。
【0064】
〔原料の調製〕
<1.ポリアミド樹脂>
(1)ポリアミド66(以下、「PA−1」と略記する。)
ポリアミド原料としてヘキサメチレンジアミン(旭化成ケミカルズ社製)とアジピン酸(旭化成ケミカルズ社製)との等モル塩1600kgを、蒸留水に添加し、ポリアミド樹脂原料として50質量%の水溶液を得た。得られた水溶液を、下部に放出ノズルを有する約4,000リットル容のオートクレーブ中に仕込み、50℃で混合しつつ窒素で置換した。
【0065】
続いて、温度を50℃から約150℃まで約1時間かけて昇温した。
その際、オートクレーブ内の圧力を0.15MPa程度(ゲージ圧)に保つため、水を系外に除去しながら加熱を続けた。
その後、オートクレーブを密閉状態にし、温度を150℃から約220℃まで約1時間かけて昇温して圧力を1.77MPa程度(ゲージ圧)まで上昇させた。
【0066】
続いて、温度を約220℃から約280℃まで約1時間かけて昇温する一方、圧力は約1.77MPaに維持させつつ水を系外に除去していくことで加熱を行った。
その後、約1時間かけて圧力を大気圧まで減圧し、大気圧になった後、下部ノズルからストランド状にペレットを排出して、水冷、カッティングを行い、PA−1のペレットを得た。得られたペレットを窒素気流中、90℃で4時間乾燥した。
【0067】
ここで、PA−1の98%硫酸相対粘度[ηr:25℃、1g/100ml]は2.79であった。
また、アミノ基末端は46μmol/g、カルボキシル基末端は72μmol/g、アミノ基末端濃度/カルボキシル基末端濃度は0.639であった。
なお、本明細書における硫酸相対粘度の測定方法として、JIS K 6920を採用した。
【0068】
(2)ポリアミド66(以下、「PA−2」と略記する。)
末端調整剤としてヘキサメチレンジアミンを添加した。
その他の条件は、上記PA−1の場合と同様にして、PA−2を得た。
ここで、98%硫酸相対粘度ηrは2.78、アミノ基末端は53μmol/g、カルボキシル基末端は67μmol/g、アミノ基末端濃度/カルボキシル基末端濃度は0.791であった。
【0069】
(3)ポリアミド66(以下、「PA−3」と略記する。)
末端調整剤としてアジピン酸を添加した。
その他の条件は、上記PA−1の場合と同様にして、PA−3を得た。
ここで、98%硫酸相対粘度ηrは2.78、アミノ基末端は38μmol/g、カルボキシル基末端は89μmol/g、アミノ基末端濃度/カルボキシル基末端濃度は0.427であった。
【0070】
<2.カルボジイミド化合物>
カルボジイミド化合物として、日清紡績株式会社製の商品名:カルボジライト(登録商標)V−02(固形分率40質量%の水溶液)を使用した。
【0071】
<3.ポリウレタン樹脂エマルジョン>
ポリウレタン樹脂エマルジョンとして、大日本インキ株式会社製の商品名:ボンディック(登録商標)1050:(固形分率50質量%の水溶液)を使用した。
【0072】
<4.無水マレイン酸系共重合体>
無水マレイン酸−ブタジエン共重合体水溶液として、三洋化成工業株式会社製の商品名:アクロバインダー(登録商標)BG−7(固形分率25質量%の水溶液)を使用した。
【0073】
<5.アミノシラン系カップリング剤>
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE−903、信越化学工業株式会社製)を使用した。
【0074】
<6.潤滑剤>
商品名:カルナウバワックス(株式会社加藤洋行製)を使用した。
【0075】
<7.ガラス繊維>
(1)GF−1
まず、固形分として、ポリウレタン樹脂2質量%、無水マレイン酸−ブタジエン共重合体4質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、及びカルナウバワックス0.1質量%となるように水で希釈し、ガラス繊維集束剤を得た。
得られたガラス繊維集束剤を、溶融防糸された平均直径10μmのガラス繊維に対して、回転ドラムに巻き取られる途中に設けたアプリケーターによってガラス繊維に付着させた。
そして、その後に乾燥することによって、上記ガラス繊維集束剤で表面処理されたガラス繊維束のロービングを得た。
その際、ガラス繊維は1,000本の束となるようにした。ガラス繊維集束剤の付着量は、0.6質量%であった。これを3mmの長さに切断して、チョップドストランド(以下、「GF−1」と略記する)を得た。
【0076】
(2)GF−2
固形分として、カルボジイミド化合物4質量%、ポリウレタン樹脂2質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、及びカルナウバワックス0.1質量%となるように水で希釈し、ガラス繊維集束剤を得た。
得られたガラス繊維集束剤を、溶融防糸された平均直径10μmのガラス繊維に対して、回転ドラムに巻き取られる途中に設けたアプリケーターによってガラス繊維に付着させた。そして、その後に乾燥することによって、上記ガラス繊維集束剤で表面処理されたガラス繊維束のロービングを得た。
その際、ガラス繊維は1,000本の束となるようにした。ガラス繊維集束剤の付着量は、0.6質量%であった。これを3mmの長さに切断して、チョップドストランド(以下、「GF−2」と略記する)を得た。
【0077】
〔評価方法〕
以下、実施例及び比較例で行った評価の方法について説明する。
<ガラス繊維集束剤の付着量>
ガラス繊維集束剤により表面処理されたガラス繊維を、10g精秤した後、650℃の電気炉において1時間加熱した。この間の質量減少分をガラス繊維集束剤の付着量とした。
【0078】
<シャルピー衝撃強度>
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠し、多目的試験片A型の成形片を成形した。
その際、射出及び保圧の時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃、溶融樹脂温度290℃に設定した。得られた成形片を切削して使用し、厚さ80mm×巾10mm×長さ4mmの試験片を用いて、ISO 179/1eAに準拠し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
【0079】
<引張強度>
上記の多目的試験片(A型)を用いて、ISO 527に準拠し、引張速度5mm/分で引張試験を行い、引張強度を測定した。
【0080】
<加工性(目やに付着量)>
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレット5kgを金属バット上に広げ、目視により、目やにに起因する異物の数(以下、「目やに起因の異物数」という)を測定した。
【0081】
〔実施例1〜8〕〔比較例1、2〕
押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、かつ9番目のバレルに下流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機(ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ))を用いた。
前記二軸押出機において、上流側供給口からダイまでを290℃、スクリュー回転数200rpm、及び吐出量20kg/時間に設定した。かかる条件下で、下記表1の上部に記載された割合となるように、上流側供給口よりポリアミド樹脂(PA−1乃至PA−3)を供給し、下流側供給口よりガラス繊維チョップドストランド(GF−1乃至GF−2)を供給した。
そして、これらを溶融混練することでポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたポリアミド樹脂組成物を、樹脂温度290℃及び金型温度80℃で成形し、シャルピー衝撃強度及び引張強度を評価した。
併せて、目やに起因の異物数を測定した。これらの評価(測定)結果等を下記表1に示した。
【0082】
【表1】

【0083】
上記表1より、実施例1、2、4〜8と比較例1〜2とを比較すると、上記(B)ガラス繊維が上記(b−1)及び(b−2)のガラス繊維を共に含む場合には、いずれか一方しか含まない場合と比較して、シャルピー衝撃強度及び引張強度は有意に高いことに加えて、目やに起因異物数が顕著に少ないことを確認した。
【0084】
〔実施例9及び10〕〔比較例3〜6〕
下記表2の上部に記載された割合となるように、ポリアミド樹脂(PA−2)とガラス繊維チョップドストランド(GF−1乃至GF−2)を溶融混練した。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。
これらの評価(測定)結果等を下記表2に示した。
【0085】
【表2】

【0086】
上記表2より、実施例9と比較例3〜4とを比較し、実施例10と比較例5〜6とを比較すると、表1における比較結果と同様に、上記(B)ガラス繊維が上記(b−1)及び(b−2)のガラス繊維を共に含む場合には、いずれか一方しか含まない場合と比較して、シャルピー衝撃強度及び引張強度は有意に高いことに加えて、目やに起因異物数が顕著に少ないことを確認した。
【0087】
以上のことから、本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、従来のものよりも、機械的強度、耐衝撃性及び加工性が顕著に向上されたものであり、自動車部品や各種電子部品等にも十分適用できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、自動車部品や電子部品(コネクタ、スイッチ)等、軽量性や、高レベルでの機械的強度等が要求される成形品として、産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド樹脂と、(B)ガラス繊維とを含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記(B)ガラス繊維は、下記(b−1)のガラス繊維及び下記(b−2)のガラス繊維を含む、
ポリアミド組成物。
(b−1):カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを含む共重合体を含む集束剤を含有するガラス繊維。
(b−2):ポリカルボジイミド化合物を含む集束剤を含有するガラス繊維。
【請求項2】
前記(A)ポリアミド樹脂中、カルボキシル基末端濃度に対するアミノ基末端濃度の比を表すxと、前記(b−2)の成分濃度に対する前記(b−1)の成分濃度を表すyとが、
下記式(1)を満たす、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
0.5≦x/y≦2.0 ・・・(1)
【請求項3】
前記(A)ポリアミド樹脂中、カルボキシル基末端濃度に対するアミノ基末端濃度の比が0.5を超える、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)ポリアミド樹脂の、カルボキシル基末端濃度が50μmol/g以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記(B)ガラス繊維が1〜200質量部である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)ポリアミド樹脂が、
ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I及びポリアミド9T、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選択される一種以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物を用いた成形体。

【公開番号】特開2010−270326(P2010−270326A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99103(P2010−99103)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】