説明

キナーゼ阻害剤として有用なアザインダゾール

本発明はプロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物の提供に関する。本発明はまた、前記化合物を含んでいる薬理学的に許容できる組成物、及び様々な疾患、条件又は障害の治療のための、当該組成物の使用方法の提供に関する。本発明はまた、本発明の化合物の調製方法の提供に関する。これらの化合物及びその薬理学的に許容できる組成物は、様々な疾患、障害又は症状の治療若しくは予防に有用であり、例えば自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、高増殖性疾患、神経変性疾患又は免疫学性疾患などに適用できるが、これらに限定されない。本発明により提供される化合物はまた、キナーゼの生物学的及び病理学的現象における役割の解析にも有用であり、かかるキナーゼにより媒介される細胞内シグナル伝達経路の解析、及び新規なキナーゼ阻害剤の比較評価にも適用できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含んでいる薬学的に許容できる組成物、及び様々な障害の治療における当該組成物の使用方法の提供に関する。本発明はまた、本発明の化合物の調製方法の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
新規な治療薬の探索は、疾患に関連する酵素の構造及び他の生体分子に関する知見が多く得られることにより、近年非常に促進されている。集中的に解析されてきたテーマとしてプロテインキナーゼが、重要な酵素の1つとして挙げられる。
【0003】
プロテインキナーゼは、細胞中における様々なシグナル伝達プロセスを制御する、構造的に類似する酵素の一大ファミリーの1つを構成する(非特許文献1)。プロテインキナーゼは、それらの構造及び触媒機能が維持されていることから、共通の祖先から遺伝的に進化したと考えられる。ほとんど全てのキナーゼは類似する250〜300のアミノ酸触媒領域を有する。キナーゼは、それらがリン酸化する基質(例えばタンパク質チロシン、タンパク質セリン/トレオニン、脂質など)を元に各ファミリーに分類されることもある。通常、これらのキナーゼファミリーの各々に対応する配列モティーフが確認されている(非特許文献2から6を参照)。
【0004】
プロテインキナーゼは一般に、ヌクレオシド3リン酸からシグナル伝達経路に関係しているタンパク質アクセプタへのホスホリル基の移動を行うことによって、細胞内シグナル伝達を媒介する。これらのリン酸化の現象は生物学的標的タンパク質を調節若しくは制御しうる分子オン/オフスイッチとして機能する。これらのリン酸化現象は様々な細胞外及び他の刺激に応答して最終的に生じる。かかる刺激の例としては例えば環境中及び化学物質によるストレスシグナル(例えばショック、熱ショック、紫外線放射、細菌エンドトキシン及びH)、サイトカイン(インターロイキン1(IL−1)及び腫瘍壊死因子α(TNF−a)、成長因子(例えば顆粒白血球大食細胞−コロニー刺激因子、GM−CSF)及び線維芽細胞成長因子(FGF)などが挙げられる。細胞外刺激は、細胞増殖、遊走、分化、ホルモン分泌、転写制御因子の活性化、筋収縮、糖代謝、タンパク質合成の制御、増殖及び細胞周期の調節に関連する1つ以上の細胞応答に影響を及ぼしうる。
【0005】
多くの疾患は上記の通りプロテインキナーゼを媒介された現象により誘発される異常な細胞応答と関係している。これらの疾患としては限定されないが、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝疾患、神経病的及び神経変性疾患、心血管疾患、アレルギー及び喘息、アルツハイマー疾患及びホルモン関連疾患が挙げられる。したがって、治療薬として効果的であるプロテインキナーゼ阻害剤を探索するため、医薬品業界ではこれまで多くの尽力がなされてきた。
【0006】
Polo様キナーゼ(Plk)は種間(酵母からヒトにわたる)で高度に保存されているセリン/トレオニンキナーゼのファミリーに属する(非特許文献7)。Plkキナーゼは細胞周期において多くの役割(有糸分裂の開始及びその進行の制御を含む)を果たす。
【0007】
Plk1はPlkファミリー中で最も特徴的である。Plk1は広範囲で発現され、高い有糸分裂インデックスを示す組織で最もリッチである。Plk1のタンパク質濃度が上昇し、有糸分裂においてピークに達することが報告されている(非特許文献8)。Plk1の報告された基質は有糸分裂の開始及び進行を制御することが公知であるすべての分子であって、CDC25C、サイクリンB、p53、APC、BRCA2及びプロテアソームなどが挙げられる。Plk1は多発性タイプの癌において上方制御され、その発現レベルは疾患の重症度と相関することが報告されている(非特許文献9)。Plk1は発ガン遺伝子であって、NIH−3T3細胞を形質転換することが報告されている(非特許文献10)。siRNA(アンチセンス)によるPlk1の減少又は抑制、抗体のマイクロインジェクション又は細胞へのPlk1のドミナントネガティブコンストラクトのトランスフェクションにより、in vitroでの腫瘍細胞の増殖及び生存率を低下させることが報告されている(非特許文献11から14)。Plk1の減少した腫瘍細胞では、スピンドルチェックポイントの活性化、並びにスピンドル構造、染色体の配列及び分離、並びに細胞質分裂の欠損を示す。生存率の低下はアポトーシス誘導の結果であることが報告されている。対照的に、通常の細胞ではPlk1の減少においても生存度の維持が報告されている。siRNA又はドミナントネガティブコンストラクトの使用によるPlk1のin vivoノックダウンでは、異種移植片モデルにおける腫瘍の増殖抑制又は後退が観察されている。
【0008】
Plk2は主に細胞周期のG1相の間に発現し、中間期の細胞の中心体に局所化する。通常どおりに成長するPlk2ノックアウトマウスでは通常の生存率で飼育できるが、ただし野生型マウスより約20%小型である。ノックアウト動物に由来する細胞は、通常のマウスと比較し、細胞周期が緩慢に進行する(非特許文献15)。siRNAによるPlk2の減少、又は細胞への不活性キナーゼ変異体のトランスフェクションにより、中心小体の複製が阻害される。Plk2の下方制御によっても、腫瘍細胞のタキソール感受性を増加させ、部分的にp53応答を抑制することによって有糸分裂の不良を促進する(非特許文献16)。
【0009】
Plk3は細胞周期全体にわたって発現し、G1から有糸分裂にかけて増加する。その発現は増殖中の卵巣腫瘍及び乳癌において上方制御され、また良好でない予後とも関係している(非特許文献17及び18)。有糸分裂の調節に加えて、Plk3は細胞周期の間のゴルジ体の断片化、及びDNA傷害に対する応答に関係するとも考えられている。ドミナントネガティブ発現によるPlk3の抑制はDNA傷害の後、p53から独立したアポトーシスを促進し、腫瘍細胞によるコロニー形成を抑制することが報告されている(非特許文献19)。
【0010】
Plk4は他のPlkファミリーとは異なる構造を有する。このキナーゼの減少により癌細胞のアポトーシスが生じる(非特許文献20)。Plk4ノックアウトマウスではE7.5における停止、並びに有糸分裂における細胞の分散化及び部分的に分離した染色体が観察されている(非特許文献21)。
【0011】
プロテインキナーゼファミリーの分子は腫瘍細胞の成長、増殖及び生存に関係している。ゆえにプロテインキナーゼ阻害剤として有用な化合物の開発に対するニーズが存在する。
【非特許文献1】ハーディー、G及びハンクス(S)を参照。Protein Kinase Facts Book、I及びII、アカデミック・プレス、サンディエゴ、CA:1995
【非特許文献2】Hanks,S.K.,Hunter,T.,FASEB J.1995,9,576−596
【非特許文献3】Knightonら、Science 1991,253,407−414
【非特許文献4】Hilesら、Cell 1992,70,419−429
【非特許文献5】Kunzら、Cell 1993,73,585−596
【非特許文献6】Garcia−Bustos ら、EMBO J 1994,13,2352−2361
【非特許文献7】Lowery DMら、Oncogene 2005,24、248−259
【非特許文献8】Hamanaka,Rら、J Biol Chem 1995,270,21086−21091
【非特許文献9】Macmillan,JCら、Ann Surg Oncol 2001,8,729−740
【非特許文献10】Smith,MRら、Biochem Biophys Res Commun 1997,234,397−405
【非特許文献11】Guan,Rら、Cancer Res 2005,65,2698−2704
【非特許文献12】Liu,Xら、Proc Natl Acad Sci USA 2003,100,5789−5794
【非特許文献13】Fan,Yら、World J Gastroenterol 2005,11,4596−4599
【非特許文献14】Lane,HAら、J Cell Biol 1996,135,1701−1713
【非特許文献15】Ma,Sら、Mol Cell Biol 2003,23,6936−6943
【非特許文献16】Burns TFら、Mol Cell Biol 2003,23,5556−5571
【非特許文献17】Weichert,Wら、Br J Cancer 2004,90,815−821
【非特許文献18】Weichert,Wら、Virchows Arch 2005,446,442−450
【非特許文献19】Li,Zら、J Biol Chem 2005,280,16843−16850
【非特許文献20】Li,Jら、Neoplasia 2005,7,312−323
【非特許文献21】Hudson,JWら、Current Biology 2001,11,441−446
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
更に、Plkキナーゼが細胞分裂にとり不可欠であることを示す有力な証拠が存在する。ゆえに細胞周期のブロックは、腫瘍細胞増殖及び生存度を阻害するための臨床的な方法として確立されている。したがって、腫瘍細胞の増殖を阻害して生存率を低下させる効果を有する、プロテインキナーゼのPlkファミリー(例えばPlk1、Plk2、Plk3及びPlk4)阻害剤として有用な化合物の開発が望ましく、特に癌の新規な治療薬の開発において大きな医学的ニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の化合物及びその薬理学的に許容できる組成物は、プロテインキナーゼ阻害剤として効果的である。ある種の実施形態では、これらの化合物はPLK1プロテインキナーゼの阻害剤として効果的である。これらの化合物には、本願明細書に定義する式Iの化合物、又はその薬理学的に許容できる塩が包含される。
【0014】
これらの化合物及びその薬理学的に許容できる組成物は、様々な疾患、障害又は症状の治療若しくは予防に有用であり、例えば自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、高増殖性疾患、神経変性疾患又は免疫学性疾患などに適用できるが、これらに限定されない。本発明により提供される化合物はまた、キナーゼの生物学的及び病理学的現象における役割の解析にも有用であり、かかるキナーゼにより媒介される細胞内シグナル伝達経路の解析、及び新規なキナーゼ阻害剤の比較評価にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は式Iの化合物
【化20】

又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。
式中、Rは(L−Zであり、
はH又は(L−Zであるか、又は、R及びRはそれらが結合する窒素原子と共に、3〜14員の飽和若しくは部分的に不飽和の単環式もしくは二環式複素環を形成し、
前記環は0〜5個のJで任意に置換されてもよく、
XはCR又はNであり、
YはCR又はNであり、
は水素、CN、NO、ハロ又は(L−Zであり、
は水素、CN、NO、ハロ又は(L−Zであり、
は水素、CN、NO、ハロ、C1−6脂肪族又はC1−6アルキリデン鎖であり、
式中、鎖中の3つまでのメチレン単位が任意に、独立に−N(R)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(S)−、−C(=NR)−又は−C(O)−で置換されてもよく、
は0〜3個のJR5で任意に置換されてもよく、
各L、L、L及びLは独立にC1−6アルキリデン鎖であり、
式中、鎖中の3つまでのメチレン単位が任意に、独立に−N(R)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(S)−、−C(=N)R−又は−C(O)−で置換されてもよく、
は0〜3個のJL1で任意に置換されてもよく、
は0〜3個のJL2で任意に置換されてもよく、
は0〜3個のJL3で任意に置換されてもよく、
は0〜3個のJL4で任意に置換されてもよく、
各Z、Z及びZは独立に、水素、C1−6脂肪族、独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分的に不飽和若しくは完全に不飽和の単環であるか、
又は、独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜5個のヘテロ原子を有する、8〜12員の飽和、部分的に不飽和若しくは完全に不飽和の二環系を形成し、
は0〜5個のJZ1で任意に置換されてもよく、
は0〜5個のJZ2で任意に置換されてもよく、
は0〜5個のJZ4で任意に置換されてもよく、
は水素、C1−6脂肪族、独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の単環式環であり、
は0〜5個のJZ3で任意に置換されてもよく、
各JL1、JL2、JL3及びJL4は独立に水素、C1−6脂肪族、C3−6脂環式基、フェニル、−(C1−4アルキル)−(フェニル)、ハロゲン、NO、CN、NH、−NH(C1−4脂肪族基)、−N(C1−4脂肪族基)、−OH、−O(C1−4脂肪族基)、−O(ハロC1−4脂肪族)、−S(C1−4脂肪族基)、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族基)、−CONH、−CONH(C1−4脂肪族基)−CO()N(C1−4脂肪族基)、−CO(C1−4脂肪族基)又はハロ(C1−4脂肪族基)であって、
前記脂肪族基又はフェニル基の各々はC1−3アルキル、ハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CH又はハロ(C1−3アルキルで任意に置換されてもよく、
各Jは独立に水素、CN、NO、ハロ、フェニル、−(C1−4アルキル)−(フェニル)、5〜6員のヘテロアリール、3〜8員の脂環式基、4〜8員のヘテロシクリル又はC1−6アルキリデン鎖であり、
式中、鎖中の3つまでのメチレン単位が任意に、独立に−N(R)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(S)−、−C(=N)R−又は−C(O)−で置換されてもよく、
上記の各々の基はC1−3アルキル、ハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CH又はハロ(C1−3アルキル)で任意に置換されてもよく、
各JR5、JZ1、JZ2、JZ3及びJZ4は独立にH、CN、NO、ハロ又は(X)−Mであり、XはC1−6アルキリデン鎖であり、式中、鎖中の3つまでのメチレン単位が任意に、独立に−NH−、−N(C1−6脂肪族)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(S)−、−C(=NH)−、−C(=N(C1−6脂肪族))−又は−C(O)−で置換されてもよく、
前記脂肪族基は各々C1−3アルキル、ハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CH又はハロ(C1−3アルキル)で任意に置換されてもよく、
Mは水素、C5−10アリール、5〜10員のヘテロアリール、C3−10脂環式基、4〜10員のヘテロシクリル又はC1−6脂肪族基であり、
式中、MはC1−6脂肪族基、C3−6脂環式基、ハロゲン、−NO、−CN、−NH、−NH(C1−4脂肪族基)、−N(C1−4脂肪族基)、−OH、−O(C1−4脂肪族基)、−O(ハロC1−4脂肪族)、−S(C1−4脂肪族基)、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族基)、−C(O)NH、−C(O)NH(C1−4脂肪族基)、−C(O)N(C1−4脂肪族基)、−C(O)(C1−4脂肪族基)又はハロ(C1−4脂肪族基)のうちの0〜5つで任意に置換されてもよく、
前記脂肪族基は各々C1−3アルキル、ハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CH又はハロ(C1−3アルキル)で任意に置換されてもよく、
Rは水素、C1−6脂肪族、C(=O)(C1−6脂肪族)、−(C1−4アルキル)−(フェニル)、独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の単環であり、
RはC1−3アルキル、ハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CH又はハロ(C1−3アルキル)のうちの0〜5つで任意に置換されてもよく、
n、m、p、q及びtは独立に各々0又は1であり、
但し、nが0であるときZは水素でなく、mが0であるときZは水素でなく、pが0であるときZは水素でなく、qが0であるときZは水素でない。
【0016】
若干の実施形態では、R及びRがCHであるときRは水素であり、R及びR
【化21】

を形成するための結合をせず、R及びRがCHであるときRは水素であり、Rは水素であり、Rは水素、−NH−N=CH−Ph、−NH−NH、フェニル、4−メチルフェニル、
【化22】

ではなく、式中、Phは非置換フェニル基である。
【0017】
幾つかの実施形態では、RはOHでない。
【0018】
他の実施形態では、Rは水素でない。
【0019】
幾つかの実施形態では、nが0で、Zがシクロヘキサンであるとき、JZ1は(X)−Mでなく、式中、tは1であり、Xは−NCO−であり、Mは3−ピリジル置換された−O−(Ph)であり、式中、Phは任意に置換されてもよいか、又は別の5員環と任意に融合してもよいフェニル基である。
【0020】
他の実施形態では、R及びRの両方が水素ではない。
【0021】
本発明の化合物は一般的には上記で表されるが、本願明細書に開示される他のクラス、サブクラス及び分子種として更に例示されてもよい。本発明における定義は、特に明記しない限り以下の通り定義される。本発明において表記する元素は元素周期律表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics,75th Edに従うものである。また、有機化学の一般原則は”Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito: 1999,および”March’s Advanced Organic Chemistry”,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B. and March,J.,John Wiley&Sons,New York:2001に記載されており、その全開示内容を本願明細書に援用する。
【0022】
本発明では、原子の特定の数値範囲には、その中のいかなる整数も含まれる。例えば1−4の原子を有する基は1、2、3、又は4個の原子を有することができる。
【0023】
本発明では、本発明の化合物は1つ以上の置換基で任意に置換されてもよく、例えばそれらは上記のように一般式として例示されてもよく、あるいは本発明の特定のクラス、サブクラス及び分子種として例示されてもよい。用語「任意に置換されてもよい」と用語「置換若しくは非置換の」は交換可能に使用できることはいうまでもない。通常、用語「置換されてもよい」は、用語「任意に」の前後に関わらず、所定の構造中で、特定の置換基で水素基が置換されていることを指す。特に明記しない限り、任意に置換された基は、その基の置換可能部位に他の置換基を有してもよく、いかなる所定の構造中の複数の部位も特定の基から選択される複数の置換基で置換されてよく、また置換基はあらゆる位置で同じであってもよく、また異なってもよい。本発明に包含される置換基の組合せは、好ましくは安定性若しくは化学的に適合性を有する化合物の形成をもたらすものである。
【0024】
本明細書の用語「安定若しくは化学的に適用可能な」とはそれらの調製、検出及び好ましくはそれらの回収、精製、及び本願明細書に開示される1つ以上の使用に供した場合に、実質的に変化しない化合物のことを指す。幾つかの実施形態では、安定な化合物又は化学的に可能な化合物は、少なくとも1週間、40℃以下の温度で、水分又は他の化学的に反応性条件の非存在下に維持した場合に実質的に変化しない。
【0025】
ここで用いる用語「脂肪族」又は「脂肪族基」とは、他の分子への1つの結合部位を有する、完全に飽和した、又は1つ以上の不飽和単位を有する直鎖状(すなわち分岐していない)若しくは分岐状の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖を意味する。特に明記しない限り、脂肪族基は1−20個の脂肪族炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、脂肪族基は1−10個の脂肪族炭素原子を有する。他の実施形態では、脂肪族基は1−8個の脂肪族炭素原子を有する。更に他の実施形態では、脂肪族基は1−6個の脂肪族炭素原子を有し、更に他の実施形態では、脂肪族基は1−4個の脂肪族炭素原子を有する。適切な脂肪族基としては、限定されないが、直鎖状又は分岐状の、置換若しくは非置換アルキル、アルケニル又はアルキニル基が挙げられる。具体例としては、限定されないがメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、sec−ブチル、ビニル、n−ブテニル、エチニル及びtert−ブチル基が挙げられる。
【0026】
「脂環式基」(又は「炭素環式」基又は「カルボシクリル」基又は「シクロアルキル」基)という用語は、完全に飽和しているか若しくは1つ以上の不飽和単位を有する、単環式C−C炭化水素又は二環式C−C12炭化水素基のことを指すが、但し芳香族化合物ではなく、前記二環式環システムのいかなる個々の環も3−7員を有し、他の分子への1つの結合部位を有する。好適な脂環式基としては、シクロアルキル及びシクロアルケニル基が挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、限定されないがシクロヘキシル、シクロプロペニル基及びシクロブチル基が挙げられる。
【0027】
本明細書中で使用される用語「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ脂環式」又は「複素環」とは、環を構成する1つ以上の員が独立に選択されたヘテロ原子であって、非芳香族の単環式、二環式若しくは三環式の基を意味する。幾つかの実施形態では、「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ脂環式」又は「複素環」基は3〜14個の員を有し、環を構成する1つ以上の員が独立に酸素、硫黄、窒素及びリンから選択されるヘテロ原子であり、系に含まれる各環は3〜7員環である。
【0028】
適切な複素環式基としては、限定されないが3−1H−ベンズイミダゾル−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンズイミダゾル−2−オン、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノリウム、3−モルホリノリウム、4−モルホリノリウム、2−チオモルホリノリウム、3−チオモルホリノリウム、4−チオモルホリノリウム、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオレーン、ベンゾジチアン及び1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オン基が挙げられる。
【0029】
環状基(例えば脂環式基又は複素環基)は直線的に融合してもよく、架橋されてもよく、又はスピロ環状であってもよい。
【0030】
用語「ヘテロ原子」とは、酸素、硫黄、窒素、リン又はシリコンのうちの1つ以上を意味し、窒素、硫黄、リン又はシリコンの酸化型形態、いかなる塩基性窒素の4級化形態、又は複素環(例えば3,4−ジヒドロ−2H−ピロリル基中のN、ピロリジニル基中のNH、又はN置換ピロリジニル基中のNRなど)中の置換可能な窒素が挙げられる。
【0031】
本明細書で用いられる用語「不飽和」とは、分子中の部分が1つ以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0032】
本発明で使用する用語「アルコキシ」又は「チオアルキル」基とは、アルキル基(上記で定義済み)が酸素(「アルコキシ」)又は硫黄(「チオアルキル」)原子を介して炭素主鎖に結合している基を意味する。
【0033】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロ脂肪族」及び「ハロアルコキシ」の用語は、1つ以上のハロゲン原子により置換されたアルキル、アルケニル、又はアルコキシ基のことを指す。「ハロゲン」、「ハロ」及び「hal」という用語はF、Cl、Br又はIを意味する。
【0034】
用語「アリール」をそれ単独、又は「アラルキル」、「アラルコキシ」又は「アリールオキシアルキル」などの大きい部分の一部として用いるときは、それは合計5〜14員を有する単環式、二環式及び三環式基を意味し、少なくとも1つの環が芳香族であり、システムの各環は3〜7員環である。用語「アリール」は「アリール環」と同義的に使用できる。以下に定義するように用語「アリール」とはヘテロアリール環基を指すこともある。
【0035】
「ヘテロアリール」(それ単独、又は「アラルキル」、「アラルコキシ」又は「アリールオキシアルキル」などの大きい部分の一部として用いる)という用語は、合計5〜14員を有する単環式、二環式及び三環式基を意味であって、系中の少なくとも1つの環が芳香族であり、系中の少なくとも1つの環が1つ以上のヘテロ原子を有し、系中の各環は3〜7員環である。用語「ヘテロアリール」は用語「ヘテロアリール環」又は用語「ヘテロ芳香族環」と同義的に使用できる。好適なヘテロアリール環としては2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(例えば3−ピリダジニル)2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(例えば5−テトラゾリル)、トリアゾリル(例えば2−トリアゾリル及び5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例えば2−インドリル)、ピラゾリル(例えば2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、プリニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、キノリニル(例えば2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)及びイソキノリニル(例えば1−イソキノリニル、3−イソキノリニル又は4−イソキノリニル)基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
「アルキリデン鎖」という用語は、完全に飽和した又は1つ以上の不飽和単位を有してもよい、他の分子への2つの結合部位を有する、直鎖若しくは分岐状の炭素鎖のことを指す。
【0037】
本発明の用語「保護基」とは、多官能性化合物の1つ以上の所望の反応部位を一時的にブロックするために用いる基のことを意味する。ある特定の実施形態では、当該保護群は以下の特徴のうちの1つ以上、又は好ましくは全てを有する:
a)良好な収率において選択的に反応し、1つ以上の他の反応部位で生じる反応に安定な被保護基質を提供する特徴、及び
b)再生される官能基を攻撃しない試薬によって、良好な収率において選択的に着脱可能であるという特徴。
典型的な保護基はGreene,T.W.,Wuts,P.Gの“Protective Groups in Organic Synthesis”,Third Edition,John Wiley&Sons,New York:1999に詳細に記載されており、その全開示内容を本願明細書に援用する。本発明で使用する用語「窒素保護基」とは、多官能性化合物の1つ以上の所望の窒素反応部位をブロックするために一時的に用いられる基のことを意味する。好ましい窒素保護基も上記と同様の特徴を有し、典型的な窒素保護基に関しては、Greene,T.W.,Wuts,P.Gの“Protective Groups in Organic Synthesis”,Third Edition,John Wiley&Sons,New York:1999の第7章(全開示内容を本願明細書に援用する)において詳細に記載されている。
【0038】
幾つかの実施形態では、アルキル又は脂肪族鎖は他の原子又は基によって任意に中断されてもよい。これはアルキル又は脂肪族鎖のメチレン単位が前記他の原子又は基によって任意に置換されることを意味する。かかる原子又は基の例としては、限定されないが−NR−、−O−、−S−、−CO−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NRCO−、−NRC(O)O−、−SONR−、−NRSO−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRSONR−、−SO−、又は−SO−が挙げられる(式中、Rは本願明細書に定義するとおりである)。特に明記しない限り、任意の置換により化学的に安定な化合物が形成される。任意の中断は鎖の途中に存在してもよく、また鎖のいずれかの末端に存在してもよく、すなわち結合部位及び/又は末端部位であってもよい。化学的に安定な化合物が得られる限り、2つの任意の置換基が鎖中で各々と隣接していてもよい。
【0039】
特に明記しない限り、置換又は中断が末端部位にする場合、置換原子は末端部のHと結合する。例えば、−CHCHCHが任意に−O−で中断される場合、得られる化合物は−OCHCH、−CHOCH、又は−CHCHOHである。
【0040】
特に明記しない限り、本願明細書に示される構造には、ある構造に対する全ての異性体(例えば鏡像異性、ジアステレオ異性体及び幾何(又は高次構造)異性体)が包含され、例えば非対称中心に対するR及びS構成、(Z)及び(E)の二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)の高次構造的な異性体が挙げられる。したがって、本発明の1つの立体化学的異性体、並びにその化合物の鏡像異性、ジアステレオ異性体、及び幾何(又は高次構造)異性体の混合物もまた本発明の範囲内である。
【0041】
特に明記しない限り、本発明の化合物の全ての互変異性形は本発明の範囲内である。
【0042】
特に明記しない限り、置換基はいかなる回転可能な結合の周りを自由に回転できる。例えば、置換基
【化23】

は以下のようにも表記できる。
【化24】

【0043】
更に、特に明記しない限り、本願明細書に表す構造には1つ以上の同位元素富化した原子の存在という点でのみ異なる化合物が包含される。例えばジュウテリウム、トリチウムにより水素の置換以外の構造を有するか、又は13C−若しくは14Cリッチな炭素による、炭素原子の置換以外の構造を有する、本発明の化合物もまた本発明の範囲内である。かかる化合物は例えば生物学的アッセイの解析ツール又はプローブとして有用である。
【0044】
本発明では以下の略語を用いる:
HOAc:酢酸
THF:テトラヒドロフラン
Pd(PPh:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム
PG:保護基
DMF:ジメチルホルムアミド
DCM:ジクロロメタン
Ac:アセチル
Bu:ブチル
Et:エチル
DMF:ジメチルホルムアミド
EtOAc:酢酸エチル
DMSO:ジメチルスルホキシド
MeCN:アセトニトリル
TFA:トリフルオロ酢酸
TCA:トリクロロ酢酸
ATP:アデノシン三リン酸
EtOH:エタノール
Ph:フェニル
Me:メチル
Et:エチル
HEPES:4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
BSA:ウシ血清アルブミン
DTT:ジチオスレイトール
NMR:核磁気共鳴
HPLC:高速液体クロマトグラフィ
LCMS:液体クロマトグラフィ−質量分析
TLC:薄層クロマトグラフィ
Rt:保持時間
【0045】
幾つかの実施形態では、XはCRである。他の実施形態では、YはCRである。幾つかの実施形態では、XはCRであり、YはCRである。他の実施形態では、X又はYの1つはNである。
【0046】
幾つかの実施形態では、Zは窒素、酸素又は硫黄から独立に選択される0−3個のヘテロ原子を有する3−8員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の単環式環であるか、又は窒素、酸素又は硫黄から独立に選択される0−5個のヘテロ原子を有する8−12員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の二環式環である。他の実施形態では、Zは窒素、酸素又は硫黄から独立に選択される0−3個のヘテロ原子を有する3−8員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の単環式環である。幾つかの実施形態では、Zは5−8員のヘテロシクリル、3−8員の脂環式、フェニル又は5−6員のヘテロアリール基である。
【0047】
幾つかの実施形態では、Zは5−6員のアリール又はヘテロアリール基である。幾つかの実施形態では、Zは5−6員のヘテロアリール基である。幾つかの実施形態では、Zはピリジル、ピリミジル、ピリダジニル又はピラジニル基である。他の実施形態では、Zは5員のヘテロアリール基である。更に他の実施形態では、Zはフェニル基である。
【0048】
幾つかの実施形態では、Zは4−8員のヘテロシクリル基である。幾つかの実施形態では、ZはO、N又はSから選択される1−2個のヘテロ原子を含む5−6員のヘテロシクリル基である。幾つかの実施形態では、Zはピロリジニル、ピペリジニル、ピラジニル又はモルホリニル基である。
【0049】
他の実施形態では、Zは3−8員の脂環式基である。
【0050】
幾つかの実施形態では、nは0である。他の実施形態では、nは1である。
【0051】
本発明の若干の実施形態では、LはC1−6アルキリデン鎖である。幾つかの実施形態では、Lは−CH−である。幾つかの実施形態では、Lは1−2個のメチレン単位がO、N又はSで置換されたC1−6アルキリデン鎖である。
【0052】
他の実施形態では、LはC1−6アルキリデン鎖である。幾つかの実施形態では、Lは−CH−である。
【0053】
幾つかの実施形態では、Rは水素である。
【0054】
他の実施形態では、Rは水素、CN、NO、ハロ又はC1−6アルキリデン鎖である。幾つかの実施形態では、Rは水素である。
【0055】
幾つかの実施形態では、Rは水素、CN、NO、ハロ又はC1−6アルキリデン鎖である。幾つかの実施形態では、Rは水素である。
【0056】
幾つかの実施形態では、R及びRは水素である。
【0057】
他の実施形態では、Rは水素である。
【0058】
幾つかの実施形態では、Rは(L−Zである。幾つかの実施形態では、Zは独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0−3個のヘテロ原子を有する3−8員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の単環式基である。他の実施形態では、Zは5−8員のヘテロシクリル基、3−8員の脂環式基、フェニル基又は5−6員のヘテロアリール基である。幾つかの実施形態では、Zは5−6員のアリール又はヘテロアリール基である。他の実施形態では、Zは5−6員のヘテロアリール基である。更に他の実施形態では、Zはピリジル、ピリミジル、ピリダジニル又はピラジニル基である。幾つかの実施形態では、Zは5員のヘテロアリール基である。他の実施形態では、Zはフェニル基である。幾つかの実施形態では、Zは水素である。
【0059】
他の実施形態では、R、R及びRは水素である。
【0060】
幾つかの実施形態では、qは0である。他の実施形態では、qは1である。
【0061】
幾つかの実施形態では、LはC1−6アルキリデン鎖である。
【0062】
一実施形態では、本発明には以下の化合物が包含される。
【化25】

他の実施形態では、本発明には以下の化合物が包含される。
【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【0063】
一般の合成方法論
本発明の化合物は下記の一般反応式において表されるような方法、及びそれに続く方法によって通常調製できる。
【0064】
下記の具体的な条件は飽くまで例示であり、本発明の化合物の調製に使用できる条件の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。むしろ、本発明には本発明の化合物の調製に関するこの明細書の記載を考慮して、当業者が容易に想到できる他のあらゆる条件も包含される。示される開始材料は市販品であってもよく、又は当業者に公知の方法で調製してもよい。特に明記しない限り、以下の反応式における全ての変数は本願明細書に定義するとおりである。
【0065】
反応式I
【化31】

上記の反応式Iは、式Iの化合物の調製に使用できる一般の合成経路を示すものであり、式中、X、R、R及びRは本願明細書に記載されているとおりである。当業者に自明なように、記載されている具体的な反応条件は、従来技術において公知の他の反応条件で置き換えてもよい。式1の化合物を当業者に公知の適切な臭素化条件下で臭素化し、式2の化合物を形成させる。次に式2の化合物を塩素で処理し、式3の化合物を形成させる。次にヒドラジンの存在下で環化し、式4の化合物を形成させる。次に式4の化合物を最初にNaNO−HO+の存在下で、更にCuCl/SOの存在下で混合し、塩化スルホニルを形成させる。次にそれを所望のアミン(R−NH)と混合することにより、即座に式6の化合物が形成される。式6の化合物を適切な触媒(例えばパラジウム触媒)の存在下で、所望のホウ酸(R−B(OH))と混合し、式Iの化合物を形成させる。
【0066】
反応式II
【化32】

反応式IIは、化合物Iを調製する他の方法を示す(式中、X、R、R及びRは上記の定義のとおりである)。当業者に自明なように、記載されている具体的な反応条件は、従来技術において公知の他の反応条件で置き換えてもよい。式7の化合物をヒドラジンの存在下で加熱し、環化させて式8の化合物を形成させる。次に式8の化合物を最初にNaNO−HO+の存在下で、次にCuCl/SOの存在下で混合し、塩化スルホニルを形成させる。次にそれを所望のアミン(R−NH)と混合し、即座に式Iの化合物が形成される。
【0067】
本発明の一実施形態は、式Iの化合物を調製する方法の提供に関する。
【化33】

式中、YはCRであり、R、R、X及びRは本願明細書に定義のとおりである。当該方法は、式6の化合物
【化34】

を適切なPdカップリング条件下でR−BA(BAは適切なホウ酸又はエステル)と反応させ、式Iの化合物を形成させることを含む。
【0068】
他の実施形態では、更に
a)式4の化合物をNaNO−HO+、次にCuCl/SOと反応させて所望の塩化スルホニル(式5)を形成させる工程と、
b)式5の化合物をR1−NHと反応させて式6の化合物を形成させる工程を含む。
【0069】
他の実施形態では、更に式3の化合物
【化35】

を、ヒドラジンの存在下で環化して式4の化合物を形成させる工程を含む。
【0070】
一実施形態は、式I’の化合物の調製方法の提供に関する。
【化36】

式中、YはNであり、R、R、X及びRは本願明細書に定義されるとおりである。当該方法は、
a)式4’の化合物
【化37】

をNaNO−HO+、次にCuCl/SOと反応させて所望の塩化スルホニル(式5’)を形成させる工程と、
【化38】

b)式5’の化合物をR−NHと反応させて式I’の化合物を形成させる工程を含む。
【0071】
他の実施形態では、更に式3’の化合物
【化39】

をヒドラジンの存在下で環化して式4’の化合物を形成させる工程を含む。
【0072】
本発明の他の実施形態は、式Iの化合物の調製方法の提供に関する。
【化40】

式中、YはCRであり、Rは水素であり、R、X及びRは請求項1から27のいずれか1項に定義されるとおりである。当該方法は、
a)式7の化合物
【化41】

をヒドラジンの存在下で環化して式8の化合物を形成させる工程と、
【化42】

b)式8の化合物をNaNO−HO+、次にCuCl/SOと反応させて式9の所望の塩化スルホニルを形成させる工程と、
【化43】

c)式9の化合物をR−NHと反応させて式Iの化合物(R、R及びRが請求項1から27のいずれか1項に定義されるとおりである)を形成させる工程を含む。
【0073】
本発明の他の実施態様は、式Iの化合物の調製方法の提供に関する。
【化44】

式中、YはCRであり、Rは水素であり、R、X及びRは本願明細書に定義するとおりである。当該方法は、式9の化合物をR−NHと反応させる工程を含む。
【0074】
更に他の実施形態では、式8の化合物をNaNO−HO+、次にCuCl/SOで処理して式9の所望の塩化スルホニルを形成させる工程を含む。
【0075】
更に他の実施態様では、ヒドラジンの存在下で式7の化合物を環化させて式8の化合物を形成させる工程を含む。
【0076】
すなわち、本発明は本発明の化合物の調製方法の提供に関する。
【0077】
上記のように、本発明はプロテインキナーゼ阻害剤としての化合物の提供に関し、当該化合物は、限定されないが自己免疫性、炎症性、増殖性、高増殖性の疾患、又は免疫学的に媒介された疾患をはじめとする疾患、障害及び症状の治療に有用である。
【0078】
したがって、本発明の別の態様は、薬理学的に許容できる組成物の提供に関し、当該組成物は本発明の化合物のいずれかを含有し、また任意に薬理学的に許容できる担体、補助剤又は賦形剤を含有する。ある種の実施形態では、これらの組成物は任意に1つ以上の追加的治療薬を更に含有する。
【0079】
本発明の化合物は、治療の際、遊離形態で存在してもよく、あるいは必要に応じてその薬理学的に許容できる誘導体の形態で存在してもよい。本発明では、薬理学的に許容できる誘導体としては、薬理学的に許容できる塩、エステル若しくは他のいかなる付加物、又は、かかる塩、エステル若しくは付加物の誘導体が挙げられるがこれらに限定されず、患者に投与する際、直接的又は間接的に、本願明細書に記載されている化合物で投与してもよく、又はそれらの代謝物質として投与してもよい。
【0080】
本発明の「薬理学的に許容できる塩」の用語は有能な医学判断の範囲において、ヒト及び他の下等動物の組織と接触させる使用に適し、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などのない、相当な利益/危険のバランスを有する塩を指す。「薬理学的に許容できる塩」とは受容者に対する投与に、直接又は間接的に、本発明の化合物、又は阻害活性を有するその代謝化合物又は残留物を提供できる、あらゆる非毒性の塩又は塩のエステルを意味する。本発明の用語「阻害活性を有する代謝物質又はその残余物」とは、PLK1プロテインキナーゼキナーゼの阻害剤としても機能する代謝物質又はその残余物のことを意味する。
【0081】
薬理学的に許容できる塩は公知であり。例えば、S.M.BergeらのJ.Pharmaceutical Sciences、1977、66、1−19(本発明に援用する)では、薬理学的に許容できる塩が詳細に記載されている。
【0082】
本発明の化合物の薬理学的に許容できる塩には、薬理学的に許容できる無機及び有機の酸及び塩基に由来する塩が包含される。これらの塩は化合物の最終的な単離及び精製工程の間、in situで調製されてもよい。酸付加塩は、
1)遊離塩基形態の精製された化合物を、その適切な有機若しくは無機酸と反応させ、
2)それにより形成された塩を単離することにより調製できる。
【0083】
本発明の化合物の薬理学的に許容できる塩は適切な無機及び有機酸ベースの塩であってもよい。薬理学的に許容できる、非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸のような無機酸、又は酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸又はマロン酸のような有機酸とアミノ基により、従来技術公知の方法(例えばイオン交換)を用いて形成される塩である。他の薬理学的に許容できる塩としてはアジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸エステル、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸、グルコン酸塩、ヘミスルホン酸塩、ヘプタノン酸塩、ヘキサノン酸塩、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸エステル、パルミチン酸塩、パモ酸、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸、バレリン酸塩などが挙げられる。
【0084】
塩基付加塩は、
1)酸性の形態の精製された化合物を、適切な有機若しくは無機の塩基と反応させ、
2)それにより形成された塩を単離することにより調製できる。適当な塩基に由来する塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びN(C−Cアルキルを含む)塩である。本発明にはまた、本願明細書に開示される化合物のいかなる塩基性の第4級窒素含有基も包含される。水溶性又は油溶性又は分散性の生成物はかかる4級化反応によって得られる。
【0085】
更に、薬理学的に許容できる塩としては、非毒性のアンモニウムイオン、第四級アンモニウム及びアミン陽イオンの塩が挙げられ、それらは反イオン(例えばハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩)を使用することにより形成される。
【0086】
それ自身は薬理学的に許容できない他の酸及び塩基を中間体として使用して、本発明の化合物及びそれらの薬理学的に許容できる酸付加塩若しくは塩基付加塩を調製することもできる。
【0087】
本発明の薬理学的に許容できる組成物は更に、上記のように薬理学的に許容できる担体、補助剤又は賦形剤を含有し、例えばあらゆる溶媒、希釈剤、又は他の液状担体、分散剤又は懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤、乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤を、所望の投与形態に応じて適宜使用する。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、薬理学的に許容できる組成物の調製の際に使用する様々な担体、及びその公知の製剤方法を開示する。本発明の化合物との不適合性を示さない(例えばいかなる望ましくない生物学的効果も生じさせない、又は薬理学的に許容できる組成物中の他のいかなる成分と望ましくない相互作用をしない)限り、いかなる従来公知の担体媒体を使用してもよく、本発明に包含される。薬理学的に許容できる担体として利用できる材料の若干の例としては限定されないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えばヒト血清アルブミン)、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸又はソルビン酸カリウムのような緩衝剤、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、塩又は電解質(例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、マグネシウム三リン酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、ラクトース、グルコース及び蔗糖などの糖、澱粉(例えば穀物澱粉及びポテトデンプン)、セルロース及びその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース)、粉末状のトラガカントゴム、モルト、ゼラチン、タルク、添加剤(例えばカカオバター及び座薬ワックス)、油(例えば落花生油、綿実油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油)、グリコール(プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)、エステル(例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル)、寒天、バッファ(例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム)、アルギン酸、ピロゲンフリーの水、等張性食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール及びリン酸塩緩衝液、他の非毒性の適合性を有する潤滑剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム)、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、風味剤及び香料、防腐剤及び酸化防止剤が挙げられ、それらを当業者が適宜組成物中に含有させてもよい。
【0088】
上記したように、本発明の化合物はプロテインキナーゼの阻害剤として有用である。一実施形態では、本発明の化合物及び組成物はPLK1キナーゼ阻害剤であり、すなわち、PLK1キナーゼの活性化が疾患、症状又は障害に関係する場合に、当該化合物及び組成物は特に、当該疾患、症状又は障害の治療若しくは低減化に有用である。PLK1の活性化が特定の疾患、症状又は障害に関係するとき、当該疾患、症状又は障害のことを「PLK1媒介性の」疾患、症状又は障害と称することもできる。したがって、本発明の別の実施形態では、PLK1の活性化が疾患症状に関係する疾患、症状又は障害の治療若しくは低減化方法の提供に関する。
【0089】
プロテインキナーゼ阻害剤としての化合物の活性は、in vitro、in vivo又は細胞株中でアッセイすることができる。in vitroアッセイとしては、キナーゼ活性、又は活性化キナーゼのATPアーゼ活性のいずれかの阻害を測定するアッセイが挙げられる。その他のin vitroアッセイは、プロテインキナーゼと結合する阻害剤の能力を定量するものであり、その方法は、阻害剤を結合前に放射性同位元素で標識し、更に阻害剤/キナーゼ複合体を単離して放射性同位元素の結合量を測定するか、又は周知の放射性リガンドと結合するキナーゼと共に、新規な阻害剤をインキュベートさせて競合実験を行うことにより測定してもよい。
【0090】
プロテインキナーゼ阻害剤又はその製薬塩を、動物又はヒトへの投与用の医薬組成物中に添加することができる。これらの医薬組成物(プロテインキナーゼ媒介性の症状の治療又は予防に効果的な量のタンパク質阻害剤及び薬理学的に許容できる担体を含有する)は本発明の他の実施態様である。幾つかの実施形態では、前記プロテインキナーゼ媒介性の症状はPLK1媒介性の症状である。
【0091】
本願明細書に使用される用語「プロテインキナーゼ媒介性の症状」とは、プロテインキナーゼが役割を演じることが公知であるあらゆる疾患又は他の有害な症状のことを指す。かかる症状としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、神経性及び神経変性の疾患、癌、心血管疾患、アレルギー及び喘息などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
用語「癌」には以下の癌が包含されるが、これらに限定されない:胸部、卵巣、頸部、前立腺、精巣、尿生殖路、食道、喉頭、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、胃、皮膚、角膜棘細胞腫、肺、表皮状癌、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌、骨、大腸癌、腺腫、膵臓、腺癌、甲状腺癌、小胞癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆汁通路、腎臓癌、脊髄性障害、リンパ障害、ホジキン病、毛様細胞、頬側空腔及び咽頭(口頭)癌、唇癌、舌癌、口癌、咽頭癌、小腸癌、結腸癌、大腸癌、直腸癌、脳癌及び中枢神経系の癌及び白血病。
【0093】
用語「癌」には、以下の癌が包含されるが、これらに限定されない:
類表皮口腔:頬面窩洞癌、唇癌、舌癌、口癌、咽頭癌、
心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫、
肺:気管支癌(扁平上皮細胞又は類表皮腫、未分化小細胞、未分化大細胞、非小細胞癌)、腺癌、歯槽(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫、
胃腸:食道癌(扁平上皮癌、喉頭、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃癌(癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓癌(管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ヴィポーマ)、小腸癌(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、Karposi肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸癌(腺癌、管状腺腫、絨毛状腺腫、過誤腫、平滑筋腫)、結腸直腸、大腸、大腸−直腸、直腸、
泌尿生殖器:腎臓癌(腺癌、ウィルム腫瘍、腎芽腫、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道癌(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺癌(腺癌、肉腫)、精巣癌(精上皮腫、奇形腫、胚癌、奇形癌、絨毛膜癌腫、肉腫、間質性細胞癌、線維腫、繊維腺腫、腺腫腫瘍、脂肪腫)、
肝臓:肝癌(肝臓癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞性腺腫、血管腫、胆汁通路、
骨:骨原性肉種(骨肉腫)、線維肉腫、悪性繊維組織細胞腫、軟骨性肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍、脊索腫、骨脊索腫(骨軟骨性の外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫及び巨細胞腫瘍、
神経系:頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳癌(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣腫、germinoma[松果体腫]、多様な神経膠芽腫、乏突起細胞腫、シュワン細胞腫、網膜芽腫、先天性腫瘍、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫)、
婦人科:子宮癌(子宮内膜癌)、頸部癌(頸部癌、前腫瘍頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌[漿液性膀胱腺癌、ムチン性膀胱腺癌、未確認の癌]、顆粒包膜細胞腫瘍、セルトリ−ライディヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞種、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣癌(細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫))、卵管(癌)、胸部癌、
血液:血液(脊髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、脊髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、脊髄形成異常の症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫]、毛様細胞腫、リンパ障害、
皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、Karposi肉腫、角膜棘細胞腫、モグラ形成異常母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬、
甲状腺:乳頭甲状腺癌(小胞甲状腺の癌)、髄様甲状腺癌、未分化甲状腺癌、2A型多発性内分泌腫瘍形成、2B型多発性内分泌腫瘍形成、家族性髄様甲状腺癌、クロム親和性細胞腫、パラガングリオーマ、並びに
副腎:神経芽細胞腫。
すなわち、本願明細書の用語「癌細胞」とは、上記の症状のいずれか1つに罹患する細胞のことを指す。幾つかの実施形態では、当該癌は結腸直腸癌、甲状腺癌又は乳癌から選択される。
【0094】
本発明の用語「PLK1媒介性の症状」とは、PLK1が役割を演じることが公知である疾患又は他の有害な症状のことを指す。かかる症状としては増殖性障害(例えば癌)、神経変性障害、自己免疫性障害及び炎症性障害、並びに免疫性障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物は癌(例えば直腸結腸、甲状腺、胸部及び非小細胞肺癌)、並びに脊髄の増殖性障害(例えば真性赤血球増加症、血小板血症、骨髄線維症、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球の白血病、過好酸性症候群、若年性骨髄単球の白血病及び全身性肥満細胞病を有する脊髄化生)の治療に有用である。
【0096】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物は血液生成障害の治療に有用であり、特に急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性前骨髄球性白血病(APL)及び急性リンパ球性白血病(ALL)の治療に有用である。
【0097】
他の実施形態では、本発明の化合物は、例えばアレルギー性免疫反応、又はI型過敏性反応、喘息、移植拒否などの自己免疫疾患、移植片対宿主病、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)などの神経変性障害、並びに固形癌及び悪性血液癌(例えば白血病及びリンパ腫)の治療に有用である。
【0098】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物は、アレルギー性又はI型過敏性反応、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病、エイズ関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリグ病)、多発性硬化症(MS)、統合失調症、心臓筋細胞肥大、虚血再かん流障害、脳卒中、禿頭、移植拒否、移植片対宿主病、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症、並びに固形癌及び悪性血液癌(例えば白血病及びリンパ腫)の血用に有用である。更なる形態では、前記疾患又は障害は喘息である。他の実施形態では、前記疾患又は障害は移植拒否である。
【0099】
本発明の化合物の他に、本発明の化合物の薬理学的に許容できる誘導体又はプロドラッグを、上記の障害の治療若しくは予防用の組成物に添加して使用してもよい。
【0100】
「薬理学的に許容できる誘導体又はプロドラッグ」とは、本発明の化合物の薬理学的に許容できる塩、エステル、エステルの塩又は他の誘導体であって、受容者に投与したとき、直接又は間接的に、本発明の化合物又は阻害活性を有するその代謝物質若しくは残余物を提供できるものを指す。特に好ましい誘導体又はプロドラッグとは、患者にかかる本発明の化合物を投与した時に生物学的利用能を増加させる化合物(例えば経口投与用の化合物が血液中に直ちに吸収される)であるか、又は親化合物よりも生物学的領域(例えば脳又はリンパ系)への親化合物の輸送が強化させる化合物である。
【0101】
本発明の化合物の薬理学的に許容できるプロドラッグとしてはエステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩及びスルホン酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
これらの医薬組成物に使用できる薬理学的に許容できる担体としては、限定されないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えばヒト血清アルブミン)、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸又はカリウムソルビン酸塩のような緩衝剤、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、塩又は電解質(例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、マグネシウム三リン酸、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が挙げられる。
【0103】
本発明の組成物は、吸入スプレー、局所投与、直腸投与、鼻孔投与、バッカル、経膣又はインプラントリザーバを介して、経口投与、非経口投与することができる。本明細書の用語「非経口投与剤」には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、内部滑液、内部胸骨、クモ膜下腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内などの注射又は注入用の薬剤が包含されるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、当該組成物は経口投与、腹膜内投与又は静脈内注射により投与される。
【0104】
注射可能な調製物(例えば水性若しくは油性の、無菌の注射可能懸濁液)を、適切な分散剤、湿潤剤又は懸濁剤を使用して、周知の製薬技術により処方してもよい。無菌注射用製剤は、無菌の注射可能な溶液、懸濁液又はエマルジョンであってもよく、例えば1,3−ブタンジオールなどを非毒性の非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒として用いて調製してもよい。水、リンガー溶液及び等張食塩液が、使用できる許容できる担体及び溶媒として挙げられる。また、無菌かつ不揮発性の油が従来溶媒又は懸濁用の媒体として使用されている。ゆえに、いかなる適切な不揮発性油(合成モノ−又はジグリセリドを含む)も使用できる。脂肪酸(例えば、オレイン酸)及びそのグリセリド誘導体は、天然の薬理学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油又はひまし油、特にそれらのポリオキシエチル化型)と同様に、注射可能溶液の調製に有用である。これらの油中溶液又は懸濁液は、長鎖アルコール系の希釈剤又は分散剤(例えばエマルジョン及び懸濁液などの薬理学的に許容できる剤形の調製に通常用いられるカルボキシメチルセルロースなどの分散助剤)を含有してもよい。薬理学的に許容できる固体、液体又はその他の剤形の調製に通常用いられる、その他の界面活性剤(例えばTween、Span)、及び他の乳化剤又は生物学的利用能を向上させる物質を、製剤において用いてもよい。
【0105】
本発明の医薬組成物はカプセル、錠剤、水溶性懸濁液又は溶液を含むがこれに限らない、いかなる経口的に許容できる経口投与用剤形であってもよい。経口投与用の錠剤の場合、通常使用する担体としてラクトース及び穀物澱粉が挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)も通常添加される。小規模な経口投与の場合、有用な希釈剤としてはラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。水溶性懸濁液を経口投与に用いる場合、活性成分を乳化剤と混合して製剤化する。必要に応じて特定の甘味料、調味料又は着色剤を添加してもよい。
【0106】
あるいは本発明の医薬組成物は直腸投与用の坐薬の形態で投与してもよい。これらは本発明の化合物と、直腸又は膣の空腔内で溶融し、有効成分を放出する適切な非刺激性添加剤又は担体とを混合して調製してもよい。かかる材料としては限定されないがカカオバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0107】
本発明の医薬組成物は局所投与してもよく、特に治療の標的が局所投与による即座のアクセスが可能な領域又は器官(目、皮膚又は下部腸管などの疾病)である場合、これらの領域又は器官の各々に応じて適切な局所用の製剤を容易に調製できる。
【0108】
下部腸管への局所投与用製剤としては、直腸坐薬製剤(上記参照)、又は適切な浣腸製剤が挙げられる。局所−経皮パッチを用いてもよい。
【0109】
局所投与用の医薬組成物は、活性成分を1つ以上の担体に懸濁若しくは溶解させて調製した適切な軟膏剤として調製してもよい。本発明の化合物の局所投与用の担体としては、限定はされないが、鉱油、流動パラフィン、白ペトロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水が挙げられる。あるいは医薬組成物は、活性成分を1つ以上の担体に懸濁若しくは溶解させて調製した適切なローション剤若しくはクリーム剤として調製してもよい。適切な担体としては鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
眼科用途においては、当該医薬組成物は、等張のpH調整された無菌の生理食塩水、又は好ましくは等張のpH調整された無菌の生理食塩水中の微粒状の懸濁液として処方されてもよく、防腐剤(例えば塩化ベンザルコニウム)を必要に応じて添加してもよい。あるいは眼科用途においては、当該医薬組成物は軟膏(例えばペトロラタム中)として処方してもよい。
【0111】
本発明の医薬組成物は鼻腔へのエアゾール又は吸入により投与してもよい。かかる組成物は製薬業界の公知技術に従って調製され、生理食塩水中の溶解として調製してもよい。またベンジルアルコール又はその他の適切な防腐剤、生物学的利用能を強化する吸収促進剤、フルオロカーボン及び/又は他の従来公知の可溶化剤若しくは分散剤を使用してもよい。
【0112】
担体材料と混合して単位投与形態を調製する際、キナーゼ阻害剤の量は、治療対象となる宿主、具体的な投与様式などにより適宜変化させてもよい。好ましくは当該組成物は、これらの組成物を投与される患者に対して0.01〜100mg/kg体重/日の阻害剤投与量となる態様で投与することが好ましい。
【0113】
具体的な患者又は生物体のための具体的な有効量は、治療しようとする障害、障害の重症度、使用する具体的な化合物の活性、使用する具体的な組成物、年齢、体重、健康状態、性別及び患者の食事、投与回数、投与経路及び使用する化合物の具体的なクリアランス速度、治療期間、併用する具体的な化合物、その他医学的に周知の諸要因を考慮した上で決定される。
【0114】
更に他の態様は、患者に本発明の化合物又は当該化合物を含む薬理学的に許容できる組成物の有効量を投与することを含む、プロテインキナーゼ媒介性疾患の治療若しくは低減化方法の提供に関する。本発明の特定の実施形態では、化合物又は薬理学的に許容できる組成物の「有効量」とは、PLK1媒介性疾患にとり有効なその量である。当該化合物及び組成物は、本発明の方法に従って、プロテインキナーゼ媒介性疾患の治療若しくは低減化に有効な任意の投与量で、及び任意の投与経路で投与することができる。実際の必要な投与量は、患者、感染症の重症度、具体的な薬剤、その投与様式、種、年齢及び健康状態に応じて、患者ごとに適宜変化する。本発明の化合物は好ましくは、投与の簡便性及び投与量の均一化のためにユニットドーズ形態で処方される。本明細書で使用される「ユニットドーズ形態」という用語は、治療される患者にとり適当な薬剤を含む、物理的に分配された単位のことを意味する。しかしながら、本発明の化合物及び組成物の一日あたりの使用量は、熟練した主治医による医学的判断により決定されることを理解すべきである。具体的な患者又は生物体のための具体的な有効量は、治療しようとする障害、障害の重症度、使用する具体的な化合物の活性、使用する具体的な組成物、年齢、体重、健康状態、性別及び患者の食事、投与回数、投与経路及び使用する化合物の具体的なクリアランス速度、治療期間、併用する具体的な化合物、その他医学的に周知の諸要因を考慮した上で決定される。本明細書で用いられる「患者」の用語は動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0115】
幾つかの実施形態では、前記プロテインキナーゼはPLKである。
【0116】
本発明の他の実施形態には、本発明の化合物又は組成物を投与することを含む、例えば以下から選択される疾患若しくは症状の、治療若しくは低減化方法が包含される:免疫反応(アレルギー又はI型過敏性反応)、喘息、移植拒否などの自己免疫疾患、移植片対宿主病、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)などの神経変性障害、固形癌及び悪性血液癌(例えば前記患者に白血病及びリンパ腫)。
【0117】
他の実施形態では本発明は増殖性障害、心臓障害、神経変性障害、自己免疫不全、臓器移植に関連する症状、炎症性障害、免疫不全又は免疫媒介性障害から選択される疾患若しくは症状の治療若しくは低減化方法の提供に関し、当該方法は前記患者に本発明の化合物又は組成物を投与することを含む。
【0118】
更なる態様では、当該方法は更に前記患者に化学療法剤又は抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調整剤若しくは免疫抑制剤、神経組織栄養因子、心血管疾患剤、糖尿病治療剤又は免疫不全症治療剤から選択される追加治療薬を投与するステップを含んでなり、当該方法では前記追加的治療薬が治療しようとする疾患にとり適当であり、また前記追加的治療薬が前記組成物と共に単回投与されるか、又は前記組成物とは別に多回投与される。
【0119】
一実施形態では、当該疾患又は障害はアレルギー性又はI型過敏性反応、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病、エイズ関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリグ病)、多発性硬化症(MS)、統合失調症、心臓筋細胞肥大、虚血再かん流障害、脳卒中、禿頭、移植拒否、移植片対宿主病、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症、並びに固形癌及び悪性血液癌(例えば白血病及びリンパ腫)の血用に有用である。更なる形態では、前記疾患又は障害は喘息である。他の実施形態では、前記疾患又は障害は移植拒否である。
【0120】
本発明の他の実施態様は、患者に上記の医薬組成物の1つを投与するステップを含む、PLK1媒介性の症状の治療若しくは予防方法の提供に関する。
【0121】
好ましくは当該方法は、癌(例えば肺腺癌及び小細胞肺癌を含む乳癌、直腸結腸癌、前立腺、皮膚癌、膵臓癌、脳癌、尿生殖器癌、リンパ系癌、胃癌、咽頭癌及び肺癌)、脳卒中、糖尿病、骨髄腫、肝腫大、心臓肥大症、アルツハイマー病、嚢胞性線維症及びウイルス性疾患又は上記した具体的な疾患又は障害から選択される全ての症状の治療若しくは予防に用いられる。
【0122】
他の実施形態では、本発明は上記の医薬組成物の1つを患者に投与するステップを含む、癌の治療若しくは予防方法の提供に関する。
【0123】
本発明の他の態様は、患者に式Iの化合物又は当該化合物を含有する組成物を投与することを含む、患者のPLK1活性の阻害方法の提供に関する。
【0124】
本発明の他の態様は、式Iの化合物又は当該化合物を含有する組成物を用いてPLK1を阻害し、癌細胞の有糸分裂を崩壊させるステップを含む方法の提供に関する。
【0125】
本発明の薬理学的に許容できる組成物は治療しようとする感染症の重症度に応じて、経口、直腸、非経口、大槽内、膣内、腹膜内、局所(粉体、軟膏又はドロップなど)、バッカル(経口又は鼻腔内噴霧)により、ヒト及び他の動物に投与できる。特定の実施形態では所望の治療的な効果を得るため、本発明の化合物を約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは約1mg/kg〜約25mg/kg(患者体重あたり、1日あたりの量。1日に複数回に分けて投与。)の投与量レベルで、経口的又は非経口的に投与してもよい。
【0126】
経口投与用の液体剤形としては限定されないが、薬理学的に許容できるエマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。有効成分に加えて、液体剤形は例えば従来技術において通常使用される不活性希釈剤、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤(例えばエチルアルコールイソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特定の綿実、落花生類、穀物、細菌、オリーブ、キャスタ及び胡麻油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物)を含有してもよい。不活性希釈剤の他に、口腔用組成物では湿潤剤、乳化剤薬品、甘味料、調味料及び香料、懸濁剤などの補助剤を含有させてもよい。
【0127】
注射可能な調製物(例えば水性若しくは油性の、無菌の注射可能懸濁液)を、適切な分散剤、湿潤剤又は懸濁剤を使用して、周知の製薬技術により処方してもよい。無菌注射用製剤は、無菌の注射可能な溶液、懸濁液又はエマルジョンであってもよく、例えば1,3−ブタンジオールなどを非毒性の非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒として用いて調製してもよい。水、リンガー溶液、U.S.P.及び等張食塩液は使用できる許容できる担体及び溶媒である。また、無菌かつ不揮発性の油が従来溶媒又は懸濁用の媒体として使用されている。ゆえに、いかなる適切な不揮発性油(合成モノ−又はジグリセリドを含む)も使用できる。更にオレイン酸のような脂肪酸を注射可能薬剤の調製に用いてもよい。
【0128】
注射用組成物には例えば、バクテリア捕捉フィルターで濾過してもよく、又は使用前に滅菌水又は他の滅菌済み注射溶媒に溶解又は分散できる、滅菌済み固形組成物の形態の、抗菌剤を添加して滅菌してもよい。
【0129】
本発明の化合物の効果を長期化するため、化合物を皮下もしくは筋肉内注入して吸収を遅延させるのが望ましい。これは低い水溶性を有する結晶質若しくはアモルファス材料の液体懸濁液を用いることにより可能となる。また、化合物の吸収速度はその溶解速度、すなわち結晶のサイズ及び結晶の形態に依存する。あるいは非経口的に投与された化合物の吸収遅延は、化合物を油担体中に溶解又は懸濁させることにより可能となる。注射可能なデポー形態は、生分解性ポリマー(例えばポリ乳酸−ポリグリコリド)化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより調製する。ポリマーに対する化合物の比率及び使用する特定のポリマーの性質によって、化合物の放出速度を制御できる。他の生分解性ポリマーの例としてはポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。注射可能薬剤のデポー製剤はまた、体組織と適合性を持つリポソーム又はミクロエマルジョン中に化合物を含有させることにより調製できる。
【0130】
直腸若しくは膣への投与用の組成物として、本発明の化合物と、適切な非刺激性添加剤又は担体(例えば常温では固形であるが体温で液状となり、ゆえに直腸又は膣の空腔内で溶融し、有効成分を放出するカカオバター、ポリエチレングリコール又は座薬ワックス)とを混合して坐薬を調製してもよい。
【0131】
経口投与用の固体投与形態としてはカプセル、錠剤、ピル、粉及び顆粒が挙げられる。かかる固体投与形態では有効成分を、クエン酸ナトリウム又はリン酸ジカルシウムなどの少なくとも1つの不活性な、薬理学的に許容できる添加剤又は担体、及び/又はa)充填材又は増量剤(例えば澱粉、ラクトース、蔗糖、グルコース、マンニトール及びケイ酸)、b)結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、蔗糖及びアカシア)、c)湿潤剤(例えばグリセロール)、d)崩壊剤(例えば寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯又はタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウム)、e)溶液遅延剤(例えばパラフィン)、f)吸収促進剤(例えば第4級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアリン酸塩)、h)吸収剤(例えばカオリン及びベントナイト粘土)、及びi)潤滑油(例えばタルク、カルシウムステアリン酸塩、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ナトリウムラウリル硫酸塩及びそれらの混合物)と混合する。カプセル、錠剤及びピルの場合、投与単位には緩衝剤を含有させてもよい。
【0132】
ラクトース又は乳糖、あるいは高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、同様のタイプの固体組成物を調製し、硬質及び軟質ゼラチンカプセル中の充填物質としてもよい。錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤などの固体投与形態を、腸溶コーティング及び薬物製剤技術分野で公知のその他のコーティング技術を用いて製造できる。それらは不透明化剤を任意に含有してもよく、それらは任意に、腸管内の特定の部位においてのみ、優先的に活性成分を遅延放出する組成物であってもよい。使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。ラクトース又は乳糖、あるいは高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、同様のタイプの固体組成物を調製し、硬質及び軟質ゼラチンカプセル中の充填物質としてもよい。
【0133】
有効成分は上記のような1つ以上の添加剤と共にマイクロカプセルに充填された形態であってもよい。コーティング及びシェル(例えば医薬処方技術で周知の消化器官内用コーティング、制御放出コーティング及び他のコーティング)を施し、錠剤、糖衣剤、カプセル、ピル及び顆粒の固体投与形態を調製することができる。かかる固形投与形態では有効成分をスクロース、ラクトース又はデンプンのような少なくとも1つの不活性希釈剤と混合してもよい。かかる投与形態では通常、不活性希釈剤以外の添加材、例えば潤滑材及びその他の打錠助剤(ステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロース)を添加してもよい。カプセル、錠剤及びピルの場合、剤形は緩衝剤を含有させてもよい。それらは不透明化剤を任意に含有してもよく、それらは任意に、腸管内の特定の部位においてのみ、優先的に活性成分を遅延放出する組成物であってもよい。使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0134】
本発明化合物の局所又は経皮投与用の投与形態としては軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー剤、吸入剤又はパッチ剤が挙げられる。有効成分を、薬理学的に許容できる担体と共に無菌の条件の下で混合する。また防腐剤又はバッファを必要に応じて添加してもよい。眼科用の製剤、点耳剤及び点眼剤も本発明の範囲内に包含される。更に、本発明には経皮パッチの使用も包含され、それは身体への化合物の輸送効率を高める効果が期待できる。かかる剤形は適当な媒体中に化合物を溶解又は調合することにより調製される。吸収促進剤を用いて皮膚への化合物の吸収を増加させてもよい。速度は、その速度を制御する膜を提供するか、ポリマーマトリックスまたはゲル中に化合物を分散させるかのいずれかによって、制御され得る。
【0135】
別の薬剤との投与
治療又は予防される具体的なPLK1媒介性の症状に応じて、更なる薬剤(その症状の治療若しくは予防に通常投与される)を、本発明の阻害剤と共に投与してもよい。例えば、化学療法剤又は他の抗増殖剤を本発明のPLK1阻害剤と組み合わせ、増殖性疾患の治療に供してもよい。
【0136】
それらの追加的な薬剤は、プロテインキナーゼ阻害剤を含有する化合物又は組成物とは別に、多回投与計画の一部として投与してもよい。あるいはそれらの薬剤は、単回投与用の剤形の一部として、キナーゼ阻害剤と共に組成物中に混在させてもよい。
【0137】
本発明の他の態様は、式Iの化合物又は前記化合物を含有する組成物と生物学的サンプルを接触させることを含む、生物学的サンプル又は患者におけるPLK1活性の阻害方法に関する。本明細書で用いられる用語「生物学的サンプル」としては、細胞培養液又はその抽出物、哺乳類から得た生検材料又はその抽出物、血液、唾液、尿、排泄物、精液、涙液などの液体又はその抽出物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
生物学的サンプルにおけるキナーゼ活性の阻害は、当業者に公知の様々な目的に有用である。かかる目的の例としては輸血、臓器移植及び生物学的サンプルの貯蔵などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
本発明の他の態様は、生物学的及び病理学的現象におけるキナーゼの解析、かかるキナーゼにより媒介される細胞内シグナル伝達経路の解析、並びに新規なキナーゼ阻害剤の比較評価に関する。かかる使用の例としては、生物学的アッセイ(例えば酵素アッセイ及び細胞ベースのアッセイ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
本発明の理解をより完全なものにするため、以下に実施例を示す。本発明の化合物はこれらの実施例に従って試験することができる。なお、これらの実施例は例示のみを目的とするものであり、いかなる形であれ本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきでない。
【実施例】
【0141】
反応式I−a
【化45】

【0142】
<実施例1>
2−アミノ−5−ブロモピリジン−3−カルボニトリル(2)
2−アミノピリジン−3−カルボニトリル1(0.56g、4.6mmol)を10mLのHOAcに溶解させ、更にNaCOの1等量を添加した。次にBrの1.1等量を滴下して添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。オレンジ色の沈殿が形成され、それらを濾過して回収し、十分量の所望の化合物2を得た。化合物を更に精製せずに使用した。
【0143】
<実施例2>
5−ブロモ−2−クロロピリジン−3−カルボニトリル(3)
化合物2を0℃で濃塩酸中に溶解させ、NaNOのHO中溶液1.1等量を滴下して添加した。沈殿が形成された。白色固体を濾過して回収し、標題化合物3を得た。全収率は70%であった。
【0144】
<実施例3>
5−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−アミン(4)
化合物3(307mg、1.4mmol)を、マイクロ波チューブ(NHNHを5等量添加)中のEtOH(10mL)に溶解させ、反応混合物に170℃で10分間マイクロ波を照射した。溶媒を蒸発させ、十分量の標題化合物4を得た。
【0145】
<実施例4>
5−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−スルホニル塩化物(5)
化合物4(0.45mmol)を10N HCl(0.1mL)0℃の酢酸(1mL)及びギ酸(0.1mL)の混合物に溶解し、NaNO(1.2等量)/HO(0.06mL)を添加し、温度を0℃に維持しながらジアゾ溶液を更に10分間撹拌し、更にCuCl2水和物(18mg)と酢酸(0.4mL)の調製直後の混合物に滴下して注入し、室温でSO(126mg)を溶解させた。反応混合物を室温で15分間撹拌し、更に蒸発乾燥させた。残余物をエーテルにより抽出し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、溶媒を蒸発させ標題化合物5を得た。
【0146】
<実施例6>
フェニル5−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−スルホニルアミド(6)
化合物5を無水THFに溶解させ、KCOを1等量添加し、更にアニリンを1.2等量添加した。反応混合物を一晩80℃で撹拌し、溶媒を蒸発させ、化合物6を得た。反応液を更に精製せずに次の処理に供した。
【0147】
<実施例7>
フェニル5−(3−ピリジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−スルホニルアミド(I−3)
化合物6(50mg、0.14mmol)の反応混合物をマイクロ波チューブに添加し、(ピリジン−3−イル−3−ホウ酸1.5等量、更にKCOを3等量添加し、更にこの反応混合物に2mLのジオキサン及び1mLのHOを添加し、更に10%のPd(PPhを添加し、反応混合物を150℃で10分間マイクロウエーブ照射した。有機層を分離し、乾燥させた。反応混合物を再度EtOAcに溶解し、有機相をHO及び塩水で洗浄し、NaSOを通じて乾燥させた。溶媒を反応混合物から蒸発させ、混合物を調製用HPLCで分離し、標題化合物I−3を得た。MS+1=352.3。
【0148】
反応式II−a
【化46】

【0149】
<実施例8>
化合物7(1.4mmol)を、マイクロ波チューブ(NHNHを5等量添加)中のEtOH(10mL)に溶解させ、反応混合物に170℃で10分間マイクロ波を照射した。溶媒を蒸発させ、十分量の標題化合物8を得た。
【0150】
化合物8(0.45mmol)を10N HCl(0.1mL)0℃の酢酸(1mL)及びギ酸(0.1mL)の混合物に溶解し、NaNO(1.2等量)/HO(0.06mL)を添加し、温度を0℃に維持しながらジアゾ溶液を更に10分間撹拌し、更にCuCl2水和物(18mg)と酢酸(0.4mL)の調製直後の混合物に滴下して注入し、室温でSO(126mg)を溶解させた。反応混合物を室温で15分間撹拌し、更に蒸発乾燥させた。残余物をエーテルにより抽出し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、溶媒を蒸発させ標題化合物9を得た。
【0151】
化合物9を無水THFに溶解させた。KCO1等量を更に溶液に添加し、更にアミンを1.2等量添加した。反応混合物を一晩80℃で撹拌した。次に溶媒を蒸発させ、Rが本明細書で定義されるとおりである式I(反応式II−a)の化合物を得た。
【0152】
LCMS 方法A
MSサンプルは、エレクトロスプレーイオン化により、単一MSモードで作動するMicroMass ZQ、ZMD又はクアトロII質量分析器で分析した。サンプルを、フロー注入(FIA)又はクロマトグラフィを使用して質量分析器に導入した。全てのMS分析の移動相を修飾物質として0.2%のギ酸又は0.1%のTFAを添加したアセトニトリル−水混合液とした。カラム勾配条件は、3分の勾配時間、10%−90%のアセトニトリルとし、Waters YMC Pro−C18 4.6×50mmカラムで5分間ランを行った。フロー速度を1.5ml/分とした。
【0153】
LCMS 方法B
MSサンプルは、エレクトロスプレーイオン化により、単一MSモードで作動するMicroMass クアトロマイクロ質量分析器で分析した。サンプルを、クロマトグラフィを使用して質量分析器に導入した。全てのMS分析の移動相を10mMの(pH7)酢酸アンモニウム及びアセトニトリル−メタノール混合液(1:1)とし、カラム勾配条件は、3.5分の勾配時間、10%−100%のアセトニトリル−メタノールとし、ACE C8 3.0×75mmカラムで5分間ランを行った。フロー速度を1.2ml/分とした。
【0154】
化合物I−1からI−3は方法Aに従って分析した。化合物I−4からI−7は方法Bに従って分析した。
【0155】
化合物I−2からI−7は上記の反応式I−aに従って調製した。化合物I−1は上記の反応式II−aに従って調製した。
【化47】

【0156】
【表1】

【0157】
<実施例9:PLK1アッセイ>
以下のアッセイを使用し、本発明の化合物のヒトPLKキナーゼ阻害剤としての作用を解析した。
【0158】
Plk1阻害アッセイ:
放射性リン酸塩取込アッセイを使用して、Plk1阻害能を基に化合物をスクリーニングした。25mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMgCl及び1mMのDTTの混合液中でアッセイを実施した。最終的な基質濃度を、50μM[γ−33P]ATP、136mCi 33P ATP/mmol ATP(Amersham Pharmacia Biotech/Sigma Chemicals社製)及び10μMのペプチド(SAM68タンパク質Δ332−443)とした。15nM Plk1(A20−K338)の存在下で25℃でアッセイを実施した。ATP及び目的の試験化合物を除き、アッセイ用のストック緩衝液として上記の試薬全てを含有させて調製した。ストック液30μLを96穴プレートに添加し、2倍希釈した試験化合物(10μMの最終濃度から開始した通常の2倍連続希釈液)の連続希釈液を含有する2μLのDMSOストック(最終DMSO濃度5%)を添加した。プレートを25℃で10分間プレインキュベートし、8μL[γ−33P]ATP(最終濃度50μM)を添加して反応を開始させた。
【0159】
60分後に0.14Mのリン酸100μLを添加し、反応を停止させた。マルチスクリーンホスホセルロースフィルタ96穴プレート(Millipore社製、Cat no.MAPHN0B50)を、アッセイ停止用混合液125μLの添加前に、100μLの0.2Mリン酸で前処理した。プレートを4回、200μLの0.2Mリン酸で洗浄した。乾燥後、100μLのOptiphase‘SuperMix’液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer社製)をウェルに添加し、その後シンチレーションカウント(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter、Wallac)を実施した。
【0160】
データポイントの全ての平均バックグラウンド値を減算した後、Prism Software Package(Macintosh、GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)のGraphPad Prism Version3.0cxを使用して、Ki(app)のデータを、初速度データの非線形回帰分析により算出した。
【0161】
Plk2阻害アッセイ:
放射性リン酸塩取込アッセイを使用して、Plk2阻害能を基に化合物をスクリーニングした。アッセイは25mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMgCl2、0.1%のBSA及び2mMのDTTの混合液中で実施した。最終基質濃度を、200μM[γ−33P]ATP、57mCi 33P ATP/mmol ATP(Amersham Pharmacia Biotech/Sigma Chemicals)及び300μMペプチド(KKKISDELMDATFADQEAK)とした。25nM Plk2の存在下、25℃でアッセイを実施した。ATP及び目的の試験化合物を除き、アッセイ用のストック緩衝液として上記の試薬全てを含有させて調製した。ストック液30μLを96穴プレートに添加し、2倍希釈した試験化合物(10μMの最終濃度から開始した通常の2倍連続希釈液)の連続希釈液を含有する2μLのDMSOストック(最終DMSO濃度5%)を添加した。プレートを25℃で10分間プレインキュベートし、8μL[γ−33P]ATP(最終濃度200μM)を添加して反応を開始させた。
【0162】
90分後に0.14Mのリン酸100μLを添加し、反応を停止させた。マルチスクリーンホスホセルロースフィルタ96穴プレート(Millipore社製、Cat no.MAPHN0B50)を、アッセイ停止用混合液125μLの添加前に、100μLの0.2Mリン酸で前処理した。プレートを4回、200μLの0.2Mリン酸で洗浄した。乾燥後、100μLのOptiphase‘SuperMix’液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer社製)をウェルに添加し、その後シンチレーションカウント(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter、Wallac)を実施した。
【0163】
データポイントの全ての平均バックグラウンド値を減算した後、Prism Software Package(Macintosh、GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)のGraphPad Prism Version3.0cxを使用して、Ki(app)のデータを、初速度データの非線形回帰分析により算出した。
【0164】
Plk3阻害アッセイ:
放射性リン酸塩取込アッセイを使用して、Plk3阻害能を基に化合物をスクリーニングした。アッセイを、25mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMgCl及び1mMのDTTの混合液中で実施した。最終的な基質濃度を、75μM[γ−33P]ATP、60mCi 33P ATP/mmol ATP(Amersham Pharmacia Biotech/Sigma Chemicals)及び10μMペプチド(SAM68タンパク質Δ332−443)とした。5nM Plk3(S38−A340)の存在下、25℃でアッセイを実施した。ATP及び目的の試験化合物を除き、アッセイ用のストック緩衝液として上記の試薬全てを含有させて調製した。ストック液30μLを96穴プレートに添加し、2倍希釈した試験化合物(10μMの最終濃度から開始した通常の2倍連続希釈液)の連続希釈液を含有する2μLのDMSOストック(最終DMSO濃度5%)を添加した。プレートを25℃で10分間プレインキュベートし、8μL[γ−33P]ATP(最終濃度75μM)を添加して反応を開始させた。
【0165】
60分後に0.14Mのリン酸100μLを添加し、反応を停止させた。マルチスクリーンホスホセルロースフィルタ96穴プレート(Millipore社製、Cat no.MAPHN0B50)を、アッセイ停止用混合液125μLの添加前に、100μLの0.2Mリン酸で前処理した。プレートを4回、200μLの0.2Mリン酸で洗浄した。乾燥後、100μLのOptiphase‘SuperMix’液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer社製)をウェルに添加し、その後シンチレーションカウント(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter、Wallac)を実施した。
【0166】
データポイントの全ての平均バックグラウンド値を減算した後、Prism Software Package(Macintosh、GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)のGraphPad Prism Version3.0cxを使用して、Ki(app)のデータを、初速度データの非線形回帰分析により算出した。
【0167】
Plk4阻害アッセイ:
放射性リン酸塩取込アッセイを使用して、Plk4阻害能を基に化合物をスクリーニングした。アッセイを8mMのMOPS(pH7.5)、10mMのMgCl2、0.1%のBSA及び2mMのDTTの混合液中で実施した。最終的な基質濃度を、15μM[γ−33P]ATP、227mCi 33P ATP/mmol ATP(Amersham Pharmacia Biotech/Sigma Chemicals)及び300μMペプチド(KKKMDATFADQ)とした。25nM Plk4の存在下で、25℃でアッセイを実施した。ATP及び目的の試験化合物を除き、アッセイ用のストック緩衝液として上記の試薬全てを含有させて調製した。ストック液30μLを96穴プレートに添加し、2倍希釈した試験化合物(10μMの最終濃度から開始した通常の2倍連続希釈液)の連続希釈液を含有する2μLのDMSOストック(最終DMSO濃度5%)を添加した。プレートを25℃で10分間プレインキュベートし、8μL[γ−33P]ATP(最終濃度15μM)を添加して反応を開始させた。
【0168】
180分後に0.14Mのリン酸100μLを添加し、反応を停止させた。マルチスクリーンホスホセルロースフィルタ96穴プレート(Millipore社製、Cat no.MAPHN0B50)を、アッセイ停止用混合液125μLの添加前に、100μLの0.2Mリン酸で前処理した。プレートを4回、200μLの0.2Mリン酸で洗浄した。乾燥後、100μLのOptiphase‘SuperMix’液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer社製)をウェルに添加し、その後シンチレーションカウント(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter、Wallac)を実施した。
【0169】
データポイントの全ての平均バックグラウンド値を減算した後、Prism Software Package(Macintosh、GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)のGraphPad Prism Version3.0cxを使用して、Ki(app)のデータを、初速度データの非線形回帰分析により算出した。
【0170】
<実施例10:JAK3阻害アッセイ>
以下のアッセイを使用して、JAK阻害能を基に化合物をスクリーニングした。反応を、キナーゼバッファ(100mMのHEPES(pH7.4)、1mMのDTT、10mMのMgCl、25mM NaCl、0.01%のBSA)中で実施した。アッセイの基質濃度を5μM ATP(200uCi/μmole ATP)及び1μMポリ(Glu)Tyrとした。25℃及び1nM JAK3で反応を実施した。
【0171】
96穴ポリカーボネートプレートの各ウェルに、1.5μlのJAK3阻害剤候補化合物と共に、50μlのキナーゼバッファ(2μMポリ(Glu)Tyr、及び10μM ATPを含有)を添加した。混合し、更に50μlのキナーゼバッファ(2nM JAK3酵素を含有)を添加して反応を開始させた。室温(25℃)で20分反応させた後、0.4mMのATPを含有する50μlの20%トリクロロ酢酸(TCA)を添加して反応を停止させた。各ウェル中の内容物をTomTek Cell Harvesterを使用して96穴ガラス繊維フィルタプレートに移した。洗浄後、シンチレーション液60μlを添加し、33P取込をPerkin Elmer TopCountで検出した。
【0172】
<実施例11:JAK2阻害アッセイ>
JAK−2酵素を用い、最終的なポリ(Glu)Tyr濃度を15μM、最終的なATP濃度を12μMとしたことを除き、アッセイを実施例33に記載の通り実施した。
【0173】
<実施例12:FLT−3阻害アッセイ>
放射分析フィルタ−結合実験を使用して、FLT−3活性阻害能を基に、化合物をスクリーニングした。このアッセイは基質ポリ(Glu、Tyr)4:1(pE4Y)への33P取込をモニターするものである。100mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMgCl、25mMのNaCl、1mMのDTT、0.01%のBSA及び2.5%のDMSOを含有する溶液中で反応を実施した。アッセイの最終的な基質濃度を、90のμM ATP及び0.5mg/mlのpE4Y(両方ともSigma Chemicals社製、St Louis、MO)とした。本発明の化合物の最終濃度を0.01〜5μMの範囲とした。典型的には、試験化合物の10mM DMSOストックから連続希釈液を調製し、室温で反応を実施させ、12ポイントで力価を測定した。
【0174】
2つのアッセイ溶液を調製した。溶液1の組成は、100mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMgCl、25mMのNaCl、1mg/mlのpE4Y及び180mMのATP(反応ごとに0.3mCiの[γ−33P]ATPを含有)とした。溶液2の組成は、100mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMgCl、25mMのNaCl、2mMのDTT、0.02%のBSA及び3nM FLT−3とした。アッセイは、各96穴プレートにて50μlの溶液1と本発明の化合物の2.5ml(μl)を混合することによじ実施した。溶液2を添加して反応を開始させた。室温で20分間インキュベートした後、0.4mMのATPを含有する50μlの20%のTCAにより反応を停止させた。次に反応液の全てをフィルタプレートに移し、TOMTEC(Hamden、CT)社製のHarvester 9600を用い、5%のTCAで洗浄した。pE4yへの33P取込量を、Packard Top Countマイクロプレートシンチレーションカウンター(Meriden、CT)により解析した。Prismソフトウェアを使用して、データからIC50又はKiを算出した。
【0175】
<実施例13:GSK−3阻害アッセイ>
標準的な酵素結合システム(Foxら(1998)Protein Science 7、2249)を使用して、GSK−3β(AA 1−420)活性阻害能を基に、化合物をスクリーニングした。100mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMgCl、25mMのNaCl、300μMのNADH、1mMのDTT及び1.5%のDMSOを含有する溶液中で反応を実施した。アッセイの最終的な基質濃度を、20μM ATP(Sigma Chemicals社製、St Lois、MO)及び300μMのペプチド(HSSPHQS(PO)EDEEE、American Peptide社製、サニーヴェール、CA)とした。30℃、20nM GSK−3βの存在下で反応を実施した。酵素結合システム中の成分の最終濃度を、2.5mMのホスホエノールピルビン酸、300μMのNADH、30μg/mlのピルビン酸キナーゼ及び10μg/mlの乳酸脱水素酵素とした。
【0176】
ATPを除き上記の試薬及び目的の試験化合物の全てを含有させ、アッセイ用のストック緩衝液を調製した。アッセイ用ストック緩衝液(175μl)に、0.002μM〜30μMにわたる最終濃度で目的の試験化合物を含有する5μl溶液を添加し、30℃で10分間、96穴プレートにおいてインキュベートした。定型的には、娘プレートにおいて、検査化合物をDMSO溶液で連続希釈した溶液(10mMの化合物ストックから調製)を調製し、12ポイントで力価を解析した。ATP(最終濃度20μM)溶液を20μl添加し、反応を開始させた。30℃で10分にわたりMolecular Devices Spectramaxプレートリーダー(サニーヴェール、CA)で解析し、反応速度を得た。K値を、阻害剤濃度の関数として速度データから算出した。
【0177】
本発明の多くの実施態様を説明したが、当業者であれば、本発明の基本的な実施例を基に、本発明の化合物、方法及び処理を利用するか又は含む他の変更された実施態様を想起できるであろう。ゆえに本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

又はその薬理学的に許容できる塩。
(式中、Rは(L−Zであり、RはH又は(L−Zであるか、又は、R及びRはそれらが結合する窒素原子と共に、3〜14員の飽和若しくは部分的に不飽和の単環式もしくは二環式複素環を形成し、前記環は0〜5個のJで任意に置換されてもよく、XはCR又はNであり、YはCR又はNであり、Rは水素、CN、NO、ハロ又は(L−Zであり、Rは水素、CN、NO、ハロ又は(L−Zであり、Rは水素、CN、NO、ハロ、C1−6脂肪族又はC1−6アルキリデン鎖であり、式中、鎖中の3つまでのメチレン単位が任意に、独立に−N(R)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(S)−、−C(=NR)−又は−C(O)−で置換されてもよく、Rは0〜3個のJR5で任意に置換されてもよく、各L、L、L及びLは独立にC1−6アルキリデン鎖であり、式中、鎖中の3つまでのメチレン単位が任意に、独立に−N(R)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(S)−、−C(=N)R−又は−C(O)−で置換されてもよく、Lは0〜3個のJL1で任意に置換されてもよく、Lは0〜3個のJL2で任意に置換されてもよく、Lは0〜3個のJL3で任意に置換されてもよく、Lは0〜3個のJL4で任意に置換されてもよく、各Z、Z及びZは独立に、水素、C1−6脂肪族、独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分的に不飽和若しくは完全に不飽和の単環であるか、又は、独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜5個のヘテロ原子を有する、8〜12員の飽和、部分的に不飽和若しくは完全に不飽和の二環系を形成し、Zは0〜5個のJZ1で任意に置換されてもよく、Zは0〜5個のJZ2で任意に置換されてもよく、Zは0〜5個のJZ4で任意に置換されてもよく、Zは水素、C1−6脂肪族、独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の単環式環であり、Zは0〜5個のJZ3で任意に置換されてもよく、各JL1、JL2、JL3及びJL4は独立に水素、C1−6脂肪族、C3−6脂環式基、フェニル、−(C1−4アルキル)−(フェニル)、ハロゲン、NO、CN、NH、−NH(C1−4脂肪族基)、−N(C1−4脂肪族基)、−OH、−O(C1−4脂肪族基)、−O(ハロC1−4脂肪族)、−S(C1−4脂肪族基)、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族基)、−CONH、−CONH(C1−4脂肪族基)−CO()N(C1−4脂肪族基)、−CO(C1−4脂肪族基)又はハロ(C1−4脂肪族基)であって、前記脂肪族基又はフェニル基の各々はC1−3アルキル、ハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CH又はハロ(C1−3アルキル)で任意に置換されてもよく、各Jは独立に水素、CN、NO、ハロ、フェニル、−(C1−4アルキル)−(フェニル)、5〜6員のヘテロアリール、3〜8員の脂環式基、4〜8員のヘテロシクリル又はC1−6アルキリデン鎖であり、式中、鎖中の3つまでのメチレン単位が任意に、独立に−N(R)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(S)−、−C(=N)R−又は−C(O)−で置換されてもよく、上記の各々の基はC1−3アルキル、ハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CH又はハロ(C1−3アルキル)で任意に置換されてもよく、各JR5、JZ1、JZ2、JZ3及びJZ4は独立にH、CN、NO、ハロ又は(X)−Mであり、XはC1−6アルキリデン鎖であり、式中、鎖中の3つまでのメチレン単位が任意に、独立に−NH−、−N(C1−6脂肪族)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(S)−、−C(=NH)−、−C(=N(C1−6脂肪族))−又は−C(O)−で置換されてもよく、前記脂肪族基は各々C1−3アルキル、ハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CH又はハロ(C1−3アルキル)で任意に置換されてもよく、Mは水素、C5−10アリール、5〜10員のヘテロアリール、C3−10脂環式基、4〜10員のヘテロシクリル又はC1−6脂肪族基であり、式中、MはC1−6脂肪族基、C3−6脂環式基、ハロゲン、−NO、−CN、−NH、−NH(C1−4脂肪族基)、−N(C1−4脂肪族基)、−OH、−O(C1−4脂肪族基)、−O(ハロC1−4脂肪族)、−S(C1−4脂肪族基)、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族基)、−C(O)NH、−C(O)NH(C1−4脂肪族基)、−C(O)N(C1−4脂肪族基)、−C(O)(C1−4脂肪族基)又はハロ(C1−4脂肪族基)のうちの0〜5つで任意に置換されてもよく、前記脂肪族基は各々C1−3アルキル、ハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CH又はハロ(C1−3アルキル)で任意に置換されてもよく、Rは水素、C1−6脂肪族、C(=O)(C1−6脂肪族)、−(C1−4アルキル)−(フェニル)、独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の単環であり、RはC1−3アルキル、ハロゲン、OH、OCH、OCF、NO、NH、CN、NHCH、SCH、N(CH又はハロ(C1−3アルキル)のうちの0〜5つで任意に置換されてもよく、n、m、p、q及びtは独立に各々0又は1であり、但し、nが0であるときZは水素でなく、mが0であるときZは水素でなく、pが0であるときZは水素でなく、qが0であるときZは水素でなく、R及びRがCHであるときRは水素であり、R及びR
【化2】

を形成するための結合をせず、R及びRがCHであるときRは水素であり、Rは水素であり、RはH、−NH−N=CH−Ph、−NH−NH、フェニル、4−メチルフェニル、
【化3】

ではなく、式中、Phは非置換フェニル基である。
【請求項2】
XがCRである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
YがCRである、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項4】
は独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の単環であるか、又は窒素、酸素又は硫黄から独立に選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の二環系を形成する、請求項1から3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
は独立に窒素、酸素又は硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分的に不飽和又は完全に不飽和の単環である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
がO、N又はSから選択される1〜2個のヘテロ原子を含む4〜8員のヘテロシクリル基である、請求項4記載の化合物。
【請求項7】
が水素又はC1−6脂肪族基である、請求項4記載の化合物。
【請求項8】
nが0である、請求項1から7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
nが1である、請求項1から7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
はC1−6アルキリデン鎖であり、式中、鎖中の2つまでのメチレン単位が任意に、独立に−N(R)−、−O−又は−S−で置換される、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
がC1−3アルキリデン鎖である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
が−CH−である、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
が水素である、請求項8から12のいずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
が水素、CN、NO、ハロ又はC1−6アルキリデン鎖である、請求項8から13のいずれか1項記載の化合物。
【請求項15】
が水素である、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
が水素、CN、NO、ハロ又はC1−6アルキリデン鎖である、請求項8から15のいずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
が水素である、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
が水素である、請求項16記載の化合物。
【請求項19】
が水素である、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
が水素である、請求項1から19のいずれか1項記載の化合物。
【請求項21】
が(L−Zである、請求項1から19のいずれか1項記載の化合物。
【請求項22】
qが0である、請求項1から21のいずれか1項記載の化合物。
【請求項23】
qが1である、請求項1から21のいずれか1項記載の化合物。
【請求項24】
がC1−6アルキリデン鎖である、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
以下から選択される、請求項1記載の化合物。
【化4】

【請求項26】
以下から選択される、請求項1記載の化合物。
【化5】

【請求項27】
以下から選択される、請求項1記載の化合物。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【請求項28】
請求項1から27のいずれか1項記載の化合物と、薬理学的に許容できる担体、補助剤又は賦形剤を含有する組成物。
【請求項29】
患者のプロテインキナーゼ活性の阻害方法であって、前記患者に、
a)請求項28記載の組成物、又は
b)請求項1〜27のいずれか1項記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項30】
生物学的サンプルのプロテインキナーゼ活性の阻害方法であって、請求項1から27のいずれか1項記載の化合物と前記生物学的サンプルを接触させることを含む方法。
【請求項31】
前記プロテインキナーゼがPLK1である、請求項29又は請求項30記載の方法。
【請求項32】
患者の増殖障害、神経変性障害、自己免疫不全、臓器移植に関連する症状、炎症性障害又は免疫学性障害の治療方法であって、
a)請求項28記載の組成物、又は
b)請求項1から27のいずれか1項記載の化合物を前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項33】
化学療法剤又は抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節物質若しくは免疫抑制剤、神経組織栄養因子、心血管疾患の治療剤、骨破壊的な疾患の治療剤、肝疾患治療剤、抗ウイルス剤、血液疾患治療剤、糖尿病治療剤又は免疫不全症の治療剤から選択される追加治療薬を前記患者に投与することを含み、前記追加治療薬が治療中の疾患にとり適切であり、前記追加治療薬が、前記組成物と共に単回投与用の剤形として投与されるか、又は多回投与用の剤形の一部として前記組成物とは別に投与される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
患者の大腸、胸部、胃、卵巣、頸部、腎臓、肺、中枢神経系(CNS)、前立腺、膀胱又は膵臓から選択される部位の、黒色腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫又は癌の治療方法であって、前記方法が、前記患者に
a)請求項28記載の組成物、又は
b)請求項1から27のいずれか1つの化合物を投与することを含む方法。
【請求項35】
患者の癌の治療方法であって、前記患者に、
a)請求項28記載の組成物、又は
b)請求項1から27のいずれか1項記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項36】
式Iの化合物の調製方法であって
【化11】

(式中、YはCRであり、R、R、X及びRは請求項1から27のいずれか1項において定義されたとおりである)、式6の化合物
【化12】

とR−BAとを反応させることを含む方法。
(式中、BAは適切なホウ酸又はエステルであり、適切なPdカップリング条件下で式Iの化合物を形成する。)
【請求項37】
a)式4の化合物
【化13】

を、NaNO−HO+と、更にはCuCl/SOと反応させて所望の塩化スルホニル(式5)を形成させる工程と、
【化14】

b)式5の化合物をR−NHと反応させて式6の化合物を形成する工程を含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
更に式3の化合物
【化15】

を、ヒドラジンの存在下で環化して式4の化合物を形成させる工程を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
式Iの化合物
【化16】

(式中、YはCRであり、Rは水素であり、R、X及びRは請求項1から27のいずれか1項記載のとおりに定義される)の調製方法であって、
d)式7の化合物
【化17】

をヒドラジンの存在下で環化させて式8の化合物
【化18】

を形成させる工程と、
e)式8の化合物をNaNO−HO+と、更にはCuCl/SOと反応させて式9の所望の塩化スルホニルを形成する工程と、
【化19】

f)式9の化合物をR−NHと反応させて式Iの化合物を形成させる工程を含む方法。(式中、R、R及びRは請求項1から27のいずれか1項記載のとおりに定義される。)

【公表番号】特表2009−515984(P2009−515984A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541312(P2008−541312)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/044361
【国際公開番号】WO2007/059219
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】