説明

ガーメント、特に医療用圧迫ガーメント

本発明は、着用者の皮膚と接触してガーメントの滑り止め特性を増強するような高摩擦糸(61、62、63)を含み、ガーメント主要部分(11;110)の内側面上に一体的に形成された滑り止め区域(50)を持つ、編まれた、円周方向に続くウエルト部分を含むガーメント(10;100)に関する。本発明はさらに、こうしたガーメントを構築するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の身体の一部に配置される主要部分を含むタイプのガーメントに関する。そのガーメントは、とりわけ、脚部または腕部に好適な医療用圧迫ガーメントであり得るが、しかしそれに限ったものではない。よって、その主要部分は、ガーメントの下部から上部に向かって徐々に低くなる圧力をかけることによってリンパ管機能不全または静脈機能不全を処置するために、そのガーメントが配置された四肢を圧迫する役割を果たす。
より特に、本発明は、ガーメントを適所に保持しやすくするために滑り止め効果をもたらす手段を備えたウエルト(welt)部分にてぴったりとなじむガーメントに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
ストッキングや靴下が滑り落ちるのを防ぐという問題には既にたくさん解決策があるが、医療用圧迫ガーメントという特別な状況では、医療分野、特に血栓形成の危険性に関して、絶対に望ましくない絞扼の危険性を伴う止血帯の効果をもたらすであろうから、ガーメントのウエルト部分のあらゆる過剰な圧迫を避けるように注意することが同時に必要であるため、その問題を解決することがより難しいと理解されるべきである。
【0003】
1970年代、圧迫ストッキングのウエルト部分に付け加えられた滑り止めガーターバンドが提案され始め、そして期待される滑り止め効果を発揮するように、滑り止めバンドはその内側の面にゴム引きされた要素を備えていた。追加要素を構成するそのようなバンドは、ストッキング主要部分の上端に縫い付けられることによって取り付けられた。例えば、圧迫ストッキングのウエルト部分への滑り止めバンドの繋ぎ合わせ、そのうえ、内側に突出しすぎる縫い付けを避けることに関するUS3874001Aを参照することができる。書類US3975929Aに示されているように、滑り止めウエルト部分の円周部の摩擦だけを配慮したバンドを使用することが提案されることもあった。書類US3983870Aに示されているように、着用者の皮膚と直接接触する狭いコーティング区域を得るために、減摩材を用いたストッキングのウエルト部分の内側面の限られた領域をコーティングすることもまた提案された。解決策は魅力的に見えるかもしれないが、それは圧迫ストッキングのウエルト区域での限局的なコーティングを達成するための難しい再加工作業を必要とする欠点に悩まされる。
【0004】
1980年代、弾性の縁取りリボンで作られた弾性ガーターバンドにより多くの注目が集まり、そしてそのようなバンドは、例えばシリコーンなどの滑り止め材でできたストライプ形状またはペレット形状のパターンで内側がコートされていた。よって、シリコーンの縞および/または斑点でその内側の面がコートされた弾性のガータ−バンドが記載されている書類DE8217651Uについて言及することができる。それにもかかわらず、その書類では、上記リボンがストッキングの治療作用を拡大し、結果として絞扼の危険に至って、そしてそれがそのストッキングを医療用圧迫ストッキングとして比較的に役に立たないものにした。
【0005】
1990年代、位置の保持を改善すると同時に、あらゆる絞扼の危険性を常に回避する目的で、先のすべてに弾性のガーターバンドの構造の改良が試みられた。出願人名義の書類EP0621024Bを参考文献とすることができるが、その参考文献では、そのバンドが緩やかな勾配の伸び特性を示し、かつ、ガーターバンド近くの主要部分にかかるより低い圧力しか問題の四肢上にかけないように、ガーターバンドのブレードまたはレースを構成する繊維を選択することを教示している。
【0006】
上記技術のすべてが多かれ少なかれ複雑な弾性ガーターバンドの追加をおこなうが、追加すること自体が圧迫ガーメントの製作を複雑にする個別の繋ぎ合わせ作業をおのずと意味している。円周方向の滑り止めバンドを形成するようにストッキングのウエルト部分の内側面に直接シリコーンのコーティングを付与することによってその制約を回避することは非常に魅力的であるだろうが、しかしながら、その技術は、(追加のガーターバンド上への縫い付けのような)追加の製作ステップを伴うであろうし、そのうえ、その段階でかかる圧力を制御することはそれをより複雑にもするであろう。
【0007】
滑り止め特徴を得るように異なる糸を使用して編むことによってウエルト部分を作製し、次いで上述の先行技術と異なり、その編物を中断または続く再加工なしに置き換える方法を体系化することを試みることによって、弾性ガーターバンドの追加を省くためにいくつかの試みが続いておこなわれた。
【0008】
こうした試みを説明する最近の技術水準は、書類US6871516Bによって構成されている。
その書類は、圧迫ストッキングの末端ウエルト部分にバンドを配置することを教示しており、そのバンドは、綿または織られたナイロンのボディー糸(body yarn)、そのボディー糸で編まれた、織られたナイロンもしくは被覆スパンデックス(spandex)で作られたロッキング糸(locking yarn)、および最後に高い摩擦係数を有し、かつ、ゴム、ネオプレン、もしくはスパンデックスで作られた糸であって、2種類の上記糸の編物に据えられている糸を含んでなる、3種類の異なる糸で編まれる。
【0009】
ロッキング糸の機能は、レイドイン糸(laid-in yarns)の接触面による求められる滑り止め効果を得るために、問題となっている区域の内側面付近への高摩擦糸の適切な位置調整を確実にすることである。唯一の高摩擦要素であるレイドイン糸を持つことの欠点は、(図5および6の写真に見られるように)求める滑り止め効果を提供することができる接触面積を達成するために、実際には、その重さが常に300デシテックス(dtex)超でなければならないような、かなりの重さをその糸が有する必要がどうしてもある点だが、その一方で、編糸は通常60dtex〜100dtexの範囲の重さを有している。それにもかかわらず、ガーメント着用者の皮膚との接触面積を増加するための高摩擦レイドイン糸の重さ増加はどれも、その糸をより弾力性があるようにする効果、そして問題となっている区域によって脚部に対してかかる圧力を増強する効果が必然的にあるので、そのようなアプローチは十分なものではない。こうした状況では、上記の欠点を回避し、かつ、かかる締め付け圧を低減するためには、唯一の解決策としてはレイドイン糸の列の間隔を離すことにあるが、ひいてはそれが滑り止め末端のウエルト部分の所定の高さに関して接触領域に悪影響を及ぼす。その書類の図5に示されている編物の一部は、オーバラップのない高摩擦レイドイン糸の複数の列を提供することを教示しており、その後そのレイドイン糸は3本につき1本の針によって用いられ、その結果、高摩擦レイドイン糸の接触面積を増加させるという効果を有する。それにもかかわらず、オーバラップのない高摩擦レイドイン糸の列数の増加により、その糸がますます自由になり、そのためより容易に引っかかり、そして望ましくないループを形成するので、そのアプローチは十分ではない。
【0010】
使用した丸編み機で直接実施されるルーピングを用いたウエルト部分を示す上記書類の図3が、現実とはまったく無関係である純粋に理論上の略図であることに気付くべきである。上記高摩擦糸は圧迫ストッキングの主要部分で使用されるレイドイン糸であり、そしてそのレイドイン糸は常に編物の内側に位置している。編物がウエルト部分に続いており、かつ、末端のウエルト部分がその末端のルーピングによって折り重ねられるとき、結果として、高摩擦レイドイン糸は、図3に示されているものとは逆に、ウエルト部分の内側ウエルトの内側ではなく外側に位置する。
【0011】
これまでにまとめた書類US6871516Bに示されていた試みは、その書類を実践した製品が市場に出回っていないため、実際には純粋に理論上の試みにとどまっている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的
本発明の目的は、ガーメント、特に、これだけに限定されるものではないが、求める滑り止め効果を達成し、かつ、あらゆる絞扼の危険性を回避しようとし、そのうえ、上記書類の先に触れた欠点、特に先に記載の書類US6871516Bの欠点を示すことなくそうしようとする立体配置で、そのウエルト部分に配置された滑り止め効果を有する医療用圧迫ガーメントを発明することである。
【0013】
本発明の全般的な概要
技術的問題は、ガーメント主要部分の内側面上に一体的に形成された、着用者の皮膚と接触してガーメントの滑り止め特性を増強するような高摩擦糸を含む滑り止め区域を持つ、編まれた、円周方向に続くウエルト部分を含むガーメントによって本発明に従い解決される。
【0014】
好ましくは、滑り止め区域がウエルト部分の全周のうちの少なくとも一部に続き、それにより着用者の皮膚に接触する高摩擦区域がもたらされるように、滑り止め区域が、主要部分を作製するのに使用された編み機によって高摩擦糸を用いて直接編まれる。
好ましい実施形態によると、ウエルト部分は、外側ウエルトと内側ウエルトを形作るように折り重ねられ、そこでは、滑り止め区域が内側ウエルト上に形成される。
【0015】
より特に、主要部分は、ガーメントが配置された四肢を圧迫する役割を果たす弾性編物でできており、そこでは、滑り止め区域が細い高摩擦糸のみを用いて全面的に編まれ、上述の滑り止めが主要部分を作製するのに使用された丸編み機によって直接(そのまま続けて)編まれ、そして上述の内側ウエルトの全周に着用者の皮膚に接触する最適な高摩擦区域がもたらされる。
【0016】
好ましくは、高摩擦糸は、200dtex以下の重さである。
好ましくは、高摩擦糸は、特にスパンデックスまたはゴム糸(elastodiene)でできた弾性糸である。そのような高摩擦弾性糸には、好ましくは50dtex〜156dtexの範囲にある重さがある。より好ましくは、そのような高摩擦弾性糸の重さは、50dtex〜150dtexの範囲にある。よりいっそう好ましくは、そのような高摩擦弾性糸の重さは、54dtex〜80dtexの範囲にある。
【0017】
好ましくは、滑り止め区域が、ウエルト部分の高さのほぼ全体に広がっている。滑り止め区域は、少なくとも2センチメートルの高さである。
好ましくは、外側ウエルトまたは内側ウエルトのいずれか一方が、主要部分のループ形成ラインと共にループを形成する遠位末端を持ち、そして滑り止め区域が、そこから少し離れたところに、ループ形成ラインから上側に続く下端を持つ。また、滑り止め区域は、そこから少し離れたところに、ウエルト部分の折り返しの下に続く上端を持つ。
【0018】
特定の実施形態によると、滑り止め区域は、少なくとも2本の高摩擦糸の平編物でできている。好ましくは、少なくとも2本の高摩擦糸は同じ重さである。
他の特定の実施形態では、滑り止め区域は、高摩擦糸の平編物でできており、滑り止め区域には、1/nの選針{式中、nは1(2本のうち1本の針)〜6(7本のうちの1本の針)の範囲内にある整数である。}を用いて高摩擦糸を編んだ平編で編まれた追加の高摩擦糸を含んでいる。
【0019】
変形例では、平編で編まれた高摩擦糸と追加の高摩擦糸は同じ重さである。さらに別の変形例では、追加の高摩擦糸は、平編で編まれた高摩擦糸の重さよりも重い。
好ましくは、滑り止め区域は、すべて同じ種類である数本の高摩擦糸で作り上げられている。好ましくは、滑り止め区域は、内側ウエルトの全周に一様に広がっている。
【0020】
特に興味深い実施形態では、ウエルト部分付近で主要部分によってかけられる圧力と実質的に等しい圧力が体の一部にかかるように、ウエルト部分を適合させる。好ましくは、高摩擦糸は、滑り止め区域の主成分を形成し、そしてガーメントは継ぎ目のない靴下(hosiery)ガーメントである。
【0021】
よって、本発明であれば、そして滑り止め区域が目の粗いレイドイン糸の見えている部分によってのみ構成されている上記書類US6871516Bとは違い、本発明の配置では高摩擦糸だけに基づく編物を使用することによってはるかに大きい滑り止め区域を得ることが可能になる。
【0022】
本発明はさらに、着用者の体の所望の位置にガーメントを保持するための滑り止め特性を有するガーメントを構築する方法であって、以下のステップ:
(a)着用者の体に置かれた状態に適合させたガーメント主要部分を編み;
(b)高摩擦糸を準備し;そして
(c)内側の編まれたウエルト部分の皮膚接触面上に円周方向で高摩擦糸を含む編まれたウエルト部分を一体的に形成して、高摩擦糸が着用者の皮膚と接触してガーメントの滑り止め特性を増強するような滑り止め区域を形作る、を含んでなる方法に関係する。
【0023】
好ましくは、編まれたウエルトを一体的に形成するステップが、外側面および内側の皮膚接触面を形作る筒状に編まれたウエルト部分を形成するステップを含む。
好ましくは、高摩擦糸を準備するステップが、弾性高摩擦糸を準備するステップを含む。
好ましくは、編まれたウエルト部分を一体的に形成するステップが、ガーメントの全周を一様に囲むように編まれたウエルト部分を一体的に形成するステップを含む。
好ましくは、ガーメント主要部分を編むステップが、継ぎ目のない靴下ガーメントを編むステップを含む。
【0024】
好ましくは、編まれたウエルト部分を一体的に形成するステップが、以下のステップ:
(a);第1の高摩擦糸を平編で編み;そして
(b);1/n{式中、nは2本のうちの1本の針〜7本のうちの1本の針の範囲内の整数である。}の選針を用いて第1の高摩擦糸と一緒に編まれる第2の高摩擦糸を平編で編む、を含む。
本発明のその他の特徴と利点は、特定の実施形態を示す以下の説明と図面を踏まえるとよりはっきりと見られる。
添付図面の図面について言及する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ここでは圧迫靴下またはストッキングの形態での本発明によるガーメントを示す。
【図2】大縮尺により図1のガーメントのウエルト部分の内側表面の一部を示すが、これは滑り止めをより明確に示している。
【図3】図2のIII−IIIにおける断面図であり、その滑り止め区域とその末端ルーピングを伴ったウエルト部分の構造をより明確に示している。
【図4A】通常タイプの平編物による、滑り止め区域に関連する図3の部分(IV)の大縮尺による部分図(isolated view)である。
【図4B】他の高摩擦糸で編まれた追加の高摩擦糸が1/1の選針(1本おきの針)を用いて使用される変形例を示す。
【図4C】他の高摩擦糸で編まれた追加の高摩擦糸がまだ使用されているが、1/3の選針(4本のうちの1本の針)を用いる別の変形例を示す。
【図5】本発明によるさらに別のガーメント、すなわち、開口した靴下を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好適な実施形態の詳細な説明
図1は、(10)で参照される本発明によるガーメントであって、ここでは圧迫ストッキングまたは靴下の形態で実現されたものを示す。
【0027】
圧迫ガーメント(10)には、リンパ管機能不全または静脈機能不全を処置するためにそのガーメントが配置された脚部の一部を圧迫する役割を果たす弾性編物の主要部分(11)がある。足の部分(12)には、踵(13)とつま先(14)がある。主要部分(11)はさらに、(9)で参照され最上部分ともここでは呼ばれるウエルト部分まで上向きに続いている。着用者の皮膚に接触している最上部分(9)の内側面は、適切な位置への圧迫ガーメント(10)の保持を助長する滑り止め効果を提供するように作られている。もちろん、ウエルト部分の内側面は主要部分の内側面でもある。
【0028】
図(1)〜(3)に示されているように、そして本発明の本質的な特徴により、圧迫ガーメント(10)の最上部分(9)は、最上部折り返し(18)によって一つにつながった外側ウエルト(16)と内側ウエルト(17)を持つ折り返された末端(15)を明確にするように折り重ねられる。一様な滑り止め区域(50)が内側ウエルト(17)に形成される。滑り止め区域(50)は細いまたは軽量の高摩擦糸のみで全面的に編まれ、そして滑り止め区域は主要部分(11)を作製するために使用される丸編み機(本明細書中には未掲載)により直接(そのまま続けて)編まれ、かつ、内側ウエルトの全周に及ぶので、着用者の皮膚に接触して最適な高摩擦区域を生じる。
【0029】
好ましくは、滑り止め区域(50)は、内側ウエルト(17)の全周に一様に続く。
よって、滑り止め区域(50)に編み込まれた高摩擦糸のすべてが、編物パターン全体にわたって求める滑り止め効果に寄与する。その結果、一定の領域に対して、最適な接触区域が得られる、すなわち、先に触れた書類US6871516Bに記載のとおり高摩擦レイドイン糸を使用することで得られるであろう接触区域に比べてはるかに広い。
滑り止め区域(50)は、折り返された末端(15)の内側ウエルト(17)の全高近くまで続いている。実際には、滑り止め区域(50)の高さは、少なくとも2センチメートルと同等になるように選択される。
【0030】
外側ウエルト(16)には、(19)で参照されるループ形成ラインにて主要部分(11)とループを形成する遠位末端がある。ループ形成によって繋ぎ合せるこうした技術は、丸編み機の使用でよく知られていて、その後、接続縫い付けを使用すれば起こるような余分な厚みを生じさせることなく丸編み機によってそのまま続けて実施されるループ形成を伴う。輪郭図では、編物は、予備の縫い糸を再び編むことによってループ形成を果たすように、両方のウエルトを完全に編み終えるとそれに続いて針によって戻されるループの形で、ループ形成ライン(19)に達するようにガーメントの主要部分(11)が変えられる。
【0031】
(51)は滑り止め区域(50)の下端を示し、そして(52)は滑り止め区域(50)の上端を示す。下端(51)に関しては、上方へと続き、かつ、ループ形成ライン(19)から少し離れているという条件があり、そして上端(52)に関しては、下方へと続き、かつ、折り返された末端(15)の最上部折り返し(18)から少し離れているという条件がある。よって、滑り止め区域(50)は、折り返された末端(15)の内側ウエルト(17)において正確に中心に配置される。さらに、中間区域(20)がループ形成ライン(19)と下端(51)の間に続いているので、ループ形成中に滑り止め区域(50)が編物を特別に乱すことがないのは確実である。また、中間区域(21)が最上部折り返し(18)と滑り止め区域(50)の上端(52)の間に続いているので、滑り止め区域(50)が折り返された末端(15)の内側面の向きだけを向いたままであるのは確実である。その結果、滑り止め区域(50)は外側から常に見えず、見ることができるはすべて、図1に図式的に示されているように、対応する最上部分のリブの形をした折り返しのわずかな部分である。
【0032】
折り返された末端(15)は、絞扼のあらゆる危険性を回避するために、先に触れた書類EP0621024Bの教示に準ずるように、それが四肢にかける圧力が折り返された末端(15)付近で主要部分(11)によってかけられる圧力と実質的に等しいように当然適合させる。それから、折り返された末端(15)のこの取り決めは、内側ウエルト(17)と外側ウエルト(16)を構成するために選択された糸に適用され、当然、滑り止め区域(50)を構成する糸にも適用され、そして使用される結合技術にも適用される。
【0033】
滑り止め区域(50)は、その一様な構造のため、およびその結合の規則性のため「一様」であると言われるが、同じ重さの糸が使用されているのであれば、その結果、着用者の皮膚に接触して本物の高摩擦「面」を作り出すのでなおさらである。
【0034】
本発明を実施するために想定される様々な編物技術の説明が続くが、これらの様々な技術は共に細い高摩擦糸の使用が共通している。「細い」または「軽量」という用語は、通常200dtex以下の重さの糸を示すのに使用される。こうした重さの範囲が、少なくとも300dtex超でなければならない先に触れた書類US6871516Bに記載されているような高摩擦糸の重さから非常にかけ離れていることに注意すべきである。
【0035】
細い糸の使用で、完全に一様である区域を持つことが可能になり、そしてそのことは、求める滑り止め効果に関して有効であり、かつ、編物の連続性のため触れて心地良い。
【0036】
図4Aでは、滑り止め区域(50)の部分(IV)を見ることができ、ここでは、1種類、より好ましくは(61)および(62)で参照される2種類の高摩擦糸から成る平編物が使用されている。実際には、丸編み機による2本の正反対給糸に使われる2本の糸を使用することが望ましく、そこで、シリンダの所定の回転に対して2列作製することを可能にし、それによってガーメントを作り上げる際に二倍速く進む。当然、このことは一例にすぎないので、条件は平編で編まれる2本より多い糸についても等しくうまく設定できる。
あらゆる状況のもとで、同じ重さを有することは、平編で編まれる高摩擦糸(61)、(62)にとって有利である。
【0037】
図4Bは、(63)で参照される追加の高摩擦糸も含む滑り止め区域(50)の部分(IV)を示す。一例として、この追加の高摩擦糸(63)は、この例では1/1型(すなわち2本の針のうち1本を取る)のものである選針を用いた平編物の高摩擦糸(61)、(62)の一方またはもう片方の単独給糸により編まれる。
【0038】
図4Cに示されている変形例では、追加の高摩擦糸(63)について他の選針、例えば4本のうちの1本の針を取る1/3の選針を提供することが可能である。
選針が増やされれば、糸(61)、(62)の一方またはもう片方と編まれる追加の糸(63)が目に見える部分が増える場合があることは、図4Bおよび4Cを見ればすぐに理解できるが、しかしながら、1/6選択(7本の針のうちの1本)を超えると、追加の高摩擦糸(63)の不十分な保持力に直面する危険性があり、それにより望ましくないループを引っ掛ける、そして形成する危険性があるので、実際にはこれには限界がある。
【0039】
実際には、条件は、すべてが同じ重さを有するように、平編で編まれた高摩擦糸(61)、(62)、および針の選択により編まれる追加の高摩擦糸(63)について設定される。
それにもかかわらず、変形例では、特により高い圧迫クラス向けにより大きな弾力性を有することが求められる場合、同じ重さのものである高摩擦糸(61)および(62)は設定できたが、より大きい重さである追加の高摩擦糸(63)は設定できなかった。もう一度繰り返すと、着用者にとって不愉快であろうから、大きく異なる重さを選択するのを避けるのが適当である。
とにかく、高摩擦糸の重さは、好ましくは200dtex以下であり得る。
【0040】
一般に、滑り止め区域(50)を構成する高摩擦糸(61)、(62)、および(63)は、好ましくは同じ種類のものであり、特に、弾性糸を選ぶことが可能である。好ましくは、高摩擦糸は、スパンデックスでできているか、またはゴム糸でできている。その後者の場合では、高摩擦糸の重さは、好ましくは50〜156dtexの間になければならない。発明者らは、156dtexを超えると、滑り止め区域(50)がきつ過ぎて、絞扼を形成することを観察したので、本発明はそれを避けるように努めている。50dtex未満では、滑り止め区域(50)がゆる過ぎるので、覆っている四肢上に的確な支えを提供しない。より好ましくは、高摩擦糸の重さは50〜150dtexの間になければならない。
【0041】
好ましくは、スパンデックスまたはゴム糸での弾性糸に関して、高摩擦糸の重さは54〜80dtexである。発明者らは、着用者の快適さに影響を与えずに圧迫ガーメント(10)を支えるには、滑り止め区域(50)が完璧に強い不安感を伴うものであることを観察した。好ましくは、スパンデックスまたはゴム糸での弾性糸に関して、糸の重さはおおむね78dtexである。
【0042】
本明細書中に示した例では、滑り止め区域にはどんなレイドイン糸もない。それにもかかわらず、また、それ自体による編物が折り返された末端(15)付近の主要部分によってかけられる圧迫と実質的に等しい圧迫レベルを提供するのに十分でないとき、レイドイン高摩擦糸も使用する異なった配置について条件を設定することができるであろう。
【0043】
本発明は、記載した実施形態に制限されることはないが、先に提示した本質的な特徴を再現するための同等手段を使用したあらゆる変形例を網羅する。
本発明は、着用者の身体の一部にその主要部分があてられる、あらゆるタイプのガーメントに適用される。よって、本発明は、高摩擦糸が着用者の皮膚に接触してガーメントの滑り止め特性を増強するような、ガーメント主要部分の内側面に一体的に形成された、高摩擦糸を含む滑り止め区域を持つ、編まれた、円周方向に続くウエルト部分を含むガーメントに広く関係する。靴下やストッキングに関しては、本発明が(ふくらはぎの最上部で終わっている)靴下で特に満足できる結果をもたらすことが分かった。というのも、それは(ふくらはぎが次第に細くなる)脚部の形状によって自然に高められる保持力だけではなく、そのときにガーメントにウエルト部分でまくれる傾向がないためである。ガーメントは、手袋、靴下、パンティーストッキング、ストッキング、膝まで、ふくらはぎまで、足首まで、または足先までのパンティーストッキング、ブラジャーなどであってもよい。その主要部分は、本発明による1つまたは2つのウエルト部分まで延長され得る。
【0044】
2つのウエルト部分を持つそのようなガーメントの例としては、つま先のレベルにて開口している靴下(100)を示す図5に挙げられる。その靴下は、編物の主要部分(111)を持つ。主要部分(111)は、第1ウエルト部分または上部ウエルト部(115a)、および第2ウエルト部分または下部ウエルト部分(115b)まで続く。着用者の皮膚に接触する末端部分の内側表面は、適所でのガーメント(100)の保持を促進する滑り止め目的のために適合させるのが好ましい。
【0045】
もちろん、本発明はさらに、圧迫効果のないガーメント、例えば、日常のストッキングにも適用される。よって、本発明は、医療用途に限定されない。血流の問題またはリンパの問題を患っていない人が、本発明によるガーメントを着用することもできる。脚部および足の保護に加えて、本発明による靴下およびストッキングは非常に着心地が良い、なぜなら、それらが多くの従来のガーメントのように脚部を絞扼することなく適所に保持されるからである。
【0046】
図示した実施形態では、外側ウエルトにはループ形成ラインにて主要部分へとループを形成する遠位末端があるが、これはまた、内側ウエルトと一緒に実現され得る。その場合、編物は、ループ形成ラインのレベルに達したときに、待機ループの形でいくつかの縫い付けを見越しておくことによってガーメントの主要部分が変更される。一連の外側ウエルトと内側ウエルトが編まれ、待機ループを再び編むことによって待機ループが内側ウエルト末端のループ形成の役割を引き継ぐ。
【0047】
図示した実施形態では、ウエルト部分は外側ウエルトと内側ウエルトを形作るように折り重ねられ、そこでは、滑り止め区域が内側ウエルト上に形成され、ウエルト部分が折り重ねられない可能性もある。この場合、滑り止め区域は、ウエルト部分の内側面に直接形成され、そしてウエルト部分の全周のうちの少なくとも一部にそのまま広がっている。しかしながら、折り重ねられたウエルト部分は、それが所定の位置でのガーメントの保持力を促進するので好ましいのに対して、折り重ねられていないウエルトはまくれ上がる可能性がある。
【0048】
図示した実施形態では、滑り止め区域は2本の高摩擦糸と追加の高摩擦糸から成る平編物でできているが、滑り止め区域が別の方法で作られる可能性もある。例えば、滑り止め区域が1本の高摩擦糸と追加の高摩擦糸から成る平編物でできている可能性がある。
【0049】
スパンデックスまたはゴム糸を使った弾性糸を想起させたが、滑り止め区域(50)を構成する(単数もしくは複数の)糸が、他の材料の中にあることもある。特に、少なくともそのうちの1種類が弾性であり得る数種類の糸を使用することもできる。
糸の重さの範囲の選択は、もちろん糸の性質次第である。とにかく、高摩擦糸の重さは、滑り止め区域(50)が止血帯として機能するのを避けるために、200dtex以下でなければならない。
【0050】
図示した実施形態では、滑り止め区域は、ガーメントが継ぎ目のない靴下ガーメントになるように、丸編み機でそのまま続けて編まれるが、滑り止め区域と主要部分は、平台編み機または別のタイプの編み機で編まれてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーメント主要部分(11;110)の内側面上に一体的に形成された、高摩擦糸(61、62、63)を含む滑り止め区域(50)を持つ、編まれた、円周方向に続くウエルト部分を含むガーメント(10;100)であって、前記高摩擦糸が着用者の皮膚と接触してガーメントの滑り止め特性を増強する前記ガーメント。
【請求項2】
前記主要部分(11;110)を作製するために使用された編み機によって高摩擦糸(61、62、63)を用いて滑り止め区域(50)が直接編まれて、滑り止め区域がウエルト部分の全周の少なくとも一部に広がり、それにより着用者の皮膚に接触する高摩擦区域がもたらされる、請求項1に記載のガーメント。
【請求項3】
前記ウエルト部分を、外側ウエルト(16)と内側ウエルト(17)を形作るように折り重ね、そこでは、滑り止め区域が内側ウエルト上に形成される、請求項2に記載のガーメント。
【請求項4】
前記主要部分(11;110)が、ガーメントが配置された四肢を圧迫する役割を果たす弾性編物でできており、そこでは、滑り止め区域(50)が細い高摩擦糸(61、62、63)のみを用いて全面的に編まれ、前記滑り止めが主要部分(11;110)を作製するのに使用された丸編み機によって直接編まれ、そして前記内側ウエルト(17)の全周に着用者の皮膚に接触する最適な高摩擦区域がもたらされる、請求項3に記載のガーメント。
【請求項5】
前記高摩擦糸(61、62、63)は200dtex以下の重さである、請求項1または4に記載のガーメント。
【請求項6】
前記高摩擦糸(61、62、63)が弾性糸である、請求項1または4に記載のガーメント。
【請求項7】
前記高摩擦糸(61、62、63)が、スパンデックスまたはゴム糸でできている、請求項6に記載のガーメント。
【請求項8】
前記高摩擦糸(61、62、63)の重さが、50dtex〜156dtexの範囲内にある、請求項7に記載のガーメント。
【請求項9】
前記高摩擦弾性糸(61、62、63)の重さが、50dtex〜150dtexの範囲内にある、請求項7に記載のガーメント。
【請求項10】
前記高摩擦弾性糸(61、62、63)が、54dtex〜80dtexの範囲内にある、請求項の7に記載のガーメント。
【請求項11】
前記滑り止め区域(50)が、ウエルト部分の高さのほぼ全体に広がっている、請求項1または4に記載のガーメント。
【請求項12】
前記滑り止め区域(50)が、少なくとも2センチメートルの高さである、請求項1または4に記載のガーメント。
【請求項13】
前記の外側ウエルト(16)または内側ウエルト(17)のうちの一方が、主要部分(11;110)のループ形成ライン(19)とループを形成する遠位末端を持ち、そして滑り止め区域が、ループ形成ラインから少し離れたところに、ループ形成ラインから上側に続く下端(51)を持つ、請求項3または4に記載のガーメント。
【請求項14】
前記滑り止め区域(50)が、ウエルト部分の折り返しから少し離れたところに、ウエルト部分の折り返しから下側に続く上端(52)を持つ、請求項3または4に記載のガーメント。
【請求項15】
前記滑り止め区域(50)が、少なくとも2本の高摩擦糸(61、62、63)から成る平編物でできている、請求項1または4に記載のガーメント。
【請求項16】
前記少なくとも2本の高摩擦糸(61、62、63)が、同じ重さのものである、請求項15に記載のガーメント。
【請求項17】
前記滑り止め区域(50)が高摩擦糸(61、62)の平編物でできており、そしてその滑り止め区域には、1/nの選針{式中、nは1(2本のうちの1本の針)〜6(7本のうちの1本の針)の範囲内にある整数である。}を用いて高摩擦糸を編んだ平編で編まれた追加の高摩擦糸(63)が含まれている、請求項1または4に記載のガーメント。
【請求項18】
前記の平編で編まれた高摩擦糸(61、62)と追加の高摩擦糸(63)が、同じ重さである、請求項17に記載のガーメント。
【請求項19】
前記追加の高摩擦糸(63)が、平編で編まれた高摩擦糸(61、62)の重さよりも重い、請求項17に記載のガーメント。
【請求項20】
前記滑り止め区域(50)が、すべて同じ種類である数本の高摩擦糸(61、62、63)で作り上げられている、請求項1または4に記載のガーメント。
【請求項21】
前記主要部分によってウエルト部分付近にかかる圧力と実質的に等しい圧力が体の一部にかかるようにウエルト部分を適合させた、請求項1または4に記載のガーメント。
【請求項22】
前記滑り止め区域(50)が、内側ウエルト(17)の全周にわたって一様に続いている、請求項1または請求項4に記載のガーメント。
【請求項23】
前記高摩擦糸(61、62、63)が滑り止め区域の主成分を形成し、かつ、継ぎ目のない靴下ガーメントである、請求項1または4に記載のガーメント。
【請求項24】
着用者の体の所望する位置にそれ自体を保持するための滑り止め特性を有するガーメント(10;100)を構築する方法であって、以下のステップ:
(a)着用者の体に置かれた状態に適合させたガーメント主要部分(11;110)を編み;
(b)高摩擦糸(61、62、63)を準備し;そして
(c)内側の編まれたウエルト部分の皮膚接触面上に円周方向で高摩擦糸を含む編まれたウエルト部分を一体的に形成して、高摩擦糸が着用者の皮膚と接触してガーメントの滑り止め特性を増強するような滑り止め区域を形作る、を含んでなる前記方法。
【請求項25】
前記編まれたウエルトを一体的に形成するステップが、外側面および内側の皮膚接触面を形作る筒状に編まれたウエルト部分を形成するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記の高摩擦糸(61、62、63)を準備するステップが、弾性高摩擦糸を準備するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記の編まれたウエルト部分を一体的に形成するステップは、ガーメントの全周を一様に囲むように編まれたウエルト部分を一体的に形成するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記のガーメント主要部分(11、111)を編むステップが、継ぎ目のない靴下ガーントを編むステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記の編まれたウエルト部分を一体的に形成するステップが、以下のステップ:
(a)第1の高摩擦糸(61、62)を平編で編み;そして
(b)1/n{式中、nは、2本のうちの1本の針〜7本のうち1本の針の範囲内の整数である。}の選針を用いて第1の高摩擦糸と一緒に編まれる第2の高摩擦糸(63)を平編で編む、を含む、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−521415(P2013−521415A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554254(P2012−554254)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【国際出願番号】PCT/EP2011/001446
【国際公開番号】WO2011/116952
【国際公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(512223629)
【Fターム(参考)】