説明

ガーゼカウントホルダ

【課題】操作性に優れ、カウントミスを有効に防止できるように改良されたガーゼカウントホルダを提供する。
【解決手段】プレート10の切欠き11にガーゼ5を通し、当該プレート10を、フレーム20にスライド係合させる。フレーム20の切欠き21は、プレート10の切欠き11よりも開口面積が小さいので、プレート10をフレーム20に係合させたとき、両切欠き11、12のオーバーラップ開口は小さくなり、ここにガーゼ5が挟持される。つまり、プレート10単体に対しては、主開口部12の開口面積が比較的大きいので、ガーゼ5を最初にプレート10に設置する作業が簡単となる。そして、このプレート10をフレーム20にスライド係合させると、オーバーラップ開口面積が小さくなり、その結果、各ガーゼが適正に保持・固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のガーゼについて、その数を明確に把握した上で保持することのできるガーゼカウントホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
ガーゼカウントホルダは、代表的には、手術に際して使用される。手術においては、止血等のために複数枚のガーゼが使用されるが、手術で開けた体内に誤ってガーゼを残したまま傷口を縫合してしまうという医療ミスがしばしば報告されている。
このような医療ミスは、手術前に用意したガーゼの数を明確に把握しておき、傷口を縫合する前に、同数のガーゼが(体外に)存在することを確認することで、確実に防ぐことができる。
【0003】
このような目的で使用されるガーゼ計数手段は、特許文献1、2等に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3447655号
【特許文献2】特開2007-330445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述のような手術に際して使用するのに好適なガーゼカウントホルダであって、操作性に優れ、カウントミスを有効に防止できるよう改良されたものを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、上記課題を有効に解決するために創案されたものであって、相対移動する2部材でガーゼカウントホルダを構成し、当該ホルダに対するガーゼのセットが容易な第1状態と、ガーゼが確実に保持される第2状態とを選択的にとり得るようにした点に特徴がある。
【0007】
本発明の第1の局面によれば、ガーゼカウントホルダは、「保持するガーゼの枚数に等しい数のプレート側切欠きを備えるプレート」と「プレートをスライド係合させて保持するとともに、プレート側切欠きに等しい数のフレーム側切欠きを備えるフレーム」とを備える。そして、
(ア)プレート側切欠きは、ガーゼを通す主開口部と、主開口部よりも幅狭で主開口部からプレート縁部に至り外方から主開口部へのアクセスを許容するネック部と、を含む。
(イ)フレーム側切欠きは、ガーゼを通す主開口部と、少なくともプレート側切欠きのネック部よりも幅広で、主開口部からフレーム縁部に至り外方から主開口部へのアクセスを許容するネック部と、を含んでいて、フレーム側切欠きの主開口部は、プレート側切欠きの主開口部よりも開口面積が小さい。
(ウ)プレート側切欠きにガーゼを通した状態のプレートを、フレームにスライド係合させたときに、プレート側切欠きとフレーム側切欠きとが整合して、両切欠きで構成されるオーバーラップ開口にガーゼが保持される。
【0008】
上記構成を有するガーゼカウントホルダにおいては、プレート側切欠きの主開口部は、フレーム側切欠きの主開口部よりも開口面積が大きいので、プレート単体に対してガーゼを容易にセットすることができる。
一方、フレーム側切欠きの主開口部は、プレート側切欠きの主開口部よりも開口面積が小さいので、プレートをフレームにスライド係合させた場合に、両切欠きが整合して複合的に得られるオーバーラップ開口は、プレート側切欠きの主開口部よりも開口面積が小さくなる。このオーバーラップ開口に、ガーゼが確実に保持されることとなる。
つまり、プレート単体に対して簡単にガーゼをセットし、その後、プレートをフレームに係合させることで、ガーゼが確実に保持される。したがって、操作が容易で確実にガーゼを保持できる。
【0009】
特に、オーバーラップ開口の開口面積が、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有するよう構成した場合には、ガーゼ総数のカウント結果に対する信頼性がさらに高くなる。
【0010】
本発明の第2の局面によれば、ガーゼカウントホルダは、「保持するガーゼの枚数に等しい数のプレート側切欠きを備えるプレート」と「プレート側切欠きに等しい数のスリーブ側切欠きを備えるとともに、プレートをガーゼ受入位置とガーゼ係止位置との間でスライド可能に保持するスリーブ」とを備える。そして、
(ア)プレート側切欠きは、ガーゼを通す主開口部と、主開口部よりも幅狭で主開口部からプレート縁部に至り外方から主開口部へのアクセスを許容するネック部とを含む。
(イ)スリーブ側切欠きは、実質的にプレート側切欠きの主開口部およびネック部と等しい投影開口領域を有する主開口部およびネック部を含む。
(ウ)プレートがガーゼ受入位置にあるとき、プレート側切欠きとスリーブ側切欠きとが重なって、ガーゼを受け入れることができ、
プレートをガーゼ係止位置にスライドさせると、プレート側切欠きとスリーブ側切欠きの位置がズレてガーゼが挟持される。
【0011】
上記構成を有するガーゼカウントホルダにおいては、スリーブに対してプレートがガーゼ受入位置にあるときは、プレート側切欠きとスリーブ側切欠きが重なって構成される切欠きの開口面積が最大となるので、そこにガーゼを容易にセットすることができる。
次に、スリーブに対してプレートを相対的にガーゼ係止位置にまでスライドさせると、両切欠きがズレることで、ガーゼを確実に保持(挟持)することができる。
つまり、ガーゼ受入位置にて簡単にガーゼをセットし、ガーゼ係止位置にてガーゼが確実に保持される。したがって、操作が容易で確実にガーゼを保持できる。
【0012】
特に、プレートがガーゼ係止位置にあるとき、プレート側切欠きとスリーブ側切欠きのオーバーラップ開口面積が、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有するよう構成した場合には、ガーゼ総数のカウント結果に対する信頼性がさらに高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガーゼカウントホルダの使用方法を説明する概略図。
【図2】図1のガーゼカウントホルダを構成するプレートおよびフレームを説明する図。
【図3】プレートおよびフレームの寸法関係を説明する図。
【図4】各切欠きにガーゼ1枚のみが確実に保持される特徴を説明する図。
【図5】本発明の第2実施形態に係るガーゼカウントホルダの使用方法を説明する概略図。
【図6】図5のガーゼカウントホルダを構成するプレートおよびスリーブを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0015】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係るガーゼカウントホルダの使用方法を示す概略図である。詳細は後述するが、大雑把に言うと、まず、プレート10にガーゼ5を保持し、次にこれをフレーム20にスライド係合させる。
プレート10に形成されたガーゼを保持する切欠き11(プレート側切欠き)は、やや大きめに寸法が設定されているので、プレート10にガーゼ5をセットする作業は容易である。フレーム20に設けられる切欠き12(フレーム側切欠き)は、プレート側切欠き11よりも小さく寸法設定されているので、プレート10をフレーム20にスライド係合させることで、ガーゼ5を保持する切欠きの寸法が絞られて、ガーゼ5がしっかりと保持されることとなる。
絞られた後の最終的な切欠きの径は、1枚のガーゼ5を図1に示したように適度に絞ったときの径とほぼ等しくなるように設定することが好ましく、例えば6mmである。この具体的な寸法は、使用するガーゼによって異なり、適宜の値を採用することができる。
以下に各部の構造を詳細に説明する。
【0016】
[プレート10]
図2は、プレート10およびフレーム20を個別に示している。矢印は、フレーム20に対してプレート10をスライド係合させる方向を示している。
プレート10は、細長い板状体であって、長さ方向に並ぶ5つのプレート側切欠き11を備える。各切欠き11は、主開口部12とネック部13とで構成されている。
主開口部12にはガーゼ5が通される(図1参照)。ネック部13は、主開口部12よりも幅狭で、主開口部12からプレート縁部にまで至る。外方から、ネック部13を通して、主開口部12へのアクセスが可能となる。
【0017】
[フレーム20]
フレーム20は、プレート10をスライド係合させて保持するものであり、このため、フレーム20の3辺に渡って延在する係止フランジ20aが設けられている。
フレーム20は、プレート10と同様、細長い板状体であって、長さ方向に並ぶ5つのフレーム側切欠き21を備える。各切欠き21は、主開口部22とネック部23とで構成されている。
主開口部22には、最終的にはガーゼ5が通されることとなる(図1参照)。ネック部23は、図示した例では主開口部22よりも幅狭で、主開口部22からフレーム縁部にまで至る。外方から、ネック部23を通して、主開口部22へのアクセスが可能となる。
【0018】
詳しくは後述するが、フレーム側切欠き21の主開口部22は、プレート側切欠き11の主開口部12よりも開口面積が小さく設定されている。また、フレーム側切欠き21のネック部23(の最狭部)は、少なくとも、プレート側切欠き11のネック部13(の最狭部)よりも幅広に構成される。
【0019】
[各要素の寸法関係]
図3は、プレート10をフレーム20にスライド係合させた場合における各部の寸法関係を示している。なお、図3中の拡大表示部では、図示を明瞭にするため、フレーム20を破線で示している。
図から分かるように、フレーム20側の主開口部22の直径Bは、プレート10側の主開口部12の直径Aよりも小さい。すなわち、開口面積は、主開口部12よりも主開口部22の方が小さい。
【0020】
これには次の意味がある。図4を参照して説明する。最初にガーゼ5をプレート10に保持するときは、プレート側切欠き11の主開口部12は比較的広いので、ガーゼ5の設置をスムーズに行うことができる。このとき、ガーゼ5は、比較的ルーズな状態で主開口部12に通されることとなる(対象となるガーゼのサイズとの関係で、そうなるように寸法設定する)。
この後、プレート10をフレーム20にスライド係合させると、プレート側切欠き11とフレーム側切欠き21とが整合する(両切欠きの寸法は異なるが、両者が中心を合わせた状態で並ぶ)。ここで、フレーム側切欠き21の主開口部22は(主開口部12と比較して)狭く設定されているので、プレート側切欠き11とフレーム側切欠き21によって複合的に構成されるオーバーラップ開口の面積は、プレート側の主開口部12自体の開口面積よりも小さくなる。すなわち、ガーゼ5が絞られるような態様で保持されることとなる。
その結果、ガーゼ5は、比較的タイトな状態で保持されて、不用意に抜け落ちることが防止される(対象となるガーゼのサイズとの関係で、そうなるように寸法設定する)。
【0021】
また、フレーム側切欠き21のネック部23は、少なくともプレート側切欠き11のネック部13よりも幅広である。これにより、ガーゼ5を保持したプレート10をフレーム20にスライド係合させるときに、ガーゼ5がネック部23を抵抗なく通り抜けることが可能となる。
【0022】
以上の構成を有するプレート10およびフレーム20で構成される本発明のガーゼカウントホルダによれば、プレート10側の切欠き11は、主開口部12の開口面積が比較的大きいので、ガーゼ5を最初にプレート10に設置する作業が簡単となる。そして、このプレート10をフレーム20にスライド係合させたときに、フレーム20側の切欠き21の主開口部22によって、全体としての挿通孔が絞られ(オーバーラップ開口面積が小さくなり)、その結果、各ガーゼが適正に保持・固定される。
【0023】
なお、プレート側切欠き11のネック部13の幅寸法Lは、プレート10をフレーム20にスライド係合させてガーゼを絞るときに、ガーゼを有効に圧縮するとともに、ネック部13を通ってガーゼが上方に逃げることを防止できるよう、適度に寸法設定することが好ましい。
また、フレーム側切欠き21のネック部23の幅寸法Mは、少なくともネック部23よりも大きければよい。したがって、切欠き21において、ネック部23の幅Mが主開口部22の直径Bと同程度となって、実質的にネックと呼べる部分が存在しないことになってもよい。
寸法Mをこのように設定することで、プレート10をフレーム20にスライド係合させる場合に、ガーゼがフレーム20側のネック部23をスムーズに通過できる。
【0024】
[各切欠きに対して、ガーゼ1枚のみが確実に保持されるための構成]
ガーゼカウントホルダにおいては、ガーゼの枚数を正確に把握できることが重要であるため、1つの切欠きに対してガーゼが1枚だけ保持されることが確実となる構成が好ましい。
この目的を達成するための本発明の特徴を、図4を参照して説明する。
【0025】
プレート側切欠き11とフレーム側切欠き21とはサイズが異なるので、両者が整合した場合(中心を合わせて重なった場合)、両者がオーバーラップすることで形成される複合的な開口(オーバーラップ開口)の面積は、プレート側切欠き11自身の面積よりも小さくなり、この絞られたオーバーラップ開口に、ガーゼは最終的に保持される。
このオーバーラップ開口の面積を、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有するよう設定する。ガーゼは柔軟な布材であるが、1枚のガーゼを丸める、あるいは折り畳む等して中間部分を適度な圧力をもって保持するとき、当該保持される部分の断面積が想定される。本発明においてこの断面積に要求される性質は、ガーゼの不要な抜け落ちが防止されるとともに、当該面積内に2枚のガーゼを保持することが、自然な力作業では明らかに困難となることである。
オーバーラップ開口の面積をそのように設定しておくことで(換言すると、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりとしておくことで)、もし誤って最初にプレート10の1つの切欠き11内に2枚のガーゼを入れてしまった場合であっても、当該プレート10をフレーム20にスライド係合させる際に、そのスライド操作がスムーズに行えないこととなるので、その時点で枚数の誤りに気付くことができ、余分な1枚を除去できる。
なお、このオーバーラップ開口面積の具体的な値は、対象となるガーゼの大きさによって当然に異なるので、予め対象となるガーゼの大きさを決めた上で、ガーゼカウントホルダは製造されることとなる。
【0026】
[その他]
第1実施形態において、プレート10およびフレーム20に設ける各切欠き11、21の具体的な形状は、図示したものに限られず、例えば、主開口部12、22は円形でなくても、楕円形、矩形、その他適宜の形状を採用することが可能である。
また、図示した例では、ガーゼを保持する切欠きの総数は5で、各切欠きの近傍には、カウントを容易にするためのナンバリングを付している。しかし、切欠きの総数は必要に応じて適宜設定することが可能であり、ナンバリングの有無および具体的態様についても適宜変更が可能である。
【0027】
≪第2実施形態≫
図5は、第2実施形態に係るガーゼカウントホルダの使用方法を示す概略図である。このガーゼカウントホルダは、プレート50と、これをスライド可能に保持するスリーブ60とで構成される。スリーブ60は、図示した例では、細長く平たい筒状部材である。
詳細は後述するが、大雑把に言うと、まずプレート50をスリーブ60に差し込んで、両者を相対スライド可能に組み合わせる。プレート50は、スリーブ60に対して、ガーゼ受入位置とガーゼ係止位置の間でスライド移動可能となる。
ガーゼ受入位置において、切欠きにガーゼ5をセットし、次に、プレート50をガーゼ係止位置にまでスライドさせる。これにより、プレート側切欠き51とスリーブ側切欠き61の位置がズレて、ガーゼ5が挟持される。
以下に各部の構造を詳細に説明する。
【0028】
[プレート50]
図6は、プレート50およびスリーブ60を個別に示している。矢印は、スリーブ60に対してプレート50を差し込む方向を示している。
プレート10は、細長い板状体であって、長さ方向に並ぶ5つのプレート側切欠き51を備える。各切欠き51は、主開口部52とネック部53とで構成されている。ネック部53は、主開口部52よりも幅狭で、主開口部52からプレート縁部にまで至る。外方から、ネック部53を通して、主開口部52へのアクセスが可能となる。
【0029】
[スリーブ60]
スリーブ60は、プレート10をスライド可能に保持するものであり、図6に示したように、プレート50は、ガーゼ受入位置とガーゼ係止位置との間でスライド可能である。スリーブ60は、プレート50と同様に、長さ方向に並ぶ5つのスリーブ側切欠き61を備える。
スリーブ60の各切欠き61は、主開口部62とネック部63とで構成されている。主開口部62およびネック部63は、それぞれ、実質的にプレート側切欠き51の主開口部52およびネック部53と等しい投影開口領域を有する。すなわち、プレート50がガーゼ受入位置にあるとき切欠き51と切欠き61は丁度重なるが、そのときオーバーラップする開口形状は、切欠き51自身あるいは切欠き61自身が有する開口形状と等しい。
【0030】
[操作方法]
プレート50がガーゼ受入位置にあるとき、プレート側切欠き51とスリーブ側切欠き61とが重なり、このとき、ネック部を介してガーゼをセットする。ガーゼ受入位置においては、切欠き51と切欠き61がオーバーラップして複合的に形成されるオーバーラップ開口の開口面積が最大となっているので、ガーゼのセットは容易である。
そこから、プレート50を押し込んで、ガーゼ係止位置までスライドさせる。これにより、プレート側切欠き51とスリーブ側切欠き61の位置がズレて、ガーゼ5が挟持される。
【0031】
[位置固定手段およびクリック手段]
プレート50は、スライド操作のための摘み部58近傍に突起59を備える。一方、スリーブ60は、細長い本体の一端近傍に2つの開口69a、69bを備える。これらは、協働して位置固定手段として機能する。
すなわち、プレート50がガーゼ受入位置にあるとき、突起59は開口69aと係合して、その結果、プレート50は、ガーゼ受入位置に固定される。一方、プレート50がガーゼ係止位置にあるとき、突起59は開口69bと係合して、その結果、プレート50は、ガーゼ係止位置に固定される。ただし、スリーブ60は適度な弾性を有する材料で構成されており、これらの固定を適度な外力をもって容易に解除できる。
【0032】
図5および図6に示したように、ガーゼ受入位置では、突起59が図中右側の開口69aを通して外部から観察でき、ガーゼ係止位置では、突起59が図中左側の開口69bを通して外部から観察できる。
【0033】
また、この位置固定手段は、クリック手段としての機能を兼ね備えている。すなわち、プレート50がガーゼ受入位置あるいはガーゼ係止位置に達した時に、突起59と開口69aまたは69bが係合することで、カチッカチッという節度感を伴う適度なクリックが与えられる。これによって、使用者は、直観的にそのことを認識できる。
【0034】
図示した実施形態では、プレート50側の突起59とスリーブ60側の開口69a、69bは、協働して位置固定手段を構成するとともに、クリック手段を兼ねている。このような相対移動する2つの部材の位置を一時的に固定する位置固定手段、あるいは、相対移動する2つの部材が特定の相対位置になったことを知らせるクリック手段の構成としては、図示したものに限らず、一般に知られている適当なものを採用できる。
図示した例では、1つの手段が位置固定手段とクリック手段を兼ねているが、両者を別々に設けてもよい。
【0035】
[各切欠きに対して、ガーゼ1枚のみが確実に保持されるための構成]
図示した実施形態では、ガーゼカウントホルダの1つの切欠きにガーゼ1枚のみが保持されるのを確実とする工夫を施している。すなわち、プレート50がガーゼ係止位置にあるときに、プレート側切欠き51とスリーブ側切欠き61がオーバーラップして複合的に形成されるオーバーラップ開口の開口面積を、特定の値としている。
【0036】
具体的に説明すると、次の通りである。ガーゼは柔軟な布材であるが、1枚のガーゼを丸める、あるいは折り畳む等して中間部分を適度な圧力をもって保持するとき、当該保持される部分の断面積が想定される。本発明においてこの断面積に要求される性質は、ガーゼの不用意な抜け落ちが防止されるとともに、当該面積内に2枚のガーゼを保持することが、自然な力作業では明らかに困難となることである。
プレート50がガーゼ係止位置にあるときのオーバーラップ開口の開口面積を、そのように設定しておくことで(換言すると、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりとしておくことで)、もし誤って最初に1つの切欠き内に2枚のガーゼを入れてしまった場合であっても、プレート10をガーゼ係止位置へとスライドさせる際に、そのスライド操作がスムーズに行えないこととなるので、その時点で枚数の誤りに気付くことができ、余分な1枚を除去できる。
【0037】
[補強手段]
図6中の側面図に示したように、プレート50は両縁に補強リブ50aを有する断面I字の形状を為している。このような補強を行うことで細長いプレート50の捻れを防止して、スリーブ60内でのスライドを円滑にすることができる。
またこれに伴い、スリーブ60も断面I字の内腔を備え、結果として、スリーブ60自身の補強および捻れ防止を実現でき、プレート50の円滑なスライド動作に寄与する。
補強リブ50aの具体的な形状は、図示したものに限られず、プレート自体の形状に応じ、適宜好ましい形状を採用すればよい。
【0038】
[その他]
第2実施形態において、プレート50およびフレーム60に設ける各切欠き51、61の具体的な形状は、図示したものに限られず、例えば、主開口部52、62は円形でなくても、楕円形、矩形、その他適宜の形状を採用することが可能である。
また、図示した例では、ガーゼを保持する切欠きの総数は5で、各切欠きの近傍には、カウントを容易にするためのナンバリングを付している。しかし、切欠きの総数は必要に応じて適宜設定することが可能であり、ナンバリングの有無および具体的態様についても適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
5 ガーゼ
10 プレート
11 プレート側切欠き
12 主開口部
13 ネック部
20 フレーム
20a 係止フランジ
21 フレーム側切欠き
22 主開口部
23 ネック部
50 プレート
50a 補強リブ
51 プレート側切欠き
52 主開口部
53 ネック部
59 突起
60 スリーブ
61 スリーブ側切欠き
62 主開口部
63 ネック部
69a、69b 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持するガーゼ(5)の枚数に等しい数のプレート側切欠き(11)を備えるプレート(10)と、
プレート(10)をスライド係合させて保持するとともに、プレート側切欠き(11)に等しい数のフレーム側切欠き(21)を備えるフレーム(20)と、を備えるガーゼカウントホルダであって、
(ア)プレート側切欠き(11)は、ガーゼ(5)を通す主開口部(12)と、主開口部(12)よりも幅狭で主開口部(12)からプレート縁部に至り外方から主開口部(12)へのアクセスを許容するネック部(13)と、を含み、
(イ)フレーム側切欠き(21)は、ガーゼ(5)を通す主開口部(22)と、少なくともプレート側切欠きのネック部(13)よりも幅広で、主開口部(22)からフレーム縁部に至り外方から主開口部(22)へのアクセスを許容するネック部(23)と、を含んでいて、フレーム側切欠きの主開口部(22)は、プレート側切欠きの主開口部(12)よりも開口面積が小さく、
(ウ)プレート側切欠き(11)にガーゼを通した状態のプレート(10)を、フレームにスライド係合させたときに、プレート側切欠き(11)とフレーム側切欠き(21)とが整合して、両切欠き(11、21)で構成されるオーバーラップ開口にガーゼ(5)が保持される、ガーゼカウントホルダ。
【請求項2】
上記オーバーラップ開口の開口面積が、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有する、請求項1記載のガーゼカウントホルダ。
【請求項3】
上記フレーム側切欠き(21)の主開口部(22)は円形で、その直径がほぼ6mmである、請求項2記載のガーゼカウントホルダ。
【請求項4】
保持するガーゼ(5)の枚数に等しい数のプレート側切欠き(51)を備えるプレート(50)と、
プレート側切欠き(51)に等しい数のスリーブ側切欠き(61)を備えるとともに、プレート(50)をガーゼ受入位置とガーゼ係止位置との間でスライド可能に保持するスリーブ(60)と、を備えるガーゼカウントホルダであって、
(ア)プレート側切欠き(51)は、ガーゼ(5)を通す主開口部(52)と、主開口部(52)よりも幅狭で主開口部(52)からプレート縁部に至り外方から主開口部(52)へのアクセスを許容するネック部(53)と、を含み、
(イ)スリーブ側切欠き(61)は、実質的にプレート側切欠き(51)の主開口部(52)およびネック部(53)と等しい投影開口領域を有する主開口部(62)およびネック部(63)を含んでいて、
(ウ)プレートがガーゼ受入位置にあるとき、プレート側切欠き(51)とスリーブ側切欠き(61)とが重なって、ガーゼを受け入れることができ、
プレートをガーゼ係止位置にスライドさせると、プレート側切欠き(51)とスリーブ側切欠き(61)の位置がズレてガーゼが挟持される、ガーゼカウントホルダ。
【請求項5】
上記プレート(50)がガーゼ係止位置にあるとき、プレート側切欠き(51)とスリーブ側切欠き(61)のオーバーラップ開口面積が、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有する、請求項4記載のガーゼカウントホルダ。
【請求項6】
上記プレート(50)がガーゼ受入位置またはガーゼ係止位置にきたときに、そのことを節度感をもって知らせるクリック手段(59、69a、69b)を備える、請求項4または5記載のガーゼカウントホルダ。
【請求項7】
上記プレート(50)が細長い板状体であって、その長さ方向に沿う両側縁に補強リブ(50a)を備える、請求項4〜6のいずれか1つに記載のガーゼカウントホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−29984(P2012−29984A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173799(P2010−173799)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】