ガンマカメラシステム
【課題】ガンマカメラの視野内の検出感度、空間分解能(部分容積効果)の変化が補正された精度のよい画像が得られるガンマカメラシステムを提供する。
【解決手段】ガンマカメラ2と、撮像対象10との距離を走査計測が可能な距離計測装置6と、ガンマカメラ2と撮像対象10との位置関係を計算する位置演算装置81と、計測感度を推定する感度補正情報推定装置82と、分解能を推定する分解能補正情報推定装置83と、計測感度、分解能およびガンマ線カウントデータに基づいて、ガンマ線分布画像を生成する画像生成演算装置84と、を備える。
【解決手段】ガンマカメラ2と、撮像対象10との距離を走査計測が可能な距離計測装置6と、ガンマカメラ2と撮像対象10との位置関係を計算する位置演算装置81と、計測感度を推定する感度補正情報推定装置82と、分解能を推定する分解能補正情報推定装置83と、計測感度、分解能およびガンマ線カウントデータに基づいて、ガンマ線分布画像を生成する画像生成演算装置84と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマカメラによって計測された画像情報を生成するガンマカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像対象から放射されるガンマ線をガンマカメラで計測して、撮像対象のガンマ線画像を生成するガンマカメラシステムが知られている。ここで、一般的なコリメータを用いたガンマカメラにて計測されるデータは、ガンマカメラと撮像対象との距離に依存して検出感度や空間分解能が劣化する。しかし、撮像対象がガンマカメラからの距離が一定な平面であることは稀であり、例えば、屋外や公共施設内、屋内の放射線管理区域内などに設置された構造物を撮像対象として使用することを想定した一度に広域を撮像可能な大視野のガンマカメラシステムにおいては、ガンマカメラの撮像視野内にガンマカメラからの距離が異なる撮像対象の領域が含まれることが想定される。
このことは、たとえ同じ面積で同じ線量の領域があったとしても、ガンマカメラとの位置関係によって、計測されたガンマ線カウント数や検出画像上の大きさが変化することを意味し、撮像された検出画像の信頼性を損ねる要因となる。
【0003】
また、図10に示すように、ガンマ線検出器103のガンマ線検出素子104a,104b…の幅や、コリメータ105の開口径は、無限小ではなく有限な幅を持つ。このため、撮像平面111上のガンマ線検出素子104aの計測範囲115aは、他のガンマ線検出素子(図10では、ガンマ線検出素子104b)の計測範囲との重なる範囲116を有することとなる。
また、図11に示すように、コリメータ105の中心105cを通るように、ガンマ線検出素子104aの担当する範囲117aを設定した場合、図12に示すように、検出素子104aの担当する範囲117aと、実際のガンマ線検出素子104aの計測範囲115aとは、同一とならない。
【0004】
前述のように、ガンマカメラと撮像対象との距離が大きくなるにつれ、検出感度および空間分解能が低下する。
【0005】
これに対し、特許文献1や非特許文献1、特許文献2に記載されているような一般的な医療用のガンマカメラシステムでは、手動または自動制御による近接撮像を前提としたシステム構成となっている。このため、ガンマカメラと撮像対象との距離は近接しており、視野内の検出感度および空間分解能の変化は大きな問題となっていない。
また、非特許文献2にあるように、画像の鮮鋭化を目的としたBlind Deconvolution法は公知であるが、これも視野内の検出感度および空間分解能の変化は大きくないことを前提としている。
【0006】
非特許文献3、非特許文献4には、ガンマカメラとレーザースキャナを組み合わせたものが記載されているが、これらは、ガンマカメラ自体も3次元計測が可能なものである必要があり、安価で簡易的に使用可能な2次元計測型ガンマカメラでの大視野撮像とは異なる上、ガンマカメラと撮像対象との距離の変化に伴う検出感度や空間分解能の変化の補正についての記載は無い。
【0007】
また、特許文献3においてもガンマカメラ(放射線検出器)とレーザースキャナを組み合わせたものが記載されているが、これは、放射線量を計測したい撮像対象以外の環境的放射線(バッググラウンド)が、見掛け上撮像対象からの放射線と誤って計測される現象を補正するための発明であり、レーザースキャナの計測結果は、環境放射線が撮像対象において散乱、減弱される影響を数値計算により推定するために用いられている。
このため、ガンマカメラ(放射線検出器)と撮像対象との距離に基づいて検出感度や空間分解能を補正するものではない。
【0008】
特許文献4では、レーザースキャナの代わりに光学カメラや予め取得された形状データを用いているが、撮像対象の放射線量の計測精度向上を意図したものであり、撮像対象とガンマカメラ間の距離に応じた検出感度補正を実施するものの、空間分解能の変化については考慮されておらず、撮像対象内の放射線量分布を精度よく画像化するための技術ではない。
【0009】
ガンマカメラを被検体のまわりに回転させ複数の方向から投影画像を取得し断層像を得るSPECT(Single photon emission computed tomography)装置の分野では、ガンマカメラと視野内の各画素との距離に応じて変化する感度や分解能を補正する方法は、例えば、特許文献5のように存在する。しかし、SPECTの分野における前記補正は、取得された複数の投影像を元に断層像を画像再構成する際に実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−107932号公報
【特許文献2】特開2010−164485号公報
【特許文献3】特開2003−57349号公報
【特許文献4】特開2009−145112号公報
【特許文献5】特表2010−523965号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】IEEE Transactions on Nuclear Science, Vol.57,No.3,pp.1132-1138,2010
【非特許文献2】Journal of Optical Society of America, Vol.9, No.7, pp.1052-1061, 1992
【非特許文献3】IEEE Transactions on Nuclear Science, Vol.56,No.2,pp.479-486,2009
【非特許文献4】ESRADA BULLETIN, No38,pp.17-24,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、一般的なコリメータを用い、単一投影方向からの単一撮像を行うガンマカメラにて単一投影内で撮像対象とガンマカメラとの距離の変化を考慮して検出感度と空間分解能を同時に補正する技術は知られていない。
【0013】
そこで、本発明は、ガンマカメラの視野内の検出感度、空間分解能(部分容積効果)の変化が補正された精度のよい画像が得られるガンマカメラシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するために、本発明は、ガンマ線検出器およびコリメータを有するガンマカメラと、該ガンマカメラの撮像対象との距離を走査計測が可能な距離計測手段と、該距離計測手段の走査計測によって得られた前記ガンマカメラと該ガンマカメラの撮像対象との位置関係を計算する位置演算手段と、該位置演算手段から得られた位置関係に基づいて、前記撮像対象を前記ガンマカメラで計測する際の計測感度を推定する感度補正情報推定手段と、前記位置演算手段から得られた位置関係に基づいて、前記撮像対象を前記ガンマカメラで計測する際の分解能を推定する分解能補正情報推定手段と、前記感度補正情報推定手段により推定された計測感度、前記分解能補正情報推定手段により推定された分解能および前記ガンマカメラで検出されたガンマ線カウントデータに基づいて、ガンマ線分布画像を生成する画像生成演算手段と、を備えることを特徴とするガンマカメラシステムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガンマカメラの視野内の検出感度、空間分解能(部分容積効果)の変化が補正された精度のよい画像が得られるガンマカメラシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係るガンマカメラシステムの概観図である。
【図2】第1実施形態に係るガンマカメラシステムの構成図である。
【図3】ピンホールコリメータ使用時における、ガンマカメラから撮像平面までの距離とガンマ線検出素子の撮像範囲との関係を示す図である。
【図4】画像生成演算装置が行うガンマ線分布画像の生成を説明する図である。
【図5】シミュレーションに用いた撮像対象を説明する図である。
【図6】シミュレーション結果を示す図である。
【図7】第2実施形態に係るガンマカメラシステムの概観図である。
【図8】第2実施形態に係るガンマカメラシステムの構成図である。
【図9】出力画像の各画素が担当する表示範囲を説明する図である。
【図10】ガンマ線検出素子の実際の計測範囲を説明する図である。
【図11】ガンマ線検出素子の担当する計測範囲を説明する図である。
【図12】ガンマ線検出素子の担当する計測範囲と実際の計測範囲のずれを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0018】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係るガンマカメラシステムの概観図である。
ガンマカメラシステム1は、ピンホールコリメータ5を用いて一度に広域を撮像可能な大視野ガンマカメラシステムであり、ガンマカメラ2と、ガンマカメラ2の撮像対象10(図2参照)との距離を走査計測可能なレーザー距離計(距離計測装置)6と、コンピュータ8と、を備え、撮像対象10(図2参照)から飛来したガンマ線を計測し、ガンマ線分布画像を生成して、画像表示装置9に表示させることができるようになっている。
【0019】
ガンマカメラ2は、ガンマ線検出器3(図3参照)と、ピンホールコリメータ5と、各種電子部品(図示せず)と、を有している。
ガンマ線検出器3は、テルル化カドミウム(CdTe)や臭化タリウム(TlBr)など半導体検出器であり、n×n個のガンマ線検出素子4(図3参照)から構成され、単一または複数の素子から出力される信号を該当するチャンネル毎に取り扱うピクセル型半導体検出器である。ガンマ線検出素子4の検出信号は、放射線計測回路(図示せず)に入力される。放射線計測回路(図示せず)は、各ガンマ線検出素子4でのガンマ線カウントをコンピュータ8(後述する画像生成演算装置84(図2参照))に送信することができるようになっている。
【0020】
ピンホールコリメータ5は、撮像対象10(図2参照)から放出されるガンマ線を選別し、ガンマ線検出素子4に対して所定方向のガンマ線のみを通過させることができるようになっている。
なお、第1実施形態に係るガンマカメラ2に用いられるコリメータは、ピンホールコリメータ5であるものとして説明するが、これに限られるものではなく、パラレルホールコリメータであってもよく、ファンビームコリメータであってもよい。
【0021】
レーザー距離計6は、走査可能であって、ガンマカメラ2と撮像対象10の各領域との距離を計測することができるようになっている。また、レーザー距離計6は、計測した距離情報をコンピュータ8(後述する位置演算装置81(図2参照))に送信することができるようになっている。
なお、第1実施形態に係るガンマカメラシステム1は、レーザー距離計6を用いるものとして説明するが、これに限られるものではなく、ガンマカメラ2と撮像対象10の各領域との距離を計測する距離計測装置、例えば、ステレオカメラやミリ波レーダを用いた距離計測装置を用いるものであってもよい。
【0022】
図2は、第1実施形態に係るガンマカメラシステムの構成図である。
コンピュータ8(図1参照)は、図示しない演算装置、記憶装置等を備え、位置演算装置81、感度補正情報推定装置82、分解能補正情報推定装置83および画像生成演算装置84、として機能することができるようになっている。
【0023】
位置演算装置81は、レーザー距離計6で計測された距離情報が入力され、ガンマカメラ2と視野内の全ての領域に存在する構造物(撮像対象10)との距離情報に変換し、出力することができるようになっている。
感度補正情報推定装置82は、位置演算装置81で変換された距離情報が入力され、感度補正情報としての検出感度を出力することができるようになっている。
分解能補正情報推定装置83は、位置演算装置81で変換された距離情報が入力され、分解能補正情報としての点広がり関数を出力することができるようになっている。
画像生成演算装置84は、ガンマカメラ2の各ガンマ線検出素子4でのガンマ線カウント(検出データ)と、感度補正情報推定装置82の検出感度(感度補正情報)と、分解能補正情報推定装置83の点広がり関数(分解能補正情報)とが入力され、ガンマ線分布画像を生成し、出力することができるようになっている。
【0024】
画像表示装置9は、画像生成演算装置84(コンピュータ8)で生成されたガンマ線分布画像を表示することができるようになっている。なお、図1において、コンピュータ8と画像表示装置9とは、これらが一体となったラップトップコンピュータとして図示しているが、これに限られるものではなく、コンピュータ8と画像表示装置9とが別体となっていてもよい。
【0025】
<ガンマカメラと撮像対象との距離による影響>
ここで、ガンマカメラ2と撮像対象10との距離による影響について説明する。
【0026】
ガンマ線源(放射線源)から飛来するガンマ線の幾何学的な検出感度Sは、式(1)に示すように、ガンマ線源とガンマ線検出器3(ガンマカメラ2)との距離rの2乗に反比例する。
【0027】
【数1】
【0028】
図3は、ピンホールコリメータ使用時における、ガンマカメラから撮像平面までの距離とガンマ線検出素子の撮像範囲との関係を示す図である。
図3に示すように、ガンマ線検出器3の1つのガンマ線検出素子4の幅をd、ピンホールコリメータ5の開口径をb、ガンマ線検出器3の検出面とピンホールコリメータ5との間隔をa、とするガンマカメラ2において、ピンホールコリメータ5(ガンマカメラ2)から距離R離れた撮像平面11上のガンマ線源を撮像する際の撮像範囲、即ち、空間分解能Lは、式(2)のようになる。
【0029】
【数2】
【0030】
式(2)に示すように、距離Rが大きくなるにつれ空間分解能Lが劣化することは、撮像画像の解像度に影響することに加え、部分容積効果による計測線量の過小評価にも繋がる。さらに、式(1)に示すように、ガンマ線源とガンマ線検出器3(ガンマカメラ2)との距離rが離れると検出感度Sが低下し、ガンマ線検出素子で検出されるガンマ線カウントも低下する。
このため、線量強度と大きさが等しいガンマ線源がガンマカメラ2の視野内に複数存在する場合において、ガンマカメラ2との距離が遠いものほど、線量が少なく、解像度が粗く、統計雑音が多く見えることになる。
【0031】
以上のように、検出精度の観点からみると、ガンマカメラ2と撮像対象10との距離(r、R)を離して撮像することは好ましくなく、一般的な医療用のガンマカメラでは、第1実施形態とコリメータの種類が異なる場合も含め、近接撮像を前提としたガンマカメラシステムの構成となっている(例えば、特許文献1や非特許文献1、特許文献2参照)。
【0032】
しかし、第1実施形態に係るガンマカメラシステムは、例えば、屋外や公共施設内、屋内の放射線管理区域内などに設置された構造物を撮像対象10として使用することを想定し、一度に広域を撮像可能な大視野のガンマカメラシステム1を実現するため、ピンホールコリメータ5を用いて撮像対象10との距離を離して撮像することを前提にしている。このような広域の撮像対象10を大視野で一度に撮像する想定では、撮像対象10はガンマカメラ2から遠距離にあるのみならず、ガンマカメラ2の視野内に存在する撮像対象10とガンマカメラ2との距離が一定であることは稀である。
【0033】
<ガンマカメラシステムのガンマ線分布画像の生成>
上記のような撮像条件において、検出感度Sや空間分解能Lを適切に補正するためには、ガンマカメラ2の視野内の構造物(撮像対象10)とガンマカメラ2との距離を計測する必要がある。
そこで、第1実施形態に係るガンマカメラシステム1は、図1に示すように、ガンマカメラ2の近くに走査型のレーザー距離計6を設置し、ガンマカメラ2で構造物(撮像対象10)から飛来するガンマ線を計測すると共に、レーザー距離計6でガンマカメラ2の視野内の構造物(撮像対象10)までの距離を計測する。
【0034】
レーザー距離計6で計測された距離情報は、位置演算装置81に入力され、ガンマカメラ2と視野内の全ての領域に存在する構造物(撮像対象10)との距離情報に変換される。この時、例えば、ガンマカメラ2の視野内に関心領域を設定し、その関心領域内の構造物(撮像対象10)とガンマカメラ2との距離情報だけ計算することも可能である。
【0035】
次に、感度補正情報推定装置82は、位置演算装置81で得られた距離情報を元に、式(1)に基づいて、解析的またはレイトレーシングシミュレーションやモンテカルロシミュレーションを行い、ガンマカメラ2の撮像範囲の各領域について検出感度を求める。この時、検出感度には予め実測にて得られた個々のガンマ線検出素子4の感度情報も反映させる。
また、分解能補正情報推定装置83は、位置演算装置81で得られた距離情報を元に、式(2)に基づいて、解析的またはレイトレーシングシミュレーションやモンテカルロシミュレーションを行い、ガンマカメラ2の撮像範囲の各領域について点広がり関数を求める。
【0036】
画像生成演算装置84は、感度補正情報推定装置82の出力である検出感度(感度補正情報)と、分解能補正情報推定装置83の出力である点広がり関数(分解能補正情報)と、ガンマカメラ2で計測された各ガンマ線検出素子4でのガンマ線カウント(検出データ)とが入力され、ガンマ線分布画像を生成する。
【0037】
第1実施形態では、図4のように、前述の検出感度および点広がり関数から、撮像対象10を画像表現するためにm分割された各撮像範囲12(出力画像の画素に相当)がそれぞれ、n個のガンマ線検出素子4で検出される検出確率を求める。なお、図4では、ガンマ線検出素子4の数を4、撮像範囲12の数を6(n=4,m=6)の場合を図示している。
ここで、図4および後述する式(3)から式(8)において、yj はガンマ線検出素子jにて計測されたガンマ線カウントである。λi は画素iの画素値、即ち、撮像対象10をm分割した際の領域iに存在する線量である。Cijは、画素iから飛来したガンマ線がガンマ線検出素子jで検出される検出確率である。
このように、感度補正情報推定装置82の出力である検出感度と、分解能補正情報推定装置83の出力である点広がり関数とを用いることにより、距離情報で感度と分解能が考慮された検出確率Cijを求めることができる。
【0038】
次に、ガンマ線検出素子jのガンマ線カウントyj の期待値は、式(3)のようになる。
【0039】
【数3】
【0040】
また、ガンマ線源からガンマ線が放出され、それがガンマ線検出素子jで検出される事象は、式(4)に示すポアソン分布に従う。
【0041】
【数4】
【0042】
式(3)および式(4)より、ガンマ線源が線源分布λ(λ1 ,λ2 ,…,λm )で分布する時、ガンマ線検出素子jでガンマ線カウントyj を検出する確率は式(5)のようになる。
【0043】
【数5】
【0044】
式(5)を全ガンマ線検出素子j(j=1,2,…n)に拡張し、ガンマ線源が線源分布λ(λ1 ,λ2 ,…,λm )で分布する時、ガンマ線検出器3で検出データy(y1 ,y2 ,…,yn )を検出する確率は式(6)のようになる。
【0045】
【数6】
【0046】
ガンマ線検出器3での検出データy(y1 ,y2 ,…,yn )から線量分布λ(λ1 ,λ2 ,…,λm )を推定することが目的なので、式(7)に示すように、検出された検出データyからガンマカメラ2の視野内の線量分布λの対数尤度を最大化するようなλを求める(最尤推定演算)。
【0047】
【数7】
【0048】
これを逐次近似的に、特には、式(8)を用いる。第1実施形態に係る画像生成演算装置84では、式(8)を用いて、線量分布λ(λ1 ,λ2 ,…,λm )を推定し、ガンマ線分布画像を生成する。
【0049】
【数8】
【0050】
このように、画像生成演算装置84では、感度補正情報推定装置82の出力である検出感度と、分解能補正情報推定装置83の出力である点広がり関数とを用いて検出確率Cijを求め、式(8)を用いて、ガンマ線検出器3(ガンマカメラ2)での検出データy(y1 ,y2 ,…,yn )から、撮像対象10の線量分布λ(λ1 ,λ2 ,…,λm )を算出するようになっている。
そして、画像生成演算装置84は、生成したガンマ線源の線量分布λをガンマ線分布画像として画像表示装置9(図1参照)に送信する。
【0051】
<効果>
ここで、本発明(本実施形態)の効果を示すため、図5(a)および(b)に示すような、撮像対象10を模擬して、数値シミュレーションを行った。
撮像対象10は、図5(a)に示すように、ピンホールコリメータ5からの距離が200rとなる面10aおよびピンホールコリメータ5からの距離が300rとなる面10bの2つの段違いの面からなり、その面10a,10bの垂線に平行な方向で、2つの面の段差部分がガンマカメラ2の視野中心になるような位置から撮像したとする。なお、rとはシミュレーション上で用いた距離の単位である。
また、図5(b)に示すように、面10aには、半径5rの円状Hot領域10c、半径3rの円状Hot領域10dがあるものとし、面10bには、半径5rの円状Hot領域10e、半径3rの円状Hot領域10fがあるものとし、Hot領域(10c,10d,10e,10f)の線量は、バックグラウンド面の5倍とした。
【0052】
このような撮像対象10について、レイトレースシミュレーションにより検出データyを作成した。評価条件として、検出データyそのもの(計測画像(補正無し))、検出データyに各撮像範囲(画素)までの距離に応じて感度補正を行ったもの(感度補正有り)、検出データyに各撮像範囲(画素)までの距離に応じて感度および分解能補正を行ったもの(感度・分解能補正有り)について、ピンホールコリメータ5からの距離が異なる面間の2種類のHot領域の画素値の比(10eの画素値/10cの画素値、10fの画素値/10dの画素値)、および各面内の半径の異なる2つのHot領域の画素値の比(10dの画素値/10cの画素値、10fの画素値/10eの画素値)を求めた。
【0053】
このシミュレーション結果を図6に示す。この結果、ピンホールコリメータ5からの距離が異なり感度が変わってくる2つの面間の画素比は平均で0.50から0.70へと39%向上し、半径の異なるHot領域間の画素比は平均で0.56から0.65へと15%向上した。
また、図6には記載していないが、各面間のバックグラウンドの比は0.46から0.99に向上した。
【0054】
これらの値は検出感度が一様で部分容積効果がなければ1になるが、実際には前述のように1より低下してしまうものを、本発明の補正法により改善できることが確認された。なお、この改善率は撮像条件や補正情報作成時の計算精度にも依存するため、常にこのような値となるとは限らず、またより改善率を向上することも実装方法の工夫により可能である。前述のシミュレーション結果は、本発明の効果の1例を示したに過ぎない。
【0055】
このように、第1実施形態に係るガンマカメラシステム1によれば、ガンマカメラ2の視野内の検出感度、空間分解能(部分容積効果)の変化が補正された精度のよいガンマ線分布画像が得られる。特に、一度に広域を撮像する場合、即ち、コリメータとしてピンホールコリメータ5を用いる場合には、撮像対象10の領域ごとにガンマカメラ2との距離が異なる場合が想定されるため、有用である。
【0056】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係るガンマカメラシステム1Aについて、図7および図8を用いて説明する。
図7は、第2実施形態に係るガンマカメラシステムの概観図である。図8は、第2実施形態に係るガンマカメラシステムの構成図である。
第2実施形態に係るガンマカメラシステム1Aは、第1実施形態に係るガンマカメラシステム1(図1および図2参照)に加え、図7に示すように、ガンマカメラ2の近くに光学カメラ7が配置され、ガンマカメラ2で構造物(撮像対象10)から飛来するガンマ線を計測し、レーザー距離計6でガンマカメラ2の視野内の構造物(撮像対象10)までの距離を計測すると共に、光学カメラ7でガンマカメラ2の視野内の構造物(撮像対象10)の可視光画像を取得するようになっている。
そして、第2実施形態に係るコンピュータ8Aは、第1実施形態に係るコンピュータ8(図1参照)に加え、図8に示すように、画像統合装置85としても機能することができるようになっている。
【0057】
画像統合装置85は、画像生成演算装置84で生成したガンマ線分布画像と、光学カメラ7で取得した可視光画像とを重ね合わせ(オーバーレイ)した画像を生成し、画像表示装置9に出力するようになっている。このため、第2実施形態に係るガンマカメラシステム1Aは、ガンマ線分布画像と可視光画像を重ね合わせるため、出力画像の画素13と撮像平面11上の1画素の表示範囲14とが図9に示すように規定される。
【0058】
このように、第2実施形態に係るガンマカメラシステム1Aによれば、第1実施形態に係るガンマカメラシステム1の効果に加えて、ガンマ線分布画像と可視光画像が重ね合わせ(オーバーレイ)された画像が、画像表示装置9に表示されるため、撮像対象10のガンマ線分布を容易に判断することができる。
【0059】
≪第3実施形態≫
前述した第1実施形態に係るガンマカメラシステム1および第2実施形態に係るガンマカメラシステム1Aでは、感度補正情報推定装置82による感度補正情報推定処理、分解能補正情報推定装置83による分解能補正情報推定処理を行った例を示したが、これら処理を実施しないで画像生成演算装置84で得た画像や、これら処理を実施して画像生成演算装置84で得た画像をデータベースに記録しておき、このデータをプロジェクタ(図示せず)にて投影することとしてもよい。
なお、画像データを記録したデータベースはガンマカメラシステム内の他、通信により外部データベースとしてもよい。
【0060】
つまり、ガンマ線検出器3およびコリメータ5を有するガンマカメラ2と、前記ガンマカメラ2で検出されたガンマ線カウントデータを元に画像生成を行う画像生成演算装置84と、前記画像生成演算装置84で生成したガンマ線の分布画像を投影表示するプロジェクタ(図示せず)とを有するガンマカメラシステムにより、現場で測定したガンマ線の分布状況を、コンピュータ8の画像表示装置9の画面でなく、現場作業員の現場位置で容易に確認することができる。
【0061】
そして、現場で測定したガンマ線の分布状況をプロジェクタ(図示せず)にて測定対象物(撮像対象10)へ重ね合わせて表示させてもよく、現場作業員が測定対象物(撮像対象10)を見るだけでガンマ線の分布状況を容易に認識することができる。
【0062】
このように、現場作業員がリアルタイムに直接ガンマ線分布状況を把握できるようにすることで、コンピュータ8の画像表示装置9の画面を監視する手間や人員を省くことが可能となり、被ばく量の低減が図れるのみならず、作業中の漏えいや遮蔽体の排除、除染効果などの線量変化をリアルタイムに作業員自身が確認することが可能となる。
【0063】
また、プロジェクタからの画像を測定対象物(撮像対象10)へ重ね合わせる投影表示は人が調整してもよいし、ガンマカメラシステムの制御装置(図示せず)にて調整させてもよい。
制御装置にて調整させ、重ね合わせの精度を得る場合には、測定対象物(撮像対象10)の距離に応じたプロジェクタの投影範囲を予め設定しておき、距離計測装置(レーザー距離計6)を用いて測定した距離に応じてプロジェクタの投影範囲を拡大または縮小の調整を行うことしてもよい。これにより、現場での投影表示の調整作業を軽減することができる。
【0064】
また、距離に応じたプロジェクタの投影表示の際に、測定対象物(撮像対象10)までの距離に応じて投影表示する画像を補正することとしてもよい。
ここでいう補正とは、前述した感度補正、前述した分解能補正、ガンマカメラ2とプロジェクタとの位置が異なることによる画像歪み補正、プロジェクタと投影対象(撮像対象10)との距離が離れるほど投影対象(撮像対象10)に到達する光量が減少することを加味し光量や輝度を遠距離ほど強く調整する投影画像補正、プロジェクタの投影画像は普通はスクリーンなどの平面へ投影するが、投影対象(撮像対象10)の凹凸により投影する位置がずれることによる画像歪み補正のうち、いずれかもしくは複数の組合せを意味する。
【0065】
ガンマカメラ2とプロジェクタとの位置が異なることによる画像歪み補正は、距離に応じてその画像の歪み量を補う補正をすればよく、例えば、予め距離に応じて画像の歪みを測定し、距離と歪みの対応関係を記録しておき、投影対象(撮像対象10)の距離を測定した結果に基づいて記録された対応関係から画像の歪みを求めて画像を補正し、プロジェクタへの投影表示を制御する。
【0066】
光量や輝度の投影画像補正は、プロジェクタと投影対象(撮像対象10)との距離が離れるほど投影対象(撮像対象10)に到達する単位面積当たりの光量が減少することを加味し光量や輝度を遠距離ほど強く調整すればよく、例えば、予め距離に応じて光量の減少を測定してその減少量を補うように、距離と光量の対応関係を記録しておき、投影対象(撮像対象10)の距離を測定した結果に基づいて記録された対応関係から光量を求めて出力される画像の光量を制御する。
【0067】
投影対象(撮像対象10)の凹凸による画像歪み補正は、距離に応じてその画像の歪み量を補う補正をすればよく、例えば、予め距離に応じて画像の歪みを測定し、距離と歪みの対応関係を記録しておき、投影対象(撮像対象10)の距離を測定した結果に基づいて記録された対応関係から画像の歪みを求めて画像を補正しプロジェクタへの投影表示を制御する。投影対象(撮像対象10)が平面ではなく立体である場合特に、距離計測装置(レーザー距離計6)を用いて測定した距離に応じて画像を前記のように補正することで、計測された放射線量を投影対象(撮像対象10)に精度よくプロジェクタから投影することができる。
【符号の説明】
【0068】
1,1A ガンマカメラシステム
2 ガンマカメラ
3 ガンマ線検出器
4 ガンマ線検出素子
5 ピンホールコリメータ(コリメータ)
6 レーザー距離計(距離計測装置、距離計測手段)
7 光学カメラ
8 コンピュータ
81 位置演算装置(位置演算手段)
82 感度補正情報推定装置(感度補正情報推定手段)
83 分解能補正情報推定装置(分解能補正情報推定手段)
84 画像生成演算装置(画像生成演算手段)
85 画像統合装置(画像統合手段)
9 画像表示装置
10 撮像対象
y 検出データ(ガンマ線カウントデータ)
λ 線量分布
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマカメラによって計測された画像情報を生成するガンマカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像対象から放射されるガンマ線をガンマカメラで計測して、撮像対象のガンマ線画像を生成するガンマカメラシステムが知られている。ここで、一般的なコリメータを用いたガンマカメラにて計測されるデータは、ガンマカメラと撮像対象との距離に依存して検出感度や空間分解能が劣化する。しかし、撮像対象がガンマカメラからの距離が一定な平面であることは稀であり、例えば、屋外や公共施設内、屋内の放射線管理区域内などに設置された構造物を撮像対象として使用することを想定した一度に広域を撮像可能な大視野のガンマカメラシステムにおいては、ガンマカメラの撮像視野内にガンマカメラからの距離が異なる撮像対象の領域が含まれることが想定される。
このことは、たとえ同じ面積で同じ線量の領域があったとしても、ガンマカメラとの位置関係によって、計測されたガンマ線カウント数や検出画像上の大きさが変化することを意味し、撮像された検出画像の信頼性を損ねる要因となる。
【0003】
また、図10に示すように、ガンマ線検出器103のガンマ線検出素子104a,104b…の幅や、コリメータ105の開口径は、無限小ではなく有限な幅を持つ。このため、撮像平面111上のガンマ線検出素子104aの計測範囲115aは、他のガンマ線検出素子(図10では、ガンマ線検出素子104b)の計測範囲との重なる範囲116を有することとなる。
また、図11に示すように、コリメータ105の中心105cを通るように、ガンマ線検出素子104aの担当する範囲117aを設定した場合、図12に示すように、検出素子104aの担当する範囲117aと、実際のガンマ線検出素子104aの計測範囲115aとは、同一とならない。
【0004】
前述のように、ガンマカメラと撮像対象との距離が大きくなるにつれ、検出感度および空間分解能が低下する。
【0005】
これに対し、特許文献1や非特許文献1、特許文献2に記載されているような一般的な医療用のガンマカメラシステムでは、手動または自動制御による近接撮像を前提としたシステム構成となっている。このため、ガンマカメラと撮像対象との距離は近接しており、視野内の検出感度および空間分解能の変化は大きな問題となっていない。
また、非特許文献2にあるように、画像の鮮鋭化を目的としたBlind Deconvolution法は公知であるが、これも視野内の検出感度および空間分解能の変化は大きくないことを前提としている。
【0006】
非特許文献3、非特許文献4には、ガンマカメラとレーザースキャナを組み合わせたものが記載されているが、これらは、ガンマカメラ自体も3次元計測が可能なものである必要があり、安価で簡易的に使用可能な2次元計測型ガンマカメラでの大視野撮像とは異なる上、ガンマカメラと撮像対象との距離の変化に伴う検出感度や空間分解能の変化の補正についての記載は無い。
【0007】
また、特許文献3においてもガンマカメラ(放射線検出器)とレーザースキャナを組み合わせたものが記載されているが、これは、放射線量を計測したい撮像対象以外の環境的放射線(バッググラウンド)が、見掛け上撮像対象からの放射線と誤って計測される現象を補正するための発明であり、レーザースキャナの計測結果は、環境放射線が撮像対象において散乱、減弱される影響を数値計算により推定するために用いられている。
このため、ガンマカメラ(放射線検出器)と撮像対象との距離に基づいて検出感度や空間分解能を補正するものではない。
【0008】
特許文献4では、レーザースキャナの代わりに光学カメラや予め取得された形状データを用いているが、撮像対象の放射線量の計測精度向上を意図したものであり、撮像対象とガンマカメラ間の距離に応じた検出感度補正を実施するものの、空間分解能の変化については考慮されておらず、撮像対象内の放射線量分布を精度よく画像化するための技術ではない。
【0009】
ガンマカメラを被検体のまわりに回転させ複数の方向から投影画像を取得し断層像を得るSPECT(Single photon emission computed tomography)装置の分野では、ガンマカメラと視野内の各画素との距離に応じて変化する感度や分解能を補正する方法は、例えば、特許文献5のように存在する。しかし、SPECTの分野における前記補正は、取得された複数の投影像を元に断層像を画像再構成する際に実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−107932号公報
【特許文献2】特開2010−164485号公報
【特許文献3】特開2003−57349号公報
【特許文献4】特開2009−145112号公報
【特許文献5】特表2010−523965号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】IEEE Transactions on Nuclear Science, Vol.57,No.3,pp.1132-1138,2010
【非特許文献2】Journal of Optical Society of America, Vol.9, No.7, pp.1052-1061, 1992
【非特許文献3】IEEE Transactions on Nuclear Science, Vol.56,No.2,pp.479-486,2009
【非特許文献4】ESRADA BULLETIN, No38,pp.17-24,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、一般的なコリメータを用い、単一投影方向からの単一撮像を行うガンマカメラにて単一投影内で撮像対象とガンマカメラとの距離の変化を考慮して検出感度と空間分解能を同時に補正する技術は知られていない。
【0013】
そこで、本発明は、ガンマカメラの視野内の検出感度、空間分解能(部分容積効果)の変化が補正された精度のよい画像が得られるガンマカメラシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するために、本発明は、ガンマ線検出器およびコリメータを有するガンマカメラと、該ガンマカメラの撮像対象との距離を走査計測が可能な距離計測手段と、該距離計測手段の走査計測によって得られた前記ガンマカメラと該ガンマカメラの撮像対象との位置関係を計算する位置演算手段と、該位置演算手段から得られた位置関係に基づいて、前記撮像対象を前記ガンマカメラで計測する際の計測感度を推定する感度補正情報推定手段と、前記位置演算手段から得られた位置関係に基づいて、前記撮像対象を前記ガンマカメラで計測する際の分解能を推定する分解能補正情報推定手段と、前記感度補正情報推定手段により推定された計測感度、前記分解能補正情報推定手段により推定された分解能および前記ガンマカメラで検出されたガンマ線カウントデータに基づいて、ガンマ線分布画像を生成する画像生成演算手段と、を備えることを特徴とするガンマカメラシステムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガンマカメラの視野内の検出感度、空間分解能(部分容積効果)の変化が補正された精度のよい画像が得られるガンマカメラシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係るガンマカメラシステムの概観図である。
【図2】第1実施形態に係るガンマカメラシステムの構成図である。
【図3】ピンホールコリメータ使用時における、ガンマカメラから撮像平面までの距離とガンマ線検出素子の撮像範囲との関係を示す図である。
【図4】画像生成演算装置が行うガンマ線分布画像の生成を説明する図である。
【図5】シミュレーションに用いた撮像対象を説明する図である。
【図6】シミュレーション結果を示す図である。
【図7】第2実施形態に係るガンマカメラシステムの概観図である。
【図8】第2実施形態に係るガンマカメラシステムの構成図である。
【図9】出力画像の各画素が担当する表示範囲を説明する図である。
【図10】ガンマ線検出素子の実際の計測範囲を説明する図である。
【図11】ガンマ線検出素子の担当する計測範囲を説明する図である。
【図12】ガンマ線検出素子の担当する計測範囲と実際の計測範囲のずれを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0018】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係るガンマカメラシステムの概観図である。
ガンマカメラシステム1は、ピンホールコリメータ5を用いて一度に広域を撮像可能な大視野ガンマカメラシステムであり、ガンマカメラ2と、ガンマカメラ2の撮像対象10(図2参照)との距離を走査計測可能なレーザー距離計(距離計測装置)6と、コンピュータ8と、を備え、撮像対象10(図2参照)から飛来したガンマ線を計測し、ガンマ線分布画像を生成して、画像表示装置9に表示させることができるようになっている。
【0019】
ガンマカメラ2は、ガンマ線検出器3(図3参照)と、ピンホールコリメータ5と、各種電子部品(図示せず)と、を有している。
ガンマ線検出器3は、テルル化カドミウム(CdTe)や臭化タリウム(TlBr)など半導体検出器であり、n×n個のガンマ線検出素子4(図3参照)から構成され、単一または複数の素子から出力される信号を該当するチャンネル毎に取り扱うピクセル型半導体検出器である。ガンマ線検出素子4の検出信号は、放射線計測回路(図示せず)に入力される。放射線計測回路(図示せず)は、各ガンマ線検出素子4でのガンマ線カウントをコンピュータ8(後述する画像生成演算装置84(図2参照))に送信することができるようになっている。
【0020】
ピンホールコリメータ5は、撮像対象10(図2参照)から放出されるガンマ線を選別し、ガンマ線検出素子4に対して所定方向のガンマ線のみを通過させることができるようになっている。
なお、第1実施形態に係るガンマカメラ2に用いられるコリメータは、ピンホールコリメータ5であるものとして説明するが、これに限られるものではなく、パラレルホールコリメータであってもよく、ファンビームコリメータであってもよい。
【0021】
レーザー距離計6は、走査可能であって、ガンマカメラ2と撮像対象10の各領域との距離を計測することができるようになっている。また、レーザー距離計6は、計測した距離情報をコンピュータ8(後述する位置演算装置81(図2参照))に送信することができるようになっている。
なお、第1実施形態に係るガンマカメラシステム1は、レーザー距離計6を用いるものとして説明するが、これに限られるものではなく、ガンマカメラ2と撮像対象10の各領域との距離を計測する距離計測装置、例えば、ステレオカメラやミリ波レーダを用いた距離計測装置を用いるものであってもよい。
【0022】
図2は、第1実施形態に係るガンマカメラシステムの構成図である。
コンピュータ8(図1参照)は、図示しない演算装置、記憶装置等を備え、位置演算装置81、感度補正情報推定装置82、分解能補正情報推定装置83および画像生成演算装置84、として機能することができるようになっている。
【0023】
位置演算装置81は、レーザー距離計6で計測された距離情報が入力され、ガンマカメラ2と視野内の全ての領域に存在する構造物(撮像対象10)との距離情報に変換し、出力することができるようになっている。
感度補正情報推定装置82は、位置演算装置81で変換された距離情報が入力され、感度補正情報としての検出感度を出力することができるようになっている。
分解能補正情報推定装置83は、位置演算装置81で変換された距離情報が入力され、分解能補正情報としての点広がり関数を出力することができるようになっている。
画像生成演算装置84は、ガンマカメラ2の各ガンマ線検出素子4でのガンマ線カウント(検出データ)と、感度補正情報推定装置82の検出感度(感度補正情報)と、分解能補正情報推定装置83の点広がり関数(分解能補正情報)とが入力され、ガンマ線分布画像を生成し、出力することができるようになっている。
【0024】
画像表示装置9は、画像生成演算装置84(コンピュータ8)で生成されたガンマ線分布画像を表示することができるようになっている。なお、図1において、コンピュータ8と画像表示装置9とは、これらが一体となったラップトップコンピュータとして図示しているが、これに限られるものではなく、コンピュータ8と画像表示装置9とが別体となっていてもよい。
【0025】
<ガンマカメラと撮像対象との距離による影響>
ここで、ガンマカメラ2と撮像対象10との距離による影響について説明する。
【0026】
ガンマ線源(放射線源)から飛来するガンマ線の幾何学的な検出感度Sは、式(1)に示すように、ガンマ線源とガンマ線検出器3(ガンマカメラ2)との距離rの2乗に反比例する。
【0027】
【数1】
【0028】
図3は、ピンホールコリメータ使用時における、ガンマカメラから撮像平面までの距離とガンマ線検出素子の撮像範囲との関係を示す図である。
図3に示すように、ガンマ線検出器3の1つのガンマ線検出素子4の幅をd、ピンホールコリメータ5の開口径をb、ガンマ線検出器3の検出面とピンホールコリメータ5との間隔をa、とするガンマカメラ2において、ピンホールコリメータ5(ガンマカメラ2)から距離R離れた撮像平面11上のガンマ線源を撮像する際の撮像範囲、即ち、空間分解能Lは、式(2)のようになる。
【0029】
【数2】
【0030】
式(2)に示すように、距離Rが大きくなるにつれ空間分解能Lが劣化することは、撮像画像の解像度に影響することに加え、部分容積効果による計測線量の過小評価にも繋がる。さらに、式(1)に示すように、ガンマ線源とガンマ線検出器3(ガンマカメラ2)との距離rが離れると検出感度Sが低下し、ガンマ線検出素子で検出されるガンマ線カウントも低下する。
このため、線量強度と大きさが等しいガンマ線源がガンマカメラ2の視野内に複数存在する場合において、ガンマカメラ2との距離が遠いものほど、線量が少なく、解像度が粗く、統計雑音が多く見えることになる。
【0031】
以上のように、検出精度の観点からみると、ガンマカメラ2と撮像対象10との距離(r、R)を離して撮像することは好ましくなく、一般的な医療用のガンマカメラでは、第1実施形態とコリメータの種類が異なる場合も含め、近接撮像を前提としたガンマカメラシステムの構成となっている(例えば、特許文献1や非特許文献1、特許文献2参照)。
【0032】
しかし、第1実施形態に係るガンマカメラシステムは、例えば、屋外や公共施設内、屋内の放射線管理区域内などに設置された構造物を撮像対象10として使用することを想定し、一度に広域を撮像可能な大視野のガンマカメラシステム1を実現するため、ピンホールコリメータ5を用いて撮像対象10との距離を離して撮像することを前提にしている。このような広域の撮像対象10を大視野で一度に撮像する想定では、撮像対象10はガンマカメラ2から遠距離にあるのみならず、ガンマカメラ2の視野内に存在する撮像対象10とガンマカメラ2との距離が一定であることは稀である。
【0033】
<ガンマカメラシステムのガンマ線分布画像の生成>
上記のような撮像条件において、検出感度Sや空間分解能Lを適切に補正するためには、ガンマカメラ2の視野内の構造物(撮像対象10)とガンマカメラ2との距離を計測する必要がある。
そこで、第1実施形態に係るガンマカメラシステム1は、図1に示すように、ガンマカメラ2の近くに走査型のレーザー距離計6を設置し、ガンマカメラ2で構造物(撮像対象10)から飛来するガンマ線を計測すると共に、レーザー距離計6でガンマカメラ2の視野内の構造物(撮像対象10)までの距離を計測する。
【0034】
レーザー距離計6で計測された距離情報は、位置演算装置81に入力され、ガンマカメラ2と視野内の全ての領域に存在する構造物(撮像対象10)との距離情報に変換される。この時、例えば、ガンマカメラ2の視野内に関心領域を設定し、その関心領域内の構造物(撮像対象10)とガンマカメラ2との距離情報だけ計算することも可能である。
【0035】
次に、感度補正情報推定装置82は、位置演算装置81で得られた距離情報を元に、式(1)に基づいて、解析的またはレイトレーシングシミュレーションやモンテカルロシミュレーションを行い、ガンマカメラ2の撮像範囲の各領域について検出感度を求める。この時、検出感度には予め実測にて得られた個々のガンマ線検出素子4の感度情報も反映させる。
また、分解能補正情報推定装置83は、位置演算装置81で得られた距離情報を元に、式(2)に基づいて、解析的またはレイトレーシングシミュレーションやモンテカルロシミュレーションを行い、ガンマカメラ2の撮像範囲の各領域について点広がり関数を求める。
【0036】
画像生成演算装置84は、感度補正情報推定装置82の出力である検出感度(感度補正情報)と、分解能補正情報推定装置83の出力である点広がり関数(分解能補正情報)と、ガンマカメラ2で計測された各ガンマ線検出素子4でのガンマ線カウント(検出データ)とが入力され、ガンマ線分布画像を生成する。
【0037】
第1実施形態では、図4のように、前述の検出感度および点広がり関数から、撮像対象10を画像表現するためにm分割された各撮像範囲12(出力画像の画素に相当)がそれぞれ、n個のガンマ線検出素子4で検出される検出確率を求める。なお、図4では、ガンマ線検出素子4の数を4、撮像範囲12の数を6(n=4,m=6)の場合を図示している。
ここで、図4および後述する式(3)から式(8)において、yj はガンマ線検出素子jにて計測されたガンマ線カウントである。λi は画素iの画素値、即ち、撮像対象10をm分割した際の領域iに存在する線量である。Cijは、画素iから飛来したガンマ線がガンマ線検出素子jで検出される検出確率である。
このように、感度補正情報推定装置82の出力である検出感度と、分解能補正情報推定装置83の出力である点広がり関数とを用いることにより、距離情報で感度と分解能が考慮された検出確率Cijを求めることができる。
【0038】
次に、ガンマ線検出素子jのガンマ線カウントyj の期待値は、式(3)のようになる。
【0039】
【数3】
【0040】
また、ガンマ線源からガンマ線が放出され、それがガンマ線検出素子jで検出される事象は、式(4)に示すポアソン分布に従う。
【0041】
【数4】
【0042】
式(3)および式(4)より、ガンマ線源が線源分布λ(λ1 ,λ2 ,…,λm )で分布する時、ガンマ線検出素子jでガンマ線カウントyj を検出する確率は式(5)のようになる。
【0043】
【数5】
【0044】
式(5)を全ガンマ線検出素子j(j=1,2,…n)に拡張し、ガンマ線源が線源分布λ(λ1 ,λ2 ,…,λm )で分布する時、ガンマ線検出器3で検出データy(y1 ,y2 ,…,yn )を検出する確率は式(6)のようになる。
【0045】
【数6】
【0046】
ガンマ線検出器3での検出データy(y1 ,y2 ,…,yn )から線量分布λ(λ1 ,λ2 ,…,λm )を推定することが目的なので、式(7)に示すように、検出された検出データyからガンマカメラ2の視野内の線量分布λの対数尤度を最大化するようなλを求める(最尤推定演算)。
【0047】
【数7】
【0048】
これを逐次近似的に、特には、式(8)を用いる。第1実施形態に係る画像生成演算装置84では、式(8)を用いて、線量分布λ(λ1 ,λ2 ,…,λm )を推定し、ガンマ線分布画像を生成する。
【0049】
【数8】
【0050】
このように、画像生成演算装置84では、感度補正情報推定装置82の出力である検出感度と、分解能補正情報推定装置83の出力である点広がり関数とを用いて検出確率Cijを求め、式(8)を用いて、ガンマ線検出器3(ガンマカメラ2)での検出データy(y1 ,y2 ,…,yn )から、撮像対象10の線量分布λ(λ1 ,λ2 ,…,λm )を算出するようになっている。
そして、画像生成演算装置84は、生成したガンマ線源の線量分布λをガンマ線分布画像として画像表示装置9(図1参照)に送信する。
【0051】
<効果>
ここで、本発明(本実施形態)の効果を示すため、図5(a)および(b)に示すような、撮像対象10を模擬して、数値シミュレーションを行った。
撮像対象10は、図5(a)に示すように、ピンホールコリメータ5からの距離が200rとなる面10aおよびピンホールコリメータ5からの距離が300rとなる面10bの2つの段違いの面からなり、その面10a,10bの垂線に平行な方向で、2つの面の段差部分がガンマカメラ2の視野中心になるような位置から撮像したとする。なお、rとはシミュレーション上で用いた距離の単位である。
また、図5(b)に示すように、面10aには、半径5rの円状Hot領域10c、半径3rの円状Hot領域10dがあるものとし、面10bには、半径5rの円状Hot領域10e、半径3rの円状Hot領域10fがあるものとし、Hot領域(10c,10d,10e,10f)の線量は、バックグラウンド面の5倍とした。
【0052】
このような撮像対象10について、レイトレースシミュレーションにより検出データyを作成した。評価条件として、検出データyそのもの(計測画像(補正無し))、検出データyに各撮像範囲(画素)までの距離に応じて感度補正を行ったもの(感度補正有り)、検出データyに各撮像範囲(画素)までの距離に応じて感度および分解能補正を行ったもの(感度・分解能補正有り)について、ピンホールコリメータ5からの距離が異なる面間の2種類のHot領域の画素値の比(10eの画素値/10cの画素値、10fの画素値/10dの画素値)、および各面内の半径の異なる2つのHot領域の画素値の比(10dの画素値/10cの画素値、10fの画素値/10eの画素値)を求めた。
【0053】
このシミュレーション結果を図6に示す。この結果、ピンホールコリメータ5からの距離が異なり感度が変わってくる2つの面間の画素比は平均で0.50から0.70へと39%向上し、半径の異なるHot領域間の画素比は平均で0.56から0.65へと15%向上した。
また、図6には記載していないが、各面間のバックグラウンドの比は0.46から0.99に向上した。
【0054】
これらの値は検出感度が一様で部分容積効果がなければ1になるが、実際には前述のように1より低下してしまうものを、本発明の補正法により改善できることが確認された。なお、この改善率は撮像条件や補正情報作成時の計算精度にも依存するため、常にこのような値となるとは限らず、またより改善率を向上することも実装方法の工夫により可能である。前述のシミュレーション結果は、本発明の効果の1例を示したに過ぎない。
【0055】
このように、第1実施形態に係るガンマカメラシステム1によれば、ガンマカメラ2の視野内の検出感度、空間分解能(部分容積効果)の変化が補正された精度のよいガンマ線分布画像が得られる。特に、一度に広域を撮像する場合、即ち、コリメータとしてピンホールコリメータ5を用いる場合には、撮像対象10の領域ごとにガンマカメラ2との距離が異なる場合が想定されるため、有用である。
【0056】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係るガンマカメラシステム1Aについて、図7および図8を用いて説明する。
図7は、第2実施形態に係るガンマカメラシステムの概観図である。図8は、第2実施形態に係るガンマカメラシステムの構成図である。
第2実施形態に係るガンマカメラシステム1Aは、第1実施形態に係るガンマカメラシステム1(図1および図2参照)に加え、図7に示すように、ガンマカメラ2の近くに光学カメラ7が配置され、ガンマカメラ2で構造物(撮像対象10)から飛来するガンマ線を計測し、レーザー距離計6でガンマカメラ2の視野内の構造物(撮像対象10)までの距離を計測すると共に、光学カメラ7でガンマカメラ2の視野内の構造物(撮像対象10)の可視光画像を取得するようになっている。
そして、第2実施形態に係るコンピュータ8Aは、第1実施形態に係るコンピュータ8(図1参照)に加え、図8に示すように、画像統合装置85としても機能することができるようになっている。
【0057】
画像統合装置85は、画像生成演算装置84で生成したガンマ線分布画像と、光学カメラ7で取得した可視光画像とを重ね合わせ(オーバーレイ)した画像を生成し、画像表示装置9に出力するようになっている。このため、第2実施形態に係るガンマカメラシステム1Aは、ガンマ線分布画像と可視光画像を重ね合わせるため、出力画像の画素13と撮像平面11上の1画素の表示範囲14とが図9に示すように規定される。
【0058】
このように、第2実施形態に係るガンマカメラシステム1Aによれば、第1実施形態に係るガンマカメラシステム1の効果に加えて、ガンマ線分布画像と可視光画像が重ね合わせ(オーバーレイ)された画像が、画像表示装置9に表示されるため、撮像対象10のガンマ線分布を容易に判断することができる。
【0059】
≪第3実施形態≫
前述した第1実施形態に係るガンマカメラシステム1および第2実施形態に係るガンマカメラシステム1Aでは、感度補正情報推定装置82による感度補正情報推定処理、分解能補正情報推定装置83による分解能補正情報推定処理を行った例を示したが、これら処理を実施しないで画像生成演算装置84で得た画像や、これら処理を実施して画像生成演算装置84で得た画像をデータベースに記録しておき、このデータをプロジェクタ(図示せず)にて投影することとしてもよい。
なお、画像データを記録したデータベースはガンマカメラシステム内の他、通信により外部データベースとしてもよい。
【0060】
つまり、ガンマ線検出器3およびコリメータ5を有するガンマカメラ2と、前記ガンマカメラ2で検出されたガンマ線カウントデータを元に画像生成を行う画像生成演算装置84と、前記画像生成演算装置84で生成したガンマ線の分布画像を投影表示するプロジェクタ(図示せず)とを有するガンマカメラシステムにより、現場で測定したガンマ線の分布状況を、コンピュータ8の画像表示装置9の画面でなく、現場作業員の現場位置で容易に確認することができる。
【0061】
そして、現場で測定したガンマ線の分布状況をプロジェクタ(図示せず)にて測定対象物(撮像対象10)へ重ね合わせて表示させてもよく、現場作業員が測定対象物(撮像対象10)を見るだけでガンマ線の分布状況を容易に認識することができる。
【0062】
このように、現場作業員がリアルタイムに直接ガンマ線分布状況を把握できるようにすることで、コンピュータ8の画像表示装置9の画面を監視する手間や人員を省くことが可能となり、被ばく量の低減が図れるのみならず、作業中の漏えいや遮蔽体の排除、除染効果などの線量変化をリアルタイムに作業員自身が確認することが可能となる。
【0063】
また、プロジェクタからの画像を測定対象物(撮像対象10)へ重ね合わせる投影表示は人が調整してもよいし、ガンマカメラシステムの制御装置(図示せず)にて調整させてもよい。
制御装置にて調整させ、重ね合わせの精度を得る場合には、測定対象物(撮像対象10)の距離に応じたプロジェクタの投影範囲を予め設定しておき、距離計測装置(レーザー距離計6)を用いて測定した距離に応じてプロジェクタの投影範囲を拡大または縮小の調整を行うことしてもよい。これにより、現場での投影表示の調整作業を軽減することができる。
【0064】
また、距離に応じたプロジェクタの投影表示の際に、測定対象物(撮像対象10)までの距離に応じて投影表示する画像を補正することとしてもよい。
ここでいう補正とは、前述した感度補正、前述した分解能補正、ガンマカメラ2とプロジェクタとの位置が異なることによる画像歪み補正、プロジェクタと投影対象(撮像対象10)との距離が離れるほど投影対象(撮像対象10)に到達する光量が減少することを加味し光量や輝度を遠距離ほど強く調整する投影画像補正、プロジェクタの投影画像は普通はスクリーンなどの平面へ投影するが、投影対象(撮像対象10)の凹凸により投影する位置がずれることによる画像歪み補正のうち、いずれかもしくは複数の組合せを意味する。
【0065】
ガンマカメラ2とプロジェクタとの位置が異なることによる画像歪み補正は、距離に応じてその画像の歪み量を補う補正をすればよく、例えば、予め距離に応じて画像の歪みを測定し、距離と歪みの対応関係を記録しておき、投影対象(撮像対象10)の距離を測定した結果に基づいて記録された対応関係から画像の歪みを求めて画像を補正し、プロジェクタへの投影表示を制御する。
【0066】
光量や輝度の投影画像補正は、プロジェクタと投影対象(撮像対象10)との距離が離れるほど投影対象(撮像対象10)に到達する単位面積当たりの光量が減少することを加味し光量や輝度を遠距離ほど強く調整すればよく、例えば、予め距離に応じて光量の減少を測定してその減少量を補うように、距離と光量の対応関係を記録しておき、投影対象(撮像対象10)の距離を測定した結果に基づいて記録された対応関係から光量を求めて出力される画像の光量を制御する。
【0067】
投影対象(撮像対象10)の凹凸による画像歪み補正は、距離に応じてその画像の歪み量を補う補正をすればよく、例えば、予め距離に応じて画像の歪みを測定し、距離と歪みの対応関係を記録しておき、投影対象(撮像対象10)の距離を測定した結果に基づいて記録された対応関係から画像の歪みを求めて画像を補正しプロジェクタへの投影表示を制御する。投影対象(撮像対象10)が平面ではなく立体である場合特に、距離計測装置(レーザー距離計6)を用いて測定した距離に応じて画像を前記のように補正することで、計測された放射線量を投影対象(撮像対象10)に精度よくプロジェクタから投影することができる。
【符号の説明】
【0068】
1,1A ガンマカメラシステム
2 ガンマカメラ
3 ガンマ線検出器
4 ガンマ線検出素子
5 ピンホールコリメータ(コリメータ)
6 レーザー距離計(距離計測装置、距離計測手段)
7 光学カメラ
8 コンピュータ
81 位置演算装置(位置演算手段)
82 感度補正情報推定装置(感度補正情報推定手段)
83 分解能補正情報推定装置(分解能補正情報推定手段)
84 画像生成演算装置(画像生成演算手段)
85 画像統合装置(画像統合手段)
9 画像表示装置
10 撮像対象
y 検出データ(ガンマ線カウントデータ)
λ 線量分布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマ線検出器およびコリメータを有するガンマカメラと、
該ガンマカメラの撮像対象との距離を走査計測が可能な距離計測手段と、
該距離計測手段の走査計測によって得られた前記ガンマカメラと該ガンマカメラの撮像対象との位置関係を計算する位置演算手段と、
該位置演算手段から得られた位置関係に基づいて、前記撮像対象を前記ガンマカメラで計測する際の計測感度を推定する感度補正情報推定手段と、
前記位置演算手段から得られた位置関係に基づいて、前記撮像対象を前記ガンマカメラで計測する際の分解能を推定する分解能補正情報推定手段と、
前記感度補正情報推定手段により推定された計測感度、前記分解能補正情報推定手段により推定された分解能および前記ガンマカメラで検出されたガンマ線カウントデータに基づいて、ガンマ線分布画像を生成する画像生成演算手段と、を備える
ことを特徴とするガンマカメラシステム。
【請求項2】
前記ガンマ線検出器は、単一または複数の素子のから出力される信号を該当するチャンネル毎に取り扱うピクセル型ガンマ線検出器である
ことを特徴とする請求項1に記載のガンマカメラシステム。
【請求項3】
前記ガンマ線検出器は、半導体検出器である
ことを特徴とする請求項2に記載のガンマカメラシステム。
【請求項4】
前記画像生成演算手段は、最尤推定演算によりガンマ線分布画像を生成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガンマカメラシステム。
【請求項5】
前記ガンマカメラの撮像対象を撮影する光学カメラと、
前記光学カメラで撮影された光学画像と前記画像生成演算手段で生成したガンマ線分布画像との重ね合わせを行う画像統合手段と、を更に備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガンマカメラシステム。
【請求項6】
前記画像生成演算手段で生成したガンマ線分布画像を投影表示するプロジェクタと、を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガンマカメラシステム。
【請求項7】
ガンマ線検出器およびコリメータを有するガンマカメラと、
該ガンマカメラの撮像対象との距離を走査計測が可能な距離計測手段と、
該距離計測手段の走査計測によって得られた前記ガンマカメラと該ガンマカメラの撮像対象との距離および該距離に線源からの広がりを考慮して、前記ガンマカメラで検出されたガンマ線カウントデータに基づいて、ガンマ線分布画像を生成する画像生成演算手段と、を備える
ことを特徴とするガンマカメラシステム。
【請求項8】
ガンマ線検出器およびコリメータを有するガンマカメラと、
前記ガンマカメラで検出されたガンマ線カウントデータに基づいて、ガンマ線分布画像を生成する画像生成演算手段と、
前記画像生成演算手段で生成したガンマ線分布画像を投影表示するプロジェクタと、を備える
ことを特徴とするガンマカメラシステム。
【請求項9】
前記プロジェクタは、前記ガンマカメラの撮像対象にガンマ線分布画像を投影表示する
ことを特徴とする請求項8に記載のガンマカメラシステム。
【請求項1】
ガンマ線検出器およびコリメータを有するガンマカメラと、
該ガンマカメラの撮像対象との距離を走査計測が可能な距離計測手段と、
該距離計測手段の走査計測によって得られた前記ガンマカメラと該ガンマカメラの撮像対象との位置関係を計算する位置演算手段と、
該位置演算手段から得られた位置関係に基づいて、前記撮像対象を前記ガンマカメラで計測する際の計測感度を推定する感度補正情報推定手段と、
前記位置演算手段から得られた位置関係に基づいて、前記撮像対象を前記ガンマカメラで計測する際の分解能を推定する分解能補正情報推定手段と、
前記感度補正情報推定手段により推定された計測感度、前記分解能補正情報推定手段により推定された分解能および前記ガンマカメラで検出されたガンマ線カウントデータに基づいて、ガンマ線分布画像を生成する画像生成演算手段と、を備える
ことを特徴とするガンマカメラシステム。
【請求項2】
前記ガンマ線検出器は、単一または複数の素子のから出力される信号を該当するチャンネル毎に取り扱うピクセル型ガンマ線検出器である
ことを特徴とする請求項1に記載のガンマカメラシステム。
【請求項3】
前記ガンマ線検出器は、半導体検出器である
ことを特徴とする請求項2に記載のガンマカメラシステム。
【請求項4】
前記画像生成演算手段は、最尤推定演算によりガンマ線分布画像を生成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガンマカメラシステム。
【請求項5】
前記ガンマカメラの撮像対象を撮影する光学カメラと、
前記光学カメラで撮影された光学画像と前記画像生成演算手段で生成したガンマ線分布画像との重ね合わせを行う画像統合手段と、を更に備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガンマカメラシステム。
【請求項6】
前記画像生成演算手段で生成したガンマ線分布画像を投影表示するプロジェクタと、を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガンマカメラシステム。
【請求項7】
ガンマ線検出器およびコリメータを有するガンマカメラと、
該ガンマカメラの撮像対象との距離を走査計測が可能な距離計測手段と、
該距離計測手段の走査計測によって得られた前記ガンマカメラと該ガンマカメラの撮像対象との距離および該距離に線源からの広がりを考慮して、前記ガンマカメラで検出されたガンマ線カウントデータに基づいて、ガンマ線分布画像を生成する画像生成演算手段と、を備える
ことを特徴とするガンマカメラシステム。
【請求項8】
ガンマ線検出器およびコリメータを有するガンマカメラと、
前記ガンマカメラで検出されたガンマ線カウントデータに基づいて、ガンマ線分布画像を生成する画像生成演算手段と、
前記画像生成演算手段で生成したガンマ線分布画像を投影表示するプロジェクタと、を備える
ことを特徴とするガンマカメラシステム。
【請求項9】
前記プロジェクタは、前記ガンマカメラの撮像対象にガンマ線分布画像を投影表示する
ことを特徴とする請求項8に記載のガンマカメラシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−33009(P2013−33009A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169998(P2011−169998)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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