キトサンアジュンバントおよび髄膜炎菌抗原を用いる粘膜ワクチン
【課題】本発明は、(a)N.meningitidisのC血清型に由来する莢膜糖類抗原、および(b)キトサンアジュバントを含有する免疫原性組成物を提供する。
【解決手段】この組成物は、好ましくは(c)1つ以上のさらなる抗原および/または(d)1つ以上のさらなるアジュバントを含有する。この組成物は、鼻腔内送達を含む粘膜送達に特に適する。本発明はまた、N.meningitidisのA、C、W135およびYの血清型の少なくとも2種に由来する莢膜糖類を含有する、粘膜送達のための免疫原性組成物も提供する。本発明の組成物中の莢膜糖類は、キャリアタンパク質と結合するか、および/またはオリゴ糖であることが、好ましい。結合したオリゴ糖抗原が、特に好ましい。
【解決手段】この組成物は、好ましくは(c)1つ以上のさらなる抗原および/または(d)1つ以上のさらなるアジュバントを含有する。この組成物は、鼻腔内送達を含む粘膜送達に特に適する。本発明はまた、N.meningitidisのA、C、W135およびYの血清型の少なくとも2種に由来する莢膜糖類を含有する、粘膜送達のための免疫原性組成物も提供する。本発明の組成物中の莢膜糖類は、キャリアタンパク質と結合するか、および/またはオリゴ糖であることが、好ましい。結合したオリゴ糖抗原が、特に好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に記載されたすべての文献は、その全体が参考として援用される。
【0002】
本発明は、ワクチンの分野、特に、髄膜炎菌性の感染症および疾患に対するワクチンの分野におけるものである。
【背景技術】
【0003】
Neisseria meningitidisは、細菌性髄膜炎を引き起こすグラム陰性のヒトの病原体である(例えば引用文献1の第28章参照)。Neisseria meningitidisは、N.gonorrhoeaeと近縁関係にあるが、髄膜炎菌(meningococcus)と明らかに異なる1つの特徴は、すべての病原性の髄膜炎菌(meningococci)内に存在する多糖類の莢膜が存在することである。
【0004】
生物体の莢膜多糖類に基づき、N.meningitidisの12の血清型が同定されている(A、B、C、H、I、K、L、29E、W135、X、YおよびZ)。A群は、サハラ以南のアフリカにおける流行性疾患の最も一般的な原因である。血清型BおよびCは、先進国における大部分の症例の原因であり、残りの症例は、血清型W135およびYによって引き起こされる。
【0005】
分類に使用されるのと同様、莢膜多糖類は、ワクチン接種にも使用されてきている。血清型A、C、YおよびW135に由来する莢膜多糖類の注射可能な4価のワクチンは、何年にもわたって知られており[2、3]、ヒトへの使用が認可されている。これは青年および成人において有効ではあるが、弱い免疫応答、未時間期間の保護を誘導し、乳児においては使用され得ない[例えば、4]。このワクチンにおける多糖類は結合体化されておらず、重量比が1:1:1:1で存在する[5]。MENCEVAX ACWYTMおよびMENOMUNETMは、両方とも、凍結乾燥された形態から一旦再構成された、50μgのそれぞれ精製された多糖類を含有する。
【0006】
結合体化された血清型Cのオリゴ糖は、ヒトへの使用が承認されている[例えばMenjugateTM;引用文献6]。しかし、血清型A、W135およびYに対する結合体化ワクチン、および、それらの製造における改善の必要が依然としてある。その必要性は、引用文献8に開示された、生成物、過程および使用によって扱われているが、特に、送達および処方に関連して、更なる修正および改善の機会が残されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)N.meningitidisの血清型Cに由来する莢膜糖類抗原、および(b)キトサンアジュバントを含む、免疫原性組成物を提供する。この組成物は、好ましくは、(c)1つ以上の更なる抗原、および/または、(d)1つ以上の更なるアジュバントを含む。
【0008】
本発明はまた、N.meningitidisの血清型A、C、Wl35およびYのうち少なくとも2つの血清型に由来する莢膜糖類を含む、粘膜送達のための免疫原性組成物も提供する。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)
(a)N.meningitidisのC血清型に由来する莢膜糖類抗原、および(b)キトサンアジュバントを含有する、免疫原性組成物。
(項目2)
N.meningitidisのA、C、W135およびYの血清型の少なくとも2種に由来する莢膜糖類を含有する、粘膜送達のための免疫原性組成物。
(項目3)
(c)1つ以上のさらなる抗原および/または(d)1つ以上のさらなるアジュバントを含有する、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記莢膜糖類が、キャリアタンパク質と結合するか、および/またはオリゴ糖である、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
(項目5)
前記莢膜糖類が、キャリアタンパク質に結合したオリゴ糖である、項目3に記載の組成物。
(項目6)
N.meningitidisのA、C、W135およびYの血清型の少なくとも2種、3種または4種に由来する莢膜糖類を含有する、項目1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
(項目7)
A+C、A+W135、A+Y,C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、C+W135+YまたはA+C+W135+Yの血清型に由来する糖類を含有する、項目6に記載の組成物。
(項目8)
鼻腔内投与のために適合し、そして/またはパッケージされた、項目1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目9)
経鼻スプレーまたは経鼻ドロップの形態である、項目8に記載の組成物。
(項目10)
キトサンアジュバントおよび/またはE.coli熱不安定性毒素の無毒化変異体を含有する、項目1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
(項目11)
前記キトサンが、三アルキル化キトサンである、項目11に記載の組成物。
(項目12)
前記キトサンが、三メチルキトサンである、項目12に記載の組成物。
(項目13)
前記E.coli熱不安定性毒素の無毒化変異体が、残基63位におけるセリンからリジンへの置換を有する、項目10〜12のいずれか1項に記載の組成物。
(項目14)
前記組成物が、(1)髄膜炎菌性糖類、(2)Haemophilus influenzaeに対する免疫応答を誘導する抗原、および(3)Streptococcus pneumoniaeに対して免疫応答を誘導する抗原の3つ全ては含有しない、項目1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
(項目15)
前記組成物が、(1)髄膜炎菌性糖類、(2)Haemophilus influenzaeに対する免疫応答を誘導する抗原、および(3)Streptococcus pneumoniaeに対して免疫応答を誘導する抗原の3つ全て、およびキトサンのアルキル化誘導体を含有する、項目1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
(項目16)
(a)凍結乾燥形態の、N.meningitidisのA血清型に由来する莢膜糖類抗原、および(b)液体形態の、N.meningitidisのC、W135およびYの血清型の1種以上に由来する莢膜糖類抗原を含むキットであって、(a)および(b)が、混合された場合、粘膜投与に適するように処方される、キット。
(項目17)
項目1〜15のいずれか1項に従う組成物を、患者に投与する工程を包含する、患者において免疫応答を誘発する方法。
(項目18)
N.meningitidisのA、C、W135およびYの血清型の少なくとも2種に由来する莢膜糖類の、免疫応答を誘発するための動物への粘膜送達のための医薬の製造における使用であって、該莢膜糖類が、キャリアタンパク質と結合するか、および/またはオリゴ糖である、使用。
(項目19)
(1)N.meningitidisのA、C、W135およびYの血清型の少なくとも1種に由来する莢膜糖類抗原であって、該莢膜糖類が、キャリアタンパク質と結合するか、および/またはオリゴ糖である、莢膜糖類抗原、および(2)キトサンの、免疫応答を誘発するための動物への粘膜送達のための医薬の製造における使用。
(項目20)
前記医薬が、鼻腔内送達のための医薬である、項目18または項目19に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、オリゴ糖結合体の調製を図示する。
【図2】図2は、実施例からの血清IgGのデータを示す。
【図3】図3は、実施例からの血清BCAのデータを示す。
【図4】図4は、実施例からの脾臓増殖のデータを示す。
【図5】図5は、実施例からの血清IgGのデータを示す。
【図6】図6は、実施例からの血清BCAのデータを示す。
【図7】図7は、実施例からの脾臓増殖のデータを示す。
【図8】図8は、実施例からの血清IgGのデータを示す。
【図9】図9は、実施例からの血清BCAのデータを示す。
【図10】図10は、実施例からの脾臓増殖のデータを示す。
【図11】図11は、キトサンの繰り返し構造を示す。
【図12】図12は、キチンの繰り返し構造を示す。
【図13】図13は、トリメチルキトサンの繰り返し構造を示す。
【図14】図14Aは、TMCおよび/またはLT−K63を使用しての、IgGのELISAでの力価を示す。図14Bは、TMCおよび/またはLT−K63を使用しての、IgGの細菌での力価を示す。
【図15】図15Aは、同様の試験についての血清の中のIgA力価を示す。図15Bは、同様の試験についての鼻洗浄液の中のIgA力価を示す。
【図16】図16は、CRM197濃度(μg/ml)とともに変化する脾臓増殖アッセイの結果を示す。
【図17】図17は、MenC抗原とキトサンアジュバントの3回分の投与量の後に得られる血清のIgG力価を示す。
【図18】図18は、同様の試験についての鼻のIgA力価を示す。
【図19】図19は、同様の試験についての血清の細菌の抗体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の組成物における莢膜糖類は、キャリアタンパク質に結合体化され、および/または、オリゴ糖であることが好ましい。結合体化オリゴ糖抗原(図1)が、特に、好ましい。
【0011】
(髄膜炎菌の血清型Cに由来する莢膜糖類抗原)
N.meningitidisの血清型Cの莢膜糖類は、抗原として広範に使用されている。例えば、MenjugateTMの活性成分は、CRM197キャリアタンパク質に結合体化された、莢膜多糖類のオリゴ糖フラグメントである。
【0012】
本発明の組成物が、N.meningitidisの血清型Cに由来する莢膜糖類抗原を含む場合、莢膜多糖類のオリゴ糖フラグメントを使用すること、および/または、糖類抗原をキャリアタンパク質へ結合体化することが好ましい。特に好ましいMenC糖類抗原は、引用文献6および9に開示されている。
【0013】
オリゴ糖の生成および結合体化の更なる詳細は、以下に記載される。
【0014】
(糖類の混合物)
本発明の組成物は、N.meningitidisの血清型A、C、W135およびYのうち少なくとも2つ(すなわち2、3、または4)の血清型に由来する、莢膜糖類を含み得る。
【0015】
N.meningitidisの1つより多い血清型に由来する糖類の混合物は、例えば、血清型A+C、A+W135、A+Y、C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、C+W135+Y、A+C+W135+Yなどに由来する糖類を含む組成物などが好ましい。実際の免疫原性(例えばELISA力価)は減じられ得るが、個体の糖類抗原の予防効果が、結合することによって除去されないことが好ましい。
【0016】
好ましい組成物は、血清型CおよびYに由来する糖類を含む。その他の好ましい組成物は、血清型C、W135およびYに由来する糖類を含む。
【0017】
混合物が、血清型AおよびCの両方に由来する莢膜糖類を含む場合、MenA糖類:MenC糖類の比率(w/w)は、1よりを超え得る(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、またはそれよりも高い)。
【0018】
混合物が、血清型Y、ならびに、血清型CおよびW135のうちの1つまたは両方に由来する莢膜糖類を含む場合、MenY糖類:MenW135糖類の比率(w/w)は、1を超え得(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、またはそれよりも高い)、そして/または、MenY糖類:MenC糖類の比率(w/w)は、1未満であり得る(例えば、1:2、1:3、1:4、1:5、またはそれよりも低い)。
【0019】
血清型A:C:W135:Yに由来する糖類の好ましい比率(w/w)は、1:1:1:1、1:1:1:2、2:1:1:1、4:2:1:1、8:4:2:1、4:2:1:2、8:4:1:2、4:2:2:1、2:2:1:1、4:4:2:1、2:2:1:2、4:4:1:2および2:2:2:1である。
【0020】
(莢膜多糖類の精製)
髄膜炎菌性の莢膜多糖類は、代表的には、多糖類の沈降(例えば陽イオン洗剤を使用して)、エタノールによる分画、冷やしたフェノールによる抽出(タンパク質を除去するため)、および、超遠心分離法(LPSを除去するため)の各段階を含む過程によって調製される[例えば引用文献10]。
【0021】
しかし、より好ましい過程[8]は、多糖類の沈降の後に、低級アルコールを使用して、その沈降された多糖類を可溶性にすることを含む。沈降は、テトラブチルアンモニウムならびにセチルトリメチルアンモニウム塩(例えば臭化物塩)、または、ポリブレン(hexadimethrine bromide)ならびにミリスチルトリメチルアンモニウム塩などの陽イオン洗剤を使用して達成され得る。臭化セチルトリメチルアミン(「CTAB」)が、特に好ましい[11]。沈降された物質の可溶化は、メタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、2−メチル−プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、ジオールなどの低級アルコールを使用して達成され得るが、エタノールが、CTAB多糖類の複合体の可溶化に特に好適である。エタノールが、好ましくは沈降された多糖類に加えられ、最終的なエタノール濃度(エタノールおよび水の総含有量に基づく)が、50〜95%とされる。
【0022】
再可溶化後、これらの多糖類は、混入物を除去するために更に処理され得る。これは、微量の混入物さえも容認されない状況において特に重要である(例えばヒトのワクチンの生成)。これは、代表的に、例えば、活性炭を通して使用され得る閉塞濾過(depth
filtration)、サイズろ過、および/または限外ろ過などのろ過のうち1つ以上の工程を含む。
【0023】
混入物を除去するために一旦ろ過されると、その多糖類は、更なる処置および/または処理のために沈降され得る。これは、陽イオン交換によって(例えばカルシウムまたはナトリウムの塩を加えることによって)都合よく達成され得る。
【0024】
多糖類は、化学的に修飾され得る。例えば、修飾されて、1つ以上のヒドロキシル基をブロック基で置換し得る。これは、血清型Aにおいて特に有用である[12]。
【0025】
(オリゴ糖)
莢膜糖類は、一般的にオリゴ糖の形態である。これらは、精製された莢膜多糖類の(例えば、弱酸中の加水分解または加熱による)フラグメント化(断片化)によって都合よく形成され、通常はその後に、所望の大きさのフラグメントが精製される。
【0026】
多糖類のフラグメント化は、好ましくは、オリゴ糖における最終平均重合度(DP)を30未満とするために実行される(例えば、血清型Aにおいて10〜20、好ましくは約10;血清型W135およびYにおいて15〜25、好ましくは約15〜20;血清型Cにおいて12〜22;など)。DPは、イオン交換クロマトグラフィーまたは比色アッセイによって都合よく測定される[13]。
【0027】
加水分解が実行されると、加水分解産物は、一般的に、短いオリゴ糖を除去するために、大きさで分類される。これは、限外ろ過の後にイオン交換クロマトグラフィーを行なうなどの、多様な方法で達成され得る。重合度が約6以下のオリゴ糖が、好ましくは血清型Aのために除去され、約4未満のものが、好ましくは血清型W135およびYのために除去される。
【0028】
(共有結合による結合体化)
本発明の組成物における莢膜糖類は、通常はキャリアタンパク質に結合体化される。一般的に、結合体化は、胸膜糖類をT非依存性抗原からT依存性抗原に変換するので、糖類の免疫原性を強化し、従って、免疫記憶の初回刺激を可能にする。結合体化は、小児用ワクチンに特に有用であり[例えば引用文献14]、周知の技術である[例えば引用文献15〜23などに記載]。
【0029】
好ましいキャリアタンパク質は、ジフテリアまたは破傷風トキソイドなどの細菌毒素またはトキソイドである。CRM197ジフテリアトキソイド[24、25,26]が特に好ましい。その他の好適なキャリアタンパク質は、髄膜炎菌の外膜タンパク質[27]、合成ペプチド[28,29]、熱ショックタンパク質[30、31]、百日咳タンパク質[32,33]、サイトカイン[34]、リンフォカイン[34]、ホルモン[34]、成長因子[34]、多様な病原体に由来する抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[35]、インフルエンザ菌(H.influenzae)に由来するタンパク質D[36]、内毒素原性細菌(C.difficile)に由来する毒素AまたはB[37]などを含む。
【0030】
本発明の組成物内において、1つより多いキャリアタンパク質の使用が可能である。従って、異なるキャリアタンパク質は、異なる血清型に使用され得る。例えば、血清型A糖類は、CRM197に結合体化され得、一方で、血清型C糖類は、破傷風トキソイドに結合体化され得る。1つより多いキャリアタンパク質を特定の糖類抗原に使用することも可能である。例えば、血清型A糖類は、2つのグループに分けられ得、その中うち一方は、CRM197に結合体化され、他方は、破傷風トキソイドに共役され得る。しかし、一般的に、すべての糖類に同じキャリアタンパク質を使用することが好ましい。
【0031】
1つのキャリアタンパク質が、1つより多い糖類抗原を運び得る[38]。例えば、1つのキャリアタンパク質が、血清型AおよびCに由来する糖類を結合体化していることがあり得る。
【0032】
糖類との結合体:タンパク質の比(w/w)が、0.5:1(すなわちタンパク質過剰)〜5:1(すなわち糖類過剰)であることが好ましく、1:1.25〜1:2.5の比率を有するものがより好ましい。
【0033】
結合体は、遊離するキャリアタンパク質と共に使用され得る[39]。
【0034】
任意の好適な結合体化反応が、必要に応じて任意の好適なリンカーと共に使用され得る。
【0035】
糖類は、代表的に、結合体化前に活性化または機能付与される。活性化は、例えば、CDAPなどのシアノ化(cyanylating)試薬を含み得る(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(dimethylamino pyridinium tetrafluoroborate[40,41など])。その他の好適な技術は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン(norborane)、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシニミド、S−NHS、EDC、TSTUを使用する。引用文献21の序文も参照のこと。
【0036】
リンカー基による結合が、例えば、引用文献42および43に記載される手順などの、任意の公知の手順を使用して生成され得る。結合の1つのタイプは、多糖類の還元性アミノ化、得られたアミノ基とアジピン酸リンカー基の一端との結合、および、タンパク質とそのアジピン酸リンカー基ともう一方の端への結合を含む[19,44,45]。その他のリンカーは、B−プロピオンアミド[46]、ニトロフェニル−エチルアミン[47]、ハロアシルハライド(haloacyl halides)[48]、グリコシド結合[49]、6−アミノカプロン酸[50]、ADH[51]、C4からC12までの部分[52]などを含む。リンカーを使用する代わりに、直接的な結合が使用され得る。タンパク質への直接結合は、例えば引用文献53および54に記載されるように、多糖類の酸化の後に、タンパク質との還元性アミノ化をすることを含み得る。
【0037】
アミノ基の糖類への導入(例えば末端=O基の−NH2への置換により)の後にアジピン酸ジエステル(adipic diester)(例えば、アジピン酸 N−ヒドロキシスクシニミドジエステル)を用いて誘導体化をすること、および、キャリアタンパク質との反応を含む過程が好ましい。
【0038】
結合体化後、遊離糖類および結合体化された糖類は分離され得る。これには、疎水性クロマトグラフィー、接線流れ方式(tangential)限外濾過、ダイアフィルトレーションなどを含め、多数の好適な方法がある[引用文献55および56なども参照]。
【0039】
本発明の組成物が結合体化されたオリゴ糖を含む場合、オリゴ糖の調製が結合体化に先立つことが好ましい。
【0040】
(本発明の組成物の調製)
本発明の組成物が、莢膜糖類のタイプを1つより多く含む場合、それらは好ましくは別々に調製され(任意のフラグメント化、結合体化などを含む)、混合されて本発明の組成物を与える。
【0041】
しかし、組成物が、血清型Aに由来する莢膜糖類を含む場合、加水分解の可能性を最小にするために、使用の直前まで、血清型Aの糖類が他の糖類と結合されないことが好ましい。これは、血清型Aの成分を凍結乾燥された形態で、そして、その他の血清型の成分を液体の形態で有し、そして、使用する準備のときに、凍結乾燥された成分を再構成するように液体の成分を使用することによって、都合よく達成され得る。
【0042】
従って、本発明の組成物は、以下を含むキットから調製され得る:(a)凍結乾燥形態のN.meningitidis血清型A由来のカプセル化糖;および(b)液体形態の一つ以上(例えば、一つ、二つ、三つ)のN.meningitidis血清型C、W135およびY由来のカプセル化糖。本発明はまた、N.meningitidis血清型A由来の凍結乾燥したカプセル化糖を、N.meningitidis血清型C、W135およびYの一つ以上由来のカプセル化糖と混合する工程(ここで、前記一つ以上の糖は、液体形態である)を含む、本発明の組成物を調製する方法を提供する。
【0043】
本発明はまた、N.meningitidis血清型C、W135およびY由来のカプセル化糖(ここで、糖は、液体形態である)を含む本発明の組成物を提供する。この組成物は、再構成のために凍結乾燥された血清型A糖抗原とともにパッケージされ得るか、またはそれ自体で、組成物として使用され得る(例えば、血清型Aに対する免疫化が所望されていない場合)。
【0044】
(本発明の組成物の提示)
本発明の組成物は、種々の方法で提示およびパッケージされ得る。
【0045】
組成物が注射用である場合、それらは、バイアルに入れて提示され得るかまたは予めシリンジにつめて提示され得る。シリンジは、針付きでまたは針なしで供給され得る。シリンジは、単回用量の組成物を含み、それに対して、バイアルは単回用量または複数回用量を含み得る。注射可能な組成物は通常、液状溶液または懸濁液である。あるいは、それらは注射前の液体ビヒクル中の溶液または懸濁液のための固体形態で提示され得る。
【0046】
本発明の組成物が、使用前に準備なしに調製される場合(例えば、血清型A糖が凍結乾燥形態で提示される場合)およびキットとして提示される場合、そのキットは、二つのバイアルを含み得るか、または注射の前にバイアルの内容物を再活性化するために使用されるシリンジの内容物とともに、一つの予めつめられたシリンジおよび一つのバイアルを含み得る。
【0047】
しかし、好ましい組成物は、粘膜送達のためのものである。種々の利用可能な粘膜送達のための選択肢の内、鼻腔内経路は、既に大量生産されている比較的単純なデバイスを使用して容易なアクセスを提供するので最も実用的である。従って、本発明の組成物は、好ましくは、例えば、スプレー式点鼻薬、点鼻薬、ジェルまたは粉末によって、鼻腔内投与に適応される、および/または鼻腔内投与のためにパッケージされる[例えば、参考文献57および58]。
【0048】
組成物の粘膜送達のための代替経路は、口、胃内、肺、腸、経皮、直腸、眼および膣による経路である。従って、本発明の組成物は、粘膜投与のために、適応される、および/またはパッケージされ得る[例えば、参考文献59、60および61を参照のこと]。例えば、組成物が経口投与のためのものである場合、それは、錠剤またはカプセル(必要に応じて腸溶コート)、液体、遺伝子組換え植物材料、ドロップ、吸入器、エアゾール、腸溶コーティング、坐剤、ペッサリーなどの形態であり得る[参考文献62および参考文献73の17章も参照のこと]。
【0049】
いかなる送達経路であっても、本発明の組成物は好ましくは、単回用量形態でパッケージされる。有効用量は、慣用的に確立され得る。注射のため、または鼻腔内使用のための組成物のヒトの代表的な用量は、0.1〜0.5mlの間の体積(例えば、一つの鼻腔当たり、100μlのスプレーを二回)を有する。
【0050】
各用量内で、個々の糖抗原の量は、一般に1〜50μg(糖の重量として計測した場合)の間であり、それぞれが約10μgであることが好ましい。
【0051】
本発明の組成物は、好ましくは滅菌したものである。それらは、好ましくは発熱物質なしである。それらは好ましくは、pH6とpH8との間、一般的にはpH7周辺に緩衝される。組成物が、アルミニウムの水酸化物塩を含む場合、ヒスチジン緩衝液を使用することが好ましい[63]。
【0052】
(アジュバント)
組成物は、一般に1つまたはそれ以上のアジュバントを含む。アジュバントは、それらが混合される前、および/または後に本発明の組成物を形成するために糖に添加し得るが、異なる糖を混合する前にアジュバントと糖抗原が結合していることが好ましい。
【0053】
しかしながら、必ずしもそれぞれの糖が混合前にアジュバント化されている必要はない。過剰のアジュバントは、さらなるアジュバント化されていない糖抗原を添加した場合、過剰なものは希釈され所望の最終濃度となるように1つの糖調製物に含まれ得る。本発明の組成物が凍結乾燥抗原(例えば、凍結乾燥血清型A構成成分)から調製された、ある特定の実施形態においては、アジュバントを凍結乾燥物質に含まないことが好ましい。
【0054】
粘膜送達に関して、粘膜アジュバントを使用することが好ましい。粘膜アジュバントは以下のものを含むが、これに限らない:(A)E.coli熱不安定性エントロトキシン(「LT」)、またはその解毒化された変異体[例えば、参考文献64の第5章];(B)コレラ毒素(「CT」)、またはその解毒化した変異体[例えば、参考文献64の第5章];(C)必要に応じて表面に陰電荷を有するように(例えば、SDSで)、または正電荷を有するように(例えば、CTABのような、陽イオン性界面活性剤で)処理された、生分解性および無毒性物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、(例えば、ポリ(ラクチド−コ−グリコリドなどのような)ポリカプロラクトンなど)から形成された、微粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、さらに好ましくは直径約200nm〜約30μm、最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの粒子);(D)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル[65];(E)オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[66]、またはオクトキシノールのような付加的な非イオン性界面活性剤を少なくとも1つ組み合わせた、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤またはポリオキシエチレンアルキルエステル界面活性剤[67];(F)キトサン[例えば、68];(G)免疫活性化オリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)およびサポニン[69];(H)リポソーム[参考文献73の第13章および第14章];(I)アミノアルキルグルコサミニドリン酸誘導体のような(例えば、RC−529)、モノホスホリル脂質A擬似物質[70];(J)ポリホスファゼン(PCPP);(K)エステル化されたヒアルロン酸ミクロスフェア[72]のような生体接着性[71]物質、またはポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカライドおよびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体からなる群から選択された粘膜付着性物質。他の粘膜アジュバントもまた使用し得る[例えば、参考文献73の第7章参照]。
【0055】
上記の粘膜アジュバントに加えて、本発明の組成物は、以下の群から選択された1つまたはそれ以上のさらなるアジュバントを含み得る:(A)例えば、水酸化アルミニウム(オキシ水酸化物を含む)、リン酸アルミニウム(ヒドロキシリン酸塩を含む)、硫酸アルミニウムなどのようなアルミニウム塩(ミョウバン)[参考文献73の第8章および第9章];(B)例えば、(a)マイクロフリューダイザを用いてサブミクロン粒子に処方した、5%スクアレン、0.5%Tween 80、0.5%Span 85(必要に応じて、MTP−PEを含む)を含むMF59TM[参考文献73の第10章;参考文献74,75]、(b)10%スクアレン、0.4%Tween 80、5%pluronic−blockedポリマー L121、およびサブマイクロ乳濁液にマイクロフリューダイズ化または大きい粒子サイズの乳濁液を生成するようにボルテックスしたthr−MDPを含む、SAF、および(c)2%スクアレン、0.2%Tween 80、およびモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM)からなる群由来の、細菌の細胞壁構成成分のうち1つまたはそれ以上を含むRibiTMアジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem,Hamilton,MT)のような、o/w乳濁液処方物(この処方物は、例えば、ムラミルペプチド[ムラミルペプチドは、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン MTP−PE)などを含む]のような他の特定の免疫活性化薬剤、または細菌の細胞壁構成成分を有する、または有さない);(C)単純な形態またはISCOMS(免疫活性化複合体;参考文献73の第23章)(このISCOMSは、例えば参考文献76のように、付加的な界面活性剤を欠いている可能性がある)のような単純な形態から生成された粒子形態のどちらかである、QS21またはStimulonTM(Cambridge Bioscience,Worcester,MA)のようなサポニンアジュバント[参考文献73の第22章];(D)フロイント完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA);(E)インターロイキン(例えば、IL−1,IL−2,IL−4,IL−5,IL−6,IL−7,IL−12,[77]など)、インターフェロン(例えばγインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)などのようなサイトカイン;(F)必要に応じて肺炎球菌糖と共に用いる場合には実質的にミョウバンを欠いた状態である(例えば、参考文献80)、モノホスホリル脂質A(MPL)または3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)(例えば、参考文献78および79);(G)例えば、QS21および/またはo/w乳濁液と、3dMPLの組み合わせ(例えば、参考文献81,82および83);(H)CpGモチーフを構成するオリゴヌクレオチド(すなわち、必要に応じて、シトシンが5−メチルシトシンに置き換わっているCGジヌクレオチドを少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチド);(I)免疫賦活剤および金属塩粒子(例えば、参考文献84);(J)サポニンおよびo/w乳濁液(例えば、参考文献85);(K)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール)(例えば、参考文献86);(L)二重鎖RNA;(M)組成物の有効性を促進する免疫活性化薬剤として作用する他の物質[例えば、参考文献73の第7章]。
【0056】
リン酸アルミニウムを使用する場合、1つまたはそれ以上の糖をアルミニウム塩に吸着させることが可能であるが、そうしないことが好ましく、(例えば、リン酸緩衝液の使用などにより)溶液中には遊離のリン酸イオンが含まれていることが好ましい。水酸化アルミニウムを用いる場合、塩に糖を吸着することが好ましい。血清型A由来の糖に対しては、アジュバントとしての水酸化アルミニウムの使用が好ましくあり得る。
【0057】
好ましい粘膜アジュバントは、キトサンおよび細菌毒素を無毒化した変異体(特に、LT)である。これらのアジュバントは、単独で使用し得るか、または同時投与がより少ない用量の毒素の使用を許容し、それによって安全性が向上するため、組み合わせることで有利に使用され得る。
【0058】
(キトサン)
キトサンは、アジュバントとしての使用が公知であり[例えば、参考文献87〜98]、特に粘膜(例えば、鼻腔内粘膜)に対する使用が公知である。キトサン(図11)は、エキソ骨格のポリマーキチン(図12)のN−脱アセチル化誘導体であるが、N−脱アセチル化はほとんど完了しない。脱アセチル化は、キチンとは異なりキトサンが希酢酸および希ギ酸に可溶であることを意味する。キトサンはまた、非ワクチン性の製薬分野における広範な適用性が見出されている[99]。
【0059】
キトサンのグルコサミンモノマーの繰り返しは、アミン基を含む。この基は、ポリマーの溶解性に影響するプロトン化のために、遊離のアミン基(−NH2)または陽イオン性のアミン基(−NH3+)として存在し得る。アミン基は化学的に活性であり、置換され得る。特に本発明に関して、アミン基は1つまたはそれ以上のアルキル基(「A」は例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなどであり、−NHA,−NH2A+,−NA1A2,−NHA1A2+,−NA1A2A3+)に置換し得る。好ましい誘導体はトリ−アルキル化体、および特に好ましい誘導体はトリメチル化体である(すなわち、トリメチルキトサン、または「TMC」−図13)。これらの誘導体は、広範なpH領域で、未修飾のキトサンよりも非常に高い親水性を有する。
【0060】
キトサンポリマー内の全てのアミンがこのようにして置換される必要はない。キトサン鎖の長さに沿った置換の程度は、1H−NMRにより決定され得、反応工程[100]の数および持続時間により制御され得る。モノマーの少なくとも10%(例えば、少なくとも、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上)が、置換アミンを有することが好ましい。
【0061】
キトサン内のモノマーの100%がアルキル化アミンを保有することが稀である理由は、主に2つある。第一に、置換反応は、通常100%有効ではない。第二に、キチンの脱アセチル化は通常100%有効でないため、100%のモノマー単位がアミン群を保有するキトサンを見出すことは稀である。従って、本発明において使用されるアルキル化キトサン誘導体は、いくつかのモノマー単位上にアミドおよび/または非アルキル化群を有し得、キトサンはいくつかのアミド群を有し得る。本発明で使用されるキトサンおよび誘導体は、好ましくは、少なくとも75%脱アセチル化される。
【0062】
キトサンには、例えば、約5,000〜10,000の分子量のオリゴ糖から高分子量(例えば、600,000〜1,000,000)のポリマーまで、種々の分子量のものがある。
【0063】
カチオン性キトサンまたは誘導体が使用される場合は、例えば、塩素イオンまたは乳酸塩などの塩の形態である。
【0064】
キトサンまたは誘導体は、例えば、溶液や粉末や粒子などの種々の物理的形状をとり得る。粒子形状(微粒子を含む)は、架橋されてもされなくてもよく、またスプレードライ[101、102]により適宜形成され得る粒子形状が、好ましい。その他の物理的形状としては、ゲル、ビーズ、フィルム、スポンジ、繊維、乳濁液などが挙げられる。
【0065】
用語「キトサン」は、本発明の組成物、プロセス、方法および使用に関して用いられる場合、キトサンのこれらの形状および誘導体の全てを含む。
【0066】
(無害化変異毒素)
ADPリボース単位のNAD+から標的タンパク質への移動を触媒する、ADPリボシル化細菌性外毒素は、広く知られている。例としては、ジフテリア毒素(Corynebacterium diphtheriae)、外毒素A(Pseudomonas aeruginosa)、コレラ毒素(CT;Vibrio cholera)、易熱性エンテロトキシン(LT;E.coli)および百日咳毒素(PT)などが挙げられる。さらなる例は、引用文献103および104に見られる。
【0067】
毒素は、代表的に、2つの機能的に明白なドメイン、ドメインAとドメインBとに分類される。Aサブユニットは、毒性酵素活性を担い、一方、Bサブユニットは、細胞結合を担う。サブユニットは、同一のポリペプチド鎖上のドメインまたは別のポリペプチド鎖上のドメインであり得る。サブユニットは、それ自体がオリゴマーになり得、例えば、CTのAサブユニットは、ジスルフィド結合により連結されているA1およびA2から成り、CTのBサブユニットは、ホモペンタマーである。代表的に、標的細胞との初期接触は、Bサブユニットにより仲介され、次いで、サブユニットAのみが細胞内に入る。
【0068】
毒素は、代表的に、免疫原性であるが、これらのワクチン内への封入はこれらの毒性により妨害される。免疫原性を失うことなく毒性を除去するために、毒素はゲルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドのような化学薬品により処理されてきた。より合理的なアプローチは、主要な活性部位残基の部位特異的変異誘発に依存し、免疫原性を保持したまま毒性酵素活性を除去する[例えば、引用文献105(CTおよびLT)、106(PT)、64など]。現在の無細胞百日咳ワクチンとしては、2つのアミノ酸置換(Arg9→LysおよびGlu129→Gly;「PT−9K/129G」[107])を有する百日咳毒素の形態が挙げられる。
【0069】
その免疫原の特性と同様に、毒素は、アジュバントとして使用されてきた。非経口アジュバント活性は、1972年に初めて観察され[108]、粘膜アジュバント活性は、1984年に初めて観察された[109]。驚くべきことに、毒素の無害化された形態がアジュバント活性を保持することは、1993年に見出された[110]。
【0070】
本発明の組成物としては、無害化ADPリボシル化毒素が挙げられる。毒素は、ジフテリア毒素やシュードモナス外毒素Aや百日咳毒素であり得るが、好ましくは、コレラ毒素(CT)、または、より好ましくは、E.coli易熱性エンテロトキシン(LT)である。使用され得るその他の毒素は、引用文献104(配列番号1〜7およびその変異体)において開示されている毒素である。
【0071】
免疫原性および/またはアジュバント活性の喪失を伴わないこれらの毒素の無害化は、任意の適切な手段により達成され得、変異誘発性を伴うものが好ましい。変異誘発性は、1つ以上の置換、欠失および/または挿入を含み得る。
【0072】
好ましい無害化変異体は、残基Arg−7(例えば、Lys置換)に変異を有するLT、残基Arg−7(例えば、Lys置換)に変異を有するCT、残基Arg−11(例えば、Lys置換)に変異を有するCT、Val−53に変異を有するLT、Val−53に変異を有するCT、残基Ser−61(例えば、Phe置換)に変異を有するCT、残基Ser−63(例えば、LysまたはTyr置換)に変異を有するLT[例えば、引用文献111−K63の第5章;引用文献112−Y63]、残基Ser−63(例えば、LysまたはTyr置換)に変異を有するCT、残基Ala−72(例えば、Arg置換)に変異を有するLT[113−R72]、Val−97に変異を有するLT、Val−97に変異を有するCT、Tyr−104に変異を有するLT、Tyr−104に変異を有するCT、残基Pro−106(例えば、Ser置換)に変異を有するLT、残基Pro−106(例えば、Ser置換)に変異を有するCT、残基Glu−112(例えば、Lys置換)に変異を有するLT、残基Glu−112(例えば、Lys置換)に変異を有するCT、残基Arg−192(例えば、Gly置換)に変異を有するLT、残基Arg−9(例えば、Lys置換)に変異を有するPT、残基Glu−129(例えば、Gly置換)に変異を有するPT、および引用文献105において開示される任意の変異である。
【0073】
これらの変異は、組み合わされ得る(例えば、PTにおけるArg−9−Lys + Glu−129−Gly、またはD53およびK63の両方の変異を有するLTなど)。
【0074】
残基63または72に変異を有するLTは、好ましい無害化毒素である。LT−K63毒素およびLT−R72毒素が、特に好ましい[114]。
【0075】
これらの残基の番号付けが、原型に基づいており、例えば、Ser−63は、実際に所定のLT改変体中の第63アミノ酸であり得ないが、アミノ酸配列のアラインメントがSer−63に対応する位置を明らかにすることが、理解される。
【0076】
(組成物のさらなる成分)
髄膜炎菌性糖類抗原に加えて、本発明の組成物としては、髄膜炎菌性タンパク質抗原が挙げられ得る。N.meningitidis[例えば、引用文献115〜120]またはOMV調製物[例えば、引用文献121〜124など]の血清型Bからのタンパク質を含むことが好ましい。
【0077】
非髄膜炎菌性抗原および非ナイセリア抗原、好ましくは、髄膜炎菌性成分に対する免疫応答を減らさない抗原も含まれ得る。例えば、引用文献125は、N.meningitidisの血清型Bおよび血清型Cからのオリゴ糖とHib糖類との組み合わせを開示する。肺炎球菌(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、B.pertussis、ジフテリア、破傷風、Helicobacter pylori、ポリオおよび/またはH.influenzae)からの抗原が、好ましい。特に好ましい非ナイセリア抗原としては、以下のものが挙げられる。
−CagA[126〜129]、VacA[130、131]、NAP[132、133、134]、HopX[例えば、135]、HopY[例えば、135]のようなHelicobacter pyloriからの抗原および/またはウレアーゼ−Streptococcus pneumoniaeからの糖類抗原[例えば、136、137、138]。
−不活化ウイルスのようなA型肝炎ウイルスからの抗原[例えば、139、140]。 −表面抗原および/またはコア抗原のようなB型肝炎ウイルスからの抗原[例えば、140、141]、および、それに伴う、好ましくはリン酸アルミニウム[142]上に吸着される表面抗原。
−Haemophilus influenzae Bからの糖類抗原[例えば、9]、好ましくは、リン酸アルミニウム上に吸着される糖類抗原、または吸収されない糖類抗原[143]。
−C型肝炎ウイルスからの抗原[例えば、144]。
−N.gonorrhoeaeからの抗原[例えば、115〜118]。
−Chlamydia pneumoniaeからの抗原[例えば、引用文献145〜146、147、148、149、150、151]。
−Chlamydia trachomatisからの抗原[例えば、152]。
−Porphyromonas gingivalisからの抗原[例えば、153]。−IPVのようなポリオ抗原[例えば、154、155]。
−凍結乾燥不活化ウイルス[例えば、157、RabAvertTM]のような狂犬病抗原[例えば、156]。
−はしか、おたふく風邪および/または風疹抗原[例えば、引用文献1の第12章、第13章、第17章]。
−赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質のようなインフルエンザ抗原[例えば、引用文献1の第21章]。
−Moraxella catarrhalisからの抗原[例えば、158]。
−Streptococcus agalactiaeからの抗原(B群レンサ球菌)[例えば、159、160]。
−Streptococcus pyogenesからの抗原(A群レンサ球菌)[例えば、160、161、162]。
−Staphylococcus aureusからの抗原[例えば、163]。
−RSウイルス(RSV [164、165])のようなパラミクソウイルスからの抗原および/またはパラインフルエンザウイルス(PIV3[166])。
−Bacillus anthracisからの抗原[例えば、167、168、169]。
−黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルスの4つの血清型、ダニ媒介性脳炎ウイルス、西ナイル熱ウイルスからのようなフラビウイルス科(フラビウイルス属)のウイルスからの抗原。
−古典的ブタ熱ウイルス、牛ウイルス性下痢症ウイルスおよび/またはボーダー病ウイルスからのようなペスチウイルス抗原。
−例えば、パルボウイルスB19からの、パルボウイルス抗原。
−破傷風トキソイド[例えば、引用文献1の第18章]
−B.pertussisからの、百日咳holotoxin(PT)および線維状赤血球凝集素(FHA)、必要に応じてペルタクチンならびに/または凝集原2および3と併用もされる[例えば、引用文献170および171]。
− 細胞性百日咳抗原。
【0078】
混合物は1つ以上のこれらのさらなる抗原を含有し得、必要な場合無害化され得る。(例えば、化学的および/または遺伝的手段による百日咳毒素の無害化)。
【0079】
ジフテリア抗原が混合物に含まれる場合、この混合物は、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が混合物に含まれる場合、この混合物は、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が混合物に含まれる場合、この混合物は、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含むことが好ましい。
【0080】
混合物内の抗原は、代表的に、各々、少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。概して、任意の所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分である。
【0081】
以下の3つの抗原全てを、本発明の組成物に同時に含まないことが好ましい;(1)髄膜炎菌性糖類、(2)Haemophilus influenzaeに対する免疫応答を誘導する抗原、(3)Streptococcus pneumoniaeに対する免疫応答を誘導する抗原。しかし、これら3つの抗原が同一の組成物に含まれる場合、その組成物がキトサンのアルキル化誘導体(例えば、トリメチルキトサン)をアジュバントとして含むことが好ましい。
【0082】
混合物内のタンパク質抗原を用いる代替として、その抗原をコードする核酸が使用され得る。このようにして、混合物のタンパク質成分は、タンパク質をコード化する核酸(好ましくは、例えば、プラスミドの形態のDNA)により置換され得る。同様に、本発明の組成物は、糖類抗原を模倣するタンパク質(例えばmimotope[172])、または抗イディオタイプ抗体を含有し得る。これらは、個々の糖成分を置換し得るか、またはそれらを補充し得る。一例として、ワクチンは、糖類自体の代わりに、MenC[173]莢膜多糖類またはMenA[174]莢膜多糖類を模倣するペプチドを、含有し得る。
【0083】
本発明の組成物は、低レベルで(例えば、<0.01%)界面活性剤(例えば、Tween80のようなTween)を含有し得る。本発明の組成物は、特に、それらが凍結乾燥される場合、または凍結乾燥された物質から再構成された物質を含む場合に、糖アルコール(例えば、マンニトール)またはトレハロースを、例えば、約15mg/mlで、含有し得る。
【0084】
(免疫原性)
本発明の組成物は、免疫原性である。好ましい免疫原性組成物は、ワクチンである。本発明に従うワクチンは、予防的(すなわち、感染を防ぐため)または治療的(すなわち、感染後の疾患を治療するため)のどちらかであり得るが、一般的には、予防的である。
【0085】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、髄膜炎菌性糖類に加えて、代表的に、「薬剤的に受容可能なキャリア」を含有し、このキャリアは、それ自体がこの組成物を受ける個体に有害な抗体の生成を誘導しない、任意のキャリアを含む。適切なキャリアは、代表的に、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子であり、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、トレハロース[175]、脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)、および不活化ウイルス粒子である。このようなキャリアは、当業者に周知である。ワクチンは、水、生理食塩水、グリセロールなどのような希釈液も含み得る。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などのような補助物質が存在し得る。薬剤的に受容可能な賦形剤についての徹底的な議論は、引用文献176において見出され得る。
【0086】
ワクチンとして用いられた免疫原性組成物は、免疫学的有効量の糖類抗原、および必要に応じて、他の任意の上述の組成物を含有する。「免疫学的有効量」は、単回投与または一連の投与の一部のどちらかで、個体への投与が治療または予防に有効である量を意味する。この量は、処置される個体の健康状態または身体状態、年齢、処置される個体の分類学的群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望の保護の程度、ワクチンの処方、医学的状態の処置医の評価、およびその他の関連要因により様々である。その量は、慣用的試験により決定され得る比較的広い範囲内であることが期待される。
【0087】
本発明の組成物の免疫原性は、それらを試験被験体(例えば、12〜16月齢の小児または動物モデル)に投与し、次いで、総ての高結合活性抗カプセルIgGの血清殺菌性抗体(SBA)およびELISA滴定(GMT)を含む標準パラメータを決定することにより、決定され得る。一般的に、これらの免疫応答は、組成物の投与から約4週間後に決定され、組成物の投与前に決定された値と比較される。少なくとも4倍または8倍のSBA上昇が好ましい。組成物が1用量より多く投与される場合、1回より多い投与の後で、決定が下され得る。
【0088】
(本発明の組成物の投与)
上述のとおり、本発明の組成物は、非経口および粘膜を含む種々の経路により投与され得る。非経口投与の好ましい経路は注射である。注射は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射または筋肉内注射であり得る。大腿への筋肉内投与が、好ましい。無針注射が、使用され得る。粘膜投与の好ましい経路は、鼻腔内である。経皮投与もまた、可能である(例えば、引用文献178を参照のこと)。
【0089】
投与は、単回投与計画または多回投与計画であり得る。第一投与計画の後に追加免疫投与計画が続き得る。初回免疫(priming)と追加免疫との間の適切なタイミングは、定期的に決定され得る。
【0090】
投与は、一般的に動物に対して行われ、特にヒト被験体が処置され得る。組成物は、小児およびティーンエイジャーのワクチン接種に特に有用である。
【0091】
(医学的な方法および使用)
本発明は、患者において免疫応答を高める方法を提供し、この方法は、本発明の組成物を患者に投与する工程を包含する。免疫応答は、好ましくは、髄膜炎菌性疾患に対して保護性であり、体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を含み得る。免疫応答および/または投与は、両方とも粘膜性であることが好ましい。
【0092】
患者は、好ましくは小児である。より好ましいクラスの患者は、成人女性であり、そして特に出産適齢期の女性もしくは妊婦である。本発明の組成物は、特に、母体経路を経由して小児を受動免疫させるために適する。
【0093】
この方法は、N.meningitidisに対して初回刺激を受けた患者において、ブースター応答を引き起こし得る。
【0094】
本発明はまた、N.meningitidisの血清型A、C、W135およびYの中の少なくとも2つに由来する莢膜糖類抗原(ここでこの莢膜糖類抗原は、キャリアタンパク質と結合されるか、および/またはオリゴ糖である)の、免疫応答を引き起こすための動物への鼻腔内送達のための薬物の製造における使用を、提供する。本発明はまた、(1)N.meningitidisの血清型A、C、W135およびYの中の少なくとも1つに由来する莢膜糖類抗原ならびに(2)キトサンの、免疫応答を引き起こすための動物への鼻腔内送達のための薬物の製造における、使用を提供し、ここでこの莢膜糖類抗原は、キャリアタンパク質と結合されるか、および/またはオリゴ糖である。
【0095】
これらの薬物は、好ましくはNeisseria(例えば、meningitis、septicaemia、gonorrhoeaなど)に起因する疾患の予防および/または処置のためである。これらは、好ましくは鼻腔内投与のためである。これらは、好ましくはN.meningitidisの血清型A、C、W135およびYの中の少なくとも2つ(すなわち、2つ、3つもしくは4つ)に由来する莢膜糖類抗原を含む。
【0096】
(定義)
用語「含む(comprising)」とは、「含む(including)」および「から成る(consisting)」を意味し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXから成り(consist)得るかまたはさらなる任意のもの、例えば、X+Yを含み(include)得る。
【0097】
数値xについての用語「約」とは、例えば、x±10%を意味する。
【0098】
単語「実質的に」は、「完全に」を排除しない、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくあり得る。必要に応じ、単語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【実施例】
【0099】
(本発明を実施するための形態)
(髄膜炎菌性血清型Cワクチン)
CRM197髄膜炎菌性Cオリゴ糖結合体[6、9]を、N−トリメチル塩化キトサン[179]アジュバントおよび/またはLT−K63アジュバントを用いて、1μg/用量で(糖類として測定)マウスに鼻腔内投与した。TMCは、8μg/用量として使用し、18.9%置換のエビ殻(94.5%アセチル化)からのキトサン(「Chitoclear」、Primex ehf、Iceland)から調製した。LT−K63は、1μg/用量または0.1μg/用量で使用した。無麻酔のメスBALB/cを、10μL容量(5μL/鼻孔)の処方物で、0日目、21日目、35日目に鼻腔内免疫した。血清サンプルは、各免疫の前後に採取した。鼻洗浄は、3回目の免疫後に10日間行った。MenCに特異的なIgGおよびIgA抗体価ならびにLTに特異的なIgGおよびIgA抗体価を、ELISA[180]により決定した。
【0100】
血清IgG応答を図14に示す:(A)ELISAおよび(B)殺菌性(対数比率)。図15は、(A)血清および(B)鼻洗浄におけるIgA力価を示す。図16は、脾臓増殖アッセイの結果を示す。
【0101】
データは、TMCが単独で免疫原性を上昇させること、また、TMCがLT−K63アジュバントと同時投与される場合に免疫原性を上昇させることを示す。1μgのLT−K63およびTMCを併用して投与されたマウスは、皮下免疫により得られるIgG力価に匹敵するIgG力価を達成した。さらに、混合型アジュバントは、両用量で、皮下免疫と同等または皮下免疫より良い血清殺菌性抗体応答を生じた。皮下免疫は、鼻洗浄においてMenC特異性IgA応答を発生させなかった。
【0102】
このように、TMCおよびLTK−63は、単独または併用のどちらかで、MenC糖抗原に対する有効な鼻腔内アジュバントである。有利な点として、TMCをLT−K63に追加することは、免疫原性の喪失なく、LT−K63の用量を90%低下させる。したがって、TMCにより、潜在残留毒性のある成分を、免疫原性の喪失なく、減少し得る。
【0103】
同様の実験を、非メチル化「Chitoclear」キトサンをアジュバントとして用いて行った。同じ結合体抗原を、LT−K63(1μg)および/またはキトサン(10μgまたは20μg)を用いて、同じ経路で、2.5μg糖類/用量でマウスに投与した。6群のマウスを使用した。
【0104】
【表1】
【0105】
図17〜19に示すように、LT−K63およびキトサンを用いた鼻腔内投与は、ミョウバンを用いた皮下投与と比較して、同等のIgGおよび血清殺菌性応答を与え、経鼻IgA応答を引き起こした。
【0106】
(混合ワクチン)
オリゴ糖結合体の混合ACWY組成物を、引用文献8に記載の物質を用いて調製した。組成物は、pH7.4でPBSを用いて緩衝化した。各結合体の濃度は以下のとおりであった。
【0107】
【表2】
【0108】
組成物を、マウスに10μL容量で(5μL/鼻孔)、アジュバントを用いずに、または以下の粘膜アジュバントのうちの1つを用いて、鼻腔内投与した。
【0109】
【表3】
【0110】
比較のために、同一の抗原組成物を、水酸化アルミニウムアジュバントを用いて、皮下投与した。
【0111】
コントロールとして、MenC結合体を単独で、併用組成物におけるMenCと同じアジュバントを用いて同じ経路で同等の濃度で投与した。
【0112】
このように、10群のマウスに以下の組成物を投与した。
【0113】
【表4】
【0114】
実験の第1セットにおいて、3回の鼻腔内投薬(ミョウバンでは皮下投与)後の血清IgG値は、GMT(MEU/ml)±標準偏差(図2)として、以下のように表される:
【0115】
【表5】
【0116】
同じ動物を、仔ウサギ補体の存在下で、血清殺菌性抗体について試験した。使用菌株は、A−F6124、C−C11、 W135−5554およびY−240539であった。
【0117】
結果は以下のとおりであった(図3):
【0118】
【表6】
【0119】
また、脾臓における細胞増殖を、同じ10群について試験した。MenACWY抗原を投与した奇数群の結果を図4Aに、MenCのみを投与した偶数群の結果を図4Bに示す。
【0120】
実験の第2セットにおいて、皮下投与の群1を除いて、マウスに20μLの以下ACWY組成物(2μg糖類の各抗原)を鼻腔内投与した。
【0121】
【表7】
【0122】
3回の免疫後の血清IgGを図5に、血清BCAを図6に、および細胞増殖を図7Aおよび7Bに示す。
【0123】
同様の実験の第3セットにおいて、皮下投与の群1を除いて、マウスに20μLの以下のACWY組成物(2μg糖類の各抗原)を鼻腔内投与した。
【0124】
【表8】
【0125】
3回の免疫後の血清IgGを図8に、血清BCAを図9に、および細胞増殖を図10Aおよび10Bに示す。
【0126】
このように、LTK63およびTMCの両方(特にその組み合わせ)は、髄膜炎菌性血清型A、C、W135およびYに対する混合ワクチンの鼻腔内送達に高い有効性を示すアジュバントである。
【0127】
本発明は、例示としてのみ記載されており、そして本発明の範囲および精神から逸脱することなく改変がなされ得ることが、理解される。
【0128】
【数1】
【0129】
【数2】
【0130】
【数3】
【0131】
【数4】
【0132】
【数5】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に記載されたすべての文献は、その全体が参考として援用される。
【0002】
本発明は、ワクチンの分野、特に、髄膜炎菌性の感染症および疾患に対するワクチンの分野におけるものである。
【背景技術】
【0003】
Neisseria meningitidisは、細菌性髄膜炎を引き起こすグラム陰性のヒトの病原体である(例えば引用文献1の第28章参照)。Neisseria meningitidisは、N.gonorrhoeaeと近縁関係にあるが、髄膜炎菌(meningococcus)と明らかに異なる1つの特徴は、すべての病原性の髄膜炎菌(meningococci)内に存在する多糖類の莢膜が存在することである。
【0004】
生物体の莢膜多糖類に基づき、N.meningitidisの12の血清型が同定されている(A、B、C、H、I、K、L、29E、W135、X、YおよびZ)。A群は、サハラ以南のアフリカにおける流行性疾患の最も一般的な原因である。血清型BおよびCは、先進国における大部分の症例の原因であり、残りの症例は、血清型W135およびYによって引き起こされる。
【0005】
分類に使用されるのと同様、莢膜多糖類は、ワクチン接種にも使用されてきている。血清型A、C、YおよびW135に由来する莢膜多糖類の注射可能な4価のワクチンは、何年にもわたって知られており[2、3]、ヒトへの使用が認可されている。これは青年および成人において有効ではあるが、弱い免疫応答、未時間期間の保護を誘導し、乳児においては使用され得ない[例えば、4]。このワクチンにおける多糖類は結合体化されておらず、重量比が1:1:1:1で存在する[5]。MENCEVAX ACWYTMおよびMENOMUNETMは、両方とも、凍結乾燥された形態から一旦再構成された、50μgのそれぞれ精製された多糖類を含有する。
【0006】
結合体化された血清型Cのオリゴ糖は、ヒトへの使用が承認されている[例えばMenjugateTM;引用文献6]。しかし、血清型A、W135およびYに対する結合体化ワクチン、および、それらの製造における改善の必要が依然としてある。その必要性は、引用文献8に開示された、生成物、過程および使用によって扱われているが、特に、送達および処方に関連して、更なる修正および改善の機会が残されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)N.meningitidisの血清型Cに由来する莢膜糖類抗原、および(b)キトサンアジュバントを含む、免疫原性組成物を提供する。この組成物は、好ましくは、(c)1つ以上の更なる抗原、および/または、(d)1つ以上の更なるアジュバントを含む。
【0008】
本発明はまた、N.meningitidisの血清型A、C、Wl35およびYのうち少なくとも2つの血清型に由来する莢膜糖類を含む、粘膜送達のための免疫原性組成物も提供する。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)
(a)N.meningitidisのC血清型に由来する莢膜糖類抗原、および(b)キトサンアジュバントを含有する、免疫原性組成物。
(項目2)
N.meningitidisのA、C、W135およびYの血清型の少なくとも2種に由来する莢膜糖類を含有する、粘膜送達のための免疫原性組成物。
(項目3)
(c)1つ以上のさらなる抗原および/または(d)1つ以上のさらなるアジュバントを含有する、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記莢膜糖類が、キャリアタンパク質と結合するか、および/またはオリゴ糖である、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
(項目5)
前記莢膜糖類が、キャリアタンパク質に結合したオリゴ糖である、項目3に記載の組成物。
(項目6)
N.meningitidisのA、C、W135およびYの血清型の少なくとも2種、3種または4種に由来する莢膜糖類を含有する、項目1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
(項目7)
A+C、A+W135、A+Y,C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、C+W135+YまたはA+C+W135+Yの血清型に由来する糖類を含有する、項目6に記載の組成物。
(項目8)
鼻腔内投与のために適合し、そして/またはパッケージされた、項目1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目9)
経鼻スプレーまたは経鼻ドロップの形態である、項目8に記載の組成物。
(項目10)
キトサンアジュバントおよび/またはE.coli熱不安定性毒素の無毒化変異体を含有する、項目1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
(項目11)
前記キトサンが、三アルキル化キトサンである、項目11に記載の組成物。
(項目12)
前記キトサンが、三メチルキトサンである、項目12に記載の組成物。
(項目13)
前記E.coli熱不安定性毒素の無毒化変異体が、残基63位におけるセリンからリジンへの置換を有する、項目10〜12のいずれか1項に記載の組成物。
(項目14)
前記組成物が、(1)髄膜炎菌性糖類、(2)Haemophilus influenzaeに対する免疫応答を誘導する抗原、および(3)Streptococcus pneumoniaeに対して免疫応答を誘導する抗原の3つ全ては含有しない、項目1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
(項目15)
前記組成物が、(1)髄膜炎菌性糖類、(2)Haemophilus influenzaeに対する免疫応答を誘導する抗原、および(3)Streptococcus pneumoniaeに対して免疫応答を誘導する抗原の3つ全て、およびキトサンのアルキル化誘導体を含有する、項目1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
(項目16)
(a)凍結乾燥形態の、N.meningitidisのA血清型に由来する莢膜糖類抗原、および(b)液体形態の、N.meningitidisのC、W135およびYの血清型の1種以上に由来する莢膜糖類抗原を含むキットであって、(a)および(b)が、混合された場合、粘膜投与に適するように処方される、キット。
(項目17)
項目1〜15のいずれか1項に従う組成物を、患者に投与する工程を包含する、患者において免疫応答を誘発する方法。
(項目18)
N.meningitidisのA、C、W135およびYの血清型の少なくとも2種に由来する莢膜糖類の、免疫応答を誘発するための動物への粘膜送達のための医薬の製造における使用であって、該莢膜糖類が、キャリアタンパク質と結合するか、および/またはオリゴ糖である、使用。
(項目19)
(1)N.meningitidisのA、C、W135およびYの血清型の少なくとも1種に由来する莢膜糖類抗原であって、該莢膜糖類が、キャリアタンパク質と結合するか、および/またはオリゴ糖である、莢膜糖類抗原、および(2)キトサンの、免疫応答を誘発するための動物への粘膜送達のための医薬の製造における使用。
(項目20)
前記医薬が、鼻腔内送達のための医薬である、項目18または項目19に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、オリゴ糖結合体の調製を図示する。
【図2】図2は、実施例からの血清IgGのデータを示す。
【図3】図3は、実施例からの血清BCAのデータを示す。
【図4】図4は、実施例からの脾臓増殖のデータを示す。
【図5】図5は、実施例からの血清IgGのデータを示す。
【図6】図6は、実施例からの血清BCAのデータを示す。
【図7】図7は、実施例からの脾臓増殖のデータを示す。
【図8】図8は、実施例からの血清IgGのデータを示す。
【図9】図9は、実施例からの血清BCAのデータを示す。
【図10】図10は、実施例からの脾臓増殖のデータを示す。
【図11】図11は、キトサンの繰り返し構造を示す。
【図12】図12は、キチンの繰り返し構造を示す。
【図13】図13は、トリメチルキトサンの繰り返し構造を示す。
【図14】図14Aは、TMCおよび/またはLT−K63を使用しての、IgGのELISAでの力価を示す。図14Bは、TMCおよび/またはLT−K63を使用しての、IgGの細菌での力価を示す。
【図15】図15Aは、同様の試験についての血清の中のIgA力価を示す。図15Bは、同様の試験についての鼻洗浄液の中のIgA力価を示す。
【図16】図16は、CRM197濃度(μg/ml)とともに変化する脾臓増殖アッセイの結果を示す。
【図17】図17は、MenC抗原とキトサンアジュバントの3回分の投与量の後に得られる血清のIgG力価を示す。
【図18】図18は、同様の試験についての鼻のIgA力価を示す。
【図19】図19は、同様の試験についての血清の細菌の抗体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の組成物における莢膜糖類は、キャリアタンパク質に結合体化され、および/または、オリゴ糖であることが好ましい。結合体化オリゴ糖抗原(図1)が、特に、好ましい。
【0011】
(髄膜炎菌の血清型Cに由来する莢膜糖類抗原)
N.meningitidisの血清型Cの莢膜糖類は、抗原として広範に使用されている。例えば、MenjugateTMの活性成分は、CRM197キャリアタンパク質に結合体化された、莢膜多糖類のオリゴ糖フラグメントである。
【0012】
本発明の組成物が、N.meningitidisの血清型Cに由来する莢膜糖類抗原を含む場合、莢膜多糖類のオリゴ糖フラグメントを使用すること、および/または、糖類抗原をキャリアタンパク質へ結合体化することが好ましい。特に好ましいMenC糖類抗原は、引用文献6および9に開示されている。
【0013】
オリゴ糖の生成および結合体化の更なる詳細は、以下に記載される。
【0014】
(糖類の混合物)
本発明の組成物は、N.meningitidisの血清型A、C、W135およびYのうち少なくとも2つ(すなわち2、3、または4)の血清型に由来する、莢膜糖類を含み得る。
【0015】
N.meningitidisの1つより多い血清型に由来する糖類の混合物は、例えば、血清型A+C、A+W135、A+Y、C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、C+W135+Y、A+C+W135+Yなどに由来する糖類を含む組成物などが好ましい。実際の免疫原性(例えばELISA力価)は減じられ得るが、個体の糖類抗原の予防効果が、結合することによって除去されないことが好ましい。
【0016】
好ましい組成物は、血清型CおよびYに由来する糖類を含む。その他の好ましい組成物は、血清型C、W135およびYに由来する糖類を含む。
【0017】
混合物が、血清型AおよびCの両方に由来する莢膜糖類を含む場合、MenA糖類:MenC糖類の比率(w/w)は、1よりを超え得る(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、またはそれよりも高い)。
【0018】
混合物が、血清型Y、ならびに、血清型CおよびW135のうちの1つまたは両方に由来する莢膜糖類を含む場合、MenY糖類:MenW135糖類の比率(w/w)は、1を超え得(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、またはそれよりも高い)、そして/または、MenY糖類:MenC糖類の比率(w/w)は、1未満であり得る(例えば、1:2、1:3、1:4、1:5、またはそれよりも低い)。
【0019】
血清型A:C:W135:Yに由来する糖類の好ましい比率(w/w)は、1:1:1:1、1:1:1:2、2:1:1:1、4:2:1:1、8:4:2:1、4:2:1:2、8:4:1:2、4:2:2:1、2:2:1:1、4:4:2:1、2:2:1:2、4:4:1:2および2:2:2:1である。
【0020】
(莢膜多糖類の精製)
髄膜炎菌性の莢膜多糖類は、代表的には、多糖類の沈降(例えば陽イオン洗剤を使用して)、エタノールによる分画、冷やしたフェノールによる抽出(タンパク質を除去するため)、および、超遠心分離法(LPSを除去するため)の各段階を含む過程によって調製される[例えば引用文献10]。
【0021】
しかし、より好ましい過程[8]は、多糖類の沈降の後に、低級アルコールを使用して、その沈降された多糖類を可溶性にすることを含む。沈降は、テトラブチルアンモニウムならびにセチルトリメチルアンモニウム塩(例えば臭化物塩)、または、ポリブレン(hexadimethrine bromide)ならびにミリスチルトリメチルアンモニウム塩などの陽イオン洗剤を使用して達成され得る。臭化セチルトリメチルアミン(「CTAB」)が、特に好ましい[11]。沈降された物質の可溶化は、メタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、2−メチル−プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、ジオールなどの低級アルコールを使用して達成され得るが、エタノールが、CTAB多糖類の複合体の可溶化に特に好適である。エタノールが、好ましくは沈降された多糖類に加えられ、最終的なエタノール濃度(エタノールおよび水の総含有量に基づく)が、50〜95%とされる。
【0022】
再可溶化後、これらの多糖類は、混入物を除去するために更に処理され得る。これは、微量の混入物さえも容認されない状況において特に重要である(例えばヒトのワクチンの生成)。これは、代表的に、例えば、活性炭を通して使用され得る閉塞濾過(depth
filtration)、サイズろ過、および/または限外ろ過などのろ過のうち1つ以上の工程を含む。
【0023】
混入物を除去するために一旦ろ過されると、その多糖類は、更なる処置および/または処理のために沈降され得る。これは、陽イオン交換によって(例えばカルシウムまたはナトリウムの塩を加えることによって)都合よく達成され得る。
【0024】
多糖類は、化学的に修飾され得る。例えば、修飾されて、1つ以上のヒドロキシル基をブロック基で置換し得る。これは、血清型Aにおいて特に有用である[12]。
【0025】
(オリゴ糖)
莢膜糖類は、一般的にオリゴ糖の形態である。これらは、精製された莢膜多糖類の(例えば、弱酸中の加水分解または加熱による)フラグメント化(断片化)によって都合よく形成され、通常はその後に、所望の大きさのフラグメントが精製される。
【0026】
多糖類のフラグメント化は、好ましくは、オリゴ糖における最終平均重合度(DP)を30未満とするために実行される(例えば、血清型Aにおいて10〜20、好ましくは約10;血清型W135およびYにおいて15〜25、好ましくは約15〜20;血清型Cにおいて12〜22;など)。DPは、イオン交換クロマトグラフィーまたは比色アッセイによって都合よく測定される[13]。
【0027】
加水分解が実行されると、加水分解産物は、一般的に、短いオリゴ糖を除去するために、大きさで分類される。これは、限外ろ過の後にイオン交換クロマトグラフィーを行なうなどの、多様な方法で達成され得る。重合度が約6以下のオリゴ糖が、好ましくは血清型Aのために除去され、約4未満のものが、好ましくは血清型W135およびYのために除去される。
【0028】
(共有結合による結合体化)
本発明の組成物における莢膜糖類は、通常はキャリアタンパク質に結合体化される。一般的に、結合体化は、胸膜糖類をT非依存性抗原からT依存性抗原に変換するので、糖類の免疫原性を強化し、従って、免疫記憶の初回刺激を可能にする。結合体化は、小児用ワクチンに特に有用であり[例えば引用文献14]、周知の技術である[例えば引用文献15〜23などに記載]。
【0029】
好ましいキャリアタンパク質は、ジフテリアまたは破傷風トキソイドなどの細菌毒素またはトキソイドである。CRM197ジフテリアトキソイド[24、25,26]が特に好ましい。その他の好適なキャリアタンパク質は、髄膜炎菌の外膜タンパク質[27]、合成ペプチド[28,29]、熱ショックタンパク質[30、31]、百日咳タンパク質[32,33]、サイトカイン[34]、リンフォカイン[34]、ホルモン[34]、成長因子[34]、多様な病原体に由来する抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[35]、インフルエンザ菌(H.influenzae)に由来するタンパク質D[36]、内毒素原性細菌(C.difficile)に由来する毒素AまたはB[37]などを含む。
【0030】
本発明の組成物内において、1つより多いキャリアタンパク質の使用が可能である。従って、異なるキャリアタンパク質は、異なる血清型に使用され得る。例えば、血清型A糖類は、CRM197に結合体化され得、一方で、血清型C糖類は、破傷風トキソイドに結合体化され得る。1つより多いキャリアタンパク質を特定の糖類抗原に使用することも可能である。例えば、血清型A糖類は、2つのグループに分けられ得、その中うち一方は、CRM197に結合体化され、他方は、破傷風トキソイドに共役され得る。しかし、一般的に、すべての糖類に同じキャリアタンパク質を使用することが好ましい。
【0031】
1つのキャリアタンパク質が、1つより多い糖類抗原を運び得る[38]。例えば、1つのキャリアタンパク質が、血清型AおよびCに由来する糖類を結合体化していることがあり得る。
【0032】
糖類との結合体:タンパク質の比(w/w)が、0.5:1(すなわちタンパク質過剰)〜5:1(すなわち糖類過剰)であることが好ましく、1:1.25〜1:2.5の比率を有するものがより好ましい。
【0033】
結合体は、遊離するキャリアタンパク質と共に使用され得る[39]。
【0034】
任意の好適な結合体化反応が、必要に応じて任意の好適なリンカーと共に使用され得る。
【0035】
糖類は、代表的に、結合体化前に活性化または機能付与される。活性化は、例えば、CDAPなどのシアノ化(cyanylating)試薬を含み得る(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(dimethylamino pyridinium tetrafluoroborate[40,41など])。その他の好適な技術は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン(norborane)、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシニミド、S−NHS、EDC、TSTUを使用する。引用文献21の序文も参照のこと。
【0036】
リンカー基による結合が、例えば、引用文献42および43に記載される手順などの、任意の公知の手順を使用して生成され得る。結合の1つのタイプは、多糖類の還元性アミノ化、得られたアミノ基とアジピン酸リンカー基の一端との結合、および、タンパク質とそのアジピン酸リンカー基ともう一方の端への結合を含む[19,44,45]。その他のリンカーは、B−プロピオンアミド[46]、ニトロフェニル−エチルアミン[47]、ハロアシルハライド(haloacyl halides)[48]、グリコシド結合[49]、6−アミノカプロン酸[50]、ADH[51]、C4からC12までの部分[52]などを含む。リンカーを使用する代わりに、直接的な結合が使用され得る。タンパク質への直接結合は、例えば引用文献53および54に記載されるように、多糖類の酸化の後に、タンパク質との還元性アミノ化をすることを含み得る。
【0037】
アミノ基の糖類への導入(例えば末端=O基の−NH2への置換により)の後にアジピン酸ジエステル(adipic diester)(例えば、アジピン酸 N−ヒドロキシスクシニミドジエステル)を用いて誘導体化をすること、および、キャリアタンパク質との反応を含む過程が好ましい。
【0038】
結合体化後、遊離糖類および結合体化された糖類は分離され得る。これには、疎水性クロマトグラフィー、接線流れ方式(tangential)限外濾過、ダイアフィルトレーションなどを含め、多数の好適な方法がある[引用文献55および56なども参照]。
【0039】
本発明の組成物が結合体化されたオリゴ糖を含む場合、オリゴ糖の調製が結合体化に先立つことが好ましい。
【0040】
(本発明の組成物の調製)
本発明の組成物が、莢膜糖類のタイプを1つより多く含む場合、それらは好ましくは別々に調製され(任意のフラグメント化、結合体化などを含む)、混合されて本発明の組成物を与える。
【0041】
しかし、組成物が、血清型Aに由来する莢膜糖類を含む場合、加水分解の可能性を最小にするために、使用の直前まで、血清型Aの糖類が他の糖類と結合されないことが好ましい。これは、血清型Aの成分を凍結乾燥された形態で、そして、その他の血清型の成分を液体の形態で有し、そして、使用する準備のときに、凍結乾燥された成分を再構成するように液体の成分を使用することによって、都合よく達成され得る。
【0042】
従って、本発明の組成物は、以下を含むキットから調製され得る:(a)凍結乾燥形態のN.meningitidis血清型A由来のカプセル化糖;および(b)液体形態の一つ以上(例えば、一つ、二つ、三つ)のN.meningitidis血清型C、W135およびY由来のカプセル化糖。本発明はまた、N.meningitidis血清型A由来の凍結乾燥したカプセル化糖を、N.meningitidis血清型C、W135およびYの一つ以上由来のカプセル化糖と混合する工程(ここで、前記一つ以上の糖は、液体形態である)を含む、本発明の組成物を調製する方法を提供する。
【0043】
本発明はまた、N.meningitidis血清型C、W135およびY由来のカプセル化糖(ここで、糖は、液体形態である)を含む本発明の組成物を提供する。この組成物は、再構成のために凍結乾燥された血清型A糖抗原とともにパッケージされ得るか、またはそれ自体で、組成物として使用され得る(例えば、血清型Aに対する免疫化が所望されていない場合)。
【0044】
(本発明の組成物の提示)
本発明の組成物は、種々の方法で提示およびパッケージされ得る。
【0045】
組成物が注射用である場合、それらは、バイアルに入れて提示され得るかまたは予めシリンジにつめて提示され得る。シリンジは、針付きでまたは針なしで供給され得る。シリンジは、単回用量の組成物を含み、それに対して、バイアルは単回用量または複数回用量を含み得る。注射可能な組成物は通常、液状溶液または懸濁液である。あるいは、それらは注射前の液体ビヒクル中の溶液または懸濁液のための固体形態で提示され得る。
【0046】
本発明の組成物が、使用前に準備なしに調製される場合(例えば、血清型A糖が凍結乾燥形態で提示される場合)およびキットとして提示される場合、そのキットは、二つのバイアルを含み得るか、または注射の前にバイアルの内容物を再活性化するために使用されるシリンジの内容物とともに、一つの予めつめられたシリンジおよび一つのバイアルを含み得る。
【0047】
しかし、好ましい組成物は、粘膜送達のためのものである。種々の利用可能な粘膜送達のための選択肢の内、鼻腔内経路は、既に大量生産されている比較的単純なデバイスを使用して容易なアクセスを提供するので最も実用的である。従って、本発明の組成物は、好ましくは、例えば、スプレー式点鼻薬、点鼻薬、ジェルまたは粉末によって、鼻腔内投与に適応される、および/または鼻腔内投与のためにパッケージされる[例えば、参考文献57および58]。
【0048】
組成物の粘膜送達のための代替経路は、口、胃内、肺、腸、経皮、直腸、眼および膣による経路である。従って、本発明の組成物は、粘膜投与のために、適応される、および/またはパッケージされ得る[例えば、参考文献59、60および61を参照のこと]。例えば、組成物が経口投与のためのものである場合、それは、錠剤またはカプセル(必要に応じて腸溶コート)、液体、遺伝子組換え植物材料、ドロップ、吸入器、エアゾール、腸溶コーティング、坐剤、ペッサリーなどの形態であり得る[参考文献62および参考文献73の17章も参照のこと]。
【0049】
いかなる送達経路であっても、本発明の組成物は好ましくは、単回用量形態でパッケージされる。有効用量は、慣用的に確立され得る。注射のため、または鼻腔内使用のための組成物のヒトの代表的な用量は、0.1〜0.5mlの間の体積(例えば、一つの鼻腔当たり、100μlのスプレーを二回)を有する。
【0050】
各用量内で、個々の糖抗原の量は、一般に1〜50μg(糖の重量として計測した場合)の間であり、それぞれが約10μgであることが好ましい。
【0051】
本発明の組成物は、好ましくは滅菌したものである。それらは、好ましくは発熱物質なしである。それらは好ましくは、pH6とpH8との間、一般的にはpH7周辺に緩衝される。組成物が、アルミニウムの水酸化物塩を含む場合、ヒスチジン緩衝液を使用することが好ましい[63]。
【0052】
(アジュバント)
組成物は、一般に1つまたはそれ以上のアジュバントを含む。アジュバントは、それらが混合される前、および/または後に本発明の組成物を形成するために糖に添加し得るが、異なる糖を混合する前にアジュバントと糖抗原が結合していることが好ましい。
【0053】
しかしながら、必ずしもそれぞれの糖が混合前にアジュバント化されている必要はない。過剰のアジュバントは、さらなるアジュバント化されていない糖抗原を添加した場合、過剰なものは希釈され所望の最終濃度となるように1つの糖調製物に含まれ得る。本発明の組成物が凍結乾燥抗原(例えば、凍結乾燥血清型A構成成分)から調製された、ある特定の実施形態においては、アジュバントを凍結乾燥物質に含まないことが好ましい。
【0054】
粘膜送達に関して、粘膜アジュバントを使用することが好ましい。粘膜アジュバントは以下のものを含むが、これに限らない:(A)E.coli熱不安定性エントロトキシン(「LT」)、またはその解毒化された変異体[例えば、参考文献64の第5章];(B)コレラ毒素(「CT」)、またはその解毒化した変異体[例えば、参考文献64の第5章];(C)必要に応じて表面に陰電荷を有するように(例えば、SDSで)、または正電荷を有するように(例えば、CTABのような、陽イオン性界面活性剤で)処理された、生分解性および無毒性物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、(例えば、ポリ(ラクチド−コ−グリコリドなどのような)ポリカプロラクトンなど)から形成された、微粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、さらに好ましくは直径約200nm〜約30μm、最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの粒子);(D)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル[65];(E)オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[66]、またはオクトキシノールのような付加的な非イオン性界面活性剤を少なくとも1つ組み合わせた、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤またはポリオキシエチレンアルキルエステル界面活性剤[67];(F)キトサン[例えば、68];(G)免疫活性化オリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)およびサポニン[69];(H)リポソーム[参考文献73の第13章および第14章];(I)アミノアルキルグルコサミニドリン酸誘導体のような(例えば、RC−529)、モノホスホリル脂質A擬似物質[70];(J)ポリホスファゼン(PCPP);(K)エステル化されたヒアルロン酸ミクロスフェア[72]のような生体接着性[71]物質、またはポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカライドおよびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体からなる群から選択された粘膜付着性物質。他の粘膜アジュバントもまた使用し得る[例えば、参考文献73の第7章参照]。
【0055】
上記の粘膜アジュバントに加えて、本発明の組成物は、以下の群から選択された1つまたはそれ以上のさらなるアジュバントを含み得る:(A)例えば、水酸化アルミニウム(オキシ水酸化物を含む)、リン酸アルミニウム(ヒドロキシリン酸塩を含む)、硫酸アルミニウムなどのようなアルミニウム塩(ミョウバン)[参考文献73の第8章および第9章];(B)例えば、(a)マイクロフリューダイザを用いてサブミクロン粒子に処方した、5%スクアレン、0.5%Tween 80、0.5%Span 85(必要に応じて、MTP−PEを含む)を含むMF59TM[参考文献73の第10章;参考文献74,75]、(b)10%スクアレン、0.4%Tween 80、5%pluronic−blockedポリマー L121、およびサブマイクロ乳濁液にマイクロフリューダイズ化または大きい粒子サイズの乳濁液を生成するようにボルテックスしたthr−MDPを含む、SAF、および(c)2%スクアレン、0.2%Tween 80、およびモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM)からなる群由来の、細菌の細胞壁構成成分のうち1つまたはそれ以上を含むRibiTMアジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem,Hamilton,MT)のような、o/w乳濁液処方物(この処方物は、例えば、ムラミルペプチド[ムラミルペプチドは、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン MTP−PE)などを含む]のような他の特定の免疫活性化薬剤、または細菌の細胞壁構成成分を有する、または有さない);(C)単純な形態またはISCOMS(免疫活性化複合体;参考文献73の第23章)(このISCOMSは、例えば参考文献76のように、付加的な界面活性剤を欠いている可能性がある)のような単純な形態から生成された粒子形態のどちらかである、QS21またはStimulonTM(Cambridge Bioscience,Worcester,MA)のようなサポニンアジュバント[参考文献73の第22章];(D)フロイント完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA);(E)インターロイキン(例えば、IL−1,IL−2,IL−4,IL−5,IL−6,IL−7,IL−12,[77]など)、インターフェロン(例えばγインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)などのようなサイトカイン;(F)必要に応じて肺炎球菌糖と共に用いる場合には実質的にミョウバンを欠いた状態である(例えば、参考文献80)、モノホスホリル脂質A(MPL)または3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)(例えば、参考文献78および79);(G)例えば、QS21および/またはo/w乳濁液と、3dMPLの組み合わせ(例えば、参考文献81,82および83);(H)CpGモチーフを構成するオリゴヌクレオチド(すなわち、必要に応じて、シトシンが5−メチルシトシンに置き換わっているCGジヌクレオチドを少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチド);(I)免疫賦活剤および金属塩粒子(例えば、参考文献84);(J)サポニンおよびo/w乳濁液(例えば、参考文献85);(K)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール)(例えば、参考文献86);(L)二重鎖RNA;(M)組成物の有効性を促進する免疫活性化薬剤として作用する他の物質[例えば、参考文献73の第7章]。
【0056】
リン酸アルミニウムを使用する場合、1つまたはそれ以上の糖をアルミニウム塩に吸着させることが可能であるが、そうしないことが好ましく、(例えば、リン酸緩衝液の使用などにより)溶液中には遊離のリン酸イオンが含まれていることが好ましい。水酸化アルミニウムを用いる場合、塩に糖を吸着することが好ましい。血清型A由来の糖に対しては、アジュバントとしての水酸化アルミニウムの使用が好ましくあり得る。
【0057】
好ましい粘膜アジュバントは、キトサンおよび細菌毒素を無毒化した変異体(特に、LT)である。これらのアジュバントは、単独で使用し得るか、または同時投与がより少ない用量の毒素の使用を許容し、それによって安全性が向上するため、組み合わせることで有利に使用され得る。
【0058】
(キトサン)
キトサンは、アジュバントとしての使用が公知であり[例えば、参考文献87〜98]、特に粘膜(例えば、鼻腔内粘膜)に対する使用が公知である。キトサン(図11)は、エキソ骨格のポリマーキチン(図12)のN−脱アセチル化誘導体であるが、N−脱アセチル化はほとんど完了しない。脱アセチル化は、キチンとは異なりキトサンが希酢酸および希ギ酸に可溶であることを意味する。キトサンはまた、非ワクチン性の製薬分野における広範な適用性が見出されている[99]。
【0059】
キトサンのグルコサミンモノマーの繰り返しは、アミン基を含む。この基は、ポリマーの溶解性に影響するプロトン化のために、遊離のアミン基(−NH2)または陽イオン性のアミン基(−NH3+)として存在し得る。アミン基は化学的に活性であり、置換され得る。特に本発明に関して、アミン基は1つまたはそれ以上のアルキル基(「A」は例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなどであり、−NHA,−NH2A+,−NA1A2,−NHA1A2+,−NA1A2A3+)に置換し得る。好ましい誘導体はトリ−アルキル化体、および特に好ましい誘導体はトリメチル化体である(すなわち、トリメチルキトサン、または「TMC」−図13)。これらの誘導体は、広範なpH領域で、未修飾のキトサンよりも非常に高い親水性を有する。
【0060】
キトサンポリマー内の全てのアミンがこのようにして置換される必要はない。キトサン鎖の長さに沿った置換の程度は、1H−NMRにより決定され得、反応工程[100]の数および持続時間により制御され得る。モノマーの少なくとも10%(例えば、少なくとも、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上)が、置換アミンを有することが好ましい。
【0061】
キトサン内のモノマーの100%がアルキル化アミンを保有することが稀である理由は、主に2つある。第一に、置換反応は、通常100%有効ではない。第二に、キチンの脱アセチル化は通常100%有効でないため、100%のモノマー単位がアミン群を保有するキトサンを見出すことは稀である。従って、本発明において使用されるアルキル化キトサン誘導体は、いくつかのモノマー単位上にアミドおよび/または非アルキル化群を有し得、キトサンはいくつかのアミド群を有し得る。本発明で使用されるキトサンおよび誘導体は、好ましくは、少なくとも75%脱アセチル化される。
【0062】
キトサンには、例えば、約5,000〜10,000の分子量のオリゴ糖から高分子量(例えば、600,000〜1,000,000)のポリマーまで、種々の分子量のものがある。
【0063】
カチオン性キトサンまたは誘導体が使用される場合は、例えば、塩素イオンまたは乳酸塩などの塩の形態である。
【0064】
キトサンまたは誘導体は、例えば、溶液や粉末や粒子などの種々の物理的形状をとり得る。粒子形状(微粒子を含む)は、架橋されてもされなくてもよく、またスプレードライ[101、102]により適宜形成され得る粒子形状が、好ましい。その他の物理的形状としては、ゲル、ビーズ、フィルム、スポンジ、繊維、乳濁液などが挙げられる。
【0065】
用語「キトサン」は、本発明の組成物、プロセス、方法および使用に関して用いられる場合、キトサンのこれらの形状および誘導体の全てを含む。
【0066】
(無害化変異毒素)
ADPリボース単位のNAD+から標的タンパク質への移動を触媒する、ADPリボシル化細菌性外毒素は、広く知られている。例としては、ジフテリア毒素(Corynebacterium diphtheriae)、外毒素A(Pseudomonas aeruginosa)、コレラ毒素(CT;Vibrio cholera)、易熱性エンテロトキシン(LT;E.coli)および百日咳毒素(PT)などが挙げられる。さらなる例は、引用文献103および104に見られる。
【0067】
毒素は、代表的に、2つの機能的に明白なドメイン、ドメインAとドメインBとに分類される。Aサブユニットは、毒性酵素活性を担い、一方、Bサブユニットは、細胞結合を担う。サブユニットは、同一のポリペプチド鎖上のドメインまたは別のポリペプチド鎖上のドメインであり得る。サブユニットは、それ自体がオリゴマーになり得、例えば、CTのAサブユニットは、ジスルフィド結合により連結されているA1およびA2から成り、CTのBサブユニットは、ホモペンタマーである。代表的に、標的細胞との初期接触は、Bサブユニットにより仲介され、次いで、サブユニットAのみが細胞内に入る。
【0068】
毒素は、代表的に、免疫原性であるが、これらのワクチン内への封入はこれらの毒性により妨害される。免疫原性を失うことなく毒性を除去するために、毒素はゲルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドのような化学薬品により処理されてきた。より合理的なアプローチは、主要な活性部位残基の部位特異的変異誘発に依存し、免疫原性を保持したまま毒性酵素活性を除去する[例えば、引用文献105(CTおよびLT)、106(PT)、64など]。現在の無細胞百日咳ワクチンとしては、2つのアミノ酸置換(Arg9→LysおよびGlu129→Gly;「PT−9K/129G」[107])を有する百日咳毒素の形態が挙げられる。
【0069】
その免疫原の特性と同様に、毒素は、アジュバントとして使用されてきた。非経口アジュバント活性は、1972年に初めて観察され[108]、粘膜アジュバント活性は、1984年に初めて観察された[109]。驚くべきことに、毒素の無害化された形態がアジュバント活性を保持することは、1993年に見出された[110]。
【0070】
本発明の組成物としては、無害化ADPリボシル化毒素が挙げられる。毒素は、ジフテリア毒素やシュードモナス外毒素Aや百日咳毒素であり得るが、好ましくは、コレラ毒素(CT)、または、より好ましくは、E.coli易熱性エンテロトキシン(LT)である。使用され得るその他の毒素は、引用文献104(配列番号1〜7およびその変異体)において開示されている毒素である。
【0071】
免疫原性および/またはアジュバント活性の喪失を伴わないこれらの毒素の無害化は、任意の適切な手段により達成され得、変異誘発性を伴うものが好ましい。変異誘発性は、1つ以上の置換、欠失および/または挿入を含み得る。
【0072】
好ましい無害化変異体は、残基Arg−7(例えば、Lys置換)に変異を有するLT、残基Arg−7(例えば、Lys置換)に変異を有するCT、残基Arg−11(例えば、Lys置換)に変異を有するCT、Val−53に変異を有するLT、Val−53に変異を有するCT、残基Ser−61(例えば、Phe置換)に変異を有するCT、残基Ser−63(例えば、LysまたはTyr置換)に変異を有するLT[例えば、引用文献111−K63の第5章;引用文献112−Y63]、残基Ser−63(例えば、LysまたはTyr置換)に変異を有するCT、残基Ala−72(例えば、Arg置換)に変異を有するLT[113−R72]、Val−97に変異を有するLT、Val−97に変異を有するCT、Tyr−104に変異を有するLT、Tyr−104に変異を有するCT、残基Pro−106(例えば、Ser置換)に変異を有するLT、残基Pro−106(例えば、Ser置換)に変異を有するCT、残基Glu−112(例えば、Lys置換)に変異を有するLT、残基Glu−112(例えば、Lys置換)に変異を有するCT、残基Arg−192(例えば、Gly置換)に変異を有するLT、残基Arg−9(例えば、Lys置換)に変異を有するPT、残基Glu−129(例えば、Gly置換)に変異を有するPT、および引用文献105において開示される任意の変異である。
【0073】
これらの変異は、組み合わされ得る(例えば、PTにおけるArg−9−Lys + Glu−129−Gly、またはD53およびK63の両方の変異を有するLTなど)。
【0074】
残基63または72に変異を有するLTは、好ましい無害化毒素である。LT−K63毒素およびLT−R72毒素が、特に好ましい[114]。
【0075】
これらの残基の番号付けが、原型に基づいており、例えば、Ser−63は、実際に所定のLT改変体中の第63アミノ酸であり得ないが、アミノ酸配列のアラインメントがSer−63に対応する位置を明らかにすることが、理解される。
【0076】
(組成物のさらなる成分)
髄膜炎菌性糖類抗原に加えて、本発明の組成物としては、髄膜炎菌性タンパク質抗原が挙げられ得る。N.meningitidis[例えば、引用文献115〜120]またはOMV調製物[例えば、引用文献121〜124など]の血清型Bからのタンパク質を含むことが好ましい。
【0077】
非髄膜炎菌性抗原および非ナイセリア抗原、好ましくは、髄膜炎菌性成分に対する免疫応答を減らさない抗原も含まれ得る。例えば、引用文献125は、N.meningitidisの血清型Bおよび血清型Cからのオリゴ糖とHib糖類との組み合わせを開示する。肺炎球菌(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、B.pertussis、ジフテリア、破傷風、Helicobacter pylori、ポリオおよび/またはH.influenzae)からの抗原が、好ましい。特に好ましい非ナイセリア抗原としては、以下のものが挙げられる。
−CagA[126〜129]、VacA[130、131]、NAP[132、133、134]、HopX[例えば、135]、HopY[例えば、135]のようなHelicobacter pyloriからの抗原および/またはウレアーゼ−Streptococcus pneumoniaeからの糖類抗原[例えば、136、137、138]。
−不活化ウイルスのようなA型肝炎ウイルスからの抗原[例えば、139、140]。 −表面抗原および/またはコア抗原のようなB型肝炎ウイルスからの抗原[例えば、140、141]、および、それに伴う、好ましくはリン酸アルミニウム[142]上に吸着される表面抗原。
−Haemophilus influenzae Bからの糖類抗原[例えば、9]、好ましくは、リン酸アルミニウム上に吸着される糖類抗原、または吸収されない糖類抗原[143]。
−C型肝炎ウイルスからの抗原[例えば、144]。
−N.gonorrhoeaeからの抗原[例えば、115〜118]。
−Chlamydia pneumoniaeからの抗原[例えば、引用文献145〜146、147、148、149、150、151]。
−Chlamydia trachomatisからの抗原[例えば、152]。
−Porphyromonas gingivalisからの抗原[例えば、153]。−IPVのようなポリオ抗原[例えば、154、155]。
−凍結乾燥不活化ウイルス[例えば、157、RabAvertTM]のような狂犬病抗原[例えば、156]。
−はしか、おたふく風邪および/または風疹抗原[例えば、引用文献1の第12章、第13章、第17章]。
−赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質のようなインフルエンザ抗原[例えば、引用文献1の第21章]。
−Moraxella catarrhalisからの抗原[例えば、158]。
−Streptococcus agalactiaeからの抗原(B群レンサ球菌)[例えば、159、160]。
−Streptococcus pyogenesからの抗原(A群レンサ球菌)[例えば、160、161、162]。
−Staphylococcus aureusからの抗原[例えば、163]。
−RSウイルス(RSV [164、165])のようなパラミクソウイルスからの抗原および/またはパラインフルエンザウイルス(PIV3[166])。
−Bacillus anthracisからの抗原[例えば、167、168、169]。
−黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルスの4つの血清型、ダニ媒介性脳炎ウイルス、西ナイル熱ウイルスからのようなフラビウイルス科(フラビウイルス属)のウイルスからの抗原。
−古典的ブタ熱ウイルス、牛ウイルス性下痢症ウイルスおよび/またはボーダー病ウイルスからのようなペスチウイルス抗原。
−例えば、パルボウイルスB19からの、パルボウイルス抗原。
−破傷風トキソイド[例えば、引用文献1の第18章]
−B.pertussisからの、百日咳holotoxin(PT)および線維状赤血球凝集素(FHA)、必要に応じてペルタクチンならびに/または凝集原2および3と併用もされる[例えば、引用文献170および171]。
− 細胞性百日咳抗原。
【0078】
混合物は1つ以上のこれらのさらなる抗原を含有し得、必要な場合無害化され得る。(例えば、化学的および/または遺伝的手段による百日咳毒素の無害化)。
【0079】
ジフテリア抗原が混合物に含まれる場合、この混合物は、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が混合物に含まれる場合、この混合物は、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が混合物に含まれる場合、この混合物は、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含むことが好ましい。
【0080】
混合物内の抗原は、代表的に、各々、少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。概して、任意の所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分である。
【0081】
以下の3つの抗原全てを、本発明の組成物に同時に含まないことが好ましい;(1)髄膜炎菌性糖類、(2)Haemophilus influenzaeに対する免疫応答を誘導する抗原、(3)Streptococcus pneumoniaeに対する免疫応答を誘導する抗原。しかし、これら3つの抗原が同一の組成物に含まれる場合、その組成物がキトサンのアルキル化誘導体(例えば、トリメチルキトサン)をアジュバントとして含むことが好ましい。
【0082】
混合物内のタンパク質抗原を用いる代替として、その抗原をコードする核酸が使用され得る。このようにして、混合物のタンパク質成分は、タンパク質をコード化する核酸(好ましくは、例えば、プラスミドの形態のDNA)により置換され得る。同様に、本発明の組成物は、糖類抗原を模倣するタンパク質(例えばmimotope[172])、または抗イディオタイプ抗体を含有し得る。これらは、個々の糖成分を置換し得るか、またはそれらを補充し得る。一例として、ワクチンは、糖類自体の代わりに、MenC[173]莢膜多糖類またはMenA[174]莢膜多糖類を模倣するペプチドを、含有し得る。
【0083】
本発明の組成物は、低レベルで(例えば、<0.01%)界面活性剤(例えば、Tween80のようなTween)を含有し得る。本発明の組成物は、特に、それらが凍結乾燥される場合、または凍結乾燥された物質から再構成された物質を含む場合に、糖アルコール(例えば、マンニトール)またはトレハロースを、例えば、約15mg/mlで、含有し得る。
【0084】
(免疫原性)
本発明の組成物は、免疫原性である。好ましい免疫原性組成物は、ワクチンである。本発明に従うワクチンは、予防的(すなわち、感染を防ぐため)または治療的(すなわち、感染後の疾患を治療するため)のどちらかであり得るが、一般的には、予防的である。
【0085】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、髄膜炎菌性糖類に加えて、代表的に、「薬剤的に受容可能なキャリア」を含有し、このキャリアは、それ自体がこの組成物を受ける個体に有害な抗体の生成を誘導しない、任意のキャリアを含む。適切なキャリアは、代表的に、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子であり、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、トレハロース[175]、脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)、および不活化ウイルス粒子である。このようなキャリアは、当業者に周知である。ワクチンは、水、生理食塩水、グリセロールなどのような希釈液も含み得る。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などのような補助物質が存在し得る。薬剤的に受容可能な賦形剤についての徹底的な議論は、引用文献176において見出され得る。
【0086】
ワクチンとして用いられた免疫原性組成物は、免疫学的有効量の糖類抗原、および必要に応じて、他の任意の上述の組成物を含有する。「免疫学的有効量」は、単回投与または一連の投与の一部のどちらかで、個体への投与が治療または予防に有効である量を意味する。この量は、処置される個体の健康状態または身体状態、年齢、処置される個体の分類学的群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望の保護の程度、ワクチンの処方、医学的状態の処置医の評価、およびその他の関連要因により様々である。その量は、慣用的試験により決定され得る比較的広い範囲内であることが期待される。
【0087】
本発明の組成物の免疫原性は、それらを試験被験体(例えば、12〜16月齢の小児または動物モデル)に投与し、次いで、総ての高結合活性抗カプセルIgGの血清殺菌性抗体(SBA)およびELISA滴定(GMT)を含む標準パラメータを決定することにより、決定され得る。一般的に、これらの免疫応答は、組成物の投与から約4週間後に決定され、組成物の投与前に決定された値と比較される。少なくとも4倍または8倍のSBA上昇が好ましい。組成物が1用量より多く投与される場合、1回より多い投与の後で、決定が下され得る。
【0088】
(本発明の組成物の投与)
上述のとおり、本発明の組成物は、非経口および粘膜を含む種々の経路により投与され得る。非経口投与の好ましい経路は注射である。注射は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射または筋肉内注射であり得る。大腿への筋肉内投与が、好ましい。無針注射が、使用され得る。粘膜投与の好ましい経路は、鼻腔内である。経皮投与もまた、可能である(例えば、引用文献178を参照のこと)。
【0089】
投与は、単回投与計画または多回投与計画であり得る。第一投与計画の後に追加免疫投与計画が続き得る。初回免疫(priming)と追加免疫との間の適切なタイミングは、定期的に決定され得る。
【0090】
投与は、一般的に動物に対して行われ、特にヒト被験体が処置され得る。組成物は、小児およびティーンエイジャーのワクチン接種に特に有用である。
【0091】
(医学的な方法および使用)
本発明は、患者において免疫応答を高める方法を提供し、この方法は、本発明の組成物を患者に投与する工程を包含する。免疫応答は、好ましくは、髄膜炎菌性疾患に対して保護性であり、体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を含み得る。免疫応答および/または投与は、両方とも粘膜性であることが好ましい。
【0092】
患者は、好ましくは小児である。より好ましいクラスの患者は、成人女性であり、そして特に出産適齢期の女性もしくは妊婦である。本発明の組成物は、特に、母体経路を経由して小児を受動免疫させるために適する。
【0093】
この方法は、N.meningitidisに対して初回刺激を受けた患者において、ブースター応答を引き起こし得る。
【0094】
本発明はまた、N.meningitidisの血清型A、C、W135およびYの中の少なくとも2つに由来する莢膜糖類抗原(ここでこの莢膜糖類抗原は、キャリアタンパク質と結合されるか、および/またはオリゴ糖である)の、免疫応答を引き起こすための動物への鼻腔内送達のための薬物の製造における使用を、提供する。本発明はまた、(1)N.meningitidisの血清型A、C、W135およびYの中の少なくとも1つに由来する莢膜糖類抗原ならびに(2)キトサンの、免疫応答を引き起こすための動物への鼻腔内送達のための薬物の製造における、使用を提供し、ここでこの莢膜糖類抗原は、キャリアタンパク質と結合されるか、および/またはオリゴ糖である。
【0095】
これらの薬物は、好ましくはNeisseria(例えば、meningitis、septicaemia、gonorrhoeaなど)に起因する疾患の予防および/または処置のためである。これらは、好ましくは鼻腔内投与のためである。これらは、好ましくはN.meningitidisの血清型A、C、W135およびYの中の少なくとも2つ(すなわち、2つ、3つもしくは4つ)に由来する莢膜糖類抗原を含む。
【0096】
(定義)
用語「含む(comprising)」とは、「含む(including)」および「から成る(consisting)」を意味し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXから成り(consist)得るかまたはさらなる任意のもの、例えば、X+Yを含み(include)得る。
【0097】
数値xについての用語「約」とは、例えば、x±10%を意味する。
【0098】
単語「実質的に」は、「完全に」を排除しない、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくあり得る。必要に応じ、単語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【実施例】
【0099】
(本発明を実施するための形態)
(髄膜炎菌性血清型Cワクチン)
CRM197髄膜炎菌性Cオリゴ糖結合体[6、9]を、N−トリメチル塩化キトサン[179]アジュバントおよび/またはLT−K63アジュバントを用いて、1μg/用量で(糖類として測定)マウスに鼻腔内投与した。TMCは、8μg/用量として使用し、18.9%置換のエビ殻(94.5%アセチル化)からのキトサン(「Chitoclear」、Primex ehf、Iceland)から調製した。LT−K63は、1μg/用量または0.1μg/用量で使用した。無麻酔のメスBALB/cを、10μL容量(5μL/鼻孔)の処方物で、0日目、21日目、35日目に鼻腔内免疫した。血清サンプルは、各免疫の前後に採取した。鼻洗浄は、3回目の免疫後に10日間行った。MenCに特異的なIgGおよびIgA抗体価ならびにLTに特異的なIgGおよびIgA抗体価を、ELISA[180]により決定した。
【0100】
血清IgG応答を図14に示す:(A)ELISAおよび(B)殺菌性(対数比率)。図15は、(A)血清および(B)鼻洗浄におけるIgA力価を示す。図16は、脾臓増殖アッセイの結果を示す。
【0101】
データは、TMCが単独で免疫原性を上昇させること、また、TMCがLT−K63アジュバントと同時投与される場合に免疫原性を上昇させることを示す。1μgのLT−K63およびTMCを併用して投与されたマウスは、皮下免疫により得られるIgG力価に匹敵するIgG力価を達成した。さらに、混合型アジュバントは、両用量で、皮下免疫と同等または皮下免疫より良い血清殺菌性抗体応答を生じた。皮下免疫は、鼻洗浄においてMenC特異性IgA応答を発生させなかった。
【0102】
このように、TMCおよびLTK−63は、単独または併用のどちらかで、MenC糖抗原に対する有効な鼻腔内アジュバントである。有利な点として、TMCをLT−K63に追加することは、免疫原性の喪失なく、LT−K63の用量を90%低下させる。したがって、TMCにより、潜在残留毒性のある成分を、免疫原性の喪失なく、減少し得る。
【0103】
同様の実験を、非メチル化「Chitoclear」キトサンをアジュバントとして用いて行った。同じ結合体抗原を、LT−K63(1μg)および/またはキトサン(10μgまたは20μg)を用いて、同じ経路で、2.5μg糖類/用量でマウスに投与した。6群のマウスを使用した。
【0104】
【表1】
【0105】
図17〜19に示すように、LT−K63およびキトサンを用いた鼻腔内投与は、ミョウバンを用いた皮下投与と比較して、同等のIgGおよび血清殺菌性応答を与え、経鼻IgA応答を引き起こした。
【0106】
(混合ワクチン)
オリゴ糖結合体の混合ACWY組成物を、引用文献8に記載の物質を用いて調製した。組成物は、pH7.4でPBSを用いて緩衝化した。各結合体の濃度は以下のとおりであった。
【0107】
【表2】
【0108】
組成物を、マウスに10μL容量で(5μL/鼻孔)、アジュバントを用いずに、または以下の粘膜アジュバントのうちの1つを用いて、鼻腔内投与した。
【0109】
【表3】
【0110】
比較のために、同一の抗原組成物を、水酸化アルミニウムアジュバントを用いて、皮下投与した。
【0111】
コントロールとして、MenC結合体を単独で、併用組成物におけるMenCと同じアジュバントを用いて同じ経路で同等の濃度で投与した。
【0112】
このように、10群のマウスに以下の組成物を投与した。
【0113】
【表4】
【0114】
実験の第1セットにおいて、3回の鼻腔内投薬(ミョウバンでは皮下投与)後の血清IgG値は、GMT(MEU/ml)±標準偏差(図2)として、以下のように表される:
【0115】
【表5】
【0116】
同じ動物を、仔ウサギ補体の存在下で、血清殺菌性抗体について試験した。使用菌株は、A−F6124、C−C11、 W135−5554およびY−240539であった。
【0117】
結果は以下のとおりであった(図3):
【0118】
【表6】
【0119】
また、脾臓における細胞増殖を、同じ10群について試験した。MenACWY抗原を投与した奇数群の結果を図4Aに、MenCのみを投与した偶数群の結果を図4Bに示す。
【0120】
実験の第2セットにおいて、皮下投与の群1を除いて、マウスに20μLの以下ACWY組成物(2μg糖類の各抗原)を鼻腔内投与した。
【0121】
【表7】
【0122】
3回の免疫後の血清IgGを図5に、血清BCAを図6に、および細胞増殖を図7Aおよび7Bに示す。
【0123】
同様の実験の第3セットにおいて、皮下投与の群1を除いて、マウスに20μLの以下のACWY組成物(2μg糖類の各抗原)を鼻腔内投与した。
【0124】
【表8】
【0125】
3回の免疫後の血清IgGを図8に、血清BCAを図9に、および細胞増殖を図10Aおよび10Bに示す。
【0126】
このように、LTK63およびTMCの両方(特にその組み合わせ)は、髄膜炎菌性血清型A、C、W135およびYに対する混合ワクチンの鼻腔内送達に高い有効性を示すアジュバントである。
【0127】
本発明は、例示としてのみ記載されており、そして本発明の範囲および精神から逸脱することなく改変がなされ得ることが、理解される。
【0128】
【数1】
【0129】
【数2】
【0130】
【数3】
【0131】
【数4】
【0132】
【数5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図12】
【公開番号】特開2010−209122(P2010−209122A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151497(P2010−151497)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【分割の表示】特願2004−502923(P2004−502923)の分割
【原出願日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【出願人】(504421729)ユニバーシテイト ライデン (1)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【分割の表示】特願2004−502923(P2004−502923)の分割
【原出願日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【出願人】(504421729)ユニバーシテイト ライデン (1)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】
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