説明

ガレート型カテキン含有食品組成物

【課題】ガレート型カテキン、水溶性食物繊維および平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの3成分を含有しながら、凝集や沈殿がなく、ガレート型カテキン由来の苦渋味や水溶性コラーゲン由来の不快味が低減された、嗜好性の高い食品組成物ならびにその製造方法を提供すること。
【解決手段】糖質を主体とする水分値12〜25重量%の食品組成物であって、全固形重量に対して、(A)ガレート型カテキン1.0〜18.0重量%、(B)平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン5.0〜20.0重量%、および、(C)アラビアガム1.5〜20.0重量%を含有する食品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガレート型カテキン、水溶性食物繊維および平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの3成分を含有する食品組成物ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の偏りやストレス、喫煙、飲酒、運動不足などにより、ガン、心疾患、脳卒中、糖尿病、高血圧、メタボリック症候群などの生活習慣病が問題となっており、日本人の死因の6割以上とも言われている。生活習慣病は完全な治療が困難なものも多く、また、厚生労働省の調べによると、2008年度の国民医療費は34兆8000億円にも上ることからも、病気を治療することだけでなく、今後は「未病」の考え方に見られる、「病気を予防する」ということが非常に重要である。その観点から、消費者の中でも健康志向は高まっており、特定保健用食品や栄養機能食品などの健康食品やサプリメントの市場は大きな成長を遂げている。また、紫外線や疲労から肌を守る、老化予防、便秘予防およびデトックスという観点から、コラーゲンや食物繊維をはじめとする美容健康食品に関する消費者の関心も高まっており、健康で快適な生活を送るために、我々の最も身近にある食品に求められている期待は非常に高い。
【0003】
中でも、飲料に関して、消費者の健康への意識は高く、緑茶飲料、野菜系飲料などの健康志向の飲料は安定した大きな市場を形成している。また、美容飲料としてはコラーゲン飲料の市場が目覚しい成長を遂げており、今後大きく期待されるカテゴリの一つである。
【0004】
緑茶に多く含まれるカテキン類には、抗酸化作用、抗菌作用、ガン抑制作用、コレステロール低下作用、インフルエンザウイルスの不活化、紫外線に対する皮膚保護作用などの生理活性が期待されている。既に、カテキン類の生理活性に着目した商品は数多く出されており、多様な心血管病予防にも関係した健康機能を高めるための茶、コレステロールの吸収を防ぐための茶、体脂肪の蓄積抑制や燃焼促進効果を有する茶などの茶飲料だけでなく、カテキン類を高濃度に含有させた清涼飲料などが新たな市場を形成している。
【0005】
一方、野菜系飲料にはビタミン類、食物繊維などの摂取が期待できるが、食物繊維については特に近年の日本人に不足している栄養素の一つであり、食物繊維の不足が近年の大腸ガン増加の原因とも言われている。食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分類できるが、水溶性食物繊維に関しては血糖値上昇抑制やコレステロール吸収抑制などの効果も知られており、健康増進のために欠かすことのできない栄養素の一つである。各種特許技術も提案されており、飲料の分野では例えば、難消化性デキストリンを含有する緑茶飲料(特許文献1)などがある。
【0006】
また、コラーゲン飲料に含まれるコラーゲンペプチドは、動物組織における主要な構成タンパク質であるコラーゲンを分解したものである。コラーゲンは、動物の皮膚、血管、内臓、骨などのいたるところに存在しており、肌の老化防止や関節痛の低減効果が期待されていることから、近年、美容健康飲食品、美容化粧品として幅広く利用されている。
【0007】
以上のように、カテキン類、食物繊維、コラーゲンには非常に高い美容健康増進効果が期待でき、既に大きな市場を形成しているが、上記3成分を同時に無理なく摂取できる嗜好性の高い飲料は知られていない。その原因として、カテキン類の特有の強い苦渋味、コラーゲンとカテキン類を同時に添加したときに起こる凝集・沈殿、コラーゲンの臭いや不快味などが問題に挙げられる。
【0008】
コラーゲンは独特の動物臭及び不快味を有し、製品の嗜好性を著しく低下させる。コラーゲン臭及び不快味の改善は大きな課題となっており、特許技術としても例えば、コラーゲンペプチドに酵母エキスおよびカテキン等を含有することを特徴とするコラーゲン臭および不快味のマスキングされたコラーゲンペプチド含有飲料(特許文献2)、クロロゲン酸を含有させたコラーゲン臭の臭気抑制剤(特許文献3)など数多くの提案がなされている。
【0009】
一方、カテキン類の特有の苦渋味は、舌に残る残留感が非常に強く、嗜好性において十分に満足させるカテキン高含有飲食品は未だ市場に存在しないのが現状である。カテキン類の苦味をマスキングする技術提案はいくつかなされており、例えば、キナ酸を特定比率で併用する方法(特許文献4)、配糖化する方法(特許文献5)、平均分子量500〜4500の哺乳類由来のコラーゲンペプチドを少量添加する方法(特許文献6)などがある。しかし、いずれの方法も苦味の低減は図れるものの、そのマスキング効果は十分なものとは言えない。
【0010】
また、カテキン類の中でも特にエピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)のような分子内にガロイル基を有するガレート型カテキンは、収斂味とも表現される特有の渋味を有し、苦味に関してもエピカテキン(EC)、カテキン(C)の2〜3倍の強さをもつ。しかしガレート型カテキンは生理活性が非常に高く、例えばヒトインフルエンザウイルスの不活化や、LDLの酸化に対する抑制効果などに関して、非ガレート型カテキンよりも高い生理活性を示すことが報告されている。茶に含まれるカテキン類の大半がガレート型カテキンであること、ガレート型カテキンは他のカテキン類に比べ、より高い生理活性を示すことが多いことからも、ガレート型カテキンの苦渋味を軽減することは非常に重要な課題であると言える。
【0011】
一方、コラーゲンとカテキン類の組み合わせをはじめとする、タンパク質とポリフェノールを同時に添加したときに起こる凝集・沈殿に関しても、それを解決するための技術提案がいくつかなされている。
【0012】
例えば、プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方を含有し、平均分子量7,000未満のタンパク質分解ペプチドおよび平均分子量7,000以上のペプチドまたはタンパク質を含有する液状組成物が提案されている(特許文献7)。しかし、前記文献では味などの嗜好性に関する記述はなく、また凝集・沈殿を防止する効果も不十分であり、例えば、ガレート型カテキンと平均分子量5,000以上のコラーゲンペプチドのみを混合するとただちに沈殿・凝集が生じてしまう。
【0013】
また、植物ポリフェノール、コラーゲン、塩基性アミノ酸を含み、pH値が7.5以上に調整された、濁りおよび沈殿が防止された飲食品も提案されているが(特許文献8)、その用途は塩基性域に限定され、汎用性に乏しい。
【0014】
また、タンナーゼを作用させた茶抽出液とコラーゲンペプチドを含有することを特徴とするコラーゲンペプチド含有茶飲料の提案もあるが(特許文献9)、タンナーゼはガレート型カテキンを加水分解するため、ガレート型カテキン特有の優れた生理活性が損なわれてしまう。
【0015】
さらに、植物ポリフェノールとコラーゲンを含む液体に食品添加物としてペクチンを添加することにより、植物ポリフェノールとコラーゲンによる白濁物質および/または沈殿物質の生成が抑制された液体組成物の提案もなされている(特許文献10)。前記文献には植物ポリフェノールとしてガレート型カテキンを用いた実施例も記載されているが、本発明者らも該文献記載の実施例を試みたところ、ガレート型カテキンの苦渋味を感じるだけでなく、添加物であるペクチンの強い異味を感じ、嗜好性に乏しいものであることが確認された。
【0016】
他にも、植物ポリフェノールと水溶性タンパクを含む液体にキシログルクロノマンナンを添加することにより、沈殿・凝集が防止された液体組成物も提案されている(特許文献11)。当該文献に関しては、苦渋味や不快味に関する記述は一切なされておらず、また、キシログルクロノマンナンは白キクラゲ抽出物などとして得られる物質であり、非常に高価なものであるため、汎用性に乏しい。
【0017】
また、サイクロデキストリンとコラーゲンペプチドを含有するポリフェノール組成物の提案もなされており(特許文献12)、文献中でガレート型カテキンを用いた実施例も記述されている。しかし、本発明者らも該文献記載の実施例を試みたところでは、沈殿防止効果は十分ではなかった。
【0018】
以上のように、コラーゲンとカテキン類とくにコラーゲンとガレート型カテキンを添加して、凝集・沈殿を起こさず、ましてやガレート型カテキン、水溶性食物繊維およびコラーゲンの3成分を含有しながら苦渋味なく嗜好性の高い飲料は存在しなかった。さらに、上記沈殿・凝集防止方法では高濃度の液体を得ることは不可能であった。
【0019】
また、飲料だけでなく、食品や菓子の分野においても、苦渋味や凝集・沈殿なくガレート型カテキン、水溶性食物繊維およびコラーゲンの3成分を高含有させることは非常に困難であり、ゼラチンとポリフェノールと凝集剤を含むゴム状組成物(特許文献13)などの一部の提案に限られていた。上記発明で得られるゴム状組成物は、チューインガムのようなゴム状の噛み心地であるため、汎用性に非常に乏しく、用途も限定され、チューインガムやグミキャンディ、ソフトキャンディのような咀嚼性を有するものとしての使用に限定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特許第4281940号公報
【特許文献2】特許第4428456号公報
【特許文献3】特許第3830137号公報
【特許文献4】特許第3378577号公報
【特許文献5】特許第3579496号公報
【特許文献6】特開2011−15632号公報
【特許文献7】特許第3689413号公報
【特許文献8】特許第4653052号公報
【特許文献9】特許第4673254号公報
【特許文献10】特許第3416102号公報
【特許文献11】特開2010−1275号公報
【特許文献12】特開2008−148588号公報
【特許文献13】特開2007−089579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、ガレート型カテキン、水溶性食物繊維および平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの3成分を含有しながら、凝集や沈殿がなく、ガレート型カテキン由来の苦渋味や水溶性コラーゲン由来の不快味が低減された、嗜好性の高い食品組成物ならびにその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ガレート型カテキン、水溶性食物繊維および平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの3成分をある一定の比率に限定し、水溶性食物繊維としてアラビアガムを含有させ、コラーゲンの平均分子量を限定したところ、驚くべきことに凝集や沈殿が生じず、ガレート型カテキンの苦渋味やコラーゲン由来の不快味が低減され、嗜好性が高い組成物となることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0023】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕糖質を主体とする水分値12〜25重量%の食品組成物であって、全固形重量に対して
(A)ガレート型カテキン1.0〜18.0重量%、
(B)平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン5.0〜20.0重量%、および、
(C)アラビアガム1.5〜20.0重量%を含有する食品組成物、
〔2〕貯蔵安定な飲料用濃縮物である前記〔1〕記載の食品組成物、
〔3〕下記A1とB2、またはA2とB1、またはA2とB2を混合する工程を含み、任意の段階で糖質が添加されることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の食品組成物の製造方法、
A1:ガレート型カテキン又はそれを含有する液体
A2:ガレート型カテキンとアラビアガムとを含有する液体
B1:平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン又はそれを含有する液体
B2:平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンとアラビアガムとを含有する液体
に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の食品組成物は、非常に滑らかな食感を有し、高い生理活性を持つガレート型カテキン、水溶性食物繊維およびコラーゲンの3成分を含有しながら、凝集および沈殿がなく、コラーゲン臭もなく、かつガレート型カテキン由来の苦渋味が顕著に低減された嗜好性の高い組成物である。また、本発明の組成物は水分活性が低いため殺菌・密封充填等の特殊な設備や工程を必要とせず、加熱や長期保存によっても凝集や沈殿を生じず、貯蔵安定性にも優れている。さらに、本発明の食品組成物は、そのまま食するだけでなく、水などの液体に溶いて健康飲料として手軽に喫することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0026】
本発明の食品組成物は、糖質を主体とする水分値12〜25重量%の食品組成物であって、全固形重量に対して
(A)ガレート型カテキン1.0〜18.0重量%、
(B)平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン5.0〜20.0重量%、および、
(C)アラビアガム1.5〜20.0重量%を含有する。
【0027】
本発明に使用する糖質の種類としては、例えば、砂糖、水飴、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元水飴、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、還元パラチノース、ポリデキストロース等が挙げられるが、特に限定はない。これらの糖質は、1種以上を用いればよい。
本発明の食品組成物の主体である糖質の含有量は、全固形重量に対して40〜90重量%であればよく、好ましくは55〜70重量%である。尚、全固形重量とは全重量から水分を除いたものである。
【0028】
本発明の食品組成物は、その水分値が12〜25重量%であればよい。
前記水分値が12〜25重量%に調整されることで、本発明の食品組成物は、室温下で流動性が低い半固体状の物性を有するものになる。ここで、本発明の食品組成物は、水分値が高くなると、油脂と水とを乳化させたクリームのような軟らかい物性を示すようになり、水分値が低くなると、水飴のような粘ちょうな硬い物性を示すようにもなるが、いずれも本発明に含まれる。また、本発明の食品組成物は、上記の物性に加えて脂肪様の濃厚で滑らかな、いわゆるクリームのようなテクスチャーをも奏することから、本明細書では、これらのような物性を以下、「クリーム状」ともいう。
本発明の食品組成物が、油脂と水との乳化物でないにもかかわらず、前記のようなクリーム状を呈するようになるメカニズムについては、詳細は不明ではあるものの、水に溶解された濃厚な糖質液中で、水不溶性であるガレート型カテキン−コラーゲン複合体が形成され、この複合体どうしがアラビアガムの存在によって凝集・沈殿せずに、微粒子状態を維持して分散安定化することで、脂肪様の濃厚で滑らかなテクスチャーを与えることが推定される。
前記水分値は、好ましくは13〜18重量%である。
なお、水分量は、食品組成物中に混合する水の量を増減させたり、加熱したりして調整することができる。
また、本発明における水分量は、減圧乾燥法により乾燥前後での食品組成物の重量差を測定することにより算出された値をいう。
【0029】
カテキンとは、緑茶、紅茶あるいはウーロン茶などの茶に多く含まれているポリフェノールの一種であり、主にエピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、カテキン(C)などのフラバン−3−オール類の総称であるが、本発明において「ガレート型カテキン」とは、分子内にガロイル基を有するカテキンであり、具体的には、ECg、EGCgなどを指す。これらは、精製品の他、粗製品でも良く、これらを含有する天然物もしくはその加工品でも良い。
【0030】
本発明の食品組成物におけるガレート型カテキンの含有量は、全固形重量に対して1.0〜18.0重量%であり、好ましくは2.0〜15.0重量%であり、より好ましくは3.0〜7.0重量%である。前記含有量が1.0重量%未満では、本発明の十分な健康増進効果および食感が得られない。また、前記含有量が18.0重量%を超えると、苦渋味のマスキングが十分ではなくなる。
【0031】
本発明において「平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン」とは、非水溶性の固体状コラーゲンを加熱・変性・分解などの処理を施して水溶性にしたコラーゲンであって、具体的には、平均分子量4,000以上のコラーゲンペプチドから分子量30万程度のゼラチンまでが含まれる。
なお、非水溶性の固体状コラーゲンを加熱・変性させて得られるものがゼラチンであり、該ゼラチンを加水分解して得られるものがコラーゲンペプチドである。
【0032】
本発明においてコラーゲンペプチドは、コラーゲンあるいはゼラチン等の変性コラーゲンを酸やアルカリあるいは酵素等で加水分解させたものをいう。当該原料となるコラーゲンの由来は特に限定されず、豚、牛、鶏、魚など多様な動物から抽出されたものを使用できる。
【0033】
本発明に用いられるコラーゲンペプチドの平均分子量は、4,000以上である。好ましくは5,000以上である。4,000より少ない場合、苦渋味のマスキングの効果が不十分となり、さらにコラーゲンの臭いや不快味が強く、嗜好性に劣るものとなってしまう。尚、コラーゲンペプチドの分子量に関する情報は、粘度測定やHPLCおよびゲルろ過法等の定量方法によって得られ、すでに公知の手法を使用することが可能である。ここで平均分子量とは重量平均分子量をいう。
【0034】
本発明では、前記コラーゲンペプチドのかわりにまたは前記コラーゲンペプチドとともにゼラチンを使用することもできる。通常、ゼラチンを含有する組成物は、ゲルを形成するか、もしくは高い粘度を有するため、ハンドリングが悪く、使用用途が限定されてしまう。しかし、本発明の組成物においては、驚くべきことに、ゼラチンを使用した場合もゲル化することなく、同水分値の糖液と比較して同程度の粘性の組成物が得られる。コラーゲンペプチドはゼラチンを酵素等で加水分解する必要があるため、ゼラチンよりもコストが高く、ゼラチンを原料としてコラーゲン高含有組成物を製造できることは非常に有益である。本発明においてゼラチンは、由来生物や製法、ゼリー強度に関して特に限定されずに使用することができる。
前記ゼラチンとしては、分子量が数万から分子量30万程度のものであればよい。
【0035】
本発明の食品組成物における平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの含有量は、全固形重量に対して5.0〜20.0重量%であり、好ましくは6.0〜18.0重量%であり、より好ましくは6.0〜10.0重量%である。前記含有量が5.0重量%未満では、苦渋味のマスキング効果が十分ではなくなる。また、前記含有量が20.0重量%を超えると弾力が出てしまい、滑らかな食感が損なわれる。
【0036】
本発明において「アラビアガム」とは、アカシアガム、アラビアゴムまたはアカシア食物繊維とも呼ばれ、熱帯地方に生育するマメ科のアラビアゴムノキ(学名Acacia senegal)から採取される多糖類である。
【0037】
本発明の食品組成物におけるアラビアガムの含有量は、全固形重量に対して1.5〜20.0重量%であり、好ましくは3.0〜15.0重量%であり、より好ましくは6.0〜10.0重量%である。前記含有量が1.5重量%未満では、前記水溶性コラーゲンと前記ガレート型カテキンとを混合した場合に生じる凝集・沈殿を防止する効果が十分得られず、20.0重量%を超えると、粘性が高く、滑らかな食感が損なわれる。
【0038】
また、本発明の食品組成物には、所望により、果汁、野菜汁、豆乳、乳製品、茶類、コーヒー、酸味料、香料、着色料、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、油脂、乳化剤、高甘味度甘味料、食感改良剤(ペクチン、カラギーナン、寒天、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガントガム、グァーガム、カラヤガム、タマリンドシードガム)等の任意成分を含有してもよい。これらの任意成分を適宜選択することで、嗜好性の幅を広げることができる。尚、前記任意成分は、嗜好性や物理的安定性に悪影響を与えない範囲で使用すればよい。
【0039】
なお、本発明の食品組成物は、いわゆる乳製品のクリームではない。そのため、乳原料や脂質を必ずしも必要としない。
【0040】
前記のような構成を有する本発明の食品組成物の製造方法は、ガレート型カテキンとコラーゲンを混合する前に、ガレート型カテキンとコラーゲンの少なくとも一方を、アラビアガムを含有する溶液に予め混合溶解させる必要がある。尚、糖質の添加はいずれの工程で行なってもよい。
即ち、本発明の組成物は、下記A1とB2、またはA2とB1、またはA2とB2を混合する工程により製造することができる。糖質は任意の段階で添加すればよい。
A1:ガレート型カテキン又はそれを含有する液体
A2:ガレート型カテキンとアラビアガムとを含有する液体
B1:平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン又はそれを含有する液体
B2:平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンとアラビアガムとを含有する液体
【0041】
前記の各原料を混合して得られる液体を作製するために使用する溶媒としては、水であればよいが、必要に応じて、エタノール、グリセリンなどの他の溶媒を用いてもよい。前記溶媒の使用量としては、各原料が溶解できる量であれば特に限定はない。
また、前記各成分を混合する際の温度などの条件については、成分の変性などが生じない条件であればよく、特に限定はない。
【0042】
前記のようにして得られる本発明の食品組成物は、そのままで食べることが可能である。例えば、他の食材の表面に本発明の食品組成物を塗布したり、他の食材間で挟んだり、食材中に充填したりなどすることができる。
食材としては、例えば、クッキー、ビスケット、ケーキ、スポンジケーキ、カステラなどの焼き菓子、チョコレート、キャンディ、ゼリーなどの砂糖菓子、和生菓子、饅頭、洋生菓子、菓子パンなどの生菓子、八つ橋、おこしなどの干菓子などが挙げられるが、特に限定はない。
【0043】
また、本発明の食品組成物は、飲料用濃縮物として水などに溶いて飲むことができ、常温で長期保存可能であることから、該食品組成物と水さえあれば、いつでも手軽に健康飲料を得ることができる。
【0044】
さらに、予め調製された、清涼飲料、果汁飲料、乳飲料、炭酸飲料、アルコール飲料などの飲料に該組成物を溶くことで、様々な風味の健康飲料を得ることができる。健康飲料を長く続けられない原因として、すぐに味に飽きてしまうことが挙げられるが、本発明のような飲料用濃縮物は、味にバリエーションをもたせることができるため、飽きずに毎日継続して飲み続けることができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0046】
(実施例1)
グラニュー糖40部、酵素水飴(Bx.75、日本コーンスターチ株式会社製、以下同じ)60部、アラビアガム(商品名:インスタントガムAB、コロイドナチュレルジャパン社製、以下同じ)10部、水10部を混合加熱し、水分値9%になるまで真空釜にて濃縮し、続いてガレート型カテキン含有製剤(商品名:サンフェノン90S、ガレート型カテキン含有率65%、太陽化学株式会社製)4.0部を水4.0部に溶かした溶液を添加混合して、糖液を調製した。そして、コラーゲンペプチド(商品名:SCP−5100、新田ゼラチン株式会社製、平均分子量5,000)8.0部を水8.0部に溶かした溶液を添加混合し、水分値17%のクリーム状の食品組成物を得た。得られた試料について、5名のパネラーによる官能試験を行なった。下記に示す官能評価方法によって得られた結果を表1に示す。
【0047】
<官能評価方法>
(1)苦渋味に関する評価
5名のパネラーが、下記に示すサンフェノン90Sの標準品を基準として各試料の苦渋味強度を5段階評価し、その平均値を四捨五入して整数で表したものを評点とする。
<EGCg標準品の作製>
それぞれ下記の濃度となるようにサンフェノン90Sを酵素水飴に添加し、加熱溶解させてBx.80の糖液を作製し、標準品とする。
強度:サンフェノン90S濃度
1:0.5重量%
2:1.0重量%
3:1.5重量%
4:2.0重量%
5:3.0重量%
【0048】
(2)コラーゲン臭に関する評価
5名のパネラーが、下記の内容に従って各試料のコラーゲン臭強度を3段階評価し、その平均値を四捨五入して整数で表したものを評点とする。
コラーゲン臭強度:内容
1:コラーゲン臭を感じない。
2:コラーゲン臭を少し感じる。
3:コラーゲン臭を感じる。
【0049】
(実施例2〜5、比較例1〜3)
実施例1の水溶性コラーゲンの種類や量を変えて、実施例1と同様にしてクリーム状の食品組成物を作製した。これらの官能試験結果を表1に示す。
【0050】
(比較例4)
実施例1の水溶性コラーゲンを除き、水分値17%の糖液を作製した。クリーム状の食品組成物にはならなかったが、得られた試料について、官能試験結果を表1に示す。
【0051】
(比較例5)
実施例1と同様のコラーゲンペプチドを用い、実施例1と同濃度となるようにコラーゲンペプチドを配合した糖液を作製した。得られた糖液は、コラーゲン臭の強いものであった。官能試験結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の結果より、実施例1〜5で得られた食品組成物は、いずれも凝集・沈殿がなく、ガレート型カテキン由来の苦渋味強度が低く、コラーゲン臭も顕著に低減されており、クリーム状の滑らかな食感を有する嗜好性の高いものであった。
一方、比較例1〜4で得られた試料はいずれも苦渋味強度が強く、比較例5で得られた試料はコラーゲン臭の強いものであった。
【0054】
(実施例6〜7、比較例6〜7)
実施例1において、真空釜による濃縮度を調整して、最終水分値が表2に示す値となるように、各試料を作製した。得られた各試料の状態を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2の結果より、水分値が12〜25重量%とすることで、クリーム状になることがわかる。
なお、比較例6の試料は、硬く、スプーンですくえない飴のような物性であった。比較例7の試料は、粘性が非常に低く、液状で、しかも濃厚でクリーミーな食感とはならなかった。
【0057】
(実施例8)
グラニュー糖40部、酵素水飴60部、アラビアガム10部、水20部を混合加熱し、真空釜にて濃縮し、続いてコラーゲンペプチド(商品名:SCP−5100、新田ゼラチン株式会社製、平均分子量5,000)8.0部を同量の水で溶かした溶液を添加混合して、糖液を調製した。そして、EGCg(商品名:サンフェノンEGCg、ガレート型カテキン含有率95%以上、太陽化学株式会社製、以下同じ)4.0部を同量の水で溶かした溶液を添加混合して、水分値17%のクリーム状の食品組成物を得た。
【0058】
(実施例9〜10、比較例8〜10)
実施例8と同様の操作により、それぞれ表3の含有量となるように試料を作製した。得られた各試料の状態を表3に示す。また、適宜、加水や真空釜での濃縮によって水分値は17%となるよう調整した。
【0059】
【表3】

【0060】
表3の結果より、(A)ガレート型カテキンの固形分含有量を3.0〜15.0重量%、
(B)平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンの固形分含有量を6.2〜15.0重量%、
(C)アラビアガムの固形分含有量を7.8〜19.0重量%
の範囲に調整した場合に、クリーム状となることがわかる。
また、実施例8〜10で得られた食品組成物は、いずれも凝集・沈殿がなく、ガレート型カテキン由来の苦渋味強度が低く、コラーゲン臭も顕著に低減された、嗜好性の高いものであった。
【0061】
(実施例11)
実施例10のEGCgをECgに変えて、試料を作製した。その結果、実施例10と同様に、苦渋味や不快味のない、滑らかなクリーム状の食品組成物が得られた。尚、ECgは常法により、茶から抽出・精製したものを使用した。
【0062】
(比較例11、12)
実施例10のEGCgを(+)−カテキンに変えて、試料を作製したが、クリーム状の食品組成物は得られなかった。また、EGCgをEGCに変えて試料を作製しても、クリーム状の食品組成物とならなかった。このことより、クリーム状の食品組成物を得るためにはガレート型のカテキンが必要であることがわかる。
【0063】
(実施例12)
グラニュー糖20部、酵素水飴30部、アカシアガム5部、水10部を混合加熱し、水分値9%になるまで真空釜にて濃縮し、続いてガレート型カテキン含有製剤(商品名:サンフェノン90S、ガレート型カテキン含有率65%、太陽化学株式会社製)4.0部を水4.0部に溶かした溶液を添加混合して、糖液Aを調製した。
グラニュー糖20部、果糖ブドウ糖液糖(Bx.75、日本コーンスターチ株式会社製)30部、アカシアガム5部、水10部を混合加熱し、水分値8%になるまで真空釜にて濃縮し、続いてコラーゲンペプチド(商品名:SCP−5100、新田ゼラチン株式会社製、平均分子量5,000)8.0部を水8.0部に溶かした溶液を添加混合して、糖液Bを調製した。
そして、糖液Aと糖液Bとを混合し、最終水分値を16%に調整することで、クリーム状の食品組成物を得た。
この食品組成物は、凝集・沈殿がなく、ガレート型カテキン由来の苦渋味強度が低く、コラーゲン臭も顕著に低減された、嗜好性の高いものであった。
【0064】
(実施例13)
グラニュー糖40部、果糖ブドウ糖液糖(Bx.75、日本コーンスターチ株式会社製)60部、アラビアガム10部、水10部を混合加熱し、水分値8%になるまで真空釜にて濃縮し、続いてコラーゲンペプチド(商品名:SCP−5100、新田ゼラチン株式会社製、平均分子量5,000)8.0部を水8.0部に溶かした溶液を添加混合して、糖液を調製した。そして、ガレート型カテキン含有製剤(商品名:サンフェノン90S、ガレート型カテキン含有率65%、太陽化学株式会社製)4.0部を水4.0部に溶かした溶液を添加混合し、最後に紅茶香料0.3部を添加混合して、水分値16%の苦渋味の少ない紅茶風味のクリーム状の食品組成物を得た。
【0065】
(応用例1)
実施例13で得られた食品組成物を、2枚のクッキーの間に挟み、紅茶味のクリームサンドクッキーを得た。得られたクッキーは、ほのかな苦味とほどよい甘さをもった嗜好性の高いクッキーであった。
【0066】
(応用例2)
実施例13で得られた食品組成物10gを、水90gに溶いて、ミルクティー風カテキン飲料100gを得た。得られた飲料は、ガレート型カテキンを200mg、コラーゲンを600mg、食物繊維を0.7g含有する嗜好性の高い健康飲料となった。
したがって、本発明の食品組成物が、飲料用濃縮物としても使用できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質を主体とする水分値12〜25重量%の食品組成物であって、全固形重量に対して
(A)ガレート型カテキン1.0〜18.0重量%、
(B)平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン5.0〜20.0重量%、および、
(C)アラビアガム1.5〜20.0重量%を含有する食品組成物。
【請求項2】
貯蔵安定な飲料用濃縮物である請求項1記載の食品組成物。
【請求項3】
下記A1とB2、またはA2とB1、またはA2とB2を混合する工程を含み、任意の段階で糖質が添加されることを特徴とする請求項1または2に記載の食品組成物の製造方法。
A1:ガレート型カテキン又はそれを含有する液体
A2:ガレート型カテキンとアラビアガムとを含有する液体
B1:平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲン又はそれを含有する液体
B2:平均分子量4,000以上の水溶性コラーゲンとアラビアガムとを含有する液体