説明

キシリトール生成方法

【発明の詳細な説明】
本発明は、Dグルコース、Dフルクトース、Dガラクトースまたはそれらの混合物からキシリトールを製造する方法に関する。
ペンチトールのなかでは、キシリトールだけが商業的に重要な価値がある。今日、キシリトールの大規模生産は、US−A−4,008,825に記載されたようなDグルコースの水素化に基づいている。Dキシロースは、硬木、わら、トウモロコシの穂軸、オート麦の外皮またはその他のキシランに富んだ植物材料によって調製されている。Dキシロースは、亜硫酸処理または硬木もしくはその他のキシランに富んだ材料をパルプにするために用いられるその他の処理から生じる酸化古液から得られる副産物として回収することもできる。
Dキシロースの収率が一般に低く、錯化処理をして精製しなければならないので、キシリトールの生産コストは比較的高い。費用効果の高い生産方法を期待して、さまざまな理由で、Dグルコースをキシリトール合成時の原料とし使用することが望ましい、または、使用することが示唆されている。
一般に、DグルコースからのDキシロース合成は、極めて容易に思われる。この2つの分子は、DグルコースではC−5原子にヒドロキシメチルが付加している以外は、同じであるからである。分子が外見上類似しているために、DグルコースのC−5とC−6の結合を選択的に切除する方法は開発することに多くの努力が費やされてきた。Kissらは、Dグルコースを1,2−O−イソプロピリデン−α−D−グルコフラノースに変換し、C−5原子とC−6原子の結合を過ヨウ素酸塩で酸化切除し、加水分解でイソプロピリデン保護基を除去し、最後に生成キシロジアルドースをキシリトールに水素化した(Helv.Chim.Acta 58(1975)311)。後にMalmelinは、この方法の化学的コストを評価した結果、大規模生産には高すぎることがわかった(M.Sc.thesis Helsinki University of Technology,Espoo 1978)。
1960年代末に、Onishi、Suzukiらは、DアラビニトースおよびD−トレオ−2−ペンツロース(Dキシルロース)を中間体としてDグルコースからキシリトールを生成する発酵処理方法を紹介した(Appl.Microbiol.18(1969)1031)。だが、キシリトールの収率は、14%と低かった。後に、この処理方法の個別の反応ステップがOhmomoらによって開発された(J.Ferment.Technol.61(1983)373,63(1985)331)。彼らはまた、DキシロースをDキシロース異性化酵素で処理し、DキシルロースとDキシロースの生成混合物をキシリトールに発酵させる修正方法を提示した。さらに、別の修正方法では、Dキシロースを異性化混合物から分離し、EP−A−0,403,392で開示されたように水素化によってキシリトールに変化した。ある場合には、DキシロースとDキシルロースの混合物は、水素化され、EP−A−0,421,882で開示されたように、クロマトグラフィによって生成混合物からキシリトールを分解するなどしている。
本発明の目的は、Dグルコースからキシリトールを生成する他の既知の方法を問わず本質的に異なる方法でキシリトールを生成する方法を提供するものである。本発明によれば、Dグルコースだけではなく、DグコースとDフラクトースの混合物またはDグルコースとDガラクトースの混合物を原料として使用することができる。これらの混合物は、スクロースおよびラクトースの水解物としてそれぞれ利用できる。
本発明の目的は、以下のステップすなわち、a−主にLキシロン酸、Dアラビノン酸、Dリキソン酸または前記酸の少なくとも二つ含む混合物から成る中間体に出発原料を酸化することによって、前記酸を塩、ラクトンまたはO−ホルミル誘導体の形態で遊離するステップと、b−前記中間体を一回または複数のステップで水素化触媒および水素ガスで処理し、主にキシリトールから成る生成物またはキシリトール、アラビニトールおよびリビトールから成る混合物にするステップと、c−必要に応じて、前記生成物からキシリトールを分離し、前記生成物が主にペンチトールを含む前記混合物から成る場合、アラビニトールおよびリビトールの画分を以前の反応ステップbにフィードバックするステップと、から成る方法で達成することができる。
従来のキシリトール生成方法と比較すると、本発明は出発材料でるDグルコースおよびサッカロースとラクトースの水解物が豊富にあり、易く、容易に入手できるという大きな利点がある。出発材料の生成は、キシリトールの生成に制限されない。本発明の別の利点は、キシリトールの生成は、一部Lアスコルビン酸の生成と関連し、生産コストを引くすることができることにある。の点に関し、OnishiとSuzukiの方法およびその修正方法は、他の商業的に重要な生成物とわず合成に中間体が関与しないので、魅力が低い。
本発明による方法の特定の態様では、キシリトールをクロマトグラフィによって分離する。
本発明に係る別の特定の態様では、水素化触媒と水素ガスの処理を0.1MPaから10MPaまでの圧力と70℃から150℃までの温度で実行する。
水素化触媒としては、ルテニウムまたはニッケル触媒を使用することができる。
本発明のその他の特徴および利益は、以下の本発明に係るキシリトール生成方法から明かになろう。以下の説明は、あくまでも一例であり、限定的なものではない。
本発明によれば、Dグルコース、Dフルクトース、Dガラクトースまたはその混合物、特に、DグルコースとDフルクトースと混合物またはDグルコースとDガラクトースの混合物は、酸化に使用され、Lキシロン酸、Dアラビノン酸またはDアラビノン酸とDリキソン酸の混合物を中間体とし、これらの酸を遊離酸または塩、ラクトン、O−ホルミル誘導体の形態をとる。
別のステップでは、前記中間体は、水素化触媒および水素ガスによって一回のまたは複数のステップで処理し、ペントン酸を対応するペンチトールすなわちキシリトール、アラビニトールおよびリビトールまたはそのいずれかに還元する。
酸化後の中間体がLキシロン酸である場合、主にキシリトールが形成され、クロマトグラフィによって精製される。
他の場合には、酸化後の中間体がDアラビノン酸またはDリキソン酸の場合、一次還元生成物はDアラビニトールから成る。この生成物は異性化されるので、反応を継続するか、水素化触媒および水素ガスを用いて別の処理を行い、キシリトール、アラビニトールおよびリビトールの混合物を生成する。その後、キシリトールをこの混合物から好ましくはクロマトグラフィによって分離し、アラビニトールおよびリビトールの画分を以前の反応段階に戻す。
水素化中の温度は、好ましくは70℃から150℃までであり、より好ましくは、100℃から130℃までである。70℃未満の温度では、実際に利用するのには反応時間が長すぎ、150℃を超える温度では、ペンチトールを最適に生成するには副産物の生成費が高価になり過ぎる。Dアラビニトールをキシリトールに異性化する場合、キシリトール全体の収率は、低温度にすることによって高くすることができる。ただし、一回のステップの水素化と異性化の収率は低く、異性化の温度と分離処理のコストが著しく増加してしまう。
水素化中の水素の圧力は、好ましくは0.1MPaから10MPaまでが好ましく、例えば、Dアラビニトールの異性化に対する圧力は、2MPaから10MPaまでである。
圧力がこの範囲内である限り、Dアラビニトールの異性化率は、水素の圧力にはそれぞれ影響されない。従って、異性化ステップは、上述の水素化ステップよりも低い温度で実行すると都合が良い。
適切な水素化触媒は、ルテニウム、特に、炭素付加ルテニウムであるか、ニッケル、特にRaney−Nickelである。
微量の蟻酸でさえ、炭素付加ルテニウム触媒による水素化を妨げることができる。酸化された小量のシュウ酸では、水素化を妨げることはない。ルテニウム触媒は、水素化反応だけではなく、例えばDアラビニトールからキシリトールの異性化にも利用できる。
Raneyニッケル触媒の溶解が妨げられる場合は、Dアラビニトールからキシリトールに生成するためなどに、ペントン酸およびそのラクトンの酸化に利用することができる。ニッケル触媒の非常に優れた点は、蟻酸が存在し得ることである。従って、ペントン酸の形成で生成される蟻酸を完全に除去することに注意を払う必要はない。蟻酸の大半は、脱イオン化酸化生成溶液の蒸留によって回収することがてき、残留物をさらに生成しなくても水素化することができる。
水素化触媒および水素ガスで処理すべき中間体に関し、Dアラビノン酸をアルカリ水含有溶液で酸素ガスによってDグルコースを酸化することによって調整することができる。
Dアラビノン酸は、Dフルクトースを同様に酸化した際に主産物としても形成される(Carbohydr.Res.141(1985)319)。従って、実施例によれば、サッカロースの水解物などのDグルコースとDフルクトースの混合物をキシリトール生成過程で原料として使用することができる。
Dガラクトースをアルカリ水含有溶液中の酸素で酸化する場合、主に、Dリキソン酸の塩が生成される。Dリキソン酸またはそのラクトンを水素化する際、主にDアラビニトール(Dリキシトール)が生成される。従って、実施例によればラクトースの水解物などのDグルコースとDガラクトースの混合物は、キシリトール生成過程で原料として利用することもできる。
DグルコースからDアラビノン酸を生成する別の方法では、Dグルコースをピラノール−2−オキシダーゼでD−arabino−hexos−2−uloseに酸化し(US 4,423,149)、これを過酸化水素(Carbohydr.Res.127(1984)319)またはその他のヒドロペルオキシドで処理する。この場合、蟻酸は副産物として生成される。D−arabino−hexos−2−uloseと過酸化水素との反応は最高に速く、アルカリ溶液で最も選択的であり、生成物はDアラビノン酸と蟻酸の塩から成る。酸化条件下では、過蟻酸すなわち蟻酸と過酸化水素の混合物などは、オキシダントとして利用することができる。0.3MのD−erythro−pentos−2−uloseは、0.6Mの過蟻酸で酸化することができる。反応は10分で完了し、D−erythrono−1,4−ラクトン、3−o−ホルミル−D−エリトロン酸、4−o−ホルミル−D−エリトロン酸、未置換Dエリトロン酸が生成される。o−ホルミル基は、水溶液中で急速に加水分解する。
Dアラビノン酸のさらに別の生成方法では、D−グルコースをD−arabino−2−ヘキサウロソン酸またはその塩に酸化し、それを過酸化水素で脱カルボキシ化する(JP 15,610('63),Carbohydr.Res.36(1974)283−291)。D−アラビノ−2−ヘキサウロソン酸は、発酵(US−A−3,255,093;US−A−3,282,795)、触媒酸化(EP−A−0,151,498)または二段酵素酸素(US−A−4,423,149)によって生成することができる。D−アラビノ−2−ヘキサウロソン酸による方法の利点は、蟻酸が生成されず、ルテニウム触媒によって脱イオン化酸化生成混合物をさらに直接的に水素化することができることにある。
中間体Lキシロン酸は、Lアスクロビン酸の大規模合成時の中間体としてD−グルコースから生産されるLソルボースの酸化分解によって調製することができる。
Lキシロン酸は、Appl.Environ.Microbiol.43(1982)1064に記載されたように、まずDグルコースをL−キシロ−2−ヘキサウロソン酸に発酵し、JP 15,160('63)とCarbohydr.Res 36(1974)p.283−291記載のように、過酸化水素で処理することによって調整することもできる。この場合、蟻酸の代わりに二酸化炭素が副産物として生成されるので、ルテニウム触媒で脱イオン化反応生成混合物の水素化を行うことができる。
LソルボースおよびL−キシロ−2−ヘキサウロン酸がLアスコルビン酸の商業的合成時の中間体であるので、キシリトールの生成はLアスコルビン酸の生成に関連づけることができる。
以下の例では、図面を参考にさらに詳細に説明する。
実施例1 本文中に参考として取り入れたStarch/Straake 43(1991)194で記載されたように、グルコースをDアラビノン酸ナトリウムに酸化し、さらに、本文中に参考として取り入れたB.S.J.Res.11(1933)649に記載されたように、D−アラビノノ−1,4−ラクトンに変換した。
0.12モル(18g)のD−arabinono−1,4−ラクトン、0.5g5%の炭素付加ルテニウム触媒、18mlの水を圧力反応器に加えた。水素ガスの圧力は、8MPaに調整した。性能の良いミキサーをオンにし、温度を130℃まで上昇させた。反応は、8時間後中断したところ、水素ガス消費量は、出発材料のモル量に比較して2倍だった。アルビニトールのり収率は、D−アラビノノ−1,4−ラクトンの90モル%だった。反応溶液をろ過し濃縮し、Dアラビニトールを結晶化した。
20ミリモル(3g)のDアラビニトール、0.3g5%の炭素付加ルテニウム触媒、20mlの水を圧力反応器に加えた。水素ガスの圧力は、8MPaに調整した。性能の良いミキサーをオンにし、温度を130℃まで上昇させた。アラビニトール、キシリトール、リビトールは、10時間以内に平衡状態になった。5時間という短時間の反応後、生成組成は、アラビニトール60%、キシリトール20%、リビトール13%、その他の生成物7%であった。触媒を低温で反応させた場合、キシリトールとリビトールに比較してその他の生成物の生成は少なく、ペンチトール平衡は、アラビニトールに移動した。
この例によれば、キシリトール、アラビニトール、リビトールの混合物は、Dアラビノン酸によってDグルコースから調製された、キシリトールは、クロマトグラフィによってこの混合物から分離され(Chem.Zvesti 34(1980)530)、アラビニトールとリビトールの画分はさらにキシリトールを生成するために最後の触媒処理に戻した。
この例からは、ペントン酸またはそのラクトンの水素化は、非常に高い濃度で行うことができ、この場合は、50%(w/w)溶液であり、ルテニウム触媒は、水素化ステップだけではなく、異性化ステップにも利用することができることがわかる。
D−アラビノノ−1,4−ラクトンの水素化の選択性は、温度によって強く影響を受けた。例えば、70℃では、アラビニトールの収率は、96%であった。低温では、反応時間は非常に長く、150℃を超える温度では、副産物の生成の費用が高すぎた。2MPaから10Paまでの範囲で水素の圧力をあげると、水素化率は増加した。しかし、異性化率は水素の圧力にはあまり影響を受けなかった。
実施例2 Dグルコースを実施例1と同じ方法で酸化した。
20ミリモル(3g)のD−アラビノノ−1,4−ラクトン、3gのラネーニッケル触媒、20mlの水を圧力反応器に加えた。水素ガスの圧力は、8MPaに調整した。性能の良いミキサーをオンにし、温度を130℃まで上昇させた。反応は5時間後に中断した。Dアラビニトールの収率は37%であり、その他の生成物は認められなかった。1mmol(0.06g)の蟻酸を反応器に最初に添加した場合、同様の条件下のDアラビニトールの収率は、48%だった。その他の生成物は生じなかった。
実施例3 実施例2を繰り返したが、初期の蟻酸の量を20mmol(0.9g)に増加した。
水素ガスの消費は、最初非常に速く、すべての蟻酸が3、4時間後にメタノールに変換されたのは明かでり、Dアラビニトールの収率は14%だった。6時間の反応後のDアラビニトールの収率は、すでに31%になっていた。
実施例2および実施例3では、反応溶液は濃い緑色だった。ガス−液体クロマトグラフィの結果、反応の最後に有意な割合のDアラビノン酸が塩として残留していた。これらの事実は、ともに、ニッケル触媒が水素化中に一部可溶性ニッケル(II)塩に変換された証拠である。
実施例4 Dグルコースを実施例1のようにDアラビノン酸ナトリウムに酸化した。
20ミリモル(3g)のD−アラビノノ−1,4−ラクトン、5mmol(0.2g)の水酸化ナトリウム、3gのラネーニッケル触媒、20mlの水を圧力反応器に加えた。水素ガスの圧力は、8MPaに調整した。性能の良いミキサーをオンにし、温度を130℃まで上昇させた。反応は6時間後に中断した。ペンチトール全体の収率は66%であり、そのうち、アラビニトールは60%、リビトールは5%、キシリトールは1%だった。反応混合物のその他の主な組成は、1,4−ラクトン、Dアラビノン酸のナトリウム塩、Dリボン酸のナトリウム塩であった。反応溶液はほとんど無色であった。
この例によれば、ニッケル触媒の溶解は、アルカリを添加して反応溶液の酸度を低下することによって、妨げられた。水素化は順調に進み、この場合のペンチトールの収率は最大値の75%に近かった。当然、ペントン酸の塩は、水素化されなかった。対照的に、Dアラビノン酸ナトリウムは、一部リボン酸ナトリウムに異性化され、D−ribono−1,4−ラクトンが水素化されて、リビトールの、生成が促進された。出発材料の異性化にも関わらず、pHは、第2の異性化ステップでアラビニトールとリビトールにってキシリトールを生成するので、Dアラビノン酸からキシリトールを生成する際にpHを制御することができる。
反応溶液の酸度は、さまざまな方法で、また、複数の化合物を使用して生じさせることができるのは当然である。ただし、ここで重要な点は、pHを調整することによって、低量の触媒を消費し、その寿命を延ばすことである。
実施例5 Dグルコースを実施例1のようにDアラビノン酸ナトリウムに酸化した。
20ミリモル(3g)のD−アラビノノ−1,4−ラクトン、3gのRaneyニッケル触媒、3mlの水、17mlのメタノールを圧力反応器に加えた。水素ガスの圧力は、8MPaに調整した。性能の良いミキサーをオンにし、温度を130℃まで上昇させた。反応は6時間後に中断した。出発材料の変換率は72%であり、アラビニトールの収率は68%だった。反応溶液は無色だった。未反応の出発材料の一部は、Dアラビノン酸メチルとして生じた。遊離Dアラビノン酸の割合は水の場合よりも低かった。
水素化率は、4MPaから10MPaまでの範囲では、水素の圧力にほとんど影響を受けなかった。ただし、2MPaでは反応ははるかに遅かった。
この例によれば、ニッケル触媒の溶解は、水溶性メタノールを水に代わる溶媒として用いることによって阻止するすることができる。この効果は、反応混合物の遊離Dアラビノン酸の割合の減少によって生じたほか、恐らくは、遊離Dアラビノン酸解離の顕著な低下によって、部分的に生じたと考えられる。同様の効果は、メタノールか以外の遊離溶媒を用いて実行できることは当然である。ペンチトール全体の収率は66%であり、そのうち、アラビニトールは60%、リビトールは5%、キシリトールは1%だった。反応混合物のその他の主な組成は、1,4−ラクトン、Dアラビノン酸のナトリウム塩、Dリボン酸のナトリウム塩であった。反応溶液はほとんど無色であった。
その例の条件下では、アラビノン酸をDリボン酸に異性化しなかった。従って、有機溶媒および水中の混合物でラネーニッケルを用いて同様の水素化を行うと、Lキシロン酸からキシリトールを生成することができる。
実施例6 実施例1のようにDグルコースをDアラビノン酸ナトリウムに酸化した。
20mmol(3g)のD−アラビニトール、3gのラネーニッケル触媒、20mlの水を圧力反応器に加えた。水素ガスの圧力は、8MPaに調整した。ミキサーをオンにし、温度を10℃まで上昇させた。24時間後の生成物の組成は、アラビニトール58%、キシリトール23%、リビトール14%、その他の生成物6%だった。反応時間が長い場合、キシリトールとリビトールの収率は、ほかの産物のはるかに高い収率と比較してやや高かった。温度が上昇した場合には、その他の生成物の収率は、キシリトールとリビトールの収率よりも速く増加した。
この例によれば、ラネーニッケル触媒を利用すれば、Dアラビニトールからキシリトールを生成することができる。キシリトールは、クロマトグラフィによって反応生成混合物から分離することができる(Chem.Zvesti 34(1980)530。この例の条件下では、アラビニトールおよびリビトールがすべて反応に戻された場合、Dアラビニトールからのキシリトールの収率を80%にすることができる。
実施例7 DグルコースをLソルボースに変換した。この変換は、Lアスコルビン酸の大規模合成では、生じないものであり、Lソルボースは中間体としてDグルコースから生成された。
5gの水酸化ナトリウムと150ml、80%(w/w)のメタノールをテフロンライニング圧力反応器に加え、溶液を25℃にサーモスタットで調温した。性能の良いミキサーをオンにし、酸素ガスの圧力を1MPaに調整した。Lソルボース水溶液(200g、35%(w/w))と水酸化ナトリウム(64g、50%(w/w))を一定速度で、2.5時間添加した。反応は、さらに2時間続けた。Lキシロン酸ナトリウムの収率は、69mol−%だった。その他の主な生成物は蟻酸、グリコール酸、グリセリン酸およびトレオン酸のナトリウム塩である。
反応溶液は、陽イオン交換樹脂で脱イオン化し、シロップに濃縮した。このシロップを1,4ジオキサンに0.04Mの塩化水素を含ませたものに溶解し、水との共沸混合物を蒸留し、Lキシロン酸のラクトン化を促進した。残留物をシロップに濃縮し、水に溶解し、酢酸塩の形態で陰イオン樹脂のカラムによって溶離し、遊離酸を除去した。溶離液をシロップに濃縮し、1,4ジオキサンに0.04Mの塩化水素を含ませたものに溶解し、水との共沸混合物を蒸留した。残留物らシロップに濃縮し、アセトニトリルに溶解した。この溶液を濃縮し、L−xylono−1,4−ラクトンを結晶化した。
20mmol(3g)のL−キシロノ−1,4−ラクトン、0.3g、5%の炭素付加ルテニウム触媒、20mlの水を圧力反応器に加えた。水素ガスの圧力は、8MPaに調整した。ミキサーをオンにして、温度を130℃まで上昇させた。水素ガスの消費を追跡して、反応をモニタリングした。理論的な量の水素(40mmol)は、2時間で消費され、キシリトールの収率はガス−液体クロマトグラフィで測定した結果、90−91mol−%だった。主に、副産物は、アラビニトールとトレチトールだった。未変換の出発材料は、元の1%だった。
純粋なキシリトールがえられたので、クロマトグラフィまたはその他の処理は必要なかった。
微量の蟻酸がL−キシロノ−1,4−ラクトンの水素化とLソルボースの脱イオン化酸化生成混合物の水素化を阻止するので、結晶L−キシロノ−1,4−ラクトンの生成ステップを行い、蟻酸から酸化生成混合物を生成した。一方、酸化形態に生成された小量のシュウ酸は、水素化を阻止しなかった。この結晶化ステップは、酸化生成混合物を別の方法で蟻酸から精製することができる場合には必要ない。
本発明は、上述の実施例に一切限定されず、以下の請求の範囲を逸脱しないものであるので、本発明に係る態様はさまざまに修正することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】Dグルコース、Dフルクトース、Dガラクトースまたはそれらの混合物からキシリトールを生成するキシリトール生成方法において、a−主にLキシロン酸、Dアラビノン酸、Dリキソン酸または前記酸の少なくとも二つ含む混合物から成る中間体に出発原料を酸化することによって、前記酸を塩、ラクトンまたはO−ホルミル誘導体の形態で遊離するステップと、b−前記中間体を一回または複数のステップで水素化触媒および水素ガスで処理し、主にキシリトールから成る生成物またはキシリトール、アラビニトールおよびリビトールから成る混合物にするステップと、c−必要に応じて、前記生成物からキシリトールを分離し、前記生成物が主にペンチトールを含む前記混合物から成る場合、アラビニトールおよびリビトールの画分を以前の反応ステップbにフィードバックするステップと、を有することを特徴とするキシリトール生成方法。
【請求項2】キシリトールがクロマトグラフィによって分離することを特徴とする請求項1に記載のキシリトール生成方法。
【請求項3】水素化触媒と水素ガスの処理を0.1MPaから10MPaまでの圧力と70℃から150℃までの温度で実行することを特徴する請求項1または2に記載のキシリトール生成方法。
【請求項4】前記温度が100℃から130℃までであることを特徴とする請求項3に記載のキシリトール生成方法。
【請求項5】水素化触媒としてルテニウムまたはニッケル触媒を使用することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載のキシリトール生成方法。
【請求項6】前記出発材料がDグルコースであり、前記中間体が主にLキシロネート、Lキシロン酸またはLキシロノラクトンから成り、前記中間体は出発材料をL−キシロ−2−ヘキサウロソン酸またはその塩に発酵し、過酸化水素またはその塩で脱カルボキシ化することによって生成されることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載のキシリトール生成方法。
【請求項7】前記中間体が主にDアラビノネートまたはDリキソネートとの混合物からなり、前記中間体を前記出発材料をアルカリ性水含有溶液中で酸化触媒不在下または存在下で酸素ガスで処理することによって生成することを特徴とする請求項1ないし5までのいずれかに記載のキシリトール生成方法。
【請求項8】前記出発材料がDグルコースであり、前記中間体が主にDアラビノネート、Dアラビノーシラクトン、Dアラビノン酸またはそのO−ホルミル誘導体から成り、ピラノース−2−オキシダーゼで出発材料をD−arabino−hexos−2−uloseに酸化し、過酸化水素、その塩またはその他のヒドロペルオキシドで処理することによって、前記中間体を生成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のキシリトール生成方法。
【請求項9】前記出発材料がDグルコースであり、前記中間体が主にDアラビノネート、DアラビノーノラクトンまたはDアラビノン酸から成り、前記出発材料を酵素的、触媒的、または発酵によってD−アラビノ−2−ヘキサウロソン酸もしくはその塩に酸化し、過酸化水素またはその塩で脱カルボキシ化することによって前記中間体を生成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載キシリトール生成方法。
【請求項10】前記出発材料がLソルボースに変換されるDグルコースであり、前記中間体が主にLキシロン酸から成り、キシリトールは主に水素化触媒および水素ガスで処理することによって生成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のキシリトール生成方法。

【特許番号】特許第3162075号(P3162075)
【登録日】平成13年2月23日(2001.2.23)
【発行日】平成13年4月25日(2001.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−516122
【出願日】平成5年3月17日(1993.3.17)
【公表番号】特表平7−504667
【公表日】平成7年5月25日(1995.5.25)
【国際出願番号】PCT/BE93/00013
【国際公開番号】WO93/19030
【国際公開日】平成5年9月30日(1993.9.30)
【審査請求日】平成11年3月1日(1999.3.1)
【出願人】(999999999)アミィルム,ナームローゼ フェンノートシャップ
【参考文献】
【文献】特公 昭46−23038(JP,B1)