説明

ガラス耐火扉及びこれが設けられた消防活動拠点

【課題】消防活動拠点内に放射される輻射熱を遮断し、建物内における消防活動拠点のスペース効率を高めることができるガラス耐火扉を提供することである。
【解決手段】建物12内に区画される階段室21と附室22とにより消防活動拠点11を構成し、附室22と居室18との間に消防活動拠点11と居室18との出入り口となるガラス耐火扉31を設ける。ガラス耐火扉31を耐火サッシとこれを支持する耐火ガラスとで構成し、この耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスを用いる。また、階段室21や附室22と居室18とを区画する耐火壁13,14を、遮熱型耐火ガラスを用いたガラス耐火壁13,14で構成するとともに、階段室21と附室22とを区画する耐火間仕切壁19を、遮熱型耐火ガラスを用いたガラス耐火間仕切壁19で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の特別避難階段室、特別避難階段附室、非常用エレベータの乗降ロビー等の消防活動拠点にその出入り口として設けられるガラス耐火扉およびこれが設けられた消防活動拠点に関する。
【背景技術】
【0002】
消防法の性能規定化により、ビルや学校、集合住宅棟等の建物内に、特別避難階段室、その附室(特別避難階段附室)、非常用エレベータの乗降ロビー等の消防活動拠点を設置することが義務付けられる。消防活動拠点は耐火壁により周囲を囲われることにより居室空間に対して区画された耐火区画として構成されており、これを拠点として消防活動が行われる。また、消防活動拠点は、火災時等における避難者の一時待避場所としても使用される。
【0003】
消防活動拠点を区画する耐火壁は、通常コンクリート製であり、また、耐火壁に出入り口として設けられる耐火扉は鋼鉄製となっているので、消防活動拠点と居室との間は見通しが効かない構造となっている。そのため、消防隊が消防活動拠点にまで駆けつけても、そこから居室内を目視することができないため、居室の火災状況を把握することが難しく、迅速な消防活動を行うことが困難であった。また、避難者にとっては、火災時等に避難階段を目視で確認することができないという問題があった。
【0004】
そこで、消防活動拠点に設ける耐火扉として、ガラス耐火扉を用いるようにした技術が開発されている(例えば特許文献1参照)。耐火扉としてガラス耐火扉を用いることにより、消防活動拠点と居室との間の見通しが確保され、消防隊の迅速な消火活動や避難者の迅速な避難が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−125877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のガラス耐火扉では、耐火ガラスの部分が火災の輻射熱を十分に遮断することができないので、火災時に耐火ガラスを介して消防活動拠点内の広い範囲に輻射熱が放射されることになる。そのため、輻射熱が放射される範囲の分だけ消防活動拠点を大きく設計する必要があり、建物内における消防活動拠点のスペース効率が低くなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、消防活動拠点内に放射される輻射熱を遮断し、建物内における消防活動拠点のスペース効率を高めることができるガラス耐火扉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガラス耐火扉は、耐火サッシにより耐火ガラスを支持してなり、建物内の消防活動拠点に設けられるガラス耐火扉であって、前記耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスが用いられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の消防活動拠点は、耐火壁により建物内に区画された消防活動拠点であって、耐火サッシにより耐火ガラスを支持してなるガラス耐火扉を備え、前記ガラス耐火扉を構成する耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスが用いられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の消防活動拠点は、耐火ガラスで形成され、前記耐火壁の一部を構成するガラス耐火壁を備え、前記ガラス耐火壁を構成する耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスが用いられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の消防活動拠点は、階段室と附室とを区画する耐火間仕切壁がガラス耐火間仕切壁で構成され、前記ガラス耐火間仕切壁を構成する耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスが用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガラス耐火扉を構成する耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスを用いるようにしたので、ガラス耐火扉を通して消防活動拠点と居室との間の見通しを確保しつつ、ガラス耐火扉により火災の輻射熱を遮断することができる。したがって、耐火扉としてガラス耐火扉を用いるようにしても、ガラス耐火扉を介して消防活動拠点内に放射される輻射熱を遮断し、その分、消防活動拠点のスペースを小さくすることを可能として、建物内における消防活動拠点のスペース効率を高めることができる。
【0013】
本発明によれば、上記構成に加えて、消防活動拠点を区画する耐火壁の一部をガラス耐火壁で構成し、これを構成する耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスを用いるようにしたので、ガラス耐火壁を通して消防活動拠点と居室との間の見通しを確保しつつ、ガラス耐火壁により火災の輻射熱を遮断することができる。したがって、耐火壁としてガラス耐火壁を用いるようにしても、ガラス耐火壁を介して消防活動拠点内に放射される輻射熱を遮断し、その分、消防活動拠点のスペースを小さくすることを可能として、建物内における消防活動拠点のスペース効率を高めることができる。
【0014】
本発明によれば、上記いずれかの構成に加えて、階段室と附室とを区画するガラス耐火間仕切壁を設け、ガラス耐火間仕切壁に用いられる耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスを用いるようにしたので、ガラス耐火間仕切壁により火災の輻射熱を遮断しつつ、階段室と附室との間の見通しを確保することができる。つまり、階段室から附室を介して居室内を見通すことができ、また、居室内から附室を介して階段室を見通すことができるので、消防隊の迅速な消火活動や避難者の迅速な避難が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態であるガラス耐火扉が設けられた消防活動拠点を示す説明図である。
【図2】(a)は図1に示すガラス耐火扉の正面図であり、(b)は同背面図である。
【図3】図2におけるA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2におけるB−B線に沿う断面図である。
【図5】図2におけるC−C線に沿う断面図である。
【図6】比較例として遮熱型耐火ガラスを用いない場合におけるガラス耐火扉を介した消防活動拠点内への輻射熱の放射状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1に示す消防活動拠点11は、ビル、学校、集合住宅棟等の建物12内に設けられ、火災時等において消防隊が建物12内で消防活動(消火活動)する際の拠点として使用される。この消防活動拠点11は、火災時等において、避難者の一時待避場所としても使用される。
【0018】
消防活動拠点11は四方を耐火壁13〜17により囲われ、建物12内に居室18と区画された耐火区画として形成されている。また、消防活動拠点11の内部には耐火間仕切壁19が設けられ、この耐火間仕切壁19により区画されて消防活動拠点11の内部には階段室21とその附室(特別避難階段附室)22とが設けられている。階段室21には避難階段(特別避難階段)23が設けられ、この避難階段23を用いて避難者が地上等へ避難し、また、消防隊が各階の附室22に向かうことができる。附室22に隣接して建物12には2基のエレベータ24が設けられ、附室22はこれらのエレベータ24の乗降ロビー(エレベータホール)としても使用される。
【0019】
消防活動拠点11を区画する耐火壁13〜17の一部、つまり附室22と居室18とを区画する耐火壁13と、階段室21と居室18とを区画する耐火壁14とは、それぞれガラス耐火壁13,14として構成されている。これらのガラス耐火壁13,14は壁材として耐火ガラス13a,14aを用いたものであり、耐火壁13,14としてガラス耐火壁13,14が用いられることにより、階段室21と居室18との間および附室22と居室18との間の見通しが確保されている。つまり、階段室21や附室22からガラス耐火壁13,14を通して居室18の内部を見通すことができ、また、居室18からもガラス耐火壁13,14を通して階段室21や附室22の内部を見通すことができる。
【0020】
このように、附室22と居室18との間の耐火壁13と、階段室21と居室18との間の耐火壁14とを、それぞれガラス耐火壁13,14で構成するようにしたので、階段室21と居室18との間および附室22と居室18との間の見通しが確保され、火災時等において消防活動拠点11に駆けつけた消防隊が、消防活動拠点11から居室18内を目視で確認することができる。したがって、消防活動拠点11から居室18内の状況を容易に確認することができ、この消防活動拠点11を利用した消防隊の迅速な消火活動が可能となる。また、居室18から消防活動拠点11内を見通すことができるので、火災時等において避難者が居室18から消防活動拠点11を目視で確認することができる。したがって、火災時等において避難者が消防活動拠点11を容易に認識でき、消防活動拠点11を利用した避難者の迅速な避難が可能となる。
【0021】
階段室21と附室22とを区画する耐火間仕切壁19は、ガラス耐火間仕切壁19として構成されている。ガラス耐火間仕切壁19は壁材として耐火ガラス19aを用いたものであり、耐火間仕切壁19としてガラス耐火間仕切壁19を用いることにより、階段室21と附室22との間の見通しを確保することができる。つまり、階段室21からガラス耐火間仕切壁19を通して附室22の内部を見通すことができ、附室22からもガラス耐火間仕切壁19を通して階段室21の内部を見通すことができる。また、階段室21からガラス耐火間仕切壁19とガラス耐火壁13とを介して居室18の内部を見通すことができ、居室18からもガラス耐火壁13とガラス耐火間仕切壁19とを介して階段室21の内部を見通すことができる。
【0022】
このように、階段室21と附室22との間の耐火間仕切壁19をガラス耐火間仕切壁19として構成するようにしたので、階段室21と附室22の間の見通しが確保され、火災時等において消防活動拠点11に駆けつけた消防隊が、階段室21から附室22の内部の状況を目視で確認することができる。したがって、階段室21から附室22内の状況を容易に確認することでき、この消防活動拠点11を利用した消防隊の迅速な消火活動が可能となる。また、附室22から階段室21内を見通すことができるので、火災時等において避難者が附室22から階段室21に向けて迅速に移動することができる。
【0023】
さらに、耐火壁13をガラス耐火壁13として構成するとともに耐火間仕切壁19をガラス耐火間仕切壁19として構成することにより、附室22を介して階段室21と居室18との間の見通しを確保することができる。つまり、火災時等において消防活動拠点11に駆けつけた消防隊は階段室21から附室22を介して居室18の内部の状況を目視で確認することができる。したがって、階段室21から居室18内の状況をさらに容易に確認することできるので、この消防活動拠点11を利用した消防隊の迅速な消火活動が可能となる。また、居室18から附室22を介して階段室21内を見通すことができるので、火災時に避難者が居室18から避難階段23の存在を容易に確認することができる。したがって、消防活動拠点11を利用した避難者の迅速な避難が可能となる。
【0024】
図1に示すように、附室22と居室18との間には、消防活動拠点11と居室18との間の出入り口として耐火扉31が設けられ、この耐火扉31を通して、避難者や消防隊が居室18と附室22との間を行き来することができるようになっている。また、耐火扉31は、これが閉じられたときには、ガラス耐火壁13とともに消防活動拠点11を耐火区画として居室18に対して区画するようになっている。
【0025】
この耐火扉31はガラス耐火扉31として構成され、居室18と附室22との間の見通しを確保できるようになっている。つまり、火災時等において消防活動拠点11に駆けつけた消防隊は、附室22からガラス耐火扉31を介して居室18の内部の状況を目視で確認することができる。したがって、この消防活動拠点11を利用した消防隊の迅速な消火活動が可能となる。また、居室18からガラス耐火扉31を介して消防活動拠点11内を見通すことができるので、火災時に消防活動拠点11を利用した避難者の迅速な避難が可能となる。
【0026】
階段室21と附室22との間には、これらの間の出入り口として耐火扉32が設けられ、この耐火扉32を通して、避難者や消防隊が階段室21と附室22との間を行き来することができるようになっている。また、耐火扉32は、これが閉じられたときには、ガラス耐火間仕切壁19とともに階段室21と附室22との間を区画するようになっている。
【0027】
この耐火扉32も、耐火扉31と同様に、ガラス耐火扉32として構成され、階段室21と附室22との間の見通しを確保できるようになっている。つまり、火災時等において消防活動拠点11に駆けつけた消防隊は、階段室21からガラス耐火扉32を介して附室22の内部の状況を目視で確認することができる。したがって、この消防活動拠点11を利用した消防隊の迅速な消火活動が可能となる。また、附室22からガラス耐火扉32を介して階段室21内を見通すことができるので、火災時等において避難者が附室22から階段室21内の状況を確認しつつ階段室21に向けて迅速に移動することができる。
【0028】
次に、これらのガラス耐火扉31,32の構造を図2〜図5に基づいて説明する。なお、これらのガラス耐火扉31,32としては基本的に同一のものが用いられるので、以下では居室18と附室22との間に設けられるガラス耐火扉31についてのみ説明する。
【0029】
図2に示すように、ガラス耐火扉31は耐火サッシ41と耐火ガラス42とを備えた矩形の板状に形成され、図示しないヒンジにより、建物12に固定されたドア枠43の内側に開閉自在に取り付けられている。
【0030】
ドア枠43は、門型に組まれた断面矩形のパイプ状の枠支持鋼材44を備え、その枠支持鋼材44の表側(附室22を向く側)面、裏側(居室18を向く側)面および内側(ガラス耐火扉31の側を向く側)面には、それぞれ厚さ5〜25mm程度の板状に形成された耐火被覆材45が貼り付けられている。この耐火被覆材45としては、例えば不燃材や耐火材等で形成されたものが用いられている。
【0031】
また、ドア枠43の表側と裏側においては、耐火被覆材45の表面に耐火被覆材よりも薄い化粧材46が貼り付けられている。この化粧材46としては、塗装した鋼材、アルミ材、ステンレス材等が用いられている。なお、枠支持鋼材44はアンカー47により建物12の柱や梁に固定されている。
【0032】
一方、ガラス耐火扉31の耐火サッシ41は、矩形の枠状に組まれた断面矩形のパイプ状の扉支持鋼材48を備えており、その扉支持鋼材48の表側(附室22を向く側)面と裏側(居室18を向く側)面には、それぞれ板状に形成された耐火被覆材49が貼り付けられている。この耐火被覆材49としては、ドア枠43の耐火被覆材45と同様に、例えば不燃材や耐火材等で形成されたものが用いられている。また、図5に示すように、耐火サッシ41の高さ方向の中間部にも、当該サッシ41の枠内開口を上下に区画するように断面矩形のパイプ状の扉支持鋼材48が水平に配置され、この部分における扉支持鋼材48の表側面と裏側面にも板状に形成された不燃材や耐火材等の耐火被覆材49が貼り付けられている。
【0033】
耐火サッシ41の左右両側枠部分と上側枠部分とにおいては、扉支持鋼材48の裏面側に貼り付けられる耐火被覆材49の厚みは表面側に貼り付けられる耐火被覆材49の厚みの半分程度とされている。なお、耐火サッシ41の下側枠部分と中間枠部分とにおいては、扉支持鋼材48の裏面側に貼り付けられる耐火被覆材49の厚みと表面側に貼り付けられる耐火被覆材49の厚みは同等とされている。
【0034】
耐火サッシ41の表側と裏側においては、耐火被覆材49の表面に化粧材51が貼り付けられている。この化粧材51としては、ドア枠43の化粧材46と同様に、塗装した鋼材、アルミ材、ステンレス材等が用いられている。
【0035】
耐火サッシ41の表面側には、その右側枠部分にガラス耐火扉31を開閉するための取っ手(引き棒)52が縦向きに取り付けられている。また、耐火サッシ41の裏面側には、その中間枠部分にガラス耐火扉31を開閉するための取っ手(押し棒)53が横向き(水平方向)に取り付けられている。
【0036】
ドア枠43の裏面側の耐火被覆材45は表面側の耐火被覆材45よりも枠内側に向けて突出しており、ガラス耐火扉31が閉じられると、この耐火被覆材45の突出部分が耐火サッシ41の左右両側枠部分および上側枠部分の裏面と対向する。これにより、ガラス耐火扉31が閉じられると、ドア枠43と耐火サッシ41との隙間がクランク状となり、火災時にドア枠43とガラス耐火扉31との隙間を介して煙、火炎、熱気等が居室18側から消防活動拠点11側に流れ込むことが抑制される。
【0037】
扉支持鋼材48の外周部分つまりガラス耐火扉31が閉じられたときにドア枠43の内側面や床面に対向する面には、それぞれ熱感応型発泡材61が設けられている。これらの熱感応型発泡材61は、所定温度にまで加熱されると発泡、膨張するものであり、例えば、ケイ酸ソーダ系、カーボングラファイト系のもの等が用いられている。熱感応型発泡材61を扉支持鋼材48の外周部分に設けることにより、火災時には、当該火災の熱を受けて発泡した熱感応型発泡材61によりドア枠43とガラス耐火扉31との間の隙間が塞がれる。したがって、火災時に、煙、火炎、熱気等が居室18側からガラス耐火扉31とドア枠43との隙間を介して消防活動拠点11側に流れ込むことが確実に防止される。
【0038】
耐火ガラス42は矩形の板状に形成され、それぞれ耐火サッシ41の枠内に形成される2つの開口部分に嵌め込まれている。
【0039】
耐火サッシ41の各開口部分の内周側は、それぞれ断面コの字の溝状に形成され、耐火ガラス42はその外周部分が当該溝状の部分に嵌め込まれて耐火サッシ41に取り付けられている。なお、耐火サッシ41の左右両側枠部分においては、耐火ガラス42を耐火サッシ41の枠内に配置した後に押縁62を取り付けることで固定されている。これらの押縁62としては、鋼材に化粧材を張ったものや塗装した鋼材、アルミ材、ステンレス材等が用いられる。
【0040】
耐火ガラス42の外周部分と耐火サッシ41の内面との間にはそれぞれセラミックファイバー製の保持材63が配置されるとともにシリコンシーラント等のシール材64が配置されている。また、耐火ガラス42の下端と扉支持鋼材48との間には不燃材で形成されたセッティングブロック65が配置され、このセッティングブロック65により耐火ガラス42が所定の高さ位置に支持されている。
【0041】
ガラス耐火扉31を構成する耐火ガラス42としては、遮熱型耐火ガラス42が用いられている。遮熱型耐火ガラス42としては、例えば、ケイ酸ソーダ積層ガラス、ゲル封入複層ガラスなどが用いられる。耐火ガラス42として遮熱型耐火ガラス42を用いることにより、居室18と附室22との間の見通しを高めつつ火災時にはガラス耐火扉31を介しての附室22内への輻射熱を遮断することができる。
【0042】
図6に示すように、ガラス耐火扉31を構成する耐火ガラス42として遮熱型耐火ガラスを用いない比較例の場合では、居室18と附室22との間の見通しを確保することはできるが、火災時には、ガラス耐火扉31を介して附室22の内部に輻射熱が広い範囲S(図6中ハッチングを付して示す)で放射されることになる。そのため、附室22内における安全性を確保するためには、附室22を輻射熱が放射される範囲Sの分だけ広く形成する必要があり、建物12内における消防活動拠点11(附室22)のスペース効率が低くなる。
【0043】
これに対して、本発明では、ガラス耐火扉31を構成する耐火ガラス42として遮熱型耐火ガラス42を用いることにより、居室18と附室22との間の見通しを確保しつつ、火災時には、ガラス耐火扉31を介しての輻射熱を遮断することができる。したがって、耐火ガラス42を介した輻射熱を考慮することなく、消防活動拠点11(附室22)を必要最低限の小さなスペースに形成することができる。
【0044】
このように、本発明では、消防活動拠点11に設けられるガラス耐火扉31を、遮熱型耐火ガラス42を用いて構成するようにしたので、ガラス耐火扉31を通して消防活動拠点11と居室18との間の見通しを確保しつつ、ガラス耐火扉31により火災の輻射熱を遮断することができる。これにより、輻射熱が放射されない分だけ附室22(消防活動拠点11)のスペースを小さくして、建物12内における消防活動拠点11のスペース効率を高めることができる。
【0045】
また、本発明の消防活動拠点11では、階段室21や附室22と居室18との間を区画するガラス耐火壁13,14においても、これを構成する耐火ガラス13a,14aとして遮熱型耐火ガラス13a,14aを用いるようにしている。これらの遮熱型耐火ガラス13a,14aとしては、ガラス耐火扉31の場合と同様に、例えば、ケイ酸ソーダ積層ガラス、ゲル封入複層ガラスなどが用いられている。ガラス耐火壁13,14を構成する耐火ガラス13a,14aとして遮熱型耐火ガラス13a,14aを用いることにより、火災時に、ガラス耐火壁13,14を介して居室18から階段室21や附室22つまり消防活動拠点11内へ向かう輻射熱をガラス耐火壁13,14により遮断することができる。
【0046】
このように、本発明では、消防活動拠点11を区画するガラス耐火壁13,14に遮熱型耐火ガラス13a,14aを用いるようにしたので、消防活動拠点11と居室18との間の見通しを確保するための耐火壁13,14としてガラス耐火壁13,14を用いるようにしても、ガラス耐火壁13,14を介した輻射熱を遮断することができる。したがって、耐火ガラス13a,14aを介した輻射熱を考慮することなく、その分、消防活動拠点11のスペースを小さくすることを可能として、建物12内における消防活動拠点11のスペース効率を高めることができる。
【0047】
さらに、本発明の消防活動拠点11では、階段室21と附室22との間を区画するガラス耐火間仕切壁19においても、これを構成する耐火ガラス19aとして遮熱型耐火ガラス19aを用いるようにしている。この遮熱型耐火ガラス19aとしては、ガラス耐火扉31やガラス耐火壁13,14の場合と同様に、例えば、ケイ酸ソーダ積層ガラス、ゲル封入複層ガラスなどが用いられている。ガラス耐火間仕切壁19を構成する耐火ガラス19aとして遮熱型耐火ガラス19aを用いることにより、火災時に、ガラス耐火間仕切壁19を介して附室22から階段室21へ向かう輻射熱をガラス耐火間仕切壁19により遮断することができる。
【0048】
このように、本発明では、階段室21と附室22とを区画するガラス耐火間仕切壁19を構成する耐火ガラス19aとして遮熱型耐火ガラス19aを用いるようにしたので、ガラス耐火間仕切壁19により火災の輻射熱を遮断することができる。したがって、耐火ガラス19aを介した輻射熱を考慮することなく、その分、消防活動拠点11のスペースを小さくすることを可能として、建物12内における消防活動拠点11のスペース効率を高めることができる。
【0049】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、本実施の形態においては、居室18と附室22との間のガラス耐火扉31と、階段室21と附室22との間のガラス耐火扉32の両方に遮熱型耐火ガラス42を用いるようにしているが、これに限らず、いずれか一方のガラス耐火扉31,32のみに遮熱型耐火ガラス42を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
11 消防活動拠点
12 建物
13,14 耐火壁(ガラス耐火壁)
13a,14a 耐火ガラス(遮熱型耐火ガラス)
15〜17 耐火壁
18 居室
19 耐火間仕切壁(ガラス耐火間仕切壁)
19a 耐火ガラス(遮熱型耐火ガラス)
21 階段室
22 附室(特別避難階段附室)
23 避難階段(特別避難階段)
24 エレベータ
31,32 耐火扉(ガラス耐火扉)
41 耐火サッシ
42 耐火ガラス(遮熱型耐火ガラス)
43 ドア枠
44 枠支持鋼材
45 耐火被覆材
46 化粧材
47 アンカー
48 扉支持鋼材
49 耐火被覆材
51 化粧材
52 取っ手(引き棒)
53 取っ手(押し棒)
61 熱感応型発泡材
62 押縁
63 保持材
64 シール材
65 セッティングブロック
S 範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火サッシにより耐火ガラスを支持してなり、建物内の消防活動拠点に設けられるガラス耐火扉であって、
前記耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスが用いられていることを特徴とするガラス耐火扉。
【請求項2】
耐火壁により建物内に区画され、ガラス耐火扉が設けられた消防活動拠点であって、
前記ガラス耐火扉を構成する耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスが用いられていることを特徴とする消防活動拠点。
【請求項3】
請求項2記載の消防活動拠点であって、
前記耐火壁の一部がガラス耐火壁で構成され、
前記ガラス耐火壁を構成する耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスが用いられていることを特徴とする消防活動拠点。
【請求項4】
請求項2または3記載の消防活動拠点において、
階段室と附室とを区画する耐火間仕切壁がガラス耐火間仕切壁で構成され、
前記ガラス耐火間仕切壁を構成する耐火ガラスとして遮熱型耐火ガラスが用いられていることを特徴とする消防活動拠点。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136913(P2012−136913A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291666(P2010−291666)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】