説明

ガラス

【課題】Pb、Ge、Ga等の酸化物、もしくはフッ素などのハロゲン成分を含まずとも、または、Sn、Cuの酸化物を多量に含まずとも、耐水性に優れ、封着時またはその後の熱処理においても結晶化しにくく、低い封着温度および所望の熱膨張係数を実現でき、可視光の透過率が高い封止用ガラスを提供すること。
【解決手段】酸化物基準のモル%表示で、3%〜70%のB、4%〜45%のZnO、0%〜30%のRO(但し、RはLi、Na、K、Csから選ばれる一種以上)の各成分を含有し、酸化物基準のモル%で表されたRO/Bの比の値が0.01以上1以下であり、ZnOとRO成分の合計量が10%以上70%以下であることを特徴とするガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、特に可視域の光を発光または受光する半導体を封止するための封止用ガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
可視光域の光を発光または受光する半導体素子は、発光ダイオードや有機EL、太陽光発電モジュールなどがあり、半導体素子を外気などから保護するために、半導体、金属、セラミックス、ガラスなどの各部品を封止することによって製造される。これらは一般的に樹脂によって封止されるが、近年、高寿命、高輝度、高出力などにより、樹脂の劣化が問題となってきた。そこで、被覆する部材としてガラスが注目されてきている。
電子部品やガラス部品等を封着、接着または被覆(以下、「封着等」という)するためのガラス質の封着材には、封着等の後の気密性を維持するため、良好な化学的耐久性が求められる。また、封着等の作業を行う際、ガラス質の封着材が充分に軟化し流動する温度、すなわち封着温度まで加熱しなければならないため、たとえば、電子部品等を気密封着する場合、電子部品の回路や基板等に熱によるダメージを与えないように、封着材の封着温度は、より低温であることが望まれている。さらに、強固な接着力を持たせるためには、封着材と封着等される部品等を構成する材料との接着強度が強く、かつ、封着材とそれらの材料の熱膨張係数(α)ができるだけ近似していることが必要となる。各種電子部品等に使用される基板やディスプレイパネル等の被封着部品は、一般的なガラスよりも熱膨張係数が小さいことが多いため、封着材としてのガラスは、一般的なガラスよりも熱膨張係数を小さくすることが求められる。
ところで、ガラスの熱膨張係数を小さくするということは、ガラスの原子レベルの結合を強くすることであり、結合が強くなれば、ガラスの封着温度が上がってしまい、前記の封着材の封着温度を低下させることと相反することとなる。したがって、ガラス質の封着材により、熱膨張係数が小さい材料を低温で、封着等するのは困難とされてきた。この困難を克服し、上記要求を満たすため、種々の低温軟化ガラス、すなわちガラス転移点(Tg)が低いガラスが封着材として開発されてきた。特に、従来、PbO−B系の低融点ガラスを用いた封着材は、ディスプレイパネルの封着や、ブラウン管のパネルとファンネルとの封着に広く一般に使用されてきた。しかし、鉛は環境等に対し好ましくない影響を与える成分であるため、PbO成分を含有するガラスの製造や廃棄物処理には、排水の水質検査や廃棄物の分別処理等が必要とされ、環境対策のために高いコストを要するので、鉛を含有しない封着材が望まれている。
特許文献1ではでは、P−Sn−O−F系ガラスの開示がされているが、錫や銅を多く含む低融点ガラスは還元雰囲気中で製造する必要があり、製造コストが高くなる。また、加熱中に価数変化が起こりやすいため、封着作業の際に周囲の金属や酸素と反応してしまい、結晶化などが起こり、緻密な封着ができない要因となる。特に多段階で熱処理を行う封着には不向きである。
さらに、フッ素などのハロゲン元素は揮発性が高く、有害であるため、環境などに対して好ましくない。封着の際にも、ハロゲン元素の揮発による組成変動によって、封着材の物性が変化してしまい、劣化や周囲の金属を腐食する要因となる。
特許文献2には、鉛を含有しない低融点ガラスとして、TeO−GeO−B系のガラスが開示されているが、このガラスは、モル%表記でTeOが40%以上含有することを必須としており、また微量成分ながらGeOやGaを含有している。これらの成分は単価が高く製造する上で不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−48574号公報
【特許文献2】特開2007−96257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、Pb、Ge、Ga等の酸化物、もしくはフッ素などのハロゲン成分を含まずとも、または、Sn、Cuの酸化物を多量に含まずとも、耐水性に優れ、封着時またはその後の熱処理においても結晶化しにくく、低い封着温度および所望の熱膨張係数を実現でき、可視光の透過率が高い封止用ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果B-ZnO系ガラスにおいて、酸化物基準のモル%で表されたRO/Bの比の値が0.01以上1以下であり、ZnOとRO成分の合計量が10%以上70%以下とすることによって、所望の低熱膨張係数を有し、低Tgかつ内部透過率に優れた封止用ガラスを見いだし、この発明を完成したものであり、その具体的な構成は以下の通りである。
【0006】
(構成1)
酸化物基準のモル%表示で
3%〜70%のB
4%〜45%のZnO、
0%〜30%のR
(但し、RはLi、Na、K、Csから選ばれる一種以上)
の各成分を含有し、酸化物基準のモル%で表されたRO/Bの比の値が0.01以上1以下であり、ZnOとRO成分の合計量が10%以上70%以下であることを特徴とするガラス。
(構成2)
酸化物基準のモル%表示で
0%〜70%のSiOおよび/または、
0%〜40%のAlおよび/または、
0%〜20%のMgOおよび/または、
0%〜20%のCaOおよび/または、
0%〜20%のSrOおよび/または、
0%〜20%のBaOおよび/または、
0%〜30%のZrOおよび/または、
0%〜30%のTiOおよび/または、
の各成分を含有する構成1に記載のガラス。
(構成3)
酸化物基準のモル%表示で
0%〜20%のBiおよび/または、
0%〜20%のTeOおよび/または、
0%〜20%のCuOおよび/または、
0%〜20%のSnOおよび/または、
0%〜10%のWOおよび/または、
0%〜10%のMoOおよび/または、
0%〜20%のNbおよび/または、
の各成分を含有する構成1または2に記載のガラス。
(構成4)
平均線熱膨張係数が30℃〜300℃において、100×10−7/℃以下であることを特徴とする構成1〜3のいずれかに記載のガラス。
(構成5)
ガラス転移点(Tg)が600℃以下であることを特徴とする構成1〜4のいずれかに記載のガラス。
(構成6)
厚さ1mm、波長588nmにおける内部透過率が80%以上であることを特徴とする構成1〜5のいずれかに記載のガラス。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、化学的に安定で熱伝導率が高いガラスを主成分としているため、長期間の近紫外または可視光の暴露によっても変色せず、温度変化などによる劣化が小さく、高透過率で信頼性の高い封止部材を提供することができる。
本発明の封止用ガラスは、厚さ1mm、波長588nmにおける内部透過率が80%以上である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について説明する。
なお、本明細書中において「酸化物基準のモル%表示」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩等が熔融時にすべて分解され酸化物へ変化すると仮定して、当該生成酸化物のモル%によってガラス中に含有される各成分を表記する方法である。
【0009】
成分はガラス中においてBO三角形とBO四面体の網目構造を形成する成分であり、その構成はアルカリ金属成分の含有量に大きく依存し、B成分とアルカリ金属成分は特定の含有量比において熱膨張係数の極小値やガラス転移点(Tg)の極大値を示す(硼酸異常現象)。酸化物基準のモル%で表されたBに対するアルカリ金属(RO)成分の含有量の比(以下、「RO/B比」という)が0.01未満では熱膨張係数は大きくなってしまい所望の熱膨張係数が得られない。RO/B比は0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上が最も好ましい。
O/B比が1より大きいとBO三角形が増大してしまい、所望の熱膨張係数が得られないとともにガラスとして不安定となり、失透や化学的耐久性が著しく悪化する原因となる。そのため、RO/B比は1以下が好ましく0.6以下がより好ましく、0.45以下が最も好ましい。
成分はガラス骨格を形成する成分であり、必須成分である。B成分の含有量は3%未満ではガラス化が困難であり、また熱膨張係数が大きくなる。この問題を克服するためにB成分の含有量は3%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、25%以上が最も好ましい。
成分の含有量が70%を超えると化学的耐久性が悪くなり、また失透しやすくなるためにガラス化が困難となる。この問題を克服するためにB成分の含有量は70%以下が好ましく、より好ましくは55%以下であり、最も好ましくは38%以下である。
【0010】
ZnO成分は溶融性および化学的耐久性を向上させる効果がある成分であり、必須成分である。ただし含有量が45%より多いとガラスが失透しやすくなる。その為、ZnO成分の含有量は45%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が最も好ましい。一方、ZnO成分の含有量が4%未満であると、ガラス化しづらくなるとともにTgが高くなり、封着温度が高くなる。さらに、封着する際に結晶化してしまい気密な封着ができなくなる。この問題を克服するために、ZnO成分の含有量は4%以上が好ましく、7%以上がより好ましく、10%以上が最も好ましい。
【0011】
O(但し、RはLi、Na、K、Csから選ばれる一種以上)成分は、溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であり、RO/B比を0.01以上1以下とすることで所望の熱膨張係数を得ることができるため必須成分である。
O成分の含有量が0.01%よりも少ないと所望の熱膨張係数が得られないとともにTgが高くなる。従って、RO成分の含有量は0.01%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上が最も好ましい。一方、RO成分の含有量が50%よりも多いと化学的耐久性が著しく悪化するとともに熱膨張係数が大きくなってしまう。その為、RO成分の含有量は50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、22%以下が最も好ましい。
【0012】
ただし、ZnO成分とRO成分の合計量が70%より多いとガラス化しづらくなるとともに化学的耐久性が著しく悪化し、さらに所望の熱膨張係数が得られない。従ってこの問題を克服するために、ZnO成分とRO成分の合計量は70%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下が最も好ましい。
一方、ZnO成分とRO成分の合計量が10%よりも少ないと失透しやすくなるとともに溶融性が著しく悪化し、溶融することが困難となる。その為、ZnO成分とRO成分の合計量は10%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が最も好ましい。
【0013】
SiO成分はガラス骨格を形成することが可能な成分であり、ガラス中においてSO四面体構造を有するため、Bのガラス骨格を安定化させ、化学的耐久性を向上させる成分であるので、任意成分であるが、含有することが好ましい。
SiO成分の含有量が70%よりも多いとガラスが分相し、失透するとともにTgが高くなる。従って、SiO成分の含有量は70%以下が好ましく、54%以下がより好ましく、44%以下が最も好ましい。
【0014】
Al成分はガラスを安定にするとともに化学的耐久性を向上させ、熱膨張係数を小さくする成分であり、任意成分であるが、含有するほうが好ましい。Al成分の含有量が40%よりも多いとガラスが失透してしまうとともにTgが高くなってしまう。従ってこの問題を克服するために、Al成分の含有量は40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が最も好ましい。
【0015】
LiO成分は、溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であり、任意で含有させることのできる成分である。ただし、含有量が30%よりも多いと化学的耐久性が著しく悪くなり、また封止の際の熱処理によって結晶化しやすくなる。従ってこの問題を克服するために、含有量は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、15%以下が最も好ましい。
【0016】
NaO成分は、溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であり、任意で含有させることのできる成分である。ただし、含有量が30%よりも多いと化学的耐久性が著しく悪くなり、また封止の際の熱処理によって結晶化しやすくなる。従ってこの問題を克服するために、含有量は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、15%以下が最も好ましい。
【0017】
O成分は、溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であり、任意で含有させることのできる成分である。ただし、含有量が30%よりも多いと化学的耐久性が著しく悪くなり、また封止の際の熱処理によって結晶化しやすくなる。従ってこの問題を克服するために、含有量は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、15%以下が最も好ましい。
【0018】
CsO成分は、溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であり、任意で含有させることのできる成分である。ただし、含有量が30%よりも多いと化学的耐久性が著しく悪くなり、また封止の際の熱処理によって結晶化しやすくなる。従ってこの問題を克服するために、含有量は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、15%以下が最も好ましい。
【0019】
MgO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為MgO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0020】
CaO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させ、耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為CaO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0021】
SrO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為SrO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0022】
BaO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為BaO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0023】
TiO成分は耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が30%より多いとガラスが失透しやすくなる。その為TiO成分の含有量は30%以下が好ましく、22%以下がより好ましく、15%以下が最も好ましい。
【0024】
ZrO成分は耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が30%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為ZrO成分の含有量は30%以下が好ましく、22%以下がより好ましく、10%以下が最も好ましい。
【0025】
Bi成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為Bi成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0026】
TeO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為TeO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0027】
CuO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為CuO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0028】
WO成分は融解性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が10%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為WO成分の含有量は10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、5%以下が最も好ましい。
【0029】
MoO成分は融解性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が10%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為MoO成分の含有量は10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、5%以下が最も好ましい。
【0030】
Nb成分は耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為Nb成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0031】
SnO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為SnO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0032】
平均線熱膨張係数が30℃〜300℃において、100×10−7/℃を越えると金型、特にカーボンなどとの熱膨張差が大きくなってしまい、破損や気密封止ができない要因となる。そのため、平均線熱膨張係数が30℃〜250℃において、100×10−7/℃以下が好ましく、75×10−7/℃以下がより好ましく、65×10−7/℃以下が最も好ましい。
【0033】
Tgが600℃を超えるガラスは封着温度が高くなってしまい電子部品等を破損させる要因となる。そのため、Tgは600℃以下が好ましく、550℃以下がより好ましく、500℃以下が最も好ましい。
【0034】
厚さ1mm、波長588nmにおける内部透過率が80%より小さいと可視域の光の発光効率または受光効率を減少させる原因となるため、厚さ1mm、波長588nmにおいて内部透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく95%以上が最も好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明に係るガラスについて、具体的な実施例を挙げて説明する。
【0036】
[ガラスの作製]
ガラスが酸化物基準のモル%で表わされた表1〜4に示す組成比となるように、珪砂、硼酸、酸化アルミニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化テルル、酸化銅、酸化ビスマス、酸化タングステン、酸化錫、酸化モリブデン、酸化ニオブ、亜砒酸、五酸化アンチモン等のガラス原料バッチを調製した。ガラス原料バッチはアルミナるつぼ、石英るつぼ、または白金坩堝へ充填し、電気炉により1000℃〜1600℃の温度で1〜4時間加熱溶融した。溶融したガラスを板状に成型し徐冷した。
【0037】
[ガラスの測定]
作製したガラスについて、ガラス転移点(Tg)、屈伏点(At)、30℃〜300℃における平均線熱膨張係数、透過率の測定を行った。その結果を表1〜4に示す。
【0038】
(ガラス転移点)
ガラス転移点(Tg)および屈伏点(At)については、示差熱分析装置(DTA) で昇温速度を10℃/分にして測定した。その結果を表1〜4に示す。
【0039】
(熱膨張係数)
作製したガラスについてJOGIS(日本光学硝子工業会規格)16−2003「光学ガラスの常温付近の平均線膨張係数の測定方法」に則り、温度範囲を30℃から300℃の範囲に換えて平均線膨張係数を測定した。測定した平均線膨張係数(α)の値を表1〜4に示す。
【0040】
(内部透過率)
作製したガラスについてJOGIS(日本光学硝子工業会規格)17−1982「光学ガラスの内部透過率の測定方法」に則り、内部透過率を測定した。その結果を表1〜4に示す。
【0041】
【表1】






















【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
表1〜4に示すとおり、本発明の実施例は、30〜300℃の温度範囲において、39〜87×10−7/℃の範囲の熱膨張係数(α)を有しており、表4に示した比較例と比べて、一段と小さく、カーボンや石英、シリコンの熱膨張係数(約5〜43×10−7/℃)に近似または同等の熱膨張係数を有している。また、Tgは425〜518℃であった。したがって、半導体発光素子や太陽光発電装置のように小さい熱膨張係数を有し、かつ、低温で封着することが望ましい電子部品等の封着等に用いるのに好適である。
【0046】
以上、説明したように本発明にかかるガラスは、低いガラス転移点(Tg)を有し、電子部品等を低温で、封着等することができ、化学的に安定で接着強度および化学的耐久性が優れている。また、フッ素成分を含有する必要がないことから、電子部品等の封着等に使用しても、その品質に悪影響を及ぼすことがないため、電子部品等の信頼性を高めることができる。さらに、鉛を含有しないため環境対策等にコストを要しない利点がある。また、本発明にかかるガラスは、上記効果に加えて、低い封着温度を維持しつつ、半導体発光素子や太陽光発電装置のように小さい熱膨張係数を有する材料を低温で、電子部品の回路や基板等に熱によるダメージを与えることなく、封着等することが可能であり、接着強度および機械的強度をより高める効果も奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準のモル%表示で、
3%〜70%のB
4%〜45%のZnO、
0%〜30%のR
(但し、RはLi、Na、K、Csから選ばれる一種以上)
の各成分を含有し、酸化物基準のモル%で表されたRO/Bの比の値が0.01以上1以下であり、ZnOとRO成分の合計量が10%以上70%以下であることを特徴とするガラス。
【請求項2】
酸化物基準のモル%表示で
0%〜70%のSiOおよび/または、
0%〜40%のAlおよび/または、
0%〜20%のMgOおよび/または、
0%〜20%のCaOおよび/または、
0%〜20%のSrOおよび/または、
0%〜20%のBaOおよび/または、
0%〜30%のZrOおよび/または、
0%〜30%のTiOおよび/または、
の各成分を含有する請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
酸化物基準のモル%表示で
0%〜20%のBiおよび/または、
0%〜20%のTeOおよび/または、
0%〜20%のCuOおよび/または、
0%〜20%のSnOおよび/または、
0%〜10%のWOおよび/または、
0%〜10%のMoOおよび/または、
0%〜20%のNbおよび/または、
の各成分を含有する請求項1または2に記載のガラス。
【請求項4】
平均線熱膨張係数が30℃〜300℃において、100×10−7/℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス。
【請求項5】
ガラス転移点(Tg)が600℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス。
【請求項6】
厚さ1mm、波長588nmにおける内部透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス。












【公開番号】特開2012−82085(P2012−82085A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228017(P2010−228017)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】