説明

キサンテン系半導体組成物

【課題】高移動度で環境安定性が高く塗布形成可能な有機半導体を提供する。
【解決手段】特定構造の縮合キサンテンコアを含む低分子半導体化合物を用いる。また、ポリマーバインダーと当該低分子半導体とを含む組成物も用いられる。この組成物から作られる半導体層は、空気中で非常に安定であり、高い移動性を有する。これらの半導体組成物は、電子機器(例えば、薄膜トランジスタ(TFT))で、半導体層のような層を作成するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プリンテッド有機エレクトロニクス(POE)の製造は、このようなデバイスのコストが非常に安く、溶液で処理可能であり、機械的耐久性および構造の可とう性を有しているため、非常に興味深い。POEの一種であるプリンテッド薄膜トランジスタ(TFT)は、例えば、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード、電子ペーパー、無線自動識別タグ(RFID)、光電池などの用途向けのケイ素技術に代わる有望で低コストの代替技術として、近年非常に関心が高まっている。
【0002】
TFTは、一般的に、支持基材と、3種類の導電性電極(ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極)と、チャネル半導体層と、ゲート電極を半導体層から分離している電気絶縁性のゲート誘電層とで構成されている。既知のTFTの性能を改良することが望ましい。性能は、移動度と、オン/オフ比の少なくとも2つの性質によって測定することができる。移動度は、単位cm/V・SECで測定され、移動度が高いことが望ましい。オン/オフ比は、オフ状態でTFTを通って漏れる電流の量と、オン状態でTFTを流れる電流の比である。典型的には、オン/オフ比が大きい方が望ましい。
【0003】
有機薄膜トランジスタ(OTFT)は、無線自動識別(RFID)タグおよびディスプレイ(例えば、標識、リーダ、液晶ディスプレイ)のバックプレーンスイッチング回路のような、高いスイッチング速度および/または高密度が必須ではない用途で用いることができる。また、OTFTは、物理的に小型であり、軽量であり、可とう性であるといった、魅力的な機械特性を有している。
【0004】
OTFTの半導体層は、スピンコーティング、溶液キャスト法、浸漬コーティング、ステンシル/スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、マイクロコンタクトプリントなどのような、低コストの溶液系パターニングおよび析出技術を用いて製造することができる。薄膜トランジスタ回路の製造において、これらの溶液系プロセスの使用を可能にするために、溶液で処理可能な材料が必要とされている。しかし、溶液処理によって作られる有機半導体またはポリマー半導体は、溶解度が制限され、空気に感受性であり、特に、電界効果移動度が低い傾向がある。この悪い性能は、低分子の膜形成性が悪いことに起因するものであろう。
【0005】
光起電デバイスに用いるための半導体ポリマーおよび関連する材料の開発は進歩しているが、(1)これらのデバイスの性能を改良し、(2)非毒性溶媒に良好な溶解度を維持し、(3)良好な環境安定性を有するように1つ以上の材料を加工する必要性が存在する。本出願は、この必要性と、さらに関連する利点を満たすように探求された。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、従来の半導体と比べて利点を与え、式(I)の低分子半導体を開示しており、
【化1】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、シアノ基、ハロゲン原子から選択され、nは、1または2であり、Xは、独立して、Sまたは
【化2】

である。
【0007】
いくつかの実施形態では、本明細書には、ポリマーバインダーと、式(I)の低分子半導体とを含む半導体組成物が記載されており、
【化3】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、シアノ基、ハロゲン原子から選択され、nは、1または2であり、Xは、独立して、Sまたは
【化4】

である。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書には、半導体層を含み、この半導体層が式(I)の低分子半導体を含む、電子機器が記載されており、
【化5】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、シアノ基、ハロゲン原子から選択され、nは、1または2であり、Xは、独立して、Sまたは
【化6】

である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本開示の代表的な種々の実施形態を示し、本明細書に記載されている式を有する低分子半導体は、薄膜トランジスタ(TFT)構造の半導体材料として選択される。
【図2】図2は、本開示の代表的な種々の実施形態を示し、本明細書に記載されている式を有する低分子半導体は、薄膜トランジスタ(TFT)構造の半導体材料として選択される。
【図3】図3は、2,8−ビス(5−ヘキシルチオフェン−2−イル)チエノ[3’,2’:2,3]クロメノ[6,5,4−def]チエノ[3,2−b]クロメンの平衡幾何構造およびシミュレーションされた結晶構造のカラーモデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、本明細書に開示されているような縮合キサンテンコアを含む低分子半導体化合物に関する。ポリマーバインダーと低分子半導体とを含む組成物も開示されている。この組成物から作られる半導体層は、空気中で非常に安定であり、高い移動性を有する。これらの半導体組成物は、電子機器(例えば、薄膜トランジスタ(TFT))で、半導体層のような層を作成するのに有用である。
【0011】
キサンテン系半導体化合物は、有機薄膜トランジスタおよび有機ポリマー太陽電池のための重要な材料である。「キサンテン系」は、本明細書では、少なくとも1個のオキサアントラセンサブユニットまたは少なくとも1個のチエノクロメンサブユニットを半導体コア中に含む材料であると定義される。オキサアントラセンおよびチエノクロメンの化学式を以下に示す。
【化7】

この材料は可溶性であり(製造で使用しやすい)、デバイス製造中に熱によるアニーリング工程を必要とせずに、TFTで高い電界効果移動度を示す。
【0012】
キサンテンコア自体は、有機溶媒への溶解度が低い。しかし、ある程度改変し、可溶性のキサンテン系半導体化合物としては、式(I)の構造を有する低分子半導体が挙げられ、
【化8】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、ヘテロ原子(例えば、ハロゲン原子)から選択され、nは、1または2であり、Xは、独立して、Sまたは
【化9】

である。句「低分子」は、本明細書で、分子量が約1500ダルトン未満、例えば、約1000ダルトン未満の化合物であると定義される。
【0013】
用語「置換」は、記載されている基の上にある少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン、−CN、−NO、−COOH、−SOHのような別の官能基で置換されていることを指す。例示的な置換アルキル基は、アルキル基の1個以上の水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、ヨウ素、臭素)と置き換わったペルハロアルキル基である。上述の官能基以外に、アリール基は、アルキル、アルコキシまたはアルキルチオで置換されていてもよい。例示的な置換アリール基としては、プロピルフェニルおよびプロポキシフェニルが挙げられる。
【0014】
用語「アルキル」は、完全に炭素原子と水素原子で構成され、完全に飽和であり、式C2n+1を有する基を指す。アルキル基は、直鎖、分枝鎖、または環状であってもよく、炭素原子を約3〜約50個、約4〜約40個、約5〜約36個、約8〜約24個含んでいる。
【0015】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、この二重結合がアリール構造またはヘテロアリール構造の一部分ではない基を指す。アルケニル基は、直鎖、分枝鎖または環状であってもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい。例示的なアルケニル基としては、2−フェニルエテニルまたは2−ナフチルエテニルのようなアリールアルケニル基;2−チエニルエテニルのようなヘテロアリールアルケニル基が挙げられる。
【0016】
用語「エチニル」は、完全に炭素原子と水素原子とで構成され、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む基を指す。
【0017】
用語「アリール」は、完全に炭素原子と水素原子とで構成されている芳香族基を指す。アリールは、ある数値範囲の炭素原子と組み合わせて記載される場合、置換された芳香族置換基を含むと解釈するべきではない。例えば、句「炭素原子を6〜10個含むアリール」は、フェニル基(炭素原子6個)またはナフチル基(炭素原子10個)のみを指すと解釈すべきであり、メチルフェニル基(炭素原子7個)を含むと解釈すべきではない。しかし、アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲンのようなさらなる置換基で置換されていてもよい。
【0018】
用語「ヘテロアリール」は、炭素原子と、水素原子と、1個以上のヘテロ原子とで構成される芳香族基を指す。炭素原子およびヘテロ原子は、環状の環または基の骨格に存在する。ヘテロ原子は、O、S、Nから選択される。例示的なヘテロアリール基としては、チエニルおよびピリジニルが挙げられる。
【0019】
用語「アルコキシ」は、酸素原子に結合したアルキル基、例えば−O−C2n+1を指し、nは、1〜30、3〜24、3〜16、6〜16である。
【0020】
用語「アルキルチオ」は、硫黄原子に接続したアルキル基、すなわち−S−C2n+1を指し、nは、1〜30、3〜24、3〜16、6〜16である。
【0021】
用語「アルキルシリル」は、3個のアルキル基が接続した四価のケイ素原子で構成される基、すなわち−Si(R)を指し、Rは、定義されているようなアルキル基である。3個のアルキル基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0022】
一般的に、アルキル基およびアルコキシ基は、それぞれ独立して、1〜30個の炭素原子を含む。同様に、アリール基およびヘテロアリール基は、独立して、4〜30個の炭素原子を含む。
【0023】
上述のように、同じ分子中のXは、同じであっても異なっていてもよい。特定の実施形態では、式(I)のXは、硫黄原子(S)または
【化10】

であってもよく、nは、1または2であってもよい。上述の様式でXを定義することによって、キサンテンコアを含む低分子半導体は、チオフェン、ベンゼンまたはナフタレンと縮合していてもよい。特定の例としては、式(I−a)〜(I−d)で示されるものが挙げられ、
【化11】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、ハロゲン原子から選択される。
【0024】
また、縮合キサンテンコアを含む低分子半導体化合物は、式(II)の構造を有する化合物によってあらわされてもよく、
【化12】

式中、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、ハロゲン原子から選択され、mは、1〜10、1〜5、1〜3である。
【0025】
いくつかの実施形態では、低分子半導体は、バンドギャップが約1.6〜約3.0eVである。この大きなバンドギャップは、典型的には、ペンタセン系誘導体と比較した場合、この低分子半導体が空気中で良好な安定性を有することを示す。低分子半導体は、結晶構造または液晶構造を有している。
【0026】
このキサンテン半導体コアは、例えば、パラジウム触媒によるクロスカップリング反応を用い、ジヒドロキシナフタレン化合物とジハロゲン化アレーン化合物とをカップリングすることによって合成することができる。ジヒドロキシナフタレン化合物の例は、例えば、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジクロロ−1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヘキシル−1,5−ジヒドロキシナフタレンである。
【0027】
ハロゲン化アレーン化合物の例としては、式(III)であらわされる化合物が挙げられ、
【化13】

式中、Xは、硫黄(S)または
【化14】

であり;YおよびY’は、水素原子または縮合した芳香族環、例えば、縮合したベンゼン環または縮合したチオフェン環であり、Zは、独立して、ハロゲン原子、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素である。ハロゲン化アレーン化合物の特定の例としては、限定されないが、1,2−ジブロモベンゼン、1,2−ジブロモ−5,6−ジメチルベンゼン、3,4−ジブロモトルエン、2,3−ジブロモナフタレン、2,3−ジブロモ−6,7−ジシアノナフタレン、2,3−ジブロモチオフェン、2,3−ジブロモ−5−ヘキシルチオフェン、2,3−ジブロモ[1]ベンゾチオフェンが挙げられる。
【0028】
キサンテン半導体コアは、パラジウムクロスカップリング技術を用いて合成されてもよい。これらの技術の例としては、パラジウム触媒によるHeckオキシ−アリール化反応が挙げられ、この反応では、置換または非置換の1,5−ジヒドロキシナフタレン化合物およびジハロゲン化芳香族化合物で構成される混合物を、パラジウム触媒および溶媒存在下、塩基で処理する。塩基の例としては、アルカリ金属塩基、例えば、例えば、KCO、CsCO、KOt−Bu、KF、CsF、KPOが挙げられる。パラジウム触媒の例としては、PdOAc:PPh、PdOAc:Pt−Bu、Pd(PPh、Pd(PPhClが挙げられる。例示的な溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、トルエン、キシレン、ジオキサンであってもよい。反応物は、典型的には、約100℃よりも高い温度まで、例えば、約150℃よりも高い温度まで、1時間よりも長い時間、例えば、約1時間〜約24時間まで、約1時間〜約12時間加熱される。本明細書で記載される半導体は、Y.Teraoら、Palladium−Catalyzed Cross−Coupling of Benzyl Ketones and α,β−Unsaturated Carbonyl and Phenolic Compounds with o−Dibromoarenes to Produce Cyclic Products、BULL.CHEM.SOC.JPN.Vol.72、pp.2345−2350(1999)および米国特許出願第12/689,613号に記載されている手順を用いて調製することができる。
【0029】
半導体コアのためのこの反応は、以下の様式で示されてもよく、
【化15】

式中、Xは、硫黄(S)または
【化16】

であり;YおよびY’は、水素原子または縮合した芳香族環、例えば、縮合したベンゼン環または縮合したチオフェン環であり、Zは、独立して、ハロゲン原子、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素である。
【0030】
本明細書に記載される低分子半導体は、ベンゼンと縮合したキサンテンコアまたはチオフェンと縮合したキサンテンコアをハロゲン化することによって調製することができる。適切なハロゲン化試薬としては、臭素およびN−ブロモスクシンイミドが挙げられる。次いで、ハロゲン化キサンテン化合物を置換または非置換のアリールホウ酸(またはエステル)または置換または非置換のヘテロアリールホウ酸(またはエステル)とカップリングする。アリールホウ酸の例としては、フェニルホウ酸、4−プロピルフェニルホウ酸が挙げられる。ヘテロアリールホウ酸の例としては、2−チエニルホウ酸および5−ヘキシル−2−チエニルホウ酸が挙げられる。このような反応は、一般的に「鈴木カップリング」と呼ばれる。
【0031】
また、本明細書で記載される半導体は、他のアリール−アリールカップリング反応、例えば、山本カップリング、Stilleカップリング、Ullmanカップリング、またはHeckカップリングによっても調製することができる。適切なクロスカップリング反応の例は、米国特許公開第2009/0179198号に記載されている。他のクロスカップリング反応は、Houら、Bandgap and Molecular Energy Level Control of Conjugated Polymer Photovoltaic Materials Based on Benzo[1,2−b:4,5−b’]dithiophene、MACROMOLECULES、2008、41、6012−6018、Ustaら、Air−Stable、Solution−Processable n−Channel and Ambipolar Semiconductors For Thin−Film Transistors Based one the Indenofluorenebis(dicyanovinylene)Core、J.AM.CHEM.SOC.2008、130(27)8580−8581に記載されている。
【0032】
チオフェンと縮合したキサンテンコアを置換するための反応は、以下の様式で示されてもよく、
【化17】

式中、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、ハロゲン原子から選択され、nは、約1〜約10、1〜約5、1〜約3の整数であり、Mは、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化マグネシウム、SnMe、SnBu、B(OH)、または式
【化18】

を有する環状ホウ酸エステルである。
【0033】
低分子半導体自体は、膜形成性は低い場合がある。したがって、半導体組成物は、式(I)の低分子半導体と、ポリマーバインダーとを含むように作られてもよい。これによって均一な膜が達成され、顕著に優れたデバイス性能が得られる。ポリマーバインダーは、低分子半導体が中に分散したマトリックスを形成すると考えることができる。
【0034】
半導体組成物のためのポリマーバインダーとして、任意の適切なポリマーを用いてもよい。ある種の実施形態では、ポリマーは、アモルファスポリマーである。アモルファスポリマーは、ガラス転移温度が、低分子半導体の融点よりも低くてもよい。他の実施形態では、アモルファスポリマーは、ガラス転移温度が、低分子半導体の融点よりも高い。いくつかの実施形態では、ポリマーは、室温、60Hzで測定する場合、誘電定数が4.5未満、3.5未満である(3.0未満を含む)。いくつかの実施形態では、ポリマーは、C、H、F、ClまたはN原子のみを含むポリマーから選択される。ある種の実施形態では、ポリマーは、低極性ポリマー、例えば、極性基を含まない炭化水素ポリマーまたはフルオロカーボンポリマーである。例えば、ポリスチレンは、アモルファスポリマーであり、誘電定数は約2.6である。他の低極性ポリマーのリストとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる。フルオロポリアリールエーテル、ポリ(p−キシリレン)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(2−メチル−1,3−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸シクロヘキシル)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(ビニルシクロヘキサン)、ポリフェニレン、ポリ−p−フェニルビニリデン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイソブチレン、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ[1,1−(2−メチルプロパン)ビス−(4−フェニル)カーボネート]、ポリ(α−α−α’−α’テトラフルオロ−p−キシリレン)、フッ素化ポリイミド、ポリ(エチレン/テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレン/クロロトリフルオロエチレン)、フッ素化エチレン/プロピレンコポリマー、ポリ(スチレン−コ−α−メチルスチレン)、ポリ(スチレン/ブタジエン)、ポリ(スチレン/2,4−ジメチルスチレン)、CYTOP、ポリ(プロピレン−コ−1−ブテン)、ポリ(スチレン−コ−ビニルトルエン)、ポリ(スチレン−ブロック−ブタジエン−ブロック−スチレン)、ポリ(スチレン−ブロック−イソペン−ブロック−スチレン)、テルペン樹脂、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリカルバゾール、ポリトリアリールアミンなどが挙げられる。
【0035】
半導体組成物に適した例示的なポリマーバインダーとしては、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン−コ−ビニルトルエン)、ポリ(スチレン−ブロック−ブタジエン−ブロック−スチレン)、ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−スチレン)、ポリ(ビニルトルエン)、テルペン樹脂、ポリ(スチレン−コ−2,4−ジメチルスチレン)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(スチレン−コ−α−メチルスチレン)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリカルバゾール、ポリトリアリールアミン、またはポリ(N−ビニルカルバゾール)が挙げられる。
【0036】
スチレン系ポリマーは、特に、適切なポリマーバインダーであると考えられる。スチレン系ポリマーは、式(IV)のスチレンモノマーから誘導される繰り返し単位を含み、
【化19】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素、ハロゲン、C〜C20アルキルであり;nは、0〜5の整数である。スチレンモノマーは、スチレン(R、R、Rは、すべて水素であり、n=0)、α−メチルスチレン(Rはメチルであり、RおよびRは、水素であり、n=0)、または4−メチルスチレン(R、R、Rは、すべて水素であり、n=1、Rは、4位のメチルである)。
【0037】
特定の実施形態では、スチレン系ポリマーは、重量平均分子量が、約40,000〜約2,000,000、約50,000〜約1,000,000、約50,000〜約500,000、約75,000〜約250,000であってもよい。さらに、低分子半導体とともに含まれる場合、低分子半導体とポリマーバインダーとの重量比は、5:1〜2:3、3:1〜5:6、2:1〜1:1であってもよい。
【0038】
ポリマーバインダーは、半導体組成物中に、約0.1〜約10%、約0.1〜約2%、約0.5〜約2%、約0.5〜約1%の量で存在していてもよい。
【0039】
半導体組成物は、一般的なコーティング溶媒に可溶性であるか、実質的に可溶性であり、したがって、有機溶媒中に材料を含む半導体溶液を形成していてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、低分子半導体および/またはポリマーバインダーは、クロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロベンゼン、ジクロロエタンなどの塩基溶媒;アルコールおよびジオール、例えば、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘキサンジオールなど;炭化水素または芳香族炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど;ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど;酢酸エステル、例えば、酢酸エチル;ピリジン、テトラヒドロフランなどのような溶媒への溶解度が少なくとも約0.1重量%、より特定的には、約0.3重量%〜約10重量%、または約50重量%であってもよい。さらに、本明細書に示される式の低分子半導体は、従来の4プローブによる導電性測定によって決定した場合、例えば、約10−9S/cm〜約10−4S/cm、より特定的には、約10−8S/cm〜約10−5S/cmの安定な導電性を与える。
【0040】
溶媒は、半導体溶液中に、半導体溶液の重量を基準として、約50〜約99.9重量%、約80〜約99.5重量%、約90〜約99重量%、約95〜約99重量%の量で存在していてもよい。
【0041】
半導体溶液を用いたプリンテッド有機エレクトロニクス(POE)デバイスの製造は、任意の適切な液体堆積技術を用い、基材の上に他の1つ以上の任意要素の層を作成する前、または作成した後の任意の適切な時期に、半導体溶液を基材に堆積させることによって行われてもよい。したがって、半導体溶液を基材の上に液体堆積させることは、基材の上で行われてもよく、層状材料をすでに含む基材(例えば、薄膜トランジスタの半導体層および/または絶縁層)の上で行われてもよい。
【0042】
句「液体堆積技術」は、例えば、液体プロセス(例えば、液体コーティング技術または印刷技術)を用いた組成物の堆積を指し、ここで、液体は、低分子半導体が溶媒に均一または不均一に分散した分散物である。さらに、半導体溶液を、基材の上で任意の模様になるように堆積してもよい。
【0043】
液体コーティングプロセスの例としては、例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、浸漬コーティングなどが挙げられる。印刷技術の例としては、例えば、リソグラフィーまたはオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソグラフィー、スクリーン印刷、ステンシル印刷、インクジェット印刷、スタンピング(例えば、マイクロコンタクトプリント)などが挙げられる。いくつかの実施形態では、半導体溶液の液体堆積によって、厚みが約5nm〜約5mm、約10nm〜約1000μm、約100nm〜約500μm、約1μm〜約100μm、約5μm〜約25μmの低分子半導体の層を堆積させる。堆積した半導体溶液は、この段階で、感知できるほどの導電性を示していてもよく、示していなくてもよい。
【0044】
半導体溶液を、例えば、約150℃以下、または約130℃以下、例えば、約50℃〜約150℃、約50℃〜約130℃、約50℃〜約80℃、約100℃〜約130℃、約100℃〜約120℃の温度まで加熱し、半導体溶液から溶媒を除去し、基材の上に式(1)の低分子半導体を含む層を形成する。加熱温度は、基材(単一層の基材であるか、複数層の基材であるかによらない)の上にすでに堆積している層の性質を悪い方向に変えない温度であり、加熱温度は、堆積後の温度と関連する。
【0045】
加熱は、例えば、1秒〜約10時間、約10秒〜1時間行ってもよい。加熱は、空気中、不活性大気中(例えば、窒素下またはアルゴン下)、または還元雰囲気(例えば、1〜約20体積%の水素を含む窒素下)で行ってもよい。また、加熱は、常気圧で行われてもよく、減圧状態(例えば、約1000mbar〜約0.01mbar)で行われてもよい。
【0046】
本明細書で用いられる場合、用語「加熱する」は、基材から溶媒を除去するのに十分なエネルギーを与えることができる任意の技術を包含する。加熱技術の例としては、熱による加熱(例えば、ホットプレート、乾燥器、バーナー)、赤外線(「IR」)照射、レーザー光線、マイクロ波照射、またはUV照射、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
式(1)の低分子半導体を半導体層に堆積させ、薄膜トランジスタ(TFT)、ダイオードおよび光起電デバイス、例えば、ポリマー太陽電池(PSC)のような電子機器で用いてもよい。電子機器での半導体の使用は、本明細書で薄膜トランジスタを用いて示される。
【0048】
いくつかの実施形態では、
(a)ゲート誘電層と;
(b)ゲート電極と;
(c)半導体層と;
(d)ソース電極と;
(e)ドレイン電極と;
(f)基材層とを備え、
ゲート誘電層、ゲート電極、半導体層、ソース電極、ドレイン電極、基材層は、ゲート電極と半導体層が両方ともゲート誘電層に接しており、ソース電極とドレイン電極が両方とも半導体層に接しており、半導体層が、本明細書に記載されている低分子半導体化合物で構成されている、薄膜トランジスタが提供される。
【0049】
基材層は、一般的に、目的とする用途によって、ケイ素、ガラス板、プラスチック膜またはシートなどを含む材料で構成されているケイ素材料であってもよい。構造的に可とう性の機器の場合、プラスチック基材(例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドのシートなど)を選択してもよい。基材の厚みは、例えば、約10μm〜約100mmであってもよく、特定の厚みは、特に、可とう性プラスチック基板の場合には、約50〜約100μm、ガラスまたはケイ素のような剛性基板の場合には、約1〜約10mmである。
【0050】
ゲート誘電層は、ゲート電極をソース電極およびドレイン電極と分離し、半導体層と接していてもよく、一般的に、無機材料の膜、有機材料の膜、または有機−無機コンポジットの膜であってもよい。ゲート誘電層の厚みは、例えば、約10nm〜約1μmであってもよく、特定の厚みは、約100nm〜約500nmである。誘電層として適する無機材料の例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムジルコニウムなどが挙げられる。誘電層のための有機ポリマーの例としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)、エポキシ樹脂などが挙げられる。無機−有機コンポジット材料の例としては、ポリマー(例えば、ポリエステル、ポリイミド、エポキシ樹脂など)に分散したナノサイズの金属酸化物粒子が挙げられる。ゲート誘電層は、一般的に、使用する誘電材料の誘電定数に依存して、厚みが約50nm〜約500nmである。より特定的には、誘電材料は、誘電定数が、例えば、少なくとも約3であり、そのため、約300nmの適切な厚みの誘電層は、例えば、約10−9〜約10−7F/cmの望ましいキャパシタンスを与えることができる。
【0051】
本開示では、誘電層は、表面改質剤で表面が改質されていてもよい。表面改質剤の例としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、フェニルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン(OTS−8)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS−18)のような有機シランが挙げられる。半導体層は、この改質された誘電層表面に直接接していてもよい。完全に接触していてもよいし、部分的に接触していてもよい。この表面改質は、誘電層と半導体層との間に界面層を作成することであると考えることもできる。
【0052】
誘電層とソース/ドレイン電極との間にあり、これらと接触しているのは、例えば、本明細書に示されている式を有する低分子半導体を含む活性半導体層であり、この層の厚みは、一般的に、例えば、約5nm〜約1μm、約5nm〜約500nm、または約40nm〜約100nmである。この層は、一般的に、本開示の低分子半導体溶液のスピンコーティング、キャスト法、スクリーン印刷、スタンプ印刷、またはジェット印刷のような溶液プロセスによって製造されてもよい。特定の構造では、半導体層は、ソース電極およびドレイン電極を完全に覆っている。
【0053】
ゲート電極は、金属薄膜、導電性ポリマー膜、導電性インクまたは導電性ペーストから作られる導電性膜、または基材自体(例えば、高濃度にドープしたケイ素)であってもよい。ゲート電極材料の例としては、金、銀、クロム、インジウムスズ酸化物、導電性ポリマー、例えば、ポリスチレンスルホネートがドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS/PEDOT)、カーボンブラック/グラファイトまたはコロイド状銀分散物がポリマーバインダー中に含まれる導電性インク/ペースト(例えば、Acheson Colloids Companyから入手可能なElectrodag)、Noelle Industriesから入手可能な、銀が充填された導電性熱可塑性インクなどが挙げられる。ゲート層は、減圧エバポレーション、金属または導電性金属酸化物のスパッタリング、ポリマー溶液または導電性インクからのコーティング、または、スピンコーティング、キャスト法、または印刷による分散物によって調製されてもよい。ゲート電極層の厚みは、例えば、約10nm〜約10μm、特定の厚みは、金属膜の場合には、例えば、約10〜約200nm、ポリマー導電体の場合、約1〜約10μmであってもよい。
【0054】
ソース電極層およびドレイン電極層は、半導体層に対する接触抵抗が低い材料から製造することができる。ソース電極およびドレイン電極として用いるのに適した、典型的な材料としては、金、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマー、導電性インクのようなゲート電極の材料が挙げられる。この層の典型的な厚みは、例えば、約40nm〜約1μmであり、より特定的な厚みは、約100〜約400nmであってもよい。TFTデバイスは、幅がWで長さがLの半導体チャネルを含む。半導体チャネルの幅は、例えば、約10μm〜約5mmであってもよく、特定のチャネルの幅は、約100μm〜約1mmである。半導体チャネルの長さは、例えば、約1μm〜約1mmであり、より特定的なチャネルの長さは、約5μm〜約100μmである。
【0055】
ソース電極は、接地されており、ゲート電極に、一般的に、例えば、約+10ボルト〜約−80ボルトの電圧がかけられる場合、半導体チャネルを通って移動する電荷キャリアを集めるために、一般的に、例えば、約0ボルト〜約−80ボルトのバイアス電圧がドレイン電極にかけられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書の式の低分子半導体化合物を含む低分子半導体層で構成される薄膜トランジスタのアニーリング温度は、約150℃以下、約125℃以下、または約100℃以下である。
【0057】
薄膜トランジスタの性能は、移動度によって測定することができる。移動度は、単位cm/V・secで測定され、移動度が大きいことが望ましい。本開示の半導体組成物を用いて得られたTFTは、電界効果移動度が、少なくとも0.01cm/V・secであってもよい。本開示のTFTは、電流のオン/オフ比が少なくとも10であってもよい。
【0058】
図1は、ゲート電極(18)と、ゲート電極(18)を含むゲート誘電層(14)の両方に接する、基材(16)で構成されたTFT構造を示す。ゲート誘電層(14)の上に、ソース電極(20)とドレイン電極(22)がある。ソース電極(20)とドレイン電極(22)との間、およびこれらの上に、低分子半導体層(12)がある。ゲート電極(18)は、基材(16)、ゲート誘電層(14)などに全体にわたって含まれていてもよい。
【0059】
TFTの種々の要素が、任意の順序で基材の上に堆積していてもよい。しかし、一般的に、ゲート電極および半導体層は、両方ともゲート誘電層に接していなければならない。それに加えて、ソース電極およびドレイン電極は、両方とも半導体層に接していなければならない。句「任意の順序で」は、順次作成すること、同時に作成することを含む。例えば、ソース電極およびドレイン電極を同時に作成してもよく、順次作成してもよい。用語基板「の上(on)」または基板「の上(upon)」は、基板の上部にある層および要素について、底部または支持板であるような基板に対する、種々の層および要素を指す。言い換えると、すべての要素は、すべてが基板と直接接していない場合であっても、基板の上にある。例えば、誘電層および半導体層は、一方の層が他の層よりも基板に近い場合であっても、両方とも基板の上にある。得られたTFTは、良好な移動度を有し、良好な電流オン/オフ比を有する。
【0060】
図2は、ゲート電極(18)と、ゲート電極(18)を含むゲート誘電層(14)の両方に接する、基材(16)で構成されたTFT構造を示す。ゲート誘電層(14)の上に、低分子半導体層(12)がある。低分子半導体層(12)の上に、ソース電極(20)およびドレイン電極(22)がある。
【0061】
本開示のTFTデバイスの種々の要素として本明細書に引用されていない他の既知の適切な材料も、いくつかの実施形態では、選択することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の低分子半導体を、光起電デバイス(例えば、ポリマー太陽電池(PSC))で用いてもよい。記載されている低分子半導体を含むことにより、光起電デバイスの製造コストが低くなり、広範囲の光を吸収する低いバンドギャップのポリマーを含み、これにより、シリコン太陽電池と比較した場合に、光起電デバイスの効率が上がり、軽量になり、可とう性が上がるだろう。
【0063】
いくつかの実施形態では、
(a)第1の電極と;
(b)第2の電極と;
(c)薄膜層と;
(d)基材とを備え、
基材、第1の電極、第2の電極、薄膜層は、第1の電極および第2の電極が、両方とも薄膜層と接し、薄膜層が、本明細書に記載の低分子半導体化合物で構成されていれば、任意の順序である、光起電デバイスが提供される。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示をさらに参照しつつ、基材層は、一般的に、目的とする用途によって、ケイ素、ガラス板、プラスチック膜またはシートなどを種々の適切な形態で含む材料で構成されているケイ素材料であってもよい。構造的に可とう性の機器の場合、プラスチック基材(例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドのシートなど)を選択してもよい。基材の厚みは、例えば、約10μm〜約100mmであってもよく、特定の厚みは、特に、可とう性プラスチック基板の場合には、約50〜約100μm、ガラスまたはケイ素のような剛性基板の場合には、約1〜約10mmである。
【0065】
第1の電極と第2の電極との間にあり、これらの電極に接しているのは、例えば、本明細書で示される式を有する低分子半導体で構成される薄膜層であり、この層の厚みは、一般的に、例えば、約10nm〜約1μm、または約40〜約100nmである。この層は、一般的に、本開示の低分子半導体溶液のスピンコーティング、キャスト法、スクリーン印刷、スタンプ印刷、またはジェット印刷のような溶液プロセスによって製造されてもよい。
【0066】
第1の電極および第2の電極は、金属薄膜、導電性ポリマー膜、導電性インクまたは導電性ペーストから作られる導電性膜、または基材自体(例えば、高濃度にドープしたケイ素)であってもよい。第1の電極および第2の電極の材料の例としては、銀、金、クロム、フッ素がドープされた酸化スズ(「FTO」)、ZnO−Ga、ZnO−Al、SnO−Sb、インジウムスズ酸化物、導電性ポリマー、例えば、ポリスチレンスルホネートがドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS/PEDOT)、カーボンブラック/グラファイトまたはコロイド状銀分散物がポリマーバインダー中に含まれる導電性インク/ペースト(例えば、Acheson Colloids Companyから入手可能なElectrodag)、Noelle Industriesから入手可能な、銀が充填された導電性熱可塑性インクなどが挙げられる。第1の電極層および/または第2の電極層は、減圧エバポレーション、金属または導電性金属酸化物のスパッタリング、ポリマー溶液または導電性インクからのコーティング、または、スピンコーティング、キャスト法、または印刷による分散物によって調製されてもよい。第1の電極層および/または第2の電極層の厚みは、例えば、約10nm〜約10μm、特定の厚みは、金属膜の場合には、例えば、約10〜約200nm、ポリマー導電体の場合、約1〜約10μmであってもよい。
【0067】
50mLのシュレンクフラスコに、炭酸セシウム(CsCO)(9.77g、30.0mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.07g、0.312mmol)、トリフェニルホスフィン(0.328g、1.250mmol)、ナフタレン−1,5−ジオール(0.801g、5mmol)をアルゴン(Ar)雰囲気下で加えた。次いで、このフラスコを高減圧下でエバポレーションし、Arをパージした。次いで、この混合物を無水ジメチルホルムアミド(DMF)(容積:20ml)および1,2−ジブロモベンゼン(1.447ml、12.00mmol)で処理した。室温で5分間撹拌した後、処理した混合物をAr雰囲気下、140℃まで加熱した。24時間後、加熱源をはずし、加熱した反応物を室温まで冷却した。減圧蒸留によってDMFを除去し、固体残渣をCHCl(200mL)に再び懸濁させ、セライト濾過し、反応混合物から固体を除去した。濾液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製し、ベンゼンと縮合したキサンテン150mgを黄色固体として得た。構造をH NMR分光法で確認した。
【0068】
シュレンクフラスコに、炭酸セシウム(9.76g、30.0mmol)、ナフタレン−1,5−ジオール(0.8g、4.99mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.063g、0.281mmol)、トリフェニルホスフィン(0.301g、1.149mmol)をAr雰囲気下で加える。次いで、このフラスコを高減圧状態にして、Arでパージする(2回)。次いで、無水DMF(20 mL)を加え、その後、フラスコを減圧状態にし、Arでパージする。次いで、反応物を2,3−ジブロモチオフェン(1.330ml、11.99mmol)で処理し、Ar雰囲気下、140℃まで加熱する。加熱した混合物を140℃で24〜48時間撹拌した後、加熱源をはずし、加熱した反応物を室温まで冷却する。減圧蒸留によってDMFを除去し、固体残渣をCHCl(200mL)に再び懸濁させ、セライト濾過し、反応混合物から固体を除去する。濾液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、当該技術分野で知られている標準的な方法を用いて精製する。次いで、チオフェンが縮合したキサンテン化合物を純粋な固体として単離する。
【0069】
次いで、以下の反応スキームで示されるように、チオフェンが縮合したキサンテン化合物を、N−ブロモコハク酸イミドでブロモ化し、標準的な鈴木クロスカップリング法を用い、5−ヘキシルチエニルホウ酸でカップリングする。
【化20】

【0070】
図3は、RおよびRがC13であり、mが1である式(II)の化合物である、2,8−ビス(5−ヘキシルチオフェン−2−イル)チエノ[3’,2’:2,3]クロメノ[6,5,4−def]チエノ[3,2−b]クロメンの平衡幾何構造および結晶構造を示すモデルである。このモデルは、DMol3パッケージを用いたMaterials Studio 5.5で作成され、Compass Force Fieldを用いて平衡幾何構造および多形モジュールを決定し、結晶構造を予測した。図3に示した結晶多形は、この分子が、π−πの積み重ねによって重なり合って整列していることを示しており、これにより正孔の輸送が促進される。アルキル鎖(ヘキシル鎖)が芳香族の積み重なりと平行に整列しており、固体状態で広範囲の規則性を与えているはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の低分子半導体であって、
【化1】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、シアノ基、ハロゲン原子から選択され、
nは、1または2であり、
Xは、独立して、Sまたは
【化2】

である、低分子半導体。
【請求項2】
前記低分子半導体が、式(I−a)〜(I−d)の1つの構造を有し、
【化3】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、シアノ基、ハロゲン原子から選択される、請求項1に記載の低分子半導体。
【請求項3】
式(I−a)〜(I−d)のRおよびRが、独立して、水素、アルキル基、シアノ基、ハロゲンからなる群から選択される、請求項2に記載の低分子半導体。
【請求項4】
前記低分子半導体が、式(II)の構造を有し、
【化4】

式中、式(II)のRおよびRが水素であり、
Rが、独立して、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、ハロゲン原子から選択され、
mが、1〜5である、請求項3に記載の低分子半導体。
【請求項5】
ポリマーバインダーと;
式(I)の低分子半導体とを含み、
【化5】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、シアノ基、ハロゲン原子から選択され、
nは、1または2であり、
Xは、独立して、Sまたは
【化6】

である、半導体組成物。
【請求項6】
前記低分子半導体が、式(I−a)〜(I−d)の1つの構造を有し、
【化7】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、シアノ基、ハロゲン原子から選択される、請求項5に記載の半導体組成物。
【請求項7】
式(I−a)〜(I−d)のRおよびRが、独立して、水素、アルキル基、シアノ基、ハロゲンから選択される、請求項6に記載の半導体組成物。
【請求項8】
前記ポリマーバインダーが、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン−コ−ビニルトルエン)、ポリ(スチレン−ブロック−ブタジエン−ブロック−スチレン)、ポリ(スチレン−ブロック−イソペン−ブロック−スチレン)、ポリ(ビニルトルエン)、テルペン樹脂、ポリ(スチレン−コ−2,4−ジメチルスチレン)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(スチレン−コ−a−メチルスチレン)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリカルバゾール、ポリトリアリールアミン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、またはこれらの混合物である、請求項5に記載の半導体組成物。
【請求項9】
前記ポリマーバインダーが、スチレン系ポリマーである、請求項5に記載の半導体組成物。
【請求項10】
半導体層を備え、この半導体層が、式(I)の低分子半導体を含み、
【化8】

式中、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換アルケニル基または非置換アルケニル基、置換エチニル基または非置換エチニル基、置換アリール基または非置換アリール基、置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、シアノ基、ハロゲン原子から選択され、
nは、1または2であり、
Xは、独立して、Sまたは
【化9】

である、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−191193(P2012−191193A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−36853(P2012−36853)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】