キシログルカン含有組成物、キシログルカン含有貼付用シート及びキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法

【課題】所望のゲル成形体に調製し易いキシログルカン含有組成物、キシログルカン含有貼付用シート及びキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】水と、キシログルカンと、ショ糖と、多価アルコールとを含有し、pHが3以上であることを特徴とするキシログルカン含有組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚または粘膜付着用の基材に適用可能なキシログルカン含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚の疾患や、粘膜の疾患には、種々の外用剤が用いられている。皮膚疾患のうち、難治性の創傷の代表例として、褥瘡(いわゆる床ずれ)や熱傷が知られている。
【0003】
褥瘡は、床と接する身体部位が、自重により床に対して持続的に圧迫されることによって生じる虚血性皮膚壊死であり、慢性疾患や栄養不良の患者や、高齢者等の長期臥床者等に発生し易い。高齢化社会が進むにつれて、長期臥床者が増加し、また、在宅での治療機会も増加していることから、褥瘡治療の必要性は益々高まっている。
【0004】
褥瘡や熱傷の治療においては、細菌感染を防止する有効成分や、肉芽形成を促進する有効成分が患部に投与されている。また、治療効果を高めるうえで、患部が空気等の外部環境と接触することを防止し、患部と外部環境中の細菌との接触を防止して細菌感染防止作用を向上させたり、患部を適度に湿潤して肉芽形成作用を向上させたりしている。加えて、上記した治療効果を高めるために、患部からの過剰な滲出液を除去する等、患部の清掃を行うことも効果的である。
【0005】
また、粘膜疾患は、粘膜の表面を覆う分泌液が乾燥し、粘膜の不調や機能低下が引き起こされることによって生じたり、創傷によって生じたりする。このような粘膜疾患の治療においても、上記と同様、粘膜の患部に有効成分を供給しつつ、該粘膜と空気との接触を防止することが効果的である。
【0006】
このような皮膚疾患や粘膜疾患の治療には、有効成分を練り込んだ軟膏製品やクリーム製品等を患部に塗布したり、有効成分を含有するフィルム等のシート状製品を貼付したりすること等が行われており、有効成分を患部に供給しつつ、患部と外部環境との接触を防止すると共に患部の乾燥を防止して、その湿潤を図っている。また、これら軟膏の再塗布やシート状基材の張り替え等の交換時、患部から軟膏製品等を拭う際、あるいはフィルム製品等を剥がした際に、患部の清掃を行っている。
【0007】
しかし、軟膏製品等を塗布する場合、患部を十分に覆うことができないため、患部が空気と接触し、細菌感染の防止作用や肉芽形成の促進作用が、十分に得られないおそれがある。また、患部を十分に覆うべく軟膏製品等をガーゼ等に展延させる、あるいは軟膏製品等を更に別の軟膏基剤と混合して増量してからガーゼ等に展延させることも行われているが、かかる作業は、ガーゼに染み込まないように展延させたり、増量したりする際に熟練技術を要し、手間がかかる。
【0008】
また、シート状製品を用いる場合、シート基材の強度や弾力性が不十分であると、貼付時に製品が破損したり、患部に有効成分を十分に接触させることが困難となったりする。このとき、シート基材を皮膚等に強固に接着させると、該基材を剥がす際、患者に苦痛をもたらす。
【0009】
このように、作業に手間がかかったり、患者に苦痛が生じたりすると、コンプライアンスの低下につながり、治療効果を十分に発揮させることが困難となる。特に、褥瘡や熱傷が重度の場合等には、治療が長期化し、軟膏製品やシート状製品等の交換が何度も繰り返されるため、コンプライアンスの低下が生じ易くなる。
【0010】
そこで、多糖類たるキシログルカンを含有する組成物を用いることが提案されている。例えば、キシログルカンを含む多糖類と、ショ糖と、カルボキシル基を有する酸と、多価アルコールとを含有する組成物を、皮膚貼付用シートとして用いること(特許文献1)が知られている。かかる組成物によれば、該組成物が水を保持しつつ弾力性を有するため、皮膚疾患等の患部を十分に覆うことができ、患部と空気との接触を防止すると共に患部の乾燥を防止することができ、しかも、患部を湿潤させることができる。また、ガーゼ等に染み込まず、増量する必要もないため、看護者の手間を省くことができ、さらに、剥離する際の患者の苦痛を軽減することができる。
【0011】
しかし、かかる組成物は、ゲル化速度を十分に調整することができず、該組成物を用いて所望のゲル成形体を調製することが困難となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−50298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記問題点に鑑み、本発明は、所望のゲル成形体を調製し易いキシログルカン含有組成物、キシログルカン含有貼付用シート及びキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を克服すべく鋭意研究した結果、キシログルカンとショ糖と多価アルコールとを含有させ、所定のpHに調製することによって、所望のゲル成形体に調製し易いキシログルカン含有組成物が得られることを見出し、本発明に想到するに至った。
【0015】
すなわち、本発明に係るキシログルカン含有組成物は、水と、キシログルカンと、ショ糖と、多価アルコールとを含有し、pHが3以上であることを特徴とする。
ここで、多価アルコールとは、水酸基を2個以上有する化合物(2価以上のアルコール)をいう。また、多価アルコールには、ベンゼン環を構成していない炭素原子に水酸基が結合して成るものの他、ベンゼン環を構成している炭素に水酸基が結合して成るものも含まれる。
【0016】
かかる構成によれば、水とキシログルカンとショ糖と多価アルコールとを含有し、pHが3以上であることによって、キシログルカン含有組成物のゲル化速度の調整が容易となるため、所望のゲル成形体の調製が容易となる。また、キシログルカン含有組成物のpHが3以上であることによって、十分なゲル化を図ることができる。従って、キシログルカン含有組成物が、所望のゲル成形体を調製し易いものとなる。加えて、このように水とショ糖と多価アルコールとを含有することによって、カルボキシル基を含む酸を必須としなくてもキシログルカン含有組成物のゲル化が可能となる。
【0017】
また、本発明に係るキシログルカン含有組成物において、前記多価アルコールが、ポリエチレングリコールまたはポリフェノール類のうち少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0018】
このように、多価アルコールが、ポリエチレングリコールまたはポリフェノール類を含有することにより、前記組成物のゲル化をより促進させることができる。また、多価アルコールが、ポリエチレングリコール及びポリフェノール類を含有する場合には、かかるゲル化をさらに促進させることができる。さらに、多価アルコールがポリエチレングリコールであることにより、肌触りの良いゲルを形成することができ、多価アルコール類がポリフェノール類であることにより、硬いゲルを形成することが可能となるため、前記組成物が、所望の物性を有するゲル成形体を調製し易いものとなる。
【0019】
また、本発明に係るキシログルカン含有組成物において、キシログルカン含有組成物全体に対し、前記キシログルカンを0.1〜5重量%、前記ショ糖を5〜55重量%、前記多価アルコールを0.05〜50重量%含有することが好ましい。
【0020】
また、本発明に係るキシログルカン含有組成物において、前記多価アルコールが、ポリフェノール類を含有し、且つ、キシログルカン含有組成物全体に対して該ポリフェノール類を0.05〜4重量%含有することが好ましい。
【0021】
また、本発明に係るキシログルカン含有組成物は、皮膚または粘膜に付着させるためのものであることが好ましい。
【0022】
これにより、皮膚疾患や粘膜疾患の患部と空気との接触を防止し、乾燥を防止しつつ、患部を湿潤することができ、治療効果を高めることができる。また、乾燥等の防止により疾患の予防を図ることもできる。さらに、除去する際の患者の苦痛を軽減することもできる。
【0023】
また、本発明に係るキシログルカン含有組成物は、シート状であることが好ましい。
【0024】
これにより、皮膚疾患や粘膜疾患の患部を、より広範囲にわたって覆うことが可能となる。
【0025】
本発明に係るキシログルカン含有貼付用シートは、前記キシログルカン含有組成物とシート状の基材とが積層されて成ることを特徴とする。
【0026】
これにより、前記キシログルカン含有組成物の強度や弾力が補強され得るため、皮膚や粘膜への貼付に際し、より耐久性が向上する。
【0027】
本発明に係るキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法は、水と、キシログルカンと、ショ糖と、多価アルコールとをpH3以上となるように混合してゾル状の混合溶液を得、得られた混合溶液をゲル化させることによって成形することを特徴とする。
【0028】
これにより、容易にキシログルカン含有ゲル成形体を製造することができる。
【0029】
また、本発明に係るキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法においては、前記混合溶液を、前記水、前記キシログルカン及び前記ショ糖の混合溶液と、前記多価アルコールとを混合して調製することが好ましい。
【0030】
水、キシログルカン及びショ糖の混合溶液は、ゲル化速度が比較的遅く、これに多価アルコールを混合することによってゲル化速度を速めることができる。すなわち、多価アルコールの添加濃度や添加タイミングによって混合溶液のゲル化速度を調整することができるため、キシログルカン含有ゲル成形体の調製が、より容易となる。
【0031】
また、本発明に係るキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法においては、前記混合溶液を被付着領域に付着させつつゲル化させることが好ましい。
ここで、「付着させつつゲル化」とは、前記混合溶液を被付着領域に付着させた後に、該付着領域において前記混合溶液のゾル状態からゲル状態への変化が終了することを意味する。すなわち、「付着させつつゲル化」には、ゾル状の混合溶液を被付着領域に付着させた際にはゾル状態であるような態様の他、被付着領域に付着させた際に既にある程度のゲル化が進行しているような態様も含まれる。
【0032】
これにより、皮膚または粘膜疾患の患部の形状や大きさ等に応じて、適切に患部を覆うことが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上の通り、本発明によれば、所望のゲル成形体を調製し易いキシログルカン含有組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】時間に対する貯蔵弾性率(G’)の変化を示すグラフ
【図2】キシログルカン含有貼付用シートによる創傷部面積の減少促進効果を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0035】
本実施形態に係るキシログルカン含有組成物は、水と、キシログルカンと、ショ糖と、多価アルコールとを含有し、pHが3以上である。
【0036】
前記キシログルカンは、グルコース及びキシロースを構成糖とする非イオン系の多糖類であり、グルコースがβ−1,4結合した主鎖に、側鎖としてキシロースが結合した基本構成を有している。また、本明細書において、用語「キシログルカン」は、高分子(天然)キシログルカン及び低分子キシログルカンの両方を意味する。
【0037】
高分子キシログルカンは、天然物由来のキシログルカンであり、その分子量が、5万〜100万程度である。かかる高分子キシログルカンは、例えば、エンドウ、ダイズ、ポプラ、イネ、タケノコといった高等植物の細胞壁や、タマリンド種子等から抽出することによって得ることができる。また、高分子キシログルカンは、植物組織から水を用いて抽出したり、水で抽出困難な場合にはアルカリ水溶液を用いて抽出することができるが、より容易に抽出することができるという観点から、水で抽出可能か否かによらず、アルカリ水溶液を用いて抽出することが好ましい。
【0038】
かかる抽出によって得られた高分子キシログルカンは、必要に応じて、アルコール沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性の差やアフィニテイーの差等を利用した各種のクロマトグラフィー、等により、さらに精製してもよい。
【0039】
また、前記高分子キシログルカンのうち、タマリンド種子由来の高分子キシログルカン(タマリンド種子キシログルカン)は、市販品(例えば、DSP五協フード&ケミカル株式会社製:グリロイド6C)として入手したものを用いることもでき、かかる市販品を水に溶解し、この水溶液にエタノール等を混合してキシログルカンを分別沈殿させた後、さらに精製して用いることもできる。
【0040】
さらに、高分子キシログルカンを、利用し易くするために部分分解して低分子化してもよい。
【0041】
低分子化キシログルカンは、このように高分子キシログルカンの低分子化によって得られたキシログルカンである。かかる低分子キシログルカンは、物理的方法(例えばホモジナイザーによる低分子化等)、化学的方法(例えば酸加水分解などによる低分子化等)、酵素分解等、あるいは植物中から単離・抽出したり、化学的合成したりする等、公知の方法によって、得ることができる。
【0042】
例えば、タマリンド種子キシログルカンから酵素分解によって低分子キシログルカンを得る場合には、β−1,4−グルカナーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素を用い、かかる酵素の特性に応じた添加量、pH、温度、時間を適宜設定して酵素分解反応をさせることができる。
【0043】
また、かかる植物組織崩壊酵素としてセルラーゼを用いる場合には、例えば、水に、タマリンド種子キシログルカンと、該タマリンド種子キシログルカン100重量部に対して0.01〜2.0重量部のセルラーゼとを添加し、pH3〜7、温度35〜60℃で3〜96時間、酵素分解反応させる。そして、反応終了後、セルラーゼを失活させ、クロマトグラフィー等の方法で反応生成物を精製することによって、分子量が5000以下の低分子キシログルカンを得ることができる。また、側鎖を部分的に分解することもでき、その方法(部分分解法)としては、酵素的もしくは化学的な方法が挙げられる。
【0044】
また、前記キシログルカンは、高分子キシログルカンまたは低分子キシログルカンのいずれかであっても、両者の混合物であってもよく、また、複数種類の植物に由来するキシログルカンの、混合物であってもよい。
【0045】
前記ショ糖は、D−グルコース2分子が、α−1,4結合されることによって構成された二糖類である。かかるショ糖は、一般的に砂糖と称され、古くから調味料として使用されているものである。かかるショ糖の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、グラニュー等、白糖、精製白糖等の形態で用いることができる。また、これらは未粉砕のものであっても細かく粉砕したものであってもよい。
【0046】
前記多価アルコールは、水酸基を2個以上有する化合物(2価以上のアルコール)であり、該多価アルコールには、ベンゼン環を構成していない炭素原子に水酸基が結合して成るものの他、ベンゼン環を構成している炭素に水酸基が結合して成るものも含まれる。
【0047】
前者の、ベンゼン環を構成していない炭素原子に水酸基が結合した多価アルコールとしては、グリセロール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール等が挙げられ、これらから選択される1種、または2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
これら多価アルコールのうち、例えば、グリセロールは、CH2OH−CHOH−CH2OHで表される3価の多価アルコールであり、ポリエチレングリコールは、H−[−O−CH2−CH2−]n−OHで表される高分子であり、いずれも高い親水性を有する。これらの多価アルコールは、化学合成品または植物原料由来の多価アルコールのいずれでもよいが、化学合成品由来の多価アルコールであることが好ましい。
【0049】
かかる多価アルコールを含有させることにより、キシログルカン含有組成物のゲル化速度を調整し易くすることができる。また、ゲル化速度を調整し易くするという観点から、これら多価アルコールのうち、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0050】
また、後者の、ベンゼン環を構成している炭素に水酸基が結合した多価アルコールとしては、ポリフェノール類が挙げられる。かかるポリフェノール類は、単独で多価アルコールとして用いることもでき、または、上記した多価アルコールと共に、ポリフェノール類を用いることもできる。
【0051】
該ポリフェノール類は、水酸基を複数有するフェノール構造を有する一連の化合物を意味する。該ポリフェノール類は、化学合成品又は植物原料由来のポリフェノール類のいずれでもよく、好ましくは、植物原料由来のポリフェノール類である。
【0052】
かかる植物原料由来のポリフェノール類は、例えば、緑茶(抹茶煎茶等)、紅茶、ウーロン茶、プーアル茶(黒茶)、マテ茶等の茶葉、白色野菜、橘類の果皮や種子、ブドウの果皮や種子(赤ワイン、赤ブドウ果汁等)、リンゴ、柿、桃、梨、タマネギの皮、栗、ゴボウ、コーヒー豆、カカオ豆等の植物から得ることができる。具体的には、前記植物から温水等で抽出される抽出物(又は抽出液)に含まれており、この抽出物を適宜精製することにより、所望のポリフェノール類(例えば、タンニン類、カテキン類、プロアントシアニジン類(又はプロトシアニジン)、フラボノイド類等)を得ることができる。
【0053】
植物原料由来のポリフェノール類としては、例えば、フラボン(ルチン、ルテオリン等)、フラノロール(ケルセチン、ケンフェロール等)、フラバノン(へスペリジン、ナリンジン等)、フラバノール(カテキン類)、アントシアニジン(シアニジン等)、イソフラボン(ゲニステイン、ゲニスチン、ダイゼイン等)、タンニン類(カテコールタンニン、ピロガロールタンニン等のタンニン(没食子)、タンニン酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸等)、カテキン類((+)カテキン、(+)ガロカテキン、(+)エピカテキンとその没食子エステル、(+)エピガロカテキンとその没食子エステル、テアルビジンとその没食子エステル、プロデルフィニジンとその没食子等)等が挙げられる。植物原料由来のポリフェノール類としては、カテキン類が好ましい。
【0054】
本発明で使用されるポリフェノール類は、上述の抽出物(又は抽出液)それ自体を使用してもよいし、また、その抽出液からポリフェノール類を濃縮した液を使用してもよいし、さらに、その抽出物(又は抽出液)からポリフェノール類を精製して使用してもよい。また、ポリフェノール類は1種又は複数種の混合物として用いることもできる。また、単に、通常の緑茶、紅茶、ウーロン茶、プーアル茶(黒茶)、マテ茶、赤ワイン、赤ブドウ果汁やコーヒー等、あるいは、それらの市販飲料水をそのまま使用してもよい。なお、ポリフェノール類を効率的に使用できるという観点から、市販飲料水をそのまま用いるよりも、抽出物を用いる方が好ましい。また、本発明で使用するポリフェノール類は粉末又は水溶液のいずれでもよい。
【0055】
かかる多価アルコールを含有させることにより、上記と同様に、キシログルカン含有組成物のゲル化速度を調整し易くすることができる。なお、多価アルコールとしてポリフェノール類を含有させる場合には、ポリエチレングリコールを含有させる場合と比較して低濃度で、キシログルカン含有組成物のゲル化を促進することが可能となる。
【0056】
また、上記した、ベンゼン環を構成していない炭素に水酸基が結合して成る多価アルコールと、ベンゼン環を構成している炭素に水酸基が結合して成る多価アルコールとを、組み合わせて用いることが好ましく、これにより、ゲル化速度を一層調整し易くすることだけでなく、触感等の物性を向上させることができる。また、具体的には、ポリエチレングリコールとポリフェノール類とを組み合せて用いることが好ましい。
【0057】
前記キシログルカン含有組成物中におけるキシログルカン、ショ糖及び多価アルコールの配合量については、前記キシログルカン含有組成物が、該組成物全体に対してキシログルカンを0.1〜5重量%含有することが好ましく、1.5〜3重量%含有することがより好ましい。前記キシログルカン含有組成物が、キシログルカンを0.1重量%以上含有することにより、ゲルの強度を高めることができる。一方、前記キシログルカン含有組成物が、キシログルカンを5重量%以下含有することにより、該キシログルカン含有組成物を取扱い易い粘度範囲に収めることができる。
【0058】
また、前記キシログルカン含有組成物が、該組成物全体に対してショ糖を5〜55重量%含有することが好ましく、5〜40重量%含有することがより好ましい。前記キシログルカン含有組成物が、ショ糖を5重量%以上含有することにより、ゲル化を促進することができる。一方、前記キシログルカン含有組成物が、ショ糖を55重量%以下含有することにより、ゲル化速度とゲル物性をコントロールして、ゲルの硬さを調整しゲルの触感が低下し過ぎたりすることを抑制することができる。
【0059】
また、前記キシログルカン含有組成物が、キシログルカン含有組成物全体に対して多価アルコールを0.05〜50重量%含有することが好ましく、0.5〜30重量%とすることがより好ましい。前記キシログルカン含有組成物が、多価アルコールを0.05重量%以上含有することにより、ゲル化を促進することができる。一方、前記キシログルカン含有組成物が、多価アルコールを50重量%以下含有することにより、ゲル化速度とゲル物性をコントロールして、ゲルの硬さを調整しゲルの触感が低下し過ぎたりすることを抑制することができる。
【0060】
また、多価アルコールとしてポリエチレングリコールを含有する場合には、キシログルカン含有組成物が、該組成物全体に対してポリエチレングリコールを2〜20重量%含有することが好ましい。前記キシログルカン含有組成物が、ポリエチレングリコールを2重量%以上含有することにより、ゲル化を促進することができる。一方、前記キシログルカン含有組成物が、ポリエチレングリコールを20重量%以下含有することにより、ゲル化速度とゲル物性をコントロールして、ゲルが硬くなり過ぎたりゲルの触感が低下し過ぎたりすることを抑制することができる。
【0061】
また、多価アルコールとしてポリフェノール類を含有する場合には、キシログルカン含有組成物が、該組成物全体に対してポリフェノール類を0.05〜4重量%含有することが好ましい。このように0.05重量%以上含有することにより、ゲル化を促進することができる。一方、前記ゲル状組成物が、ポリフェノール類を4重量%以下含有することにより、ゲル化速度とゲル物性をコントロールして、ゲルの硬さを調整しゲルの触感が低下し過ぎたりすることを抑制することができる。
【0062】
前記キシログルカン含有組成物のpHは、3以上である。pHが3以上であることにより、前記キシログルカン含有組成物のゲル化速度の調整が容易となり、所望のゲル成形体を調製し易くなる。また、無用の着色を防止することもできる。加えて、水とショ糖と多価アルコールとを含有しつつpHを3以上とすることによって、カルボキシル基を含む酸を必須としなくても前記キシログルカン含有組成物のゲル化が可能となる。一方、前記キシログルカン含有組成物の上限は、pHの上限たる14以下である。また、前記キシログルカン含有組成物のpHは、10以下であることが好ましい。pHが10以下であることにより、無用の着色を防止することができる。
【0063】
かかるpHは、キシログルカン含有組成物に酸、アルカリ、pH調整剤等を含有させることによって調整することができる。また、酸としては、上記の通り、カルボキシル基を含む酸を必須としなくてもゲル化が可能となるため、カルボキシル基を含有しない酸を含有させることができる。
【0064】
前記キシログルカン含有組成物のゲルの物性は、皮膚への付着性と適度な強度をもったものが好ましい。また、前記ゲル状組成物は、各成分が十分に溶解すれば、透明となる。但し、必ずしも透明である必要はなく、前記ゲル状組成物中の成分が一部溶け切れずに残っているような場合も含まれる。また、後述するように必要に応じて着色剤等を添加して着色することもできる。
【0065】
なお、前記キシログルカン含有組成物には、必要に応じて、上記以外の成分を含有させることができる。
【0066】
また、例えば、前記キシログルカン含有組成物に可塑剤を含有させることができ、これにより、肌触りのよい滑らかなゲルとなる。このような可塑剤としては、例えば、流動パラフィン、エチレングルコール及びそのオリゴマー、プロピレングリコールおよびそのオリゴマー、ポリグリセリンやグリセリン等にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等が付加されて成るグリセリン誘導体、ソルビトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0067】
また、例えば、前記キシログルカン含有組成物に、薬学的に許容される各種成分を含有させることができ、例えば皮膚疾患や粘膜疾患の治療に有効な有効成分や、外用剤中に通常使用されるような成分を含有させることができる。
【0068】
例えば、創傷治療成分や、消毒、殺菌、制菌または抗菌等の作用を有する成分を含有させることができ、該成分として、具体的には、スルファジアジン銀、銀コロイド、銀イオン、ポピドンヨード、次亜塩素酸ナトリウムやエタノール等のアルコール類等が挙げられる。
【0069】
例えば、上記した銀コロイドを用いる場合、銀粒子を10nm程度に微粒子化し、水溶液中に分散したコロイドが使用できる。この銀コロイドは安定剤としてポリビニルピロリドンを含有してもよく、水溶性のコロイドとして抗菌効果を期待できる。例えば市販品として、銀コロイド溶液(商品名:NANOVER PR−WB14R、日本イオン株式会社製、銀微粒子含有率:1重量%)を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0070】
また、前記キシログルカン含有組成物に、抗炎症作用、保湿作用や血管収縮作用等の作用を有する成分等を含有させることもでき、具体的には、グリチルリチン酸、塩化プロカイン、リドカイン、コルチゾン、ベタメタゾン、アロエ、塩酸エフェドリン、ヒアルロン酸ナトリウム、オリーブ油等が挙げられる。
【0071】
また、その他、外用剤中に通常用いられるような成分を含有させることができ、具体的には、香料、色素、緩衝剤、キシログルカンを除く多糖類等を含有させることができる。かかる多糖類としては、具体的には、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸塩類、ペクチン、寒天、結晶セルロース、ゼラチン、澱粉、デキストリン等が挙げられる。
【0072】
本発明に係るキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法は、水と、キシログルカンと、ショ糖と、多価アルコールとをpH3以上となるように混合してゾル状の混合溶液(4成分の混合溶液)を得、得られた混合溶液をゲル化させることによって成形する。
【0073】
これにより、容易に優れたキシログルカン含有ゲル成形体を製造することができる。
【0074】
具体的には、キシログルカン、ショ糖及び多価アルコールを粉末のまま混合したもの、または、これらに脱イオン水を添加してスラリー状にしつつ混合したものを、よく攪拌しつつ脱イオン水中に分散・溶解して混合溶液を調製した後、70〜90℃程度に加熱し、加熱後、適当な型に流し込み、あるいは、皮膚や粘膜の疾患患部に塗布した後、放冷等により冷却することによって、成形することができる。
【0075】
また、上記4成分の混合溶液を調製した直後には、ゾル状であって流動性を有するが、時間の経過により、ゲル化する。具体的には、概ね一時間以内にゲル化する。従って、上記4成分を混合し、得られたゾル状の混合物を、該混合物がゲル化する前に皮膚や粘膜に塗布することにより、上記時間が経過すると前記キシログルカン含有組成物がゲル状に変化し、皮膚や粘膜に付着する。これにより、疾患部分を覆うことができる。
【0076】
ここで、キシログルカンの水溶液に40重量%以下のショ糖を添加してもゲル化速度は余り大きくないが、キシログルカンの水溶液に多価アルコールを添加すると、ゲル化速度は急激に大きくなる。従って、上記した4成分の混合溶液を、水、キシログルカン及びショ糖の混合溶液と、多価アルコールとを混合して調製することが好ましい。これにより、多価アルコールの添加タイミングによってキシログルカン含有組成物のゲル化速度を調整することができるため、キシログルカン含有ゲル成形体の調製が、より容易となる。従って、看護者の都合に応じてゲル化速度を調整することができるため、その作業負担を軽減することができる。
【0077】
この場合、具体的には例えば、キシログルカンを脱イオン水に加えて上記のように加熱溶解させた後、該水溶液にさらにショ糖と適切な可塑剤とを加えて溶解させることにより、水、キシログルカン及びショ糖の混合溶液を調製し、この溶液に、多価アルコールを加えて混練(混合)することができる。
【0078】
また、上記した4成分の混合溶液を、水及びキシログルカンの混合溶液と、水、ショ糖及び多価アルコールの混合溶液とを混合して調製することもできる。具体的には例えば、キシログルカンの粉末を脱イオン水によく攪拌しつつ分散、溶解させて調製した水溶液と、ショ糖と多価アルコールとを脱イオン水に添加して混合しよく攪拌させて調製した水溶液とを調製し、両水溶液を、上記例示した各成分の配合量となるように所定の比率で混合することができる。そして、得られた4成分の混合溶液を、例えばホットプレート上に載置した4×4cmの正方形状の型枠に流し込み、37℃で加熱することにより、前記キシログルカン含有ゲル成形体をシート状に成形することができる。
【0079】
このように37℃の加熱でゲル化が可能となるのは、以下の理由による。すなわち、上記4成分の混合溶液は、該混合溶液全体に対するキシログルカン、ショ糖及び多価アルコールの3成分の濃度が高い程、ゲル化させるために高温とする必要がある。しかし、例えば、上記3成分の濃度が比較的低い濃度であるような4成分の混合溶液の場合、37℃で加熱することにより、加温と共に経時的に水分が失われ、その結果、該混合溶液中の上記3成分の濃度が高くなるため、該混合溶液をゲル化させることができる。また、このことから、混合用液を塗布することにより、皮膚の温度による加温と経時的に水分が失われることによって、別途加熱することなく混合溶液をゲル化させることが可能となる。
【0080】
このように、前記キシログルカン含有ゲル成形体がシート状、すなわち、前記キシログルカン含有組成物がシート状であることにより、皮膚疾患や粘膜疾患の患部を、より広範囲にわたって覆うことが可能となる。
【0081】
また、かかるシート状のキシログルカン含有ゲル成形体(キシログルカン含有組成物)と、フィルム等のシート状の基材とが積層することにより、キシログルカン含有貼付用シートを形成することができる。このような、ゲル状の前記キシログルカン組成物と、シート状の基材とが積層されて成るキシログルカン含有貼付用シートによれば、前記キシログルカン含有組成物の強度が補強され得るため、皮膚や粘膜への貼付に際し、より耐久性が向上する。
【0082】
また、上記したキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法において、前記混合溶液を被付着領域に付着させつつゲル化させることも好ましい。これにより、皮膚または粘膜における患部の形状に応じて、適切に患部を覆うことが可能となる。
【0083】
例えば、ゾル状の混合溶液を、上記したように皮膚または粘膜に塗布しつつゲル化させる他、前記混合溶液がゾル状の間に患部にスプレーしたり、前記混合溶液を口に含んでうがいをしたりすることにより、スプレーされた箇所や、口腔内において前記混合溶液がゲル化してキシログルカン含有ゲル成形体を形成することができる。このように、キシログルカン含有ゲル組成物をスプレー剤や、含嗽剤として用いることも好ましい。これにより、塗布することが困難な患部に対しても、前記キシログルカン含有組成物を付着させて覆うことができる。
【0084】
上記の通り、前記キシログルカン含有組成物は、ゾル状からゲル状へと変化し、その変化に要する時間が上記の通りであることから、皮膚または粘膜に付着させるための外用剤の基材として、好適に用いることができる。すなわち、キシログルカン含有組成物を、あらかじめゲル化させてシート状にする代わりに、該キシログルカン組成物にワセリンなどの油脂性基剤や、乳剤性基剤を含有させてクリーム状にして皮膚または粘膜に塗布し、皮膚または粘膜の体温で水分を蒸散させることによって、シート状とすることができる。
【0085】
また、前記キシログルカン含有組成物がゲル状であることにより、弾性力を発揮させることができるため、患部の保護に優れる。さらに、ゲルの物性を組成や調製方法で容易に制御でき、様々な物性を付与でき、適度な強度と柔軟性、進展性を有するため、皮膚や粘膜での使用感触が良好となる。また、前記キシログルカン含有組成物によって、患部と外部環境との接触を防止できるため、衛生面にも優れる。
【0086】
加えて、創傷治療に用いる場合、前記キシログルカン含有組成物が患部の浸出液と接触してもゲル物性が変化し難いため、ゲル化したキシログルカン含有組成物が崩壊し難い。また、前記キシログルカン含有組成物は、透明であるため、皮膚や粘膜上に塗布した後でも疾患の状態が確認でき、効果的である。また、前記キシログルカン含有組成物は、キシログルカン及びショ糖等、天然物由来のものを含有しているため、安全性に優れ、環境にも優しい。
【実施例】
【0087】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例では、キシログルカンとして、タマリンド種子由来のキシログルカン(商品名「グリロイド6C」、DSP五協フード&ケミカル株式会社製)を用いた。また、該キシログルカンは、水溶液に溶解させた後、エタノールで分別沈殿させることにより、さらに精製して用いた。また、ショ糖として、白糖(商品名:精製白糖、和光純薬工業株式会社製)を用いた。
試験例1 ポリエチレングリコール及びポリフェノール類によるゲル化促進効果
【0088】
ゲル化促進効果は、調製した試料の貯蔵剛性率(G’)の時間依存性を測定することにより評価した。測定装置としてDynamic Stress Rheometer Model:SR−2000(Rheometric Scientific社製)を使用し、所定の温度域において、角周波数1.0rad/sで動的粘弾性の測定を行った。その際、線形範囲内での測定を保障するべく、微小応力(0.1Pa)条件を保つように応力を制御した。なお、測定にはパラレルプレートを使用した。
【0089】
ここで、G’とは、複素剛性率の実数部分のことを言い、ゲル状物質を変形させた後、外力を取り除いた際に、ゲル状物質が外に対してする仕事に関係するものであり、エネルギーを貯蔵する度合いの指標となる。従って、本発明においては、弾性的な項であるG’の増加を、ゲル化の指標とした。
【0090】
表1の処方に従い、キシログルカンを脱イオン水に80℃で溶解させてA液、ショ糖及び多価アルコールとしてポリフェノール(商品名「サンフェノン」、太陽化学社製、ポリフェノール含量87.9重量%)を用いる場合は、これを脱イオン水に80℃で溶解させてB液を得た。次に、80℃に加熱しながら、A液とB液とを試験管中で混合し、37℃における動的粘弾性を測定した。ポリエチレングリコール400(PEG400:商品名「ポリエチレングリコール#400」、ナカライテスク社製)を用いる場合は、これをC液としてA液、B液混合後に添加した。混合後の時間に対するG’の変化を図1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
図1に示したように、ポリエチレングリコールもポリフェノール類も添加しない比較例1では、G’の変化がなくゲル化しなかったが、ポリフェノール類の添加、または、ポリエチレングリコールの添加により、G’が急激に立ち上がり、ゲル化が促進された。
【0093】
試験例2 ポリフェノール類のゲル化促進効果(1)
表2の処方に従い、各原料を脱イオン水に80℃で溶解させて、A液、B液を得た。80℃に加熱しながら、A液、B液を試験管中で混合した。37℃もしくは、10℃におけるポリフェノール類のゲル化促進効果を評価した。評価においては、ゲル化速度が速くなった場合(上記した時間−G’のグラフに立ち上がりが見られた場合)を○、ゲル化速度が変わらなかった場合を×とした。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
表2から明らかなように、ポリフェノール類が添加されていない比較例2と比較して、ポリフェノール類を0.05重量%以上添加した実施例3〜7では、ゲル化が促進され、特にポリフェノール類を0.1重量%以上添加した実施例4〜7では、一層ゲル化が促進された。
【0096】
試験例3 ポリフェノール類のゲル化促進効果(2)
試験例2と同様に、表3の処方に従い、ショ糖濃度及びキシログルカン濃度を変えて、A液とB液とを混合し、ポリフェノール類のゲル化促進効果を、試験例2と同様にして評価した。結果を合わせて表3に示す。
【0097】
【表3】

【0098】
表3から明らかなように、ポリフェノール類が添加されていない比較例3、4、5と比較して、ポリフェノール類が添加された実施例8〜10では、キシログルカン濃度及びショ糖濃度によらず、ゲル化が促進された。
【0099】
試験例4 ポリエチレングリコールのゲル化促進効果(1)
試験例2と同様に、表4の処方に従い、A液とB液とを混合し、ポリエチレングリコールのゲル化促進効果を、試験例2と同様にして評価した。結果を合わせて表4に示す。
【0100】
【表4】

【0101】
表4から明らかなように、ポリエチレングリコールが添加されていない比較例6、7と比較して、ポリエチレングリコールが5重量%以上添加された実施例11〜14では、ゲル化が促進された。また、ショ糖の濃度が高いほど、ポリエチレングリコールが低濃度でもゲル化促進効果が得られた。
【0102】
試験例5 ポリエチレングリコールのゲル化促進効果(2)
表5の処方に従い、A液とB液とを混合し、キシログルカン濃度が比較的高い場合について、ポリエチレングリコールのゲル化促進効果を、試験例2と同様にして評価した。結果を表5に示す。
【0103】
【表5】

【0104】
表5から明らかなように、ポリエチレングリコールが添加されていない比較例8、9と比較して、ポリエチレングリコールが2重量%以上添加された実施例15〜18では、ゲル化が促進され、特に5重量%以上添加された実施例15〜18では、一層ゲル化が促進された。また、上記表4と同様に、ショ糖の濃度が高いほど、ポリエチレングリコールが低濃度であってもゲル化促進効果が得られた。
【0105】
試験例6 グリセロールのゲル化促進効果
表6の処方に従い、A液とB液とを混合し、グリセロールのゲル化促進効果を、試験例2と同様にして評価した。結果を合わせて表6に示す。
【0106】
【表6】

【0107】
表6から明らかなように、グリセロールが添加されていない比較例10、11と比較して、グリセロールが添加された実施例19、20では、ゲル化が促進された。また、ショ糖の濃度が高いほど、グリセロールが低濃度であってもゲル化促進効果が得られた。
【0108】
試験例7 ブチレングリコールのゲル化促進効果
表7の処方に従い、A液とB液とを混合し、ブチレングリコールのゲル化促進効果を、試験例2と同様にして評価した。結果を合わせて表7に示す。
【0109】
【表7】

【0110】
表7から明らかなように、ブチレングリコールが添加されていない比較例12、13と比較して、ブチレングリコールが添加された実施例21〜24では、ゲル化が促進された。また、ショ糖の濃度が高いほど、ブチレングリコールが低濃度であってもゲル化促進効果が得られた。
【0111】
試験例8 銀コロイドの添加によるゲル化促進効果への影響
表8の処方に従い、A液とB液とを混合し、ポリエチレングリコールによるゲル化促進効果に対する銀コロイド添加の影響を、試験例2と同様にして評価した。銀コロイドとして、銀コロイド溶液(商品名「NANOVER PR−WB14R」、日本イオン株式会社製、銀微粒子配合率:1重量%)を使用した。結果を合わせて表8に示す。
【0112】
【表8】

【0113】
表8から明らかなように、銀コロイドが添加されていない実施例14と同様に、銀コロイドが添加された実施例25においても、ポリエチレングリコールによりゲル化が促進された。ゲル化速度は実施例14と同程度であり、銀コロイドはゲル化速度に悪影響を与えなかった。
【0114】
試験例9 創傷治療用外用剤の基材としての効果
創傷基材としての効果は、凍傷モデルラットに対してキシログルカン−ショ糖−ポリエチレングリコールのシートを用いて行った。該シートは、まず、表9の処方に従い、キシログルカンを2重量%、白糖を33重量%、PEG400を6.5重量%混合した溶液6gを、3cm×4cmの型枠に流し込み、シート状の組成物を調製した。次に、調製したシート状の組成物の上に、ポリウレタンフィルム(商品名「カテリープ」、ニチバン製)を1枚重ねることによって、実施例26の貼付用のシートを作成した。
【0115】
一方、ガーゼを6枚重ねただけのものを比較例14とした。また、キシログルカンを2重量%、白糖を33重量%とし、PEG400を用いないこと以外は上記した実施例26と同様にしてシート状の組成物を調製し、その上に上記ポリウレタンフィルムを重ねることによって、比較例15の貼付用のシートを調製した。
【0116】
【表9】

【0117】
そして、7週齢Wistar系雄性ラットにペントバルビタール水溶液を腹腔内注射して麻酔をかけた後、右背部の毛を刈り、直径1.5cmの円状に皮膚を切除した。創傷面にラップをかぶせ、アセトン−ドライアイスを満たした円柱の真鍮管を腹部に自重で押しつけることにより、創傷部を形成した。創傷部にはガーゼを4枚重ねて一晩置き、翌日から上記各シートの適用を開始した。
【0118】
上記各シートは1日おきに交換し、創傷部の評価を行った。創傷サイズについては、該創傷領域の長径(acm)×短径(bcm)によって算出された創傷面積(a×bcm2)とし、処置直後(経過日数0日)の創傷面積に対する各経過日数における創傷面積の比率を算出することによって評価した。なお、創傷面積は、定規により測定した。また、創傷面の状態は観察および状態で総合的に評価した。結果を表10および図2に示す。
【0119】
【表10】

【0120】
比較例14と比較して、実施例26では、創傷面の減少が早く、創傷面の状態も良好であった。この結果、キシログルカン−ショ糖−ポリエチレングリコールを含有する組成物を用いたシートは、創傷治療に有効であることが示された。なお、比較例15では、基材がゲル化せず、混合物を創面に載せることができなかったため、評価できなかった。
【0121】
試験例10 銀コロイドを含有したシートの効果
試験例9と同様のモデルを用いて評価した。表11の処方に従い、キシログルカンを2重量%、白糖を33重量%、PEG400を6.5重量%、銀コロイド溶液0.5重量%とすること以外は上記した実施例26と同様にして、実施例27の貼付用シートを作成した。
【0122】
そして、実施例27及び上記した実施例26を用い、試験例9と同様にして、創傷面の状態は観察および状態で総合的に評価した。結果を表12、表13に示す。
【表11】

【0123】
【表12】

【0124】
【表13】

【0125】
実施例26と比較して、銀コロイドを含有する実施例27のシートでは、比較的臭気の減弱化が認められたことから、有効成分たる銀コロイドの作用により、感染が抑えられたものと考えられる。この結果、銀コロイドの添加が、創傷治療用シートの治療効果の改善に対して効果的であることが示された。なお、実施例27では、銀コロイドの抗菌作用に加え、キシログルカン−ショ糖−ポリエチレングリコールからなるシートにより、細菌感染防止作用や肉芽形成作用が促進されたことから、治療効果が高くなったものと考えられる。
【0126】
試験例10 pHのシートへの影響
表9、11に示す実施例26の処方に従い、キシログルカンを2重量%、ショ糖を33重量%、PEG400を6.5重量%、水を18.5重量%混合し、pHを調整した混合溶液を調製した。なお、混合溶液pHは、1.5、3、8、11に調整し、pHの調整は、塩酸溶液或いは水酸化ナトリウム溶液を添加することにより行った。混合溶液をレトルトパウチに入れ、121℃で30分間、加熱を行った。その後、10℃にて24時間放置した後、ゲル化の程度を評価した。結果を表14に示す。なお、塩酸も水酸化ナトリウムも加えず、pHが未調整である上記実施例26のpH、及び、該実施例26について上記と同様にゲル化の程度を評価した結果を、表14に併せて示す。
【0127】
【表14】

【0128】
比較例16ではゲル化しないという結果が得られた。また、比較例16では色調変化が生じる傾向にあった。さらに、実施例30でも色調変化が生じる傾向にあったため、pHは10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましいことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、キシログルカンと、ショ糖と、多価アルコールとを含有し、pHが3以上であることを特徴とするキシログルカン含有組成物。
【請求項2】
前記多価アルコールが、ポリエチレングリコールまたはポリフェノール類のうち少なくとも1つを含有する請求項1に記載のキシログルカン含有組成物。
【請求項3】
キシログルカン含有組成物全体に対し、前記キシログルカンを0.1〜5重量%、前記ショ糖を5〜55重量%、前記多価アルコールを0.05〜50重量%含有する請求項1または2に記載のキシログルカン含有組成物。
【請求項4】
前記多価アルコールが、ポリフェノール類を含有し、且つ、キシログルカン含有組成物全体に対して該ポリフェノール類を0.05〜4重量%含有する請求項3に記載のキシログルカン含有組成物。
【請求項5】
皮膚または粘膜に付着させるためのものである請求項1〜4のいずれかに記載のキシログルカン含有組成物。
【請求項6】
シート状である請求項1〜5のいずれかに記載のキシログルカン含有組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のキシログルカン含有組成物とシート状の基材とが積層されて成るキシログルカン含有貼付用シート。
【請求項8】
水と、キシログルカンと、ショ糖と、多価アルコールとをpH3以上となるように混合してゾル状の混合溶液を得、得られた混合溶液をゲル化させることによって成形することを特徴とするキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法。
【請求項9】
前記混合溶液を、前記水、前記キシログルカン及び前記ショ糖の混合溶液と、前記多価アルコールとを混合して調製する請求項8に記載のキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法。
【請求項10】
前記混合溶液を被付着領域に付着させつつゲル化させる請求項8または9に記載のキシログルカン含有ゲル成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−254940(P2012−254940A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127312(P2011−127312)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(501360821)DSP五協フード&ケミカル株式会社 (6)
【出願人】(505232346)学校法人星薬科大学 (5)
【Fターム(参考)】