説明

キセロゲルまたはフィルムの形態での局所使用のための医薬組成物および製造方法

本発明は、局所活性成分の送達または他の目的のため活性成分が塗布されたキセロゲルまたはフィルムを含む乾燥送達系に関する。この送達系は、本発明による方法によって得られる。本発明はまた、ヒドロゲルに再構成可能な乾燥キセロゲルまたは乾燥フィルム上に安定なまたは不安定な活性物質の規定された局在化を達成するための方法を提供する。得られた送達系から活性物質は有利な放出動態で放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻、眼または皮膚用あるいは他の治療または診断用途のための乾燥活性成分送達系およびその調製方法に関する。より詳細には、本発明はキセロゲルまたはフィルムに関し、このキセロゲルまたはフィルムの上に治療的活性物質が液滴として塗布され、そして真空で乾燥される。治療物質は、キセロゲルまたはフィルムの1以上の表面上に規定のパターンで塗布され得る。このような系は、化粧品および医薬品の分野において薬学的におよび/または生物学的に活性な成分のための安定に貯蔵可能な乾燥活性成分送達系として用いられ得る。湿性環境(例えば、創傷)において使用前または投与期間中にこの系は再水和されるので、治療物質を保持するヒドロゲルとして機能し、この治療物質は制御された速度で放出される。このような系は、湿性創傷治癒、治療物質の経鼻送達、眼送達または皮膚送達、あるいは他の目的に用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
本発明は、例えば、治療物質の経鼻送達、眼送達または皮膚送達に用いられ得る。本発明は、湿性創傷治癒に特に有用である。糖尿病、静脈不全ならびに他の慢性疾患および傷害を有する患者の数が増え続けていることにより、慢性の非治癒性軟組織創傷の発生率が増加している(J.L.Gloverら(1997)Advances in wound care 10:33〜38)。慢性創傷は、健康保険に多大な費用がかかるだけでなく、非常に痛みのある苦痛状態を患者にもたらし、切断にさえ至る場合がある。従って、適切な処置および皮膚の創傷治癒の促進が必要である。
【0003】
一般の創傷治癒の機構および種々の創傷治癒段階の特徴は周知である。1962年から、湿性創傷治癒は、広く受け入れられる処置になった(G.D.Winter(1962)Nature 193:293〜294)。既に、親水コロイド、ハイドロポリマーまたはアルギン酸系のような、多様な湿性包帯が販売されている。この包帯は、創傷中の湿性環境を確実にするものである。さらに時には、包帯は、膨潤しながらまたは包帯中に配合されている溶液(例えば、リンガー溶液)との交換により、創傷分泌物を吸い上げる。これらの創傷包帯はすべて、膨潤したまたは膨潤可能なポリマーおよび時には耐水性の支持層からなるが、通常、治療活性物質を全く含まない。
【0004】
湿性環境の次に、適切な濃度の成長因子が、治癒を促進するのに必要である。1970年代に、血小板由来成長因子および他のサイトカインの誘起効果が初めて記載され(J.Frank(1997)Zeitschrift fur Wundbehandlung 2:6〜10)、そしてその時以来、多くの研究により、これらの因子の臨床上の有用性が証明されてきた(J.L.Gloverら(1997)Advances in wound care 10:33〜38)。治癒の促進に必要な種々の成長因子のバランスおよび濃度は、特に高齢者および糖尿病または自己免疫障害を有する患者においてしばしば乱れている(J.Frank(1997)Zeitschrift fur Wundbehandlung 2:6〜10)。従って、創傷治癒因子、例えば数は少ないがPDGF、TGF−β、F XIII、KGF−2またはEGFを創傷の中に局所投与することは有用であることが分かってきた。
【0005】
しかしながら、成長因子およびまた酵素は、最初の清浄段階において創傷治癒を促進するが、タンパク質であり、従って非常に不安定かつ感受性のある分子である。室温で水溶液中に保存された場合、多くのタンパク質は安定なままではなく、凝集して急速に活性を失う恐れがある。例えば水性処方物中のEGFは、2週間以内に40%の活性を失った(D.P.Clananら(2000)Gut 47:622〜627)。より長い貯蔵安定性を達成するために、タンパク質溶液を低温(−20℃または4〜8℃)にて規定条件下で保存しなければならない。従って、これらの水性物には、技術的、経済的または使用上の欠点がある。例えば、rh(組み換えヒト)PDGF−BBを含むゲルであるレグラネクス(Regranex)(登録商標)は、冷蔵庫に保存しなければならない。また、患者自身の成長因子の清浄化した溶液であるユーロキニン溶液は、フリーザー中に保存されなければならない。これは投与前に注意深く解凍しなければならないので患者および医療関係者のコンプライアンスが低下し、さらなる問題を生じる。
【0006】
低温貯蔵に代わるものは、乾燥物中で感受性物質を安定化することである。乾燥した非晶質マトリックス中にタンパク質のような感受性物質を包埋し凝集率を確実に低くすることは、製薬技術において広く普及した方法である。さらに、乾燥環境では、化学分解反応は減少し、熱安定性は増加する。従って、活性成分を安定に貯蔵可能な乾燥体を開発する高い必要性がある。創傷治癒に当たっては溶液または好ましくはヒドロゲルのような湿性体で投与しなければならないので、これらの乾燥体は使用前または使用中に再構成されなければならない。バリダ−ゼ(登録商標)Nゲルでは、活性化合物である酵素はゲルとは別に乾燥粉末として市販されている。投与の前に、この粉末は水中に溶解し、ゲルに添加しなければならないので、有効期間はごく短い。この調製段階で時間を消費し、かつ再現性または投薬量に問題を生じ得る。1つの単一系、すなわち乾燥貯蔵形態中に、感受性の活性物質とゲルの両方を存在させることが好ましい。従って、活性物質を配合したキセロゲルまたはフィルムは、乾燥形態における安定性を確保し、かつ低温貯蔵に耐えるための有望なツールである。このような系により、単一のすぐに使用できる系の中に活性物質とマトリックスを組み合わせることが可能になる。
【0007】
本発明による「キセロゲル」は、少なくとも1つのゲル化物質を含み、例えば凍結乾燥によってヒドロゲルから得られる多孔性のスポンジ様マトリックスであって、該マトリックスは、水溶液に接すると膨潤してヒドロゲルを形成する能力を有すると理解される。
【0008】
本発明による「フィルム」は、乾燥、例えば、蒸発乾燥によって、または有機溶液からの析出によってヒドロゲルから得られる均一な厚さおよび粘度の平らな形状のポリマー系の箔であると理解される。このマトリックスは、水溶液に接すると膨潤してヒドロゲルを形成する能力を有する。
【0009】
本発明による「乾燥した」は、好ましくは湿度5%(w/w)未満、より好ましくは湿度2%(w/w)未満、特に好ましくは湿度1%(w/w)未満の非常に低い含水量を含むと理解される。湿度は、例えばKF 373(Metrohm GmbH&Co,Filderstadt,ドイツ)を用いて、カールフィッシャーの電量滴定によって決定され得る。
【0010】
本発明による「微液滴」は、フィルムまたはキセロゲル上に塗布される場合、該フィルムまたはキセロゲルの形状を実質的に変化させない液滴であると理解される。好ましくは、微液滴は、10μl以下、より好ましくは200nl以下の容量を有する。
【0011】
「担体」は、疾患および/もしくは障害の治療または予防のための、あるいは身体状態の化粧処理のための活性物質の送達に有用な組成物と理解される。
【0012】
「活性成分」は、直接にまたはインビボでそのプロドラッグ形態から放出される場合に生物学的作用を引き起こし、従って疾患および/もしくは障害の治療または予防に有益であるかあるいは身体状態の化粧処理に有益である、任意の物質と理解される。
【0013】
乾燥したヒドロゲルまたはフィルムの担体の「表面」とは、縁によって限定される担体の任意の表面と理解される;従って、担体が球形を有する場合、1つの表面しか存在しないが、担体がほぼ立方体の形状を有する場合、この担体は6つの表面を有し、そして担体がほぼ円柱形の形状を有する場合、この担体は3つの表面を有する。
【0014】
「形状に本質的に変化がない」とは、液滴の塗布後、担体全体として実質的な膨潤または収縮がない、すなわち、当該担体自体の容量の実質的な増加または減少がないと理解される。
【0015】
乾燥したヒドロゲルまたはフィルムの担体の「表面領域」とは、表面の一部、または最大で表面に相当する任意の領域であると理解される。
【0016】
複数の治療活性物質の組み合わせがしばしば相乗効果を示すので、時には1つの系に2つ以上の活性成分を有することが必要な場合がある。異なる活性成分は全く異なる安定化環境(pH、塩、賦形剤、など)をしばしば必要とするので、たとえこれらの活性成分が患者の体内においてネガティブに相互作用しなくとも、貯蔵の間それらを分離することが必要な場合がある。各活性成分ごとに製造物または追加の散剤を別々に分け、使用前に混ぜ合わせる必要を回避するために、単一のすぐに使用できる系であって、この系で活性成分は貯蔵期間中および所望であれば体内で送達中も分離されている系ができれば、非常に有用である。
【0017】
活性成分の幾何学的なパターンをマトリックス上に規定すれば、物質投与が可能になる。これは溶液またはヒドロゲルによっては保証されない。
【0018】
乾式貯蔵系は、使用前に純水で再水和され得るか、または使用の間に水性の体液(例えば、創傷内の滲出液)で再水和され得る。これによって、キセロゲルまたはフィルムは、水を吸い上げて膨潤し、ヒドロゲルを形成する。ヒドロゲルは、創傷を湿った状態に維持し、速く蒸発せず、従って1日に1回しか適用する必要が無いので、低粘度の溶液よりも好ましい。例えば溶液のユーロキニンは、創傷上の圧迫ガーゼ上に連続的に塗布しなければならない。レグラネクス(登録商標)は、良好な創傷治癒および取扱適性を示すが、貯蔵安定性の悪いヒドロゲルである。望ましく最適な活性成分含有物は、乾式の貯蔵安定形態を有し、かつ使用前または使用中に再水和されてヒドロゲルになることができる。このような貯蔵安定形態は、極めて低い温度で保存する必要がないので、容易かつ安価な輸送も可能になる。さらに、このような含有物はまた、厄介な問題を伴わずに患者自身によって保存され得る。これによって、病院で処置を行う必要のある場合に生じる高い費用が回避される。
【0019】
再水和の後、投与された活性成分物質は、迅速に溶解し活性成分が素早く放出されるのが望ましいが、または別の選択肢として、制御された緩徐な様式で放出され得る。局所的に高い濃度を実現することは、特に有益である。例えばタンパク質のような高度に活性な成分は、非常に高価であるので、活性成分を全く浪費しないことが非常に重要である。これらの基準をすべて満たしている既存の処方物はない。もし活性成分がゲルマトリックス中に均質に分散されるならば、ごく一部の活性成分のみが処方物と組織との間の接触表面領域から標的組織に吸収され、活性成分の大部分は閉塞パッチに吸収されてゲル中に失われるか、または経時的に腐食されるか、洗い流されるか、もしくは押し流される恐れを甘受しなければならない。一方、処方物中の活性成分の初期濃度は高めが望ましく、それによって濃度勾配はかなり大きくなり、活性成分をビヒクルから標的組織中に拡散させるのに必要な駆動力が構成かつ達成される。従って、高価な活性成分の損失を制限することと総濃度を必要最小限に抑えることの間で最適条件を見出さなければならない。
【0020】
さらに、既存の局所用製造物は、例えば正確で再現性のある用量が得られないというような、他の問題に直面せざるを得ない。市販のすべてのヒドロゲル(レグラネクス(登録商標)のような)は、塗布したヒドロゲルの帯の量によって投与される。これはあまり正確ではなく、再現可能ではない。規定の接触域を覆う、乾燥した、すぐに使用できる単回投与製造物があれば、これを小片に再現可能に切断することにより規定の用量が実現可能になるので有用である。
【0021】
新鮮傷や眼の粘膜などについて、適用される材料はすべて滅菌していなければならない。しかし、既存のタンパク質含有キセロゲル製造物、フィルム製造物またはヒドロゲル製造物の一部では滅菌していない。これらの滅菌していない製造物はかなりの危険性があり、多くの用途には許容されない。例えばレグラネクス(登録商標)は滅菌していないヒドロゲルであり、非感染性の創傷にしか用いられない。タンパク質のような、感受性の活性成分を含むゲルは、容易には滅菌することができない。多くのヒドロゲルは、湿熱または放射線によって滅菌され得るが、ゲル中に配合された最も感受性のある活性成分は、これらのプロセスの間に安定性および活性を失う。0.22μmフィルターユニットを通してろ過することによって活性成分の滅菌溶液は調製され得るので、薬剤中の両方の部分−ゲルおよび活性成分−を別々に滅菌しその後に合わせることができる。さらに、ヒドロゲルを別々に滅菌するだけでなく、別々に乾燥することも有利である。ヒドロゲルが活性成分を含まない場合には、それに適した乾燥条件を決定することは極めて簡単である。その場合にはキセロゲルまたはフィルムの物理的性質のみを念頭に置けばよく、配合する感受性活性成分の安定性は念頭に置く必要がない。従って、まず活性成分を含まないキセロゲルまたはフィルムを調製および滅菌し、その後に滅菌した活性成分溶液を無菌条件下で添加し、それによりキセロゲルまたはフィルムは再水和せずに済むという方法をとるのが望ましい。全体として、安定で活性な成分を含む滅菌した活性成分製造物が保証される。
【0022】
一般に、キセロゲルまたはフィルムを含む活性成分の調製物は、多くの問題を生じる恐れがある。第一に、均質な処方物を調製するために、活性成分を、水中で膨潤可能なポリマーと混合させる必要がある。これは、しばしば活性成分に対する剪断応力を生じる。さらに、ヒドロゲルの水和および膨潤は、非常に時間がかかる(少なくとも数時間、たいていは1日かかる)。この期間中、配合された感受性の活性成分は通常は室温で水性環境にあり、これにより、感受性の活性成分はしばしば不安定になる。水性ゲル媒体中で、および乾燥期間中に、感受性の活性成分を安定化させるためには、添加物が必要であるが、これらはゲルの膨潤または再水和の挙動にしばしばネガティブな影響を及ぼす。従って、この処方物は、常に、活性成分の安定性と最適なゲルまたはフィルムの形成との間の妥協である。キセロゲル/フィルムおよびタンパク質には2つの別個の処方物を有することが望ましい。
【0023】
全体としては、ヒドロゲルをベースとする活性成分送達系を有することが非常に有利となるためには、
(i)その系は、乾式貯蔵形態を有し、そして
(ii)その系は、所望により活性成分に熱ストレスを与えることなく滅菌製造物として製造することができ、そして
(iii)その系によって、キセロゲルまたはフィルム上に活性成分溶液を塗布する機会が与えられ、その際にそのキセロゲルまたはフィルムは再水和されないので、使用材料へのストレスが制限され、そして
(iv)その系によって、通常は互いに非相溶性であるとみなされる多数の活性成分であってもそれらを単一のキセロゲルまたはフィルム上で別々にする機会が与えられ、そして
(v)その系によって、塗布される活性成分の規定のパターンが提示され、これにより活性成分の規定用量の投与が可能になり、そして
(vi)その系によって、再水和の後にヒドロゲルが形成され、かつ適切な放出動態ならびに放出部位での活性成分の高濃度が同時に達成される。
【0024】
このような系は、治療目的の移植物と同様に活性成分にとって規定の放出動態が望まれる場合はいつでも重要であり、特に活性成分の経鼻送達、眼送達、皮膚送達または経皮送達あるいは他の目的にとって重要である。このような系はまた、医薬品または化粧品の目的に適した送達系の製造のための中間製造物としても重要であり、例えば、本発明による送達系は、これを小片に打ち抜き、次いでこれらの小片を液体中に懸濁してもよい。次にこのような懸濁液は、粘膜送達または経鼻送達に適したアプリケータ中に充填することができる。
【0025】
これらの所望の性質の一部は、公知の製造物において既に実現されているが、すべての要件を満たす製造物はなく、いくつかの不利点が依然として残っている。
【0026】
水溶液またはヒドロゲルの低い貯蔵安定性を克服するために、様々な処方物の凍結乾燥製造物が、例えばEP 0 127 597およびUS5,189,148に特許請求されている。これらの処方物はゲル化剤を含んでいるので、キセロゲルを形成するようであるが、再水和の際のヒドロゲルに関する制御された膨潤挙動または制御された活性成分の放出動態は記載されていない。
【0027】
EP 0 308 238 A1には、ヒトポリペプチド成長因子を含む凍結乾燥されたキセロゲル(「...粘性を付与するための水溶性ポリマーを含む処方物...」)が特許請求されている。この製造物は、湿性創傷治癒を可能にし、制御された粘性のヒドロゲルを形成し、そして徐放性を示す。しかし、無菌性についての記載は何もなく、そして全てのゲルに関して、活性成分の放出が迅速でなくかつ初期に高くならない。活性成分をゲル中に配合しているので、活性成分と賦形剤との間に不相和の可能性があり、したがってすべての活性成分または賦形剤が使用され得るわけではない。さらに、この発明では、1つのキセロゲル上に2つ以上の活性成分をパターン化することも別々にすることも可能ではない。
【0028】
US 5,192,743に記載のキセロゲルは、無菌性を別にすれば上記のキセロゲルと類似しており、同様の不利点を示す。無菌性は、単にタンパク質成分とゲル成分を別々に滅菌することによって獲得されており、したがってそれらはその後に5℃で24時間保存しセルロースを水和可能にしなければならない。最終的に、製造物の両部分は混合され、凍結乾燥される。これは非常に不便であり、かつ滅菌したゲルを長時間水和させることにより、再汚染の危険性が拡大する。
【0029】
特に柔らかく、可撓性があり、かつ創傷内に直接都合良く設置可能な圧縮キセロゲルが、EP 0 533 820 B1に記載されている。この乾燥した安定に貯蔵可能な製造物により、用量の規定化が可能であり、そしてさらに小片に切断または打ち抜きが可能である。不利点は、この系において2つ以上の不相和な物質を組み合わせることができないこと、および活性成分の規定パターンが形成されないことである。活性成分を含む全ての他のキセロゲルと同様に、この製造物は、賦形剤の選択に制限がある。なぜなら、賦形剤は全て、適切な物理的特性を持ったキセロゲルを形成可能でなければならないと同時に、配合された活性成分にネガティブな影響を及ぼしてはならないからである。キセロゲルおよびタンパク質溶液のための2つの異なる処方物が使用できれば、これは有利である。再水和ゲルからの初期放出は高いのが望ましく、この特許は「いくつかの薬剤の放出が速い」というようなことを請求しているが、再水和ヒドロゲルからの拡散速度について正確なデータを提示していない。
【0030】
二者択一的に放出が迅速かまたは持続かは、DE195 03 38(同じくUS6,117,437)に記載のコラゲナーゼ含有フィルムによって獲得されており、どのようなフィルム形成ポリマー(水溶性または膨潤可能な非水溶性)を選択するかによる。放出動態は、マトリックスの溶解または浸食の時間に依存するが、この時間は、創傷中に得られる小容量の水性分泌物が原因である程度の時間を要するかもしれない。溶解時間は、創傷の外側にある創傷よりも大きな容量の乾燥マトリックスが再水和することによって固定され得る。活性成分は、ゲル中に配合されておらず、キセロゲルまたはフィルムの上部に塗布されているので、ゲルの溶解または侵食の時間とは関係なしに非常に速く溶解されかつ放出され得る。
【0031】
コラゲナーゼを含む医薬にとって特に重要なことは、コラゲナーゼが創傷の外側の健康な皮膚にまで投与されるのを回避することである。ドイツ特許DE 195 03 38では、このことは、製造物を創傷よりも小さな断片に切断することによって保証されるとしている。不浸透性の支持層を製造物上に追加積層しており、これによって活性成分の放出が規定の方向に調節されるとしている。製造物の中央部に小さいが高濃縮の活性成分を含有する規定パターンを作成し、その周わりに活性成分を含まない周縁を用意する方がよい。パターンが急速溶解性であり、製造物の残部が溶解性でなければ、これによって放出方向が同時に調節される。
【0032】
ドイツ特許DE 195 03 38の実施例において、薬物を含むフィルムが45℃で対流乾燥によって乾燥されている。感受性の活性成分のすべてがこのような高温で安定のままでいることはなく、一部は、フィルム形成物によって不安定にもなり得る。
【0033】
ヒドロゲルの調製は、その後に乾燥をしてもよいが、時々非常に長い時間を要する。Tae−Wan Lee、Jin−Chul KomおよびSung−Joo Hwang(T.W.Lee(2003)Europ.J.Pharm.Biopharm.56:407〜412)は、トリクロサンを含む座瘡ヒドロゲルパッチの架橋による調製を記載している。半固体ゲルを形成するために、このプロセスには25℃、40℃または50℃で少なくとも12時間を要した。タンパク質のような、特に感受性の活性成分は、水性環境においてこの温度で活性を失うことなく残存することはない。ヒドロゲルの水和および膨潤には通常さらに約1日かかる。
【0034】
局所剤形はどのようにすれば創傷、粘膜または他の組織を治療するための不安定な活性成分にも適するようになるかの問題を既存の先行技術に照らして解決するに当たり、提案される一つの解決は、既存のアプローチを組み合わせ進歩性のある発明形態にすることである。すなわち、乾燥ヒドロゲル(すなわち、キセロゲルまたはフィルム)の概念に基づけば、活性成分の高濃度溶液の少量を、規定の幾何学パターンにて、好ましくはヒドロゲルの1つの側面上に塗布することができる。その結果、高濃度の活性成分がヒドロゲルの少なくとも1つの側面上に局部的に存在し、次にそれが治療すべき組織に密接に接触されるので、有利な放出動態がもたらされる。この手段により、活性成分の全損失は最小化され;さらに、所望であれば2つ以上の活性成分の空間的分離が実現され得、所望であれば滅菌サンプルの製造が保証され、そして乾式の安定に貯蔵可能な製造物が形成される。溶液の塗布は、例えば当業者に周知のハイスループット分析システムを展開するために分析用マイクロアレイを生産するのに使用されるロボットスポッターによって行うことができる。このようなスポッターは、例えば、US6,642,054およびその中の参考文献から公知である。以下に記載の本発明の好ましい実施形態において、微液滴は、印刷またはスポッティングによって、好ましくは圧電プリンターによって、より好ましくはシリンジポンプおよび高速マイクロソレノイドバルブを用いるプリンターによって、担体の1つ以上の表面または表面領域上に塗布される。活性物質を含む液体の塗布については、当業者に公知の他の手段、例えば、噴霧法またはスタンプ転写なども用いられ得る。
【非特許文献1】J.L.Gloverら(1997)Advances in wound care 10:33〜38
【非特許文献2】G.D.Winter(1962)Nature 193:293〜294
【非特許文献3】J.Frank(1997)Zeitschrift fur Wundbehandlung 2:6〜10
【非特許文献4】D.P.Clananら(2000)Gut 47:622〜627
【特許文献1】EP 0 127 597
【特許文献2】US5,189,148
【特許文献3】EP 0 308 238 A1
【特許文献4】US 5,192,743
【特許文献5】EP 0 533 820 B1
【特許文献6】DE195 03 38
【特許文献7】US6,117,437
【非特許文献5】T.W.Lee(2003)Europ.J.Pharm.Biopharm.56:407〜412
【特許文献8】US6,642,054
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
解決すべき課題は、液体中に、特に好ましい実施形態での安定化処方物である水溶液中に分散または溶解した親水性傾向の活性成分を、活性成分の送達に適する予め乾燥したヒドロゲルまたはフィルムのマトリックスと組み合わせても、このマトリックスの性質は変質しないことである。驚くべきことに、本発明で実施した調剤工程および印刷工程によって、かなりの量の活性成分を乾燥キセロゲルまたはフィルムマトリックスの1つ以上の表面または表面領域上に制御的に塗布した場合、用量は非常に精確に規定可能であり、またパターンを幾何学的にどのように規定しても、マトリックス自体が溶解したり、縮小したり、あるいはその性質、体積および水分が変質したりすることはないことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、局所活性成分の送達または他の目的のための乾燥送達系に関し、その系には活性成分が塗布されたキセロゲルまたはフィルムが含まれる。この送達系は、本発明方法によって得られる。本発明はまた、安定または不安定な活性物質を乾燥キセロゲルまたはフィルム(これは、ヒドロゲルに再構成され得る)上に規定的に局在化させる方法を提供する。得られた送達系から、活性物質は、有利な放出動態で放出される。
【0037】
本発明に従えば、1つ以上の規定用量の1つ以上の濃厚活性成分処方物が微液滴中に分割され、キセロゲルまたはフィルム上にパターンにて印刷される。好ましくは、このようなパターンは、再現可能な放出動態および規定の投薬量を得るために規則的である。送達系、すなわち、活性成分(単数または複数)が塗布されたキセロゲルまたはフィルム)が流体(投与の間における水または水溶液または体液)に接触すると、この送達系は再水和されてヒドロゲルを形成するので、塗布された活性成分はヒドロゲルから制御された速度で溶解、放出され、その結果、局所的に高い濃度となる。
【0038】
水分の存在下では、いくつかの活性成分、例えばhGHまたはEGFは、保存中に凝集し、生物活性を失うことが分かっている。従って、このような活性成分を含む水性の調製物を保存することは非実用的である。本発明は、活性成分を含む安定な乾燥送達系を提供することによって、活性の損失を防ぐための手段を提供する。従って、本発明の送達系は、タンパク質、ペプチド、RNA、DNA、または特にタンパク質およびペプチド用の処方物中で潜在的に不安定な任意の他の物質、から選択される活性成分にとって特に有用である。従って、本発明の送達系によって、すべての活性物質に適した有利な放出動態ばかりでなく、不安定な活性物質のためのさらなる利点が提供される。
【0039】
例えば、乾燥キセロゲルまたはフィルムのマトリックスは、当業者に公知の方法に従い凍結乾燥または対流乾燥によってヒドロゲルから得ることができる。好ましい実施形態において、乾燥キセロゲル担体は、凍結乾燥方法によってヒドロゲルから形成される。別の実施形態において、乾燥フィルム担体は、蒸発乾燥方法、好ましくは空気乾燥、真空乾燥または対流乾燥によってヒドロゲルから形成される。また、乾燥フィルム担体は、押出または有機溶媒からの析出によって得られ得る。
【0040】
本発明の実施形態において、キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体は、1つ以上の膨潤可能であるか、溶解可能であるか、または腐食可能なポリマーを含む。キセロゲル中に含まれる基材(すなわち、前記ポリマー)は、皮膚、眼、鼻、または他の所望の用途に許容可能な適切なゲル化剤であり得る。適切な機械的特性、生理学的特性および放出特性を有するゲル化剤またはゲル形成剤は、好ましくは、アルギン酸塩、ペクチン、カラゲナンまたはキサンタン、デンプンおよびデンプン誘導体のような多糖類、トラガカントゴムまたはキサンタンガムのようなゴム、コラーゲン、ゼラチン、ガラクトマンナンおよびガラクトマンナン誘導体、キトサンおよびキトサン誘導体、糖タンパク質、プロテオグリカン、グルコサミノグリカン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、高分子量ポリエチレングリコールおよび/または高分子量ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート、ポリラクチド、ポリグリコリドおよびポリアミノ酸およびセルロース誘導体である。特に好ましいゲル形成剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸セルロースおよびコハク酸エチルセルロースのようなセルロース誘導体(特に、セルロースエーテル化合物)から選択される。
【0041】
担体は、所望により、糖、糖アルコール、界面活性剤、アミノ酸、酸化防止剤、ポリエチレングリコールのような1つ以上のさらなる賦形剤を含み得る。
【0042】
本発明による使用可能な乾燥ヒドロゲルまたはフィルムの担体の形状は異なっていてもよく、通常、本発明にとって重大ではない。しかしながら、活性物質を含む微液滴を規則的なパターンに塗布して均質な放出動態をも得ることは、多くの場合、立方体、立方形のシートまたは円柱に存在するほぼ平らな表面を用いるとより達成しやすい。例えば、このような担体は、ほぼ球状、半球状、立方体、立方形、シート、規則的または不規則な多面体であってもよく、あるいは不規則に成形されてもよい。
【0043】
好ましい実施形態において、担体は、周縁で隔てられた少なくとも2つの表面を有する。より好ましい実施形態において、担体は、円柱、平行六面体、立方体または立方形の形態を有する。
【0044】
好ましい実施形態において、微液滴は、塗布可能な場合(すなわち、1つ以上の表面が存在する場合)、1つ以上の表面に、好ましくは1つまたは2つの表面に塗布される。好ましい実施形態において、微液滴は、担体がその形状を本質的に変化させない方法で塗布される。
【0045】
送達系を製造するための方法は、以下のように記載される:本発明は、担体および少なくとも1つの活性成分を含む医療品用および/または化粧品用の送達系を製造する方法に関し、以下の工程を特徴とする:
(i)少なくとも1つの活性成分を溶解または分散した液体を調製する工程、
(ii)任意に該液体を滅菌する工程、
(iii)キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体を調製し、そして任意に滅菌する工程、
(iv)工程(i)または該当する場合は工程(ii)に記載の液体の微液滴を、工程(iii)で得られたキセロゲルまたはフィルムの乾燥担体の少なくとも1つの表面領域に塗布する工程、
(v)任意に工程(iv)を少なくとも1回繰り返す工程、および
(vi)任意に別の活性成分を含む液体を用いて工程(i)〜(v)を少なくとも1回繰り返す工程、
(vii)任意に上記工程で得られた系を真空乾燥または凍結乾燥する工程。
【0046】
好ましい実施形態において、送達系は工程(vii)で真空乾燥される。
【0047】
滅菌工程は、さらに最後にも、すなわち上記方法によって送達系を製造した後に、所望により実施してもよいと理解される。
【0048】
真空乾燥工程または凍結乾燥工程は、上記方法の工程(v)の後にさらに実施してもよい。
【0049】
好ましい実施形態において、上記の方法の液体は、溶液または分散液であり、好ましくは溶液である。不安定な活性物質が用いられる場合、液体は、安定化溶液であるかまたは安定化処方物である。
【0050】
必要に応じて、印刷されたキセロゲルまたはフィルムの送達系は、より低い残留水分(好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、特に好ましくは1%未満)になるまで真空下で短時間乾燥させ得る。従って、本発明はまた、微液滴を塗布した後に、すなわち、上記方法の工程(iv)の後に真空中で系を乾燥させて、残留水分を好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、特に好ましくは1%未満に必要に応じて低下させることを特徴とする、上記方法に関する。本発明の別の実施形態において、微液滴を塗布した担体は、乾燥のために、すなわち、上記方法の工程(iv)の後に、好ましくは40℃以下に、より好ましくは30℃以下に加熱される。
【0051】
より具体的には、本発明は、以下の工程を特徴とする担体および少なくとも1つの活性成分を含む医療品用および/または化粧品用の送達系を製造する方法に関する:
(i)少なくとも1つの活性成分を溶解または分散した液体を調製する工程、
(ii)任意に該液体を滅菌する工程、
(iii)キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体を調製し、そして任意に滅菌する工程、
(iv)工程(i)または該当する場合は工程(ii)に記載の液体の微液滴を、工程(iii)で得られたキセロゲルまたはフィルムの乾燥担体の少なくとも1つの表面領域に塗布する工程、
(v)任意に工程(iv)を少なくとも1回繰り返す工程、および
(vi)任意に別の活性成分を含む液体を用いて工程(i)〜(v)を少なくとも1回繰り返す工程、
(viii)上記工程で得られた系を真空乾燥または凍結乾燥する工程。
【0052】
さらにより好ましい実施形態において、本発明は以下の工程を包含する方法に関する:
(i)少なくとも1つの活性成分を溶解または分散した液体を調製する工程、
(ii)この液体を滅菌する工程、
(iii)キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体を調製および滅菌する工程、
(iv)工程(ii)に記載の液体の微液滴を、工程(iii)で得られたキセロゲルまたはフィルムの乾燥担体の少なくとも1つの表面領域に塗布する工程、
(v)任意に工程(iv)を少なくとも1回繰り返す工程、および
(vi)任意に工程(i)〜(v)を別の活性成分を含む液体を用いて少なくとも1回繰り返す工程、
(vii)上記工程で得られた系を真空乾燥または凍結乾燥する工程。
【0053】
本方法は、一般に滅菌製造物が必要とされる医薬で使用する送達系の調製に特に有用である。
【0054】
用いられる担体は、キセロゲルまたはフィルムであってもよい。
【0055】
別の好ましい実施形態において、本発明は以下の工程を包含する方法に関する:
(i)少なくとも1つの活性成分を溶解または分散した液体を調製する工程、
(ii)任意に該液体を滅菌する工程、
(iii)キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体を調製し、そして任意に滅菌する工程、
(iv)工程(i)または該当する場合は工程(ii)に記載の液体の微液滴を、工程(iii)で得られたキセロゲルまたはフィルムの乾燥担体の少なくとも1つの表面領域に塗布する工程、
(v)任意に工程(iv)を少なくとも1回繰り返す工程、および
(vi)工程(i)〜(v)を別の活性成分を含む液体を用いて少なくとも1回繰り返す工程、
(vii)任意に上記工程で得られた系を真空乾燥または凍結乾燥する工程。
【0056】
好ましい実施形態において、微液滴は、規定の規則的なパターンで塗布される。別の好ましい実施形態において、少なくとも約10個、より好ましくは少なくとも約100個、特に好ましくは少なくとも約500個の微液滴が、担体上に塗布される。
【0057】
本発明の上記方法の実施形態において、工程(iv)の微液滴は、別々に、または互いに接触して、または互いに重なって、好ましくは別々に配置される。より好ましくは、微液滴は、少なくとも1つの活性成分を含む規定のスポットが得られるように塗布される。
【0058】
本発明の上記方法の別の実施形態において、別の活性成分を含む工程(vi)の微液滴は、1回目の工程(iv)の微液滴(すなわち、最初の活性成分を含む)とは別々に、またはその微液滴に接触して、またはその微液滴の上に塗布され、好ましくは1回目の工程(iv)の微液滴とは別々に塗布される。より好ましい実施形態において、別の活性成分を含む工程(vi)の微液滴は、1回目の工程(iv)で塗布された微液滴とは異なる面に塗布される。
【0059】
本発明はまた、上記の方法によって得られる、担体および少なくとも1つの活性成分を含む医療品用および/または化粧品用に適した送達系に関する。
【0060】
本発明はまた、キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体および1つ以上の活性成分を含有する乾燥した微液滴のパターンを含む、医療品用および/または化粧品用の送達系に関する。好ましい実施形態において、パターンは規則的である。
【0061】
本発明はまた、上記方法によって得られる、担体および少なくとも1つの活性成分を含む医療品用および/または化粧品用の送達系を再水和させる方法であって、組成物を治療すべき患者の体外で水溶液または水と接触させることを特徴とする方法に関する。
【0062】
また、本発明は、このような方法によって再水和される送達系に関する。また、本発明は、体の中または上に投与することによって、例えば、創傷液に接触させて配置することによって再水和された再水和送達系に関する。
【0063】
好ましい実施形態において、このような再水和送達系に対して、少なくとも1つの活性成分の迅速な放出が観察される。
【0064】
別の好ましい実施形態において、このような再水和送達系に対して、活性成分(単数または複数)の遅い制御放出が観察される。
【0065】
別の実施形態において、本発明は、皮膚または皮膚創傷上に化粧品または医療品を投与するための組成物であって、上記のような送達系または再水和送達系および不活性の支持体、好ましくは、接着ストリップ、接着ラップ、包帯、ガーゼ包帯または圧迫ガーゼ系などから選択される、を含む組成物に関する。
【0066】
ある種の活性成分、特に、タンパク質を安定化させるために、緩衝剤、脱水ストレスに対する賦形剤(「凍結乾燥防止剤(lyoprotectant)」)および非イオン性界面活性成分を、タンパク質用処方物に適した液体中に含有させてもよい。従って、好ましい実施形態において、本発明の上記方法の工程(i)の液体には、水溶液、特に好ましくは安定化処方物であり、特に、糖、糖アルコール、界面活性剤、アミノ酸、緩衝液、凍結乾燥防止剤または酸化防止剤から選択される1つ以上の賦形剤を含有させてもよい。
【0067】
温度感受性の活性成分または安定性を維持しない活性成分であっても、水性媒体中でキセロゲルまたはフィルムのマトリクス材料と混合した場合、使用は可能である。本発明は、塗布された活性成分に熱ストレスを引き起こさない。塗布される液滴は、小型であるために非常に速く乾燥するので、塗布される水性液滴と乾燥キセロゲルまたはフィルムとの間の接触時間は非常に短い。さらに、接触域は、液滴サイズが小さいため非常に小さい。本発明による調製プロセスは、用いられる活性成分の物理化学的性質によるすべての要求を満たすことができる。
【0068】
本発明は、滅菌製造物の容易な生産を可能にする。滅菌していない製造物は、患者にとって危険であり、多くの用途について許容可能ではない。多くの活性成分は、熱または放射線の滅菌プロセスの間中安定性を維持しないので、活性成分を配合したゲルは容易に滅菌することができない。さらに、感受性の活性成分を配合したゲルに適した乾燥プロセスを見出すことは、多くの場合難しい。本方法では、これらの生成工程の間中ゲルと活性成分は分離されている。まず、活性成分を含まない滅菌キセロゲルまたはフィルムを、ヒドロゲルの滅菌によって、例えば、熱蒸気または放射線および乾燥、特に凍結乾燥によって作製する。その後、無菌条件で滅菌濾過することによって生成された滅菌活性成分処方物を、滅菌キセロゲルまたはフィルム上に、無菌生産技術を用いて塗布する。従って、1つの実施形態において、本発明は、少なくとも1つの活性成分を含む前記方法の工程(ii)に記載の滅菌液体、好ましくは溶液を、前記方法の工程(iii)に記載の滅菌担体上に無菌条件で前記方法の工程(iv)に従って塗布し、それによって滅菌送達系を生成することを特徴とする、上記方法に関する。このアプローチでは、活性成分に対する滅菌ストレスが回避されるので、キセロゲルまたはフィルムには最適であるが、活性成分には悪影響を与える乾燥パラメータも可能となる。活性成分溶液は、ゲル中には配合されず、キセロゲルまたはフィルムの表面(単数または複数)あるいは表面領域(単数または複数)上に印刷され、そこで非常に速く乾燥するので、最小限の接触域および時間が保証される。活性成分とゲル処方物との間の不相和性は、多くの場合乾燥または滅菌の間に増強されるが、上記方法よって最小になる。同様に、本発明の送達系は、2つ以上の不相和な活性剤を組み合わせるのに特に適している。担体上に1つの活性物質を含む微液滴を、他の活性物質を含む微液滴とは別々に塗布することによって、貯蔵中、製造中または放出中に生じ得る不相和性を回避することができる。さらに、このような空間的な分離は、物質に従って設計され得る:例えば、このような活性物質は、担体の反対側に塗布することができ、その結果、時間的におよび/または空間的に分離した両方の化合物の放出が得られる(例えば、図1D、図4を参照)。別の実施形態において、少なくとも1つの活性物質は、担体中に組み込まれ(図1B、図4を参照)、そして少なくとも1つの他の活性物質は、本発明の方法によって塗布される。また、この場合、両物質は放出動態が異なるので空間的および時間的に分離され、したがって不相和性が回避され得る。不相和な活性物質またはそれを含む不相和な溶液は、こうした方法のいずれかまたはその組み合わせによって塗布してよい。理由は、放出動態は微液滴の塗布部位によって可変的に調整可能であり、ならびに微液滴を別々にあるいは異なる領域上に塗布することができるからである。そしてまた、担体中に他の活性物質を組み込む機会があるので、化粧品用および/または医療品用の送達系を生成する手段は用いられる化合物の性質におよび所望の放出動態に合わせて自由自在に設計される。さらにまた、プロドラッグを活性物質として使用してもよい。その場合には、送達系を医療品または化粧品のニーズに適応させる更なる機会が得られる。すなわちプロドラッグのインビボでの活性化を遅延させることによって、活性型では不相和な別の活性物質から空間的に分離することができる。さらに、示された方法によれば、キセロゲルまたはフィルムの担体の適切な乾燥、膨潤または物理的特性を変質および/または阻害する活性成分処方物であっても、その使用は可能である。そのような活性成分処方物は乾燥キセロゲルまたはフィルム上に塗布、好ましくは印刷すれば、ゲル特性は影響を受けない。もしその活性成分処方物をゲル中に配合すれば、ゲル特性は影響を受けるはずである。
【発明の効果】
【0069】
本発明の利点は、調整可能な液滴サイズである。液滴サイズは、キセロゲルまたはフィルムの空隙率、構造および溶解性に応じて選択することができ、キセロゲルまたはフィルムが溶解しまたは担体が不規則に膨潤することはない。通常、広い範囲の液滴サイズが使用可能である。従って、適切な液滴体積は、利用可能なキセロゲルまたはフィルム特性によって決定され、すなわちそれらが容易に膨潤するかしないかは関係しない。また、塗布される液滴の量は、活性成分の用量および溶液の濃度に応じて異なり得る。しかしながら、微液滴のサイズは、通常、キセロゲルまたはフィルムの担体の再水和、膨潤および/または変形を回避するために小さい。一方、十分な量の活性成分を塗布する必要がある。好ましくは、微液滴の体積は、約0.05nlと10μlの間、より好ましくは約0.5nlと200nlの間、最も好ましくは約10nlと100nlの間である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
本発明の別の重要な態様は、塗布パターンを使用者の意志により決定できることである。キセロゲルまたはフィルムの一部は活性成分を含有して塗布され、他の部分は活性成分を含有せずに塗布することができる。例えば、塗布した活性成分含有パターンの周りに活性成分を含まない縁を有する製造物が保証され得る。従って、好ましい実施形態において、微液滴を担体表面の内側の領域に塗布し、その表面領域の周りに活性成分を含まない縁を残す。所望であれば、塗布した活性成分のスポット間で起こる接触を全て阻止することができる。さらに、活性成分は、キセロゲルまたはフィルムの2つ以上の側面に塗布することができる。従って、2つ以上の不相和な処方物であっても、単一のキセロゲルまたはフィルム上に空間を開けて塗布することができるので、不相和な物質の接触による活性の損失がない。また、好ましい実施形態において、微液滴を塗布したパターンは規則的であり、特に好ましくは、微液滴の間の距離は、放出動態が均質で高信頼性になるように、一定である。
【0071】
本発明の組成物、特に、実施例に示す印刷されたキセロゲルまたはフィルムを調製し、この組成物から所望のサイズの小片を切り出しあるいは打ち抜くことによって、所望の用量および/または所望のサイズを、例えば創傷に合うように制御することができる。
【0072】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、創傷治癒を促進する少なくとも1つの活性成分、好ましくは創傷治癒因子、酵素またはプロテイナーゼ阻害剤を含む。
【0073】
公表されたデータによると、キセロゲルまたはフィルムは、多孔の柔軟な構造を有する柔軟な可撓性のシートとして製造することができるので、これは創傷上に直接容易に配置できる。示された方法によりキセロゲルまたはフィルム上に活性成分を塗布しても、キセロゲルまたはフィルムの構造は変化しない。従って、印刷された柔軟なキセロゲルまたはフィルムも、創傷上に直接配置することができる。従って、患者がこれらの製造物を再構成する必要はない。
【0074】
本発明のプロセスによって得られる化粧品用および/または医療品用の送達系は、塗布された活性成分の治療態様に応じて、創傷治癒障害、例えば、糖尿病、静脈もしくは神経の潰瘍または感染性創傷、眼科疾患、鼻疾患あるいは皮膚疾患、例えば、乾癬、皮膚病、湿疹、じんま疹、狼瘡、紅斑、白斑、色素沈着性疾患またはアトピー性皮膚炎から選択される、を治療および/または予防するために用いられ得る。この送達系はまた、活性成分に応じて、制御放出または迅速放出が所望される場合はいつでも、例えば、活性成分の経皮送達のためまたは移植のために使用することができる。十分な体液、例えば、創傷分泌物、鼻分泌物または涙が使用の場所に存在する場合には、本発明方法によって得られる化粧品用および/または医療品用の送達系は、直接的に投与または移植することができる。十分な体液が存在しない場合には、この送達系は投与前に水または他の適切な溶液で再構成することができる。
【0075】
本発明方法によって得られる化粧品用および/または医療品用の送達系の別の利点は、いくつかの活性成分、例えば、タンパク質の迅速な放出である。本発明方法によって得られる化粧品用および/または医療品用の送達系は、水性媒体に接触すると最初にヒドロゲルを形成し、そして高濃度の活性成分を周囲の水性媒体中に制御速度で放出する。活性成分は局所的に投与されかつ放出されるので、この活性成分は、キセロゲル中に配合された活性成分が放出後に到達する濃度よりもはるかに高い濃度に到達する(図1AおよびB)。従って、活性成分の必要な投与量はより少なくなり、材料費を削減することができる。
【0076】
本発明の別の重要な態様は、制御放出動態の可能性である。放出媒体と接触する側のキセロゲルまたはフィルムに塗布された活性成分は、非常に速く放出されるが、反対側のキセロゲルまたはフィルムに塗布された活性成分は、制御された遅い速度で放出される。反対側の活性成分は、最初にキセロゲルまたはフィルムの全体にわたって拡散してから、周囲の媒体中に放出されなければならない(図1AおよびC)。これらのタイプで塗布された活性成分を組み合わせることによって(図D)、あるいは本発明方法に従って塗布し印刷した活性成分とキセロゲルまたはフィルム中に配合した活性成分とを組み合わせることによって、放出動態は変動し、かつ制御され得る。
【0077】
好ましい実施形態において、本発明は、送達系または再水和送達系あるいは化粧治療のための上記組成物の使用に関する。
【0078】
別の好ましい実施形態において、本発明は、送達系または再水和送達系あるいは医薬品としての上記組成物の使用に関する。
【0079】
別の好ましい実施形態において、本発明は、送達系または再水和送達系あるいは創傷、皮膚疾患、眼疾患および/または粘膜の疾患を治療する医薬品を製造のための上記組成物の使用に関する。本発明はまた、送達系または再水和送達系あるいは上記組成物を投与することによって、創傷、皮膚疾患、眼疾患および/または粘膜の疾患を治療する方法に関する。
【0080】
本発明の製造物は、医薬品用途および化粧品用途に特によく適しているが、これらの用途に限定されず、工業的用途のために設計されてもよい。その場合にキセロゲルまたはフィルム上で安定化させた化合物および材料を規定通り投与し、続いて規定の動態で放出させることが保証され、あるいは有用である。
【0081】
従って、本発明、すなわち、本発明の方法および組成物は、より広範に適用することができ、その適用性は単に活性成分だけではなく、塗布、投与または利用したい任意の化合物または材料にも及ぶ。
【0082】
これらの方法は、単なる例示であて、限定するものではない。従って、これらの方法には所望する任意の改変を加えることができる。
【0083】
本発明によって得られる送達系ならびに再水和された系およびこのような送達系を含む組成物は、動物およびヒトの両方において使用され得る。
【0084】
以下の実施例によって本発明の自由自在な変化を説明するが、これらによって限定されるものではない。
【0085】
引用される全ての参考文献は、その全体が本明細書中に援用される。
【0086】
以下の実施例は、本発明を例証するものであり、かつ特許請求される発明の非限定的な実施形態である。
【実施例1】
【0087】
示された方法によって調製された製造物の制御された視覚的外観を確認するために、プラシーボ着色処方物を異なるキセロゲル上に印刷した。
【0088】
印刷される溶液の組成:
スクロース 5%
フェニルアラニン 2%
ポリソルベート80 0.01%
カルボキシフルオレセイン 十分量
精製水 20μl
【0089】
キセロゲルは、2%のゲル化剤(メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはヒドロキシエチルセルロース)を含むヒドロゲルから凍結乾燥によって調製した。得られたキセロゲルは、直径2cmおよび高さ3mmであった。
【0090】
10μlのプラシーボ着色処方物を400個の25nlの液滴に分配した。これらの液滴を、互いに1mm離れて20×10滴のパターンで2回連続して配置した。印刷された製造物は、真空中で20℃にて一晩乾燥させた(圧力は、5段階で1時間以内に0.001ミリバールまで低下させ、そこで14時間保持した)。
【0091】
すべての製造物は、規定されたパターンを示した(図2は印刷されたヒドロキシエチルセルロースのキセロゲルを示し、他のキセロゲル材料で作製された製造物は同等であり、示されない)。塗布された液滴は、キセロゲルを再水和せず、小さな、明確に規定された、乾燥ドットを形成した。
【実施例2】
【0092】
さらに、印刷された液滴サイズが異なる製造物の視覚的外観を評価した。
【0093】
20μlのプラシーボ着色処方物(実施例1から)は、20×10滴の、互いに1mm離れたパターンで、ヒドロキシエチルセルロースのキセロゲル(実施例1に従って調製された)上に印刷した。25nlの液滴は、同じパターンで連続して4回印刷し、50nlの液滴は、連続して2回印刷した。これらの印刷された製造物は、真空中で20℃にて一晩乾燥させた(実施例1に従って)。
【0094】
製造物は両方とも規定されたパターンを示した。塗布された液滴は、キセロゲルを再水和せず、小さな乾燥ドットを形成した。塗布された乾燥ドットのサイズは、25nlの大きな液滴が同じスポット上に連続して4回塗布されたものであるか、あるいはより大きな液滴(50nl)が同じスポット上に2回印刷されたものであるかとは無関係で、違いは見られなかった。
【実施例3】
【0095】
活性成分を含まないキセロゲルおよび印刷されたキセロゲル(示された方法に従って印刷され、そして真空乾燥された)の残留水分を評価した。
【0096】
20μlの(実施例1に従うが、無色の)プラシーボ処方物を、(実施例1に従って調製した)メチルセルロース、ポリアクリレートまたはヒドロキシエチルセルロースのキセロゲル上に、(実施例2に従って)25nlの液滴として連続して4回印刷した。製造物を(実施例1に従って)真空中で乾燥した。
【0097】
活性成分を含まないキセロゲルおよび印刷されたキセロゲルの両方とも、用いられるキセロゲル材料と無関係に、0.5%と1.2%(m/m)の間の低い残留水分を示した(表1)。印刷工程および乾燥工程によって、印刷された製造物中の残留水分に顕著な増加が検出されることはなかった。
【0098】
残留水分は、電量的なカールフィッシャー滴定(KF373、Metrohm GmbH&Co、D−Filderstadt)によって検出した。試料調製は、グローブボックス中において窒素下で行なった。
【0099】
下の表1は、示された方法に従って調製された、活性成分を含まないキセロゲルおよび印刷されたキセロゲルの残留水分(%)を示す。
【0100】
【表1】

【実施例4】
【0101】
再水和プロセスの実例として、乾燥プラシーボ着色製造物に水を添加し、サンプルの外観(キセロゲルの着色および再水和の溶解および分布)を視覚的にモニターした。
【0102】
20μlの(実施例1に従う)着色プラシーボ処方物を、(実施例1に従って調製した)エチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースのキセロゲル上に、(実施例2に従って)25nlの液滴として連続して4回印刷した。製造物を(実施例1に従って)真空中で乾燥した。キセロゲルの調製前にヒドロゲル中に存在していた量の純水を添加し、サンプルの視覚的な外観をモニターした。
【0103】
サンプルの再水和およびゲル化は非常に速かった。キセロゲル/ヒドロゲルおよび周囲の溶液内の色の分布を視覚的にモニターした。塗布されたカラードットの局所的な溶解は、エチルセルロース(図3)キセロゲルおよびヒドロキシエチルセルロース(データは示さず)キセロゲル上で実現した。これらの材料上の塗布された規定パターンは、数時間の間(3時間後の図3において)明確に視認できた。水との接触の間中、キセロゲルの表面は非常に速く再水和されてゲル化層を生じ、このゲル化層が、塗布された色ドットを捕捉した。15分間の再水和の後でも、単一の明確に規定された色ドットが、ヒドロキシエチルセルロースのキセロゲル上に見られた。その後に、捕捉された色は、周囲のヒドロゲル中にゆっくりと拡散し、均質なヒドロゲルを形成した。
【実施例5】
【0104】
本実施例は、示された方法によって調製された製造物の速い放出動態および制御放出動態を例示する。以下の処方物(pH7.4)を、ヒドロキシエチルセルロースのキセロゲル上に印刷した。
【0105】
印刷される溶液の組成:
スクロース 0.001g
フェニルアラニン 0.0004g
ポリソルベート80 0.002μl
rhエリトロポイエチン(2.4mg/ml) 20μl
【0106】
キセロゲルは、2%ゲル化剤を含むヒドロゲルから凍結乾燥によって調製した。得られたキセロゲルの直径は2cm、高さは3mmであった。20μlの処方物を800個の25nlの液滴に分配した。これらの液滴を、互いに1mm離れて20×10滴のパターンで4回連続して配置した。印刷された製造物は、真空中で20℃にて一晩乾燥させた(圧力は、5段階で1時間以内に0.001ミリバールまで低下させ、そこで14時間保持した)。
【0107】
再水和キセロゲルから酢酸セルロース膜を通って純水(放出媒体)中への塗布されたrhエリトロポイエチン(Epo)モノマーの放出動態を、放出セル中で室温にて数時間モニターした。印刷されたキセロゲルを、一度はタンパク質が塗布された側をこの膜に向けてセル中に配置し(実験A)、そして一度は反対方向に配置した(実験B)。実験の開始時に、乾燥製造物を凍結乾燥前にヒドロゲル中に存在していた量の純水で再水和した。放出媒体中のタンパク質モノマーの濃度を、規定時間後にSEクロマトグラフィーによって検出した。
【0108】
放出動態を図4に示す。再現可能な放出動態が得られ、それによって放出速度は、放出媒体に対するキセロゲル上に塗布されたタンパク質の配向により影響を受け得た。印刷されたキセロゲル側が膜の近くに配置された場合、放出媒体中への速い放出が達成され、それによって放出セル中に逆に配置されたキセロゲルからのタンパク質は、再水和キセロゲル全体を通って拡散されなければならず、はるかに遅く放出された(図1)。
【実施例6】
【0109】
(実施例5に従って)示された方法によって調製された製造物からのrh Epoの放出を、キセロゲル中に配合されたかまたは溶液中のrh Epoの溶解と比較した。
【0110】
異なる製造物からの酢酸セルロース膜を通って純水中へのタンパク質モノマーの放出を、放出セル中で数時間モニターした(実施例5に従って)。印刷されたキセロゲル(実施例5による実験AおよびB)およびタンパク質が配合されたキセロゲル(実験C)を放出セル中に配置し、凍結乾燥前にヒドロゲル中に存在していた量の純水で再構成した。実験Dについて、塗布されたすべてのタンパク質液滴は、キセロゲルの全容量中ではなく、0.1mmの薄層中に溶解されるという仮定から算出された濃度のタンパク質溶液である。異なる製造物の放出動態を検出した。これを図4に示す。
【0111】
異なる放出速度は、塗布されたタンパク質の放出媒体中への拡散距離および濃度における差異によってもたらされた。放出側を膜(A)に向けて配置した印刷されたキセロゲルは、最短の拡散距離を有した(図1A)。再水和の後、キセロゲル上に塗布された液滴は非常に高濃度のタンパク質溶液を膜に隣接して局所的に形成し、このタンパク質溶液は、好ましくは高度に粘稠性のゲルから膜を通って放出媒体中に拡散した。従って、サンプルAは、サンプルDの濃縮溶液からの拡散速度よりもさらに速い、最速の放出速度を示した。サンプルBおよびC中のタンパク質は、ヒドロゲルからかまたはヒドロゲルを通って拡散されなければならず、従って、より遅い放出速度を示した。これによって、放出媒体から離れて配置された、印刷されたキセロゲルからの拡散距離が最も長かった。
【0112】
すべての製造物からの放出は、制御された拡散であった。Higuchiプロットにおいて、データはすべて直線をなした。
【実施例7】
【0113】
本実施例はまた、示された方法によってキセロゲル上にかなり感受性の高いタンパク質、例えばrh G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を印刷し、速い動態でそれらを放出することが可能であることを示す。製造物は実施例5に従って調製した。
【0114】
印刷される溶液(pH4)の組成:
スクロース 0.001g
フェニルアラニン 0.0004g
ポリソルベート80 0.002μl
rh G−CSF(4.2mg/ml) 20μl
【0115】
再水和キセロゲルから酢酸セルロース膜を通って純水中への塗布されたrh G−CSFモノマーの放出動態を、(実施例5に従って)放出セル中で室温にて数時間モニターした。印刷されたキセロゲルを、タンパク質が塗布された側をこの膜に向けてセル中に配置した(実験A)。実験の開始時に、乾燥製造物を凍結乾燥前にヒドロゲル中に存在していた量の純水で再水和した。放出媒体中のタンパク質モノマーの濃度を、規定時間後にSEクロマトグラフィーによって検出した。
【0116】
放出動態を図5(A)に示す。速い再現性の放出動態が得られた。
【実施例8】
【0117】
(実施例7に従って)示された方法によって調製された製造物からのrh G−CSFモノマーの放出を、キセロゲル中に配合されたかまたは溶液中のrh G−CSFの溶解と比較した。
【0118】
異なる製造物からの酢酸セルロース膜を通って純水中へのタンパク質モノマーの放出を、放出セル中で数時間モニターした。印刷されたキセロゲル(実施例7による実験A)およびタンパク質が配合されたキセロゲル(実験C)を放出セル中に配置した。これらのキセロゲルを、凍結乾燥前にヒドロゲル中に存在していた量の純水で再構成した。実験Dについて、塗布されたすべてのタンパク質液滴は、キセロゲルの全容量中ではなく、0.1mmの薄層中に溶解されるという仮定から算出された濃度のタンパク質溶液である。異なる製造物の放出動態を検出した(図5)。
【0119】
異なる放出速度は、塗布されたタンパク質の放出媒体中への拡散距離および濃度における差異によってもたらされた。放出側を膜に向けて配置した印刷されたキセロゲルは、最短の拡散距離を有した(A)。再水和の後、キセロゲル上に塗布された液滴は、非常に高濃度のタンパク質溶液を膜に隣接して局所的に形成した。従って、サンプルAは、サンプルDの濃縮溶液からの拡散速度よりもさらに速い、最速の放出速度を示した。サンプルC中のタンパク質は、ヒドロゲルから拡散されなければならず、従って、より遅い放出速度を示した。
【実施例9】
【0120】
本実施例は、示された方法によって調製された製造物から放出されたタンパク質の安定性を例証する。以下の処方物をヒドロキシエチルセルロースのキセロゲル上に印刷した。
【0121】
印刷される溶液1(pH7.4)の組成:
スクロース 0.001g
フェニルアラニン 0.0004g
ポリソルベート80 0.002μl
rhエリトロポイエチン(2.4mg/ml) 20μl
【0122】
印刷される溶液2(pH4.0)の組成:
スクロース 0.001g
フェニルアラニン 0.0004g
ポリソルベート80 0.002μl
rh G−CSF(4.2mg/ml) 20μl
【0123】
キセロゲルは、2%ゲル化剤を含むヒドロゲルから凍結乾燥によって調製した。得られたキセロゲルの直径は2cm、高さは3mmであった。20μlの処方物を400個の50nlの液滴に分配した。これらの液滴を、互いに1mm離れて20×10滴のパターンで2回連続して配置した。
【0124】
異なる製造物からの酢酸セルロース膜を通って純水中へのタンパク質の放出を、放出セル中で数時間モニターした。放出された溶液をSDS−PAGEによってタンパク質安定性について分析した。
【0125】
SDS−PAGEゲルでは、モノマー結合のみが示され、ダイマー、より高度なマルチマー、または凝集体は検出されなかった。放出されたサンプルは、天然タンパク質のみを含んだ。
【実施例10】
【0126】
示された方法に従ってPE箔(ドライフィルム担体のためのモデル系として)上に印刷されたタンパク質の貯蔵安定性をモニターした。製造物をPE箔上に実施例9に従って調製した。製造物を、製造後ならびに8℃および25℃で9ヶ月間貯蔵した後に直接分析した。
【0127】
25℃で9ヶ月間貯蔵された場合、すべての製造物の残留水分(カールフィッシャー滴定によって検出される)は、1%(フリーザー中に貯蔵された)または2%を超えなかった。タンパク質の安定性(SEC−HPLCによって検出される)は、生成直後、および貯蔵の間中、非常に良好であった。2%未満のダイマー、マルチマーおよび凝集体が、8℃または25℃で貯蔵された製造物中に形成された。より高度の凝集体(SDS−PAGEによって検出される)は形成されなかった。
【0128】
貯蔵の間中、示された方法に従って調製された、サンプル中のタンパク質モノマー含量(%)。SPTは、5%スクロース、2%フェニルアラニンおよび0.01%ポリソルベート80を含む水溶液を表す。SPTは、5%スクロースを含む水溶液を表し、そして0.01%ポリソルベート80は、下の表2に示される。濃度を(w/v)で示す。
【表2】

【実施例11】
【0129】
示された方法によって調製された、印刷されたフィルム製造物の光学的特性を確認するために、着色した処方物を乾燥フィルムマトリックス上に印刷した。
【0130】
印刷される溶液の組成:
スクロース 5%
フェニルアラニン 2%
ポリソルベート80 0.01%
カルボキシフルオレセイン 十分量
精製水 20μl
【0131】
5%ゲル化剤(ヒドロキシエチルセルロース)を含むヒドロゲル(厚さ1mm)から空気乾燥によってフィルムを調製した。得られた乾燥フィルムマトリックスを6cm2の小片に切断した。7.5μlのプラシーボ着色処方物を300滴の25nlに分配した。これらの液滴を15×10滴のパターンで2回連続して配置し、それによって液滴列は互いに1mm離れて配置された。
【0132】
製造物はすべて規定されたパターンを示した。塗布された液滴は、フィルムを再水和させたり歪めたりせず、小さく、明確に規定された、乾燥したドットを形成した。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、本発明の方法によって得られた送達系からの活性成分の放出様式であって、印刷側と放出側が対面(A)またはその逆(C)または両方の組み合わせ(D)で配置された場合の各概略図、およびキセロゲルまたはフィルム中に配合されたタンパク質の放出様式(B)の概略図を示す。
【図2】図2は、ヒドロキシエチルセルロースのキセロゲル上に10μlのプラシーボ着色処方物を(25nlの液滴で)印刷した図である。写真は、印刷されたパターンの部分を顕微鏡下(倍率10×)で撮影したものである。
【図3】図3は、20μlのプラシーボ着色処方物をエチルセルロースキセロゲル上に印刷した図である。乾燥製造物(左写真)を純水で再水和させ、色の溶解およびキセロゲルの再水和を3時間後に視覚的にモニターした(右写真)。明確に規定したパターンが依然として見える。
【図4】図4は、異なる製造物からのrhエリトロポイエチンモノマーの放出を示す。A:膜に対し放出側に対面して配置された、印刷されたキセロゲル、B:逆に配置された、印刷されたキセロゲル、C:タンパク質を配合したキセロゲル、D:放出セル中に配置されたタンパク質溶液。
【図5】図5は、異なる製造物からのrh G−CSFモノマーの放出を示す。A:膜に対して放出側に対面して配置された、印刷されたキセロゲル、C:タンパク質を配合したキセロゲル、D:放出セル中に配置されたタンパク質溶液。
【図6】図6は、示された方法によって調製されたキセロゲルから放出されたEpo(左)またはG−SCF(右)を含むサンプルのSDS−PAGEゲルを示す。M:マーカー、E:Epo処方物、G:G−CSF処方物、0:薬物を含まないHEC、0.5〜6:0.5〜6時間後の放出。
【図7】図7は、ヒドロキシエチルセルロースフィルム上に7.5μlのプラシーボ着色処方物(25nlの液滴に分配された)を塗布することによって作製された、印刷されたフィルム製造物の外観を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(i)少なくとも1つの活性成分を溶解または分散した液体を調製する工程、
(ii)任意に該液体を滅菌する工程、
(iii)キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体を調製し、そして任意に滅菌する工程、
(iv)工程(i)または該当する場合は工程(ii)に記載の液体の微液滴を、工程(iii)で得られたキセロゲルまたはフィルムの乾燥担体の少なくとも1つの表面領域に塗布する工程、
(v)任意に工程(iv)を少なくとも1回繰り返す工程、および
(vi)任意に別の活性成分を含む液体を用いて工程(i)〜(v)を少なくとも1回繰り返す工程、
(vii)上記工程で得られた系を真空乾燥または凍結乾燥する工程
を特徴とする、担体および少なくとも1つの活性成分を含む医療品用および/または化粧品用の送達系を製造する方法。
【請求項2】
以下の工程:
(i)少なくとも1つの活性成分を溶解または分散した液体を調製する工程、
(ii)任意に該液体を滅菌する工程、
(iii)キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体を調製し、そして任意に滅菌する工程、
(iv)工程(i)または該当する場合は工程(ii)に記載の液体の微液滴を、工程(iii)で得られたキセロゲルまたはフィルムの乾燥担体の少なくとも1つの表面領域に塗布する工程、
(v)任意に工程(iv)を少なくとも1回繰り返す工程、および
(vi)任意に別の活性成分を含む液体を用いて工程(i)〜(v)を少なくとも1回繰り返す工程、
(vii)上記工程で得られた系を真空乾燥または凍結乾燥する工程
を特徴とする、請求項1に記載の担体および少なくとも1つの活性成分を含む医療品用および/または化粧品用の送達系を製造する方法。
【請求項3】
以下の工程:(i)少なくとも1つの活性成分を溶解または分散した液体を調製する工程、(ii)該液体を滅菌する工程;(iii)キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体を調製し、そして滅菌する工程;(iv)工程(ii)に記載の液体の微液滴を、工程(iii)で得られたキセロゲルまたはフィルムの乾燥担体の少なくとも1つの表面領域に塗布する工程;(v)任意に工程(iv)を少なくとも1回繰り返す工程、および;(vi)任意に別の活性成分を含む液体を用いて工程(i)〜(v)を少なくとも1回繰り返す工程;(vii)上記工程で得られた系を真空乾燥または凍結乾燥する工程を特徴とする、請求項1または2に記載の担体および少なくとも1つの活性成分を含む医療品用および/または化粧品用の送達系を製造する方法。
【請求項4】
前記乾燥キセロゲル担体が、凍結乾燥プロセスによってヒドロゲルから形成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記乾燥フィルム担体が、蒸発乾燥プロセス、好ましくは空気乾燥、真空乾燥または対流乾燥によってヒドロゲルから形成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体が、1つ以上の膨潤可能か、溶解可能かまたは腐食可能なポリマーを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体のゲル形成材料が、アルギン酸塩、ペクチン、カラゲナンまたはキサンタン、デンプンおよびデンプン誘導体のような多糖類、トラガカントゴムまたはキサンタンガムのようなゴム、コラーゲン、ゼラチン、ガラクトマンナンおよびガラクトマンナン誘導体、キトサンおよびキトサン誘導体、糖タンパク質、プロテオグリカン、グルコサミノグリカン、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(vinylpyrrolidone/vinyl acetate copolymers)、高分子量ポリエチレングリコール(high molecular weight polyethylene glycols)および/または高分子量ポリプロピレングリコール(high molecular weight polypropylene glycols)、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体(polyoxyethylene/polyoxypropylene copolymers)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリアクリレート(polyacrylates)および/またはポリメタクリレート(polymethacrylates)、ポリラクチド(polylactides)、ポリグリコリド(polyglycolides)およびポリアミノ酸(polyaminoacids)および/またはセルロース誘導体から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体のゲル形成材料が、セルロース誘導体、好ましくはメチルセルロース(methylcellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropylcellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethylcellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose)、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(sodium carboxymethylcellulose)、エチルセルロース(ethylcellulose)、酢酸フタル酸セルロース(cellulose acetate phthalate)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose phthalate)、酢酸コハク酸セルロース(cellulose acetate succinate)またはコハク酸エチルセルロース(ethylcellulose succinate)あるいはこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記担体が、糖、糖アルコール、界面活性剤、アミノ酸、酸化防止剤、ポリエチレングリコールのような1つ以上のさらなる賦形剤を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記担体が、縁で隔てられた少なくとも2つの表面を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記担体が、円柱、シート、立方体または立方形のおおよその形態を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記微液滴が、1つ以上の表面、好ましくは1つまたは2つの表面に塗布されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記微液滴が、前記担体の形状を本質的に変化させない方法で塗布されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記微液滴が、約0.05nlと10μlの間、より好ましくは約0.5nlと200nlの間、最も好ましくは約10nlと100nlの間の体積を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜2の工程(iv)の微液滴が、分離して、または互いに接触して、または互いに重なって、好ましくは分離して配置されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記微液滴が、規定のスポットに少なくとも1つの活性成分が含まれるように塗布されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
別の活性成分を含む工程(vi)の微液滴が、1回目の工程(iv)の微液滴とは分離して、またはその微液滴に接触して、またはその微液滴に重なって塗布され、好ましくは請求項1〜3のいずれか1項の1回目の工程(iv)の微液滴とは分離して塗布されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
別の活性成分を含む工程(vi)の微液滴が、請求項1〜3のいずれか1項の1回目の工程(iv)で塗布された微液滴とは異なる面に塗布されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記微液滴が担体表面の中央領域に塗布され、活性成分を含まない縁が前記表面領域の周囲に残されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜3の工程(i)の液体が、糖、糖アルコール、界面活性剤、アミノ酸、緩衝液、凍結乾燥防止剤(lyoprotectant)または酸化防止剤から選択される1つ以上の賦形剤を含むことを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの活性成分が、タンパク質、ペプチド、RNA、DNAまたは処方物中において潜在的に不安定な別の物質であることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの活性成分が、創傷治癒を促進する物質、好ましくは創傷治癒因子、酵素またはプロテイナーゼ阻害剤であることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
先行項のいずれか1項に記載の方法によって得られる、担体および少なくとも1つの活性成分を含む医療品用および/または化粧品用の送達系。
【請求項24】
前記組成物を処置対象の患者の体外で水溶液または水と接触せしめることを特徴とする、請求項23に記載の送達系を再水和する方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法によって得られる、再水和された送達系。
【請求項26】
少なくとも1つの活性成分の放出が迅速であると観察される、請求項25に記載の再水和された送達系。
【請求項27】
前記活性成分および成分群の放出が制御されて緩徐であると観察される、請求項25に記載の再水和された送達系。
【請求項28】
請求項23に記載の送達系または請求項24に記載の再水和された送達系、および不活性な支持体、好ましくは、接着ストリップ、接着ラップ、包帯、ガーゼ包帯、圧迫ガーゼ系から選択される支持体を含み、皮膚または皮膚創傷上に化粧品への適用または医療適用するための組成物。
【請求項29】
請求項23に記載の送達系または請求項24に記載の再水和された送達系または請求項28に記載の組成物の化粧品用処理のための使用。
【請求項30】
請求項23に記載の送達系または請求項24に記載の再水和された送達系または請求項28に記載の組成物の医薬としての使用。
【請求項31】
創傷、皮膚疾患、眼疾患および/または粘膜の疾患を処置する医薬を製造するための請求項23に記載の送達系の使用。
【請求項32】
前記微液滴が、印刷またはスポッティングによって、好ましくは圧電プリンターによって、より好ましくはシリンジポンプおよび高速マイクロソレノイドバルブを用いるプリンターによって、担体の1つ以上の表面または表面領域上に塗布されることを特徴とする、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記微液滴が塗布される担体が、請求項1〜3のいずれか1項の工程(iv)の後に、好ましくは40℃以下に、より好ましくは30℃以下に加熱されることを特徴とする、請求項1〜23または32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記系を請求項1〜3のいずれか1項の工程(iv)の後に真空中で乾燥させて、残留水分を好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、特に好ましくは1%未満に低下させることを特徴とする、請求項1〜23または32〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの活性成分を含む請求項1〜3のいずれか1項の工程(ii)に記載の滅菌液体が、請求項1〜3のいずれか1項の工程(iii)に記載の滅菌担体上に無菌条件で塗布され、それによって滅菌送達系が製造されることを特徴とする、請求項1〜23または32〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
請求項1〜3のいずれか1項の工程(ii)に記載の前記滅菌液体が、無菌条件での滅菌濾過によって製造されることを特徴とする、請求項1〜23または32〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
請求項3の工程(iii)に記載の前記滅菌担体が、熱蒸気または放射線および乾燥によるヒドロゲルの滅菌によって得られることを特徴とする、請求項1〜23または32〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
キセロゲルまたはフィルムの乾燥担体および1つ以上の活性成分を含有する乾燥した微液滴のパターンを含む、医療品用および/または化粧品用の送達系。
【請求項39】
前記パターンが規則的である、請求項38に記載の送達系。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−526273(P2007−526273A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501220(P2007−501220)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002261
【国際公開番号】WO2005/084650
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(505161633)スイッチ バイオテック アーゲー (2)
【出願人】(504351817)ルートヴィヒ マクシミリアン ウニヴェルジテート (3)
【Fターム(参考)】