説明

キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーを含む塗料組成物

【課題】キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーを含む新規な塗料組成物を提供すること。
【解決手段】樹脂、有機溶媒、およびキチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上を含む有機溶媒系塗料組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーを含む塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、接着剤等のコーティング材、樹脂フィルム・シート材料あるいはプラスチック成型品の添加剤として各種繊維系強化材料(強化フィラー)が広く用いられている。ガラス繊維あるいは炭素繊維がその主流を占めるが、その直径はミクロンオーダーである。これに対し、最近では径がナノメートルオーダーのカーボンナノチューブが登場し、次世代の機能性フィラーとして注目を集めている。また天然由来のセルロースナノファイバーの応用開発も盛んである。しかしながら、カーボンナノチューブは安価な製法はまだ確立されておらず、安全性の確認もこれからの課題である。また、セルロースナノファイバーの場合、水系分散溶液は可能であるが有機溶媒への分散については未検討の段階である。
【0003】
一般にナノファイバーは、数十ないし数百ナノメーターの径(幅)を有する極細繊維であり、従来の繊維と比べて格段に大きい表面積を有する等の特徴を有するため、新規かつ特殊な機能を発揮するものとして注目され、その利用が進められている。ナノファイバーの原料としては、ナイロン、ポリエステル等の高分子材料が主たるものであるが、最近では、環境への配慮から生物材料からナノファイバーを得て、これらを利用することについても盛んに研究がなされている。
【0004】
キチン、キトサンも生物由来のものであり、ナノファイバー化の研究が行われている。例えば、本発明者らは、キチン含有生物由来の材料から、ほとんど損傷のない状態の細く、長く、しかも均質で結晶性、物性、処理操作の簡便さ、蓄積量のいずれにおいても優れたキチンナノファイバーを得るための製造方法を開発することに成功している(特許文献1)。
【0005】
特許文献1には、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーを塗料組成物に含ませることにより、従来のものより均一な塗膜を形成し、優れた接着性を有する塗料組成物を製造することに成功したことが報告されている。しかし、特許文献1において報告されているのは、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物ならびにその製造方法のみであり、かかる塗料組成物は、キチンナノファイバーの水懸濁液と、水溶性樹脂またはエマルジョンをブレンドする工程を含む方法によって得られるものである。
【0006】
キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーのコンポジットとしての応用範囲を広げる意味で、種々の有機溶媒への分散性を検討することは非常に重要であるが、今までかかる検討はなされていなかった。特許文献1に開示されるように、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーは製法上、水分散液として得られ、他の有機溶媒への分散性は未知であった。
【0007】
キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバー表面は親水性であるため、疎水性有機溶媒への分散性は低いと予想されていた。実際、特許文献1においては、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーを補強繊維(フィラー)とした塗料の調製に関しては、水系のアクリル樹脂エマルジョンのみが得られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2010/073758号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーを含む新規な塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のように、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバー表面は親水性であり、疎水性有機溶媒への分散性は低いと予想されていたため、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーを補強繊維(フィラー)とした塗料の調製に関しては、水系のアクリル樹脂エマルジョンが得られているのみで、その他の様々な有機溶媒系塗料との複合化は未検討であった。
【0011】
本発明者らは、かかる予想に反し、有機溶媒の極性の大小にかかわらず、親水性のキチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーを有機溶媒へ良好に分散させることができることを見いだした。
【0012】
即ち、本発明は、樹脂、有機溶媒、およびキチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上を含む有機溶媒系塗料組成物を提供する。
【0013】
本発明の有機溶媒系塗料組成物において、好ましくは、キチンナノファイバーは、キチン含有生物由来の材料を、少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、酸性試薬にて処理する工程に付し、次いで、解繊工程に付すことを特徴とする製造方法によって得られるものである。あるいは、本発明の有機溶媒系塗料組成物において、好ましくは、キトサンナノファイバーは、キチン含有生物由来の材料を、少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程、および少なくとも1回の脱アセチル化工程に付し、次いで、解繊工程に付すことを特徴とする製造方法によって得られるものである。ここで、好ましくは、キチン含有生物は、甲殻類である。
【0014】
本発明の有機溶媒系塗料組成物において、好ましくは、有機溶媒が水以外の極性溶媒および非極性有機溶媒であり、好ましくは、樹脂が、ロジン、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、カゼイン、シェラック等の天然樹脂、セルロース、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、キチン、キトサン等の多糖類、および、ニトロセルロース、ナイロン、ゴム系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ケトン樹脂、ケイ素含有重合体、フッ素含有重合体等の合成樹脂からなる群から選択されるものである。
【0015】
本発明の有機溶媒系塗料組成物はさらに好ましくは、顔料を含むものである。
【0016】
本発明はまた、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上の有機溶媒分散液を提供する工程、および
該キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上の有機溶媒分散液に、樹脂をブレンドする工程、
を含む有機溶媒系塗料組成物の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の有機溶媒系塗料組成物の製造方法において、好ましくは、キチンナノファイバーは、キチン含有生物由来の材料を、少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、酸性試薬にて処理する工程に付し、次いで、解繊工程に付すことを特徴とする製造方法によって得られるものである。あるいは、本発明の有機溶媒系塗料組成物において、好ましくは、キトサンナノファイバーは、キチン含有生物由来の材料を、少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程、および少なくとも1回の脱アセチル化工程に付し、次いで、解繊工程に付すことを特徴とする製造方法によって得られるものである。ここで、好ましくは、キチン含有生物は、甲殻類である。
【0018】
本発明の有機溶媒系塗料組成物の製造方法において、好ましくは、有機溶媒が水以外の極性溶媒および非極性有機溶媒であり、好ましくは、樹脂が、ロジン、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、カゼイン、シェラック等の天然樹脂、セルロース、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、キチン、キトサン等の多糖類、および、ニトロセルロース、ナイロン、ゴム系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ケトン樹脂、ケイ素含有重合体、フッ素含有重合体等の合成樹脂からなる群から選択されるものである。
【0019】
本発明の有機溶媒系塗料組成物の製造方法は、好ましくは、さらに顔料をブレンドする工程を含む。
【0020】
本発明はさらに、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上を有機溶媒に分散して含む、塗料、コーティング材、接着剤、粘着材、シーリング材、樹脂系注入材、ポッティング材料、充填剤、パテ、漆喰材料、水ガラス、繊維製品、不織布、樹脂フィルム・シート材料、ゴム製品、化粧品、石鹸、およびプラスチック成形品からなる群から選択される材料へ添加するための添加剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーの各種有機溶媒への分散に成功したため、有機溶媒系コーティング剤への添加が容易となった。なかでも疎水性有機溶媒置換キチンまたはキトサンナノファイバー分散液はたとえばメラミンアルキッド樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等汎用塗料系への分散を可能とし、そのフィラー添加効果で塗膜性能、特に強度の向上に寄与しうるものと期待される。
【0022】
本発明により確立された、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーの有機溶媒分散液の調製方法と、汎用コーティング材への混入分散の成功により、天然由来の環境適合性、生分解性を有する機能性強化フィラーが有効にコンポジットとして広く応用可能となったことは画期的である。
【0023】
キチンナノファイバーは、カチオン荷電性を有し、金属吸着性、顔料吸着性、抗菌性、耐溶剤性、造膜性に優れ、また反応性にも富んでいる。したがって、本発明の塗料組成物は、従来にはなかった新たな機能性を有するものと考えられる。さらに、本発明の塗料組成物は、均一な塗膜を形成し、種々の被塗物に対し優れた付着性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、イソプロピルアルコール、酢酸エチルおよびメチルシクロヘキサン中に分散したキチンナノファイバーを走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書および特許請求の範囲において、「有機溶媒系塗料組成物」とは、以下に定義する「樹脂」、「有機溶媒」および「キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上」を必須に含み、所望により顔料およびその他の添加剤を含んでいてもよい塗料組成物をいう。これらの成分のなかで、有機溶媒は、塗膜形成中に揮発する非塗膜成分であり、樹脂、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上、顔料およびその他の添加剤は、乾燥後も塗膜として残る塗膜形成成分である。本発明の「有機溶媒系塗料組成物」は、樹脂、有機溶媒および、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上を含んでいるものであれば特に限定されず、それらの含有量も特に限定されない。「有機溶媒系塗料組成物」は、そのまま塗料として使用するものであっても、シンナー(希釈液、薄め液ともいう)に希釈してから塗料として使用するものであってもよい。
【0026】
本明細書および特許請求の範囲において、「樹脂」とは、上記有機溶媒系塗料組成物を構成する塗膜形成成分の主成分であり、主たる造膜成分をいう。樹脂は、耐候性、柔軟性、耐水性などの上記有機溶媒系塗料組成物によって求められる塗膜性能に応じて、一般に塗料用として用いられるものを適宜使用すればよく、特に限定されない。
【0027】
本明細書および特許請求の範囲において、「有機溶媒」とは、上記有機溶媒系塗料組成物および該希釈用シンナーを構成する揮発性非塗膜成分であり、これ自体は蒸発するため塗膜とはならない。有機溶媒は、一般に塗料用として用いられるものを適宜使用すればよく、特に限定されず、1種類の有機溶媒であってもよいし、2種以上の有機溶媒の混合物であってもよいが、本発明においては、有機溶媒が非極性有機溶媒の場合、非極性有機溶媒は、上記有機溶媒系塗料組成物および該希釈用シンナーを構成する揮発性液体成分中、99重量%以上にて存在するもの、即ち、水分含量が1重量%未満のものをいう。一方、有機溶媒が水以外の極性有機溶媒の場合、該極性有機溶媒は、上記有機溶媒系塗料組成物および該希釈用シンナーを構成する揮発性液体成分中、96重量%以上にて存在するもの、即ち、水分含量が4重量%未満のものをいう。
【0028】
本明細書および特許請求の範囲において、「キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上」とは、キチンナノファイバーまたはキトサンナノファイバーのいずれかであってもその両方であってもよい。キチンナノファイバーは、キチン含有生物由来の材料から単離・抽出された、幅(または径)が、約2nm〜約30nmであるナノファイバーであって、そのN−アセチル基の置換度が95〜99%のものをいう。ここで、「キチンナノファイバーの幅(または径)が約2nm〜約20nm」とは、電子顕微鏡観察にて観察した場合に、幅(または径)が約2nm〜約20nm以下であるファイバーが全体の約50%以上を占める状態をいう。キトサンナノファイバーの幅(または径)についても同様である。キトサンナノファイバーは、キチンナノファイバーと同様に、幅(または径)が、約2nm〜約30nmであるナノファイバーであって、上記のキチンナノファイバーの主として表面のN−アセチル基が脱アセチル化されたものであって(表面がキトサン化されたキチンナノファイバー)、そのナノファイバー全体のN−アセチル基の置換度が85〜95%のものをいう。
【0029】
本発明の有機溶媒系塗料組成物における、樹脂、有機溶媒およびキチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上、ならびに、所望により含まれていてもよい顔料およびその他の添加剤の重量比は特に限定されないが、好ましくは、本発明の有機溶媒系塗料組成物は、成膜後に残存する固形分に対するキチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上の重量が、0.05〜35重量%であり、さらに好ましくは、0.1〜15重量%であり、特に好ましくは、1.0〜8.0重量%である。
【0030】
本発明の有機溶媒系塗料組成物における樹脂は、特に限定されないが、例えば、ロジン、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、カゼイン、シェラック等の天然樹脂、セルロース、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、キチン、キトサン等の多糖類、および、ニトロセルロース、ナイロン、ゴム系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ケトン樹脂、ケイ素含有重合体、フッ素含有重合体等の合成樹脂が好ましい。
【0031】
本発明の有機溶媒系塗料組成物における有機溶媒は、特に限定されないが、例えば、n−ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、n−オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、ナフタレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、ビフェニル、スチレン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセン、α―ピネン、ジペンテン、デカリン、石油エーテル、石油ベンジン、石油ナフサ、リグロイン、工業ガソリン、灯油、ソルベントナフサ、ショウノウ油、テレピン油、パイン油、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチル、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、塩化プロピル、塩化イソプロピル、1,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、塩化アリル、塩化ブチル、塩化sec−ブチル、塩化イソブチル、塩化tert−ブチル、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、1−クロロナフタレン、臭化メチル、ブロモホルム、臭化エチル、1,2−ジブロモエタン、1,1,2,2−テトラブロモエタン、臭化プロピル、臭化イソプロピル、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、1−ブロモナフタレン、フルオロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、ヘキサフルオロベンゼン、クロロブロモエタン、トリクロロフルオロメタン、1−ブロモ−2−クロロエタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,2、2−テトラクロロ−1,2−ジフルオロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、3−ペンタノール、2−メチル1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、α−テルピネオール、アビエチノール、フーゼル油、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチルー2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、フェノール、クレゾール、キシレノール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ベラトロール、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、ジオキサン、トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジネオール、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、グリセリンエーテル、クラウンエーテル、メチラール、アセタール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メシチルオキシド、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ショウノウ、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセタート、酢酸sec−ヘキシル、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソペンチル、イソ酪酸イソブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソペンチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソペンチル、安息香酸ベンジル、けい皮酸エチル、アビエチン酸エチル、アビエチン酸ベンジル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジオクチル、エチレングリコールモノアセタート、二酢酸エチレン、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールモノアセタート、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノブチリン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホウ酸エステル、リン酸エステル、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、α−トリ二トリル、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、アリルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、トルイジン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、キノリン、イソキノリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム、カルバミド酸エステル、二硫化炭素、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)誘導体、ジアセトンアルコール、2−クロロエタノール、1−クロロ−2−プロパノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、3−ヒドロキシプロピオニトリル、アセトンシアノヒドリン、2−アミノエタノール、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミン)エタノール、ジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、2,2‘−チオジエタノール、フルフラール、ビス(2−クロロエチル)エーテル、エピクロロヒドリン、o−ニトロアニソール、モルフォリン、N−エチルモルフォリン、N−フェニルモルフォリン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、サリチル酸メチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、o−クロロアニリン、ヘキサメチルリン酸トリアミドが挙げられ、この中でも、n−ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、n−オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、ナフタレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、ビフェニル、スチレン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセン、α―ピネン、
ジペンテン、デカリン、石油エーテル、石油ベンジン、石油ナフサ、リグロイン、工業ガソリン、灯油、ソルベントナフサ、ショウノウ油、テレピン油、メタノール、エタノール、1−プロパノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、3−ペンタノール、2−メチル1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、α−テルピネオール、アビエチノール、フーゼル油、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチルー2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、フェノール、クレゾール、キシレノール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ベラトロール、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、ジオキサン、トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジネオール、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、グリセリンエーテル、メチラール、アセタール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メシチルオキシド、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセタート、酢酸sec−ヘキシル、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソペンチル、イソ酪酸イソブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソペンチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソペンチル、安息香酸ベンジル、けい皮酸エチル、アビエチン酸エチル、アビエチン酸ベンジル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジオクチル、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールモノアセタート、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノブチリン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、α−トリ二トリル、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、アリルアミン、アニリン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フルフラール、モルフォリン、N−エチルモルフォリン、N−フェニルモルフォリン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、サリチル酸メチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等の水以外の極性溶媒および非極性溶媒が好ましく、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、トルエン、キシレン、スチレン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、α―ピネン、テレピン油、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアクリルアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートが特に好ましい。本発明の有機溶媒系塗料組成物における有機溶媒は上記有機溶媒を単独で用いもよいし、1種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明の有機溶媒系塗料組成物に使用するキチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーの好ましい製造方法は、WO2010/073758号パンフレットに記載のものである。具体的には、本発明に使用するキチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーは好ましくは以下の製造方法により製造されるものである。
【0033】
本発明の有機溶媒系塗料組成物に使用するキチンナノファイバーは、好ましくは、
キチン含有生物由来の材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、
酸性試薬にて処理する工程に付し、次いで、
解繊工程
に付すことを特徴とする製造方法によって得られるものである。
【0034】
一方、本発明の有機溶媒系塗料組成物に使用するキトサンナノファイバーは、好ましくは、
キチン含有生物由来の材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程、および
少なくとも1回の脱アセチル化工程に付し、次いで、
解繊工程
に付すことを特徴とする製造方法によって得られるものである。
【0035】
上記のキチンまたはキトサンナノファイバーは、キチン含有生物由来の材料から得ることができる。キチン含有生物としては、甲殻類、昆虫類またはオキアミなどが例示されるが、これらに限定されない。キチンまたはキトサンナノファイバーの原料となるキチン含有生物由来の材料は、例えば、昆虫類の外皮、オキアミなどの殻、甲殻類の殻および外皮などが挙げられる。キチン含有生物由来の材料としては、キチン含量の多い生物、例えば、エビ、カニなどの甲殻類の殻および外皮が好ましい。エビ、カニの甲羅、殻などは、消費後に廃棄される部分のほとんどを占める。そのうえ、エビやカニは大量に消費されるので、エビやカニの外皮は大量に得ることができ、好都合である。
【0036】
WO2010/073758号パンフレットに記載される上記製造方法により得られるキチンまたはキトサンナノファイバーは、細くて均質であり、長く、分子が伸びきり鎖結晶で強度が高いものである。伸びきり鎖結晶とは、剛直性の高分子が伸びきった状態で規則正しく配列し、束になった繊維状の結晶のことであり、欠陥が少ないため強靭な物性を発揮することが可能である。特に、エビやカニなどの甲殻類のキチンは結晶性の高いアルファキチンであるため、エビやカニなどの甲殻類の殻を原料にして得られるキチンまたはキトサンナノファイバーは、上記の優れた特性が顕著である。
【0037】
以下、WO2010/073758号パンフレットに記載の製造方法について詳述するが、本発明に使用するキチンまたはキトサンナノファイバーは、かかる製造方法によって得られるものに限定されない。
【0038】
キチンナノファイバーの製造方法
まず、キチン含有生物由来の材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付す。
【0039】
脱蛋白により、キチンナノファイバーを囲んでマトリックスを形成している蛋白が除去される。脱蛋白処理には、アルカリ処理法、プロテアーゼなどのタンパク質分解酵素法などがあるが、アルカリ処理法が好適である。アルカリ処理による脱蛋白において、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリの水溶液が好ましく用いられ、その濃度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約2〜約10%(w/v)、好ましくは約3〜約7%(w/v)、例えば約5%(w/v)である。アルカリ処理による脱蛋白の温度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約80℃以上、好ましくは約90℃以上、さらに好ましくはアルカリ水溶液を還流しながら行う。処理時間も、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は数時間〜約3日間、好ましくは数時間〜約2日間行ってもよい。
【0040】
脱灰により、キチンナノファイバーを囲んでいる灰分、主に炭酸カルシウムが除去される。脱灰処理には、酸処理法、エチレンジアミン4酢酸処理法などがあるが、酸処理法が好適である。酸処理による脱灰において、塩酸の酸の水溶液が好ましく用いられ、その濃度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約4〜約12%(w/v)、好ましくは約5〜約10%(w/v)である。酸処理による脱蛋白の温度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約10〜約50℃、好ましくは約20〜約30℃、例えば室温であってもよい。酸処理による脱灰時間も、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は数時間〜数日間、好ましくは約1〜約3日、例えば2日間行ってもよい。
【0041】
次いで、酸性試薬にて処理する工程に付す。
脱灰処理されたキチン含有材料を酸性試薬にて処理することにより、キチンナノファイバーの分散性を向上させることができる。酸性試薬での処理方法は特に限定されず、材料に酸性試薬を浸透させる方法であればよい。酸性試薬での処理は、典型的には酸の水溶液に脱灰処理されたキチン含有材料を浸漬することにより行うことができる。この工程では、分散性の向上のみならず、キチンナノファイバーの繊維の幅(または径)のばらつきを抑えることもできる。この工程に使用できる酸はいずれの酸であってもよく特に限定されないが、弱酸が好ましい。弱酸としては、酢酸、リンゴ酸、蟻酸、クロロ酢酸、フルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、クエン酸、マロン酸、アスコルビン酸などが挙げられるがこれらに限らない。この工程に使用される好ましい弱酸は酢酸である。この工程において弱酸の水溶液のpHを通常は約2〜約5、好ましくは約2.5〜約4.5、例えば、約3〜約4に調節する。この工程の温度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約10〜約50℃、好ましくは約20〜約30℃、例えば、室温であってもよい。この工程の処理時間も、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は1時間〜約1日、好ましくは約3〜約12時間、例えば、一晩であってもよい。この酸による処理工程は、解繊工程の前であればいずれの段階で行ってもよいが、脱蛋白および脱灰の後、キチンナノファイバーの精製がある程度進んだ段階で行うことが好ましく、例えば、解繊工程の直前に行ってもよい。
【0042】
そして解繊工程に付す。上記工程で得られた外皮(ほとんどがキチンナノファイバーとなっている)を解繊処理し、目的のキチンナノファイバーを得る。キチンナノファイバーは乾燥すると水素結合して強固に凝集するため、キチンナノファイバーの製造方法の各工程を、材料を常に乾燥させずに行うことが好ましい。解繊処理には、石臼式摩砕器、高圧ホモジナイザー、凍結粉砕装置などの装置を用いることができ、好ましくは石臼式磨砕機などによりグラインダー処理を行う。石臼式磨砕機などのような、より強い負荷をかけることができる装置を用いれば、カニやエビなどの殻由来のアルファキチンでも速やかに解繊することができる。その後、得られたキチンナノファイバーを水などの水性媒体に分散させてもよい。
【0043】
キトサンナノファイバーの製造方法
キチン含有生物由来の材料を、少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程および少なくとも1回の脱アセチル化工程に付し、次いで、解繊工程に付す。脱蛋白工程、脱灰工程、解繊工程については、キチンナノファイバーの製造に関して上で説明したのと同様である。なお、脱蛋白工程と脱アセチル化工程を同時に行うことも可能である。さらに、既に脱蛋白工程および脱灰工程を行った市販のキチン粉末を脱アセチル化工程に付すことによって、キトサンナノファイバーを製造することも可能である。脱アセチル化方法はいくつかの方法が公知であるが、アルカリ処理法が好適である。アルカリ処理による脱アセチル化において、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリの水溶液が好ましく用いられ、その濃度は、通常は約20〜約50%(w/v)、好ましくは約30〜約40%(w/v)、例えば約40%(w/v)である。アルカリ処理による脱アセチル化の温度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約80℃以上、好ましくは約90℃以上、さらに好ましくはアルカリ水溶液を還流しながら行う。処理時間も、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は30分〜約3日間、好ましくは30分〜一晩行ってもよい。なお、キトサンナノファイバーは乾燥すると水素結合して強固に凝集するため、キトサンナノファイバーの製造方法の各工程を、材料を常に乾燥させずに行うことが好ましい。
【0044】
上記のキチンまたはキトサンナノファイバーの製造方法において、必要ならば、あるいは所望により、脱色工程を行ってもよい。脱色工程は、上記方法のいずれの段階において行ってもよいが、好ましくは、脱蛋白および脱灰処理が終わった後に行う。脱色はいずれの方法で行ってもよいが、塩素系漂白剤や酸素系漂白剤、還元系漂白剤の使用が好ましく、例えば、酢酸緩衝液などの緩衝液中約1〜約2%の次亜塩素酸ナトリウムを用いて、約70〜約90℃で数時間行ってもよい。
【0045】
さらに、脱蛋白工程、脱灰処理工程、脱色工程、解繊工程および酸性試薬での処理を効率よく行うために、粉砕工程を行ってもよい。粉砕工程は、上記方法のいずれの段階において行ってもよいが、好ましくは、解繊工程の直前に行う。粉砕工程はいずれの方法で行ってもよいが、ホモジナイザー処理やミキサー処理などの方法が好ましく、例えば、家庭用フードプロセッサーにより行ってもよい。
【0046】
上記の脱蛋白工程、脱灰処理工程、脱色工程、粉砕工程などの工程は、繰り返し、複数回、あるいは交互に行ってもよい。また、それぞれの工程は順序を問わない。
【0047】
本発明の有機溶媒系塗料組成物には、着色顔料、体質顔料あるいは防錆あるいは意匠性機能性顔料などの顔料を含むものであってもよい。添加する顔料の例としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、消石灰、タルク、バライト粉、モリブデンホワイト、リサージ、モリブデン赤、銀朱、鉛丹、酸化鉄赤、チタン黄、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)、酸化コバルト、鉄黒、カーボンブラック、チタンブラック、雲母状酸化鉄、二酸化チタン被覆雲母、亜酸化鉛、硫化亜鉛、アルミニウム粉等の無機顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニンブルー、染色レーキ、イソインドリノン、キナクリドン、ジオキサンジンバイオレット、ペリノン・ペリレン等の有機顔料が挙げられる。
【0048】
本発明の有機溶媒系塗料組成物には、樹脂、有機溶媒、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上、所望により顔料に加えて、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、可塑剤、分散剤、沈降防止剤、乳化剤、増粘剤、消泡剤、抗菌剤、防かび剤、防腐剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、レべリング剤、艶消し剤、乾燥剤、吸着剤等が挙げられる。
【0049】
本発明はさらに、以下の工程を含む本発明の有機溶媒系塗料組成物の製造方法を提供する:
キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上の有機溶媒分散液を提供する工程、および
該キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上の有機溶媒分散液に、樹脂をブレンドする工程。
【0050】
まず、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上の有機溶媒分散液を提供する。かかる分散液の提供方法は特に限定されないが、WO2010/073758号パンフレットに記載される製造方法によると、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーは、通常、水性媒体、例えば水または酸を含む水溶液に懸濁された水性懸濁液として得られる。かかるキチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーの水性懸濁液を、例えば、遠沈管に入れ、遠心分離を行い、上澄み液をデカンテーションで除き、除いた量と同程度の量のエタノールを加え、遠心分離を行う。最終的に、水の濃度が0.1%以下となるまで同様の操作を繰り返し行う。次に、このエタノール分散状態になったキチンまたはキトサンナノファイバー分散液を用い、エタノール濃度が0.1%以下となるまで、有機溶媒を用いて上記と同じ操作を繰り返し行い、有機溶媒にキチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーが凝集することなく、均一に分散された分散液を得る。
【0051】
次いで、得られたキチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上の有機溶媒分散液に、樹脂をブレンドする。ブレンドの際、所望により上記顔料およびその他の添加剤を共にブレンドしてもよいし、各成分を別途ブレンドしてもよく、各成分のブレンドの順序は特に限定されない。
【0052】
ブレンドは、公知の方法、例えば、混合、混和、撹拌、超音波処理、分散、超臨界などの処理によって行うことができる。ブレンド対象の樹脂、上記顔料およびその他の添加剤は、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上の有機溶媒分散液と混合可能あるいは相溶性を有するものであればいずれのものであってもよい。各成分のブレンド割合、ブレンド温度、時間などの条件は、当業者が適宜選択できるものである。
【0053】
本発明の有機溶媒系塗料組成物の製造方法において、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーの好ましい製造方法、好ましい由来、および好ましい有機溶媒、樹脂、顔料は、上記した通りである。
【0054】
本発明はさらに、キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上を有機溶媒に分散して含む、塗料、コーティング材、接着剤、粘着材、シーリング材、樹脂系注入材、ポッティング材料、充填剤、パテ、漆喰材料、水ガラス、繊維製品、不織布、樹脂フィルム・シート材料、ゴム製品、化粧品、石鹸、およびプラスチック成形品からなる群から選択される材料へ添加するための添加剤組成物を提供する。
【0055】
キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーは結晶性が高いので、他のナノファイバーには見られない優れた物性を有している。そして、上述のごとく、甲殻類、特にエビやカニの甲羅や殻は大量に廃棄されており、これらから有用なキチンまたはキトサンナノファイバーを得ることは環境に優しい技術であるうえ、コスト的にも有利である。さらに、上述のごとく、キチンまたはキトサンナノファイバーは、優れた物性を備えているため、かかる優れた物性を樹脂や上記のような材料に付与することができる。
【0056】
以下に、実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。なお、特に断りの無い限り、実施例における%は重量/体積%である。
【実施例1】
【0057】
1.概要
キチンナノファイバーと塗料の混合性、及び、塗膜性能に対するキチンナノファイバーの効果を検討した。具体的には、以下に詳細に説明するように、酢酸水溶液に分散したキチンナノファイバーを用い、分散媒を水系からエタノールに置換した。次に、分散媒を、エタノールからメチルシクロヘキサンに徐々に置換し、最終的にほぼ完全にメチルシクロヘキサン(以下、単にMCHとも称する)に置換したキチンナノファイバーを得た。このMCH置換キチンナノファイバーを様々な種類の塗料に混合して機械的特性を評価した。焼付けタイプのメラミンアルキド樹脂系塗料に対して混合した結果、塗料の機械的特性が向上することが判った。
【0058】
2.方法
(1)キチンナノファイバーの酢酸水溶液分散液の調製
国際公開WO2010/073758号パンフレットに記載のようにして、キチンナノファイバーの水懸濁液を得た。具体的には、乾燥カニ殻(カナダ産、川井肥料より購入、100g)を5% KOH水溶液に加え、6時間還流し、カニ殻中のタンパク質を除去した。処理したカニ殻を濾過した後、中性になるまで水でよく洗浄した。カニ殻を7% HCl水溶液で室温下、2日間撹拌し、カニ殻中の灰分を除いた。再びカニ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。1.7%のNaClOの0.3M酢酸ソーダ緩衝溶液に処理カニ殻を加え、80℃、6時間撹拌し、カニ殻に含まれる色素分を除去した。再びカニ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。カニ殻を水に分散させ、分散液を家庭用ミキサーで砕いた後、酢酸を添加してpHを3に調製し、一晩撹拌した。酢酸処理されたカニ殻を石臼式摩砕機(スーパーマスコロイダー(MKCA 6−2))に供し、キチンナノファイバーに解繊させた。得られたキチンナノファイバーの酢酸水溶液分散液は、酢酸濃度約1%、キチンナノファイバー濃度約1%であった。
【0059】
(2)キチンナノファイバーの溶媒置換
酢酸水溶液に分散したキチンナノファイバー約200mlを250ml容量の遠沈管に入れ、3500rpm×20分の条件で遠心分離を行った。上澄み液をデカンテーションで除き、除いた量と同じ量のエタノールを加え、同条件で遠心分離を行った。最終的に、水の濃度が0.1%以下となるまで同様の操作を繰り返し行った。
次に、このエタノール分散状態になったキチンナノファイバー分散液を用い、エタノール濃度が0.1%以下となるまで上記と同じ操作を繰り返し行い、メチルシクロヘキサン置換キチンナノファイバーを得た。
【0060】
(3)塗料への混合
焼付けメラミンアルキド樹脂系塗料(日本ペイント株式会社製、オルガエコ (ホワイト)および同 (クリヤー))に、塗料:メチルシクロヘキサン置換キチンナノファイバー=8:2(重量比)の割合で混合しディスパーで十分に攪拌した。
【0061】
(4)塗装
未処理の焼付けメラミンアルキド樹脂系塗料と、MCH置換キチンナノファイバーを混合した塗料をそれぞれ専用シンナー(日本ペイント株式会社製 オルガセレクト520シンナー)で塗料:シンナー=100:30となるように混合し、膜厚が約30μmとなるようにエアースプレー塗装を行った後110℃で10分間乾燥した。板は磨き鋼板(89mm×110mm×1.3mm)を用いた。
【0062】
(5)膜厚測定
膜厚測定器(Kett製LZ−330C)にて製造業者の指示に従った方法にて測定した。
【0063】
(6)塗膜強度測定
以下の2項目について塗膜強度を測定した。
(i)JIS K5600−5−2(塗料一般試験法)に準拠した方法により、塗膜の機械的性質である耐カッピング性を評価した。
(ii)JIS K5600−5−4(塗料一般試験法)に準拠した方法により、塗膜の機械的性質である引っかき硬度(鉛筆法)を評価した。
【0064】
3.結果
キチンナノファイバーの溶媒置換の結果を表1に示す。
【表1】

【0065】
表1に示すように、分散媒の水からエタノールへの置換を行った結果、13回遠心分離を行うことにより、水分が約0.06%まで下がったエタノール分散キチンナノファイバーを得ることができた。次に、エタノール分散キチンナノファイバーから出発して分散媒のエタノールからメチルシクロヘキサンへの置換を行った結果、5回の遠心分離でエタノール含量が約0.07%まで下がったMCH(メチルシクロヘキサン)分散キチンナノファイバーを得ることができた。
【0066】
MCH置換キチンナノファイバーを混合した塗料と未処理の塗料の機械的性質を評価した結果を表2に示す。
【表2】

【0067】
表2に示すように、MCH(メチルシクロヘキサン)置換キチンナノファイバーと塗料の混合性は良好であり、異物や凝集物等が生じることがなく、均一な塗料液となった。
鉛筆硬度については、MCH置換キチンナノファイバーを混合することにより、未処理の焼付けメラミンアルキド樹脂系塗料のみと比較して、クリヤー、ホワイトともに向上し、耐カッピング性試験では、MCH(メチルシクロヘキサン)置換キチンナノファイバーを混合することにより、未処理の焼付けメラミンアルキド樹脂系塗料のみと比較して、鋼球押し込み深さが深くなり、塗膜の変形性や追従性が良くなった。
【実施例2】
【0068】
1.概要
キチンナノファイバーの種々の有機溶媒における分散性を検討した。具体的には、実施例1と同様の方法により、酢酸水溶液に分散したキチンナノファイバーを用い、分散媒を水系からエタノールを介して、イソプロパノール、酢酸エチルまたはメチルシクロヘキサンに置換した。このイソプロパノール、酢酸エチルまたはメチルシクロヘキサン置換キチンナノファイバーをSEM観察に供した。SEM観察の結果、イソプロパノール、酢酸エチル、メチルシクロヘキサンのいずれにおいても、キチンナノファイバーが良好に分散していることが判った。
【0069】
2.方法
(1)キチンナノファイバーの酢酸水溶液分散液の調製
実施例1と同様の方法により、酢酸濃度約1%、キチンナノファイバー濃度約1%のキチンナノファイバーの酢酸水溶液分散液を得た。
【0070】
(2)キチンナノファイバーの溶媒置換
酢酸水溶液に分散したキチンナノファイバー約200mlを250ml容量の遠沈管に入れ、3500rpm×20分の条件で遠心分離を行った。上澄み液をデカンテーションで除き、除いた量と同じ量のエタノールを加え、同条件で遠心分離を行った。最終的に、水の濃度が0.1%以下となるまで同様の操作を繰り返し行った。
次に、このエタノール分散状態になったキチンナノファイバー分散液を用い、エタノール濃度が0.1%以下となるまで上記と同じ操作を繰り返し行い、イソプロパノール、酢酸エチルまたはメチルシクロヘキサン置換キチンナノファイバーを得た。
【0071】
(3)SEM観察
イソプロパノール、酢酸エチルまたはメチルシクロヘキサン置換キチンナノファイバーをフィールドエミッション走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社、JSM-6701F)により観察した。また、検出器として下方二次電子検出器(LEI)を用いた。
【0072】
3.結果
SEM観察の結果を図1に示す。図1から明らかなように、イソプロパノール、酢酸エチルまたはメチルシクロヘキサンのいずれにおいても、キチンナノファイバーが良好に分散しており、繊維一本一本が凝集せずに、比較的独立した状態で観察された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明により、親水性を示すキチンまたはキトサンナノファイバーは、有機溶媒の極性の大小にかかわらず、良好に凝集せずに分散可能であった。このことにより、キチンまたはキトサンナノファイバーの有機溶媒系塗料への添加が可能となった。なかでも、疎水性有機溶媒置換キチンまたはキトサンナノファイバーは、例えばメラミンアルキッド樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂など、汎用塗料系への分散が可能であり、そのフィラー添加効果により、塗膜性能、特に塗膜の機械的強度の向上に寄与し得、様々な塗料の機械的特性を強化することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、有機溶媒、およびキチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上を含む有機溶媒系塗料組成物。
【請求項2】
キチンナノファイバーが、キチン含有生物由来の材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、
酸性試薬にて処理する工程に付し、次いで、
解繊工程
に付すことを特徴とする製造方法によって得られるものである請求項1に記載の有機溶媒系塗料組成物。
【請求項3】
キトサンナノファイバーが、キチン含有生物由来の材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程、および
少なくとも1回の脱アセチル化工程に付し、次いで、
解繊工程
に付すことを特徴とする製造方法によって得られるものである請求項1に記載の有機溶媒系塗料組成物。
【請求項4】
キチン含有生物が甲殻類である請求項2または3に記載の有機溶媒系塗料組成物。
【請求項5】
有機溶媒が水以外の極性有機溶媒および非極性有機溶媒から選択される請求項1〜4いずれかに記載の有機溶媒系塗料組成物。
【請求項6】
樹脂が、天然樹脂、多糖類、および合成樹脂からなる群から選択される請求項1〜5のいずれかに記載の有機溶媒系塗料組成物。
【請求項7】
天然樹脂が、ロジン、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、カゼイン、およびシェラックから選択され、多糖類が、セルロース、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、キチン、およびキトサンから選択され、合成樹脂が、ニトロセルロース、ナイロン、ゴム系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ケトン樹脂、ケイ素含有重合体、およびフッ素含有重合体から選択される、請求項6記載の有機溶媒系塗料組成物。
【請求項8】
さらに顔料を含む請求項1〜7いずれかに記載の有機溶媒系塗料組成物。
【請求項9】
キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上の有機溶媒分散液を提供する工程、および
該キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上の有機溶媒分散液に、樹脂をブレンドする工程、
を含む有機溶媒系塗料組成物の製造方法。
【請求項10】
キチンナノファイバーが、キチン含有生物由来の材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、
酸性試薬にて処理する工程に付し、次いで、
解繊工程
に付すことを特徴とする製造方法によって得られるものである請求項9に記載の有機溶媒系塗料組成物の製造方法。
【請求項11】
キトサンナノファイバーが、キチン含有生物由来の材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程、および
少なくとも1回の脱アセチル化工程に付し、次いで、
解繊工程
に付すことを特徴とする製造方法によって得られるものである請求項9に記載の有機溶媒系塗料組成物の製造方法。
【請求項12】
キチン含有生物が甲殻類である請求項10または11に記載の有機溶媒系塗料組成物の製造方法。
【請求項13】
有機溶媒が水以外の極性有機溶媒および非極性有機溶媒から選択される請求項9〜12いずれかに記載の有機溶媒系塗料組成物の製造方法。
【請求項14】
樹脂が、天然樹脂、多糖類、および合成樹脂からなる群から選択される請求項9〜13のいずれかに記載の有機溶媒系塗料組成物の製造方法。
【請求項15】
天然樹脂が、ロジン、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、カゼイン、およびシェラックから選択され、多糖類が、セルロース、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、キチン、およびキトサンから選択され、合成樹脂が、ニトロセルロース、ナイロン、ゴム系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ケトン樹脂、ケイ素含有重合体、およびフッ素含有重合体から選択される、請求項14記載の有機溶媒系塗料組成物の製造方法。
【請求項16】
さらに顔料をブレンドする工程を含む請求項9〜15のいずれかに記載の有機溶媒系塗料組成物の製造方法。
【請求項17】
キチンナノファイバーおよびキトサンナノファイバーから選択される一種以上を有機溶媒に分散して含む、塗料、コーティング材、接着剤、粘着材、シーリング材、樹脂系注入材、ポッティング材料、充填剤、パテ、漆喰材料、水ガラス、繊維製品、不織布、樹脂フィルム・シート材料、ゴム製品、化粧品、石鹸、およびプラスチック成形品からなる群から選択される材料へ添加するための添加剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−117019(P2012−117019A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270662(P2010−270662)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【出願人】(595004849)大村塗料株式会社 (5)
【Fターム(参考)】