説明

ガラス織布、及び、それを用いた不燃性シート

【課題】駅構内、ホテルやデパート等に用いられる画像を有する広告パネル用基材であって、風圧等の外力が作用する屋外部位にも使用できるように、引き裂き強度を効果的に高められる不燃性ガラス織布基材を提供する。
【解決手段】ガラス繊維糸を経糸4a及び緯糸4bとして製織してなるガラス織布4であって、経糸4aと緯糸4bとの交差角度αを直角以外の角度に設定して製織されてなるガラス織布と、これを樹脂材料でコーティングして構成される不燃性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維糸を経糸及び緯糸として製織してなるガラス織布、及び、それを用いた不燃性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維糸を経糸及び緯糸として製織してなるガラス織布は、不燃性などの優れた特性のために種々の用途に用いることが提案されている。そして、本出願人も、駅構内やホテルやデパート等に配設されている広告パネル等を形成するための画像用シートの基材として、従来のポリエステル樹脂等の合成樹脂フィルムに代えて経糸と緯糸との交差角度が直角となる一般的な平織りで製織されたガラス織布を採用した画像用シート(不燃性シートの一例)を先に提案した(下記特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−203724号公報
【特許文献2】特開2010−042587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の提案シートでは、不燃性のガラス織布の採用により主たる目的であった不燃性は十分に得ることができたものの、引き裂き強度については基材に合成樹脂フィルムを採用した従前のシートに劣っており、この点に未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、合理的な改良により、単層構造でも高い引き裂き強度を有するガラス織布、及び、それを用いた不燃性シートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
本発明の第1特徴構成は、ガラス繊維糸を経糸及び緯糸として製織してなるガラス織布であって、前記経糸と前記緯糸との交差角度を直角以外の角度に設定して製織されている点にある。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記経糸と前記緯糸との交差角度を30度〜60度に設定して製織されている点にある。
【0008】
本発明の第3特徴構成は、不燃性シートに係り、その特徴は、上記の第1又は第2特徴構成に記載のガラス織布を樹脂材料でコーティングして構成されている点にある。
【0009】
〔作用・効果〕
研究の結果、本発明人は、前記経糸と前記緯糸との交差角度を直角以外の角度に設定して製織すれば、経糸と緯糸との交差角度を直角に設定して製織する場合に比べて、引き裂き強度が大幅に高まることを知見した。
【0010】
このことは、経糸方向に沿って引き裂く状態に外力が作用した場合を例に挙げると、引き裂き方向に直交する方向から緯糸が傾いているために、その緯糸の傾き分だけ緯糸の引き裂き方向での断面積が増大すること、その断面積の増大などによる緯糸の強度増加により破断前に緯糸が引き裂き方向に沿って経糸上を摺動すること、緯糸の傾きに沿って緯糸から経糸の側に引き裂き力の一部が案内されることなどの作用が考えられるが、ともかく引き裂き方向に対して直交しない方向に沿う姿勢で糸が存在することが引き裂き強度を高める重要な要因になっていた。
【0011】
それ故に、ガラス繊維糸が経糸と緯糸との交差角度を直角以外の角度に設定して製織されている上記各特徴構成であれば、経糸方向や緯糸方向を含む面方向のいずれの方向に沿って引き裂く状態に外力が作用したとしても、経糸と緯糸のいずれかが引き裂き方向に直交しない方向に沿う姿勢で存在するから、単層構造でありながらも、あらゆる方向において高い引き裂き強度を有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】不燃性シートの層構成の一例を模式的に示す断面図
【図2】ガラス織布の一部を示す表面図
【図3】ガラス織布の一部を模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、広告パネル等に用いられる印刷用シート1(画像用シートの一例、不燃性シートの一例)の層構成を示し、このシート1は、半透明色又は乳白色の基材2と、該基材2の表側及び裏側に積層状態で配された外側樹脂層3とから、裏側からの照明光が適切に透過する適当な光透過性と光拡散性とを有するものに構成されている。
【0014】
前記基材2は、ガラス織布4がほつれないよう結束するべく、ガラス織布4にウレタン系樹脂(樹脂材料の一例)の適量を含浸させることにより、ガラス織布4をウレタン系樹脂からなる内側樹脂層5でコーティングして構成されている。
【0015】
前記外側樹脂層3は、酸化チタンとシリカを含むアクリル系樹脂(樹脂材料の一例)の一定量を基材2の表側及び裏側に塗布することにより、基材2の表側及び裏側をコーティングする状態で構成されている。
【0016】
なお、基材2の厚み寸法T2は概ね150〜250μm、樹脂層5の厚み寸法T5は概ね20〜40μmに設定されている。
【0017】
そして、図2、図3に示すように、前記ガラス織布4は、前記経糸4aと前記緯糸4bとの交差角度α(つまり、経糸方向Daと緯糸方向Dbの交差角度)を直角以外の角度に設定して製織されている。当該交差角度αは30度〜60度の範囲が好ましく、本例では45度を採用している。
【0018】
つまり、このガラス織布4は、経糸4aと緯糸4bとの交差角度αを直角以外の角度に設定することで、面方向(表面に沿う方向)のいずれの方向が引き裂き方向になるにしても、引き裂き方向に対して直交しない方向に沿う姿勢で経糸4aと緯糸4bのうちのいずれかが存在するように構成されており、これにより、単層構造でありながらも面方向のあらゆる方向で高い引き裂き強度を発揮する。
【0019】
なお、このガラス織布は、例えば、多数本の単繊維を用いて構成された60〜80TEX(TEX=1000×糸の重さ(g)/糸の長さ(m))のガラス繊維糸を用いて、所定の織密度(具体的には、経糸4aが45〜55本/25mm、緯糸4bが45〜55本/25mm)で構成されている。
【0020】
また、このガラス織布4は、経糸方向Daに沿う姿勢で並列させた複数本の経糸4aに対して前記交差角度αとなる緯糸方向Dbに沿って緯糸4bを打ち込む織り方(略言すれば、変形平織り)により織製することができる。
【0021】
上述の如く構成された印刷用シート1は、不燃性に加えて高い引き裂き強度を有するため、風圧等の外力が作用する屋外用の広告パネル等に特に好適に用いることができる。
【0022】
[別実施形態]
前述の実施形態では、本発明に係る不燃性シートの一例として、印刷画像を形成するための印刷用シート1を例に示したが、写真画像を印画するための印画シート(画層用シートの一例)や印刷画像や写真画像が施された画像シート、或いは、防煙用シート等であってもよく、要するに、不燃性を有するシートであれば如何なるものであってもよい。
【0023】
前述の実施形態では、不燃性シートを構成するのに、ガラス織布4の表側及び裏側に2層の樹脂層3、5を形成する場合を例に示したが、例えば、1層又は2層以上の樹脂層を形成してもよい。
【0024】
前述の実施形態では、不燃性シートを構成するのに、ガラス織布4の表側と裏側の両方に樹脂層3、5を形成する場合を例に示したが、例えば、表側と裏側の一方のみに樹脂層を形成してもよい。
【0025】
不燃性シートの厚み寸法や構成樹脂材料の種別等の具体的構成、及び、ガラス織布4の織密度や糸種等の具体的構成は、前述の実施形態で説明したものに限らず、種々の構成変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係るガラス織布及び不燃性シートは、不燃性と引き裂き強度の両方が要求される各種物品の構成材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
4 ガラス織布
4a 経糸
4b 緯糸
α 交差角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維糸を経糸及び緯糸として製織してなるガラス織布であって、
前記経糸と前記緯糸との交差角度を直角以外の角度に設定して製織されているガラス織布。
【請求項2】
前記経糸と前記緯糸との交差角度を30度〜60度に設定して製織されている請求項1記載のガラス織布。
【請求項3】
請求項1又は2記載のガラス織布を樹脂材料でコーティングして構成されている不燃性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−2022(P2013−2022A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136618(P2011−136618)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(591243893)株式会社フオトクラフト社 (26)
【Fターム(参考)】