説明

キシロースで生育する非組換えサッカロマイセス株

本発明は、キシロースを唯一の炭素源として望ましい生育速度(例えば、少なくとも48時間あたり一世代)で生育し得るサッカロマイセス株の作製方法、そのような方法により作製される株、並びに非組換え手法によって作製される、生育のための唯一の炭素源としてキシロースを用いて少なくとも48時間あたり一世代の生育速度で生育するサッカロマイセス株に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は非組換えサッカロマイセス(サッカロマイセス)株の作成方法、サッカロマイセス株およびその用途に関する。
【0002】
本明細書で引用する、いかなる特許および特許出願を含む全ての参考文献は、参照することにより本明細書に含まれる。いかなる参考文献資料も先行技術を構成することを認容するものではない。参考文献の考察はそれらの著者主張していることを述べており、出願人は引用文献の正確性と妥当性に意義を申し立てる権利を留保している。多くの先行技術刊行物がここで参照されているけれども、この参照が、これらの文献がオーストラリアや他のいかなる国においても当該技術分野における一般常識の一部分を成すことを容認するものではないと、明確に理解されるだろう。
【0003】
酵母の最も重要実用的なグループの一つはサッカロマイセス属株のものであり、その菌株は醸造、製パン、ワイン作り、蒸留、および様々な他の酵母依存的産業に用いられている。サッカロマイセスはKurtzman (2003) FEMS Yeast Reserch 3 : 417-432 によって系統発生学的に分類され、S.セレビシエ(S.セレビシエ)、S.パラドキサス(S.paradoxus)、S.ミカテ(S.mikatae)、S.カリオカヌス(S.cariocanus)、S.クドリアブゼヴィ(S.kudriavzevil)、S.パストリアヌス(S.pastorianus)、およびS.バイヤヌス(S.bayanus)を含む。サッカロマイセス種はグルコース、フルクトース、スクロース、およびマルトースのような糖をバイオマスに変換したり、あるいはこれらの糖をエタノールに発酵させるのに最も効速度的な微生物の一つである。結果として、サッカロミセス属、特にS.セレビシエは、産業的過程において最も広範囲に用いられる微生物の一つである。例えば、ビール醸造、蒸留、ワイン産業においては、サッカロマイセスはグルコース、フルクトース、スクロース、及び/またはマルトースのような糖をエタノールに発酵させるのに用いられている。燃料用エタノール産業では、S.セレビシエ株は、グルコース、フルクトース、スクロース、あるいはマルトースのような高濃度の糖を大量のエタノールに急速に変換することができるために選ばれる。製パン業では、S.セレビシエ株は、主としてグルコース、フルクトース、スクロース、および/またはマルトースのような糖から二酸化炭素を産生することができることから、主にパンを発酵させるために用いられている。他にもS.セレビシエの用法として酵母抽出物、その他の香料、芳香製品産物の製造、インベルターゼのような酵素の源、様々な生化学物質、中間物質、たんぱく質、アミノ酸、リボ核酸、ヌクレオチド補共因子、あるいはビタミンの生産がある。
【0004】
産業過程においては毎年数百万トンの酵母が生育されている。それゆえに、サッカロマイセスが豊富で再生可能な炭素資源で生育しうることは、産業の目的のための、および酵母の代謝から得られる副産物の経済的生産のための、酵母バイオマスの経済的生産の観点から重要である。特にサッカロマイセスが他の産業過程で生み出された不要な副産物で生育することができれば、環境的また経済的に価値がある。例えば、糖生産過程でできた廃棄物である糖液や、デンプン加水分解産業由来のグルコースおよびマルトース豊富なシロップで酵母を生育させることによって、パン酵母バイオマスがしばしば生産されている。
【0005】
(発明の要約)
本発明は、唯一の炭素源としてキシロースを利用して、望ましい生育速度(48時間で少なくとも一世代のような)で生育する能力を持つサッカロマイセス株の製造方法、およびこのような生育速度でキシロースで生育するサッカロマイセス株、およびその用途を提供する。
【0006】
キシロースは、以前はサッカロマイセスが利用できないと考えられていた、植物バイオマスから入手可能な、天然の豊富で再生可能な糖の一例である。例えば、Barnettら、「Yeasts Characteristics and Identification」第2版(1990)、ケンブリッジ大学出版によれば、サッカロマイセス・セレビシエ種は、生育のための唯一の炭素源としてキシロースは利用できないとある。キシロースは酵母生育のための、およびエタノールを含む酵母由来の工業製品のための主要な可能性のあるソースである。キシロースを酵母にとっての糖原料として用いれば、大きな経済的、環境的利点があるだろう。例えば、キシロース豊富な原料から燃料用エタノールを生産すれば、再生産エネルギーの重要な資源になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の態様において、本発明は、生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して、望ましい生育速度で生育できるサッカロマイセス株の製造方法であって、以下のことを含む方法を提供する。
・ サッカロマイセスの遺伝的に多様な非組替え酵母細胞の集団を準備する;
・ 該酵母細胞を、酵母細胞間でDNAが結合できる条件下で培養する;
・ 生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して、生育が増大した酵母細胞を得るべく、該酵母細胞をスクリーニングまたは選択する;
・ 望ましい生育速度を有する一つ以上の酵母細胞を単離する
【0008】
典型的には、酵母細胞は、対になった酵母細胞間でDNAが結合できる条件下で培養される。
【0009】
典型的には、望ましい生育速度は、その方法が使われなかったサッカロマイセス株の酵母細胞の生育速度に比べて増大した生育速度である。例えば、NL67株のようなサッカロマイセス株のことである。更に典型的には、望ましい生育速度とは、48時間で少なくとも1世代、更に典型的には、24時間で少なくとも1世代である。
【0010】
典型的には、望ましい生育速度を持った酵母細胞を目的として、酵母細胞は、キシロース含有培地中若しくは該培地上で培養することによってスクリーニングまたは選択される。典型的には、キシロース含有培地とはキシロース含有培養培地のことである。該培養培地は唯一の炭素源としてキシロースを含んでもよいし、あるいは、キシロースは複数の炭素源の一つとであってもよい。典型的には、キシロースはキシロース含有培地における唯一の炭素源である。典型的には、キシロース含有培養培地はキシロース最小無機物培地である。酵母細胞は、典型的には、キシロースを炭素源として利用して、望ましい生育速度を持った酵母細胞が生育できるのに充分な時間、キシロース含有培地上もしくは該倍地中で培養される。
【0011】
一実施形態において、スクリーニングまたは選択された酵母細胞は遺伝的に多様性を持った非組替え体の酵母細胞の母集団を形成し、工程(b)と(c)は望ましい生育速度を有する酵母細胞が得られるまで繰り返される。
【0012】
一実施形態においては、工程(b)が工程(c)の前に成される。別の実施形態においては、工程(c)は工程(b)の前に行われる。さらに別の実施形態においては、工程(b)と(c)は同時に行われる。
【0013】
第2の態様において、本発明は、生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して望ましい生育速度であり得る、培養物中のサッカロマイセス株の製造方法であって、以下のことを含む方法を提供する。
・ 遺伝的に多様なサッカロマイセスの非組替え酵母細胞の集団を準備する
・ 該酵母細胞を、酵母細胞間でDNAが結合できる条件下で培養する
・ キシロース含有培地上もしくは該倍地中で酵母細胞を培養することで、該酵母細胞をスクリーニングまたは選択する
・ 1つ以上の酵母細胞が生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して望ましい生育速度で生育する能力を獲得するまで、遺伝的に異なったサッカロマイセスの非組替え酵母の母集団を形成するスクリーニングまたは選択された細胞を用いて工程(b)と(c)を繰り返す
【0014】
典型的には、その方法は望ましい生育速度を有する一つ以上の酵母細胞を単離する更なる工程(e)からなる。一実施形態において、単離された一つ以上の酵母細胞は単一のサッカロマイセス株である。別の実施形態において、単離された一つ以上の酵母細胞は遺伝的に異なる酵母細胞の集団である。
【0015】
一実施形態において、酵母細胞は工程(c)で選択される。
唯一の炭素源であるキシロース上で生育できる酵母細胞が炭素源としてキシロースを利用して生育できるのに充分な時間、キシロース含有培地もしくは該培地中で酵母細胞を培養し、その後生育する酵母細胞を集めることによって、酵母細胞を工程(c)で選択してもよい。唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育速度が増大した酵母細胞が、炭素源としてキシロースを利用して生育できるのに充分な時間、キシロース含有培地もしくは該培地中で酵母細胞を培養し、その後生育する酵母細胞を集めることによって、酵母細胞を工程(c)で選択してもよい。
【0016】
一実施形態において、酵母細胞は工程(c)でスクリーニングされる。
唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育速度が増大した酵母細胞が、炭素源としてキシロースを利用して生育できるのに充分な時間、キシロース含有培地若しくは該培地中で酵母細胞を培養し、その後炭素源としてキシロースを利用して生育速度が増大した酵母細胞を集めることによって、酵母細胞を工程(c)でスクリーニングすることができる。
【0017】
工程(b)と(c)の反復の一部で酵母細胞を選択し、工程(b)と(c)の反復の一部で酵母細胞をスクリーニングすることも想定される。
【0018】
生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用し、望ましい生育速度で生育できる酵母株を得るに足るほど充分な回数、工程(b)と(c)は反復されうる。工程(b)と(c)の反復回数は用いられる培地、開始時の酵母株、培養条件等によることは当業者であればわかるだろう。別の実施形態において、工程(b)と(c)は少なくとも一回、典型的な場合は少なくとも2回、より典型的には少なくとも5回、更に典型的には少なくも10回、いっそう典型的には20回、適切には少なくとも30回繰り返される。
【0019】
酵母細胞は固形または液体のキシロース含有培地でスクリーニングまたは選択することができる。一実施形態において、細胞は固形のキシロース含有培地上でスクリーニングまたは選択される。別の実施形態において、細胞は液体のキシロース含有培地中でスクリーニングまたは選択される。更に別の実施態様において、細胞は固形のキシロース含有培地上でスクリーニングまたは選択がなされ、次いで、液体のキシロース含有培地中でスクリーニングまたは選択される。例えば、固形のキシロース含有培地を使って工程(b)と(c)を複数回反復して酵母細胞をスクリーニングまたは選択した後、液体のキシロース含有培地を使って工程(b)と(c)を複数回反復して酵母細胞をスクリーニングまたは選択してもよい。
【0020】
固形のキシロース含有培地は炭素源としてキシロースを含む任意の固形培地であり、唯一の炭素源としてのキシロースを利用できる株を選択することに利点がある。例えば、固形のキシロース含有培地はキシロースが複数の炭素源のなかの一つとして含まれる複合固形培地であってもよく、キシロースが唯一の炭素源として含まれる固形の最小培地であってもよい。典型的には、固形キシロース含有培地はキシロースが唯一の炭素源として含まれる固形最小培地だろう。
【0021】
液体のキシロース含有培地は炭素源としてキシロースを含む任意の液体培地である。
例えば、液体のキシロース含有培地はキシロースが多数の炭素源のなかの一つとして含まれる液体の複合培地かもしれないし、唯一の炭素源として含まれる液体の最小培地であるかもしれない。典型的には、液体のキシロース含有培地はキシロースが唯一の炭素源として含まれる液体最小培地だろう。典型的には、液体最小培地は唯一の炭素源としてキシロースを含む最小無機塩培地だろう。
【0022】
望ましい生育速度は典型的には少なくとも48時間で一世代である。
望ましい生育速度は24時間で一世代超であり得る。
望ましい生育速度は12時間で一世代超であり得る。
望ましい生育速度は10時間で一世代超であり得る。
望ましい生育速度は8時間で一世代超であり得る。
望ましい生育速度は4時間で一世代超であり得る。
望ましい生育速度は2時間で一世代超であり得る。
【0023】
作出されるサッカロマイセス株は唯一の炭素源としてキシロースを利用して望ましい生育速度で生育できるサッカロマイセス属の任意の種由来の株でありうる。作出される株はサッカロマイセスの遺伝的多様な非組み替え体酵母細胞の母集団を形成した種に依存したものであることは当業者であればわかるだろう。適当な酵母種の例としてはS.セレビシエ(S.セレビシエ)、S.パラドキサス(S.paradoxus)、S.ミカテ(S.mikatae)、S.カリオカヌス(S.cariocanus)、S.クドリアブゼヴィ(S.kudriavzevil)、S.パストリアヌス(S.pastorianus)、およびS.バイヤヌス(S.bayanus)が含まれる。典型的には、その株はS.セレビシエ種のものである。典型的には、その株は同種のサッカロマイセスと接合することができるだろう。典型的には、その株はサッカロマイセス.セレビシエと接合することができるだろう。
【0024】
酵母細胞間でDNAが結合できるような任意の条件下で酵母培養することができる(但し、DNAの結合は組替え手法によらない)。組換え手法以外の、例えば、接合、もしくは細胞誘導、あるいは酵母細胞のDNA結合技術として知られている他の任意の方法によって、酵母細胞間でDNAが結合できる条件下で酵母細胞を培養することができる。一実施形態において、酵母細胞が接合できる条件下で酵母細胞を培養する。典型的には、酵母の接合は酵母に胞子形成させること、胞子を発芽させること、発芽胞子を接合させることからなる。酵母の接合方法は当業者に知られており、また、例えばFowell (1969) “Sporulation and hybridization of yeast”「The Yeasts」、 (AH Rose and JS Harrison、編).、Academic Press、ヨーロッパ特許 EP 0 511 108、Attifield and Bell (2003) “Genetics and classical genetic manipulations of industrial yeasts” (Topics in Current Genetics、第2巻、Functioal Genetics of Industrial Yeasts )、J.H. de Winde、 編.)、Sprinnger-Verlag Berlin Heidelberg又はそれらの組み合わせに記載されている。
【0025】
遺伝的多様な非組み替え体の酵母細胞の母集団は任意のソース由来のサッカロマイセスの天然分離株、サッカロマイセスの自然突然変異分離株であってよく、または一つ以上のサッカロマイセス株を変異原に曝すことによって得られることもできる。遺伝的多様な非組み替え体の酵母細胞の母集団は単一の種から由来した株であってもよいし、あるいは、複数の種から由来した株であってもよい。
非組み替え体の酵母細胞の遺伝的多様な母集団として用いるのに適している種としてはS.セレビシエ、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.パラドキサス(S.paradoxus)、S.ミカテ(S.mikatae)、S.カリオカヌス(S.cariocanus)、S.クドリアブゼヴィ(S.kudriavzevil)、S.パストリアヌス(S.pastorianus)、およびS.バイヤヌス(S.bayanus)が含まれる。典型的には、その株はS.セレビシエ種のものである。典型的には、その株は同種のサッカロマイセスと接合することができる。典型的には、その株はサッカロマイセス.セレビシエと接合することができる。
【0026】
遺伝的に分岐した非組み替え体の酵母細胞の母集団に加えて、別の母集団として組換え酵母細胞を工程(b)と(c)に含みうることは当業者ならわかるだろう。
【0027】
第3の態様として、本発明は、生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育速度が増大したサッカロマイセス株の派生株の製造方法であって、以下のこと含む方法を提供する。
・ 遺伝的に多様なサッカロマイセス酵母細胞の母集団の一部分として該サッカロマイセス株を準備する
・ 集団の酵母細胞間でDNAの結合が生じうる条件下で、遺伝的に多様な非組み替え体のサッカロマイセス酵母細胞の母集団を培養する
・ キシロースを利用して生育速度が増大した該サッカロマイセス由来の派生株をを得るべく酵母細胞をスクリーニングまたは選択する
・ 生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用する該サッカロマイセス株の生育速度と比べて、生育速度が増大した該サッカロマイセス株の派生株を一つ以上単離する
【0028】
酵母細胞は典型的には、キシロース含有培地上もしくは該培地中で酵母細胞を培養することでスクリーニングまたは選択される。
【0029】
一実施形態において、酵母細胞は工程(c)で選択される。唯一の炭素源としてキシロースで生育することができる酵母細胞が炭素源としてキシロースを利用して生育できるのに充分な時間をかけてキシロース含有培地上もしくは該培地中で酵母細胞を培養することによって、酵母細胞を工程(c)で選択することができる。唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育速度が増大した酵母細胞が炭素源としてキシロースを利用して生育できるのに充分な時間、キシロース含有培地上又は該培地中で酵母細胞を培養することによって、酵母細胞を工程(c)で選択することができる。
【0030】
別の実施形態において、酵母細胞は工程(c)でスクリーニングされる。唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育速度が増大した酵母細胞が炭素源としてキシロースを利用して生育できるほど充分な時間、キシロース含有培地上又は該培地中で酵母細胞を培養し、その後炭素源としてキシロースを利用して最も速く生育する酵母細胞を集めることで、酵母細胞を工程(c)でスクリーニングすることができる。
【0031】
工程(b)と(c)は典型的には、一つ以上の派生株が生育のための唯一の炭素源としてのキシロース上で高い生育速度を獲得するまで、反復して行うことができ、それにより、該派生株は遺伝的に多様なサッカロマイセス株の母集団の少なくとも一部分を形成する。
【0032】
過去、サッカロマイセス.セレビシエがキシロースを利用できないという問題を解決するために、第三者は組換えDNA手法を用いて、炭素源としてキシロースを利用できるような酵母から得た遺伝子を導入し、サッカロマイセスにキシロースを利用できる能力を付与してきた (例えばSonderegger and Sauer (2003) Applied and Environmental Microbiology 69: 1990-1998)。このようなアプローチにおいて、キシロース資化のための遺伝子をキシロースを生育に利用することができる生物からクローンした後にサッカロマイセス.セレビシエに導入してきた。例えば、ピロマイセス種(Piromyces spp)由来の菌類キシロースイソメラーゼをサッカロマイセス.セレビシエのゲノムに組込んで、唯一の炭素源としてのキシロースを用いてゆっくりと生育することができる株を製作した(Kuyper他2003)。また、ピキア.スチピキス(Pichia stipitis)由来のキシロース還元酵素をサッカロマイセス.セレビシエにクローン化して、唯一の炭素源としてのキシロースを用いて生育できる酵母を作製した(Wahlbom他2003)。
【0033】
非組換え体のサッカロマイセス.セレビシエは「一般的に安全とみなされている」(GRAS)、そして仮に組み替え技術を用いてキシロースを利用できるサッカロマイセス.セレビシエを作製すれば、GRASの地位が失われてしまう。それゆえに、他の属や種由来の遺伝子を内包したり、DNA組換え技術を用いて生み出されたサッカロマイセス.セレビシエ株を用いることは、必ずしも産業的又は経済的に有用で、望ましく、あるいは適切であるとは限らない。実際、組換えDNAにより作製された株は、そのような株の使用に対して社会政策的または環境政策的あるいはその他の障壁があるような場所では産業的に有用ではない。
【0034】
DNA組換え技術の利用は人類の食料分野等において酵母を利用する機会や望ましさを減らしてしまうが、他方非組換え株は人類の食料分野等において有利に用いることができるだろう。エタノールと人類の食料を同時目的として非組換え酵母を用いることができれば、酵母を基礎とした過程の費用効果に改善の機会を与える。例えば、非組換え酵母はキシロースをエタノールと酵母バイオマスに換えるために用いることができる。エタノールは燃料や他の用途に用いることができる一方、産生された酵母は抽出物や他の副産物の製造のような価値ある用途に用いられうる。
【0035】
本発明者らは、唯一の炭素源としてキシロースを含む培地上でサッカロマイセスの非組換え野生型株を培養すると、キシロースで非常にゆっくりと生育することを発見した。
このことはサッカロマイセスがキシロースで生育できないことをはっきり示していた先行技術と相反するものである。本発明者らはキシロースによるサッカロマイセスの生育があまりに遅い為に、以前は検知することができなかったと確信している。ここで述べるように、本発明者らは唯一の炭素源としてキシロースを含む固形の最小無機塩培地にサッカロマイセス.セレビシエの野生型株を接種して、30度、2ヶ月間の培養後に顕微鏡のよるコロニー試験をしたら、生育を検知できることを見出した。生育が検知できたことで、非組換え方法を生育速度が増大した酵母を得るために用いることができるようになったが、観察されたような非常に遅い生育速度では産業上の有用性はない。
【0036】
本発明者らはサッカロマイセスが唯一の炭素源としてキシロース上で非常にゆっくり生育するという本発明者らの発見を、本発明の方法が用いられなかったサッカロマイセス株よりもキシロースを唯一の炭素源として、ずっと速い速度で生育しうるサッカロマイセス株の開発にまで広げた。本発明者らの発見以前は、キシロースはサッカロマイセスにとって利用できない炭素源と見られてたためサッカロマイセス酵母細胞を唯一の炭素源としてキシロースを含む培地上または該培地中で培養してもその培地では生育しないと考えられており、いかなる選択やキシロースで生育することができる酵母細胞富化を生じさせることできるとは考えられていなかった。それにもかかわらず、本発明者らの発見と選択戦略の組み合わせとサッカロマイセスの遺伝的に多様な株、適切にはサッカロマイセス.セレビシエ株の母集団の接合のような方法を用いることによって、本発明者らは本発明方法が用いられなかったサッカロマイセス株よりもずっと速い速度で唯一の炭素源としてキシロースを含む固形培地上や液体培地中で生育しうるS.セレビシエを作製することができることを見出した。 さらに、本発明者らは選択戦略とサッカロマイセスの遺伝的に多様な株の接合のような方法をとることによって、炭素源としてキシロースのみを用いて少なくとも48時間で一世代、およびいくつかの有利な実施形態では4時間で一世代超の生育速度を持つサッカロマイセス株を作製できることを見出した。このように非組換え手法を用いることで、本発明者らは炭素源としてキシロースのみ含む液体培地中においても固形培地上においても、産業上有用な速度で生育することができるサッカロマイセス株を作成することができた。
【0037】
第4の態様において、本発明は発明の第一から第三までの態様の方法により得られるサッカロマイセス株を提供する。
【0038】
第5の態様において、本発明は生育のための炭素源としてキシロースのみを用いて48時間で少なくとも一世代の速度で生育しうる単離されたサッカロマイセス株であって、以下のものを提供する。その株は
(i) 試験T1に特定される条件下で生育させたとき、5倍に増大したバイオマス
(ii) 試験T2に特定される条件下で生育させたとき、少なくとも10mg乾燥重量のバイオマスを産生する。そしてその株は第一から第三までの態様の方法により作製される。
【0039】
第6の態様において、本発明は生育のための唯一の炭素源としてキシロースを用いて48時間で少なくとも一世代の速度で生育し得る単離されたサッカロマイセス株を提供する。その株は
(i)その株は 試験T1に特定される条件下で生育させたとき、10倍に増大したバイオマスを産生する
(ii) その株は試験T2に特定される条件下で生育させたとき、少なくとも50mg乾燥重量のバイオマスを産生する
(iii) 試験T3に特定される条件下で少なくとも0.1 g/Lのエタノールが検出される
(iv) 試験T4に特定される条件下、30℃で、たんぱく質抽出物1mg、1分当たり少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化される
(v) 試験T5に特定される条件下、30℃で、たんぱく質抽出物1mg、1分当たり少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化される。そしてその株は第一から第三までの態様の方法により製造される。
【0040】
第7の態様において、本発明は生育のための唯一の炭素源としてキシロースを用いて48時間で少なくとも一世代の速度で生育しうる、単離されたサッカロマイセス株であって以下のものを提供する。その株は
(i)その株は 試験T1に特定される条件下で生育させたとき、5倍に増大したバイオマスを産生する
(ii) その株は試験T2に特定される条件下で生育させたとき、少なくとも40mg乾燥重量のバイオマスを産生する
(iii) 試験T4に特定される条件下、30℃で、たんぱく質抽出物1mg、1分当たり少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化される
(iv) 試験T5に特定される条件下、30℃で、たんぱく質抽出物1mg、1分当たり少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化される
(v) その株は 試験T7に特定される条件下で生育させたとき、5倍のバイオマスになる
(vi) 試験T8に特定される条件下で少なくとも0.04 g/Lのエタノールが検出される。そしてその株は第一から第三までの態様の方法を用いて得られる。
【0041】
第4の態様から第7の態様の一実施形態において、株は試験T9に特定される条件下で4ヶ月の期間内に0.2 g/Lのエタノールを産生する。
【0042】
第8の態様において、本発明は生育のための唯一の炭素源としてキシロースを用いて48時間で少なくとも一世代の速度で生育しうる単離されたサッカロマイセス株を提供し、その株の唯一の炭素源としてキシロースを利用する能力は非組換え手法により得られるものである。
【0043】
その株の生育速度は少なくとも48時間当たり一世代であればいかなる速度であってもよい。生育速度が少なくとも36時間当たり一世代でありうる。生育速度が少なくとも24時間当たり一世代以上でありうる。生育速度が少なくとも12時間当たり一世代以上でありうる。生育速度が少なくとも10時間当たり一世代以上でありうる。生育速度が少なくとも8時間当たり一世代以上でありうる。生育速度が少なくとも6時間当たり一世代以上でありうる。生育速度が少なくとも4時間当たり一世代以上でありうる。生育速度が少なくとも2時間当たり一世代以上でありうる。生育速度が少なくとも80分当たり一世代以上でありうる。
【0044】
一実施形態において、該株は、生育のための唯一の炭素源としてグルコースを用いる株の生育速度と実質的に同一の速度で、唯一の炭素源としてキシロースを用いて生育できる。
【0045】
一実施形態において、その株はキシロース最小無機塩培地上で48時間で少なくとも一世代の生育速度を持つ。
【0046】
一実施形態において、その株は試験T1で特定される条件下で育てると2倍に増大したバイオマスを産生する。典型的には、その株は試験T1で特定される条件下で生育すると少なくとも5倍に増大したバイオマスを産生する。適切な場合は、その株は試験T1で特定される条件下で生育すると少なくとも10倍に増大したバイオマスを産生する。
【0047】
一実施形態において、その株は試験T2で特定される条件下で生育すると培養液50ml当たり少なくとも0.01g乾燥重量のバイオマスを産生する。
【0048】
様々な実施形態では、
(i) その株は試験T4で特定される条件下で少なくとも1単位のキシロース還元酵素活性を持つ非組換え酵素を発現する
【0049】
(ii) その株は試験T5で特定される条件下で少なくとも1単位のキシリトールデヒドロゲナーゼ活性を持つ非組換え酵素を発現する
【0050】
(iii) その株は試験T4で特定される条件下で少なくとも1単位のキシロース還元酵素活性を持つ非組換え酵素を発現し、かつ試験T5で特定される条件下で生育すると少なくとも1単位のキシリトールデヒドロゲナーゼ活性を持つ非組換え酵素を発現する
【0051】
第9の態様において、生育のための本発明は唯一の炭素源としてキシロースを用いて48時間で少なくとも一世代の速度で生育することができ、キシロース還元酵素やキシリトールデヒドロゲナーゼからなる群より選択される活性を有する非組換え酵素を発現し得る単離されたサッカロマイセス株を提供する。ここでキシロース還元酵素活性は試験T4で測定すると、少なくとも1単位であり、そのキシリトールデヒドロゲナーゼ活性は試験T5で特定される条件下で測定すると、少なくとも1単位である。
【0052】
その株はキシロース還元酵素活性をもつ非組換え酵素およびキシリトールデヒドロゲナーゼ活性をもつ非組換え酵素を発現することができてもよい。一実施形態において、その株はキシロース還元酵素やキシリトールデヒドロゲナーゼからなる群より選択された活性を有する一つ以上の非組換え酵素に加えて、キシルロースキナーゼ活性をもつ非組換え酵素を発現することができる。典型的には、キシルロースリン酸化活性は試験T6で測定すると少なくとも5単位である。
【0053】
典型的には、第9の態様の株は唯一の炭素源としてキシロースを用いて48時間に少なくとも一世代の生育速度を有する。
【0054】
一実施形態において、その株は試験T1で特定される条件下で生育すると2倍に増大したバイオマスを産生する。典型的には、その株は試験T1で特定される条件下で生育すると少なくとも5倍に増大したバイオマスを産生する。さらに典型的には、その株は試験T1で特定される条件下で生育すると少なくとも5倍に増大したバイオマスを産生する。
【0055】
その株は試験T2で特定される条件下で少なくとも10mg乾燥重量のバイオマスを産生することができる。その株は試験T2で特定される条件下で少なくとも30mg乾燥重量のバイオマスを産生することができる。その株は試験T2で特定される条件下で少なくとも40mg乾燥重量のバイオマスを産生することができる。典型的には、その株は試験T2で特定される条件下で少なくとも50mg乾燥重量のバイオマスを産生することができる。
【0056】
その株は試験T2で特定される条件下で生育すると培養液50ml当たり少なくと0.01g乾燥重量のバイオマスを産生することができる。
【0057】
サッカロマイセス株はさらに生育のための唯一の炭素源としてキシリトールを用いることができるものであってもよい。典型的には、その株が唯一の炭素源としてキシリトールを利用する能力は非組換え手法により得られる。一実施形態において、その株は試験T7で特定される条件下で生育すると少なくとも5倍に増大したバイオマスを産生する。
【0058】
サッカロマイセス株は唯一の炭素源としてキシロースを用いて好気的または嫌気的にすることができる。典型的には、生育は好気生育である。しかし、サッカロマイセス株は唯一の炭素源としてキシロースを用いて嫌気的にあるいは微好気的にも生育し得る。
【0059】
サッカロマイセス株は嫌気条件下においてグルコースで生育することができてもよい。
【0060】
サッカロマイセス株はさらにキシロースを利用して、一つ以上の炭素化合物を生産することができてもよい。炭素化合物の適当な例としてはアルコール、キシリトール、酢酸のような有機酸、グリセロール、二酸化炭素、または酵母抽出物、たんぱく質、ペプチド、アミノ酸、RNA、ヌクレオチド、グルカン等を含む他の酵母の成分、代謝物および副産物が挙げられる。典型的には、アルコールはエタノールである。
【0061】
その株はキシロースで生育するときにエタノールを産生し得る。その株はキシロースで生育しなくても、キシロースを用いてエタノール生産できる。その株はキシロースからエタノールを産生しう得る典型的には、その株はキシロースを発酵させることでエタノールを生み出す。
【0062】
その株は試験T3で特定される条件下で少なくとも0.1g/Lの濃度でエタノールを生産し得る。
【0063】
その株は試験T8で特定される条件下で少なくとも0.4g/Lの濃度でエタノール生産し得る。
【0064】
その株は試験T9に特定される条件下で4ヶ月の期間内に少なくとも0.2g/Lのエタノールを産生し得る。その株はキシロース含有最小無機物培地に少なくとも5x108個 /mlの細胞密度で接種されれば少なくとも0.5g/Lのエタノールを産生し得る。キシロース含有最小無機物培地はグルコースを含んでいてもよい。典型的には、その株は培地に接種されてから5時間以内に0.5g/Lのエタノールを産生する。
【0065】
一実施形態において、その株は試験T3で特定される条件下でキシロースを発酵させて少なくとも培養液1L当たり0.05gのエタノールを産生する。
【0066】
その株は唯一の炭素源としてキシロースを用いて、固形培地上及び/または液体培地中で生育することができる。一実施形態において、その株は唯一の炭素源としてキシロースを含有する液体培地中で生育できる。その液体培地は唯一の炭素源としてキシロースを含有する液体無機物培地でありうる。
【0067】
そのサッカロマイセス株はサッカロマイセス属の任意の種由来の株であってよい。適当な酵母種の例としては、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.パラドキサス(S.paradoxus)、S.ミカテ(S.mikatae)、S.カリオカヌス(S.cariocanus)、S.クドリアブゼヴィ(S.kudriavzevil)、S.パストリアヌス(S.pastorianus)、およびS.バイヤヌス(S.bayanus)が含まれる。典型的には、その種はサッカロマイセス.セレビシエである。典型的には、その株は同種のサッカロマイセスと接合することができるだろう。典型的には、その株はサッカロマイセス.セレビシエと接合することができる。典型的には、その株はサッカロマイセス.セレビシエである。
【0068】
第8および第9の態様の実施形態では、そのサッカロマイセス株は組替え体である。
【0069】
第10の態様において、本発明は試験T1で特定される条件下で少なくとも2倍に増大したバイオマスを産生する単離された非組換えサッカロマイセス株を提供する。
【0070】
一実施形態において、バイオマスの増大は少なくとも5倍、典型的には、少なくとも10倍である。
【0071】
第11の態様において、本発明は以下のような特徴を持つ単離された非組換えサッカロマイセス株を提供する。
(a) 試験T1に特定される条件下で、その株のバイオマスは少なくとも5倍のバイオマスに増大する
(b) 試験T2に特定される条件下で、少なくとも10mg乾燥重量のバイオマスが産生される。
【0072】
第12の態様において、本発明は以下のような特徴を持つ単離された非組換えサッカロマイセス株を提供する。
(a)その株は試験T1に特定される条件下で、少なくとも10倍に増大したバイオマスを産生する
(b)その株は試験T2に特定される条件下で、少なくとも50mg乾燥重量のバイオマスを産生する
(c)試験T3に特定される条件下で少なくとも0.1 g/Lのエタノールが検出される
(d)試験T4に特定される条件下、30℃で、たんぱく質抽出物1mg、1分当たり少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化される
(e)試験T5に特定される条件下、30℃で、たんぱく質抽出物1mg、1分当たり少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化される。そしてその株は第一から第三までの態様の方法により製造される。
【0073】
第13の態様において、本発明は以下のような特徴を持つ単離された非組換えサッカロマイセス株を提供する。
(a)その株は試験T1に特定される条件下で、少なくとも5倍に増大したバイオマスを産生する
(b)その株は試験T2に特定される条件下で、少なくとも40mg乾燥重量のバイオマスを産生する
(c)その株は試験T7に特定される条件下で、少なくとも5倍に増大したバイオマスを産生する
(d) 試験T8に特定される条件下で少なくとも0.04 g/Lのエタノールが検出される
(e) 試験T4に特定される条件下で30度、抽出たんぱく質1mg、1分当たりで少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化されている
(f) 試験T5に特定される条件下で30度、抽出たんぱく質1mg、1分当たりで少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化されている
【0074】
生育のための唯一の炭素源としてキシロースを用いて48時間に少なくとも一世代の速度で生育しうるようなサッカロマイセス株の適切な例としては、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づきthe Australian Government Analytical Laboratories, 1 Suakin Street, Pymble, NSW 2073, Australiaに寄託番号NM04/41257、NM04/41258、NM05/45177 (ISO 10)及びNM05/45178 (ISO 7)で寄託された株が挙げられる。寄託番号NM04/41257、NM04/41258は2004年5月12日に寄託されたものである。寄託番号NM05/45177、NM05/45178は2005年5月16日に寄託されたものである。
【0075】
サッカロマイセス株は、ここに記載されたような、唯一の炭素源としてキシロースを用いる能力が非組換え手法によって得られるような任意の手段によって得られうる。その株を得るためにとられうる方法は、自然選択、接合手法、突然変異誘発あるいは当業者に知られており、例えば、Attfield and Bell (2003) "Genetics and classical genetic manipulations of industrial yeasts"、 「Topics in Current Genetics」、 第二巻Functional Genetics of Industrial Yeasts (J. H. de Winde編)、 Springer-Verlag Berlin Heidelbergにおいて議論されたり言及されている他のいわゆる古典的遺伝学的手法またはそれらの組み合わせの組み合わせが含まれうる。
【0076】
唯一の炭素源としてキシロースを用いて48時間に少なくとも一世代の速度で生育できる能力は、典型的には、サッカロマイセス株間で接合させることと、唯一の炭素源としてキシロースを用いて生育速度が増大したものをスクリーニングまたは選択することで得られる。
【0077】
例えば、その株は性的に適合したサッカロマイセス株間で接合体をrare matingもしくはdirected matingもしくはmass matingを行わせた後、唯一の炭素源としてキシロースを利用できる株を選択することで得られる。その株はサッカロマイセスの一つ以上の天然分離株、自然発生突然変異分離株に由来するか、あるいは、一つ以上のサッカロマイセス株を突然変異源に曝すことにより得られるものであってよく、その後で接合及び選択戦略に用いられ、唯一の炭素源としてキシロースを用ることができる変異株を得るべくスクリーニングまたは選択される。
得られた株はここに記載されたいずれかの選択方法によって選択される。
【0078】
第14の態様において、本発明は第4から第13態様までの株の派生株を提供する。
【0079】
酵母の派生株の作成方法は当該分野でよく知られており、他の酵母株との接合や細胞融合、突然変異誘発、及び/または組み替え手法が含まれる。
【0080】
第15の態様において、本発明は酵母バイオマスの産生における第4から第15態様のサッカロマイセス株、または第14態様の派生株の使用を提供する。酵母バイオマスは、例えば製パン業においてバイオマス製品を目的として使われる。
【0081】
第16の態様において、本発明はキシロースからのエタノール産生のための第4から第13態様のサッカロマイセス株、または第14態様の派生株の使用を提供する。
【0082】
第17の態様において、本発明は、株がキシロースを発酵してエタノールを産生できるような条件下において、キシロース含有培地を用いて第4から第13態様のサッカロマイセス株、あるいは第14態様の派生株を培養することを含むエタノール産生方法を提供する。
【0083】
第18の態様において、本発明は、株が生育のための炭素源としてキシロースを用いて生育できるような条件下において、キシロース含有培地を用いて第4から第13態様のサッカロマイセス株、あるいは第14態様の派生株を培養することを含むキシロースの酵母バイオマスへの変換方法を提供する。
【0084】
第19の態様において、本発明は、少なくとも酵母バイオマスの一部がキシロース含有培地上若しくは該培地中でサッカロマイセス株を生育することを含む酵母バイオマス生産方法であって、生育のための炭素源としてキシロースを利用して生産される方法を提供する。
【0085】
第20の態様において、本発明は、炭素源としてキシロースを利用する株によって合成される化合物の合成ができるような条件下で、キシロース含有培地上若しくは該培地中でサッカロマイセス株を培養することを含む、サッカロマイセス株由来の化合物の製造方法を提供する。
【0086】
一実施形態において、その化合物は炭素源としてキシロースを用いて生育している間、その株によって産出される。
【0087】
一実施形態において、その方法は化合物を回収するさらなる工程を含む。
【0088】
その化合物はサッカロマイセス株によって産生される任意の化合物である。適当な化合物の例としてはエタノール、二酸化炭素、酵素、組換え酵素、組換えたんぱく質、酵母副産物、ビタミン、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、脂質、酵母たんぱく質、キシリトールが含まれる。
【0089】
酵母細胞の生育はバイオマスを生み出し、それゆえに生育につながるどんな方法もバイオマスの生産につながることは当業者に理解されるだろう。例えば、キシロース含有培地上で生育することから得られるエタノール産生は付加的にバイオマスを生み出すだろう。一実施形態において、化合物はバイオマスの中の酵母細胞内に含まれており、その化合物は酵母細胞から化合物を抽出するための当該分野でよく知られている方法を用いて酵母細胞から回収されうる。
【0090】
第21の態様において、本発明は第18態様の方法により生産される化合物を提供する。
【0091】
発明の詳細な説明

本発明の実施には、他に表示がなければ、伝統的微生物学であり古典的遺伝学を用いる。そのような技術は当業者に知られており、文献中で充分に解説されている。例えば、Sherman他"Methods in Yeast Genetics" (1981) コールドスプリングハーバー研究所マニュアル、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク;ヨーロッパ特許番号 EP 0 511 108 Bを参照。
【0092】
ここで用いられている専門用語は特別な実施形態例を述べることを目的としているだけであって、添付した請求項によってのみ限定されるだろう本発明の範囲を限定する意図はないと理解されるべきである。ここや添付した請求項で用いられている単数形の‘a’、‘an’そして‘the’ははっきりと文脈でそれ以外であることを示しているのでなければ、複数形も含むことには注意しなければならない。例えば、‘a cell’と述べることは‘cells’のような複数形も含む。それ以外であることが定められていない場合は、ここで用いられている全ての技術的あるいは科学的用語はこの発明が属する技術分野において通常の能力を持つものによって共通の意味として理解されるものである。ここで述べられているものと類似または同一のいかなる材料及び方法も本発明を実施または試験するために用いることができるけれども、望ましい材料および方法は今述べられている。
【0093】
ここで言及されたすべての出版物はその出版物で報告されたり、あるいは発明との関連性の中で用いられている手順や試薬を述べたり、開示したりする目的で挙げられている。
本発明は先行技術に基づいてそのような開示を予期する資格がないことを是とするとみなされるべきではない。
【0094】
キシロースは安価で、再生産可能な資源から得られ、そして大量に入手できる糖である。キシロースはヘミセルロース性植物バイオマスの重要な部分に相当する。植物バイオマスには農業廃棄物、紙廃棄物、木材チップ等が含まれ、再生可能であり、安価に大量に利用できるものである。キシロースはキシランとヘミセルロースとして知られている重合体としてヘミセルロース性植物バイオマスに主に存在している。キシロース重合体は酸加水分解のような化学的手法やキシラナーゼのような酵素を使った酵素的手法のいずれかによって簡単に単糖類に分解することができる。例えば製紙産業においては、キシロースはごみの流れのなかでは主要な糖類の一つである。そこではそれは生化学的酸素要求量に寄与し、それによって排水処理を環境的に難しくしている。広葉樹から生産される紙1キロあたり、通常、糖は100g産生されて、そのうち35gはキシロースである。その豊富さから、キシロースは酵母バイオマスとエタノールのような酵母代謝の副産物を生み出すための主要な潜在的炭素源を与えている。
【0095】
ある態様として、唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の速度で生育できるサッカロマイセス株が提供される。本発明者らはDNA組替え技術を用いる必要なく、唯一の炭素源としてキシロースを利用して比較的早く生育できるサッカロマイセス株を得ることができることを見出した。以前はサッカロマイセス株はキシロースを唯一の炭素源として生育できないと信じられていたのでこのことは予想外の結果である。
本発明までは、唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の速度で生育できるサッカロマイセス株は、キシロースで生育できる他の生物由来のクローン化されたキシロース利用遺伝子をサッカロマイセス株に導入することによってのみ得られていた。もう一つの方法として、組換え技術を用いてクローン化されたサッカロマイセス遺伝子プロモーターとクローン化されたサッカロマイセスDNA配列とを人為的組み合わせを起こしてサッカロマイセス株に導入することで生み出されてきた。このように、本発明以前は唯一の炭素源としてキシロースを利用することができるサッカロマイセス株を得ることはキシロースで生育できる他の生物由来のキシロース利用遺伝子をクローン化して、サッカロマイセス株に導入するか、あるいは、DNA組換え技術を用いて、強力なサッカロマイセス遺伝子プロモーターを他のサッカロマイセスDNA配列に機能的につなげて、サッカロマイセス株に導入しなければ、不可能であった。
【0096】
本発明以前にも、サッカロマイセス属由来の非組換え酵母は唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の速度で生育できた。米国特許番号4、511、656はキシロース含有培地で培養するとエタノールを産生しうる非組換え酵母変異体であるATCC番号20618の酵母株を開示している。しかし、ATCC20618はサッカロマイセス属由来ではない。ATCC番号20618の形成するコロニーの形態はサッカロマイセスの形成するコロニーと一致しない。ATCC番号20618は胞子形成しないし、サッカロマイセス.セレビシエの基準株とも接合しないしさらに、ATCC番号20618のITS領域やヒストンH3-H4の遺伝子間領域の配列決定によりサッカロマイセス属のものではなく、Candida tropicalisとは密接に関連していることが明らかになっている。従って、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション20618はKurtzman (2003) FEMS Yeast Research 4: 233-245やここで定義されているように、サッカロマイセスとは系統発生的に遠い。Candida tropicalisはキシロースを利用することがよく知られている。加えて、米国特許番号4、511、656で開示される変異株は生育培地に酵母抽出物や麦芽抽出物、ペプトンのような生育栄養素があれば、エタノールを生成することのみが示されていた。これらの生育栄養素はキシロースに代わって発酵性炭素源を提供する。このように、米国特許番号4、511、656は唯一の炭素源としてキシロースで生育し、発酵させることができるサッカロマイセス株を開示していない。
【0097】
さらに米国特許番号4、511、656はキシロースでコロニーを作るがキシリトールでは作れないエタノールを産生できる酵母を選抜することを教示している。理論にしばられることなく、本発明者らは米国4、511、656の教示とは反対に、キシロース利用の中間体であるキシリトールの代謝が、キシロースでの生育やキシロースからのエタノール生成に有利であると予測されるだろうと信ずる。
【0098】
本発明者らは先行技術の教示とは反対に、サッカロマイセス株は唯一の炭素源としてキシロースで非常にゆっくりと生育できることだけでなく、クローン化されたキシロース利用遺伝子を導入することなく、唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育する速度を上げることができることを見出した。
【0099】
ある態様として、唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の速度で生育できる単離されたサッカロマイセス株が提供されている。ここで用いられているようにサッカロマイセス株は、Kurtzman (2003) FEMS Yeast Research 第4巻233-245頁によって定義されたサッカロマイセス属の株である。
【0100】
ここで用いられているように、「生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の速度で生育できる」の表現は、エネルギー生産及び株の生育に必要な分子の合成のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して、48時間で少なくとも1世代の増殖速度を得ることができる株という意味である。「一世代」という専門用語は当業者なら明らかであり、細胞分裂の1周期を意味する。その株は、キシロースが唯一の炭素源である固形または液体培地で生育しうることが望ましい。唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の速度で生育できる株は、キシロースが唯一の炭素源である固形または液体最小無機物培地で生育できることは当業者なら理解できるだろう。適切な液体培地の例としてはアミノ酸を除外した市販のDIFCO Laboratories Yeast Nitrogen Base(炭水化物やアミノ酸の源を除いた酵母の生育に必要な全ての必須無機塩類とビタミンを含んでいる)に0.01%から50%、典型的には1%から10%、適切には5%のキシロースを添加したものである。典型的には、固形培地とは寒天のようなゲル化剤の添加によって固形化された液体培地である。唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育することができる株は他の多くの糖類でも生育できることは当業者なら理解できるだろう。
【0101】
唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育するその株の能力は非組換え手法により得られる。ここで使われているように、「非組換え手法」の表現はサッカロマイセス株においてキシロースを利用する能力を生み出すために組換えDNA技術を利用しない任意の方法を言う。言い換えれば、生育にキシロースを利用するような能力をその株に与える遺伝子は組換え手法を用いてその株に導入されていない。ここで使われているように、「組換え手法」とは1つ以上の遺伝子が組み替えDNA技術を用いて生物に導入される手法である。ここで使われているように、組換えDNA技術とは遺伝子が生物から単離されクローン化される場合のように、遺伝情報がin vitroに操作される技術を言う。従って非組換え手法とはin vitroな遺伝情報の操作を含まない手法である。非組換え株とは組み替え核酸が導入されていない株である。
【0102】
非組換え手法としては例えば、突然変異誘発、古典的接合、細胞誘導、原形質融合のような細胞融合、あるいはそれらの組み合わせが含まれる。非組換え手法はin vivoに酵母細胞間でDNAが結合できる条件下でサッカロマイセスの遺伝的に多様な酵母細胞の集団を培養すること、典型的には、遺伝的に多様な酵母細胞を唯一の炭素源としてのキシロースを利用して生育速度が増大したを有する酵母細胞を選択するのに充分な時間、キシロース含有培地上もしくは該培地中で培養することによって、唯一の炭素源としてのキシロースを利用して成育速度が増大した酵母細胞のスクリーニングまたは選択することを含みうる得る。
【0103】
サッカロマイセス株が唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の速度で生育する単離されたの能力を与える遺伝的情報は、サッカロマイセス属から得られていることは当業者には理解されるだろう。言い換えれば、48時間に少なくとも1世代の速度で生育するのに必要な遺伝的情報のすべてはサッカロマイセス属の遺伝子プールの中から得られているのである。典型的には、サッカロマイセス株が生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の速度で生育する能力を与える遺伝的情報は、非組換えサッカロマイセス株の遺伝的に多様な集団から得られている。上記したように、本発明以前は、サッカロマイセス属の遺伝子プールは生育のために唯一の炭素源としてキシロースを利用する能力を与えるような遺伝的情報を含んでいないと考えられていた。
【0104】
別の態様としては、唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の速度で生育できる能力を持ち、そしてキシロース還元酵素とキシリトールデヒドロゲナーゼからなる群より選択される活性を有する非組換え酵素を発現することができる単離されたサッカロマイセス株が提供される。その酵素はキシロース還元酵素については試験T4で、キシリトールデヒドロゲナーゼについては試験T5で測定すると、少なくとも単位の酵素活性を有する。試験T4およびT5は本明細書中で定義されている。一実施形態において、キシロース還元酵素活性は少なくとも1.5単位あり、適切な場合には、少なくとも3単位になる。一実施形態において、キシリトールデヒドロゲナーゼは少なくとも5単位あり、適切な場合には、少なくとも8単位になる。
【0105】
また、唯一の炭素源としてキシロースを利用して望ましい生育速度で生育できるサッカロマイセス株を作る方法が提供される。「望ましい生育速度」とは本発明に係る方法を用いる前のサッカロマイセス酵母細胞の生育速度より大きい任意の生育速度をいう。望ましい生育速度はキシロースを唯一の炭素源としたときのサッカロマイセス.セレビシエのNL67株の生育速度よりかなり速い。望ましい生育速度は48時間で少なくとも1世代、より適切な場合には24時間で1世代超、さらに適切な場合には12時間で一世代超、典型的な場合は10時間で一世代超、さらに典型的な場合には8時間で一世代超、そしてグルコース上でのサッカロマイセスの生育速度と同じ80分に大体一世代でありうる。
【0106】
その方法は遺伝的に多様な非組換えサッカロマイセス酵母細胞の集団を準備することを含む。ここで用いられているように、「遺伝的に多様な非組換え酵母細胞」の表現は、異なった遺伝子型を持つ少なくとも2種類の非組換え酵母細胞をさす。遺伝的に多様な非組換え酵母細胞は野生型、ワインや蒸留やビール発酵、パン用、他の任意のサッカロマイセスソースから得られる異なったサッカロマイセス株の酵母細胞の混合であってもよい。サッカロマイセスの遺伝的に多様な非組換え酵母細胞の集団は胞子形成されて、遺伝的に多様な子孫へ派生する単一株に由来してもよい。遺伝的に多様な非組換えサッカロマイセス酵母細胞の集団は例えば紫外線、X線、ガンマ線、エチルメタンスルホン酸、ニトロソグアニジン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、あるいはDNA塩基配列に変化を引き起こす他の任意の試薬のような物理的又は化学的な変異原に曝されてきた一つ以上のサッカロマイセス株の酵母細胞を含みうる。すなわち、遺伝的に多様な非組換え酵母細胞は突然変異誘発によって生み出されてきた株の酵母細胞をその範囲に含む。酵母の突然変異誘発の手法、特にサッカロマイセス.セレビシエの突然変異誘発は当業者に知られており、例えば、Sherman他"Methods in Yeast Genetics" (1981) コールドスプリングハーバー研究所マニュアル、コールドスプリングハーバー、ニューヨークに記述されている。遺伝的に多様な非組換えサッカロマイセス酵母細胞の集団はまた、自然突然変異を有する酵母細胞も含みうる。遺伝的に多様な非組換えサッカロマイセス酵母細胞の集団は全て同じ種であってもよいし、あるいはサッカロマイセスの異なった種であってもよい。典型的には、異なった種はお互いの間で接合することができる。例えば、遺伝的に多様な非組換え酵母細胞の集団はサッカロマイセス.セレビシエの異なった株を含みうるし、あるいは上記した源のいずれかから得られた他の任意にサッカロマイセス種からを含みうる。適当なサッカロマイセス種としてはS.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.パラドキサス(S.paradoxus)、S.ミカテ(S.mikatae)、S.カリオカヌス(S.cariocanus)、S.クドリアブゼヴィ(S.kudriavzevil)、S.パストリアヌス(S.pastorianus)、およびS.バイヤヌス(S.bayanus)が含まれる。典型的には、遺伝的に多様な非組換えサッカロマイセス酵母細胞の集団は同種である。典型的には、その種はサッカロマイセス.セレビシエである。遺伝的に多様な非組換え酵母細胞の集団のための出発接種株を提供するのに用いられうるであろう酵母の例としては、American Type Culture Collection(ATCC)の例えばATCC4111、 ATCC26603、 ATCC38559や、the National Collection of Yeast Cultures (NCYC)の例えばS.セレビシエNCYC995、NCYC996や、the Central Bureau voor Schimmel Cultures (CRBS)のS.セレビシエCBS745.95、CBS755.95、から単離されたような周知の培養収集機関から入手できるあるいはパン、醸造、ワイン、蒸留などのような伝統的処方して用いるために多数の会社で売られている市販酵母サッカロマイセス株を含む。
【0107】
遺伝的に多様な非組換えサッカロマイセス酵母細胞の集団は酵母細胞間でDNAが結合できる条件下で培養される。酵母細胞間のDNA結合は、その方法が組み替え手法でないならば、少なくとも二つの酵母細胞からのDNAを結合するのに適した任意の方法によって行われうる。酵母細胞のDNAを結合するのに適した方法の例としては接合そして細胞誘導が含まれる。ここで用いられているように、「接合」の用語は古典的遺伝学的交配方法、すなわちDirected Mating、 Mass Mating、 Rare Mating、細胞融合などによるものを含む、少なくとも二つの酵母細胞間DNAの交換と組み替えの過程をいう。たとえば、古典的遺伝的交雑や細胞融合を用いて種内交雑または種間交雑を生み出すことができる。
【0108】
一実施形態において、酵母細胞は酵母細胞間で接合できるような条件下で培養される。典型的には、酵母細胞は酵母細胞に胞子形成させて、その後発芽酵母を接合させることによって接合を起こすような条件下で培養される。例えば、酵母細胞は
・ 酵母細胞に胞子形成させる
・ 発芽酵母細胞を生み出させる
・ 相補的接合型の発芽酵母細胞をハイブリッドさせる
ことにより接合される。典型的には、酵母細胞は
・ 遺伝的に多様な非組換え酵母細胞の集団をプールする
・ プールした細胞に胞子形成させて、半数体細胞を作るために胞子を生み出させる
・ 相補的接合型の半数体細胞をハイブリッドさせてハイブリッド酵母細胞を作る
ことによって接合される。胞子化、半数体の獲得、半数体交配によりハイブリッド型の酵母細胞を作る方法は当業者に知られており、例えばA.H. Rose and J. S. Harrison 編の"The Yeasts" 第1巻、 1969、 Academic Pressに記載のR. R. Fowellによる、"Sporulation and Hybridisation of Yeast"第7章または EP 0 511 108 B.において述べられている。典型的には、接合は集団接合で行われる。集団接合は少なくとも二つ、典型的な場合は数百万の異なった酵母細胞同士を相補的接合型間で接合が起こるような条件下で培養することを含む。集団接合の方法は、例えば、Higgins他 (2001)、 Applied and Environmental Microbiology vol. 67、 pp. 4346-4348; Lindegren (1943)、 Journal of Bacteriology 第46巻 pp. 405-419において述べられている。
【0109】
別の実施形態では、酵母は細胞融合できるような条件下で培養される。細胞融合技術を用いた種内交雑または種間交雑を生み出す手法は、例えば、Morgan (1983) Experientia suppl. 46: 155-166; Spencer他 (1990) in、 Yeast Technology、 Spencer JFT and Spencer DM (編)、 Springer Verlag New Yorkにおいて述べられている。細胞融合手法は、例えば、Inge-Vechtomov他 (1986) Genetika 22: 2625-2636; Johnston (1990) in、 Yeast Technology、 Spencer JFT and Spencer DM (編 )、 Springer Verlag New York; Polaina et al. (1993) Current Genetics 24: 369-372において述べられている。
【0110】
その酵母細胞は生育のための唯一の炭素源としてキシロース用いて生育速度が増大した酵母細胞を得るべくスクリーニングまたは選択される。その酵母細胞をスクリーニングまたは選択して、唯一の炭素源としてキシロース用いて生育速度が増大した酵母細胞を増やし、あるいは同定するた。その酵母細胞は典型的にはキシロース含有培地上もしくは該培地中で酵母細胞を培養することによってスクリーニングまたは選択される。その酵母細胞は生育のための唯一の炭素源としてキシロース用いて生育能力が向上した酵母細胞を得るべく、スクリーニングまたは選択される。能力が向上したとは典型的には唯一の炭素源としてキシロース用いて望ましい生育速度にの生育がの向上することである。生育速度の増加とは酵母細胞間でDNAが結合できる条件下で酵母細胞を培養する前の細胞の生育速度と比べて酵母細胞の生育速度が増加することである。一実施形態において、その酵母細胞は選択される。「選択された」や「選択する」といった用語は唯一の炭素源としてキシロース用いて、望ましい生育速度で生育するために改善された生育能力が向上した酵母細胞が集団のなかで優勢になっていく過程をいう。その酵母細胞は唯一の炭素源としてキシロースを用いることができる酵母細胞が炭素源としてキシロースを用いて生育できるのに充分な時間キシロース含有培地上あるいは該培地中で培養し、その後生育した酵母細胞を集めることによって選択される。ゆっくり生育する酵母でさえ炭素源を用いて生育できるほど充分な時間培養し、その後ゆっくりと生育する酵母細胞を含む酵母細胞を集めることによって、速く生育できる酵母細胞細胞は集められた酵母細胞のなかでよりおおきな集団を形成し、それによって集められた酵母細胞のなかで優勢になるが、ゆっくりと生育する酵母細胞も含むことによって、酵母細胞集団の遺伝的多様性は実質的に維持されることを本発明者らは発見した。例えば、接合酵母細胞を唯一の炭素源としてキシロースを含む固形最小培地に接種することによって、唯一の炭素源としてキシロースをより速く用いることができるようになった細胞がより大きなコロニーを生み出し、結果として、それらの細胞が選択されて、その望ましい遺伝子型が集団の中で優勢になる。しかしながら、より小さなコロニーを集めることによっても、次の工程(b)と(c)の反復のための集団の遺伝的多様性が実質的に維持される。このようにして、酵母細胞が炭素源としてキシロースを用いて生育できるのに充分な時間キシロース含有培地で酵母細胞を培養することで、キシロースで生育速度が増大した酵母細胞を選択できるだけでなく、工程(b)と(c)のサイクルを繰り返すための集団の遺伝的多様性を維持することもできる。酵母細胞をキシロース含有培地で培養する時間を減らして炭素源としてのキシロースを用いて予め決められた期間内に生育する酵母細胞のみを選択することによって一層の選択がなされる。このタイプの酵母細胞は、唯一の炭素源としてキシロースを用いて生育速度が増大した酵母細胞を炭素源としてキシロースを用いて生育できるのに充分な時間キシロース含有培地で培養し、その後生育した酵母細胞を集めることによって選択される。このアプローチを使えば、増大した速度で生育する酵母細胞により大きな選択圧がかかるが、ゆっくりと生育する酵母細胞の一部が生育するには時間が不十分な可能性があるため、更に工程(b)と(c)を繰り返すため遺伝的多様性は幾分失われる。
【0111】
別の実施例では、その酵母細胞はスクリーニングされる。ここで用いられているように、「スクリーニングされた」や「スクリーニングする」の用語は唯一の炭素源としてキシロースを用いて望ましい生育速度で生育できるように能力が向上した酵母細胞がまず同定され、ついで実質的に単離する過程をいう。唯一の炭素源としてキシロースを用いて生育速度が増大した酵母細胞が炭素源としてキシロースを用いて生育できるのに充分な時間キシロース含有培地上もしくは中で培養し、その後炭素源としてキシロースを用いて最も速く生育する酵母細胞を集めることによって酵母細胞をスクリーニングすることができる。
例えば、唯一の炭素源としてキシロースを用いて生育できるように能力が向上した酵母細胞をより速く生育でき、従って、唯一の炭素源としてキシロースを用いて生育できるように能力が向上していない酵母細胞よりも大きなコロニーを形成する細胞として豊富なキシロースを含む培地で同定することができる、。プレート上に現れたより大きなコロニーはそれゆえに小さなコロニーよりも優先して単離され、その結果、唯一の炭素源としてキシロースを用いて望ましい生育速度で生育できるように能力が向上した酵母細胞が単離される。
上記したように、典型的にキシロース含有培地上もしくは中で酵母細胞を培養することによって酵母細胞はスクリーニングまたは選択される。「キシロース含有培地」とはキシロースを含有する任意の培地であり、ほかの株よりもより効率的にあるいはより速く唯一の炭素源としてのキシロースを用いて速く生育することができる酵母細胞に対して選択優位性を与える。ここで用いられている通り、「選択優位性」とはなんらかの特性、この場合はキシロースを用いて効率よく生育することができる能力により他の細胞や株よりもはるかにたくさん細胞分裂を行える細胞または株の能力を指す。このように株に選択的優位性を与える培地は選択的優位性を与えないような他の株と比べてその培地中その株をより速く生育させることができる。酵母は少なくとも一つの炭素源、窒素源、リン源、硫黄源、微量元素、ビタミンを含む広範囲の培地で生育できることは当業者に知られている。キシロース含有培地は最小培地かあるいは複合培地でありうる。一実施形態においては、キシロース含有培地は最小培地である。適当な最小培地は、例えば、DIFCO Yeast Nitrogen Base 法(Difco マニュアル "Dehydrated culture media and reagents for microbiology" 第10版、Difco Labs 1984参照)にキシロースを濃度0.1%から50%の間で、典型的には濃度2%から15%の間で、より典型的には濃度5%で加えたものを含みうる。別の実施形態においては、キシロース含有培地は複合培地である。複合培地におけるキシロースの濃度は0.1%から50%の間で、典型的には2%から30%の間、より典型的には2%から15%の間でありうる。一実施形態において、完全に栄養豊富な培地である。完全に栄養豊富な培地の例としては酵母抽出物が0.5%から2%で、望ましいのは0.5%で、ペプトンが0.5%から2%で、望ましいのは1%で、キシロースが0.5%から50%で、典型的には2%から15%で、より典型的には5%を含む培地である。別の実施形態においては、複合培地は糖液、デンプン分解物、セルロースまたはヘミセルロースバイオマス分解物(バガス、まぐさ、木材パルプ、わら、古紙等)あるいはそれらの組み合わせにキシロースや栄養素を付加的に添加したものからなる群から選ばれる。固形培地は上記の培地に典型的には1%から10%の寒天を、より典型的には1%から5%の寒天を、さらに典型的には1%から2%の寒天を添加したものでありうることは当業者なら理解できるだろう。
【0112】
酵母細胞は固形及び/または液体培地上で培養されることでスクリーニングまたは選択される。一実施形態において、酵母細胞は固形培地上でスクリーニングまたは選択される。別の実施形態において、酵母細胞は液体培地中でスクリーニングまたは選択される。望ましい実施形態としては、酵母細胞は最初に固形培地で次に液体培地でスクリーニングまたは選択される。例えば、その方法は
・ サッカロマイセスの遺伝的に多様な非組換え酵母細胞の集団を用意する
・ 酵母細胞が接合できるような条件下で酵母細胞を培養する
・ キシロース含有固形培地上で酵母細胞を培養することで酵母細胞をスクリーニングまたは選択する
・ 一つ以上の酵母細胞が唯一の炭素源としてキシロースを用いて望ましい生育速度で生育できる能力を獲得するまで、サッカロマイセスの遺伝的に多様な非組み換え酵母細胞の集団を形成するスクリーニング又は選択された細胞で工程(b)と(c)を繰り返す
を含みうる。典型的には、唯一の炭素源としてキシロースを含む液体培地において好都合に育つほどの生育速度を一つ以上の酵母細胞が獲得するまで、工程(b)と(c)が繰り返される。例えば、唯一の炭素源として2%から5%w/vの間のキシロースを含む液体最小無機物培地で株を移して生育させるためには、典型的には少なくとも工程(b)と(c)を2回繰り返さないと2%から5% w/vの間でキシロースを含む固形最小無機物培地におけるそのための生育速度には届かないだろう。より典型的には少なくとも5回の工程(b)と(c)が繰り返しの後であろう。さらに典型的には少なくとも10回の工程(b)と(c)が繰り返しの後であろう。酵母細胞が液体培地で培養されることによる酵母細胞の選択またはスクリーニング回数は集団依存的に変化すること、および工程(b)と(c)の各反復で液体培地における集団のほんの一部を培養することによって容易にきめられることは当業者ならわかるだろう。従って、その方法は
・ サッカロマイセスの遺伝的に多様な非組み換え酵母細胞の集団を用意する
・ 酵母細胞が接合できるような条件下で酵母細胞を培養する
・ キシロース含有液体培地で酵母細胞を培養することで、酵母細胞を選択またはスクリーニングする
・ 一つ以上の酵母細胞が唯一の炭素源としてキシロースを用いて望ましい生育速度で生育できる能力を獲得するまで、サッカロマイセスの遺伝的に多様な非組み換え酵母細胞の集団を形成するスクリーニング又は選択された細胞で工程(b)と(c)を繰り返す
を含みうる。
【0113】
典型的には唯一の炭素源としてキシロースを用いて生育できる酵母細胞が生育できるのに充分な時間、酵母細胞はキシロース含有培地上若しくは中で培養される。上述したとおり、時間の長さは少なくとも唯一の炭素源としてキシロース用いて生育速度が増大した酵母細胞が生育できるのに充分な時間である。典型的には、時間の長さは唯一の炭素源としてキシロース用いて生育速度が増大しない酵母細胞の生育が認められるのに充分な時間である。言い換えれば、時間の長さは実質的に全ての酵母細胞がキシロース上で生育できるのに充分なものである。時間の長さは遺伝的に多様な非組換え酵母細胞の集団に依って変わり、また使う培地の種類、工程(b)と(c)が何回繰り返されたかにも依って変わる。各サイクル繰り返されると、固形培地と液体培地のいずれが使われるかどうかとは関係なく、その方法は工程(b)と(c)の各繰り返しでキシロースを用いてより速く生育する集団をスクリーニングまたは選択するに従って、その時間はより短くなることが考えられる。キシロース以外の糖類を含む複合培地でさえ、キシロース以外のいくつかあるいは全ての糖類は生育を通じて結局は使い果たされ、それゆえに、唯一の炭素源としてキシロースでより速く生育する株に対して、結局はキシロースの存在が選択的優位性を与えることは当業者ならばわかるだろう。唯一の炭素源としてキシロースで最も効果的に生育する酵母細胞がキシロースでは充分に生育できない酵母細胞よりも生育する程度の充分な時間、液体キシロース含有培地で酵母細胞は培養される。典型的には、その時間量は唯一の炭素源としてキシロースを用いた生育速度が増大したていない酵母細胞ですら生育を認めるほど充分な時間である。上述したように、より速い生育をする細胞は数のうえでより大きくなり、それゆえに選択されうる。このように、キシロース含有液体培地の利用は残った酵母細胞集団がより速い速度でキシロースを利用できる酵母細胞を選択するのに便利な方法を提供する。典型的には、スクリーニングまたは選択された酵母細胞はより効果的にキシロースを利用するようになるので、一サイクルごとにキシロース含有液体培地での生育期間は減少する。キシロース含有液体培地での細胞の培養による酵母細胞のスクリーニングまたは選択の後、典型的にはその細胞は、液体培地から集められさらに分離や単離されることなく接合される。従って、典型的には、スクリーニングされまたは選択された酵母細胞はプールとして接合に用いられる。接合方法はキシロース含有固形培地からスクリーニングされ、選択されたあとそれとの同じである。集団からキシロースを利用できる酵母株を選択、スクリーニングする任意の条件下で酵母細胞をキシロース含有培地上もしくは中で培養することができることはわかるだろう。一例として、集団は
・ 好気的、微好気的、嫌気的条件下でキシロース最小培地上もしくは中で培養される;
・ 好気的、微好気的、嫌気的条件下でキシロース豊富な培地上もしくは中で培養される
上記培地はキシロースに加えて他の炭素源、例えばグルコース、ガラクトースのような糖類、キシリトール、グリセロールなどのポリオール、そして酢酸、アセテートのような有機酸、及びそれらの塩類などを含みうる。例えば、酵母細胞を適正以上または以下のpH、高浸透圧、又は低浸透圧、塩類からくるイオン性ストレス、エタノールやほかのアルコールの添加からくるアルコール性ストレス、フルフラールやその誘導体のような他の有機阻害物、高温、低温、キシロースの有無などのようなストレスに曝し、その後、唯一の炭素源であるキシロースを利用している間ストレスから回復する能力について選択またはスクリーニングすることができる。異なった選択条件の組み合わせが集団に用いられることが考えられる。
【0114】
酵母細胞を単離したり、工程(b)を繰り返す前に工程(c)を任意の回数繰り返してもよいことが理解されよう。例えば、キシロース含有液体培地で選択された集団を続けて新しい培地で継代して、望ましい生育速度を持った酵母細胞を選択またはスクリーニングすることができる。
【0115】
唯一の炭素源としてキシロースの増殖速度が一サイクルごとに徐々に速くなる非組換え酵母細胞を選択またはスクリーニングするために、工程(b)と(c)が任意の回数くりかえされることは当業者にはわかるだろう。従って、このプロセスは唯一の炭素源としてキシロースを用いて望ましい生育速度を示す株を得るために必要なぐらいの回数繰り返される。
【0116】
その後、典型的には、その方法は望ましい生育速度を有する一つ以上の酵母細胞を単離する工程を含む。典型的には、その方法は望ましい生育速度を有する遺伝的に多様な非組換えサッカロマイセス酵母細胞の集団を生み出すことは当業者にはわかるだろう。
従って、一実施態様において、その方法は望ましい生育速度で唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育することができるサッカロマイセス株の集団を生み出すために用いられうる。その集団は個々の株に分離されることなく単離される。これは、例えば、その方法によって生み出されたサッカロマイセス株の集団を単純にプールすることによってなされうる。
【0117】
別の実施態様において、唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育することができる個々のサッカロマイセス株を単離することができる。これは適当なコロニーを作ったり、単一コロニー単離のために寒天プレート上に酵母の画線したりするような標準的微生物的技術、あるいは純粋培養の単離のためのほか任意の方法を用いてなされる。そのような方法はCruickshank他(1975) "Medical Microbiology"、 第12版、第2巻: The practice of medical microbiology、 Churchill Livingstone出版に記述されている。
【0118】
また、キシロースを唯一の炭素源として生育速度が増大したサッカロマイセス株の派生株を作る方法が提供される。派生株が生まれるサッカロマイセス株は典型的に望ましい特性を有している。この方法は遺伝的に多様なサッカロマイセスの非組換え酵母細胞の集団の一部分としての株を用意する工程(a)を含む。いいかえれば、その株の酵母細胞がその集団の一部分を形成する。遺伝的に多様な集団の酵母細胞は上述したような源のいずれかから由来しうる。工程(b)において、遺伝的に多様な集団の酵母細胞の集団の酵母細胞は集団の酵母細胞内で接合が行われるような上記した条件のいずれかの下で培養される。工程(c)において、生育速度が増大した派生株のスクリーニングまたは選択がなされる。生育速度の増大とはその株の生育速度と比較して派生株の生育速度が増大していることをいう。典型的には、酵母細胞は上述したようなキシロース含有培地上または中で培養することによってスクリーニングまたは選択される。そのキシロース含有培地は更に派生株をスクリーニングまたは選択する要素をふくんでいてもよい。例えば、その株は遺伝的に多様な酵母細胞の集団の他の酵母細胞からその株の派生株を区別し得る抗生物質マーカーあるいはその他のマーカーのような選択マーカーを含んでいてもよい。これによりキシロースを唯一の炭素源としての生育速度が増大し、かつ選択マーカーを持つ酵母細胞を同時にスクリーニングまたは選択できる。適当な選択マーカーとしては、例えば、ADE2、HIS3、LEU2、URA3、LYS2、MET15、TRP1、URA4、亜硫酸塩耐性、p-フルオロ-DL-フェニルアラニン耐性が含まれる(Cebollero and Gonzalez (2004) Applied and Environmental Microbiology、 70巻: 7018- 7028)。キシロースを利用した生育のスクリーニング、選択方法は上記した通りである。生育速度が増大した派生株が得られるまで工程(b)と(c)は何度も繰り替えすことができる。一旦生育速度が高くなれば、派生株は単離できる。単離方法は上述したとおりである。
【0119】
本発明の方法によって作られたサッカロマイセス株もまた本発明の範囲に含まれる。サッカロマイセス株はKurtzman (2003) FEMS Yeast Research 3: 417-432によって系統発生学的に定められたサッカロマイセスの任意の種をさし、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.パラドキサス(S.paradoxus)、S.ミカテ(S.mikatae)、S.カリオカヌス(S.cariocanus)、S.クドリアブゼヴィ(S.kudriavzevil)、S.パストリアヌス(S.pastorianus)、およびS.バイヤヌス(S.bayanus)が含まれる。S.セレビシエの株とそれ以外の株との間での接合方法は、例えば、Johnston JR及び Oberman H (1979) Yeast Genetics in Industry、 in Bull MJ (編) Progress in Industrial Microbiology、 Elsevier、 Amsterdam 15巻、 pp. 151-205; Pretorius IS (2000) Tailoring wine yeast for the new millenium: novel approaches to the ancient art of wine making. Yeast 16: 675-729; P.V. Attfield and P. J.L. Bell (2003) Genetics and classical genetic manipulations of industrial yeasts、 in Topics in Current Genetics 第2巻、 J. H. de Winde (編) Functional Genetics of Industrial Yeasts、 Springer-Verlag Berlin Heidelbergで述べられている。
【0120】
一旦、望ましい生育速度で唯一の炭素源としてのキシロースを用いることができるサッカロマイセス株が得られれば、その株から、例えば、古典的遺伝学的交雑法、突然変異誘発法、組換え法、あるいはサッカロマイセス株を生み出すためのその他の手法を含むような、株製作技術において知られているような手法を用いて派生株が得られることは、当業者ならわかるであろう。
【0121】
唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の生育速度で生育できる株は、他のサッカロマイセス株、好ましくはS.セレビシエ以外の株と接合される。
例えば、上記手法は唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の生育速度で生育できる複数のサッカロマイセス株を生み出すことが予想される。従って、唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の生育速度で生育できる第一株と唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の生育速度で生育できる第二株とを接合することができる。このタイプの接合は、例えば、唯一の炭素源としてキシロースを利用する能力がいっそう富化または向上してサッカロマイセス株を得るためになされうる。例えば、唯一の炭素源としてキシロースを利用して急速に生育できる異なった株間で、キシロース上でさらに速く生育できる株や炭素源としてキシロースを用いたときエタノールや二酸化炭素のような産物をより効速度的に産生できる接合株を得ることができると考えられる。
【0122】
唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の生育速度で生育できるサッカロマイセス株を唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育できないサッカロマイセス株と接合してもよい。このタイプの接合は、例えば、唯一の炭素源としてキシロースを利用する能力が向上した株では見られない一以上の望ましい特徴を有するサッカロマイセス株に、唯一の炭素源としてキシロースを利用する向上した能力を導入するためになされうる。例えば、唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育できないサッカロマイセス株がパン産業でおいて望ましい特徴を有している場合、この株を唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の生育速度で生育できるサッカロマイセス株と接合することは、キシロース上でより早く、効速度的に生育し、次いでパン産業に利用できるようなパン酵母を作り出すためには有用である。同様に、蒸留、ワイン生産、酵母抽出、酵素、異種タンパク質のようなその他の産業目的あるいはそれ以外の目的に使われる酵母はキシロース上でのバイオマスまたは酵母副産物の生産を可能にするために、唯一の炭素源としてキシロース培地を利用する改良された能力をもつ株と接合されうる。
【0123】
例えば、非組換え手法により得られた唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の生育速度で生育できるサッカロマイセス株を一つ以上のキシロース利用遺伝子を持つ組換え酵母と接合させることによって、キシロース利用においてさらに改良された株が得られることが考えられる。組換えにより導入されたキシロース利用遺伝子は非組換え手法により得られた株にすでに存在する遺伝子を単に補強するにすぎないものであることは当業者ならわかるであろう。
【0124】
キシロース利用能力は非組換え手法により得られるがDNA組換え技術は唯一の炭素源としてキシロースを利用する株の能力を補強するために用いられていることは当業者ならわかるであろう。例えば、一つ以上の他の源由来のキシロース利用遺伝子をキシロース利用を補強するために株に導入することができる。例えば、Pichia種由来のキシロースイソメラーゼはKuyper他に示されているように、単にキシロース利用を補強するためにゲノムに組み込まれてうる。Pichia stipitis由来のキシロース還元酵素(XYL1)やキシリトールデヒドロゲナーゼ(XYL2)はWahlbom他(2003)に示されているようにキシロースを利用する株の能力を補強するためにサッカロマイセスにクローン化されうる。しかし、組換え手法によりキシロース利用のための遺伝子配列を付加することは単に唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に少なくとも1世代の生育速度で生育できる株の能力を補強しているにすぎないことは当業者ならわかるであろう。
【0125】
さらなる例としてキシロース、キシリトール、キシルロースへの直接作用を通じるもの以外のサッカロマイセスによるキシロース利用の効速度に影響する代謝活性をコードするような一つ以上の遺伝子を非組換え株に導入し、それら発現をDNA組替え技術により修正することができる。ある遺伝子の発現を増加させることが望ましい場合もあれば、ある遺伝子の発現を減少させたり、なくしまうことが望ましい場合もあろう。発現を変化させる標的遺伝子には細胞質性、ミトコンドリア性、またはその他のオルガネラ性の代謝活性をコードする遺伝子が含まれうる。そのような遺伝子は糖輸送、栄養素輸送、解糖経路、発酵の最終工程、ペントースリン酸経路、グルコース新生、トリカルボン酸経路、グリオシキル酸回路、電子伝達系、細胞内酸化還元平衡、発酵と呼吸の間の相互作用、アミノ酸の合成、及び代謝等に関係する活性をコードしうる。組換えDNA技術によって修正される遺伝子の例としては、RPE1、RK11、TALI、TKLIあるいは唯一の炭素源としてキシロースを利用する酵母の能力を改善するようなその他の遺伝子が含まれる。
【0126】
さらに、一つ以上のキシロース利用遺伝子を組換え手法によりその株に組み込みうることは当業者ならわかるであろう。組換え酵母の製作手法は当該分野でよく知られており、例えば、Guthrie and Fink (1991) "Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology"、 Methods in Enzymology 194巻、 Academic Pressに記載されている。関心のある遺伝子や配列は酵母細胞に形質転換するのに適したベクターにクローン化される。関心のある遺伝子や配列はpMA91 Dobson他(1984) EMBO Journal 3: 1115のような適切な発現ベクターにクローン化され、それは酵母株における発現に適切な調節領域を含んでいる。その他のベクターとしては当業者には知られているエピソームベクター、動原体ベクター、インテグレーションベクター、発現修正ベクターが挙げられる(例えばGuthrie and Fink (1991) "Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology"、 Methods in Enzymology194巻、 Academic Pressに見られるように)。酵母での発現に適した調節領域は、例えば、MAL、PGK1、ADH1、GAL1、GAL10、CUP1、GAP、CYC1、PH05が含まれる。あるいは、遺伝子自身の調節領域がサッカロマイセスにおける遺伝子発現に用いられる。関心のある遺伝子や配列が、例えばリボソームRNA遺伝子座のような酵母ゲノムに組み込まれる。この目的のために、(例えばpIRL9プラスミド)適当なベクターのリボソーム配列が販売されており、BS+ベクターに適切にクローン化されている。関心のある遺伝子や配列は適当な酵母プロモーターと終結領域に発現カセットを形成するように機能的につなげられ、その発現カセットは次にクローン化されたリボソーム配列にクローン化される。この結果、プラスミド発現カセットはリボソーム配列につなげられ、適当な制限酵素で一本の断片となる。放たれた一本の断片はよく知られている手法(例えばGuthrie and Fink (1991) "Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology"、 Methods in Enzymology 194巻 Academic Pressにみられる)を用いて酵母に形質転換されるための適当なマーカーを有する自発的複製プラスミドと同時形質転換される。プラスミドはプラスミドを選択しない条件下で細胞を培養することで細胞から後に除かれる。
【0127】
本発明のサッカロマイセス株はサッカロマイセス属の任意の種が用いられているようなどんな利用にも用いられる。例えば、唯一の炭素源としてキシロースを利用できるS.セレビシエの株は通常のサッカロマイセス.セレビシエ株が利用されているようなパン発酵、醸造、バイオマス生産、糖発酵、エタノール生産に利用される。
【0128】
本発明のサッカロマイセス株の唯一の炭素源としてキシロースで生育できる能力は48時間で少なくとも1世代生育できるサッカロマイセス株と酵母株を「作製」する目的ではない酵母細胞とを区別するために用いられる便利な表現型を提供する。
【0129】
ある態様として、サッカロマイセス株作製の手法が提供され、それは
・ 所望の株と本発明の株とをDNAが結合できる条件下で培養すること
・ 唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育速度が増大した所望の株の派生株をスクリーニングまたは選択すること
・ 唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育速度が増大した所望の株の派生株を単離すること
を含む。一実施形態において、その方法は
・ 株のDNAが結合できる条件下で第4から第14態様までのサッカロマイセス株と所望の株とを接合すること
・ キシロース含有固形培地上にプレートまたは液体培地中で培養し、あるいはその両方を組み合わせることによって、唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間で少なくとも1世代以上の速度で生育できる所望の株の派生株をスクリーニングまたは選択すること
・ 唯一の炭素源としてキシロースを利用して生育速度が増大した所望の株の派生株を単離すること
から構成される。
【0130】
キシロース含有最小培地で株を培養すること、またはキシロース含有培地での既知生育速度を持つ基準株の生育速度とその生育速度を比較、決定することで著名な株が探索される。著名な株を探索するための適当な方法は試験T1であり、それによると、著名な株は試験T1でバイオマスが少なくとも2倍に増大する。
【0131】
べつの実施態様において、本発明のサッカロマイセス株はエタノール、キシリトール、酢酸、その他の酵母副産物、酵素等のような化合物の生産に用いられる。化合物の生産方法は以下の工程からなる
・ 株が合物を生産し得るような条件下でキシロース含有培地でサッカロマイセス株を培養する
・ 株により生産された化合物を回収する
【0132】
化合物とは炭素源としてキシロースを利用したときにサッカロマイセスによって生産された1つ以上の化合物またはその混合物をいう。例えば、化合物はエタノール、キシリトール、酢酸、二酸化炭素、あるいは酵母細胞やその代謝の任意の成分、代謝産物、副産物でありうる。酵母細胞の成分としては酵素、補共因子、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、たんぱく質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、細胞壁成分、グルカン、マンノタンパク質、膜成分、脂質、ステロール、貯蔵炭水化物、トレハロース、グリコーゲン、オリゴヌクレオチド、有機酸、コハク酸、酢酸、乳酸、グリセロールやキシリトールのようなポリオールを含む。
【0133】
サッカロマイセス株によって生産される化合物の種類は株が置かれている生育条件に依存することは当業者ならわかるであろう。例えば、温度、好気的または嫌気的生育、培地のpH、窒素源、キシロース以外の炭素源の存在、培地の中のその他の化合物がサッカロマイセス.セレビシエ株によって生産される化合物の種類に影響を与える。しかし、どんな1つまたはそれ以上の化合物の生産を目的とする正確な条件も通常の手順を通じて当業者なら簡単に決められる。
【0134】
本発明のサッカロマイセス株はグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトトリオース、マルトース、スクロース、メリビオース、ラフィノース、キシロース、メリジトース、α―メチルグリコシド、トレハロース、イソマルトースのような糖類を利用できることは当業者なら簡単にわかるだろう。その株はまたエタノール、酢酸、グリセロール、キシリトールのような非糖炭素源を利用することができる。
【0135】
典型的には、本発明の株は二酸化炭素とエタノールの生産のためにキシロースに加えて、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトトリオース、マルトース、スクロース、メリビオース、ラフィノース、キシロース、メリジトース、α―メチルグリコシド、トレハロース、イソマルトースのような糖類も発酵することができる。
【0136】
キシロース含有培地のキシロースは酵母によって利用される任意の形態である。例えば、キシロースは精製されていてもよい、あるいはさとうきび、わら、とうもろこし茎葉、木工製品等のようなバイオマスの酸加水分解から得られるヘミセルロース加水分解産物のような粗形態であってもよい。バイオマスや化合物の産生では、接種されたキシロース含有培地は典型的には、2時間から4日間の間22℃から40℃の範囲内の温度で培養されうる。
【0137】
本発明者らは更に本発明に係る株を用いてキシロースからエタノールを産生するためには、その株がキシロース上で実質生育をする必要がないことを見出した。本発明者らは本発明に係る株をキシロース含有培地に大量接種することで2時間、典型的は4時間、更に典型的には5時間以内でエタノール産生することを見出した。そのような条件では、実質的な生育は認められない。
従って、
・ 第1から第8、第12又は第13態様の株を培地1mL当たり少なくとも1x108個の酵母細胞密度となるようにキシロース含有培地に接種する
・ エタノール産生できるのに充分な時間、接種培地を培養する
・ エタノールを回収する
ことを含むエタノール産生方法もまた提供される
【0138】
キシロース含有培地は上記したキシロース含有培地のいずれでもよい。
【0139】
酵母細胞の密度は培地1mL当たり少なくとも5x108個、典型的には少なくとも6x108個の酵母細胞でありうる。
【0140】
接種培地は少なくとも2時間、典型的には少なくとも5時間培養される。
【0141】
別の態様としては、エタノール産生できる充分な条件下でキシロース含有培地で非組換えサッカロマイセス株を培養した後、エタノールを回収することを含むエタノール産生方法が提供される。
【0142】
試験T1から試験T9の定義
【0143】
T1:唯一の炭素源としてキシロースを利用した生育
酵母株を標準的な微生物学的手法を用いて2%の寒天で固形化させたグルコース、酵母抽出物、細菌ペプトン培地上に画線する。
摂氏30℃で72時間培養後、酵母細胞を滅菌した白金耳を用いてプレートからとり、50mlの培養液中にで0.1から0.2ユニットの間のOD600(600nmの光学濃度)となるように接種する。
該培養液は250ml三角フラスコに蒸留水中のキシロース(5% w/v)、Difco Yeast Nitrogen Base w/o amino acids(0.67%)を含む。
培養液をOD600を計測するのに先立って(T48hrsにおけるOD600)OD48時間、220rpm(軌道直径10cm1)で、30℃で振とう培養される。
バイオマスの増加は式:T48hrsにおけるOD600OD600/ T0におけるOD600で決められる。
【0144】
T2: 唯一の炭素源としてキシロースを利用した細胞バイオマス収量
酵母株を標準的な微生物学的手法を用いて2%の寒天で固形化させたグルコース、酵母抽出物、細菌ペプトン培地上に画線する。
摂氏30℃で72時間培養後、酵母細胞を滅菌した白金耳を用いてプレートからとり、50mlの培養液中にで0.1から0.2ユニットの間のOD600(600nmの光学濃度)となるように接種する。
該培養液は250ml三角フラスコに蒸留水中のキシロース(5% w/v)、Difco Yeast Nitrogen Base w/o amino acids(0.67%)を含む。
培養液をOD600を計測するのに先立って(T72hrsにおけるOD600)OD72時間、220rpm(軌道直径10cm1)で、30℃で振とう培養される。
酵母の乾燥重量は前もって重量計測しておいたガラス試験管(W1)に5mlの酵母培養液を移して、その後22℃、10分間、3000gで遠心分離することにより測定する。
酵母ペレットを乱さずに上清を除き、22℃、10分間、3000gで遠心分離する前に、細胞を5mlの蒸留水で再懸濁する。
酵母細胞を含むガラス試験管を105℃で24時間乾燥し、重量を計測する(W2)。
乾燥酵母量はW2からW1を差し引いて計算され、得られた値に10を掛ける。
試験は2回試行し、平均値を計算する。
【0145】
T3:唯一の炭素源としてキシロースを利用したエタノール産生
接種酵母を50mlの蒸留水中に(2.5gキシロース、0.5g酵母抽出物、細菌用ペプトン)を含む250ml三角フラスコ中でその株の純粋細胞を1標準白金耳量、30℃、16時間、200rpm振とうして用意した。
50ml培養液を7個同時に生育しておいた。
培養液を22℃、3000g、5分間遠心分離することで回収した。
上清を捨て、細胞ペレットを滅菌蒸留水で再懸濁し、再遠心分離した。
上清を捨て、細胞ペレットを再懸濁して、滅菌水1Lにつき以下を含むキシロース最小培地20mlにプールした。
50gキシロース、13.4g Difco Yeast Nitrogen Base without amino acids、0.4mg硫酸銅五水和物、1mg硫酸亜鉛七水和物、2mg硫酸マンガン四水和物、1mg四酸化モリブデンナトリウム二水和物、1mg四ホウ酸ナトリウム十水和物、2mgパントテン酸塩カルシウム、2mgチアミン塩酸塩、2mg塩酸ピリドキシン、4mgイノシトール、1mgニコチン酸、および0.4mgビオチン
【0146】
Braun Biostat Bの2L発酵容器の中を前もって30℃に温め、20%に酸素を通気した同じキシロース最小培地980mlに細胞を接種した。
1分間に10Lの空気を通じて、1200rpmで攪拌しながら、必要であれば水酸化カリウムやリン酸を添加することでpHを5に保ちながら酵母を生育させた。
24時間後、培養液300mlを除き50gキシロース、10g Difco Yeast Nitrogen Base without amino acidsおよび上記の量の微量の塩類、ビタミンをを含む、新鮮なキシロース最小培地300mlと交換した。
さらに7時間後、新鮮なキシロース30gを培養液に加え、空気供給を1分間に4Lに減らし、攪拌速度を200rpmに減らした。
さらに20時間後にエタノール検知用のYSIメンブレン2876を取り付けたYSI 2700 Select Biochemistry Analyzer(YSI Inc. Yellow Springs、 Ohio、 USA)を用いてエタノールをアッセイした。
【0147】
T4:キシロース還元酵素試験
前記したようにグルコース、酵母抽出物、細菌用ペプトン寒天上で酵母株を生育させて、5% w/vキシロース、0.5% w/v酵母抽出物、および1% w/v細菌用ペプトンを含む、250ml三角フラスコ内の50ml培地に600nmで光学密度が0.1単位から0.2単位になるように接種した。
600nmの光学密度が3単位から5単位になるまで30℃、180rpmで培養液は培養した。
仮に細胞が24時間の培養後に所定の密度に達しなかった場合でも、やはり細胞は回収した。
細胞を3000xg、4℃、5分間遠心分離して回収した。
上清を廃棄し、細胞ペレットを冷却滅菌水で再懸濁し、再遠心分離した。
上清を廃棄し、培地の全ての微量物を除去するためにこのプロセスを繰り返した。
【0148】
細胞を溶解バッファに再懸濁し、Eliasson A.他 (2000) Applied and Environmental Microbiology、 66巻 3381-3386頁で述べられているように細胞抽出物を用意した。
次いでEliasson A.他 (2000) Applied and Environmental Microbiology、 66巻 3381-3386頁に述べられ、参照されているような方法にしたがって、その細胞抽出物のキシロース還元酵素活性を試験した。
30℃で、タンパク質1mg、1分間あたり1nmolのNAD(P)Hを還元または酸化することを1単位活性と定義する。
Lowry OH、Rosebrough NJ、Farr AL、及び Randall RJ (1951) Journal of Biological Chemistry 193巻:265- 275に述べられている方法によって、ウシ血清アルブミンを標準としタンパク質の試験をした。
【0149】
T5:キシリトールデヒドロゲナーゼ試験
前記したようにグルコース、酵母抽出物、細菌用ペプトン寒天上で酵母株を生育させて、5% w/vキシロース、0.5% w/v酵母抽出物、および1% w/v細菌用ペプトンを含む、250ml三角フラスコ内の50ml培地に600nmで光学密度が0.1単位から0.2単位になるように接種した。
600nmの光学密度が3単位から5単位になるまで30℃、180rpmで培養液は培養した。
仮に細胞が24時間の培養後に所定の密度に達しなかった場合でも、やはり細胞は回収した。
細胞を3000xg、4℃、5分間遠心分離して回収した。
上清を廃棄し、細胞ペレットを冷却滅菌水で再懸濁し、再遠心分離した。
上清を廃棄し、培地の全ての微量物を除去するためにこのプロセスを繰り返した。
【0150】
細胞を溶解バッファに再懸濁し、Eliasson A.他 (2000) Applied and Environmental Microbiology、 66巻 3381-3386頁で述べられているように細胞抽出物を用意した。
Eliasson A.他 (2000) Applied and Environmental Microbiology、 66巻 3381-3386頁に述べられ、参照されているような方法にしたがって、その細胞抽出物のキシリトールデヒドロゲナーゼ活性を試験した。
30℃で、タンパク質1mg、1分間あたり1nmolのNAD(P)Hを還元または酸化することを1単位活性と定義する。
Lowry OH、Rosebrough NJ、Farr AL、及びRandall RJ (1951) Journal of Biological Chemistry 193巻:265- 275に述べられている方法によって、ウシ血清アルブミンを標準としてタンパク質を試験した。
【0151】
T6:キシロースキナーゼ試験
前記したようにグルコース、酵母抽出物、細菌用ペプトン寒天上で酵母株を生育させて、5% w/vキシロース、0.5% w/v酵母抽出物、および1% w/v細菌用ペプトンを含む、250ml三角フラスコ内の50ml培地に600nmで光学密度が0.1単位から0.2単位になるように接種した。
600nmの光学密度が3単位から5単位になるまで30℃、180rpmで培養液は培養した。
仮に細胞が24時間の培養後に所定の密度に達しなかった場合でも、やはり細胞は回収した。
細胞を3000xg、4℃、5分間遠心分離して回収した。
上清を廃棄し、細胞ペレットを冷却滅菌水で再懸濁し、再遠心分離した。
上清を廃棄し、培地の全ての微量物を除去するためにこのプロセスを繰り返した
【0152】
細胞を溶解バッファに再懸濁し、Eliasson A.他 (2000) Applied and Environmental Microbiology、 66巻 3381-3386頁で述べられているように細胞抽出物を用意した。
Eliasson A.他 (2000) Applied and Environmental Microbiology、 66巻3381-3386頁に述べられ、参照されているような方法にしたがって、その細胞抽出物のキシロースキナーゼ活性を試験した。
30℃で、タンパク質1mg、1分間あたり1nmolのNAD(P)Hを還元または酸化することを1単位活性と定義する。
Lowry OH、Rosebrough NJ、Farr AL、及びRandall RJ (1951) Journal of Biological Chemistry 193巻:265- 275に述べられている方法によって、ウシ血清アルブミンを標準とてタンパク質を試験した。
【0153】
T7: 唯一の炭素源としてキシリトールを利用した生育
標準的な微生物学的技術を用いて2%の寒天で固形化させたグルコース、酵母抽出物、細胞用ペプトン培地上に酵母株を画線する。
摂氏30℃で72時間培養後、酵母細胞を滅菌した白金耳を用いてプレートからとり、50mlの培養液中にで0.1から0.2ユニットの間のOD600(600nmの光学濃度)となるように接種する。
該培養液は250ml三角フラスコに蒸留水中のキシロース(5% w/v)、Difco Yeast Nitrogen Base w/o amino acids(0.67%)を含む。
培養液をOD600を計測するのに先立って(T48hrsにおけるOD600)OD48時間、220rpm(軌道直径10cm1)で、30℃で振とう培養される。
バイオマスの増加は式:T48hrsにおけるOD600OD600/ T0におけるOD600で決められる。
【0154】
T8:栄養過多培地中でのキシロースを利用したエタノール産生
標準的な微生物学的技術を用いて2%の寒天で固形化させたグルコース、酵母抽出物、細菌用ペプトン培地上に酵母株を画線する。
摂氏30℃で96時間培養後、酵母細胞を滅菌した白金耳を用いてプレートからとり、50mlの培養液中にで1から2ユニットの間のOD600(600nmの光学濃度)となるように接種する。
該培養液は250ml三角フラスコに蒸留水中のキシロース(5% w/v)、酵母抽出物(0.5%)、細菌用ペプトン(1% w/v)を含む。
培養液を、220rpm(軌道直径10cm)で、30℃で振とう培養した。
培養上清サンプルをエタノール検知用YSIメンブレン2876を取り付けたYSI 2700 Select Biochemistry Analyzer(YSI Inc. Yellow Springs、 Ohio、 USA)を用いて24時間の間1時間毎にエタノール試験した。
エタノールレベルはg/Lで表している。
【0155】
T9:嫌気性条件下におけるキシロース最小無機物培地中でのエタノール産生
標準的な微生物学的技術を用いて2%の寒天で固形化させた、5% w/vキシロース、0.67% w/v Difco Yeast Nitrogen Base without amino acids培地上に酵母株を画線する。
30℃で96時間培養後、酵母細胞をプレートからとり、15mL容量の滅菌ポリプロピレン試験管 (Cellstar、 Greiner bio-one)内の滅菌5% w/vキシロース、0.67% w/v Difco Yeast Nitrogen Base without amino acidsを含む10mLに600nmにおける光学密度0.1から0.4となるように直接接種する。
培地を2mLの無菌ミネラルオイルで重層して酸素移動を妨げ、ネジ蓋を充分に閉めて、チューブを30℃で振とうせずに培養した。
元の接種酵母の生育で形成した細胞ペレットを乱さないように、滅菌したパスツールピペットを用いてエタノール試験用のサンプルを取り出した。
エタノール検知用の付属のYSIメンブレン2876を取り付けたYSI 2700 Select Biochemistry Analyzer(YSI Inc. Yellow Springs、 Ohio、 USA)を用いてエタノールをアッセイした。
【0156】
発明は以下の限定されない例のみを参照することで、その詳細が述べられる。
【実施例1】
【0157】
例1
サッカロマイセスは唯一の炭素源としてキシロースをして利用してゆっくり生育できる
パン酵母であるサッカロマイセス.セレビシエのNL67株(Higgins他 (1999) Applied and Environmental Microbiology 65巻: 680-685)は唯一の炭素源としてキシロースを含むまたは含まない固形最小無機物培地に接種され、30℃で2ヶ月間培養された。
光学顕微鏡を用いると、微小なコロニーが両方のプレート上で観察されたが、キシロース含有培地のコロニーの方がキシロースを含まない培地のそれらより大きかった。
キシロースを含まない培地の細胞が5、6世代進む一方で、キシロースを含む培地の細胞は9、10世代まで進んでいた。
【実施例2】
【0158】
例2
サッカロマイセスの異なった株で構成される集団世代は唯一の炭素源としてのキシロースで急速に生育することができる。
そこには野生型、ワイン製造、蒸留、ビール発酵、そしてパン用が含まれるが、様々な資源から酵母株を得て、それらに胞子形成させて、遺伝的に多様な株を生み出すために集団接合手法を用いることで、唯一の炭素源としてのキシロースを利用してより活発に生育することができるような酵母株を充実させるための選択圧を適用することができた。
キシロース最小無機物培地上で(および同時に炭素源がない同じ無機物最小培地上で)遺伝的に多様な集団を拡げ、2ヶ月間培養することで、コロニーサイズの中に不均一性が認められた。
キシロースを含むプレートと含まないプレートを比較して、受け入れられてきた定説と反対、すなわち、生育は培地にキシロースを添加したことによるものであったということが観察され、それはキシロースで生育する集団内の酵母株の能力に不均一性があることを暗に示すものであった。
キシロースで生育する集団を全て集めて、胞子形成させることで、キシロースでより効速度的に生育する能力を与えるような遺伝的情報に富んだ新しい酵母集団を生むことができた。
【0159】
寒天培地上における5回から20回の間の選択後に、唯一の炭素源としてキシロースを有する最小無機物培地を含む液体培地に集団は移行され、ほぼ50世代の間継代培養された。
次世代は胞子形成されて、新世代が集団接合により作られた。
ヘテロなサッカロマイセス細胞の集団は約50世代の間キシロース最小培地で液体培養された。
この後、サンプルのいくつかは保存され、いくつかは胞子形成された。
選択された集団由来の発芽胞子はほぼ50世代の間液体キシロース最小培地において選択圧下で生育するようなヘテロなサッカロマイセス細胞の新しい集団を生むために集団接合された。
この過程は望ましい生育速度に達するまで繰り返し行われた。
【0160】
キシロース最小培地における集団の生育速度が増加しているか否か調べるために、それぞれ365日、569日、1013日、1059日、1170日、そして1377日の間選択にかけられたサンプルがキシロース最小培地に600nmにおける光学濃度0.1から0.2、220rpm、30度で接種された。
光学濃度が24時間後に再試験され、標準的微生物学的手法により24時間における平均倍加時間を計算するのに用いられた。
結果はグラフを使ってプロットされ、図1に示されている。
【0161】
図1は集団の全体の生育速度が接合の回数と唯一の炭素源としてキシロース上で生育するような選択を通じて、指数的に改善されていることを示す。
唯一の炭素源としてキシロース上での生育速度の改善は唯一の炭素源としてグルコース上での生育速度と同じになるまで続くと考えられる。
【実施例3】
【0162】
例3
非組換えサッカロマイセス株のヘテロな集団によるキシロース豊富な培地上でのエタノール生産はキシロース最小培地上での生育速度と関係している。
キシロース最小培地上での集団の倍加時間は例2、図1で述べられているように決定される。
エタノール産生は集団のサンプルが1から2の間の600nmの光学濃度で250mLフラスコ内の5% w/vキシロース、0.5% w/v酵母抽出物、1% w/v細胞用ペプトン(XYP)を含む50mL培地に接種されることで測られた。
培養液は30℃、220rpmで培養され、エタノール産生は2日間に渡って測定された。
【0163】
得られたデータ(表1)はキシロース最小培地上のヘテロな集団の倍加時間が減るにつれてキシロース豊富な培地でのエタノール産生能力が増加していることを示している。
両特性は接合と選択過程が行われる反復回数と時間の長さ応じて改善された。
【0164】
【表1】

【実施例4】
【0165】
例4
唯一の炭素源としてキシロース上で生育できる純粋な非組換えサッカロマイセス株の、試験T1、T2による特徴づけ。
単離サッカロマイセス株は標準的な微生物学的手順により例2のキシロース利用集団から純化され、試験T1、T2により唯一の炭素源としてキシロース上での生育や産生が試験された。
株CEN.PK(Karhumaa他(2005) Yeast 22巻:259- 368)とNL67(Higgins他(1999) Applied and Environmental Microbiology 65巻: 680-685)はここで書かれている方法を適用する以前の代表的株に含まれた。
株NM04/41257とNM04/41258(供託)は例2と図1に述べられたプロトコルが1059日継続された集団から由来する。
株ISO10(NM05/45177)とISO7(NM05/45178)(供託)は例2と図1に述べられたプロトコルがそれぞれ1377日、1431日継続された集団から得られた。
それぞれ単離された酵母株は胞子化させて、次に由来した半数体を遺伝マーカーをもつ実験的よく知られているサッカロマイセス株と接合させることでサッカロマイセス種のメンバーであることが確認された。
【0166】
【表2】

【0167】
キシロース最小培地におけるサッカロマイセス.セレビシエの純粋株のバイオマス産生は試験T2で述べられているように試験された。
株CEN.PKとNL67はこで書かれている方法を用いて生まれていない代表的株に再び含まれた。
CEN.PKは50mL培養で1mgの乾燥酵母量を生む。
NL67は50mL培養で2mgの乾燥酵母量を生む。
NM04/41257は50mL培養で50mgの乾燥酵母量を生む。
NM04/41258は50mL培養で55mgの乾燥酵母量を生む。
ISO10は50mL培養で145mgの乾燥酵母量を生む。
ISO7は50mL培養で114mgの乾燥酵母量を生む。
【0168】
上記データはそのプロトコルは唯一の炭素源としてキシロース上で早く生育しよく産生する能力を持つ株を生むことを示している。
例2と図1のデータを考慮すると、そのデータはそのプロトコルがグルコース上での生育と産生と同等になるまでキシロース上での最大限可能な生育速度と産生を有する株を得るために繰り返し用いることができることを示している。
【実施例5】
【0169】
例5
非組換えサッカロマイセス株は唯一の炭素源としてキシロースを用いて急速生育及びエタノール産生できる。
接種されるISO10株はその株の純粋細胞を1標準白金耳量を16時間、30℃、200rpm、250mL三角フラスコの中の50mL滅菌水(2.5gキシロース、0.5g酵母抽出物、0.5g微生物用ペプトン)で生育することで準備した。
50mL培養が7本同時にされた。
培養液は22℃、3000xg、5分遠心分離することで回収された。
上清は捨てられて、細胞ペレットは滅菌水で再懸濁され、再遠心分離された。
上清は捨てられて、細胞ペレットは1Lの蒸留水に50gキシロース、13.4g Difco Yeast Nitrogen Base without amino acids 、0.4mg硫酸銅五水和物、1mg硫酸亜鉛七水和物、2mg硫酸マンガン四水和物、1mg四酸化モリブデンナトリウム二水和物、1mg四ホウ酸ナトリウム十水和物、2mgパントテン酸塩カルシウム、2mgチアミン塩酸塩、2mg塩酸ピリドキシン、4mgイノシトール、1mg硫酸、および0.4mgビオチンを含むキシロース最小培地20mLに再懸濁された。
【0170】
細胞を前もって30℃に暖められた同じキシロース含有最小培地980mlに接種し、Braun Biostat Bの2L発酵容器の中に20%の酸素を通気した。
1分間に10Lの空気を通じて、1200rpmで攪拌しながら、必要であれば炭酸カリウムやリン酸を添加することでpHを5に保ちながら酵母を生育した。
24時間後、培養液300mlが除かれて、50gキシロース、10g Difco Yeast Nitrogen Base without amino acidsおよび上記の量の微量の塩類、ビタミンをを含む、新鮮なキシロース最小培地300mlと交換された。
これは1Lにつき4gの乾燥酵母量と同等の細胞塊の培養液を与えた。
1分間に10Lの空気を通じて、1200rpmで攪拌しながら、それぞれをpHを5に保った。
このような条件下で、酵母バイオマスは10gのキシロースを消費して4gの乾燥酵母量を産生して4時間(乾燥酵母量に基づく)で倍加した。
【0171】
上記手法で酵母が1Lにつき濃度約12g(乾燥酵母量と等しい)に達したとき、新鮮なキシロース30gが培養液に加えられ、空気供給は1分間に4Lに減らされ、攪拌速度が200rpmにまで減らされた。
不溶化酸素が検出されたこれらの条件下において、17gのキシロースが消費され、さらに20時間で1gの乾燥酵母量と1Lに1.75gのエタノール、1Lに1gのキシリトールが産生された。
【実施例6】
【0172】
例6
指数関数的に生育する非組換え酵母株における、キシロース還元酵素(XR)、キシリトールデヒドロゲナーゼ(XDH)、キシルロリン酸化酵素(XK)の活性
試験T1で述べられたようにグルコース、酵母抽出物、細菌用ペプトン寒天で生育された酵母株は0.1から0.2の間の600nmの光学濃度で250mL振盪フラスコ内の5% w/vキシロース、0.5% w/v酵母抽出物、1% w/v細菌用ペプトン(XYP)を含む50mL培地に接種された。
培養液は600nmにおける光学濃度が3から5単位の間に達するまで30℃、180rpmで培養された。
NL67やCEN.PKのような株の場合のように、仮に細胞が24時間後に望む濃度に達していなかったとしても、それらは回収されて試験された。
細胞は3000g、4℃、5分で遠心分離されて回収された。
上清は捨てられて、細胞ペレットは氷冷された滅菌水で再懸濁され、再遠心分離された。
上清は捨てられて、その過程が培地の全ての残渣が取り除かれるまで繰り返された。
Eliasson A.他 (2000) Applied and Environmental Microbiology、 66巻 3381-3386頁に述べられているように、細胞は溶解バッファに再懸濁されて、細胞抽出物が準備された。
Eliasson A.他(2000) Applied and Environmental Microbiology、 66巻 3381-3386頁において述べられ、言及されているように細胞抽出物はキシロース還元酵素(XR)、キシリトールデヒドロゲナーゼ(XDH)、キシルロリン酸化酵素(XK)の活性試験に供与された。
活性1単位を30℃、1mg蛋白質、1分で1nmolのNAD(P)Hを還元または酸化できるとした場合、以下の活性が見られた。
【0173】
【表3】

【0174】
これらのデータは唯一の炭素源としてのキシロース上で生育する酵母を得るため用いられた繰り返しの接合や選択方法がキシロースやキシリトールの代謝に決定的なキシロース還元酵素やキシリトールデヒドロゲナーゼの活性の向上につながることを示している。
我々の株において品種改良や選択手法に選択圧を適用することでペントースリン酸経路にかかる酵素のように他の酵素や活性が自然に改善されてきたかもしれない。
更なる選択と育種、突然変異、原形質融合、細胞誘導、あるいはXR、XDH、XKの活性を最適化したり、キシロースイソメラーゼを誘導し最適化する組み替えDNA技術、あるいはキシロース、キシリトール、キシルロース代謝を向上させるために必要な他の遺伝的変化の組み合わせを用いて更なる改良を目的とした基礎として、我々の株が明瞭に用いられうることは当業者ならわかるだろう。
【実施例7】
【0175】
例7
唯一の炭素源としてキシリトール上で生育できる純粋な非組換えサッカロマイセス株の、試験T7による特徴づけ。
試験T1で述べられているように純粋な株がグルコース、酵母抽出物、細菌用ペプトン寒天上で生育された。
その株のコロニーは5% w/v キシリトール及び0.67% Difco Yeast Nitrogen Base without Amino Acidsからなる50mLに接種され試験T7で述べられているように生育試験がなされた。
【0176】
【表4】

【0177】
これらのデータは唯一の炭素源としてのキシロース上で生育する酵母を得るため用いられた繰り返しの接合や選択方法が唯一の炭素源としてのキシリトールも利用することができるいくつかの株が得られる結果となったことを示している。
【実施例8】
【0178】
例8
試験T8による唯一の炭素源としてのキシロース上で生育できるサッカロマイセスの純粋な非組換え株によるキシロース豊富な培地を用いたエタノール産生。
試験T1で述べられているように純粋な株がグルコース、酵母抽出物、細菌用ペプトン寒天上で生育され、1から2単位の間の600nmの光学濃度で250mL振盪フラスコ内の5% w/vキシロース、0.5% w/v酵母抽出物、1% w/v細菌用ペプトン(XYP)を含む50mL培地に接種されて、試験T8に述べられているように試験された。
【表5】

【0179】
これらのデータは唯一の炭素源としてのキシロース上で生育することを基礎とした選択方法がキシロースからエタノール産生することができる酵母株を生み出したことを示している。
例3(表1)のデータと併せるとこれらのデータはキシロースを利用してエタノール産生する能力の向上に合わせて、唯一の炭素源としてのキシロースを用いて生育したり、細胞バイオマスを産生する能力が向上することを示している。
さらに、キシロースやキシリトールを利用できるNM04/41258及びISO7のような株もエタノール産生できる。
NM04/41258およびISO7(NM05/45178)株がキシリトールを利用し、キシロースからエタノールを産生できるという事実はD-キシロースを利用できる特異的コロニーを単離するための株の選択はなされるが、キシリトールはできないという米国特許番号4、511、656の教示に反する。
【実施例9】
【0180】
例9
嫌気的条件下で唯一の炭素源としてキシロースを利用してエタノール産生することができるサッカロマイセスの純粋な非組換え株の単離と特徴付け
単離株は1106日間選択に曝されたキシロース利用集団から純粋化されて、試験T9を受けた。
50の独立した株が試験され、0.24 g/Lから0.75 g/Lの範囲で3週間から4ヶ月の後にエタノール産生試験を行った。
NM04/41257およびNM04/41258株もまたこれら試験に含まれた。
【表6】

【0181】
これらのデータはエタノール産生するために嫌気的条件下でキシロースを発酵させることができる非組換えサッカロマイセス酵母を得ることができることを示している。
NM04/41257およびNM04/41258株は表中の他の株と比較してより早く選択された集団から純粋化された。
このデータはここで述べられた反復性プロトコルは非組換え酵母によって嫌気的条件下でのエタノール産生の効速度向上につながることを示している。
【実施例10】
【0182】
例10
好気的条件下における、最小培地への高濃度接種された非組換えサッカロマイセスによる急速エタノール生産
グルコース、酵母抽出物、細菌用ペプトン寒天(上記)上で生育したISO10株は250mL三角フラスコ内の5% w/vキシロース、0.5% w/v酵母抽出物、1% w/v細胞用ペプトン(XYP)を含む50mL培地に接種され、72時間、30℃、220rpmで培養された。
20個のフラスコが同時に培養された。
細胞は3000xg、22℃、10分間遠心分離により回収された。
上清は捨てられて、細胞ペレットは再遠心分離のまえに10mLの滅菌水に再懸濁された。
上清は捨てられて、細胞は蒸留滅菌水でさらなる遠心分離の前に再懸濁された。
最終的には、細胞は20mLの滅菌蒸留水に再懸濁された。
【0183】
発酵培地は以下のものをフィルター滅菌して準備された: 0.67% Difco Yeast Nitrogen Base without amino acids含有YNB;XYNBは5%キシロース添加YNB;GXYNBは0.5%グルコース及び4.5%キシロース添加YNB。
培地は125mLの円錐ガラスビーカーに入れられた。
培地には3mLの細胞上清が接種され、220rpmの環状振とう器で、30℃で設置し、上述したように一時間間隔でエタノール産生を計測した。
接種直後に600nmにおける光学濃度を測り、培養液の細胞濃度が5.7から6.1x10e8個/mLであることがわかった。
【0184】
【表7】


数字は接種から示された時間後における培養液上清のエタノールg/Lを示している。
炭素源がないYNBに接種された細胞から産生された少量のエタノールは72時間の接種準備期間の間に合成され、蓄えられた内在性の貯蔵糖類の持ち越し分から由来したものがほとんどであろう。
3時間後にYNB培養液のエタノール濃度が減少しているのは、貯槽糖類が使い果たされたかあるいは使い果たしてさらに細胞が使用しているか、エタノールが蒸発しているか、あるいはその両方によってエタノールが消費されていることを示している。
【0185】
これらのデータはが唯一の炭素源としてのキシロース最小培地上でエタノール産生のために急速にキシロースを発酵することができるようなサッカロマイセス非組換え株をを得ることは可能であることを示している。
更に、これらの株はGXYNBにおける4時間経過後に産生されるエタノールがグルコースの存在から唯一予期されたエタノールにまさったために、グルコースのような発酵性ヘキソース糖が添加された培地上でキシロースからエタノールを産生することができる。
【実施例11】
【0186】
例11
唯一の炭素源としてのキシロースで生育する非組換えサッカロマイセスバイオマスは広い産業上有用な特性を示す
技術に習熟している者ならば酵母は様々な発酵用途(例えば、パン、エタノール(飲料用及び非飲料用)産業)に、あるいはアミノ酸、タンパク質、核酸(例えば、DNAおよびRNA)、酵素(例えば、インベルターゼおよびフィターゼ)、抗酸化物質(例えば、グルタチオン)、そして細胞壁構成要素(例えば、グルカン)のような源として産業上の有用性が証明されていることは知っている。
上記特性は例示であり、限定的な意図はない。
【0187】
酵母がキシロースを含む培地で生育され、様々な産業的目的に用いられるなら、それは有用である。
それゆえ、例示としての株ISO10が生育とキシロースに次いで様々な特徴が試験された。
【0188】
ISO10株は1L当たり50gキシロース、13.4g Difco Yeast Nitrogen Base without amino acidsに0.4mg硫酸銅五水和物、1mg硫酸亜鉛七水和物、2mg硫酸マンガン四水和物、1mg四酸化モリブデンナトリウム二水和物、1mg四ホウ酸ナトリウム十水和物、2mgパントテン酸塩カルシウム、2mgチアミン塩酸塩、2mg塩酸ピリドキシン、4mgイノシトール、1mg硫酸、および0.4mgビオチンを添加した中で培養された。
細胞は1分間に12Lの空気供与し、温度30℃、1M水酸化カリウムおよび1Mリン酸を用いてpH5に維持されながら、1200rpmで攪拌された。
細胞の600nmにおける吸光度が14の時、3000xg、22℃、10分で遠心分離され細胞は回収された。
細胞ペレットは蒸留水で再懸濁されて再遠心分離された。
この洗浄手順は三回なされて、バイオマスはワットマンフィルター紙No.1に置かれて、濡れたバイオマスの22%から25%が固形物になるようにした。
【0189】
産業的用途に関する一般的な特徴を持った酵母バイオマスを得るために唯一の炭素源としてのキシロース上で非組換えサッカロマイセスを生育することは可能であることを証明するためにそのバイオマスは以下の試験に供された。
【0190】
エタノール発酵力
スクロース、グルコース、フルクトースのような発酵性糖類からエタノールを産生する能力としてエタノール発酵力を試験するため酵母を糖蜜に基づく培地に接種した。
サトウキビ糖蜜は水で希釈され、5分間、121℃で加熱されることで滅菌された。
上清は最終濃度18%w/wのスクロース相当まで希釈され、フィルター滅菌された0.67% w/v Difco Yeast Nitrogen Baseが添加された。
この培地40mLに6.8mg相当の乾燥酵母が接種され、振とうせずに30℃で培養された。
エタノールはエタノール検出のための付属のYSI メンブレン2786でYSI 2700 Select Biochemistry Analyzerを使って24時間ごとに試験された(YSI Inc. Yellow Springs、 Ohio、 USA)
24時間後には酵母は1L当たり16.8gのエタノールを産生し、一週間後には酵母は1L当たり59gのエタノールを産生した。
【0191】
パン生地の発酵
グルコース、フルクトース、マルトースのような糖類を発酵させ、小麦粉発酵を起こすような二酸化炭素を産生する能力として、発酵力を試験するため、酵母はパン生地の混合物に加えられ、発酵させて膨らませたパンを産生する能力を試験された。
パン生地は500g全粉粒小麦大豆、亜麻仁製パン用ミックス粉(Kitchen Collection、 Christchurch)、300mL生水、10g酵母(24%固形)を含むものとして準備された。
パン生地はBreville Bakers Oven on setting 3Bを用いて発酵され、焼成された(HWI Electrical、 Sydney Australia)。
酵母はパン生地混合物を膨らませて(発酵させて)、14cmの高さのパンの塊を作った。
【0192】
グルカン含有量
Sutherland IWおよびWilkinson JF (1971) "Chemical Extraction Methods of Microbial Cells"、 in Methods in Microbiology 5B巻 (JR Norris and DW Ribbons編)、 第4章 345-383頁、 Academic Press London and New Yorkに述べられているような方法によって59gの乾燥物に相当する量の酵母バイオマスがグルカンとして抽出された。
Sutherland 他によると、この方法は「汚染物質を含まない細胞壁グルカン」を産生する。
述べた方法を用いることで、8mgの量のグルカンが乾燥した酵母初期物質から得られた。
【0193】
アミノ酸・タンパク質含有量
乾燥酵母量24mgに相当する酵母材料が試験管内の1M水酸化ナトリウム2.5mLに懸濁され、15分間水槽で煮られた。
煮られた試料は22℃に冷やされて、蒸留水を用いて10mLにされた。
Lowry OH、 Rosebrough NJ、 Farr AL及びRandall RJ (1951) Journal of Biological Chemistry 193巻: 265-275に従い、ウシ血清アルブミンを標準に用いてアミノ酸・タンパク質試験に供された。
この試験で酵母は乾燥重量あたり39%のアミノ酸・タンパク質を含有していることを示した。
【0194】
ヌクレオチド含有量
乾燥酵母量8.3mgに相当する酵母材料が4% w/vの塩酸1mLに再懸濁されて、15分間、121℃で圧力加熱された。
22度に冷やした上で、酵母懸濁物は3000xg、10分間、22℃で遠心分離されて、上清がHerbert D、 Phipps PJ及び Strange RE (1971) "Chemical Analysis of Microbial Cells"、 in Methods in Microbiology 5B巻 (JR Norris and DW Ribbons編)、第4章 345-383頁、 Academic Press London and New Yorkに述べられている紫外線吸光光度法によって上清のヌクレオチド含量が試験された。
酵母は乾燥重量当たり1.9%のヌクレオチドを含んでいた。
【0195】
グルタチオン含有量
乾燥酵母量6.82gに相当する酵母材料がエタノールと蒸留水が20:80の割合の溶液0.8mLに再懸濁され、渦巻状に混合されて、10、000xg、2分間、22℃で遠心分離された。
上清は以下の通り試験された。
リン酸バッファはpH7.5で250mLに3.99gのNa2HP04、0.43のNaH2P04.H20、0.59gの2ナトリウムEDTA.2H20を含んだ。
NADPH溶液は100mLのリン酸バッファに26.6mgのNADPH 4ナトリウム塩を含んだ。
5、5"-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)は10mLのリン酸バッファに23.8mgのDTNBが調製された。
標準グルタチオンは源濃度0.1mMで蒸留水に調製された。
Fluka Chemie AG由来のグルタチオン還元酵素原液は1mL当たり162.72単位の活性を含んだ。
【0196】
試験は3mLの分光光度計用キュベットに1.4mLのNADPH溶液及び200μLのDTNB容器及び10μLの試料か、GSH標準溶液か、蒸留水及び390μLの蒸留水を入れて行われた。
試料は30℃で前もって温めておき、3μLのグルタチオン還元酵素を添加することで反応が開始された。
キュベットは30℃、30分間培養されて、シマヅUV-1201分光光度計を用いて412nmの波長で蒸留水をブランクとして吸光度を測定した。
この試験は酵母は乾燥質量当たり0.36%総量のグルタチオンを含有していることを示した。
【0197】
脱リン酸化活性
13.5mgの乾燥酵母に相当する酵母材料がpH4.9の0.2M酢酸ナトリウムバッファ0.5mLに再懸濁された。
Sigma-Aldrich Chemie GmbH製の脱リン酸化酵素基質はpH4.9の0.2M酢酸ナトリウムバッファに1mL当たり1mgで調製され、Sigma-Aldrich Chemie GmbH製脱リン酸化酵素(固形物質1mg当たり1.1単位の脱リン酸化活性を有すると提供者に定められている)脱リン酸化酵素はpH4.9の0.2M酢酸ナトリウムバッファに1mL当たり0.909単位で調製された。
試験はキュベットに500μLの酢酸ナトリウムバッファ及び250μL脱リン酸化酵素基質溶液及び250μLの酵母懸濁溶液か、脱リン酸化酵素か、蒸留水でなされた。
キュベットは20分間、30℃培養され、300μLの10M水酸化ナトリウムが加えられた。
405nmの吸光度が蒸留水をブランクとして読まれた。
酵母の脱リン酸化酵素活性は乾燥酵母重量当たり0.068単位だった。
【0198】
インベルターゼ活性
14.48mgの乾燥酵母に相当する酵母材料が1mLの蒸留水に再懸濁された。
懸濁液はさらに蒸留水で100倍に希釈された。
インベルターゼ活性は米国特許番号4、396、632および5、741、695の試験T3に述べられている比色法により試験された。
1単位は30℃、pH4.9で乾燥酵母1mg、1分当たりスクロースから遊離されたグルコース1μmolと定義した場合、酵母は0.93単位のインベルターゼ活性を産生した。
【0199】
これらのデータは非組換えサッカロマイセス.セレビシエが広範な産業用途に関連したバイオマス、代謝産物、細胞成分、あるいは酵素活性を生み出すために唯一の炭素源としてキシロースで生育される可能性を示している。
技術に習熟している者であればこれらの特徴のレベルや量が古典的あるいは組み替え遺伝学的手法だけでなく上記に示された結果が単に指標にすぎないように、培養条件を変化させる手段を通することによってもコントロールされうることはわかるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】図1は発明方法を適用した後に長期にわたってサッカロマイセス.セレビシエ株集団の平均倍加時間のプロットを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して、望ましい生育速度で生育できるサッカロマイセス株の製造方法であって、以下の工程を含む方法。
(a)サッカロマイセスの遺伝的に多様な非組替え酵母細胞の集団を準備する;
(b)該酵母細胞を、酵母細胞間でDNAが結合できる条件下で培養する;
(c)生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して、生育が増大した酵母細胞を得るべく、該酵母細胞をスクリーニングまたは選択する;
(d)望ましい生育速度を有する一つ以上の酵母細胞を単離する
【請求項2】
スクリーニングまたは選択された細胞が遺伝的に多様な非組み替え酵母細胞の集団を形成し、工程(b)及び(c)が望ましい増殖速度が得られるまで反復される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間で少なくとも1世代の生育速度であり得る培養物中のサッカロマイセス株の製造方法であって、以下の工程を含む方法。
(a)遺伝的に多様なサッカロマイセスの非組替え酵母細胞の集団を準備する;
(b)該酵母細胞を、酵母細胞間でDNAが結合できる条件下で培養する;
(c)酵母細胞をキシロース含有培地上もしくは該培地中で培養することによって、酵母細胞をスクリーニングまたは選択する;
(d)1つ以上の酵母細胞が生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して望ましい生育速度で生育する能力を獲得するまで、遺伝的に多様なサッカロマイセスの非組替え酵母の母集団を形成するスクリーニングまたは選択された細胞を用いて工程(b)と(c)を繰り返す
【請求項4】
工程(C)の該酵母細胞がキシロース含有培地上で該酵母細胞を培養することによって選択されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該キシロース含有培地が唯一の炭素源としてキシロースを含むことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該キシロース含有培地がキシロース最小培地であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法
【請求項7】
該キシロース含有培地が複数炭素源の一つとしてキシロースを含むことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
唯一の炭素源としてキシロースを利用しても生育速度が増大しない酵母細胞をキシロースで生育できるのに充分な時間、該酵母細胞をキシロース含有培地上又は中で培養することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該酵母間でのDNAの結合は接合によることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
該接合は酵母細胞に胞子形成させて、性的に適合した子孫を交配させることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
遺伝的多様な酵母細胞の該集団が少なくとも2つの遺伝的に異なった酵母株を含むことを特徴とする、請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
酵母細胞の該集団が天然のサッカロミセス株を含むことを特徴とする、請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
遺伝的に多様な非組み替え酵母細胞の該集団が化学的又は物理的変異誘発、原形質融合、胞子形成及び交配、細胞誘導のいずれか一つ以上によって生まれたサッカロミセス株を含むことを特徴とする、請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
遺伝的に多様な酵母細胞の集団がサッカロマイセス・セレビシエ種を含む、請求項1ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載の方法で作られる株。
【請求項16】
請求項15に記載の株の派生株。
【請求項17】
生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間に1世代の速度で生育できる単離されたサッカロマイセス株であって、
(i)試験T1に特定される条件下で生育させたとき、5倍に増大したバイオマスを産生し、
(ii)試験T2に特定される条件下で生育させたとき、少なくとも10mg乾燥重量のバイオマスを産生し、
請求項1ないし14のいずれかに記載の方法により得られるものである株。
【請求項18】
生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間で一世代の速度で生育することができる単離されたサッカロマイセス株であって、
(i)試験T1に特定される条件下で生育させたとき、10倍に増大したバイオマスを産生し、
(ii)試験T2に特定される条件下で生育させたとき、少なくとも50mg乾燥重量のバイオマスを産生し、
(iii)試験T3で少なくとも0.1 g/Lのエタノールが検出され、
(iv)試験T4に特定される条件下、30℃で、たんぱく質抽出物1mg、1分当たり少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化され、
(v)試験T5に特定される条件下、30℃で、たんぱく質抽出物1mg、1分当たり少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化され、
請求項1ないし14のいずれかに記載の方法により得られるものである株。
【請求項19】
生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間で一世代の速度で生育することができる単離されたサッカロマイセス株であって、
(i)試験T1に特定される条件下で生育させたとき、5倍に増大したバイオマスを産生し、
(ii)試験T2に特定される条件下で生育させたとき、少なくとも40mg乾燥重量のバイオマスを産生し、
(iii)試験T4に特定される条件下、30℃で、たんぱく質抽出物1mg、1分当たり少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化され、
(iv)試験T5に特定される条件下、30℃で、たんぱく質抽出物1mg、1分当たり少なくとも1nmolのNAD(P)Hが還元または酸化され、
(v)試験T7に特定される条件下で唯一の炭素源としてキシリトールを利用して、少なくとも5倍に増大したバイオマを産生し、
(vi)試験T8を受けた時、少なくとも0.04 g/L濃度のエタノールが検出され、
請求項1ないし14のいずれかに記載の方法により得られるものである株。
【請求項20】
生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間で少なくとも一世代の速度で生育することができ、唯一の炭素源としてキシロースを利用するその株の能力は非組換え手法により得られる、単離されたサッカロマイセス株。
【請求項21】
その生育速度は24時間で1世代超であるような、請求項20に記載の株。
【請求項22】
その生育速度は8時間で1世代超であるような、請求項20に記載の株。
【請求項23】
その生育速度は4時間で1世代超であるような、請求項20に記載の株。
【請求項24】
その生育速度は2時間で1世代超であるような、請求項20に記載の株。
【請求項25】
試験T1に特定される条件下で生育させたとき、少なくとも2倍に増大したバイオマスを産生する、請求項20ないし24のいずれかに記載の株。
【請求項26】
試験T1に特定される条件下で生育させたとき、少なくとも5倍に増大したバイオマスを産生する、請求項20ないし25のいずれかに記載の株。
【請求項27】
試験T2に特定される条件下で生育させたとき、培養液50mL当たり少なくとも0.01mg乾燥重量のバイオマスを産生する、請求項20ないし26のいずれかに記載の株。
【請求項28】
試験T4で測定すると、少なくとも1単位のキシロース還元酵素活性を有する非組換え酵素を発現する、請求項20ないし27のいずれかに記載の株。
【請求項29】
試験T5で測定すると、少なくとも1単位のキシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有する非組換え酵素を発現する、請求項20ないし28のいずれかに記載の株。
【請求項30】
試験T6で測定すると、少なくとも10単位のキシルロースキナーゼ活性を有する非組換え酵素を発現する、請求項20ないし29のいずれかに記載の株。
【請求項31】
試験T4で測定すると、少なくとも1単位のキシロース還元酵素活性を有する非組換え酵素、および試験T5で測定すると、少なくとも1単位のキシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有する非組換え酵素を発現する、請求項20ないし30のいずれかに記載の株。
【請求項32】
唯一の炭素源としてキシロースを利用して48時間で少なくとも一世代の速度で生育する能力を持ち、試験T4で測定すると、キシロース還元酵素活性が少なくとも1単位、かつ試験T5で測定すると、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性が少なくとも1単位である、キシロース還元酵素とキシリトールデヒドロゲナーゼからなる群から選択される活性を持つ非組換え酵素を発現できる、単離されたサッカロマイセス株。
【請求項33】
キシロース還元酵素活性を持つ非組換え酵素及びキシリトールデヒドロゲナーゼ活性を持つ非組換え酵素を発現できる、請求項32に記載の株。
【請求項34】
キシロース還元酵素とキシリトールデヒドロゲナーゼからなる群から選択される活性を持つ1つ以上の非組換え酵素に加えて、キシルロースキナーゼ活性を持つ非組換え酵素を発現できる、請求項32または33に記載の株。
【請求項35】
試験T6で測定すると、キシルロースリン酸化活性が少なくとも10単位である、請求項34に記載の株。
【請求項36】
生育のための唯一の炭素源としてキシロースを利用して24時間で少なくとも一世代超の速度で生育できる、請求項32ないし35のいずれかに記載の株。
【請求項37】
試験T1で株のバイオマスが少なくとも2倍に増大する、請求項32ないし36のいずれかに記載の株。
【請求項38】
試験T1で株のバイオマスが少なくとも5倍に増大する、請求項32ないし37のいずれかに記載の株。
【請求項39】
試験T1で株のバイオマスが少なくとも10倍に増大する、請求項32ないし38のいずれかに記載の株。
【請求項40】
試験T7で株のバイオマスが少なくとも5倍に増大する、請求項20ないし39のいずれかに記載の株。
【請求項41】
試験T2で少なくとも10m乾燥重量のバイオマスを産生する、請求項20ないし39のいずれかに記載の株。
【請求項42】
試験T2で少なくとも30mg乾燥重量のバイオマスを産生する、請求項20ないし39のいずれかに記載の株。
【請求項43】
試験T2で少なくとも40mg乾燥重量のバイオマスを産生する、請求項20ないし39のいずれかに記載の株。
【請求項44】
試験T2で少なくとも50mg乾燥重量のバイオマスを産生する、請求項20ないし39のいずれかに記載の株。
【請求項45】
キシロースで生育すると、エタノールを産生できる、請求項20ないし44のいずれかに記載の株。
【請求項46】
キシロースを発酵してエタノールを産生できる、請求項20ないし44のいずれかに記載の株。
【請求項47】
試験T3で少なくとも0.1 g/Lの濃度でエタノールを産生できる、請求項20ないし46のいずれかに記載の株。
【請求項48】
試験T8で少なくとも0.4 g/Lの濃度でエタノールを産生できる、請求項20ないし46のいずれかに記載の株。
【請求項49】
試験T1に特定される条件下で少なくとも2倍に増大したバイオマスを産生する単離された非組換えサッカロマイセス株。
【請求項50】
以下の特徴を持つ単離された非組換えサッカロマイセス株。
(a)試験T1に特定される条件下で少なくとも5倍にバイオマスが増大する
(b)試験T2に特異的な条件下で少なくとも10mg乾燥重量のバイオマス
【請求項51】
以下の特徴を持つ単離された非組換えサッカロマイセス株。
(a)試験T1で少なくとも10倍に増大したバイオマスを産生する
(b)試験T2で少なくとも50mg乾燥重量のバイオマスを産生する
(c)試験T3で少なくとも0.1 g/Lの濃度のエタノールが検出される
(d)試験T4特定される条件下で少なくとも1単位のキシロース還元酵素活性が検出される
(e)試験T5特定される条件下で少なくとも1単位のキシリトールデヒドロゲナーゼ活性が検出される。
【請求項52】
以下の特徴を持つ単離された非組換えサッカロマイセス株
(a)試験T1で少なくとも5倍に増大したバイオマスを産生する
(b)試験T2で少なくとも40mg乾燥重量のバイオマスを産生する
(c)試験T7で少なくとも5倍に増大したバイオマスを産生する
(d)試験T8に設定された条件下で少なくとも0.04 g/Lの濃度のエタノールが検出される
(e)試験T4特定される条件下で少なくとも1単位のキシロース還元酵素活性が検出される
(f)試験T5特定される条件下で少なくとも1単位のキシリトールデヒドロゲナーゼ活性が検出される。
【請求項53】
試験T9特定される条件下で4ヶ月の期間内に少なくとも0.2 g/Lのエタノールを産生するような、請求項20ないし52のいずれかに記載の株。
【請求項54】
キシロース含有最小培地に少なくとも5x108個/mLの細胞密度で接種したとき、少なくとも0.5 g/Lのエタノールを産生するような、請求項20ないし52のいずれかに記載の株。
【請求項55】
株がサッカロマイセス.セレビシエ株であるような、請求項20ないし54のいずれかに記載の株。
【請求項56】
委託受入番号NM04/45257でオーストラリア政府分析ラボに委託されている非組換えサッカロマイセス株。
【請求項57】
委託受入番号NM04/45258でオーストラリア政府分析ラボに委託されている非組換えサッカロマイセス株。
【請求項58】
委託受入番号NM05/45177でオーストラリア政府分析ラボに委託されている非組換えサッカロマイセス株。
【請求項59】
委託受入番号NM05/45178でオーストラリア政府分析ラボに委託されている非組換えサッカロマイセス株。
【請求項60】
請求項20ないし59のいずれかに記載の株の派生株。
【請求項61】
組換え派生株であるような、請求項60に記載の派生株。
【請求項62】
請求項1ないし14に記載のいずれかの方法で作られたサッカロマイセスの酵母細胞の集団。
【請求項63】
酵母バイオマス生産おける、請求項20ないし59に記載のいずれかのサッカロマイセス株、請求項60の派生株、請求項62の集団の利用法。
【請求項64】
エタノール生産おける、請求項20ないし59に記載のいずれかのサッカロマイセス株、請求項60の派生株、請求項62の集団の利用法。
【請求項65】
生育のための炭素源としてキシロースを利用して生育できるような条件下においてキシロース含有培地で、請求項20ないし56に記載のいずれかのサッカロマイセス株、請求項57に記載の派生株、請求項59に記載の集団を培養することから構成される、キシロースを酵母バイオマスへ転換する方法。
【請求項66】
生育のための炭素源としてキシロースを利用して少なくとも酵母バイオマスの一部が作られるようなキシロース含有培地で請求項20ないし59に記載のいずれかのサッカロマイセス株、請求項60に記載の派生株、請求項62に記載の集団を生育することから構成される酵母バイオマスの産生方法。
【請求項67】
炭素源としてキシロースを利用して生育する間に化合物が産生されるような、化合物産生させる条件下でのキシロース含有培地で請求項20ないし59に記載のいずれかのサッカロマイセス株、請求項60に記載の派生株、請求項62に記載の集団を培養する方法から構成される方法、サッカロマイセス株由来の化合物産生方法。
【請求項68】
以下の工程で構成されるエタノール産生方法
(a)エタノール産生できる条件下、培地で請求項20ないし59に記載のいずれかのサッカロマイセス株、請求項60に記載の派生株、請求項62に記載の集団を培養する、
(b)産生されたエタノールを分離する。
【請求項69】
培地がキシロース含有培地であるような、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
キシロースに加えて、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトリオース、マルトース、スクロース、メリビオース、ラフィノース、キシロース、メリジトース、α―メチルグリコシド、トレハロース、イソマルトース、二酸化炭素から構成される集団から選択された一つ以上の糖類からキシロース含有培地が構成されるような、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
嫌気的条件下で株が培養されるような、請求項68ないし70に記載のいずれかの方法。
【請求項72】
以下から構成されるエタノール産生方法
(a)少なくとも1x108個/mLの細胞濃度で請求項20ないし59に記載のいずれかの株、請求項60に記載の派生株、請求項62に記載の集団を有するキシロース含有培地を培養する
(b)エタノール産生できるほど充分な時間、接種培地を培養する
(c)エタノールを回収する。
【請求項73】
細胞濃度が少なくとも5x108個/mLであるような、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
請求項68ないし73に記載のいずれかの方法によって産生されるエタノール。
【請求項75】
以下から構成される望ましいサッカロマイセス株をマークする方法
・ 株がDNA結合できるような条件下で請求項20ないし59に記載のいずれかの株、請求項60に記載の派生株、請求項62に記載の集団とともに望ましい株を培養する
・ 唯一の炭素源としてのキシロースを利用して高い生育速度持つ改良された望ましい株を目的として酵母細胞をスクリーニングまたは選択する
・ 唯一の炭素源としてのキシロースを利用して高い生育速度持つ改良された望ましい株を単離する

【図1】
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【公表番号】特表2008−501348(P2008−501348A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526108(P2007−526108)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000824
【国際公開番号】WO2005/121337
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506408494)
【Fターム(参考)】