説明

ガリウム−68を得る方法及びその使用、並びにSAIF法を実施する装置

【課題】 68Ge/68Gaジェネレーターから68Gaを得る方法、及び得られた68Gaを使用して68Ga放射標識錯体を製造する方法の提供。さらに、68Gaを得るために使用できるキット、及び68Ga放射標識錯体の製造に使用できるキットを提供する。
【解決手段】 68Ge/68Gaジェネレーターからの溶出液を、対イオンとしてHCOを含む陰イオン交換体と接触させ、陰イオン交換体から68Gaを溶出することによって68Gaを得る。対イオンとしてHCOを含む陰イオン交換体の使用は、68Ge/68Gaジェネレーターからの68Gaの精製及び濃縮に特に適している。溶出液中に存在する68Geの量ばかりでなく擬似担体の量も削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、68Ge/68Gaジェネレーターから68Gaを得る方法及び得られた68Gaを使用して68Ga放射標識錯体を製造する方法に関する。本発明は、さらに、68Gaを得るのに使用できるキット、及び68Ga放射標識錯体の製造に使用できるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
PET撮像は、陽電子を放出する放射性トレーサー分子を用いる断層撮影核撮像技術である。陽電子が電子と出会うと、両方とも消滅し、その結果としてガンマ線の形のエネルギーが放出され、それがPETスキャナにより検出される。人体により用いられる天然物質をトレーサー分子として用いることにより、PETは人体の構造についての情報だけでなく、人体又はその特定領域の生理学的機能についての情報もまた提供する。一般的なトレーサー分子は、例えば、2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(FDG)であり、これは天然グルコースに似ており、18F原子が付加されている。前記陽電子放出フッ素により生成するガンマ線はPETスキャナにより検出され、人体の特定領域又は組織(例えば、脳又は心臓)におけるFDGの代謝を示す。トレーサー分子の選択は、何がスキャンされようとしているかに応じて決まる。一般に、関心のある領域に集まる、或いは、特定のタイプの組織(例えば複数のガン細胞)により選択的に取り込まれるトレーサーが選ばれる。スキャンは、放射性トレーサー分子が関心のある生化学的過程に入るある時間間隔の後に得られる動的な一連のもの、或いは、静的な画像からなる。スキャナはトレーサー分子の空間的及び時間的分布を検出する。PETはまた、放射性トレーサー分子の局所的濃度を測定できる定量的撮像法でもある。
【0003】
PETトレーサーに一般に使用される放射性核種は、11C、18F、15O、13N又は76Brである。最近、二官能性キレート剤と放射性金属を含む放射標識金属錯体に基づく新しいPETトレーサーが作り出された。二官能性キレート剤は、金属イオンに配位し、患者の身体の目標部位に結合することになるターゲティングベクターに結合しているキレート剤である。このようなターゲティングベクターは、人体の特定領域又は特定の疾患に恐らく関係する特定の受容体に結合するペプチドであってもよい。ターゲティングベクターはまた、例えば活性化された癌遺伝子に特異性な、従って腫瘍部位を目標とするオリゴヌクレオチドであってもよい。このような錯体の利点は、二官能性キレート剤が、例えば、68Ga、213Bi又は86Yのような、様々な放射性金属で標識できることである。従って、特別な性質を持つ放射標識錯体を、特定の用途に「合わせて作る」ことができる。
【0004】
PET撮像におけるトレーサー分子として使用されるGa放射標識金属錯体の製造では、68Gaが特に興味深い。68Gaは、68Ge/68Gaジェネレーターから得られ、これはサイクロトロンを必要としないことを意味する。68Gaは、89%まで2.92MeVの陽電子放出により崩壊し、その68分の半減期は、余計な放射線は無しに、多くの生化学的過程をin vivoで追跡するのに十分である。+IIIのその酸化状態により、68Gaは、様々なタイプのキレート剤と安定な錯体を形成し、68Gaトレーサーは、脳、腎臓、骨、血液プール、肺及び腫瘍の撮像に用いられている。
【0005】
しかしながら、68Ge/68Gaジェネレーターから得られた68Gaを、PETトレーサー分子として使用する68Ga標識金属錯体のために使用するのは、問題を引き起こす可能性がある。68Ge/68Gaジェネレーターからの68Ga溶出液は、68Geをしばしば含有し、そのことが、68Ga溶出液から生成する68Ga標識金属錯体の低い放射性核種純度を引き起こす。その上、その溶出液は、また、いわゆる擬似担体、すなわち、Fe3+、Al3+、Cu2+、Zn2+及びIn3+のような他の金属陽イオンも含有し、それがその後の錯体形成反応において68Ga3+と競合し、結局は比放射能を低下する。さらなる不都合は、68Ge/68Gaジェネレーターからの68Ga溶出液が、低い、すなわち、ピコモルからナノモルの範囲の68Ga濃度を有することである。その結果、その後の68Ga放射標識反応におけるキレート剤の量を、反応を起こすために高くしなければならず、そのことが同様に低い比放射能をもたらす。多量のキレート剤は、二官能性キレート剤すなわちターゲティングベクターと結合したキレート剤を含む68Ga放射標識PETトレーサーが生成するとき、患者が、好ましくない多量のこれらトレーサーを受け入れることになるので特に問題である。
【0006】
J.Schuhmacher et al,Int.J.appl.Radiat.Isotopes 32,1981,31−36は、68Ge/68Gaジェネレーターから得られた4.5NのHCl68Ga溶出液を、その溶出液中に存在する68Geの量を減少させるために処理するためのBio−Rad AG 1×8陰イオン交換体の使用について記載している。そのイオン交換体を溶出するために4mLの水を使用した。この方法の不利点は、陰イオン交換体から68Gaの溶出に必要な水の量が高いことである。二官能性キレート剤を含む68Ga放射標識PETトレーサーの製造にこの溶出液を使用するには、その溶出液は、例えば蒸発によってさらに濃縮する必要があり、それが、同様に、この放射性核種の短い半減期に起因する68Ga放射能の減少をもたらす。
【非特許文献1】J.Schuhmacher et al.J.appl.Radiat.Isotopes 32,1981,31−36
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
68Gaが、68Ga放射標識金属錯体の製造、特に、高い比放射能を有する二官能性キレート剤を含む68Ga放射標識PETトレーサーの製造に使用することができるそのような68Ge/68Gaジェネレーターから68Gaを得る方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
今回、対イオンとしてHCOを含む陰イオン交換体の使用が、68Ge/68Gaジェネレーターからの68Gaの精製及び濃縮に特に適していることが判明した。
【0009】
溶出液中に存在する68Geの量ばかりでなく擬似担体の量も削減することができた。その上、68GA3+の濃度を、最高でナノモルからマイクロモルの水準まで増加することができた。それ故、その後の錯体形成反応において、キレート剤の量を削減することが可能であり、それによって比放射能が大幅に増加した。この結果は、二官能性キレート剤すなわちターゲティングベクターと結合したキレート剤を含む68Ga放射標識PETトレーサーの生成に対して重要であり、それは、比放射能の増加により、患者に使用される上記トレーサーの量の削減が可能となるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、従って、68Ge/68Gaジェネレーターからの溶出液を、対イオンとしてHCOを含む陰イオン交換体と接触させ、前記陰イオン交換体から68Gaを溶出することによって68Gaを得る方法を提供する。
【0011】
68Ge/68Gaジェネレーターは当該技術分野で公知であり、例えば、C.Loc’h et al,J.Nucl.Med.21,1980,171−173、又は、J.Schuhmacher et al.Int.J.appl.Radiat.Isotopes 32,1981,31−36を参照。68Geを、例えばGa(SOを20MeVの陽子で照射することにより、シクロトロンによる生産により得ることができる。それはまた、例えば、68Geの0.5M HCl溶液として市販されてもいる。一般に、68Geは有機樹脂、或いは、二酸化スズ、二酸化アルミニウム又は二酸化チタンのような無機金属酸化物からなるカラムに充填されている。68Gaは、HCl水溶液により68GaClを生成しカラムから溶出する。従って、68Gaは、68Ga3+の形をしており、それは、例えば、68Ga標識PETトレーサーを製造するための68Ga標識錯体の合成に使用することができる。
【0012】
68Ge/68Gaジェネレーターに適するカラムは、二酸化アルミニウム、二酸化チタン又は二酸化スズのような無機酸化物、或いは、フェノール性水酸基(米国特許第4264468号)又はピロガロール(J.Schuhmacher et al.Int.J.appl.Radiat.Isotopes 32,1981,31−36)を含む樹脂のような有機樹脂からなる。好ましい実施形態において、二酸化チタンを含むカラムを備える68Ge/68Gaジェネレーターが、本発明による方法において使用される。
【0013】
68Ge/68Gaジェネレーターカラムから68Gaを溶出させるのに用いられるHCl水溶液の濃度は、カラムの材料に応じて決まる。適切には、68Gaの溶出には、0.05〜5M HClが使用される。好ましい実施形態において、溶出液は、二酸化チタンを含むカラムを備える68Ge/68Gaジェネレーターから得られ、68Gaは、0.05〜0.1M HCl、好ましくは約0.1M HClを用いて溶出する。
【0014】
本発明による方法の好ましい実施形態において、HCOを対イオンとして含む強陰イオン交換体、好ましくは、HCOを対イオンとして含む強陰イオン交換体が用いられる。さらに好ましい実施形態において、この陰イオン交換体は、第四級アミン官能基を備える。別の好ましい実施形態において、この陰イオン交換体は、ポリスチレン−ジビニルベンゼン系の強陰イオン交換樹脂である。特に好ましい実施形態において、本発明による方法において用いられる陰イオン交換体は、対イオンとしてのHCO、第四級アミン官能基を備える強陰イオン交換樹脂であり、この樹脂はポリスチレン−ジビニルベンゼン系である。
【0015】
適切には、本発明による方法において、陰イオン交換体から68Gaを溶出させるために水が用いられる。
【0016】
本発明による方法で得られた68Gaは、68Ga放射標識錯体を生成させるため、好ましくは二官能性キレート剤すなわちターゲティングベクターと結合したキレート剤を含む68Ga放射標識PETトレーサーの生成に好ましく使用される。
【0017】
従って、本発明のもう1つの態様は、
a)68Ge/68Gaジェネレーターからの溶出液を、対イオンとしてHCOを含む陰イオン交換体と接触させ、前記陰イオン交換体から68Ga3+を溶出することによって68Gaを得ること、及び
b)その68Gaをキレート剤と反応させることにより68Ga放射標識錯体を製造する方法である。
【0018】
本発明の方法において使用するための好ましいキレート剤は、生理的に許容できる形で68Gaを与えるものである。さらに好ましいキレート剤は、放射標識錯体を用いる診断調査のために必要な時間安定である68Gaとの錯体を形成するものである。
【0019】
適切なキレート剤は、例えば、DTPA、EDTA、DTPA−BMA、DOA3、DOTA、HP−DOA3、TMT又はDPDPのようなポリアミノポリ酸キレート剤である。これらのキレート剤は、放射線医薬品及び放射線診断薬ではよく知られている。それらの使用と合成は、例えば、米国特許第4647447号、同5362475号、同5534241号、同5358704号、同5198208号、同4963344号、欧州特許出願公開第230893号、同第130934号、同第606683号、同第438206号、同第434345号、国際公開第97/00087号、同第96/40274号、同第96/30377号、同第96/28420号、同第96/16678号、同第96/11023号、同第95/32741号、同第95/27705号、同第95/26754号、同第95/28967号、同第95/28392号、同第95/24225号、同第95/17920号、同第95/15319号、同第95/09848号、同第94/27644号、同第94/22368号、同第94/08624号、同第93/16375号、同第93/06868号、同第92/11232号、同第92/09884号、同第92/08707号、同第91/15467号、同第91/10669号、同第91/10645号、同第91/07191号、同第91/05762号、同第90/12050号、同第90/03804号、同第89/00052号、同第89/00557号、同第88/01178号、同第86/02841号及び同第86/02005号に記載されている。
【0020】
適切なキレート剤には、大環状キレート剤、例えば、ポルフィリン様分子、及び、Zhang et al.,Inorg.Chem.37(5),1998,956−963に記載されるペンタアザマクロ環状化合物、フタロシアニン、クラウンエーテル、例えば、セプルクレート(sepulchrate)、クリプテートなどのような窒素クラウンエーテル、ヘミン(プロトポルフィリンIX塩化物)、ヘム、並びに、平面正方対称をもつキレート剤が含まれる。
【0021】
本発明の方法においては、好ましくは、大環状キレート剤が用いられる。好ましい実施形態において、これらの大環状キレート剤は、ポリアザ及びポリオキソ大環状化合物におけるように、酸素及び/又は窒素のような少なくとも1個の硬い(hard)ドナー原子を含んでいる。好ましいポリアザ大環状キレート剤の例には、DOTA、TRITA、TETA及びHETAが含まれ、DOTAが特に好ましい。
【0022】
特に好ましい大環状キレート剤は、Ga3+への配位には必要不可欠ではないので、他の分子、例えばターゲティングベクターをそのキレート剤に結合するのに用い得る、カルボキシル基又はアミン基のような官能基を備えている。官能基を含むこのような大環状キレート剤の例は、DOTA、TRITA又はHETAである。
【0023】
さらに好ましい実施形態において、本発明による方法においては、二官能性キレート剤が用いられる。本発明における「二官能性キレート剤」は、ターゲティングベクターに結合しているキレート剤である。本発明による方法において有用な二官能性キレート剤に適するターゲティングベクターは、前記ターゲティングベクターを備える68Ga放射標識錯体が患者の体に投与された時に、その患者の体の目標部位に結合する化学的又は生物学的部分である。本発明による方法において有用な二官能性キレート剤に適するターゲティングベクターは、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、抗体又は抗体断片のようなポリペプチド、糖ポリペプチド、リポポリペプチド、RDG結合ペプチドのようなペプチド、糖ペプチド、リポペプチド、炭水化物、核酸、例えばDNA、RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチド、或いは、前記の化合物の一部、断片、誘導体又は複合体、或いは、比較的小さな有機分子、特に2000Da未満の小さな有機分子のような関心を引く他の化合物である。
【0024】
特に好ましい実施形態において、本発明による方法においては、大環状二官能性キレート剤が用いられる。好ましい大環状二官能性キレート剤には、ターゲティングベクターに、好ましくは、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチド、糖ポリペプチド、リポポリペプチド、ペプチド、糖ペプチド、リポペプチド、炭水化物、核酸、オリゴヌクレオチド、或いは、前記の化合物の一部、断片、誘導体又は複合体、並びに、小さな有機分子からなる群から選択されるターゲティングベクターに、特に好ましくは、ペプチド及びオリゴヌクレオチドからなる群から選択されるターゲティングベクターに結合したDOTA、TRITA又はHETAが含まれる。
【0025】
ターゲティングベクターをキレート剤に、リンカー基又はスペーサー分子を介して結合させることができる。リンカー基の例は、ジスルフィド、エステル又はアミドであり、スペーサー分子の例は、鎖状分子、例えば、リシン又はヘキシルアミン或いは短いペプチド系スペーサーである。好ましい実施形態において、放射標識ガリウム錯体のターゲティングベクターとキレート剤部分の間の結合は、ターゲティングベクターが体の中のその目標と、放射標識ガリウム錯体の存在により遮断されたり阻害されたりすることなく、相互作用し得るようなものである。
【0026】
本発明の好ましい態様は、
c)68Ge/68Gaジェネレーターからの溶出液を、対イオンとしてHCOを含む陰イオン交換体と接触させ、前記陰イオン交換体から68Gaを溶出することによって68Gaを得ること、及び
d)反応を、マイクロ波活性化を使用して行い、その68Gaをキレート剤と反応させることにより、68Ga放射標識錯体を製造する方法である。
【0027】
マイクロ波活性化の使用は、68Gaキレート剤の錯体形成の効率及び再現性を大幅に改善することが見出された。マイクロ波活性化によって、化学反応時間を大幅に短縮することができた。すなわち、反応は2分以内に完了する。10分の反応時間の短縮は68Ga放射能の約10%を節約するのでこれは明らかな改善である。その上、マイクロ波活性化は、また、より少ない副反応及び増大した選択性による放射化学的収率の増加も引き起こす。
【0028】
マイクロ波活性化を行うには、マイクロ波オーブン、好ましくは単一モードマイクロ波オーブンを使用するのが適切である。適切には、マイクロ波による活性化は、80〜120W、好ましくは、90〜110W、特に好ましくは100Wで実施される。適切なマイクロ波による活性化時間は、20秒〜2分、好ましくは、30秒〜90秒、特に好ましくは、45秒〜60秒の範囲である。
【0029】
反応の温度制御は、例えば、ペプチド又はタンパク質をターゲティングベクターとして含む二官能性キレート剤のような高温に弱いキレート剤が本発明による方法において用いられる場合に、望ましい。マイクロ波による活性化の継続時間は、反応混合物の温度のために、キレート剤及び/又はターゲティングベクターが分解することのないように、調節するべきである。本発明による方法において使用されるキレート剤が、ペプチド又はタンパク質を含んでいる場合、短時間、高温にする方が、より長時間、より低温にするより、一般に好ましい。
【0030】
反応が進行する間、マイクロ波による活性化を、連続的に、或いは、マイクロ波による活性化を何回か、実施してもよい。
【0031】
本発明のもう1つの態様は、68Ge/68Gaジェネレーターから68Gaを得るためのキットであって、それは、ジェネレーターカラム及び対イオンとしてHCOを含んだ陰イオン交換体を含む第2のカラムを含む。
【0032】
好ましい実施形態において、そのキットは、カラムを連結する手段をさらに含み、且つ/又はジェネレーターカラムから68Gaを溶出するためのHCl水溶液及び/又は陰イオン交換体から68Gaを溶出するための水を含む。HCl及び水は無菌気密容器中にある。
【0033】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明によるそのキットは、キレート剤、好ましくは二官能性キレート剤、すなわちターゲティングベクターと結合したキレート剤をさらに含む。
【実施例】
【0034】
実施例1
二酸化チタンカラムによる68Ge/68Gaジェネレーターから、0.1MのHCl(5〜6mL)を使用して68Gaを溶出した。その溶出液を、HClによって酸性化し、対イオンとしてのHCO及び第四級アミン官能基を含むポリスチレン−ジビニルベンゼン系強塩基性の陰イオン交換樹脂(SPEカートリッジChromafix 30−PS−HCO、Macharey−Nagel、ドイツ)を含有するカートリッジにかけた。99%を超える68Ga放射能がその樹脂に保持され、次いで200μlのHOで溶出した。
【0035】
比較例1a
実施例1で得た溶出液を、対イオンとしてのCl及び第四級アミン官能基を含む強塩基性の陰イオン交換樹脂(SAX SPEC、50mg、1mL、Isolute、英国、及びSAX SPEC、15mg、3mL、NTK kemi、米国)を含有するカートリッジにかけた。両方のイオン交換体とも、68Ga放射能の保持をなんら示さなかった。
【0036】
比較例1b
比較例1aにおいて使用したカートリッジのCl対イオンをOH対イオンと交換して、例1aの記載と同様にこの比較例を行った。68Ga放射能の保持は、10〜20%であった。
【0037】
実施例2
DOTA−D−Phe−Tyr−オクトレオチド(DOTA−TOC)の68Ga放射標識の比較研究
本発明の方法により得た68Ga及びさらなる陰イオン交換処理をしないで68Ge/68Gaジェネレーターから得た68Gaを、DOTA−D−Phe−Tyr−オクトレオチド(DOTA−TOC)の68Ga放射標識に使用した。
【0038】
2a)DOTA−TOCの68Ga放射標識
酢酸ナトリウムを68Ge/68Gaジェネレーターからの溶出液に(36mgを1mLに)加え、約5.5のpHに調整し、その混合物をよくかき混ぜた。DOTA−TOC(20nmol)を加え、その混合物を96℃で25分間加熱した。その反応混合物を室温まで冷却し、C−18 SPEカラム(HyperSEP S C18)にかけ、それを次に2mLの水で洗浄し、生成物をエタノール:水=50:50(1mL)により溶出した。
【0039】
反応混合物及び生成物は、Vydac RPカラム及びFast Desalting(高速脱塩)HR 10/10 FPLCゲルろ過カラムを使用するHPLCによって分析した。比放射能(ペプチドの単位質量当たりの放射能の量)は、1.5MBq/nmolであった。ポジティブモードのスキャニングを使用して[M+2H]2+を検出するFisons Platform(Micromass、マンチェスター、英国)により、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)を行った。DOTATOCは、m/z=711.26で検出され、真正Ga−DOTATOCは、m/z=746.0で検出された(計算値m/z=746.5)。
【0040】
2b)実施例1で得た68Gaを使用するDOTA−TOCの68Ga放射標識
実施例で得た200μlの68Gaに酢酸ナトリウムを加えて約5.5のpHに調整した。錯体形成反応を、10nmolのDOTATOCを使用して実施例2a)に記載したようにして行った。
【0041】
反応混合物及び生成物は、Vydac RPカラム及びFast Desalting(高速脱塩)HR 10/10 FPLCゲルろ過カラムを使用するHPLCによって分析した。比放射能は、5MBq/nmolであった。ポジティブモードのスキャニングを使用して[M+2H]2+を検出するFisons Platform(Micromass、マンチェスター、英国)により、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)を行った。DOTATOCは、m/z=711.26で検出され、真正Ga−DOTATOCは、m/z=746.0で検出された(計算値m/z=746.5)。
【0042】
2c)結果
本発明の方法で得た68Gaを使用すると、放射標識錯体の合成に必要なDOTATOCの量が減し、従って、3倍を超える比放射能を増加させることが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
68Ge/68Gaジェネレーターからの溶出液を、対イオンとしてHCOを含む陰イオン交換体と接触させ、陰イオン交換体から68Gaを溶出することによって68Gaを得る方法。
【請求項2】
68Ge/68Gaジェネレーターが二酸化チタンを含んでなるカラムを備える、請求項1記載の方法。
【請求項3】
68Ge/68Gaジェネレーターからの68Gaの溶出に0.05〜5MのHClを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
68Ge/68Gaジェネレーターからの68Gaの溶出に0.05〜0.1MのHClを使用する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記陰イオン交換体から68Gaの溶出に水を使用する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記陰イオン交換体が第四級アミン官能基を含む強陰イオン交換体である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記陰イオン交換体がポリスチレン−ジビニルベンゼン系強陰イオン交換樹脂である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法で得た68Gaをキレート剤と反応させることによって68Ga放射標識錯体を製造する方法。
【請求項9】
前記キレート剤が大環状キレート剤である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記キレート剤が硬いドナー原子、好ましくはO及びNを含む、請求項8又は請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記キレート剤が二官能性キレート剤である、請求項8乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記キレート剤が、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチド、糖ポリペプチド、リポポリペプチド、ペプチド、糖ペプチド、リポペプチド、炭水化物、核酸、オリゴヌクレオチド又はこれらの化合物の一部、断片、誘導体若しくは複合体、及び小さな有機分子からなる群から選択されるターゲティングベクターを含む二官能性キレート剤である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記反応をマイクロ波活性化を用いて実施する、請求項8乃至請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
68Ga放射標識PETトレーサーを製造するための、請求項8乃至請求項13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
68Ge/68Gaジェネレーターからの68Gaの調製用キットであって、ジェネレーターカラムと、対イオンとしてHCOを含んでなる陰イオン交換体を含む第2のカラムとを備えるキット。
【請求項16】
前記カラム同士を直列に連結する手段をさらに備える、請求項15記載のキット。
【請求項17】
ジェネレーターカラムから68Gaを溶出するためのHCl水溶液及び/又は陰イオン交換体から68Gaを溶出するための水をさらに備えており、好ましくはHCl及び水が無菌気密容器中にある、請求項15又は請求項16記載のキット。
【請求項18】
キレート剤、好ましくは二官能性キレート剤をさらに備える、請求項15乃至請求項17のいずれか1項記載のキット。
【請求項19】
68Ga放射標識PETトレーサーを製造するための請求項18記載のキットの使用。

【公表番号】特表2006−526764(P2006−526764A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506105(P2006−506105)
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001548
【国際公開番号】WO2004/089517
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】