説明

ガンマブチロラクトンの製造方法

【課題】触媒の存在下における1,4−ブタンジオールの脱水素反応によりガンマブチロラクトンを製造するに当たり、経時による触媒の劣化を抑制してガンマブチロラクトンの生成速度を高めると共に、反応副生成物の生成を防止してガンマブチロラクトンを効率的に製造する。
【解決手段】周期表第8〜11族に属する金属を含む触媒の存在下で、原料1,4−ブタンジオールの脱水素反応によりガンマブチロラクトンを製造する方法において、該原料1,4−ブタンジオール中の窒素含有化合物の濃度を窒素原子換算の濃度で0.5〜15重量ppmとする。原料1,4−ブタンジオール中に所定濃度の窒素含有化合物を存在させることにより、副生成物の生成と触媒の経時劣化の抑制と、ガンマブチロラクトンの生成速度の向上が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4−ブタンジオールの脱水素反応によりガンマブチロラクトンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンマブチロラクトンは、工業用化学品として、各種溶剤や、非水系電解液の非水溶媒、N−メチル−2−ピロリドン等の合成原料として使用される有用な物質である。
【0003】
従来、ガンマブチロラクトンの工業的製造法としては、亜クロム酸銅触媒を用いた1,4−ブタンジオールの気相脱水素反応によるガンマブチロラクトンの製造方法(特許文献1)や、ルテニウムと有機ホスフィンを組み合わせた均一系錯体触媒の存在下での1,4−ブタンジオールの液相脱水素反応によるガンマブチロラクトンの製造方法(特許文献2)などがある。また、特許文献2の方法における触媒劣化を改善するために、特許文献3には、反応時間の経過に伴い、触媒のリン配位子又は窒素配位子となる化合物を、触媒に使用する金属に対して当量以上継続的に添加することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平5−508414号公報
【特許文献2】特開2001−240595号公報
【特許文献3】特開2002−284774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1,4−ブタンジオールの脱水素反応でガンマブチロラクトンを製造する従来法、特に水素受容体を必要としない高温度条件における脱水素反応では、触媒劣化の抑制が困難であることから、その改善が望まれる。また、脱水素反応における反応副生成物のより一層の低減、ガンマブチロラクトンの生成速度の向上も望まれている。
【0006】
なお、特許文献3では、触媒の窒素配位子化合物を継続的に反応系に添加することが記載されているが、その添加量は触媒の遷移金属原子1モルに対して2〜20モルと、相当に多い量であり、このような多量の窒素配位子化合物を反応系に添加することは、後掲の比較例2にも示されるように、触媒被毒を招き、反応効率は低下する。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、触媒の存在下における1,4−ブタンジオールの脱水素反応によりガンマブチロラクトンを製造するに当たり、経時による触媒の劣化を抑制してガンマブチロラクトンの生成速度を高めると共に、反応副生成物の生成を抑制してガンマブチロラクトンを効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、原料1,4−ブタンジオール中に所定濃度の窒素含有化合物を存在させることにより、副生成物の生成と触媒の経時劣化の抑制、ガンマブチロラクトンの生成速度の向上が可能となることを見出した。
【0009】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0010】
[1] 周期表第8〜11族に属する金属を含む触媒の存在下で、原料1,4−ブタンジオールの脱水素反応によりガンマブチロラクトンを製造する方法において、該原料1,4−ブタンジオール中の窒素含有化合物の濃度が窒素原子換算の濃度で0.5〜15重量ppmであることを特徴とするガンマブチロラクトンの製造方法。
【0011】
[2] 前記窒素含有化合物がアミンであることを特徴とする[1]に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。
【0012】
[3] 前記脱水素反応温度が100〜250℃であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1,4−ブタンジオールの接触脱水素反応によりガンマブチロラクトンを製造するに当たり、原料1,4−ブタンジオール中に所定濃度の窒素含有化合物を存在させることにより、反応副生成物の生成量を低減すると共に、触媒の経時劣化を抑制し、また、ガンマブチロラクトンの生成速度を向上させることが可能となり、ガンマブチロラクトンを高選択率、高収率で、効率的に、工業的に有利に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明のガンマブチロラクトンの製造方法は、周期表第8〜11族に属する金属を含む触媒の存在下で、原料1,4−ブタンジオールの脱水素反応によりガンマブチロラクトンを製造する方法において、該原料1,4−ブタンジオール中の窒素含有化合物の濃度を窒素原子換算の濃度で0.5〜15重量ppmとすることを特徴とする。
【0016】
<原料1,4−ブタンジオール>
本発明で原料とする1,4−ブタンジオール(以下、“1,4BG”と略記することがある)は、従来から公知である1,4BGの製法で得ることが可能である。例えば、原料ブタジエン、酢酸及び酸素を用いてアセトキシ化反応を行って中間体であるジアセトキシブテンを得、このジアセトキシブテンを水添した後、加水分解することにより1,4BGを得ることができる。また、マレイン酸、コハク酸、無水マレイン酸及び/又はフマル酸を原料として、それらを水素化して1,4BGを得ることができる。また、アセチレンを原料としてホルムアルデヒド水溶液と接触させて得られるブチンジオールを水素化して1,4BGを得ることができる。また、プロピレンの酸化を経由して1,4BGを得ることができる。更に、発酵法により得たコハク酸を水添することにより、或いは糖などのバイオマスから直接発酵により1,4BGを得ることができる。
【0017】
<窒素含有化合物>
本発明における原料1,4BGは、所定量の窒素含有化合物を含む。
【0018】
この窒素含有化合物としては、各種のアミンやアミドが挙げられ、アミンとしては、好ましくは、下記式(1)で示されるアミン(以下「アミン(1)」と称す場合がある。)が挙げられる。
【0019】
【化1】

【0020】
なお、上記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基(アリーロキシ基を含む)、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよく、該置換基中にはヘテロ原子が含まれていても良い。
【0021】
〜Rは、塩基性向上の観点から、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアミノ基であることが好ましい。この場合、R〜Rは同一でも異なっていてもよいが、R〜Rが全て水素原子である場合は除く。
【0022】
〜Rのアルキル基としては、鎖状(直鎖又は分岐)アルキル基又は環状アルキル基であり、鎖状アルキル基の場合は、通常、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜12である。その具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。また、環状アルキル基の場合、通常、炭素原子数3〜20、好ましくは4〜11である。その具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。アルキル基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、その分子量は200程度以下である。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0023】
〜Rのアルケニル基としては、鎖状(直鎖又は分岐)アルケニル基又は環状アルケニル基であり、鎖状アルケニル基の場合は、通常、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜12であり、その具体例としては、例えばエテニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等などが挙げられる。また、環状アルキル基の場合、通常、炭素原子数3〜20、好ましくは4〜11であり、その具体例としては、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。アルケニル基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、その分子量は200程度以下である。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0024】
〜Rのアリール基としては、通常、炭素原子数が5〜20、好ましくは5〜12であり、芳香族炭化水素基であってもよく、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を含有する芳香族複素環基(ヘテロアリール基)であってもよい。アリール基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアシル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜10のシクロアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリーロキシ基、炭素原子数7〜12のアルキルアリール基、炭素原子数7〜12のアルキルアリーロキシ基、炭素原子数7〜12のアリールアルキル基、炭素原子数7〜12のアリールアルコキシ基、ヒドロキシ基などが挙げられる。また、この置換基中に更に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0025】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ベンジル基、メシチル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−アミノフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、イソキサゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チエニル基、チオフェニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、ピロリル基、ピラニル基、フリル基、フラザニル基、イミダゾリジニル基、イソキノリル基、イソインドリル基、インドリル基、キノリル基、ピリドチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾフラニル基、イミダゾピリジニル基、トリアゾピリジニル基、プリニル基等が挙げられる。
【0026】
〜Rのアルコキシ基(アリーロキシ基を含む)としては、通常、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜12である。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基などが挙げられる。アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、その分子量は200程度以下である。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれるものであってもよい。
【0027】
〜Rのアミノ基としては、通常、炭素原子数0〜20、好ましくは0〜12である。その具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基などが挙げられる。アミノ基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、その分子量は200程度以下である。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0028】
〜Rのアルキルチオ基としては、通常、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜12である。その具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基などが挙げられる。アルキルチオ基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、その分子量は200程度以下である。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0029】
〜Rのアリールチオ基としては、通常、炭素原子数6〜20、好ましくは6〜12である。その具体例としては、フェニルチオ基、トリルチオ基などが挙げられる。アリールチオ基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、その分子量は200程度以下である。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0030】
また、RとR、RとR、RとRはそれぞれ互いに連結して環を形成していてもよい。
【0031】
アミン(1)としては、具体的に、例えば、オクチルアミン、ノニルアミン、1−アミノデカン、アニリン、フェネチルアミン等の1級アミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルアニリン等の2級アミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の3級アミン、1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン等のジアミン、N−ブチルピロール、N−ブチル−2,3−ジヒドロピロール、N−ブチルピロリジン、2,3−ジヒドロ−1H−インドール等の5員環アミン、4−アミノメチルピペリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、4−アミノ−5,6−ジヒドロ−2−メチルピリミジン、2,3,5,6−テトラメチルピラジン、3,6−ジメチルピリダジン等の6員環アミン、ポリエチレンジアミン骨格を有する陰イオン交換樹脂から溶出したエチレンアミン由来の構成単位を2〜20含有する重合体などが塩基性の観点から好ましく、更に酸素原子を含むものとしては、4−アミノブタノール、2−アミノブタノール等の鎖状アミノアルコール、2−エチルモルホリン、N−メトキシカルボニルモルホリン、プロリノール、3−ヒドロキシピペリジン、4−ヒドロキシピペリジン、テトラヒドロフルフリルアミン、3−アミノテトラヒドロピラン等の環状アミンが大気圧下での沸点が1,4BGに近いという観点から好ましい。中でも、大気圧下での沸点温度が、160〜260℃である化合物が好ましく用いられる観点からジヘキシルアミン、トリブチルアミン、4−ヒドロキシピペリジン、1−アミノデカン、プロリノール、3−ヒドロキシピペリジン、4−アミノブタノール、テトラヒドロフルフリルアミンなどが好ましい。
【0032】
また、アミドとしては、下記式(2)で示されるアミド(以下「アミド(2)」と称す場合がある。)、好ましくはカルボン酸アミドも挙げられる。
【0033】
【化2】

【0034】
カルボン酸アミドとしては、1級アミド、2級アミド、3級アミドを用いることができ、N置換の置換基数は0〜2の範囲でN−アルキル置換アミド、N−アルケニル置換アミド、N−アリール置換アミドなど、即ち、置換基R,Rの一方又は双方がアルキル基、アルケニル基及びアリール基のいずれかであるカルボン酸アミドなどが用いられる。また、該置換基R,R中にはヘテロ原子が含まれていても良く、置換基R,Rは同一でも異なっていてもよい。一方、カルボニル側の置換基Rとしては、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基などが挙げられる。
【0035】
また、上記置換基R〜Rはそれぞれ互いに連結して環を形成していてもよい。副反応や分解等を抑制できるという観点から、カルボニル側の置換基Rとしてはアルキル基が好ましい。
【0036】
アミド(2)としては、具体的に、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの鎖状骨格のアミド類、ベンズアミドなどの芳香族アミド類、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、2−ピペリドン、N−メチルピペリドンなどの環状アミド類が大気圧下での沸点が1,4BGと比較して低すぎず、また化合物の安定性の観点から好ましく、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンが原料である1,4BGとの沸点が近い観点からより好ましい。特に原料である1,4BGとの沸点が近く、安定性が高い観点から2−ピロリドン、N−メチルピロリドンが好ましい。
【0037】
本発明で用いる原料1,4BGには、これらのアミンやアミドの1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよく、アミンとアミドの両方が含まれていてもよい。
【0038】
<窒素含有化合物含有量>
原料1,4BG中の窒素含有化合物の含有量は窒素原子換算の濃度で0.5〜15重量ppmである。
原料1,4BG中の窒素含有化合物の窒素原子換算の濃度は、より好ましくは1.0重量ppm以上、12重量ppm以下であり、特に好ましくは1.2重量ppm以上、10重量ppm以下である。上記上限よりも窒素含有化合物の窒素原子換算の濃度が高い場合には、窒素含有化合物による触媒被毒が大きくなってしまう。また、上記下限よりも窒素含有化合物の窒素原子換算の濃度が低すぎた場合には、本発明の効果が低下してしまう。
【0039】
特に、原料1,4BGが窒素含有化合物として上記アミン(1)等のアミンのみを含む場合、原料1,4BG中のアミンの含有量は、窒素原子換算の濃度で0.5〜15重量ppmであることが好ましく、0.7〜12重量ppmであることが更に好ましく、3.0〜10重量ppmであることが特に好ましい。
【0040】
また、原料1,4BGが窒素含有化合物として上記アミド(2)等のアミドのみを含む場合、原料1,4BG中のアミドの含有量は、窒素原子換算の濃度で0.5〜15重量ppmであることが好ましく、0.7〜15重量ppmであることが更に好ましく、3.5〜15重量ppmであることが特に好ましい。
【0041】
また、原料1,4BGが窒素含有化合物として上記アミン(1)等のアミンと上記アミド(2)等のアミドを含む場合、原料1,4BG中のアミンとアミドの合計の含有量は、窒素原子換算の濃度で0.5〜15重量ppmであることが好ましく、0.7〜12重量ppmであることが更に好ましく、3.0〜10重量ppmであることが特に好ましい。
アミン及び/又はアミドの濃度範囲は、下限が上がると本発明の効果をより発現し、上限が下がると触媒被毒が軽減される傾向にある。
【0042】
<原料1,4BGへの窒素含有化合物の添加>
上記の窒素原子換算の濃度範囲で上記アミン(1)、アミド(2)等の窒素含有化合物を含む原料1,4BGは、市販の1,4BG、前述の従来公知の1,4BGの製法で得られる1,4BG、又はその精製1,4BGに、窒素含有化合物を直接添加し調製して得ることが可能である。更に、上述の従来公知の1,4BGの製法において、原料若しくはそれら1,4BGの製造工程のプロセスの途中で窒素含有化合物を添加し得ることも可能である。
【0043】
例えば、原料ブタジエン、酢酸及び酸素を用いてアセトキシ化反応を行って得られるジアセトキシブテンを水添した後加水分解することで1,4BGを得る場合において、ジアセトキシ化反応器に窒素含有化合物を導入して窒素含有化合物を含むジアセトキシブテンを製造し、更に窒素含有化合物を含む1,4BGを得てもよく、その後の水添工程で窒素含有化合物を導入して窒素含有化合物を含有する1,4BGを製造してもよい。また、加水分解工程で、窒素含有化合物を導入して、窒素含有化合物を含む1,4BGを得てもよい。また、これらの生成物から分離精製された高純度の製品1,4BGを得る蒸留塔や不純物を除去するための水添工程に窒素含有化合物を導入してもよい。また、例えば、マレイン酸、コハク酸、無水マレイン酸及び/又はフマル酸を原料として、それらを水素化して1,4BG、ガンマブチロラクトン及びテトラヒドロフランを含む水素化反応混合物を得る場合、この水素化反応混合物に窒素含有化合物を導入してもよい。尚、このように製造工程のプロセスの途中で窒素含有化合物を添加する場合、窒素原子換算の濃度で15重量ppmよりも多い量を添加しても差し支えない。すなわち、最終的に得られる原料1,4BG中に、窒素含有化合物が窒素原子換算の濃度で0.5〜15重量ppmとなるように窒素含有化合物が含まれるように添加量を調整すればよい。
【0044】
前記上記アミン(1)、アミド(2)等の窒素含有化合物を1,4BGの製造プロセスに添加する際には、窒素含有化合物は、気体、液体、固体のいずれの状態で添加しても差し支えない。また、窒素含有化合物を原料あるいは製品、溶媒、水などに溶解して添加することも差し支えない。更には、予め、他の目的のために含有されている窒素含有化合物の含有量を調整して上記窒素原子換算の濃度範囲となるようにしてもよい。
【0045】
また、蒸気圧を通常有さない固体中に前記上記アミン(1)、アミド(2)等の窒素含有化合物を有するものをプロセス内に設置しておき、該固体の溶解分あるいは溶出分などが1,4BG含有組成物に上記の窒素原子換算の濃度範囲となるように調整してもよい。このような固体状のものとしては、例えば陰イオン交換樹脂などが挙げられる。陰イオン交換樹脂からの溶出分はポリアミンであり、ポリアミンとは、第一級アミノ基が2つ以上結合した直鎖脂肪族炭化水素の総称であり、本発明では、前記式(1)において、R〜Rのうちのいずれか1以上がアルキル基である窒素含有化合物に由来の構成単位を2以上、好ましくは3〜20含有する重合体である。
【0046】
また、上記従来の方法で製造した1,4BGを精製して得られる1,4BGに上記アミン(1)、アミド(2)等の窒素含有化合物を、窒素原子換算の濃度が0.5重量ppm以上、15重量ppm以下となるように直接添加してもよい。
【0047】
<pH>
本発明で用いる原料1,4BGはpH7.0以上であることが好ましいが、更に好ましくはpH7.01以上、10.5以下であり、特に好ましくはpH7.1以上、9.0以下である。原料1,4BGのpHが上記上限よりも高い場合には、触媒被毒が大きくなる傾向にある。逆にpHが低すぎた場合には、本発明の効果が低下する傾向にある。
この原料1,4BGのpHは一般的には原料1,4BG中の窒素含有化合物の量で調整することができ、前記アミン(1)、アミド(2)等の窒素含有化合物を窒素原子換算の濃度で0.5重量ppm以上、15重量ppm以下含有する原料1,4BGは、通常、そのpHが上記範囲となる。
【0048】
<触媒>
本発明で脱水素反応に用いる周期表第8〜11族に属する金属を含む触媒としては、脱水素反応に対して触媒作用を示すものであればよく、特に限定されないが、本発明における効果が大きいものとして、ルテニウム及び/又は銅を含む触媒が挙げられる。
【0049】
ルテニウム触媒としては、固体又は錯体触媒を用いることができ、固体触媒としては、ルテニウム金属単独、ルテニウムとその他の金属を含むもの、或いはルテニウム酸化物等の各種ルテニウム化合物、更にこれらが適当な触媒担体に担持されたものなどが挙げられる。該触媒担体としては、活性炭、SiO、Al、SiO/Al、TiO、ZrO、ZnO、硫酸バリウム、珪藻土、ゼオライト等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
ルテニウム錯体触媒のルテニウム原料としては、金属ルテニウム及びルテニウム化合物のいずれもが使用可能である。ルテニウム化合物としてルテニウムの酸化物、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩あるいは錯化合物等が使用される。具体的には二酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、二水酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、沃化ルテニウム、硝酸ルテニム、酢酸ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、ヘキサクロロルテニウム酸ナトリウム、テトラカルボニルルテニウム酸ジカリウム、ペンタカルボニルルテニウム、シクロペンタジエニルジカルボニルルテニウム、ジブロモトリカルボニルルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ヒドリドルテニウム、テトラ(トリフェニルホスフィン)ジヒドリドルテニウム、テトラ(トリメチルホスフィン)ジヒドリドルテニウム、ビス(トリ−n−ブチルホスフィン)トリカルボニルルテニウム、テトラヒドリドデカルボニルテトラルテニウム、ドデカカルボニルトリルテニウム、オクタデカカルボニルヘキサルテニウム酸ジセシウム、ウンデカカルボニルヒドリドトリルテニウム酸テトラフェニルホスフォニウム等が挙げられ、好ましくは塩化ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、酢酸ルテニウムである。
【0051】
また、ルテニウム錯体触媒は、好ましくはリン配位子を含有する。リン配位子として用いるホスフィンとして、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィンのような少なくとも1つのアリール基を含有するリン配位子を使用することもできるが、好ましくはトリアルキルホスフィン、更に好ましくは1級アルキル基により構成されるトリアルキルホスフィンである。例えば、トリデカニルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジヘプチルメチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジヘプチルメチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジメチルブチルホスフィン、ジブチルメチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジメチルシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジメチルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジオクチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジオクチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジオクチルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジヘキシルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジヘキシルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジヘキシルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジブチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジブチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジブチルホスフィノ)ブタン、1,1−ジホスフィナン、1,4−ジメチル−1,4−ジホスフィノファン、1,3−ジメチルホスフォリナン、1,4−ジメチルホスフォリナン、8−メチル−8−ホスフィノビシクロオクタン、4−メチル−4−ホスフォテトラシクロオクタン、1−メチルホスフォラン、1−メチルホスフォナン等の単座、複座、環状、及びアルキル基に置換基を持つアルキルホスフィン類が挙げられる。
本反応に使用するトリアルキルホスフィンのアルキル基は、ノルマル体、イソ体、及びその混合物でも差し支えない。
【0052】
これらリン配位子の使用量は、ルテニウム金属1モルに対して、0.1〜1000モル、好ましくは1〜100モルの範囲である。リン配位子が多すぎると触媒コストの増加につながり工業的に使用不可能となり、少なすぎると触媒劣化によりルテニウム金属が析出し、反応の活性が著しく低下する。
【0053】
ルテニウム錯体触媒の合成法として、例えばトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム錯体を、溶媒中あるいは溶媒非存在下で、過剰量のトリアルキルホスフィン、好ましくは5〜20当量のトリアルキルホスフィンと水素雰囲気下で100〜250℃、好ましくは150〜200℃にて攪拌する方法が挙げられる。また、原料1,4BGとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム錯体と過剰量(好ましくは5〜20当量)のトリアルキルホスフィンを、100〜250℃、好ましくは150〜200℃で攪拌することでも合成することが可能である。
【0054】
ルテニウム錯体触媒がルテニウムカチオン性錯体触媒である場合の合成は、例えば、上記の方法で触媒を調製した後、pKa2以下の酸の共役塩基を添加することで行うことができる。またトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム錯体を、溶媒中、あるいは溶媒の非存在下で、過剰量(好ましくは5〜20当量)のトリアルキルホスフィンと、0.1〜20当量、好ましくは1〜10当量のpKa2以下の酸の共役塩基存在下、100〜250℃、好ましくは150〜200℃で攪拌を行うことでも合成することができる。
【0055】
銅触媒としては固体触媒又は錯体触媒を用いることができるが、通常、固体触媒が好ましい。銅触媒中の銅原料としては、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の銅塩、銅の水酸化物やこれらの混合物などを使用することができる。また、銅触媒には、Al、Si、Ti、Zr、Cr、Zn、Fe、Mn、Ni、Pd、Co、V、W、Mo、Ru、Ag、Re、アルカリ金属、アルカリ土類金属を添加しても良い。これら触媒成分は、単独で用いても触媒担体に担持して用いてもよい。該触媒担体としては、活性炭、SiO、Al
、SiO/Al、TiO、ZrO、ZnO、硫酸バリウム、珪藻土、ゼオライト等の1種又は2種以上を用いることができる。好ましい銅触媒の例として、亜クロム酸銅触媒、マンガン/亜クロム酸銅触媒、銅/亜鉛触媒、銅/亜鉛/ルテニウム触媒などを挙げることができる。
【0056】
上記の触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
<脱水素反応方法・条件>
本発明における1,4BGの脱水素反応は、通常は無溶媒で、すなわち反応原料である1,4BG及び生成物のガンマブチロラクトン以外の溶媒を存在させずに行われるが、所望により他の溶媒を用いることもできる。用いることができる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、フェノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類及びポリアルコール類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トルイル酸などのカルボン酸類、酢酸メチル、酢酸ブチル、安息香酸ベンジル等のカルボン酸エステル類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類、ジメチルスルホン等のスルホン類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、カプロラクトン等のラクトン類、テトラグライム、トリグライム等のポリエーテル類、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル類等の1種又は2種以上が挙げられ、これらの中で好ましくは、エーテル類、カルボン酸エステル類、ポリエーテル類、ポリアルコール類、炭酸エステル類である。
【0058】
脱水素反応の反応温度は、通常20〜350℃、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは150〜220℃の範囲である。
【0059】
触媒濃度は工業的に所望な活性を示す程度で良いが、例えば、ルテニウム触媒であれば、通常、反応液に対しルテニウム金属として0.0001〜100モル/L、好ましくは0.001〜10モル/Lとなるように反応系に存在させればよい。また、銅触媒であれば、通常、反応液に対し銅金属として0.0001〜100モル/L、好ましくは0.001〜10モル/Lとなるように反応系に存在させればよい。触媒濃度が高すぎると触媒コストが増大し、低すぎると反応時間が長時間必要となることから大型の反応器が必要となり、いずれの場合も工業的に不利である。
【0060】
反応圧力は、反応系が液相に保たれる圧力であれば任意であるが、本発明の脱水素反応は、水素を生成する反応であるため、その水素を系外に抜き出しながら行うのが好ましく、大気圧下で開放系で行うことが好ましい。閉鎖系で行う場合には、雰囲気は窒素、アルゴン、ヘリウム、若しくは二酸化炭素などの不活性ガス雰囲気下又は水素雰囲気下が好ましい。
【0061】
反応は回分方式及び連続方式のいずれでも行うことができる。反応生成液は蒸留してガンマブチロラクトンを留去させて回収し、一方、残留液には触媒が含まれているので、これを回収して次回の反応に再利用することが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
なお、以下の実施例及び比較例において、各成分の分析はガスクロマトグラフィー(GC)により行い、内部標準法(内部標準:トリ−n−デカン)により算出した。
【0064】
[ルテニウム触媒を用いた実施例及び比較例]
<実施例1>
50mlのバイアル瓶にトリ−n−ブチルアミン0.4mgと1,4−ブタンジオール27.09gを入れて十分に混合し、アミン含有1,4−ブタンジオール溶液とした(アミン含有量は窒素原子濃度として1.2重量ppm、pH7.0)。
50mlのガラス製シュレンク管にトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム12.6mg、上記アミン含有1,4−ブタンジオール5.0gを入れ、窒素ガス置換後、窒素ガス雰囲気下において、ルテニウムに対して6モル当量のトリ−n−オクチルホスフィン(67mg)を加えた。このシュレンク管を200℃に昇温したオイルバスに入れ、200℃で8時間加熱攪拌を行った(Ru金属濃度約0.006モル/L)。反応後、シュレンク管を冷却し、取り出した反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は100モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は95.7%で、ガンマブチロラクトンの選択率は95.7モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は0.3%であった。
【0065】
<実施例2>
トリ−n−ブチルアミンを窒素原子濃度として3.5重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は90.5モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は86.5%で、ガンマブチロラクトンの選択率は95.6モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は3.3%であった。
【0066】
<実施例3>
トリ−n−ブチルアミンを窒素原子濃度として10.0重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は99.9モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は94.5%で、ガンマブチロラクトンの選択率は94.5モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は0.8%であった。
【0067】
<実施例4>
トリ−n−ブチルアミンの替わりに2−ピロリドン(「2P」と略記する。)を窒素原子濃度として3.5重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は93.6モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は87.2%で、ガンマブチロラクトンの選択率は93.2モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は0.6%であった。
【0068】
<実施例5>
トリ−n−ブチルアミンの替わりに1−アミノデカン(「1AD」と略記する。)を窒素原子濃度として3.5重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は100モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は96.2%で、ガンマブチロラクトンの選択率は96.2モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は0.4%であった。
【0069】
<実施例6>
トリ−n−ブチルアミンの替わりに4−ヒドロキシピペリジン(「4OHP」と略記する。)を窒素原子濃度として3.5重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は95.0モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は85.8%で、ガンマブチロラクトンの選択率は90.3モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は2.2%であった。
【0070】
<比較例1>
アミン含有1,4−ブタンジオールの替わりにアミンを含有しない1,4−ブタンジオールを用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は79.3モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は76.6%で、ガンマブチロラクトンの選択率は96.5モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は4.8%であった。
【0071】
<比較例2>
トリ−n−ブチルアミンを窒素原子濃度として20.0重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は44.8モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は35.5%で、ガンマブチロラクトンの選択率は79.3モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は7.1%であった。
【0072】
[銅触媒を用いた実施例及び比較例]
<実施例7>
50mlのバイアル瓶にトリ−n−ブチルアミン0.24mgと1,4−ブタンジオール25.20gを入れて十分に混合し、アミン含有1,4−ブタンジオール溶液とした(窒素原子濃度として0.7重量ppm)。
50mlのガラス製シュレンク管にCuZn触媒121.1mg、上記アミン含有1,4−ブタンジオール2.0gを入れ、このシュレンク管を200℃に昇温したオイルバスに入れ、200℃で3時間加熱攪拌を行った。反応後、シュレンク管を冷却し、取り出した反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は90.5モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は67.7%で、ガンマブチロラクトンの選択率は74.8モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は7.7%であった。
【0073】
<実施例8>
トリ−n−ブチルアミンを窒素原子濃度として3.5重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例7と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は65.9モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は38.7%で、ガンマブチロラクトンの選択率は58.7モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は12.1%であった。
【0074】
<実施例9>
トリ−n−ブチルアミンを窒素原子濃度として10.0重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例7と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は70.8モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は32.9%で、ガンマブチロラクトンの選択率は46.5モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は8.6%であった。
【0075】
<実施例10>
トリ−n−ブチルアミンを窒素原子濃度として15.0重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例7と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は73.8モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は33.8%で、ガンマブチロラクトンの選択率は45.8モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は10.4%であった。
【0076】
<実施例11>
トリ−n−ブチルアミンの替わりに2−ピロリドン(2P)を窒素原子濃度として3.5重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例7と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は71.2モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は33.4%で、ガンマブチロラクトンの選択率は46.9モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は10.6%であった。
【0077】
<実施例12>
2−ピロリドン(2P)を窒素原子濃度として10.0重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例11と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は70.4モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は33.1%で、ガンマブチロラクトンの選択率は47.1モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は10.5%であった。
【0078】
<実施例13>
2−ピロリドン(2P)を窒素原子濃度として15.0重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例11と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は86.0モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は57.0%で、ガンマブチロラクトンの選択率は66.3モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は6.1%であった。
【0079】
<実施例14>
トリ−n−ブチルアミンの替わりにジヘキシルアミン(「DHA」と略記する。)を窒素原子濃度として3.5重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例7と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は59.6モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は38.1%で、ガンマブチロラクトンの選択率は63.9モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は11.2%であった。
【0080】
<実施例15>
トリ−n−ブチルアミンの替わりに1−アミノデカン(1AD)を窒素原子濃度として3.5重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例7と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は43.2モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は33.1%で、ガンマブチロラクトンの選択率は76.6モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は10.3%であった。
【0081】
<実施例16>
トリ−n−ブチルアミンの替わりに4−ヒドロキシピペリジン(4OHP)を窒素原子濃度として3.5重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例7と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は58.7モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は34.1%で、ガンマブチロラクトンの選択率は58.0モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は12.4%であった。
【0082】
<比較例3>
アミン含有1,4−ブタンジオールの替わりにアミンを含有しない1,4−ブタンジオールを用いた以外は実施例7と同様に反応を行った。反応液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は64.5モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は29.8%で、ガンマブチロラクトンの選択率は46.2モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は15.1%であった。
【0083】
<比較例4>
トリ−n−ブチルアミンを窒素原子濃度として0.1重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例7と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は65.2モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は33.5%で、ガンマブチロラクトンの選択率は51.4モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は14.0%であった。
【0084】
<比較例5>
トリ−n−ブチルアミンを窒素原子濃度として20.0重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例7と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は60.0モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は32.0%で、ガンマブチロラクトンの選択率は53.3モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は12.6%であった。
【0085】
<比較例6>
2−ピロリドン(2P)を窒素原子濃度として0.1重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例11と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は66.8モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は33.5%で、ガンマブチロラクトンの選択率は50.0モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は14.8%であった。
【0086】
<比較例7>
2−ピロリドン(2P)を窒素原子濃度として30.0重量ppm含有する1,4−ブタンジオールを反応原料に用いた以外は実施例11と同様に反応を行った。反応生成液のGC分析を行った結果、1,4−ブタンジオールの転化率は61.5モル%であり、ガンマブチロラクトンの収率は31.9%で、ガンマブチロラクトンの選択率は51.9モル%であった。このとき、高沸副生物の収率は14.5%であった。
【0087】
上記の実施例及び比較例の反応結果を表1,2にまとめる。表1,2より、本発明によれば、高沸副生物を抑制しつつ、高選択率、高収率でガンマブチロラクトンを製造することができることが分かる。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期表第8〜11族に属する金属を含む触媒の存在下で、原料1,4−ブタンジオールの脱水素反応によりガンマブチロラクトンを製造する方法において、該原料1,4−ブタンジオール中の窒素含有化合物の濃度が窒素原子換算の濃度で0.5〜15重量ppmであることを特徴とするガンマブチロラクトンの製造方法。
【請求項2】
前記窒素含有化合物がアミンであることを特徴とする請求項1に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。
【請求項3】
前記脱水素反応温度が100〜250℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。

【公開番号】特開2013−60428(P2013−60428A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−183343(P2012−183343)
【出願日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】