説明

ガラス繊維用集束剤

【課題】集束性に優れたガラス繊維用集束剤を提供する。
【解決手段】下記化学式(1)で表されるリン酸エステル化合物(A)と、水溶性または水分散性ポリマー(B)と、を含む、ガラス繊維用集束剤。
【化1】


前記化学式(1)中、Rは炭素数8〜22の分枝状のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは0〜30の整数であり、mは1〜3の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、第2族金属、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維用集束剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維の紡糸工程では、直径数ミクロンに延伸させたガラス単繊維(フィラメント)を数百〜数千本束ねてガラス繊維糸(ストランド)を製造するが、紡糸工程のみならず撚糸工程(ヤーンまたはロービングの製造)、製織工程(ガラスクロスの製造)等その後に続く各加工工程において、ガイド、ローラー等による摩擦の影響からガラス単繊維が損傷を受け、毛羽を発生しやすいことが一般に知られている。
【0003】
そのため、上記ガラス単繊維の集束およびガラス繊維束に屈曲や摩擦に対する耐久性を付与する目的で、デンプン類(例えば、特許文献1、2参照)や、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリルアミド−酢酸ビニル共重合体(例えば、特許文献3)などの合成高分子化合物が用いられていたが、皮膜形成性が充分とは言えず、そのためにガラス繊維の毛羽立ちの問題は残されていた。
【0004】
また、集束性の向上のためポリビニルアルコール系樹脂とともにリン酸エステル(例えば、特許文献4参照)が用いられることもあるが、近年の製造加工機器の高速運転化に伴いさらに高度な集束性が要求されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭50−12394号公報
【特許文献2】特開平3−183644号公報
【特許文献3】特開昭63−236733号公報
【特許文献4】特開2001−354451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、集束性に優れたガラス繊維用集束剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を積み重ねた。その結果、特定のリン酸エステル化合物と水溶性または水分散性ポリマーとを含むガラス繊維用集束剤により、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記化学式(1)で表されるリン酸エステル化合物(A)と、水溶性または水分散性ポリマー(B)と、を含む、ガラス繊維用集束剤である。
【化1】

前記化学式(1)中、Rは炭素数8〜22の分枝状のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは0〜30の整数であり、mは1〜3の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、第2族金属、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、集束性に優れるガラス繊維用集束剤が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のガラス繊維用集束剤を詳細に説明する。
【0011】
[リン酸エステル化合物]
本発明で用いられるリン酸エステル化合物(A)は、下記化学式(1)で表される構造を有する。
【化2】

前記化学式(1)中、Rは炭素数8〜22の分枝状のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは0〜30の整数であり、mは1〜3の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、第2族金属、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。
【0012】
かような構造を有するリン酸エステル化合物(A)は、後述する水溶性または水分散性ポリマー(B)の乳化性に優れる。さらに、化合物中のリン酸基が、親水性であるガラス繊維の表面の濡れ性にも優れているため、リン酸エステル化合物(A)を含む本発明のガラス繊維用集束剤は、集束性および密着性に優れる。
【0013】
前記一般式(1)中のRで用いられる炭素数8〜22の分枝状のアルキル基の例としては、例えば、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキサン−2−イル基、2,4−ジメチルペンタン−3−イル基、1,1−ジメチルペンタン−1−イル基、2,2−ジメチルヘキサン−3−イル基、2,3−ジメチルヘキサン−2−イル基、2,5−ジメチルヘキサン−2−イル基、2,5−ジメチルヘキサン−3−イル基、3,4−ジメチルヘキサン−3−イル基、3,5−ジメチルヘキサン−3−イル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、2−メチルヘプタン−2−イル基、3−メチルヘプタン−3−イル基、4−メチルヘプタン−3−イル基、4−メチルヘプタン−4−イル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、1−エチル−1−メチルペンチル基、1−エチル−4−メチルペンチル基、1,1,4−トリメチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2,3,4−トリメチルペンタン−3−イル基、1−イソプロピル−1,2−ジメチルプロピル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1−メチルオクチル基、6−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−(n−ブチル)ペンチル基、4−メチル−1−(n−プロピル)ペンチル基、1,5,5−トリメチルヘキシル基、1,1,5−トリメチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、2−メチルオクタン−3−イル基、n−デシル基、イソデシル基、1−メチルノニル基、1−エチルオクチル基、1−(n−ブチル)ヘキシル基、1,1−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクタン−3−イル基、1−メチルデシル基、1−エチルノニル基、イソドデシル基、2−(n−ブチル)オクチル基、2,3,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−3−イル基、n−トリデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、2−(n−ヘキシル)オクチル基、1−メチルトリデシル基、n−ペンタデシル基、イソペンタデシル基、3,7,11−トリメチルドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、イソステアリル基、n−ノナデシル基、n−エイコサデシル基、3,7,11,15−テトラメチルヘキサデシル基、ヘニコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
これらのうち、2−エチルヘキシル基、イソステアリル基、またはイソデシル基が好ましい。
【0014】
前記一般式(1)中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、具体的にはオキシエチレン基、1,2−または1,3−オキシプロピレン基、1,2−、1,3−または1,4−オキシブチレン基が挙げられる。これらの内、ガラス繊維の集束性の観点から好ましいのはオキシエチレン基と1,2−オキシプロピレン基であり、特に好ましいのはオキシエチレン基である。nはアルキレンオキサイドの付加モル数であり、0〜30の整数であるが、好ましくは0〜10の整数である。nが2以上の場合、n個のAOは同一でも異なっていてもよく、異なる場合は−(AO)n−はランダム付加、ブロック付加または交互付加のいずれの付加形式でもよい。mは1〜3の整数であり、好ましくは1または2である。
【0015】
前記一般式(1)中、Mは水素原子、アルカリ金属、第2族金属、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。アルカリ金属としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等が挙げられ、第2族金属としては、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等が挙げられる。有機アンモニウム基とは、有機アミン由来のアンモニウム基であり、前記有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。これらのMの中でも、水素原子またはアルカノールアミン由来のアンモニウム基が好ましい。
【0016】
なお、上記リン酸エステル化合物は、単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。また、上記リン酸エステル化合物は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。市販品の例としては、例えば、Phoslex A−8、Phoslex A−180L(以上、SC有機化学株式会社製)、フォスファノール ED−200(東邦化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0017】
[水溶性または水分散性ポリマー]
本発明のガラス繊維用集束剤は、水溶性または水分散性ポリマー(B)を含む。前記水溶性または水分散性ポリマー(B)は、常温で水に完全に溶解もしくは微分散可能なポリマーであれば特に制限されるものではない。以下、本発明で用いられる水溶性または水分散性ポリマー(B)について説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。このため、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリル双方を包含する。例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸双方を包含する。
【0018】
水分散性ポリマーは、自己分散型と強制分散型に分類することができる。自己分散型は、ポリマー中に含まれるイオン性基を中和することによって水性媒体中に分散するが、分散安定性の点から、アニオン性基を有するポリマーを塩基性化合物で中和する方法が好ましい。強制分散型は、ポリマーを界面活性剤(カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、あるいは両性界面活性剤)などにより水性媒体中に分散する。
【0019】
水溶性または水分散性ポリマー(B)としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の水分散性樹脂、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン等の天然高分子が挙げられる。
【0020】
ポリオレフィン樹脂としては、オレフィン化合物の単独重合体または共重合体を用いることができる。該オレフィン化合物の単独重合体としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、または線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(1−ヘキセン)等の炭素数2〜20のα−オレフィンの単独重合体を挙げることができ、共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体等を挙げることができる。
【0021】
また、極性基が導入されたポリオレフィン樹脂も使用できる。極性基が導入されたポリオレフィン樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリエチレン、アクリル酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、アクリル酸変性ポリプロピレンなどの酸変性ポリオレフィン;エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニリデン共重合体、エチレン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−メタクリロニトリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリルアミド共重合体、エチレン−メタクリルアミド共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリルレート共重合体、エチレン−イソプロピル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−イソブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸金属塩共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、エチレン−ビニルプロピオネート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン−ビニル単量体共重合体;塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどの塩素化ポリオレフィン等が挙げられる。
【0022】
スチレン樹脂の例としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエン、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0023】
アクリル樹脂の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有する(メタ)アクリルレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル等のアクリル単量体の単独重合体または共重合体、アクリル単量体と他の単量体との共重合体等が挙げられる。前記アクリル単量体の単独重合体または共重合体の具体例としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。アクリル単量体と他の単量体との共重合体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−ブタジエン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0024】
ポリエステル樹脂の例としては、例えば、ジカルボン酸とジオールとを構成単位として含むポリエステルが挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、ジメチルマロン酸、α−メチルグルタル酸、β−メチルグルタル酸、2,4−ジエチルグルタル酸、イソプロピルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、イコサンジカルボン酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、1,3−または1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジ酢酸、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸;オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸の二量体、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、フェニルコハク酸、β−フェニルグルタル酸、α−フェニルアジピン酸、β−フェニルアジピン酸、ビフェニル−2,2’−および4,4’−ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムおよび5−スルホイソフタル酸カリウム、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA、ビスフェノールS、クレゾール、ヒドロキノン等が挙げられる。
【0025】
ポリアミド樹脂の例としては、例えば、ポリアミド46、ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/66、ポリアミド6/11、ポリ−1,4−ノルボルネンテレフタルアミド、ポリ−1,4−シクロヘキサンテレフタルアミドポリ−1,4−シクロヘキサン−1,4−シクロヘキサンアミド、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXD、これらのポリアミドのうち少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分により形成されるコポリアミド、ポリアミドエラストマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等のアミド基を有する単量体の単独重合体、またはこれらアミド基を有する単量体と、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のモノあるいはジカルボン酸またはジカルボン酸の無水物、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル化合物、(メタ)アクリル酸、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルメチルエチルケトン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン、p−スチレンスルホン、エチレン、プロピレン、イソブチレン等の共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0026】
ポリビニルアルコールの例としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、またはステアリン酸ビニルの単独重合体またはこれら共重合体をケン化したものが挙げられる。さらに、上記ビニルエステルの他に共重合可能なモノマーを共重合させて得られる共重合体樹脂をケン化したものでもよい。共重合可能なモノマーとしては、例えば、オレフィン(エチレン、プロピレン、α−ブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等)、不飽和モノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等)またはこれらのエステルもしくは塩、不飽和多価カルボン酸(マレイン酸、フタル酸、フマール酸、イタコン酸等)またはこれらの部分ないし完全エステル、塩もしくは無水物、不飽和スルホン酸(エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等)またはこれらの塩、アミド(アクリルアミド、メタクリルアミド等)、ニトリル(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル、ビニルケトン、塩化ビニル等が挙げられる。
【0027】
ポリウレタン樹脂の例としては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の各種ポリオール成分とポリイソシアネート化合物との反応によって得られるウレタン結合を有する樹脂が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびこれらの混合物、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、及びこれらの混合物、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
エポキシ樹脂の例としては、例えば、分子内に水酸基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、分子内にアミノ基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、分子内にカルボキシル基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、分子内に二重結合を有する化合物を酸化することにより得られる脂環式エポキシ樹脂、あるいはこれらから選ばれる2種類以上のタイプの基が分子内に混在するエポキシ樹脂などが用いられる。グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシノールとエピクロロヒドリンの反応により得られるレゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールとエピクロロヒドリンの反応により得られるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他トリスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂およびそれらの位置異性体やアルキル基やハロゲンでの置換体等が挙げられる。
【0029】
フェノール樹脂の例としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との重縮合によって得られる樹脂等が挙げられる。
【0030】
デンプン類の例としては、例えば、デンプン、加工デンプン、デキストリン、アミロース等が挙げられる。
【0031】
セルロース誘導体の例としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0032】
これら水溶性または水分散性ポリマー(B)は、単独で用いてもまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記水溶性または水分散性ポリマー(B)が共重合体である場合、共重合体の形態は特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0033】
これら水溶性または水分散性ポリマー(B)の中でも、ガラス繊維の集束性の観点から、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン樹脂およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の水分散性樹脂、またはデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびカゼインからなる群より選択される少なくとも1種の天然高分子が好ましい。より好ましくはポリオレフィン樹脂であり、さらに好ましくは無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、アクリル酸変性ポリプロピレンであり、特に好ましくは無水マレイン酸変性ポリプロピレンである。
【0034】
水溶性または水分散性ポリマー(B)の重量平均分子量は、好ましくは2万〜40万、より好ましくは3万〜20万である。なお、水溶性または水分散性ポリマー(B)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定した値を採用するものとする。
【0035】
水溶性または水分散性ポリマー(B)は市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。市販品の例としては、例えば、市販品の例としては、例えば、EASTMAN G3216、EASTMAN G3003、 EASTMAN G3015(以上、EASTMAN CHEMICAL COMPANY製)、POLYBOND(登録商標)3200、POLYBOND(登録商標)1001(以上、Chemtura Corporation社製)、ハイワックス(登録商標) NP0555A(三井化学株式会社製)、Exxelor(登録商標)PO 1015、Exxelor(登録商標)PO 1020(以上、Exxonmobil Chemical社製)、TOYOTAC(登録商標)H1000P、TOYOTAC(登録商標)H3000P(以上、東洋紡績株式会社製)、ユーメックス(登録商標)1001(三洋化成工業株式会社製)等が挙げられる。また、合成するための重合方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができ、例えば、高圧ラジカル重合法、中低圧重合法、溶液重合法、スラリー重合法、塊状重合法、気相重合法、乳化重合法等を挙げることができる。また、重合に使用する触媒も特に制限はなく、例えば、過酸化物触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。
【0036】
[ガラス繊維用集束剤]
本発明のガラス繊維用集束剤は、上記のリン酸エステル化合物(A)と、水溶性または水分散性ポリマー(B)とを含む。
【0037】
本発明のガラス繊維用集束剤中の水溶性または水分散性ポリマー(B)の含有量(濃度)は、ガラス繊維用集束剤の全質量に対して、0.1〜30.0質量%であることが好ましく、0.5〜25.0質量%であることがより好ましい。また、リン酸エステル化合物(A)の含有量は、水溶性または水分散性ポリマー(B)の量を100質量部として、1〜30質量部が好ましく、2〜20質量部がより好ましい。
【0038】
本発明のガラス繊維用集束剤の形態は、特に制限されず、水溶液、コロイダルディスパージョン、または乳化剤を用いた水性分散体(エマルジョン)など、いずれの形態であってもよい。しかしながら、各種添加剤を加えた後の液安定性や、ハンドリング性、環境負荷の観点から、乳化剤を用いた水性分散体(エマルジョン)の形態が好ましい。以下、好ましい形態である水性分散体(エマルジョン)を例にとり、本発明のガラス繊維用集束剤の製造方法を説明する。
【0039】
水性分散体の形態であるガラス繊維用集束剤の製造方法は、特に制限されないが、例えば、オートクレーブなどの加圧可能で通常の剪断力を有する装置に、水溶性または水分散性ポリマー(B)、水性媒体、および必要に応じて乳化剤や中和剤等を仕込み、水溶性または水分散性ポリマー(B)の軟化温度付近または軟化温度以上の温度まで加熱し撹拌することによって得られる水性分散体と、リン酸エステル化合物(A)とを混合することによって得られる。また、加熱する前に、水溶性または水分散性ポリマー(B)とリン酸エステル化合物(A)とを同時に混合してもよい。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、水溶性の有機溶剤を含有していてもよい。
【0040】
使用できる有機溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、t−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でもまたは2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶媒の添加量は特に制限されないが、水性媒体全体に対して0〜10質量部であることが好ましい。
【0041】
乳化剤は特に制限されないが、乳化性、安全性および各種添加剤を加えた時のゲル化抑制の観点から、ノニオン界面活性剤を用いることが好ましい。
【0042】
ノニオン界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(合成系)、ナロー型ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンβ−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリエチレングリコールモノアルキル脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
【0043】
さらに安定な水性分散体を得るために、乳化剤として上記ノニオン界面活性剤の他に、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、反応性界面活性剤、または高分子分散剤等を併用してもよい。
【0044】
カチオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩等の高級アルキルモノアミン塩、N−ドデシル−1,3−ジアミノプロパンアジピン酸塩、N−ドデシルプロピレンジアミンジオレイン酸塩等のアルキルジアミン塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0045】
アニオン界面活性剤としては、半硬化牛脂脂肪酸石鹸ナトリウム塩、ステアリン酸石鹸ナトリウム塩、オレイン酸石鹸カリウム塩、ガムロジン系不均化ロジンナトリウム塩、アルケニルコハク酸ジカリウム塩、ドデシル硫酸エステルナトリウム塩、無水重亜硫酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキル(C12,C13)エーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンドデシル硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。
【0046】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン系、スルホベタイン系、ホスホベタイン系、アミドアミノ酸系、イミダゾリニウムベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0047】
反応性界面活性剤としては、例えば、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の反応性2重結合を有する化合物等が挙げられる。
【0048】
高分子分散剤としては、例えば、分子内に複数のカルボキシル基を有するポリカルボン酸系高分子分散剤、分子内に複数のアミノ基を有するポリアミン系高分子分散剤、分子内に複数のアミド基を有する高分子分散剤、分子内に複数の多環式芳香族化合物を含有する高分子分散剤などが挙げられる。
【0049】
また、上記中和剤としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、モノラウリルアミン、トリメチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、アンモニア等があげられる。
【0050】
本発明のガラス繊維用集束剤は、通常用いられる配合剤、例えば、酸化防止剤、表面処理剤、潤滑剤、滑剤(あるいは風合改良剤)、帯電防止剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤熱安定剤、消泡剤、老化防止剤、レベリング剤等をさらに含んでいてもよい。
【0051】
上記酸化防止剤の例としては、例えば、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤;チオ尿素、テトラメチルチウラムジサルファイド、ジメチルジチオカルバミン酸およびその塩、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびその塩、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)等の含硫黄化合物;トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、トリフェニルホスファイト(TPP)、トリイソデシルホスファイト(TDP)等の含リン化合物;オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、尿素、グアニジンなどの含窒素化合物;等が挙げられる。
【0052】
上記表面処理剤の例としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、メタクリロシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、ボラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、クロム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤などのカップリング剤;コロイダルシリカ、コロイダルアルミナなどのコロイダルゲル等が挙げられる。
【0053】
上記潤滑剤としては、例えば、動植物油水添硬化物、パラフィンワックス、エステル系合成油などが挙げられる。
【0054】
上記滑剤(あるいは風合改良剤)としては、例えば、ブチルステアレート、テトラエチレンペンタミンジステアレート、水添ひまし油、イミダゾリン系脂肪酸アミド、カチオン性脂肪酸アミド、カチオン性ポリエチレンイミンポリアミド、ビスフェノールAポリ(オキシエチレン)エーテルグリコール等が挙げられる。
【0055】
上記帯電防止剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等の各種界面活性剤が挙げられる。
【0056】
上記pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸などの無機酸やクエン酸、コハク酸、りんご酸、乳酸などの有機酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカリなどが挙げられる。
【0057】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0058】
上記光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0059】
本発明のガラス繊維用集束剤が適用されるガラス繊維としては、含アルカリガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスのいずれの原料から製造されたものでもよく、またその製造方法も、特に限定されるものではなく、例えば、ロービング、チョップドストランド、ミルドファイバーなどの方法が挙げられる。
【0060】
上記ガラス繊維の形態は、特に限定されるものではないが、繊維長で0.5〜10mm、繊維径で1〜50μmが好ましく、中でも繊維長1〜5mm、繊維径2〜20μmのものを用いることが、物性または表面性が特に良好なものが得られる点で好ましい。
【0061】
本発明のガラス繊維用集束剤は、浸漬塗布、ローラー塗布、吹き付け塗布、流し塗布、スプレー塗布などの公知の方法によりガラス繊維に塗布することができる。得られたガラス繊維ストランドは、乾燥、切断してチョップドストランドとすることができる。また、上記ガラス繊維ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよい。
【0062】
本発明のガラス繊維用集束剤によるガラス繊維の処理は、本発明のガラス繊維集束剤が、ガラス繊維100質量部に対し、水溶性または水分散性ポリマー(B)残存固形分で好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部となるように処理するとよい。このガラス繊維集束剤の処理量が0.05質量部未満であるとガラス繊維集束剤としての機能が不十分となる場合があり、10質量部を超えると本発明の効果の更なる改善は期待されず、むしろ物性に悪影響を及ぼす虞がある。
【0063】
本発明のガラス繊維用集束剤で処理されたガラス繊維は、種々の樹脂と混合することができ、混合する際にガラス繊維の破損を十分に抑制できるので、優れた機械的性能を示すガラス繊維補強樹脂製品(FRP、FRTP)が得られる。本発明のガラス繊維集束剤で処理されたガラス繊維を混合することができる樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66)、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリアセタール、ポリイミド等、またはこれらのポリマーアロイが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。
【0064】
最近では、FRPをSMC(Sheet molding compound)法やBMC(バルク・モールディング・コンパウンド)法により成形する方法が知られている。特にSMC法の場合、ガラス繊維の集束性、酸性領域での集束剤液のpH安定性に優れ、適当なスチレン溶解性を持ち、SMCシートの強度があるため厚膜化に向いている。
【0065】
本発明のガラス繊維用集束剤は、各種補強用ガラス繊維の製造に用いられる。ガラス繊維補強樹脂製品の具体的用途としては、FRTPではアイロン、ドライヤーなどの熱器具の耐熱部品、コネクター、スイッチ、ケースなどの電子・電気部品、パソコン、ファクシミリ、複写機の部品、タンク、エンジンカバー、ドアミラー、バンパーなどの自動車内外部品、時計、カメラ、ガスバーナーなどの部品等が挙げられる。FRPでは、ユニットバス、システムキッチン、トイレ、浄化槽等の住宅設備、ガソリンタンク、オートバイ部品、サンルーフなどの自動車部品、食器洗浄などの家電製品、小型船舶、ヘルメット等が挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により何ら制限されるものではない。
【0067】
(実施例1)
攪拌機、温度計、温度コントローラーを備えた内容量1.0Lの乳化設備を有するオートクレーブに、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(EASTMAN CHEMICAL COMPANY製「EASTMAN G−3216」、重量平均分子量:60,000、酸価:16)186.3g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 1(青木油脂工業株式会社製、セフティカットLI−3062)25.8g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 2(東邦化学工業株式会社製、ペグノールO−6A)22.3g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(テイカ株式会社製、テイカパワーBN2060、有効成分:60質量%)6.7g、無水重亜硫酸ソーダ 0.7g、ジメチルエタノールアミン(日本乳化剤株式会社製、アミノアルコール 2Mabs)23.9g、イオン交換水 367.4g、分枝型リン酸エステル 1(SC有機化学株式会社製、Phoslex A−8)12.0g、を加え、165℃まで加熱し500rpmで1時間熟成した。その後、140℃まで冷却し内圧を下げた後、別途用意した165℃のイオン交換水185.2gを加え再度165℃まで加熱し、500rpmで1時間熟成した。熟成後40℃まで冷却し、固形分30%の無水マレイン酸変性ポリプロピレン水系分散体を得た後、別に用意したアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製、KBE−903)0.5gをイオン交換水4.5gとを混合・加水分解させた溶液に前記無水マレイン酸変性ポリプロピレン水系分散体45.0gとをよく混合させたものを1時間以上静置することで、ガラス繊維用集束剤A−1を得た。
【0068】
(実施例2〜5、比較例1〜6)
下記表1に示す各原料を下記表1に示す質量比で用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガラス繊維用集束剤 A−2〜A−5、B−1〜B−6を得た。なお、表中の数字の単位は「質量部」である。
【0069】
【表1】

【0070】
<評価>
直径13μmのガラス繊維フィラメントに、上記実施例および比較例で得られたガラス繊維用集束剤(A−1〜A−5およびB−1〜B−6)を、ガラス繊維に対して1.0質量%の有効成分付着量になるようにアプリケーターで塗布し、集束ガイドで200本のガラス繊維フィラメントを集束してガラスストランドを作製した。その後、3mm長に切断し180℃で3時間熱処理し、チョップドストランドを得た。このチョップドストランドの外観(表面状態)と集束性を観察した結果を表2に示す。外観の表面状態は目視によって判断した。また、集束性は次のようにして測定した。
【0071】
チョップドストランド50gを、内径約80mmの500mlビーカーに入れ、回転翼で1500rpmの回転数で特定時間攪拌し、次いで内径50mmのメスシリンダーに移し、その高さ(mm)を測定し集束性の指標とした。この値が低いほど集束性は高く、値が高い場合は集束性が悪い、つまり解繊しやすいことを示している。
評価結果を下記表2に示す。なお、下記表2中の攪拌時間0分とは、攪拌前の意味である。
【0072】
【表2】

【0073】
表2から明らかなように、本発明のガラス繊維用集束剤は、集束性に優れ、外観も良好であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されるリン酸エステル化合物(A)と、
水溶性または水分散性ポリマー(B)と、
を含む、ガラス繊維用集束剤。
【化1】

前記化学式(1)中、Rは炭素数8〜22の分枝状のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは0〜30の整数であり、mは1〜3の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、第2族金属、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。
【請求項2】
前記化学式(1)中のRが、2−エチルヘキシル基、イソステアリル基、またはイソデシル基である、請求項1に記載のガラス繊維用集束剤。
【請求項3】
前記水溶性または水分散性ポリマー(B)が、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン樹脂およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の水分散性樹脂、またはデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびカゼインからなる群より選択される少なくとも1種の天然高分子である、請求項1または2に記載のガラス繊維用集束剤。
【請求項4】
前記水溶性または水分散性ポリマー(B)がポリオレフィン樹脂である、請求項3に記載のガラス繊維用集束剤。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂が無水マレイン酸変性ポリプロピレンである、請求項4に記載のガラス繊維用集束剤。
【請求項6】
前記水溶性または水分散性ポリマー(B)の含有量が前記ガラス繊維用集束剤の全質量に対して0.1〜30質量%であり、
前記リン酸エステル化合物(A)の含有量が前記水溶性または水分散性ポリマー(B)の量を100質量部として、1〜30質量部である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス繊維用集束剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス繊維用集束剤で処理されたガラス繊維。

【公開番号】特開2012−117192(P2012−117192A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244991(P2011−244991)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】