説明

ガレート型カテキン含有ハードキャンディ

【課題】ガレート型カテキン、水溶性食物繊維および平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの3成分を含有しながら、凝集や沈殿がなく、ガレート型カテキン由来の苦渋味および水溶性コラーゲン由来の不快味が低減された、嗜好性の高いカテキン組成物を含み、しかも、カテキンの口内滞在時間が長く、携帯性に優れ、手軽に有効成分を摂取でき、苦渋味および不快味をさらにマスキングできるハードキャンディを提供する。
【解決手段】糖質を主体とする水分値12〜18重量%の組成物であって、全固形重量に対して(A)ガレート型カテキン1.0〜18.0重量%、(B)平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン5.0〜20.0重量%、および、(C)アラビアガム1.5〜20.0重量%を含有する組成物からなるカテキン組成物部とハードキャンディ部とから構成されることを特徴とするガレート型カテキン含有ハードキャンディ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガレート型カテキン、水溶性食物繊維および平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの3成分を含有するカテキン組成物を被覆したハードキャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の偏りやストレス、喫煙、飲酒、運動不足などにより、ガン、心疾患、脳卒中、糖尿病、高血圧、メタボリック症候群などの生活習慣病が問題となっており、日本人の死因の6割以上とも言われている。生活習慣病は完全な治療が困難なものも多く、また、厚生労働省の調べによると、2008年度の国民医療費は34兆8000億円にも上ることからも、病気を治療することだけでなく、今後は「未病」の考え方に見られる、「病気を予防する」ということが非常に重要である。その観点から、消費者の中でも健康志向は高まっており、特定保健用食品や栄養機能食品などの健康食品やサプリメントの市場は大きな成長を遂げている。また、紫外線や疲労から肌を守る、老化予防、便秘予防およびデトックスという観点から、コラーゲンや食物繊維をはじめとする美容健康食品に関する消費者の関心も高まっており、健康で快適な生活を送るために、我々の最も身近にある食品に求められている期待は非常に高い。
【0003】
中でも、いつでもどこでも有効成分を摂取できるといった、携帯性や手軽さを特長としたサプリメントや健康食品は大きな市場を形成している。その中でも特に、ポリフェノールや食物繊維、コラーゲンを配合した商品が注目されている。
【0004】
天然のポリフェノール類は多くの植物に含有され、その数は5000種以上に及ぶ。光合成によってできる植物の色素や苦味の成分であり、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きを持つ。ポリフェノール類は、様々な生物学的活性を有することが知られており、食物繊維や5大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)に次ぐ栄養素として、さまざまな研究が行われている。これまでにも様々な種類のポリフェノールが発見・抽出・開発され、医薬品、健康食品として多くの商品を生み出した。
【0005】
中でもポリフェノールの一種であるカテキン類には、抗酸化作用、抗菌作用、ガン抑制作用、コレステロール低下作用、インフルエンザウイルスの不活化、紫外線に対する皮膚保護作用などの生理活性が期待されている。既に、カテキン類の生理活性に着目した商品は数多く出されており、多様な心血管病予防にも関係した健康機能を高めるための茶、コレステロールの吸収を防ぐための茶、体脂肪の蓄積抑制や燃焼促進効果を有する茶などの茶飲料だけでなく、カテキン類を高濃度に含有させた清涼飲料などが新たな市場を形成している。
【0006】
一方、食物繊維については特に近年の日本人に不足している栄養素の一つであり、食物繊維の不足が近年の大腸ガン増加の原因とも言われている。食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分類できるが、水溶性食物繊維に関しては血糖値上昇抑制やコレステロール吸収抑制などの効果も知られており、健康増進のために欠かすことのできない栄養素の一つである。各種特許技術も提案されており、飲料の分野では例えば、難消化性デキストリンを含有する緑茶飲料(特許文献1)などがある。
【0007】
また、コラーゲンペプチドは、動物組織における主要な構成タンパク質であるコラーゲンを分解したものである。コラーゲンは、動物の皮膚、血管、内臓、骨などのいたるところに存在しており、肌の老化防止や関節痛の低減効果が期待されていることから、近年、美容健康飲食品、美容化粧品として幅広く利用されている。
【0008】
以上のように、カテキン類、食物繊維、コラーゲンには非常に高い美容健康増進効果が期待でき、既に大きな市場を形成しているが、上記3成分を同時に無理なく摂取できる嗜好性の高い食品は知られていない。その原因として、カテキン類の特有の強い苦渋味、コラーゲンとカテキン類を同時に添加したときに起こる凝集・沈殿、コラーゲンの臭いや不快味などが問題に挙げられる。
【0009】
コラーゲンは独特の動物臭及び不快味を有し、製品の嗜好性を著しく低下させる。コラーゲン臭及び不快味の改善は大きな課題となっており、特許技術としても例えば、コラーゲンペプチドに酵母エキスおよびカテキン等を含有することを特徴とするコラーゲン臭および不快味のマスキングされたコラーゲンペプチド含有飲料(特許文献2)、クロロゲン酸を含有させたコラーゲン臭の臭気抑制剤(特許文献3)など数多くの提案がなされている。
【0010】
一方、カテキン類の特有の苦渋味は、舌に残る残留感が非常に強く、嗜好性において十分に満足させるカテキン高含有飲食品は未だ市場に存在しないのが現状である。カテキン類の苦味をマスキングする技術提案はいくつかなされており、例えば、キナ酸を特定比率で併用する方法(特許文献4)、配糖化する方法(特許文献5)、平均分子量500〜4500の哺乳類由来のコラーゲンペプチドを少量添加する方法(特許文献6)などがある。しかし、いずれの方法も苦味の低減は図れるものの、そのマスキング効果は十分なものとは言えない。
【0011】
また、カテキン類の中でも特にエピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)のような分子内にガロイル基を有するガレート型カテキンは、収斂味とも表現される特有の渋味を有し、苦味に関してもエピカテキン(EC)、カテキン(C)の2〜3倍の強さをもつ。しかしガレート型カテキンは生理活性が非常に高く、例えばヒトインフルエンザウイルスの不活化や、LDLの酸化に対する抑制効果などに関して、非ガレート型カテキンよりも高い生理活性を示すことが報告されている。茶に含まれるカテキン類の大半がガレート型カテキンであること、ガレート型カテキンは他のカテキン類に比べ、より高い生理活性を示すことが多いことからも、ガレート型カテキンの苦渋味を軽減することは非常に重要な課題であると言える。
【0012】
一方、コラーゲンとカテキン類の組み合わせをはじめとする、タンパク質とポリフェノールを同時に添加したときに起こる凝集・沈殿に関しても、それを解決するための技術提案がいくつかなされている。
【0013】
例えば、プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方を含有し、平均分子量7,000未満のタンパク質分解ペプチドおよび平均分子量7,000以上のペプチドまたはタンパク質を含有する液状組成物が提案されている(特許文献7)。しかし、前記文献では味などの嗜好性に関する記述はなく、また凝集・沈殿を防止する効果も不十分であり、例えば、ガレート型カテキンと平均分子量5,000以上のコラーゲンペプチドのみを混合するとただちに沈殿・凝集が生じてしまう。
【0014】
また、植物ポリフェノール、コラーゲン、塩基性アミノ酸を含み、pH値が7.5以上に調整された、濁りおよび沈殿が防止された飲食品も提案されているが(特許文献8)、その用途は塩基性域に限定され、汎用性に乏しい。
【0015】
また、タンナーゼを作用させた茶抽出液とコラーゲンペプチドを含有することを特徴とするコラーゲンペプチド含有茶飲料の提案もあるが(特許文献9)、タンナーゼはガレート型カテキンを加水分解するため、ガレート型カテキン特有の優れた生理活性が損なわれてしまう。
【0016】
さらに、植物ポリフェノールとコラーゲンを含む液体に食品添加物としてペクチンを添加することにより、植物ポリフェノールとコラーゲンによる白濁物質および/または沈殿物質の生成が抑制された液体組成物の提案もなされている(特許文献10)。前記文献には植物ポリフェノールとしてガレート型カテキンを用いた実施例も記載されているが、本発明者らも該文献記載の実施例を試みたところ、ガレート型カテキンの苦渋味を感じるだけでなく、添加物であるペクチンの強い異味を感じ、嗜好性に乏しいものであることが確認された。
【0017】
他にも、植物ポリフェノールと水溶性タンパクを含む液体にキシログルクロノマンナンを添加することにより、沈殿・凝集が防止された液体組成物も提案されている(特許文献11)。当該文献に関しては、苦渋味や不快味に関する記述は一切なされておらず、また、キシログルクロノマンナンは白キクラゲ抽出物などとして得られる物質であり、非常に高価なものであるため、汎用性に乏しい。
【0018】
また、サイクロデキストリンとコラーゲンペプチドを含有するポリフェノール組成物の提案もなされており(特許文献12)、文献中でガレート型カテキンを用いた実施例も記述されている。しかし、本発明者らも該文献記載の実施例を試みたところでは、沈殿防止効果は十分ではなかった。
【0019】
また、飲料だけでなく、食品や菓子の分野においても、苦渋味や凝集・沈殿なくガレート型カテキン、水溶性食物繊維およびコラーゲンの3成分を高含有させることは非常に困難であり、ゼラチンとポリフェノールと凝集剤を含むゴム状組成物(特許文献13)などの一部の提案に限られていた。上記発明で得られるゴム状組成物は、チューインガムのようなゴム状の噛み心地であるため、汎用性に非常に乏しく、用途も限定され、チューインガムやグミキャンディ、ソフトキャンディのような咀嚼性を有するものとしての使用に限定されていた。
【0020】
一方、ハードキャンディは、一般的に砂糖と水飴を主原料として煮詰め、これに酸味料、香料、着色料などの添加物を加え、これを成型して製造される、光沢のあるガラス質の外観に特徴付けられる菓子類である。従来、ハードキャンディは、身近な嗜好食品として大量に消費されている。これらのハードキャンディも最近では消費者のニーズに合わせて従来にはないタイプの製品が数多く見かけられるようになっている。例えば、果汁や各種のエキスをたっぷりと使用したもの、虫歯になりにくい糖質を使用したもの、あるいは、低カロリーまたは低甘味の糖質を使用したものなどがあり、消費者の目的に合わせて選べるようになっている。特に、ハードキャンディの利点として、いつでもどこでも食すことができる手軽さと、様々な味が楽しめる高い嗜好性が挙げられる。そのため、ハードキャンディに機能性成分を含有させることで、健康キャンディやのど飴として多くの商品が市場に出されている。
【0021】
元来ハードキャンディは、舐めて味を楽しむものとして生まれた。その理由として、ハードキャンディは保存性を高めるため水分を極めて低くコントロールし、砂糖、水飴などの糖質を主成分とした物質であり、非常に硬いものとなることが挙げられる。そのため、必然的に舐めて食べるものとして定着していったと考えられ、今もその概念は人々に根付いており、「舐めて食する」という事がハードキャンディの最大の魅力となっている。その利点としては、のど飴や消臭の機能を持ち合わせたハードキャンディにおいて、口中滞在時間が長くなることによってその効果が持続することが挙げられる。
【0022】
カテキンの機能を十分に発揮させるためには、カテキンの抗菌作用や消臭作用を発揮させたい器官である程度の滞在時間が必要である。すなわち、のどが痛いときや、口臭を抑えたいときには、飲料によるカテキンではなく、口内やのどである程度滞在時間を有するようなカテキン食品すなわちハードキャンディが最も好適と考えられる。しかし、ハードキャンディにカテキンを含有させる試みはいくつか見られるが、飲料よりも口内滞在時間が長いため、カテキンの渋味や苦味が口内に溜まり、嗜好性を著しく低下させるものであった。
【0023】
一方、ハードキャンディにコラーゲンを直接入れると、生地飴の粘度が上がりすぎて成型が困難になり、また、高温で煮詰めるためコラーゲンが焦げてしまうなどといった問題が発生する。そのため、コラーゲンを含有するハードキャンディを製造することは困難であり、コラーゲンを含有するキャンディ菓子としては、グミキャンディやソフトキャンディに限られていた。また、ハードキャンディにグミキャンディまたはソフトキャンディを組み合わせた菓子が見られるが、歯つき等の問題が生じていた。
【0024】
以上のように、コラーゲンとカテキン類とくにコラーゲンとガレート型カテキンを添加して、凝集・沈殿を起こさず、ましてやガレート型カテキン、水溶性食物繊維およびコラーゲンの3成分を含有しながら苦渋味なく嗜好性の高いハードキャンディは知られていない。さらに、上記沈殿・凝集防止方法では高濃度の組成物を得ることは不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特許第4281940号公報
【特許文献2】特許第4428456号公報
【特許文献3】特許第3830137号公報
【特許文献4】特許第3378577号公報
【特許文献5】特許第3579496号公報
【特許文献6】特開2011−15632号公報
【特許文献7】特許第3689413号公報
【特許文献8】特許第4653052号公報
【特許文献9】特許第4673254号公報
【特許文献10】特許第3416102号公報
【特許文献11】特開2010−1275号公報
【特許文献12】特開2008−148588号公報
【特許文献13】特開2007−089579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的は、ガレート型カテキン、水溶性食物繊維および平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの3成分を含有しながら、凝集や沈殿がなく、ガレート型カテキン由来の苦渋味および水溶性コラーゲン由来の不快味が低減された、嗜好性の高いカテキン組成物を含み、しかも、カテキンの口内滞在時間が長く、携帯性に優れ、手軽に有効成分を摂取でき、苦渋味および不快味をさらにマスキングできるハードキャンディを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ガレート型カテキン、水溶性食物繊維および平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの3成分をある一定の比率に限定し、水溶性食物繊維としてアラビアガムを含有させ、コラーゲンの平均分子量を限定したところ、驚くべきことに凝集や沈殿が生じず、ガレート型カテキンの苦渋味とコラーゲンの不快味が低減され、嗜好性が高い組成物となることを発見した。さらに、前記カテキン組成物をハードキャンディにより被覆して、カテキン組成物部とハードキャンディ部の重量比率と、カテキン組成物部表面のキャンディに覆われている部分の割合をある一定の比率に限定することで、カテキンの口内滞在時間を延ばし、携帯性を有し手軽に有効成分を摂取できること、さらに、ハードキャンディ部によりガレート型カテキンの苦渋味をさらにマスキングできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0028】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕組成比率が以下の範囲にあるカテキン組成物部とハードキャンディ部から構成されることを特徴とするガレート型カテキン含有ハードキャンディ、
カテキン組成物部:
糖質を主体とする水分値12〜18重量%の組成物であって、全固形重量に対して
(A)ガレート型カテキン1.0〜18.0重量%、
(B)平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン5.0〜20.0重量%、および、
(C)アラビアガム1.5〜20.0重量%、を含有する組成物、
〔2〕カテキン組成物部表面の60%以上がハードキャンディ部により被覆されており、ハードキャンディ部の比率が50重量%以上であり、且つ、全体のガレート型カテキンの含有量が0.1重量%以上である〔1〕記載のガレート型カテキン含有ハードキャンディ
に関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明のガレート型カテキン含有ハードキャンディは、高い生理活性を持つガレート型カテキン、水溶性食物繊維およびコラーゲンの3成分を含有しながら、凝集および沈殿がなく、コラーゲン臭もなく、かつガレート型カテキン由来の苦渋味が顕著に低減された、口当たり滑らかで嗜好性の高い食品である。さらに、口内滞在時間が長いため、カテキンの持つ抗菌作用や消臭作用を口内やのどにおいて十分に発揮することができる。よって、本発明のガレート型カテキン含有ハードキャンディは、のど飴や健康食品として手軽に且つおいしく喫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1に実施例1で得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディの断面の概略図を示す。略円錘台形状の器型のハードキャンディの凹部にカテキン組成物が充填されている。このときのカテキン組成物部の被覆率は80%である。
【図2】図2に実施例13で得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディの断面の概略図を示す。略直方体状のハードキャンディの外殻を有し、その内部にカテキン組成物が内包されている。このときのカテキン組成物部の被覆率は100%である。
【図3】図3に実施例14で得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディの外観の斜視図を示す。円筒状のハードキャンディの内側の空洞部にカテキン組成物が充填されている。このときのカテキン組成物部の被覆率は80%である。
【図4】図4に実施例15で得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディの断面の概略図を示す。カテキン組成物が、2枚の板状のハードキャンディにより挟まれている。このときのカテキン組成物部の被覆率は80%である。
【図5】図5に実施例16で得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディの断面の概略図を示す。略円錐台形状の器型のハードキャンディの凹部にカテキン組成物が充填されている。このときのカテキン組成物部の被覆率は70%である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0032】
本発明のガレート型カテキン含有ハードキャンディは、(1)カテキン組成物部と(2)ハードキャンディ部により構成される。
【0033】
(1)カテキン組成物部
以下にカテキン組成物部について詳しく説明する。
【0034】
前記カテキン組成物部は、糖質を主体とする水分値12〜18重量%の組成物であって、全固形重量に対して
(A)ガレート型カテキン1.0〜18.0重量%、
(B)平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン5.0〜20.0重量%、および、
(C)アラビアガム1.5〜20.0重量%、
を含有するカテキン組成物からなる。
カテキン組成物は、白濁状態であり、かつ室温下での流動性が低い半固体状の物性と、乳脂肪クリームのような濃厚で滑らかな口当たりを有する。
【0035】
前記カテキン組成物に使用する糖質としては、例えば、砂糖、水飴、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元水飴、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、還元パラチノース、ポリデキストロース等が挙げられるが、特に限定はない。これらの糖質は、1種以上を用いればよい。
前記カテキン組成物の主体である糖質の含有量は、全固形重量に対して40〜90重量%であればよく、好ましくは55〜70重量%である。尚、全固形重量とは全重量から水分を除いたものである。
【0036】
前記カテキン組成物は、その水分値が12〜18重量%であり、好ましくは14〜16重量%である。カテキン組成物の水分値が少なすぎると、粘度が非常に高くなるため、キャンディへ充填するなどの操作が困難になり、また、滑らかな口当たりを損ない嗜好性を落とすという問題が生じる。一方、カテキン組成物の水分値が高すぎると、ハードキャンディ部へ水分が移行してハードキャンディ部がべたつく、結晶化するといった現象が起こり商品価値を落とす。なお、水分量は、カテキン組成物中に混合する水の量を増減させたり、加熱したりして調整することができる。また、本発明におけるカテキン組成物の水分量は、減圧乾燥法により乾燥前後でのカテキン組成物の重量差を測定することにより算出された値をいう。
【0037】
カテキンとは、緑茶、紅茶あるいはウーロン茶などの茶に多く含まれているポリフェノールの一種であり、主にエピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、カテキン(C)などのフラバン−3−オール類の総称であるが、本発明において「ガレート型カテキン」とは、分子内にガロイル基を有するカテキンであり、具体的には、ECg、EGCgなどを指す。これらは、精製品の他、粗製品でも良く、これらを含有する天然物もしくはその加工品でも良い。
【0038】
前記カテキン組成物におけるガレート型カテキンの含有量は、カテキン組成物の全固形重量に対して1.0〜18.0重量%であり、好ましくは2.0〜15.0重量%であり、より好ましくは3.0〜7.0重量%である。前記含有量が1.0重量%未満では、本発明の十分な健康増進効果および食感が得られない。また、前記含有量が18.0重量%を超えると、苦渋味のマスキングが十分ではなくなる。
【0039】
本発明において「平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン」とは、非水溶性の固体状コラーゲンを加熱・変性・分解などの処理を施して水溶性にしたコラーゲンであって、具体的には、平均分子量4,000以上のコラーゲンペプチドから分子量30万程度のゼラチンまでが含まれる。
なお、非水溶性の固体状コラーゲンを加熱・変性させて得られるものがゼラチンであり、該ゼラチンを加水分解して得られるものがコラーゲンペプチドである。
【0040】
本発明においてコラーゲンペプチドは、コラーゲンあるいはゼラチン等の変性コラーゲンを酸やアルカリあるいは酵素等で加水分解させたものをいう。当該原料となるコラーゲンの由来は特に限定されず、豚、牛、鶏、魚など多様な動物から抽出されたものを使用できる。
【0041】
本発明に用いられるコラーゲンペプチドの平均分子量は、4,000以上である。好ましくは5,000以上である。4,000より少ない場合、苦渋味のマスキングの効果が不十分となり、さらにコラーゲンの臭いや不快味が強く、嗜好性に劣るものとなってしまう。尚、コラーゲンペプチドの分子量に関する情報は、粘度測定やHPLCおよびゲルろ過法等の定量方法によって得られ、すでに公知の手法を使用することが可能である。ここで平均分子量とは重量平均分子量をいう。
【0042】
本発明では、前記コラーゲンペプチドのかわりにまたは前記コラーゲンペプチドとともにゼラチンを使用することもできる。通常、ゼラチンを含有する組成物は、ゲルを形成するか、もしくは高い粘度を有するため、ハンドリングが悪く、使用用途が限定されてしまう。しかし、本発明で用いるカテキン組成物においては、驚くべきことに、ゼラチンを使用した場合もゲル化することなく、同水分値の糖液と比較して同程度の粘性の組成物が得られる。コラーゲンペプチドはゼラチンを酵素等で加水分解する必要があるため、ゼラチンよりもコストが高く、ゼラチンを原料としてコラーゲン高含有組成物を製造できることは非常に有益である。本発明においてゼラチンは、由来生物や製法、ゼリー強度に関して特に限定されずに使用することができる。
前記ゼラチンとしては、分子量が数万から分子量30万程度のものであればよい。
【0043】
前記カテキン組成物における平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの含有量は、カテキン組成物の全固形重量に対して5.0〜20.0重量%であり、好ましくは6.0〜18.0重量%であり、より好ましくは6.0〜10.0重量%である。前記含有量が5.0重量%未満では、苦渋味のマスキング効果が十分ではなくなる。また、前記含有量が20.0重量%を超えると弾力が出てしまい、滑らかな食感が損なわれる。
【0044】
本発明において「アラビアガム」とは、アカシアガム、アラビアゴムまたはアカシア食物繊維とも呼ばれ、熱帯地方に生育するマメ科のアラビアゴムノキ(学名Acacia senegal)から採取される多糖類である。
【0045】
前記カテキン組成物におけるアラビアガムの含有量は、カテキン組成物の全固形重量に対して1.5〜20.0重量%であり、好ましくは3.0〜15.0重量%であり、より好ましくは6.0〜10.0重量%である。前記含有量が1.5重量%未満では、前記水溶性コラーゲンと前記ガレート型カテキンとを混合した場合に生じる凝集・沈殿を防止する効果が十分得られず、20.0重量%を超えると、粘性が高く、滑らかな食感が損なわれる。
【0046】
また、前記カテキン組成物には、所望により、果汁、野菜汁、豆乳、乳製品、茶類、コーヒー、酸味料、香料、着色料、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、油脂、乳化剤、高甘味度甘味料、食感改良剤(ペクチン、カラギーナン、寒天、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガントガム、グァーガム、カラヤガム、タマリンドシードガム)等の任意成分を含有してもよい。これらの任意成分を適宜選択することで、嗜好性の幅を広げることができる。尚、前記任意成分は、嗜好性や物理的安定性に悪影響を与えない範囲で使用すればよい。
【0047】
なお、本発明で用いるカテキン組成物は、成分の組成によってはクリーム様の流動性を有するが、いわゆる乳製品のクリームではない。そのため、乳原料や脂質を必ずしも必要としない。
【0048】
前記カテキン組成物の製造は、ガレート型カテキンとコラーゲンを混合する前に、ガレート型カテキンとコラーゲンの少なくとも一方を、アラビアガムを含有する溶液に予め混合溶解させる必要がある。尚、糖質の添加はいずれの工程で行なってもよい。
即ち、前記カテキン組成物は、下記A1とB2、またはA2とB1、またはA2とB2を混合する工程により製造することができる。糖質は任意の段階で添加すればよい。
A1:ガレート型カテキン又はそれを含有する液体
A2:ガレート型カテキンとアラビアガムとを含有する液体
B1:平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン又はそれを含有する液体
B2:平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンとアラビアガムとを含有する液体
【0049】
前記の各原料を混合して得られる液体を作製するために使用する溶媒としては、水であればよいが、必要に応じて、エタノール、グリセリンなどの他の溶媒を用いてもよい。前記溶媒の使用量としては、各原料が溶解できる量であれば特に限定はない。
また、前記各成分を混合する際の温度などの条件については、成分の変性などが生じない条件であればよく、特に限定はない。
【0050】
本発明では、前記のように作製した流動性を有するカテキン組成物を、所望の型に成型したハードキャンディ部の内部や表面などの各部に充填、塗布などすることでカテキン組成物部を形成させる。
【0051】
(2)ハードキャンディ部
以下にハードキャンディ部について詳しく説明する。
【0052】
本発明においてハードキャンディ部は、ハードキャンディで構成されていればよい。したがって、ハードキャンディ部の主要な構成成分は、ハードキャンディで一般的に使用される糖質が主原料となる。たとえば、砂糖、水飴、ぶどう糖、果糖などの糖類や、マルチトール、パラチニット、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコールが挙げられる。これらの糖類の使用量は、所望するハードキャンディの性質に基づいて適宜選択すればよい。また、前記ハードキャンディ部には、乳製品、果汁、植物油脂、食塩などを適宜添加してもよいし、添加物として、酸味料、香料、着色料、調味料などを任意に添加することも可能である。
【0053】
前記ハードキャンディ部に用いるハードキャンディは、公知のハードキャンディの製造方法に準じて製造することができる。例えば、前記ハードキャンディは、前記糖質を水中で混合溶解し、必要に応じて添加物を加え、真空釜等の公知の手段で濃縮して製造することができる。
なお、前記ハードキャンディの水分値としては、5.0重量%以下が好ましい。
【0054】
本発明では、前記のように濃縮したハードキャンディを所望の型に充填するなどして成型することで、ハードキャンディ部を形成させる。
【0055】
(3)ガレート型カテキン含有ハードキャンディ
以下に、本発明のガレート型カテキン含有ハードキャンディについて詳しく説明する。
【0056】
本発明のガレート型カテキン含有ハードキャンディにおいて、ハードキャンディ部によるカテキン組成物部の被覆率は60%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。ここで被覆率とは、カテキン組成物部全表面積に占めるハードキャンディ部により覆われている部分の面積の割合をいう。カテキン組成物部の被覆率が小さいと、ハードキャンディ部によるカテキンの苦渋味のマスキング効果が十分に発揮できず、また、カテキン組成物が流れ出て、キャンディどうしが接着するなどの不都合が生じる。前記被覆率は、ハードキャンディ部により被覆する前のカテキン組成物部の全表面積を測定した後、被覆後に露出しているカテキン組成物部の表面積を再度測定することで算出することができる。なお、前記表面積は、常法により測定することができる。例えば、表面積の測定は、目視で直接カテキン組成物部の外形を測定してもよいし、オリンパス株式会社製のデジタルマイクロスコープ「MVX−XD System」等の市販の測定器を用いて測定してもよい。
【0057】
本発明のガレート型カテキン含有ハードキャンディは、ハードキャンディ部の比率が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。ハードキャンディ部の比率が低いと、カテキン組成物部をハードキャンディ部で被覆する際、十分な被覆率を達成することが困難になる。
また、本発明のガレート型カテキン含有ハードキャンディにおいて、カテキン組成物部の比率は、前記ハードキャンディ部の残部であるが、5重量%以上であることが好ましく、15重量%以上50重量%以下であることがより好ましい。
【0058】
本発明のガレート型カテキン含有ハードキャンディは、キャンディ全体におけるガレート型カテキンの含有量が0.1〜8.0重量%であることが好ましく、0.5〜5.0重量%であることがより好ましい。ガレート型カテキンの含有量が少なすぎるとカテキンの十分な効果が期待できない。また、ガレート型カテキンの含有量が多すぎると、ハードキャンディによる苦渋味のマスキング効果が十分ではなくなる。
【0059】
本発明のガレート型カテキン含有ハードキャンディは、予め所望の形状にしておいたハードキャンディにカテキン組成物を充填又は内包、サンド等することにより得られる。ガレート型カテキン含有ハードキャンディの形状としては、例えば、ハードキャンディ部でカテキン組成物部を内部に包んだ形状、凹部を有する器形状のハードキャンディ部の凹部にカテキン組成物が充填された形状、棒状、円柱状、円筒状等の形状のハードキャンディ部の間にカテキン組成物がサンドされた形状などが挙げられるが、いずれもクリーム様の流動性を有するカテキン組成物が簡単に流れ出ないような形状であれば特に限定はない。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中、「部」は重量部を示す。
【0061】
(実施例1)
グラニュー糖40部、酵素水飴(Bx.75、日本コーンスターチ株式会社製、以下同じ)60部、アラビアガム(商品名:インスタントガムAB、コロイドナチュレルジャパン社製、以下同じ)10部を水10部に溶かした溶液、ガレート型カテキン含有製剤(商品名:サンフェノン90S、ガレート型カテキン含有率65%、太陽化学株式会社製)6.5部を水6.5部に溶かした溶液を混合加熱し、水分値8%になるまで真空釜にて濃縮し、続いてコラーゲンペプチド(商品名:SCP−5100、新田ゼラチン株式会社製、平均分子量5,000)10部を水10部に溶かした溶液を添加混合し、水分値15重量%のカテキン組成物を得た。
別途、グラニュー糖500部、酵素水飴425部を水に混合溶解し、真空釜にて濃縮し、香料を少量加えて水分値2.5重量%のハードキャンディを得た。
得られたハードキャンディを約130℃に加熱して、キャンディ用モールドに4.0g流し込み、上部を型で押し凹部を成型した。続いて、前述で得られたカテキン組成物1.0gを、前記ハードキャンディの凹部に充填することで、カテキン組成物部とハードキャンディ部とから構成されるガレート型カテキン含有ハードキャンディを作製した(図1)。
【0062】
得られた試料について、5名のパネラーによる官能試験を行なった。下記に示す官能評価方法によって得られた結果を表1に示す。
【0063】
<官能評価方法>
(1)苦渋味に関する評価
5名のパネラーが、下記の内容に従って各試料の苦渋味強度を3段階評価し、その平均値を四捨五入して整数で表したものを評点とする。
苦渋味強度:内容
1:苦渋味をほとんど感じない。
2:苦渋味を少し感じる。
3:苦渋味を強く感じる。
【0064】
(2)コラーゲン臭に関する評価
5名のパネラーが、下記の内容に従って各試料のコラーゲン臭強度を3段階評価し、その平均値を四捨五入して整数で表したものを評点とする。
コラーゲン臭強度:内容
1:コラーゲン臭をほとんど感じない。
2:コラーゲン臭を少し感じる。
3:コラーゲン臭を感じる。
【0065】
(比較例1)
実施例1で得られたカテキン組成物をそのまま食したところ、コラーゲン臭は顕著に低減されていたが、苦渋味は実施例1よりも若干強く感じ、クリーム様の流動性を持つため、そのままでは携帯性の低いものであった。
【0066】
(比較例2)
グラニュー糖500部、酵素水飴425部、ガレート型カテキン含有製剤(商品名:サンフェノン90S、ガレート型カテキン含有率65%、太陽化学株式会社製)8.5部を水に混合溶解し、真空釜にて濃縮し、香料を少量加えてスタンピング成型し、水分値2.5重量%、単重5.0gのガレート型カテキンを含有したハードキャンディを得た。得られたキャンディは苦渋味を強く感じ、嗜好性を落とすものであった。
【0067】
比較例1、2の結果より、苦渋味が抑えられ、携帯性のあるガレート型カテキン含有ハードキャンディは、カテキン組成物部とハードキャンディ部で構成される必要があることが分かる。
【0068】
(実施例2〜5、比較例3〜5)
実施例1の水溶性コラーゲンの種類や量を変えて、実施例1と同様にしてハードキャンディを作製した。これらの官能試験結果を表1に示す。
【0069】
(比較例6)
実施例1の水溶性コラーゲンを除き、水分値15%の糖液を作製し、実施例1と同様にしてハードキャンディを作製した。得られた試料について、官能試験結果を表1に示す。
【0070】
(比較例7)
実施例1と同様のコラーゲンペプチドを用い、実施例1と同濃度となるようにコラーゲンペプチドを配合した糖液を作製し、実施例1と同様にしてハードキャンディを作製した。得られたキャンディは、コラーゲン臭の強いものであった。官能試験結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1の結果より、実施例1〜5で得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディは、いずれもガレート型カテキン由来の苦渋味とコラーゲン臭とがいずれも顕著に低減されており嗜好性に優れたものであった。また、ハードキャンディ部が完全に口どけする直前までカテキン組成物部は残存していることから、カテキンの口内滞在時間が長いことがわかる。さらに、ガレート型カテキン含有ハードキャンディはその表面の多くが硬いハードキャンディ部で覆われていることからハードキャンディと同様に携帯性に優れており、手軽にカテキンやコラーゲンペプチドのような有効成分を摂取できることがわかる。
一方、比較例3〜6で得られた試料はいずれも苦渋味強度が強く、比較例7で得られた試料はコラーゲン臭の強いものであった。
【0073】
(実施例6〜7、比較例8〜9)
実施例1において、真空釜による濃縮度を調整して、水分値が表2に示す値となるようにカテキン組成物を作製した。得られた各試料を用いて、実施例1と同様にガレート型カテキン含有ハードキャンディの作製を試みたところ表2のようになった。
【0074】
【表2】

【0075】
表2の結果より、カテキン組成物の水分値を12〜18重量%とすることで、長期保存が可能かつ生産が容易で、口当たり滑らかなガレート型カテキン含有ハードキャンディになることが分かった。
【0076】
(実施例8)
グラニュー糖40部、酵素水飴60部、アラビアガム10部、水20部を混合加熱し、真空釜にて濃縮し、続いてコラーゲンペプチド(商品名:SCP−5100、新田ゼラチン株式会社製、平均分子量5,000)8.0部を同量の水で溶かした溶液を添加混合して、糖液を調製した。そして、EGCg(商品名:サンフェノンEGCg、ガレート型カテキン含有率95%以上、太陽化学株式会社製、以下同じ)4.0部を同量の水で溶かした溶液を添加混合して、水分値15重量%のカテキン組成物部を得た。続いて得られたカテキン組成物部を用いて実施例1と同様にしてガレート型カテキン含有ハードキャンディを作製した。このようにして得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディは、カテキン組成物がクリーム様の滑らかな口当たりを有し、苦渋味やコラーゲン臭がほとんど感じられず、嗜好性の高いものであった。
【0077】
(実施例9〜11、比較例10〜14)
実施例8と同様の操作により、それぞれ表3の含有量となるようにカテキン組成物部を作製し、実施例1と同様にしてガレート型カテキン含有ハードキャンディの作製を試みた。また、適宜、加水や真空釜での濃縮によって組成物部の水分値は15重量%となるよう調整した。得られた各ガレート型カテキン含有ハードキャンディの状態を表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
表3の結果より、
(A)ガレート型カテキンの固形分含有量を1.0〜18重量%
(B)平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの固形分含有量を5.0〜20重量%
(C)アラビアガムの固形分含有量を1.5〜20重量%
の範囲に調整した場合に、カテキン組成物がクリーム様の滑らかな口当たりを有し、苦渋味やコラーゲン臭がほとんど感じられず、嗜好性の高いガレート型カテキン含有ハードキャンディが得られることが分かる。また、実施例1と同様の形状を有していることから、実施例8〜11のガレート型カテキン含有ハードキャンディは、カテキンの口内滞在時間が長く、携帯性に優れており、手軽にカテキンやコラーゲンペプチドのような有効成分を摂取できることがわかる。
【0080】
(実施例12)
実施例8のEGCgをECgに変えて、カテキン組成物部を作製し、実施例1と同様にしてガレート型カテキン高含有キャンディを作製したところ、カテキン組成物がクリーム様の滑らかな口当たりを有し、苦渋味やコラーゲン臭がほとんど感じられず、嗜好性の高いものであった。なお、ECgは常法により、茶から抽出・精製したものを使用した。
【0081】
(比較例15、16)
実施例8のEGCgを(+)−カテキンに変えて、カテキン組成物部を作製し、実施例1と同様にしてガレート型カテキン高含有キャンディを作製したところ、カテキン組成物がクリーム様の滑らかな口当たりは得られなかった(比較例15)。また、EGCgをEGCに変えてカテキン組成物部を作製し、実施例1と同様にしてガレート型カテキン高含有キャンディを作製したところ、カテキン組成物がクリーム様の滑らかな口当たりは得られなかった(比較例16)。このことより、滑らかな口当たりのカテキン組成物部を得るためにはガレート型のカテキンが必要であることがわかる。
【0082】
(実施例13)
グラニュー糖500部、酵素水飴425部を水に混合溶解し、真空釜にて濃縮し、香料を少量加えて水分値2.5重量%のハードキャンディを得た。続いて、得られたハードキャンディを約70℃に加熱して、実施例1で得られたカテキン組成物1.0gを内包し、スタンピング成型し、単重5.0gのガレート型カテキン含有ハードキャンディを作製した(図2)。このときの、カテキン組成物部の被覆率は100%である。このようにして得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディは、ガレート型カテキン由来の苦渋味とコラーゲン臭とがいずれも顕著に低減されており嗜好性に優れたものであった。また、ハードキャンディ部が完全に口どけする直前までカテキン組成物部は残存していることから、カテキンの口内滞在時間が長く、さらに、ガレート型カテキン含有ハードキャンディの表面全面が硬いハードキャンディ部で覆われていることからハードキャンディと同様に携帯性に優れており、手軽にカテキンやコラーゲンペプチドのような有効成分を摂取できるものであった。
【0083】
(実施例14)
グラニュー糖500部、酵素水飴425部を水に混合溶解し、真空釜にて濃縮し、香料を少量加えて水分値2.5重量%のハードキャンディを得た。得られたハードキャンディを約70℃に加熱して、単重4.0gの円筒状にスタンピング成型した。続いて、実施例1で得られたカテキン組成物部1.0gを、前記ハードキャンディの空洞部に充填し、ガレート型カテキン含有ハードキャンディを作製した(図3)。このときの、カテキン組成物部の被覆率は80%であった。このようにして得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディも実施例1と同様に、ガレート型カテキン由来の苦渋味とコラーゲン臭とがいずれも顕著に低減されており嗜好性に優れており、カテキンの口内滞在時間が長く、携帯性に優れており、手軽にカテキンやコラーゲンペプチドのような有効成分を摂取できるものであった。
【0084】
(実施例15)
グラニュー糖500部、酵素水飴425部を水に混合溶解し、真空釜にて濃縮し、香料を少量加えて水分値2.5重量%のハードキャンディを得た。得られたハードキャンディを約130℃に加熱して、キャンディ用モールドに2.0g流し込み、板状のハードキャンディに成型した。続いて、板状のハードキャンディを2枚用いて、実施例1で得られたカテキン組成物1.0gを挟み込み、ガレート型カテキン含有ハードキャンディを作製した(図4)。このときの、カテキン組成物部の被覆率は80%であった。このようにして得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディも実施例1と同様に、ガレート型カテキン由来の苦渋味とコラーゲン臭とがいずれも顕著に低減されており嗜好性に優れており、カテキンの口内滞在時間が長く、携帯性に優れており、手軽にカテキンやコラーゲンペプチドのような有効成分を摂取できるものであった。
【0085】
(実施例16)
グラニュー糖40部、果糖ブドウ糖液糖(Bx.75、日本コーンスターチ株式会社製)60部、アラビアガム10部を水10部に溶かした溶液、ガレート型カテキン含有製剤(商品名:サンフェノン90S、ガレート型カテキン含有率65%、太陽化学株式会社製)6.5部を水6.5部に溶かした溶液を混合加熱し、水分値8%になるまで真空釜にて濃縮し、続いてコラーゲンペプチド(商品名:SCP−5100、新田ゼラチン株式会社製、平均分子量5,000)10部を水10部に溶かした溶液を添加混合し、最後に紅茶香料0.3部を添加混合して、水分値15重量%の紅茶風味のカテキン組成物部を得た。
別途、グラニュー糖500部、酵素水飴425部、乳成分100部を水に混合溶解し、真空釜にて濃縮し、紅茶香料を少量加えて水分値4.0重量%のミルクティ味のハードキャンディを得た。
得られたミルクティ味のハードキャンディを約130℃に加熱して、キャンディ用モールドに4.0g流し込み、実施例1と同様にして上部を型で押し凹部を成型した。続いて、前記紅茶風味のカテキン組成物1.0gを、前記ミルクティ味のハードキャンディの凹部に充填し、苦渋味の少ない紅茶風味のガレート型カテキン含有ハードキャンディを作製した。得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディは、実施例1と同様に、ガレート型カテキン由来の苦渋味とコラーゲン臭とがいずれも顕著に低減されており嗜好性に優れており、カテキンの口内滞在時間が長く、携帯性に優れており、手軽にカテキンやコラーゲンペプチドのような有効成分を摂取できるものであった。
【0086】
(実施例17)
グラニュー糖500部、酵素水飴425部を水に混合溶解し、真空釜にて濃縮し、香料を少量加えて水分値2.5重量%のハードキャンディを得た。得られたハードキャンディを約130℃に加熱して、キャンディ用モールドに2.5g流し込み、上部を型で押し凹部を成型した。続いて、実施例1で得られたカテキン組成物2.5gを、前記ハードキャンディの凹部に充填することで、ガレート型カテキン含有ハードキャンディを作製した(図5)。このときのカテキン組成物部の被覆率は70%であった。このようにして得られたガレート型カテキン含有ハードキャンディは、被覆しているハードキャンディ部の強度が低く器型の成型が若干困難であるものの、ガレート型カテキン由来の苦渋味とコラーゲン臭とがいずれも顕著に低減されており嗜好性に優れており、カテキンの口内滞在時間が長く、携帯性に優れており、手軽にカテキンやコラーゲンペプチドのような有効成分を摂取できるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成比率が以下の範囲にあるカテキン組成物部とハードキャンディ部とから構成されることを特徴とするガレート型カテキン含有ハードキャンディ。
カテキン組成物部:
糖質を主体とする水分値12〜18重量%の組成物であって、全固形重量に対して
(A)ガレート型カテキン1.0〜18.0重量%、
(B)平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン5.0〜20.0重量%、および、
(C)アラビアガム1.5〜20.0重量%、を含有する組成物。
【請求項2】
カテキン組成物部表面の60%以上がハードキャンディ部により被覆されており、ハードキャンディ部の比率が50重量%以上であり、且つ、全体のガレート型カテキンの含有量が0.1重量%以上である請求項1記載のガレート型カテキン含有ハードキャンディ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−39107(P2013−39107A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179595(P2011−179595)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】