説明

ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス織物、ガラス繊維強化樹脂、金属箔張り積層板及びプリント配線板

【課題】 プリント配線板の製造に用いたときに、そのCOレーザー加工性を改善できるガラス繊維、並びに当該ガラス繊維を製造するために用いられるガラス繊維用ガラス組成物を提供すること。
【解決手段】
構成成分の全モル数を基準として、SiOを55〜60モル%、Alを4〜6モル%、Bを5〜9モル%、CaOを12〜20モル%、BaOを3〜8モル%、ZnOを3〜6モル%、NaOを1〜3モル%、LiOを1〜3モル%、KOを0〜1モル%を含んでおり、NaO、LiO及びKOの合計モル%が2〜5モル%、NaO及びLiOの合計モル%が2モル%以上である、ガラス繊維用ガラス組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス織物、ガラス繊維強化樹脂、金属箔張り積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器(例えば、パーソナルコンピューター又は携帯電話)の軽薄短小化、多機能化及び高速化に伴い、搭載されるプリント配線板の高密度実装化が進んでいる。プリント配線板の高密度実装化のために、多層プリント配線板が使用され、その製造途中でCOレーザーによる穴加工を行なう場合がある。
【0003】
プリント配線板には絶縁性、剛性を向上させるために基材としてガラス繊維が用いられ、商業的に生産されているガラス繊維としてはEガラスが知られている。Eガラスは絶縁性、剛性には優れているが、プリント配線板に使用されている合成樹脂との溶融性が異なり、レーザー加工時に穴加工精度が悪くなる欠点があった。また、加工時間及びレーザー出力の点からも、合成樹脂のみからなる絶縁体を加工する場合に比べ効率が悪く、エネルギーロスを生じていた。そのため、COレーザー加工性に優れたプリント配線板が待ち望まれていた。
【0004】
一方、プリント配線板の基材としての諸性能を維持しつつ、ガラス繊維の溶融温度を変化させる方法としては、B、MgO、CaO、TiO等の配合量を調整する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−157876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、プリント配線板の製造に用いたときに、そのCOレーザー加工性を改善できるガラス繊維、並びに当該ガラス繊維を製造するために用いられるガラス繊維用ガラス組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の目的はまた、上記ガラス繊維を編組してなるガラス織物、上記ガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂、上記ガラス繊維強化樹脂からなる層を備えた金属箔張り積層板及びプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、構成成分の全モル数を基準として、SiOを55〜60モル%、Alを4〜6モル%、Bを5〜9モル%、CaOを12〜20モル%、BaOを3〜8モル%、ZnOを3〜6モル%、NaOを1〜3モル%、LiOを1〜3モル%、KOを0〜1モル%を含んでおり、NaO、LiO及びKOの合計モル%が2〜5モル%、NaO及びLiOの合計モル%が2モル%以上である、ガラス繊維用ガラス組成物を提供する。
【0009】
このような組成のガラス繊維用ガラス組成物は、当該組成によるガラス繊維を用いてプリント配線板の製造に用いたときに、そのCOレーザー加工性を改善させることが可能である。
【0010】
CO2レーザー加工性に優れたプリント配線板を得るためには、ガラス繊維がCO2レーザーにより加えられるエネルギーにより溶融しやすいことが必要である。そのためには、ガラス繊維がCO2レーザーをより吸収するようにしたり、ガラス繊維自体の溶融温度を低くする等の方法が考えられる。
【0011】
本発明者らは、ガラスの重要な特性である粘性、特に粘度logη=7.65で知られる軟化点がCO2レーザー加工性に影響することを見出した。即ち、ガラスの軟化点を下げ、溶融温度を低くすることで、プリント配線板の基材として用いられた場合に、プリント配線板のレーザー加工性を良好にし、加工時のエネルギーロスが少ないガラス繊維を提供することが可能となる。一方で、上記軟化点はガラスのアルカリ金属成分を増やせば低下するが、同時にガラスの電気絶縁性や耐化学性など各特性が悪化し、プリント配線板用ガラス繊維としては使用できない。
【0012】
そこで、本発明者らは、上記本発明のガラス繊維用ガラス組成物の組成が、プリント配線板中のガラス繊維の原料として用いられたときに、配線板のCOレーザー加工性を向上させ、さらに、従来のEガラスと同等又はそれ以上の耐化学性を発揮することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物においては、LiOのモル%をNa2Oのモル%で除した値が1〜2であることが好ましい。このような比にすることで、プリント配線板のCOレーザー加工性をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明はまた、上記ガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維、当該ガラス繊維を編組してなるガラス織物、当該ガラス繊維と、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、を含むガラス繊維強化樹脂、当該ガラス繊維強化樹脂からなるガラス繊維強化樹脂層上に、金属箔層を備える金属箔張り積層板、当該ガラス繊維強化樹脂からなるガラス繊維強化樹脂層上に、パターン化された導体層を備えるプリント配線板、を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プリント配線板の製造に用いたときに、そのCOレーザー加工性を良好にし、かつ紡糸性、耐化学特性といった実用性にも優れるガラス繊維を作製することが可能な、ガラス繊維用ガラス組成物を提供することができる。例えば、軟化点については、従来のEガラスに比べて100℃程度低く抑えることができ、酸による重量減少率(耐化学性評価)も従来のEガラスに比べて5〜15%低減できる。本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、また、上記組成を有することから、紡糸のための作業温度範囲の広いガラス繊維を得ることが可能である。具体的には作業温度範囲を70℃以上にすることが可能であり、これによりガラス紡糸作業の効率化が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物において、SiOは、Al、Bとともにガラスの骨格を形成する成分である。その配合率は、構成成分の全モル数を基準として55〜60モル%であるが、55モル%未満では化学特性や剛性の低下が生じる。また、60モル%を超えると高温粘度が高くなり、溶融性や紡糸性が悪化する。なお、SiOの配合率は、構成成分の全モル数を基準として、57〜60モル%が好ましい。
【0017】
AlはSiO、Bとともにガラスの骨格を形成する成分であるが、失透を抑制するという機能を有していると考えられる。その配合率は、構成成分の全モル数を基準として4〜6モル%である。配合率が、4モル%未満では分相を生じ易く、失透しやすくなる。また、6モル%を超えると粘性が高くなり軟化点に影響する。なお、Alの配合率は、構成成分の全モル数を基準として4.5〜5.5モル%が好ましい。
【0018】
は上述のようにガラスの骨格を形成する成分であり、融剤として機能すると考えられ粘度を低下させる働きがある。その配合率は、構成成分の全モル数を基準として5〜9モル%であるが、5モル%未満では粘度を下げる効果が十分に得られない。また、9モル%を超えると高温溶融時の揮発が増大し、製造時に周辺環境を害するおそれが生じる。なお、Bの配合率は、構成成分の全モル数を基準として、6〜8モル%が好ましい。
【0019】
CaOは、Bと同様に溶融性を向上させる機能を有すると考えられる。その配合率は、構成成分の全モル数を基準として12〜20モル%であるが、12モル%未満であると、ガラスとしての溶融性が低下する。また、20モル%を超えると失透しやすくなり、紡糸性が悪化する。なお、CaOの配合率は、構成成分の全モル数を基準として、15〜20モル%が好ましい。
【0020】
BaOは、分相を抑制する機能を有すると考えられる。その配合率は、構成成分の全モル数を基準として3〜8モル%である。その配合率が、3モル%未満ではガラスが分相し、白濁しやすくなる。また、8モル%を超えると溶融性が低下する。なお、BaOの配合率は、構成成分の全モル数を基準として、4〜6モル%が好ましい。
【0021】
ZnOは、Alと同様に失透を抑制する機能を有すると考えられる。その配合率が、構成成分の全モル数を基準として3〜6モル%であるが、3モル%未満では失透を生じやすくなる。また、6モル%を超えると溶融性が悪化する。ZnOの配合率は、構成成分の全モル数を基準として、4〜6モル%が好ましい。
【0022】
BaO及びZnOの両方を配合することで、ガラスの分相及び失透を抑えることができる。本発明においては、その配合率の合計が、構成成分の全モル数を基準として6〜14モル%が好ましく、8〜12モル%がより好ましい。
【0023】
NaO、LiO、KOといったアルカリ成分は軟化点を下げる機能を有していると考えられる。その配合率は、NaOについては1〜3モル%(好ましくは1〜2モル%)、LiOについて1〜3モル%(好ましくは1〜2.5モル%)、KOについては0〜1モル%(好ましくは0〜0.5モル%)である。
【0024】
軟化点の調整の観点から、NaO、LiO、KOとの配合率の合計は、構成成分の全モル数を基準として2〜5モル%でなければならない。合計の配合率が2モル%未満では軟化点を下げることが難しく、5モル%を超えるとガラスの化学特性が著しく低下する。なお、NaO、LiO、KOの配合率の合計は、構成成分の全モル数を基準として、2.5〜3.5モル%が好ましい。
【0025】
NaO及びLiOの合計モル%は2モル%以上でなければならない。この合計モル%を2モル%以上とすることでCO2レーザー加工性が改善するために必要となる軟化点の低下という効果が得られる。NaO及びLiOの合計モル%は2.5〜3.5モル%が好ましい。
【0026】
アルカリ成分はそれぞれ単独で使用することもできるが、紡糸性及び化学特性の点から2種類以上を組み合わせることが好ましい。特にLiOのモル%をNa2Oモル%で除した値が1〜2(好ましくは1.5〜2)であることが特に好ましい。
【0027】
本発明のガラス繊維は、以上説明したガラス繊維用ガラス組成物からなるものである。本発明のガラス繊維は、既存のガラス繊維製造法である、マーブルメルト法、ダイレクトメルト法、又は、ステーブル法などにより、製造することができる。
【0028】
ガラス繊維の太さは任意に設定することができ、3〜25μmとすることが好ましく、4〜17μmであることがさらに好ましい。
【0029】
ガラス繊維の形態は、既存のガラス繊維と同様に、チョップドストランド、ヤーン、ロービング、マット、クロス、ミルドファイバーなどとすることが可能であり、製造工程での扱いやすさ、製造効率などを考慮して、任意の形態を選択することができる。
【0030】
なお、本発明のガラス繊維は、皮膜形成剤(澱粉、ポリビニルアルコール等)と潤滑剤(油脂等)を主成分とするガラス繊維用集束剤や、カップリング剤等の表面処理剤を有していてもよい。
【0031】
ここで、カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、ボラン系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤又はチタネート系カップリング剤等を使用することができる。カップリング剤による表面処理の方法としては、ガラス繊維に直接塗る方法や、収束剤に入れておく方法など、従来よく使われている方法を利用できる。
【0032】
本発明の、ガラス繊維を編組してなるガラス織物は、上記ガラス繊維を編む、組むなどして、互いに絡み合うように集合させたものをいい、ガラス編物、ガラス組物、ガラス組布などの態様が含まれる。なお、本発明のガラス織物は、上記同様、皮膜形成剤(澱粉、ポリビニルアルコールなど)と潤滑剤(油脂など)を主成分とするガラス繊維用収束剤や、カップリング剤などの表面処理剤を有してもよい。
【0033】
本発明のガラス繊維強化樹脂は、上記ガラス繊維と、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂とを含むものである。ガラス繊維強化樹脂における熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリサルフォン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂が例示でき、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂が例示できる。また、ガラス繊維強化樹脂が熱硬化性樹脂を含む場合は、ガラス繊維強化樹脂には当該熱硬化性樹脂が完全硬化したガラス繊維強化樹脂の他、熱硬化性樹脂を半硬化の状態にしたプリプレグをも含むものとする。なお、ガラス繊維強化樹脂は、必要に応じて、低収縮剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、充填剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0034】
ガラス繊維と熱可塑性樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂の製造方法としては、スタンパブルシート成形法等の公知の方法が採用でき、ガラス繊維と熱硬化性樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂の製造方法としては、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファー法、シートモールディングコンパウンド法(SMC法)等の公知の方法が採用できる。
【0035】
ガラス繊維強化樹脂は、ガラス繊維が、上記同様、皮膜形成剤(澱粉、ポリビニルアルコールなど)と潤滑剤(油脂など)を主成分とするガラス繊維用収束剤や、カップリング剤などの表面処理剤を有してもよい。カップリングにより、ガラス繊維と樹脂との密着性が高まり空隙の形成が抑制されるため、ガラス繊維強化樹脂成形体の特性を高めることができる。
【0036】
本発明の金属箔張り積層板は、上記ガラス繊維強化樹脂からなるガラス繊維強化樹脂層上に、金属箔層を備えるものである。金属箔張り積層板に用いられるガラス繊維強化樹脂としては、本発明のガラス繊維と上記の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含むものであることが好ましい。また、上記金属箔としては銅、銀、金からなる金属箔が好ましい。
【0037】
本発明のプリント配線板は、上記ガラス繊維強化樹脂からなるガラス繊維強化樹脂層上にパターン化された導体層を備えるものである。プリント配線板に用いられるガラス繊維強化樹脂としては、本発明のガラス繊維と熱硬化性樹脂とを含むものであることが好ましく、熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂の硬化物であることが好ましい。また、上記導体層としては、銅、銀、金等からなる導体層が好ましい。
【0038】
なお、導体層のパターニング方法としては、サブトラクティブ法やアディティブ法等の既存の方法を採用することが出来る。
【0039】
なお、本発明のプリント配線板は、上記ガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維が基材として用いられていることにより、従来の配線板と比較してレーザー加工性及び耐化学性に優れている。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1〜3)
表1に示す配合率となるように各成分を混合したガラス繊維用ガラス組成物を溶融し、ガラスカレットを作製した。このカレットの白濁度合いを目視にて測定し、分相の有無を判断した。
【0042】
得られたガラスカレットについて、以下に記載した方法に従って1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲及び軟化点を測定した。各特性の測定結果を各成分の配合率と共に表1に示す。
【0043】
〔1000ポイズ温度〕
ガラスカレットを白金るつぼ中で再溶融し、高温回転粘度計(芝浦システム株式会社製)で1000ポイズを示す温度(℃)を測定した。この1000ポイズ温度とは、ガラスの溶融粘度が1000ポイズとなる温度をいう。一般的に、ガラス繊維はガラスの溶融粘度を1000ポイズ付近にして紡糸した場合に効率的に製造可能であるため、1000ポイズ温度は紡糸の際の指標として用いられる。
【0044】
〔液相温度〕
ガラスカレットを直径約500〜1000μmの粉末に砕き、白金ボートに入れた。この白金ボートを温度勾配のある電気炉内に入れて12時間保持した後、電気炉から取り出した試料中に発生した結晶を顕微鏡で観察した。この時、結晶が発生しない最低温度を液相温度とした。この液相温度とは、溶融ガラスの温度を低下させたときに最初に結晶の析出が生じる温度をいう。液相温度が高いとガラス融液に結晶が析出し紡糸切断を生じやすいため、液相温度は低いことが望まれる。
【0045】
〔作業温度範囲〕
上記の方法で測定した1000ポイズ温度と液相温度から、引き算により作業温度範囲を算出した。この作業温度範囲とは、ガラス紡糸作業を効率的に行うことが出来る温度範囲であり、作業効率を一定の水準に保つために、作業温度範囲は70℃以上であることが好ましい。
【0046】
〔軟化点〕
1000ポイズ温度測定と同様に、高温回転粘度計で100ポイズから2000ポイズの範囲を測定し、外挿法により粘度logη=7.65となる温度を算出し、軟化点を得た。ガラスの軟化点が低いほど、加工エネルギーが小さくてすむため、エネルギーコストを下げることができる。
【0047】
〔ガラス繊維の製造〕
上記ガラスカレットを用い、太さ13μmのガラス繊維を作製した。このガラス繊維を用い、以下に記載の方法にしたがって、耐酸性を測定した。測定結果を表1に示す。
【0048】
〔耐酸性(重量減少率)〕
耐酸性を評価するために、上記ガラス繊維を、60℃に加熱した1mol/Lの塩酸に2時間浸漬した後の重量減少率を測定した。重量減少率が低いほど、酸による侵食を受けたときに、ガラス表面からアルカリイオンなどが溶出しにくいことを意味し、プリント配線板の基材として好ましいことになる。
【0049】
〔ガラス板の製造〕
上記ガラスカレットを用い、再溶融により厚さ5mmのガラス板を作製した。このガラス板を用い、以下に記載の方法にしたがって、ガラス板レーザー加工性を測定した。測定結果を表1に示す。
【0050】
〔レーザー加工〕
上記ガラス板にCOレーザー加工を行った。加工条件は周波数100Hz、パルス幅5μm、マスクφ1.3、パルスエネルギーは3〜7mJ、ショット数は1〜3で行った。
【0051】
〔レーザー加工性の評価〕
上記COレーザー加工により形成された穴の形状を、レーザー顕微鏡(オリンパス製)を用いて測定した。穴深さ、穴断面積、穴壁面状態を総合的に勘案し、レーザー加工性に優れていると判断したものには○、そうでないものには×、どちらとも言えないものについては△の評価とした。
【0052】
〔ガラスクロスの製造〕
表1に示す実施例1のガラス繊維を用いて、ガラスクロスを作製した。クロスタイプは1078タイプ(IPCスペック)である。
【0053】
〔ラミネートの作製〕
上記ガラスクロスを用いて、以下の条件でラミネートを作製した。樹脂はエポキシ樹脂(FR-4)、コア材に黒化処理板を使用した。FR-4を塗布、一次乾燥させたガラスクロスをコア材の両面に1枚ずつ積層し、プレス成形を行った。このラミネートを用い、以下に記載の方法にしたがって、ラミネートレーザー加工性を測定した。測定結果を表1に示す。
【0054】
〔レーザー加工〕
上記ラミネートにCOレーザー加工を行った。加工条件は周波数100Hz、パルス幅5μm、マスクφ1.3、パルスエネルギーは3〜7mJ、ショット数は1〜3で行った。
【0055】
〔レーザー加工性の評価〕
上記COレーザー加工により形成された穴の形状を、レーザー顕微鏡(オリンパス製)を用いて測定した。穴深さ、穴断面積、穴壁面状態を総合的に勘案し、レーザー加工性に優れていると判断したものには○、そうでないものには×の評価とした。
【0056】
(比較例1、2)
表1に示す配合率となるように各成分を混合したガラス繊維用ガラス組成物を用い、実施例と同様にして比較例1、2のガラスガラスカレット、ガラス繊維、ガラス板を製造した。比較例1、2の1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲、軟化点、耐酸試験、ガラス板レーザー加工性は実施例と同様にして測定した。
【0057】
これらの測定結果を各成分の配合率と共に表1に示す。また、比較例1のガラスクロス及びラミネートを製造し、実施例と同様にラミネートレーザー加工性を評価した。結果を表1に示す。
【表1】

【0058】
〔作業温度範囲〕
実施例1〜3に示した本発明のガラス繊維は、液相温度が1008〜1037℃であり、作業温度範囲が73〜110℃である。特に、実施例2、3は作業範囲温度がEガラスと比べてそれほど狭くなく、十分な作業性を有していることが分かる。比較例2はZnOの配合率が本発明の範囲から外れており、液相温度が高く、1000ポイズ温度と逆転しているため紡糸が困難である。
【0059】
〔軟化点〕
実施例1〜3は735〜756℃であり、現行品である比較例1のEガラスに比べ100℃程度低下している。比較例2はアルカリ金属の配合率として、NaOとLiOの合計が2モル%以上、を満たしていないため軟化点の低下が十分でない。
【0060】
〔耐酸性(重量減少率)〕
実施例の1〜3全てにおいて、重量減少率がEガラスに比べて低くなっている。特に、Eガラスに比べて15%程度低い実施例1は、優良な耐化学性を有していることが分かる。
【0061】
〔ガラス板レーザー加工性〕
ガラス板のレーザー加工性は軟化点の結果と相関が見られる。比較例1のEガラスのレーザー加工性が良好でないのに対し、軟化点がEガラスと比べて80℃以上低い実施例1〜3ではレーザー加工性が良好である。一方、比較例2はEガラスと比べ50℃程低く、レーザー加工性の向上は見られるものの、十分ではない。
【0062】
〔ラミネートレーザー加工性〕
ラミネートのレーザー加工性はガラス板のレーザー加工性の結果と相関が見られる。実施例1のラミネートは比較例1のEガラスに比べ、レーザー加工性が良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分の全モル数を基準として、SiOを55〜60モル%、Alを4〜6モル%、Bを5〜9モル%、CaOを12〜20モル%、BaOを3〜8モル%、ZnOを3〜6モル%、NaOを1〜3モル%、LiOを1〜3モル%、KOを0〜1モル%を含んでおり、NaO、LiO及びKOの合計モル%が2〜5モル%、NaO及びLiOの合計モル%が2モル%以上である、ガラス繊維用ガラス組成物。
【請求項2】
LiOのモル%をNa2Oのモル%で除した値が1〜2である、請求項1に記載のガラス繊維用ガラス組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維。
【請求項4】
請求項3記載のガラス繊維を編組してなるガラス織物。
【請求項5】
請求項3記載のガラス繊維と、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、を含むガラス繊維強化樹脂。
【請求項6】
請求項5記載のガラス繊維強化樹脂からなるガラス繊維強化樹脂層上に、金属箔層を備える金属箔張り積層板。
【請求項7】
請求項5記載のガラス繊維強化樹脂からなるガラス繊維強化樹脂層上に、パターン化された導体層を備えるプリント配線板。

【公開番号】特開2011−26158(P2011−26158A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172226(P2009−172226)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】