説明

キウイアレルゲンであるアクチニジンのエピトープを含むペプチドとその利用

【課題】 キウイアクチニジンのエピトープを決定すること。
【解決手段】 以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド
(b) N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗原活性を有するペプチド

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キウイアレルゲンであるアクチニジンのエピトープを含むペプチドとその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
キウイ果汁中、最も量が多いタンパク質はアクチニジンと呼ばれるプロテアーゼで、全体のタンパク質の40〜50%を占めている。アクチニジンの食品に対する働きとして、食肉軟化作用や肉の消化の促進、整腸作用が挙げられており、健康に良いとされているが、その反面でアクチニジンがキウイの最も主要なアレルゲンとなっていることが報告されている(非特許文献1)。また、アクチニジンをコードする遺伝子の塩基配列が決定され、その配列からアミノ酸配列が推定されていた(非特許文献2)。
しかし、アクチニジンのエピトープは決定されていなかった。
【0003】
【非特許文献1】Pastorello, E.A., and Ortolani, C.,etal. Identification of actinidin as the major allergen of kiwi fruit. J. Allergy Clin. Immunol., 101, 531-537 (1998)
【非特許文献2】Nucleotide sequence of an actinidin genomic clone Nucleic Acids Res. 18 (22), 6684 (1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アクチニジンのエピトープを決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、アクチニジンのエピトープを含むペプチドを明らかにし、さらにエピトープは一か所しかないことを明確にした。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
本発明の要旨は以下の通りである。
【0006】
(1)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド
(b) N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗原活性を有するペプチド
(2)N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列中の連続する少なくとも5個以上のアミノ酸の配列からなり、かつ抗原活性を有するペプチド。
【0007】
(3)N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列中の連続する少なくとも5個以上のアミノ酸の配列を含み、かつ抗原活性を有するアミノ酸数5〜100個のペプチド。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチドを含む、アレルギー疾患の診断薬。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチドを含む、アレルギー疾患の診断キット。
(6)(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチド、(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチドに対して誘導された抗体又は(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチドをコードするDNAを含む、アレルギー疾患の予防及び/又は治療薬。
(7)(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチドのアミノ酸配列と同一の配列からなる内部アミノ酸配列を含まないアクチニジン。
(8)(7)記載のアクチニジンを含む、アレルギー疾患の予防及び/又は治療薬。
【0008】
本発明のペプチドには、キウイアレルギー患者のIgE抗体と結合するエピトープ(抗原認識部位)が含まれている。本発明のペプチドは、アレルギー反応の抑制(経口寛容)に有効である可能性が高く、アレルギー治療薬、改善薬としての利用が期待できる。本発明のペプチドに含まれるエピトープはB細胞エピトープであるが、現在、B細胞エピトープを含まずにアナジーを誘導するようなT細胞エピトープを含むペプチドを経口抗原感作に用いて免疫学的寛容を誘導する治療法が開発されている。従って、本発明のペプチドに含まれるエピトープを含まないアクチニジンは、このような治療法に用いる免疫療法剤としての利用が期待できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のペプチドには、キウイアレルギー患者のIgE抗体と結合するエピトープ(抗原認識部位)が含まれているので、アレルギー疾患の診断に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
本発明は、以下の(a)又は(b)のペプチドを提供する。
(a) N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド
(b) N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗原活性を有するペプチド
【0011】
(a)のペプチド(以下、「ペプチドE5」と記すこともある)は、キウイアレルゲンであるアクチニジンのエピトープを含む。(a)のペプチドは、キウイ果肉からタンパク質を抽出し、その抽出液から精製したタンパク質をStaphylococcus aureus V8プロテアーゼで消化し、その結果生じたペプチド断片を高速液体クロマトグラフィーにより分離することで得られる。また、公知のペプチド合成法などで合成することもできる。
【0012】
当業者であれば、公知の方法により、配列番号1で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗原活性を有するペプチドを調製することができる。アミノ酸の欠失、置換又は付加のための公知の方法としては、例えば、部位特異的変異誘発法と組合せたDNA組換え技術、公知のペプチド合成法などが挙げられる。
【0013】
また、本発明は、N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列中の連続する少なくとも5個以上(好ましくは10個以上、より好ましくは15個以上)のアミノ酸の配列からなり、かつ抗原活性を有するペプチドを提供する。このようなペプチドは、上記の(a)又は(b)のペプチドと同様の方法で調製することができる。
【0014】
さらに、本発明は、N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列中の連続する少なくとも5個以上(好ましくは10個以上、より好ましくは15個以上)のアミノ酸の配列を含み、かつ抗原活性を有するアミノ酸数5〜100個(好ましくは10〜80個、より好ましくは15〜50個)のペプチドも提供する。このようなペプチドとしては、キウイ果肉、サルナシ果肉などに含まれるアクチニジン、ニンジン,トウモロコシなどに含まれるcysteine proteaseなどの内部アミノ酸配列からなるペプチド断片などを例示することができる。このようなペプチド断片は、アクチニジン、cysteine proteaseなどのタンパク質をStaphylococcus aureus V8プロテアーゼ、trypsinなどのタンパク質分解酵素で消化し、その結果生じたペプチド断片を高速液体クロマトグラフィーにより分離することで得られる。また、公知のペプチド合成法などで合成することもできる。
【0015】
本発明のペプチドは、アレルギー疾患(例えば、キウイアレルギー)を検出・診断するために用いることができる。例えば、本発明のペプチドを吸着させた固相(例えば、マイクロタイタープレートなどの基板)に被験者の血液(例えば、血清)サンプルを滴下した後、本発明のペプチドと結合したIgE抗体を酵素標識抗IgE抗体(二次抗体)と反応させ、酵素の基質(通常、発色又は発光試薬)を添加して、酵素反応の生成物を検出する(ELISA法)。
【0016】
本発明は、本発明のペプチドを含む、アレルギー疾患の診断キットも提供する。本発明のペプチは固相(例えば、マイクロタイタープレートなどの基板)に固定されていてもよい。キットには、さらに、血液を採取するための器具、抗凝固剤、サンプルを希釈するための液、洗浄液、酵素標識抗IgE抗体、酵素標識抗IgE抗体を溶解するための液、酵素の基質、基質を溶解するための液、取扱説明書などが含まれてもよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、アレルギー疾患への罹患又は発症危険性の評価基準なども記載しておくとよい。
【0017】
本発明のペプチドは、そのまま投与してもよいが、一般的には、本発明のペプチドと製剤添加物を含む医薬品製剤の形態で投与することが好ましい。前記医薬品製剤は、例えば、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などの経口固形製剤、あるいは液剤、懸濁剤などの経口液体製剤の形態をとっていてもよいし、注射剤(点滴に用いられるものも含む)、坐剤、噴霧剤、外用剤などの非経口製剤の形態をとっていてもよい。
【0018】
経口固形製剤の製造には、例えば、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニットなどの賦形剤;澱粉、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤;ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤;脂肪酸エステルなどの界面活性剤;グリセリンなどの可塑剤などを用いることができる。
【0019】
経口液体製剤の製造には、例えば、ショ糖、ソルビット、果糖などの糖類;ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;ゴマ油、オリーブ油、大豆油などの油類;p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤などを用いることができる。溶媒または分散媒としては、例えば、水、アルコールなどの公知の経口投与可能な媒体が用いられる。
注射剤は、例えば注射用蒸留水などの水性媒体を用い、適当な添加剤とともに溶液、懸濁液または分散液として調製することができる。坐剤は、例えば、カカオ脂、水素化脂肪または水素化カルボン酸などの担体を用いて調製することができる。噴霧剤は、例えば、乳糖またはグリセリンなどの担体を用いて調製することができる。その他、希釈剤、香料、防腐剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などの製剤添加物を用いてもよい。
【0020】
アレルギー疾患の予防及び/又は治療薬中の有効成分(本発明のペプチド)の含有量は、製剤の種類により異なるが、通常1〜100 重量%、好ましくは50〜100 重量%である。
アレルギー疾患の予防及び/又は治療薬の投与経路、投与量及び投与頻度は、患者の年齢および体重、症状などの種々の条件に応じて適宜選択するとよい。例えば、本発明の予防及び/又は治療薬の投与量は、経口投与の場合、有効成分の量に換算して、成人一日あたり約0.1〜0.5gとなるように選択することが好ましい。また、本発明の予防及び/又は治療薬を皮内もしくは皮下投与する場合は、有効成分の量に換算して、成人一回あたり約0.01〜0.05gとなるように選択することが好ましい。
【0021】
アレルギー疾患の予防及び/又は治療のためには、本発明のペプチドを医薬品として投与するのみならず、食品に添加して摂取させてもよい。食品に添加する場合には、例えば、顆粒、ガム類、キャンデー類、デザート菓子類、ビスケット類、スナック類、ケーキ・ペストリー類、チョコレート類、牛乳、ヨーグルト、飲料水などに添加する。食品中の本発明のペプチドの含有量は、0.0001〜20重量%が適当であり、好ましくは0.001〜10重量%となるように選択することが好ましい。
【0022】
本発明のペプチドに対して誘導された抗体もアレルギー疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
本発明のペプチドに対して誘導された抗体は、慣用のプロトコ-ルを用いて、抗原若しくは抗原エピト-プ又はそれらをコードするDNAを動物に投与することにより得られる。
抗体は、ポリクロ-ナル抗体、モノクロ-ナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体のいずれであってもよい。
【0023】
ポリクロ-ナル抗体を作製するには、公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(本発明のペプヒドまたはこれを発現するプラスミドDNA)を動物に投与(免疫)し、該免疫動物からペプチドに対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約2〜10回程度行なわれる。ポリクロ-ナル抗体は、免疫動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。ポリクロ-ナル抗体の分離精製は、免疫グロブリンの分離精製法(例えば、塩析法、アルコ-ル沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法)に従って行なうことができる。ポリクローナル抗体としては、血清から精製したIgG画分が好ましい。
【0024】
モノクロ-ナル抗体は、Nature (1975) 256: 495、Science (1980) 208: 692-に記載されている、G. Koehler及びC. Milsteinのハイブリド-マ法により作製することができる。すなわち、動物を免疫した後、免疫動物の脾臓から抗体産生細胞を単離し、これを骨髄腫細胞と融合させることによりモノクロ-ナル抗体産生細胞を調製する。さらに、本発明のペプチドに特異的に反応するが、他の抗原タンパク質又はペプチドとは実質的に交差反応しないモノクローナル抗体を産生する細胞系を単離するとよい。この細胞系を培養し、培養物から所望のモノクロ-ナル抗体を取得することができる。モノクロ-ナル抗体の精製は、上記の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0025】
一本鎖抗体を作製する技法は、米国特許第4,946,778号に記載されている。
ヒト化抗体を作製する技法は、Biotechnology 10, 1121-, 1992; Biotechnology 10, 169-, 1992に記載されている。
本発明のペプチドに対して誘導された抗体はPBSなどの緩衝液、生理食塩水、滅菌水などに溶解し、必要に応じてフィルター-などで濾過滅菌した後、注射により被験者に投与するとよい。また、この溶液には、添加剤(例えば、着色剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、溶解補助剤、安定化剤、保存剤、酸化防止剤、緩衝剤、等張化剤など)などを添加してもよい。投与経路としては、静脈、筋肉、腹腔、皮下、皮内投与などが可能であり、また、経鼻、経口投与してもよい。
【0026】
本発明の抗体の投与量、投与の回数及び頻度は、被験者の症状、年齢、体重、投与方法、投与形態などにより異なるが、例えば、通常、成人一人当たり20〜100 mg/kg体重、好ましくは、20〜50 mg/kg体重の抗体を、少なくとも1回、所望の効果が持続する頻度で投与するとよい。
本発明のペプチドをコードするDNAを用いて、アレルギー疾患の予防及び/又は治療を行ってもよい。本発明のペプチドをコードするDNAとしては、下記の配列番号2のヌクレオチド配列からなるDNAを挙げることができる。本発明のペプチドをコードするDNAは、例えば、キウイ果肉からゲノムDNAを抽出し、ペプチドE5のコード領域(60残基)をPCRにより増幅することにより、PCR増幅産物として得ることができる。
【0027】
E5ペプチドをコードするヌクレオチド配列:
aattatccctacacggctcaagatggtgaatgcaacttggacttacaaaatgaaaagtatgttacaattgatacttatgaa(配列番号2)
本発明のペプチドをコードするDNAを含有する組換えベクターは、公知の方法(例えば、Molecular Cloning2nd Edition, J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989に記載の方法)により、本発明のペプチドをコードするDNAを適当な発現ベクターに挿入することにより得られる。
【0028】
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13, pGACAG)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,アデノウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫病原ウイルスなどを用いることができる。
発現ベクターには、プロモーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジンなどを付加してもよい。
【0029】
組換えベクターを遺伝子ワクチン(プラスミドワクチン・ウイルスベクターワクチン)として使用する場合には、すでに遺伝子ワクチン用に開発されているベクターに標的遺伝子を導入しプラスミドワクチン又はウイルスベクターワクチンを作製するとよい。
本発明のペプチドをコードするDNA又は前記DNAを含有するベクターは、例えば、PBSなどの緩衝液、生理食塩水、滅菌水などに溶解し、必要に応じてフィルターなどで濾過滅菌した後、注射により被験者に投与されるとよい。また、この溶液には、添加剤(例えば、不活化剤、保存剤、アジュバント、乳化剤など)などを添加してもよい。
【0030】
本発明のペプチドをコードするDNA又は前記DNAを含有するベクターの投与量、投与の回数及び頻度は、被験者の症状、年齢、体重、投与方法、投与形態などにより異なるが、例えば、本発明のペプチドをコードするDNA又は前記DNAを含有するベクターを投与する場合には、例えば、通常、成人一人当たり1〜100mg、好ましくは、1〜10mgの投与量で少なくとも1回、所望の効果が持続する頻度で投与するとよい。ベクターがウイルスの場合には、成人一人当たり10〜1012ウイルス粒子、好ましくは1011〜1012ウイルス粒子の投与量で少なくとも1回、所望の効果が持続する頻度で投与するとよい。
筋肉内投与後エレクトロポレーション法で細胞内に導入する方法やリポソームなどトランスフェクション増強剤との複合体を作製後投与する方法により、ワクチン効果を高める方法も併用するとよい。
【0031】
本発明のペプチドに含まれるエピトープ(B細胞エピトープ)を含まないアクチニジンは、B細胞エピトープを含まずにアナジーを誘導するようなT細胞エピトープを含むペプチドを経口抗原感作に用いて免疫学的寛容を誘導する治療法に用いる免疫療法剤として利用できる。このように改変されたアクチニジンは、遺伝子工学的な手法で作製することが可能であり、本発明は、この改変アクチニジン及びそれを含むアレルギー疾患の予防及び/又は治療薬も包含する。この改変アクチニジンを含むアレルギー疾患の予防及び/又は治療薬の製剤化、投与方法、投与量などについては、当業者であれば適宜適切な選択をすることが可能であろう。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
〔実施例1〕
1.要旨
食物アレルギーとは、食物を摂取した際に食物に含まれる特定のタンパク質アレルゲンを免疫系が異物として認識し免疫系が過剰に働くことで起こる疾患である。アレルゲンを摂取すると、肥満細胞に結合したIgE抗体にアレルゲンが結合し、この肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されることで、痒み・下痢・喘息といったアレルギー症状が発生する(図1)(1)。食物アレルゲンとして小麦・魚類・甲殻類・ソバ・果物などのタンパク質が報告されている。特に果物類によるアレルギー患者は年々増加傾向にあり、その果物の中ではキウイフルーツによる患者が多く、全体の7割を占めている(2)
【0034】
キウイ果汁中、最も量が多いタンパク質はアクチニジン(actinidin)と呼ばれるプロテアーゼで、全体のタンパク質の40〜50%を占めている(3)。アクチニジンの食品に対する働きとして、食肉軟化作用や肉の消化の促進、整腸作用が挙げられており、健康に良いとされている(3)が、その反面でアクチニジンが最も主要なキウイアレルゲンとなっている(4)。そこで本研究では、アクチニジンがキウイのアレルゲンであることを患者血清を用いて確認した後、アレルゲン量の品種間差異を分析した。またアクチニジンのエピトープを解析した。
【0035】
アクチニジン含量が多く、最も市場に流通している品種であるヘイワードの抽出液から陰イオン交換カラムを用いたFPLCによって、アクチニジンを精製した。この精製標品を用いてキウイアレルギー患者2名の血清の評価をウエスタンブロッティングによって行った。患者(I)、(II)共にキウイ抽出液にかなり強い反応が見られた。しかしアクチニジンへの反応の程度は、患者(I)が患者(II)よりも強かった。このことから、患者(II)はアクチニジンだけがアレルゲンではなく、他のタンパク質もアレルゲンになっていることが考えられる。次に、グリーンキウイ、ゴールドキウイ計10品種を同じ条件で抽出液を調製し、それぞれタンパク質1 μg分を電気泳動で確認したところ、10品種全てのキウイから30 kd付近に濃いバンドが検出された。このバンドをアミノ酸シークエンサーを用いて配列分析を行ったところ、キウイの主要アレルゲンと報告されているアクチニジンであることが判明した。グリーンキウイとゴールドキウイの違いとして、ゴールドキウイではアクチニジンの量が少ない、という報告がされていたが、今回の実験では品種間にバラつきはあるがゴールドキウイにもアクチニジンが相当量存在することが分かった。つまり、アクチニジンはグリーンだけではなくゴールドキウイのアレルゲンにもなりうることが考えられる。なお、アクチニジンの量が少ない品種もあることから、育種によってアレルゲン低減キウイを作出できることを示唆している。次に、アクチニジン精製品を酵素処理し生じたペプチドを逆相カラムを用いたHPLCによりマッピングを行い、各マッピング溶液、アクチニジン精製標品、キウイ抽出液を、ウエスタンブロッティングによる評価の結果からアクチニジンに強い反応を示した、患者(I)の血清を用いて阻害ELISA法を行ったところ、いくつかのV8消化断片から反応が見られた。この断片をnano LC-ESI Q/TOF MSを用いて分析したところ、アクチニジンの内部アミノ酸配列の「N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E」をもつペプチドであることが分かった。また、還元・非還元のアクチニジン精製標品はどちらも強い反応が見られたが還元処理をした精製標品の方が若干数値が低くなった。このことから、立体構造が変化することでIgE抗体とエピトープ部位の結合能が低くなるが、完全には結合能は失われないことが分かった。報告されているアクチニジンの立体構造とエピトープを照合すると、エピトープは分子表面に存在していると推定された。また、アクチニジンの疎親水性を調べてみると、エピトープは親水性の領域であると考えられた。このことから、摂取したアクチニジンのエピトープは消化酵素によって切断遊離され、小腸から吸収されやすい特性をもっているとされる。
【0036】
アクチニジンのホモロジー検索をしたところ、同じシステインプロテアーゼである、パパイヤのアレルゲンと報告されているパパインにもこの配列が保存されていることが分かった。このことからパパインにおいても、この配列がエピトープになりうる可能性も考えられる。以上のことから、品種改良などによりエピトープ部分を除去したキウイを作出すれば、キウイアレルギー患者もキウイを食べることができるようになると考えられる。
【0037】
2.略語リスト
BPB : Bromophenol blue(ブロモフェノールブルー)
DTT : Dithiothreitol(ジチオスレイトール)
IAA : Iodoacetamide(インドール酢酸)
TFA : Trifluoroacetic acid(トリフルオロ酢酸)
SDS : Sodium dodecyl sulfate(ドデシル硫酸ナトリウム)
SDS-PAGE : Sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis
(SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)
Tris : Tris [hydroxymethyl] amino methane(トリスヒドロキシアミノメチルメタン)
PVDF : Polyvinylidene difluiride(ポリビニリデンジフルオリド)
V8:Staphylococcus aureus V8 protease(Staphylococcus aureus V8プロテアーゼ)
【0038】
3.序論
3-1:アレルギー
アレルギーとは、免疫反応が、特定の抗原に対して過剰に起こることをいう。免疫反応は、外来の異物(抗原)を排除するために働く、生体にとって不可欠な生理機能である。アレルギーはその発生機序により大きくIからV型に分類される(5),(6),(7)
I型アレルギー:IgEが肥満細胞や好塩基球に結合し、そこに抗原が結合するとこれらの細胞がヒスタミンなどの生理活性物質を放出する。それにより、血管の拡張・透過性亢進などが起こり、浮腫、掻痒などの症状があらわれる。この反応は抗原が体内に入るとすぐに生じ、即時型過敏と呼ばれる。反応が激しく、全身に起こる場合には急速に血圧が低下するショックを来すこともある。
【0039】
II型アレルギー:IgGが、抗原を有する自己の細胞に結合し、それを認識した白血球が細胞を破壊する反応である。代表的にはB型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎が挙げられる。
III型アレルギー:免疫反応により、抗原・抗体・補体などが互いに結合した免疫複合体が形成される。この免疫複合体が血流に乗って流れた先で、周囲の組織を傷害する反応である。
【0040】
IV型アレルギー:抗原と特異的に反応する感作T細胞によって起こる。抗原と反応した感作T細胞から、マクロファージを活性化する因子などの様々な生理活性物質が遊離し、周囲の組織傷害を起こす。薬物アレルギー、金属アレルギーなどがある。
V型アレルギー:受容体に対する自己抗体が産生され、その自己抗体がリガンドと同様に受容体を刺激することで、細胞から物質が分泌され続けるために起こるアレルギー。バセドウ病が代表例である。
【0041】
3-2:食物アレルギー
食物アレルギーはI型アレルギーに分類される(図2)(8)。日本では食物アレルギーは以前から報告されていたが、最近15年ぐらいの間に急増している。また、食物アレルギーは小児から成人まで認められるが、その大部分は乳児期に発症し、小児期に年齢ともに寛解していくケースである。小児型の食物アレルギーは、年齢別では1才前後に最も多く認められ抗原としては卵・牛乳・小麦・大豆が主要アレルゲンである。小児型の特徴は耐性の獲得といい自然に良くなることで、大部分の症例で年月の差はあっても自然寛解していく。すなわち、1才時に食物アレルギーと診断されてもそのうちの9割の人は遅くとも小学校入学時までには自然寛解すると考えられている。残りの1割の患者の中には一生卵が食べられない・牛乳が飲めないという人もいることも事実である。それに対して成人型食物アレルギーでは、魚類・エビ・カニ・果物などが多く、耐性を獲得していくことが少ないと考えられている(1)
【0042】
また、近年報告が増えていている新しい食物アレルギーのタイプの1つに「口腔アレルギー症候群(OAS)」という症状があり、幼児・学童・成人に認められている。成人の女性に多いとされ、原因抗原としては果物(キウイ、メロン、モモ、パイナップル、リンゴなど)あるいは野菜である。口腔内の症状だけの場合が多いが、ショック症状を呈することもある(9),(10),(11),(12),(13),(14)。欧米では以前からシラカバの花粉との交叉反応(15),(16)が指摘されており、シラカバの自生地域に多く認められていた。日本でも花粉症との関連性が考えられている(表1)。神奈川県衛生研究所アレルギー研究プロジェクトの板垣等の研究によると、果物の中で最も発症頻度が高かったのはキウイであった(図3)(17)
【0043】
3-3:食物アレルゲン
食物アレルゲンには、アミノ酸配列に類似性がある、金属イオン、脂質、糖などが結合する等の特徴がある。シラカバ花粉との交差性が指摘されているリンゴ、セロリ、ニンジン等のアレルゲンタンパク質のアミノ酸配列は似ていることが報告されている(表2)。また、魚介類のアレルゲンタンパク質であるパルブアルブミンはカルシウム結合タンパク質の1つである(18)
このような特徴を持つ食物アレルゲンを除去・低減化する方法として、品種改良による除去、遺伝子組み換えによる除去等が挙げられている。アレルゲンタンパク質のみを除去した米、パンは既に商品化されている(19)
【0044】
3-4:キウイおよびアクチニジン
キウイはマタタビ科マタタビ属の落葉蔓性植物である。果肉は緑色のゼリー状で、中に黒い種子が放射状に並んでいる。味は甘味と爽やかな酸味がある。また、近年ではニュージーランド産を中心に、ゴールデンキウイという、果肉が黄色いものも出回っている。
アクチニジンは、キウイフルーツ果実に含まれているシステインプロテアーゼ(EC 3.4.22.14)である。パパイヤに含まれるパパイン(papain)、パイナップルに含まれるブロメライン(bromelain)も同様なシステインプロテアーゼである。果汁中のタンパク質のうち、アクチニジンは最も主要な成分である。その性質として、乳タンパク質を分解し、苦味を発生する・食肉軟化作用を示す・肉の消化を促進するなどが挙げられている(3)
【0045】
また、このアクチニジンがグリーンキウイの主要アレルゲンとして報告されている。そこで本研究では、アクチニジンがキウイのアレルゲンであることを患者血清を用いて確認した後、アレルゲン量の品種間差異を分析した。またアクチニジンのエピトープを解析した。
【0046】
4.材料と方法
材料
○使用したキウイ
グリーンキウイ:ヘイワード、ブルーノ、アボット
ゴールドキウイ:センセーショナルアップル、アップル、イエローキング、イエロー紅心、紅心、J−11、トライグリーン(全品種、神奈川県農業技術センターから提供を受けた)
○抽出液作製に使用した材料(濃縮処理も含む)
PBS buffer:137 mM 塩化ナトリウム(和光純薬)、2.7 mM 塩化カリウム(和光純薬)、10 mM リン酸水素二ナトリウム十二水和物(和光純薬)、1.8 mM リン酸二水素カリウム(和光純薬)、少量 6 N 塩酸(和光純薬)
POLYTRON PT3000(Kinematica Ag)
○電気泳動(SDS-PAGE)
Phast system(GEヘルスケア)
PhastGelTMGradient 8-25 (GEヘルスケア)
電気泳動後の染色に使用した材料
【0047】
1.クマシーブリリアントブルーR250(CBB)染色に使用した材料
固定液:50%(v/v)エタノール(和光純薬)、10%(v/v)酢酸(和光純薬)
CBB染色液:0.2%(w/v)CBB(Fluka)、40%(v/v)メタノール(和光純薬)、10%(v/v)酢酸(和光純薬)
脱色液:20%(v/v)メタノール(和光純薬)、5%(v/v)酢酸(和光純薬)
【0048】
2.銀染色に使用した材料
Silver Stain MS kit(和光純薬)
○アミノ酸シーケンシングに使用した材料
(R1)5%フェニルイソチオシアネート/n-ヘプタン(Applied Biosystems)
(R3)トリフルオロ酢酸(TFA)(Applied Biosystems)
(R4A)25%トリフルオロ酢酸(Applied Biosystems)
(S2B)酢酸エチル(Applied Biosystems)
(S3)塩化n-ブチル(Applied Biosystems)
(S4B)20%アセトニトリル(Applied Biosystems)
溶媒A3:3.5%THF/HO(プレミックス用)(Applied Biosystems)
溶媒B2:12%イソプロピルアルコール/アセトニトリル(Applied Biosystems)
プレミックスバッファー(Applied Biosystems)
PTHアミノ酸標準品(Applied Biosystems)
(R5B)アセトニトリル(Applied Biosystems)
491 Protein Sequencer(Applied Biosystems)
【0049】
○ウエスタンブロッティングに使用した材料
ブロッティング溶液A:0.3 Mトリス、20%(v/v)メタノール、0.05%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
ブロッティング溶液B:25 mMトリス、20%(v/v)メタノール、0.05%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
ブロッティング溶液C:25 mM トリス、20%(v/v)メタノール、40 mMε-アミノ-n-カプロン酸(東京化成)
ブロッティング溶液:1-StepTMTMB-Blotting(Pierce)
ブロッキング溶液:Starting BlockTM(PBS)Blocking Buffer(Pierce)
発色液:ECL Plus Western Blotting Detection System(GEヘルスケア)
セミドライブロッティング装置(日本エイドー)
ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(日本ジェネティクス)
フルオロトランスWマンブレン0.2um(日本ジェネティクス)
洗浄液:0.15 M NaCl-0.01M PB(pH7.0)+0.05% Tween20.
1次抗体:患者血清
2次抗体:PEROXIDASE-CONJUGATED GOAT IGG FRACTION TO HUMAN IGE (CATALOG#55218) (Cappel)
マーカー:ELC Dualvue Western Blotting
希釈液:0.05% Tween 20を含むStarting BlockTM(PBS) Blocking Buffer
カメラ:ECLTMMini-Camera Luminometer for ECL(GEヘルスケア)
【0050】
○患者血清
キウイアレルギーの疑いがある患者2検体の血清を使用した。2検体ともRAST値によるアレルギーレベルは低いが、キウイへのアレルギー症状が見られている(表3)。
RAST:アレルゲンに対して反応する血液中の抗体の量を調べ、その数値によって、アレルギーレベルを分類する方法。アレルギーレベルが高いほど、アレルゲン食品の摂取量が少量でもアレルギー反応がみられる。
【0051】
○タンパク質精製に使用した材料
buffer A:20 mM Tris-HCl(pH8.0)
buffer B:20 mM Tris-HCl、0.5M 塩化ナトリウム(和光純薬)
FPLC system(Pharmacia Biotech)
カラム:Mono Q(GEヘルスケア)
【0052】
○酵素処理に使用した材料
トリプシン
Staphylococcus aureus V8プロテアーゼ
buffer A:200 mM 重炭酸アンモニウム(和光純薬)
buffer B:100 mM 重炭酸アンモニウム(和光純薬)
buffer C:100 mM 重炭酸アンモニウム(和光純薬) 20 mM 塩化カルシウム(和光純薬)
30mM ジチオスレイトール(DTT)(和光純薬) in buffer A
40mM インドール酢酸(IAA) in buffer B
0.1 M 重炭酸アンモニウム(和光純薬)
50 mM 酢酸アンモニウム(和光純薬)
トリプシン溶液:0.2 μg/μlになるようにトリプシンを0.1 M重炭酸アンモニウム溶液(pH 8.0)に溶解した。
V8溶液:0.2 μg/μlになるようにStaphylococcus aureus V8プロテアーゼ(V8)を50 mM 酢酸アンモニウム溶液(pH 4.0)に溶解した。
【0053】
○ペプチドマッピングで使用した材料
AKTA explorer(GEヘルスケア)
buffer A:0.1% TFA/DW
buffer B:0.1% TFA/アセトニトリル
カラム:μRPC C2/C18 ST 4.6/100 (GEヘルスケア)
【0054】
○ELISA法で使用した材料
コーティング液:Na2CO3:NaHCO3=1:2
プレート:Nunc フルオロヌンクモジュール&プレート(#437111) (Nunc)
ブロッキング溶液:Starting BlockTM(PBS)Blocking Buffer(Pierce)
発色液:ECL Plus Western Blotting Detection System(GEヘルスケア)
洗浄液:0.15 M NaCl-0.01M PB(pH7.0)+0.05% Tween20
1次抗体:患者血清
2次抗体:PEROXIDASE-CONJUGATED GOAT IGG FRACTION TO HUMAN IGE (CATALOG#55218) (Cappel)
抗体希釈液:0.05% Tween 20を含むStarting BlockTM(PBS) Blocking Buffer
方法
【0055】
○ウエスタンブロッティング
電気泳動後、Phast systemを用いてブロッティングを行った。方法はsystemのプロトコールに準じて行った。
【0056】
ブロッティング後、ブロッキング溶液に浸して4℃、一晩インキュベートした。次に、洗浄液に浸して10 min振盪した。その後、希釈液で希釈した1次抗体に浸し、1 h浸盪を行った。10 min振盪後、希釈液で希釈した2次抗体に浸し、1 h浸盪を行った。10 min振盪後、化学発光によりバンドを確認した。
【0057】
○サンプルの抽出方法
キウイ果肉100 gにつき、0.01M PBS buffer 200 mlでホモジナイズを行った。次にホモジネート(磨砕物)を4℃、45 min、20000 gで遠心分離を行った。その後、上澄みを4℃、24 hで透析をして、凍結保存した(20)
【0058】
○電気泳動後の染色方法
1.CBB染色
電気泳動後、MilliQ水で5〜10 min洗浄し、固定液に浸して一晩浸盪した。次に、CBB染色液で30 min染色した。染色後、脱色液に浸し、バックグラウンドが抜けるまで脱色した。
【0059】
2.銀染色
電気泳動後、MilliQ水で5〜10 min洗浄し、固定液に浸した。その後、Silver Stain MS kitを用いた。方法はキットに添付されたプロトコールに準じた。
【0060】
○シークエンシング方法
ブロッティング溶液A、ブロッティング溶液B、ブロッティング溶液C、それぞれに2枚ずつ濾紙を浸した。メタノールで洗浄したPVDF膜をブロッティング溶液Cに浸した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)後、セミドライブロッティング装置の陽極側から、ブロッティング溶液Aに浸した濾紙2枚、ブロッティング溶液Bに浸した濾紙2枚、PVDF膜、SDS-PAGE後のゲル、ブロッティング溶液Cに浸した濾紙2枚を順番に重ねた。その後、陰極側を重ね合わせ、1 mA/cm2の定電流値で90 minブロッティングを行った。
PVDF膜から必要なバンドを切り出し、シークエンサーのエドマン分解により配列を決定した(図4)(21)
【0061】
○タンパク質の精製
キウイ抽出液をFPLCを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーで分析を行った。緩衝液に20 mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)を用い、流速1.0 mL/min、0.5 M NaClの濃度勾配により溶出した(20)
【0062】
○酵素処理
総タンパク質量12.5 μgの溶液に30 mM DTT 5 μlを加え、80℃、20 minインキュベートした。その後4℃で急速に冷やし、40 mM IAA 5 μlを加え、37℃、30 minインキュベートした。
【0063】
buffer C 80 μlを加えた後、0.2 μg/μl トリプシンおよびV8を5〜6 μl加え、一晩インキュベートした。反応を止める際にギ酸1 μlを加えた。
【0064】
○ペプチドマッピング
トリプシンおよびS.aureus V8プロテアーゼで消化した結果生じたペプチドを、逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離した。流速0.5 ml/min、0-100%のbuffer Bを33 mlで溶出し、214 nmの吸光度を測定して溶出物を検出した。各画分を回収し、エピトープ解析に用いた。
【0065】
○阻害ELISA法
コーティング液で希釈したアクチニジン精製標品を、96穴プレートに50 μlずつ添加し、37℃、2 hインキュベートした。プレートの洗浄を行い、ブロッキング液を1穴につき300 μl添加した後、37℃、2 hインキュベートした。ペプチドマッピングサンプル、アクチニジン精製標品、キウイ抽出液を、血清と1 hプレインキュベートを行った後に1穴につき50 μlずつ添加し、37℃、1 hインキュベートした。次に、プレートの洗浄を行い、抗体希釈液で希釈した2次抗体を1穴につき50 μl添加し、37℃、1 hインキュベートした。プレート洗浄後、基質を1穴につき50 μl添加し、37℃、2 hインキュベートした。その後465 nmにおける吸光度を測定した。反応が強かった穴に含まれるペプチドを、ナノ液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化四重極飛行時間型質量分析装置(nanoLS-ESI-Q-TOF MS)により分析を行い、質量スペクトルを得た。質量スペクトルからSWISSPROTデータベースを用いて同定を試みた。
【0066】
5.結果
5-1.ウエスタンブロッティングによるアレルギー患者血清の評価
アクチニジン含量が多く、最も市場に流通している品種ヘイワードの抽出液から陰イオン交換カラムを用いたFPLCによって、アクチニジンを精製した。グラジエントをかけてタンパク質の溶出を行ったところ、60%付近でピークが検出された。このピークを15%SDS-PAGEで分離したところ、アクチニジンであった(図5)。次に、精製標品、キウイ抽出液を用いてキウイアレルギー患者2名の血清の評価を行った(図6)。患者(I)・(II)共にキウイ抽出液にかなり強い反応が見られた。しかしアクチニジンへの反応の程度は、患者(I)が患者(II)よりも強かった。
【0067】
5-2.キウイの品種間差
キウイの品種間でタンパク質の電気泳動パターンに差があるかどうかを調べるため、10品種のキウイからそれぞれ抽出タンパク質1 μg分を15%SDS-PAGEで分離したところ、全ての品種から30 kd付近にバンドが検出された(図7)。アミノ酸シーケンサーを用いてこのバンドの配列分析を行ったところ、キウイの主要アレルゲンと報告されているアクチニジンであった。アクチニジンの含量には品種間で差が認められた。試供品種のうち、イエロー紅心、紅心、ブルーノ、アボットの4品種のアクチニジン含量はかなり低いことが分かった。
【0068】
5-3.ペプチドマッピング
アクチニジンのエピトープを解析する為、精製標品を酵素処理することにした。アミノ酸配列から適度なペプチド配列に消化できる酵素として、トリプシンおよびV8を選択し、実験を行った。タンパク質125 μg分のアクチニジン精製標品をトリプシンおよびV8で消化し、生じたペプチドを逆相カラムを用いたHPLCにより分離した結果、トリプシンで消化した精製標品からは15個、S.aureus V8 プロテアーゼで消化した精製標品からは16個の消化断片が得られた。アクチニジンのアミノ酸配列から予想できる断片数はトリプシンが11個、S.aureus V8 プロテアーゼが12個であるので、どちらも理論値よりも多い断片が得られたことになる。
【0069】
5-4.阻害ELISA法によるエピトープ解析
ウエスタンブロッティングによる評価の結果から、患者(I)の血清を用いて阻害ELISA法を行った。コーティングには4 μg/ml,アクチニジン精製標品、サンプルには酵素消化した断片、0.001 μg〜100 μg,アクチニジン精製標品、200 μg,キウイ抽出液を使用した結果、いくつかのS.aureus V8 プロテアーゼ消化断片に反応が見られた(図8)。この断片にエピトープが存在すると判断された。質量分析装置を用いてこのペプチド断片の配列を分析したところ、アクチニジンの内部アミノ酸配列の「N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E」をもったペプチドであることが分かった。
【0070】
報告されているアクチニジンの立体構造とエピトープ部位を照合すると、エピトープは分子表面に存在することが分かった(図9)。また、アクチニジンの疎親水性を調べてみると、エピトープは親水性の領域であることが推奨された(図10)。このことから、摂取したアクチニジンのエピトープは消化酵素によって切断遊離され、小腸から吸収されやすい特性をもっていると考えられた。
【0071】
還元・非還元のアクチニジン精製標品はどちらも強い反応が見られたが還元処理をした精製標品の方が若干数値が低くなった(図11)。このことから、立体構造が変化することでIgE抗体とエピトープ部位の結合能が低くなるが、完全には結合能は失われないことが明らかになった。
【0072】
6.考察
アクチニジン含量が多く、最も市場に流通している品種であるヘイワードの抽出液から陰イオン交換カラムを用いたFPLCによって、アクチニジンを精製した。この精製標品を用いてキウイアレルギー患者2名の血清の評価をウエスタンブロッティングによって行った。その結果、2検体ともキウイ抽出液に強い反応が得られたが、患者(I)がアクチニジンにも強い反応が見られたにも関わらず患者(II)は反応が弱かった。このことから、2名ともキウイアレルギーであることは判明しているが、アレルゲンが異なることが考えられた。患者(I)はアクチニジンがアレルゲンであるが患者(II)はアクチニジンではないタンパク質もアレルゲンになっている可能性が考えられる。現在報告されているキウイアレルゲンはアクチニジンの他に、タウマチン様 タンパク質(66kd)、11kd タンパク質等がある(22)。患者(II)ではこれらがアレルゲンになっている可能性がある。
【0073】
キウイの品種間差を調べるため、グリーンキウイ・ゴールドキウイ合わせて10品種からそれぞれ同じ条件で抽出液を精製し、タンパク質量1 μg分をSDS-PAGEで検討してみた。これまでアクチニジンはグリーンキウイ特有のアレルゲンだと報告されてきた。つまり、ゴールドキウイではアクチニジンが検出されない、または含有量が少ないと予想できた(23),(24)。ところが、今回の実験ではゴールドキウイからもアクチニジンが検出された。なかにはグリーンキウイよりも含有量が多いゴールドキウイの品種もあった。このことからアクチニジンはグリーンキウイだけではなく、ゴールドキウイのアレルゲンにもなっていることが分かる。アクチニジン含量にはかなり大きな品種間差が認められた。このことは、育種によってアレルゲン低減キウイを作出できることを示唆している。
【0074】
アクチニジンのエピトープを解析するために、精製標品をトリプシン、S.aureusu V8プロテアーゼにより消化させ、逆相カラムを用いたHPLCによりマッピングを行い、各消化断片を阻害ELISA法により検討したところ、いくつかのV8消化断片が反応した。この断片をnanoLS-ESI-Q-TOF MSを用いて解析を行ったところ、アクチニジンの内部アミノ酸配列であることが分かった。トリプシン消化断片で反応が得られなかったことに関しては、このエピトープの途中部分でペプチドが切断されてしまったせいだと考えられる。アクチニジンのホモロジー検索をしたところ、同じシステインプロテアーゼである、パパイヤのアレルゲンと報告されているパパインにもこの配列が保存されていることが分かった(表4)。このことからパパインにおいても、この配列がエピトープになりうる可能性もある。
【0075】
以上のことから、遺伝子組み換えなどによりエピトープを除去したキウイを作出する、あるいはエピトープの構造を変えれば、キウイアレルギー患者もキウイを食べることができるようになると考えられる。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0076】
7.参考文献
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【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のペプチドは、アレルギー(例えば、キウイアレルギー)疾患の治療、予防、診断などの医療分野での用途が期待できる。
また、本発明のペプチドに含まれるエピトープ(B細胞エピトープ)を含まないアクチニジンは、B細胞エピトープを含まずにアナジーを誘導するようなT細胞エピトープを含むペプチドを経口抗原感作に用いて免疫学的寛容を誘導する治療法に用いる免疫療法剤としての利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】アレルギーのメカニズム 肥満細胞や好塩基球の表面のIgE抗体がアレルゲンと反応することによって、肥満細胞内の顆粒に刺激が与えられる。その刺激によって肥満細胞は顆粒に含まれる化学伝達物質であるヒスタミンを細胞外に遊離する。遊離されたヒスタミンは粘膜組織などに放出され、かゆみ、鼻水,喘息、涙のようなアレルギー症状を引き起こす。
【図2】食物アレルギーのメカニズム 食物アレルギーはI型アレルギーに分類される。 ヒトでは、食べられた食物は消化管によってタンパク質からペプチド、アミノ酸に消化され腸管を介して、吸収される。吸収されたペプチドのうちマクロファージや好中球によってエピトープとなる部分がTリンパ球に提示される。提示されたエピトープによって活性化したT細胞はB細胞に働きかけ抗体のクラススイッチを起こす。肥満細胞に結合しているIgEは異物と認識されたペプチドと結合すると肥満細胞内に存在するヒスタミンなどを細胞から化学伝達物質を遊離しアレルギーを発症する。
【図3】果物アレルギー発症人数 近年報告が増えている新しい食物アレルギーとして口腔内アレルギー症候群(OAS)という症状があり、この症状は幼児から成人に認められ、原因抗原として果物の報告がある。神奈川県衛生研究所アレルギープロジェクトの板垣等によって果物に対するアレルギーの割合を調べたところキウイの患者が多かった。
【図4】シークエンサーによるアミノ酸配列分析の概要 今回実験に使用したペプチドの配列を同定するのに用いたペプチドシークエンサーの原理。エドマン法を用いてタンパク質のN末端から順番に1つずつアミノ酸を切り出す。切り出されたアミノ酸をHPLCによって分離し、UVによって溶出時間を計測し、ピーク時間から含まれているアミノ酸を同定することができる。
【図5】陰イオン交換カラムを用いたFPLCによるアクチニジンの精製キウイをホモジナイズし、果実中に含まれるタンパク質は陰イオン交換カラムを用いて精製分離した。塩濃度の勾配により、タンパク質を徐々に溶出し、UVで検出しピークの現れた部分を、15%アクリルアミドゲルによって分離し、そのゲルをクマシーブリリアントグリーンによって染色し、分離されたタンパク質を可視化した。その結果、アクチニジンを精製することができた。この精製されたアクチニジンを用いて実験を行うことにした。
【図6】キウイアクチニジンと患者血清との反応性精製されたアクチニジンとキウイ抽出液を用いて、キウイ果実中に含まれるタンパク質およびアクチニジンに対して、患者血清が反応するかどうか調べた。その結果、アクチニジンと反応していることを確かめることができた。
【図7】キウイ抽出液10種の15%SDS-PAGEキウイ果実中に含まれているタンパク質に品種間の差異があるのかどうか調べた。すべての品種において30kd付近にバンドを検出することができた。このバンドの配列解析を行ったところ、キウイの主要アレルゲンであるアクチニジンの配列であることがわかった。品種間で含量に差はみられた。 流通しているキウイのグリーンキウイとゴールドキウイでともにアクチニジンのが存在が認められた。
【図8】V8消化断片とELISA反応性の比較精製したアクチニジンは患者血清と反応することがわかったので、プロテアーゼによりアクチニジンを消化切断し、高速液体クロマトグラフィーによって分離した。分離した各画分と患者血清を反応させELISAを用いて、反応を確認し、エピトープ部位を探索することにした。その結果エピトープの候補となるペプチド画分を得ることができた。
【図9】アクチニジンの立体構造得られたペプチド画分を質量分析装置により解析した結果、アクチニジンに含まれる配列を特定することができた。この部分がエピトープ部位であると考えられる。この配列は、既に解析が終了している立体構造に当てはめてみると、表面部位に存在していることが判明した。
【図10】アクチニジンの疎親水性プロット得られたエピトープ配列は、疎親水性プロットを計算した結果、親水性であることが推定された。腸管から吸収されやすい構造を持っていると考えられる。
【図11】立体構造の変化によるELISA反応性の違い還元剤を用いて、血清中に含まれるIgEとの結合に立体構造が必要であるかどうかを確かめた。その結果、還元剤を用いて還元処理を行った結果、血清の反応性は若干下がった。立体構造の変化は結合能は低くなるが、完全に失うものではないことが明らかとなった。
【配列表フリーテキスト】
【0079】
<配列番号1>
配列番号1は、ペプチドE5のアミノ酸配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、ペプチドE5のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を示す。
<配列番号3>
配列番号3は、キウイアクチニジンをコードするヌクレオチド配列を示す。
<配列番号4>
配列番号4は、キウイアクチニジンのアミノ酸配列を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド
(b) N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗原活性を有するペプチド
【請求項2】
N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列中の連続する少なくとも5個以上のアミノ酸の配列からなり、かつ抗原活性を有するペプチド。
【請求項3】
N-Y-P-Y-T-A-Q-D-G-E-C-N-V-D-L-Q-N-E-K-Y-V-T-I-D-T-Y-E(配列番号1)で表されるアミノ酸配列中の連続する少なくとも5個以上のアミノ酸の配列を含み、かつ抗原活性を有するアミノ酸数5〜100個のペプチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドを含む、アレルギー疾患の診断薬。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドを含む、アレルギー疾患の診断キット。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のペプチド、請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドに対して誘導された抗体又は請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドをコードするDNAを含む、アレルギー疾患の予防及び/又は治療薬。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドのアミノ酸配列と同一の配列からなる内部アミノ酸配列を含まないアクチニジン。
【請求項8】
請求項7記載のアクチニジンを含む、アレルギー疾患の予防及び/又は治療薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−13133(P2009−13133A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178919(P2007−178919)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度文部科学省都市エリア産学官連携促進事業、新技術システムを用いた疾患細胞動態プロテオミクスの応用
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【出願人】(000192903)神奈川県 (65)
【Fターム(参考)】