説明

キッチンキャビネット用引き出し

【課題】キッチンキャビネット用引き出しに、まな板等の背の高い物品を安定にかつ取り出し容易に立てて収納することができ、しかも、立てて収納した背の高い物品が他の物品の収納の邪魔にならないようにする。
【解決手段】底板21と、底板21の左右両端部に立設された左右の側板22,23と、底板21の前後両端部に立設された前板24及び背板25とにより収納空間Sが画成され、キャビネット本体10に前後方向にスライド自在に支持されたキッチンキャビネット用引き出し20において、左右の側板22,23のうちの一方の側板22に近接して収納空間Sに前後方向に延びる仕切り板40を立設する。仕切り板40と一方の側板22との間に形成された前後方向に細長い側方分割空間S2にまな板等の背の高い物品をまとめてコンパクトに安定に立てて収納することが可能となる。他の分割空間S3には他の物品を区別して収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンキャビネット用引き出しに関し、台所用家具の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
キッチンキャビネットの本体に前後方向にスライド自在に支持されたキッチンキャビネット用引き出しは、一般に、底板と、該底板の左右両端部に立設された左右の側板と、前記底板の前後両端部に立設された前板及び背板とにより収納空間が画成された構造である。この収納空間に、まな板や杓子あるいはラップフィルムのロール等の1方向の寸法が長い背の高い台所用品を左右の側板や前板等に寄りかけて立てた状態で置くと、安定せず、引き出しの開閉時の振動等で滑って倒れる可能性がある。また、前記収納空間に、まな板等を初めから横に倒した状態で置くと、占有面積が広くなって他の物品が収納し難くなるばかりでなく、まな板等が他の物品に埋もれて取り出し難くなる。この取り出し難さの問題は引き出しの底が深いほど顕著となる。
【0003】
このような不具合に対処し得る技術として、例えば事務用机の引き出しに見られるように、引き出しの収納空間に左右の幅方向に延びる仕切り板を配設して、前記収納空間を引き出しのスライド方向に並ぶ複数の分割空間に区画し、まな板等の背の高い物品を他の物品と区別してまとめてコンパクトに所定の分割空間に収納することが考えられる。しかし、複数の分割空間を引き出しのスライド方向に並設すると、引き出しの奥のほうの分割空間に収納した物品が取り出し難くなったり、引き出しの手前のほうの分割空間に立てて収納したまな板等の背の高い物品がそれより奥にある物品の取り出しの邪魔になるという問題がある。
【0004】
なお、特許文献1には、ハンギングフォルダを支持するハンギングフレームが備えられたファイル引き出しにおいて、前後方向に延びる支持バーを架設することが開示されている。しかし、この支持バーはあくまでもハンギングフォルダを懸架するためのものであり、引き出しの収納空間を複数の分割空間に区画するためのものではない。したがって、支持バーの下方は収納空間が仕切られておらず、物品を区別して引き出しに収納することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−83374号公報(図1、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、キッチンキャビネット用引き出しにおける前記のような不具合に対処しようとするもので、まな板や杓子等の背の高い物品を安定にかつ取り出し容易に立てて収納することができ、しかも、立てて収納した背の高い物品が他の物品の収納の邪魔にならないキッチンキャビネット用引き出しの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明は、底板と、該底板の左右両端部に立設された左右の側板と、前記底板の前後両端部に立設された前板及び背板とにより収納空間が画成され、キャビネット本体に前後方向にスライド自在に支持されたキッチンキャビネット用引き出しであって、前記左右の側板のうちの一方の側板に近接して前記収納空間に前後方向に延びる仕切り板が立設されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキッチンキャビネット用引き出しにおいて、当該引き出しは、キッチンキャビネットのワークトップに設けられたシンクの下方に配設され、前記シンクの左右の側壁のうちの一方の側壁と該一方の側壁と対向するキッチンキャビネットの左右の側壁のうちの一方の側壁との間に所定幅の空間が設けられていると共に、この所定幅の空間の下方に、前記仕切り板と前記一方の側板との間に形成された空間が配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のキッチンキャビネット用引き出しにおいて、前記仕切り板は、該仕切り板の前端部及び後端部から前記一方の側板に向かって延びる前後の延設部と、該延設部にそれぞれ設けられた係合部とを有し、該係合部が前記一方の側板の上縁部に係合することにより前記仕切り板は前記一方の側板に着脱自在に支持されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のキッチンキャビネット用引き出しにおいて、前記仕切り板と前記一方の側板との間の空間内で物品を保持する物品保持部材が前記一方の側板に支持されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載のキッチンキャビネット用引き出しにおいて、前記仕切り板の上縁部よりも上方の位置で物品を保持する第2の物品保持部材が前記仕切り板に支持されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載のキッチンキャビネット用引き出しにおいて、前記仕切り板と当該引き出しの左右の側板のうちの他方の側板との間に左右に延びるバー部材が架設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
まず、請求項1に記載の発明によれば、底板、左側板、右側板、前板及び背板により収納空間が画成された前後方向にスライド自在なキッチンキャビネット用引き出しにおいて、前記収納空間の中に、前後方向に延びる仕切り板と、左右の側板のうちの一方の側板とで挟まれた前後方向に細長い分割空間が形成される。
【0015】
したがって、この分割空間に、まな板や杓子等の背の高い物品を他の物品と区別してまとめてコンパクトに収納することができる。しかも、この分割空間は前後方向に細長く左右の幅が狭いから、まな板等の背の高い物品を安定に立てて収納することが可能となる。また、この分割空間は引き出しの収納空間の中の左右の側方に寄せて形成されるから、この分割空間内で物品を引き出しの手前のほうに収納することができて、その取り出しが容易となると共に、たとえ背の高い物品をこの分割空間(以下「側方分割空間」という)に立てて収納しても、この側方分割空間以外の分割空間(以下「他の分割空間」という)への他の物品の収納の邪魔になることがない。
【0016】
次に、請求項2に記載の発明によれば、相対向するシンクの側壁とキャビネットの側壁との間に設けられた所定幅の空間(以下「シンク横空間」という)と、仕切り板と一方の側板との間に形成された側方分割空間とが上下に連続して一体化するから、この一体化した高さの高い空間にまな板等の背の高い物品を立てた状態で良好に収納することが可能となる。つまり、シンクの側方に設けられた所定幅のシンク横空間をデッドスペースとせずに有効利用できるという利点が得られる。
【0017】
次に、請求項3に記載の発明によれば、仕切り板は、係合部を介して側板ひいては引き出しに支持されるので、例えばこのような係合部を介さずに仕切り板をただ底板の上に載置したときに比べて仕切り板をしっかりと安定して立設することが可能となる。
【0018】
しかも、係合部を設けるための延設部が仕切り板の前後の端部に形成されているので、この延設部によって仕切り板と側板との間の側方分割空間が狭められることもない。
【0019】
また、前後方向に延びる仕切り板と、側板に向かって左右方向に延びる延設部とで構成される屈曲構造によって、仕切り板の剛性向上が図られる。
【0020】
次に、請求項4に記載の発明によれば、物品保持部材に物品を保持させることによって、仕切り板と側板との間の側方分割空間内に物品を安定、確実に収納することが可能となる。
【0021】
しかも、物品保持部材は、側板ひいては引き出しに支持されているから、物品もまた側方分割空間内でしっかりと安定して支持されることとなる。
【0022】
次に、請求項5に記載の発明によれば、第2の物品保持部材に物品を保持させることによって、仕切り板の上縁部を超えて高さの高い物品を引き出しの収納空間内に安定、確実に収納することができる。
【0023】
しかも、第2の物品保持部材は、仕切り板に支持されているから、物品は仕切り板の近傍、つまり側方分割空間の近傍に収納されることとなり、側方分割空間以外の他の分割空間への他の物品の収納の邪魔になることが確実に回避される。
【0024】
そして、請求項6に記載の発明によれば、仕切り板と他方の側板との間に架設された左右に延びるバー部材によって、仕切り板が他方の側板に連結されることとなり、仕切り板の剛性向上が図られる。
【0025】
その場合に、バー部材は、仕切り板と他方の側板との間に形成された他の分割空間内に存在し、仕切り板と一方の側板との間に形成された側方分割空間内には存在しないから、この側方分割空間への物品の収納の邪魔になることがない。
【0026】
ここで、バー部材は、仕切り板が引き出しに支持されている支持部から遠い位置で仕切り板を他方の側板に連結することが好ましい。例えば、請求項3に記載のように、仕切り板が前後の端部で引き出しに支持されているような場合は、バー部材は、仕切り板の前後方向の中央部で仕切り板を他方の側板に連結する。そして、バー部材を高い位置で架設すると、バー部材が他の分割空間への他の物品の収納の邪魔にならずに済み、さらに好ましい結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るシステムキッチンの斜視図である。
【図2】ワークトップの記載を省略したシンク用キャビネットの斜視図である。
【図3】仕切り板が立設されているキッチンキャビネット用引き出しの左側方の周辺を拡大して示す一部切り欠き部分正面図である。
【図4】連結板が装着されているキッチンキャビネット用引き出しの右側方の周辺を拡大して示す一部切り欠き部分正面図である。
【図5】幕板単体の斜視図である。
【図6】仕切り板単体の斜視図である。
【図7】(a)は連結板と対向する垂直面部を向けた仕切り板単体の側面図、(b)は仕切り板と対向する垂直面部を向けた連結板単体の側面図である。
【図8】物品保持部材の概略構成を示す斜視図であって、(a)はまな板用、(b)は杓子用、(c)はラップフィルムのロール用である。
【図9】まな板用物品保持部材及び杓子用物品保持部材を具備した図3に類似の一部切り欠き部分正面図である。
【図10】まな板用物品保持部材及びラップフィルムのロール用物品保持部材を具備した図3に類似の一部切り欠き部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係るキッチンキャビネット用引き出しを備えたシステムキッチンについて説明する。
【0029】
図1に示すように、このシステムキッチン1は、シンク用キャビネット2と調理台用キャビネット3と調理器具用キャビネット4とが左右方向に並設され、これらのキャビネット2〜4の上にワークトップ5が載置された構成である。ワークトップ5には、シンク用キャビネット2に対応してシンク5aが設けられ、調理器具用キャビネット4に対応して調理器具5bが備えられている。
【0030】
図2に示すように、キッチンキャビネットとしてのシンク用キャビネット2は、上面と前面とが開口する箱形状のキャビネット本体10と、このキャビネット本体10に前後方向にスライド自在に支持された上下2段のキッチンキャビネット用引き出し20とを備えている(図2には上段の引き出しのみ図示、図1には2段とも図示)。キッチンキャビネット用引き出し20は、ワークトップ5に備えられたシンク5aの下方に配設されている。
【0031】
キャビネット本体10は、左右の側壁11,12と、該側壁11,12間の後部に架設された背壁13と、前記側壁11,12間の下部に架設された底壁14とを有している。キッチンキャビネット用引き出し20は、底板21と、該底板21の左右両端部に立設された左右の側板22,23と、前記底板21の前後両端部に立設された前板24及び背板25とを有している。そして、これらの底板21、左側板22、右側板23、前板24及び背板25とにより引き出し20の収納空間Sが画成されている。
【0032】
ここで、図2において、引き出し20の前板24は引き出し20の内部が見えるように鎖線で示してある。また、本実施形態において、引き出し20の側板22,23は、1枚物ではなく、前後方向に延びて前板24と背板25との間に架設された側板本体22a,23aと、該側板本体22a,23aの上方で前後方向に延びて前板24と背板25との間に架設されたロッド部材22b,23bとでなっている。
【0033】
図3及び図4に示すように、前記側板本体22a,23aは、中空構造とされ、この側板本体22a,23aの内部に引き出し20を前後方向にスライド自在とするためのレール機構11a,12aが内蔵されている。なお、図3及び図4において、レール機構11a,12aに含まれるローラの記載は省略してある。また、前記ロッド部材22b,23bは、左右の側板22,23の上縁部を構成する。
【0034】
ワークトップ5に備えられたシンク5aは、キャビネット本体10の内部空間に上方から下方に向けて突出している。そして、シンク5aは、意図的にあるいは必要に迫られて、キャビネット本体10に対して、左右方向の中央部よりも右に偏って配置されている(図2参照)。その結果、図3に明示したように、シンク5aの左側壁5cと、該左側壁5cと対向するキャビネット本体10の左側壁11との間に、所定幅(左右方向の長さ)の空間、すなわちシンク横空間S1が設けられている。このシンク横空間S1は、左右の幅が狭く前後方向に延びる比較的容量の小さい空間であり、ともすればデッドスペースになりがちな空間である。
【0035】
キャビネット本体10の左右の側壁11,12間の上部前面には、上段の引き出し20をキャビネット本体10に押し込んだときに該引き出し20の前板24の上部後面と当接する左右に延びる戸当たり桟15が架設されている(図2参照)。また、シンク横空間S1の上部に、ワークトップ5の下面を支持する前後方向に延びる補強桟16が配設されている。
【0036】
そして、キャビネット本体10の左右の側壁11,12間の上部前面で、シンク5aの前方かつ戸当たり桟15の下方に、正面視でシンク5aを隠す幕板30が架設されている。
【0037】
この幕板30は、例えば鋼板のような金属製の板材を折曲加工することにより一体に形成されたものであり、図5にも示すように、シンク5aの前方で左右に延びる面状の垂直部31と、この垂直部31の左端部からシンク5aの左側壁5cに沿って後方に延びる垂直面状の後方延設部32と、この後方延設部32の後端上部からシンク横空間S1の上部を横断し、キャビネット本体10の左側壁11に向かって延びる水平面状の横方向延設部33とを有している。
【0038】
図5に明示したように、垂直部31の右端部に若干量後方に延びる取付部34が設けられ、この取付部34に形成された切り欠き34a,34aを介してこの幕板30がビスB,B(図4参照)によりキャビネット本体10の右側壁12に取り付けられている。また、横方向延設部33の左端部に若干量下方に延びる取付部35が設けられ、この取付部35に形成された丸穴35a,35a(図5には1つのみ図示)を介してこの幕板30がビスB,B(図3参照)によりキャビネット本体10の左側壁11に取り付けられている。
【0039】
さらに、垂直部31の上縁部に若干量前方に延びる結合部36が設けられ、この結合部36に形成された長穴36a…36aを介してこの幕板30がビスB…B(図3及び図4参照)により戸当たり桟15の下面に結合されている。また、横方向延設部33に形成された丸穴33a…33aを介してこの幕板30がビスB…B(図3参照)により補強桟16の下面に結合されている。
【0040】
さらに、垂直部31の下縁部に若干量後方に延びる補強部37が設けられ、垂直部31の剛性維持が図られている。また、後方延設部32の後縁部に若干量右方に延びる補強部38が設けられ、後方延設部32の剛性維持が図られている。
【0041】
この幕板30においては、横方向延設部33は、垂直部31ないし戸当たり桟15の下縁部よりも高い位置にある。その結果、この幕板30は、シンク横空間S1に対する背の高い物品(例えばまな板X1等)の出し入れの邪魔になることがない。加えて、垂直部31と後方延設部32と横方向延設部33とで構成される屈曲構造により、幕板30の剛性が良好に維持される。
【0042】
次に、本発明の特徴部分である仕切り板40について説明する。
【0043】
図2及び図3に明示したように、キッチンキャビネット用引き出し(上段の引き出し)20の収納空間Sの左側方に、前後方向に延びる仕切り板40が立設されている。この仕切り板40は、例えば鋼板のような金属製の板材を折曲加工することにより一体に形成されたものであり、図6及び図7(a)にも示すように、仕切り板本体を構成する前後方向に延びる垂直面部41と、この垂直面部41の前後の端部から引き出し20の左側板22に向かって延びる前後の延設部42,42と、この前後の延設部42,42の左端部から垂直面部41と平行に後方又は前方に延びる前後の第2の延設部43,43と、この前後の第2の延設部43,43の上縁部に左外方に向けて湾曲形成された係合部43a,43aとを有している。
【0044】
そして、前記係合部43a,43aが引き出し20の左側板22の上縁部を構成するロッド部材22bに上方から係合することにより、この仕切り板40が前記左側板22に着脱自在に支持されている。この状態において、垂直面部41が左側板22に近接し、垂直面部41と左側板22とが相対向している。そして、これらの垂直面部41と左側板22との間に、前後方向に細長い分割空間、すなわち側方分割空間S2が形成されている。
【0045】
その場合に、図3から明らかなように、仕切り板40は前記シンク横空間S1の下方に配置されており、したがって、前記側方分割空間S2もまた前記シンク横空間S1の下方に配置されている。その結果、シンク横空間S1と側方分割空間S2とが上下に連続して一体化した高さの高い空間が引き出し20の左側部の上方に生成している。
【0046】
なお、図3に明示したように、垂直面部41の下縁部に若干量右方に延びる台座部44が設けられ、この台座部44が引き出し20の底板21に着座することにより、この仕切り板40が安定して底板21に立設されている。
【0047】
一方、垂直面部41の上縁部に若干量左方に延びる補強部45,45が設けられ、垂直面部41の剛性維持が図られている。また、垂直面部41の前後の端部に若干量左方に延びる補強部42a,42aが前記延設部42,42と一体に設けられ、これによっても垂直面部41の剛性維持が図られている。
【0048】
次に、図2及び図4に明示したように、キッチンキャビネット用引き出し(上段の引き出し)20の右側板23に、前後方向に延びる連結板50が装着されている。この連結板50は、例えば鋼板のような金属製の板材を折曲加工することにより一体に形成されたものであり、図7(b)にも示すように、連結板本体を構成する前後方向に延びる垂直面部51と、この垂直面部51の上縁部に右外方に向けて湾曲形成された係合部53aとを有している。
【0049】
そして、前記係合部53aが引き出し20の右側板23の上縁部を構成するロッド部材23bに上方から係合することにより、この連結板50が前記右側板23に着脱自在に装着されている。この状態において、前記仕切り板40の垂直面部41と、この連結板50の垂直面部51とが引き出し20の収納空間Sの中で相対向し、これらの垂直面部41,51間に、前記側方分割空間S2以外の分割空間、すなわち他の分割空間S3が形成されている。
【0050】
その場合に、図4から明らかなように、連結板50の垂直面部51の下縁部が右の側板本体23aの上縁部に当接して、この連結板50の装着の安定化が図られている。
【0051】
次に、図7(a),(b)に示したように、相対向する前記仕切り板40の垂直面部41及び前記連結板50の垂直面部51に、高さ位置及び前後位置の相異なる多数の孔(図例では長円形状)46…46,56…56が形成されている。これらの孔46…46,56…56は、仕切り板40及び連結板50が引き出し20に具備されたときに、対応する孔46,56同士が同じ高さ位置及び前後位置になるように形成されている。
【0052】
そして、そのような対応する仕切り板40の孔46と連結板50の孔56との間に、左右に延びるバー部材60が架設されている(図2参照)。バー部材60は、図3及び図4に示したように、長尺な本体61と、この本体61の両端部に設けられた突起部62,62とを有し、この突起部62,62が前記孔46,56に嵌合することにより、バー部材60が仕切り板40と右側板23との間に連結板50を介して架設されている。本実施形態では、図7(a),(b)にバー部材本体61を鎖線で図示したように、バー部材60は、仕切り板40及び連結板50の前後方向の中央部かつ上部の孔46,56間に架設されている。
【0053】
なお、バー部材60を仕切り板40及び連結板50に架設するには、仕切り板40及び連結板50を引き出し20の左右外方に撓ませばよい。あるいは、突起部62,62又は突起部62,62を含むバー部材本体61の端部をバー部材60の長さ方向に伸縮自在に構成してもよい。
【0054】
また、図7(a)に示したように、前記仕切り板40の垂直面部41には、高さ位置及び前後位置の相異なる別の孔(図例では円形状)47…47が形成されているが、これは物品保持部材80,90を仕切り板40に取り付けるためのものであって、後に詳しく説明する。
【0055】
以上のように、本実施形態では、底板21、左側板22、右側板23、前板24及び背板25により収納空間Sが画成された前後方向にスライド自在なキッチンキャビネット用引き出し20において、前記収納空間Sの中に、前後方向に延びる仕切り板40と左側板22とで挟まれた前後方向に細長い側方分割空間S2が形成されている。
【0056】
したがって、この側方分割空間S2に、図3に鎖線で例示したように、まな板X1等の背の高い物品をまとめてコンパクトに収納することができる。一方、スポンジたわし等の背の低い他の物品(図示せず)は、他の分割空間S3に区別して収納すればよい。
【0057】
その場合に、前記側方分割空間S2は、前後方向に細長く、左右の幅(幅は仕切り板40の延設部42で規定される)が狭いから、まな板X1等の背の高い物品を仕切り板40又は左側板22に寄りかけることにより、安定に立てて収納することが可能となる。
【0058】
しかも、前記側方分割空間S2は、引き出し20の収納空間Sの中の側方に寄せて形成されているから、この側方分割空間S2内で物品を引き出し20の手前のほうに収納することができて、その取り出しが容易となる。
【0059】
また、たとえまな板X1等の背の高い物品を前記側方分割空間S2に立てて収納しても、該側方分割空間S2は引き出し20の収納空間Sの中の側方に寄せて形成されているから、該側方分割空間S2以外の他の分割空間S3への他の物品の収納の邪魔になることもない。
【0060】
特に、相対向するシンク左側壁5cとキャビネット10の左側壁11との間のシンク横空間S1と、相対向する仕切り板40と引き出し20の左側板22との間の側方分割空間S2とが上下に連続して一体化しているから、この一体化した高さの高い空間に、まな板X1等の背の高い物品を立てた状態で良好に収納することが可能となる。つまり、シンク5aの側方のシンク横空間S1をデッドスペースとせずに有効利用することが可能となる。
【0061】
また、仕切り板40を係合部43aを介して側板22ひいては引き出し20に支持しているので、この仕切り板40をしっかりと安定して立設することができる。
【0062】
しかも、係合部43aを設けるための延設部42を仕切り板40の前後の端部に形成したから、この延設部42が仕切り板40と側板22との間の側方分割空間S2を狭めることもない。
【0063】
また、前後方向に延びる垂直面部41と、側板22に向かって延びる延設部42とで屈曲構造が構成され、この屈曲構造により仕切り板40の剛性が向上することとなる。
【0064】
そして、左側方の仕切り板40と右側板23との間に架設された左右に延びるバー部材60によって、仕切り板40が連結板50を介して右側板23に連結されることとなり、これによっても仕切り板40の剛性向上が図られる。
【0065】
その場合に、バー部材60は、仕切り板40が引き出し20に支持されている前後の支持部(係合部43a,43a)から遠い位置(前後方向の中央部:仕切り板40の剛性が低下する部分)で仕切り板40を右側板23に連結しているから、仕切り板40の剛性向上の観点から、より好ましい結果が得られる。
【0066】
また、バー部材60は、仕切り板40と右側板23との間の他の分割空間S3内に存在し、仕切り板40と左側板22との間の側方分割空間S2内には存在しないから、バー部材60が側方分割空間S2への物品の収納の邪魔になることがない。
【0067】
さらに、バー部材60は、高い位置(上部の孔46,56)で架設されているから、バー部材60が他の分割空間S3への他の物品(例えばスポンジたわし等の背の低い物品)の収納の邪魔になることも抑制される。
【0068】
加えて、仕切り板40、連結板50及びバー部材60は、引き出し20に対して着脱自在であるから、引き出し20の基本構造を変更することなく、仕切り板40、連結板50及びバー部材60を引き出し20に装着するかしないかだけで、2つの分割空間S2,S3を有する引き出しと、1つの収納空間Sのみ有する引き出しとに自在に変更することができる。
【0069】
また、図7(a),(b)から明らかなように、仕切り板40及び連結板50は左右対称に形成されている。したがって、本実施形態では引き出し20の左側方に仕切り板40、右側方に連結板50を配設したが、逆に引き出し20の右側方に仕切り板40、左側方に連結板50を配設することも簡単にできる。
【0070】
また、本実施形態では、シンク5aをキャビネット本体10に対して右に偏って配置し、シンク横空間S1をキャビネット本体10の左側方に設けたが、逆にシンク5aをキャビネット本体10に対して左に偏って配置し、シンク横空間S1をキャビネット本体10の右側方に設けてもよい。
【0071】
次に、物品保持部材70,80,90について説明する。
【0072】
図8(a),(b),(c)にそれぞれ示す、まな板X1(図9参照)用の物品保持部材70、杓子X2(図9参照)用の物品保持部材80、及びラップフィルムのロールX3(図10参照)用の物品保持部材90は、例えば鋼線のような金属製の線材を折曲加工及び接合することにより一体に形成されたものである。
【0073】
まな板用物品保持部材70は、図9にも示すように、まな板X1を間に挟みかつ下から支えるように連続形成された本体部71と、この本体部71を引き出し20の側板22又は23のロッド部材22b又は23bに支持するために本体部71に接合された湾曲形状の係合部72,72と、本体部71に接合されたブラケット73と、このブラケット73に回動自在に支持された脚部74とを有している。
【0074】
杓子用物品保持部材80は、図9にも示すように、上下に長い門形に成形された本体部81と、この本体部81の上端部に並設され、杓子X2の紐を係止するために谷折りされた複数の係止部82…82と、前記本体部81を仕切り板40の垂直面部41に支持するために本体部81の下端部に結合された合成樹脂等でなる取付部83,83と、この取付部83,83に一体形成された柔軟性に富む突起部84…84とを有している。
【0075】
ラップフィルムのロール用物品保持部材90は、図10にも示すように、上下に延びる1対の本体部91,91と、この本体部91,91の上端部に連続形成され、ラップフィルムのロールX3を囲うように水平に環状形成された環状部92と、前記本体部91,91を仕切り板40の垂直面部41に支持するために本体部91,91の下端部に結合された合成樹脂等でなる取付部93,93と、この取付部93,93に一体形成された柔軟性に富む突起部94…94とを有している。
【0076】
そして、図9に示したように、まな板用物品保持部材70は、前記係合部72,72を引き出し20の側板22の上縁部を構成するロッド部材22bに上方から係合することにより、この物品保持部材70を側板22に着脱自在に支持する。これにより、このまな板用物品保持部材70は、仕切り板40と引き出し20の側板22との間の側方分割空間S2内で、本体部71を介して、まな板X1を安定、確実に保持し、収納することができる。
【0077】
その場合に、このまな板用物品保持部材70は、側板22ひいては引き出し20に支持されているから、まな板X1もまた側方分割空間S2内でしっかりと安定して支持された状態で、引き出し20に収納されることとなる。
【0078】
なお、まな板X1が乾いていないときのために、図9に示したように、本体部71の下方にトレー75を置くことが好ましい。
【0079】
また、まな板X1が乾いていないときは、保持部材70を引き出し20の外に出し、脚部74を開いて保持部材70及びまな板X1を立てて放置し、まな板X1が乾いてから脚部74を閉じてそのまま保持部材70を引き出し20の中に装着すればよい。
【0080】
ただし、次に引き出し20を開けてまな板X1を取り出そうとするときに、本体部71の上端部を一緒につかんでまな板X1の姿勢を崩さないように、本体部71の上端部はあまり上方まで延びていないほうが好ましい。
【0081】
一方、同じく図9に示したように、杓子用物品保持部材80は、前記取付部83,83の突起部84…84を仕切り板40の垂直面部41に形成された多数の孔47…47(図7(a)参照)のうちの所定の孔47…47に圧入することにより、この物品保持部材80を仕切り板40に着脱自在に支持する。これにより、この杓子用物品保持部材80は、仕切り板40の上縁部を超えて高さの高い杓子X2を、係止部82…82を介して、引き出し20の収納空間S内に安定、確実に保持し、収納することができる。
【0082】
その場合に、この杓子用物品保持部材80は、仕切り板40に支持されているから、杓子X2は仕切り板40の近傍、つまり引き出し20の側方に寄せて配置された側方分割空間S2の近傍に収納されることとなり、他の分割空間S3への他の物品の収納の邪魔になることが確実に回避される。
【0083】
同様に、図10に示したように、ラップフィルムのロール用物品保持部材90は、前記取付部93,93の突起部94…94を仕切り板40の垂直面部41に形成された多数の孔47…47のうちの所定の孔47…47に圧入することにより、この物品保持部材90を仕切り板40に着脱自在に支持する。これにより、このラップフィルムのロール用物品保持部材90は、仕切り板40の上縁部を超えて高さの高いラップフィルムのロールX3を、環状部92を介して、引き出し20の収納空間S内に安定、確実に保持し、収納することができる。
【0084】
その場合に、このラップフィルムのロール用物品保持部材90は、仕切り板40に支持されているから、ラップフィルムのロールX3は仕切り板40の近傍、つまり引き出し20の側方に寄せて配置された側方分割空間S2の近傍に収納されることとなり、他の分割空間S3への他の物品の収納の邪魔になることが確実に回避される。
【0085】
なお、図9及び図10では、物品X2,X3を側方分割空間S2の外で保持するように保持部材80,90を構成したが、物品X2,X3を側方分割空間S2の中で保持するように保持部材80,90を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明は、まな板や杓子等の背の高い物品を安定にかつ取り出し容易に立てて収納することができ、しかも、立てて収納した背の高い物品が他の物品の収納の邪魔にならないキッチンキャビネット用引き出しを提供するものであるから、台所用家具の技術分野において広範な産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0087】
2 キッチンキャビネット
5 ワークトップ
5a シンク
5c シンクの左側壁
10 キャビネット本体
11 キッチンキャビネットの左側壁
20 キッチンキャビネット用引き出し
21 底板
22 左側板
22b 左側板の上縁部(ロッド部材)
23 右側板
23b 右側板の上縁部(ロッド部材)
40 仕切り板
41 仕切り板本体(垂直面部)
42 仕切り板の延設部
43 仕切り板の第2の延設部
43a 仕切り板の係合部
50 連結板
60 バー部材
70 物品保持部材
80,90 第2の物品保持部材
S 収納空間
S1 シンク横空間
S2 側方分割空間
S3 他の分割空間
X1 物品(まな板)
X2 物品(杓子)
X3 物品(ラップフィルムのロール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、該底板の左右両端部に立設された左右の側板と、前記底板の前後両端部に立設された前板及び背板とにより収納空間が画成され、キャビネット本体に前後方向にスライド自在に支持されたキッチンキャビネット用引き出しであって、
前記左右の側板のうちの一方の側板に近接して前記収納空間に前後方向に延びる仕切り板が立設されていることを特徴とするキッチンキャビネット用引き出し。
【請求項2】
請求項1に記載のキッチンキャビネット用引き出しにおいて、
当該引き出しは、キッチンキャビネットのワークトップに設けられたシンクの下方に配設され、
前記シンクの左右の側壁のうちの一方の側壁と該一方の側壁と対向するキッチンキャビネットの左右の側壁のうちの一方の側壁との間に所定幅の空間が設けられていると共に、
この所定幅の空間の下方に、前記仕切り板と前記一方の側板との間に形成された空間が配置されていることを特徴とするキッチンキャビネット用引き出し。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキッチンキャビネット用引き出しにおいて、
前記仕切り板は、該仕切り板の前端部及び後端部から前記一方の側板に向かって延びる前後の延設部と、該延設部にそれぞれ設けられた係合部とを有し、該係合部が前記一方の側板の上縁部に係合することにより前記仕切り板は前記一方の側板に着脱自在に支持されていることを特徴とするキッチンキャビネット用引き出し。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のキッチンキャビネット用引き出しにおいて、
前記仕切り板と前記一方の側板との間の空間内で物品を保持する物品保持部材が前記一方の側板に支持されていることを特徴とするキッチンキャビネット用引き出し。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のキッチンキャビネット用引き出しにおいて、
前記仕切り板の上縁部よりも上方の位置で物品を保持する第2の物品保持部材が前記仕切り板に支持されていることを特徴とするキッチンキャビネット用引き出し。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のキッチンキャビネット用引き出しにおいて、
前記仕切り板と当該引き出しの左右の側板のうちの他方の側板との間に左右に延びるバー部材が架設されていることを特徴とするキッチンキャビネット用引き出し。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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