説明

キナーゼ阻害薬の2−アミノチアゾール−5−芳香族カルボキサミド化合物の製造法

【課題】キナーゼ阻害薬、特にたん白チロシンキナーゼおよびp38キナーゼの阻害薬として有用な化合物およびその結晶形、その製造法の提供。
【解決手段】式(IV)で示される化合物のモノ水和物の結晶。


式(IV)の化合物をエタノール/水混合物中、加熱および溶解し、次いで冷却してエタノール/水混合物から上記モノ水和物を晶出させることを特徴とする製造法。さらに、式(IV)で示される化合物の、ブタノール溶媒化合物およびエタノール溶媒化合物の結晶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キナーゼ阻害薬、たとえばたん白チロシンキナーゼおよびp38キナーゼの阻害薬として有用な2−アミノチアゾール−5−芳香族カルボキサミド化合物の製造法、該化合物の中間体および結晶体に関する。
【背景技術】
【0002】
式I:
【化1】

(式中、Arはアリールまたはヘテロアリール;Lは任意のアルキレン結合基;およびR,R,RおよびRは後記と同意義である)
で示されるアミノチアゾール−芳香族アミド化合物は、キナーゼ阻害薬、特にたん白チロシンキナーゼおよびp38キナーゼの阻害薬として有用である。
【0003】
これらの化合物は、たん白チロシンキナーゼ−関連障害、たとえば免疫学的および腫瘍学的障害[US特許No.6596746(以下、‘746特許と称す)参照]、およびUS特許出願No.10/773790(2004年2月6日出願;優先権主張:2003年2月6日出願のUS仮出願No.60/445410に基づく)(以下、‘410出願と称す)に記載のp38キナーゼ−関連病態、たとえば炎症性および免疫性病態の処置に有用であることが予測されている。
【0004】
式(IV):
【化2】

の化合物、N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−[[6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−2−メチル−4−ピリミジニル]アミノ]−5−チアゾールカルボキサミドは、SRC/ABLの障害薬であって、腫瘍学的傷害の処置に有用である。
【0005】
2−アミノチアゾール−5−カルボキサミド化合物を製造する他のアプローチが、‘746特許や‘410出願に記載されている。‘746特許には、たとえば下記反応式で示されるように、クロロチアゾールをn−BuLiで処理した後、フェニルイソシアネートと反応させて、クロロチアゾール−ベンズアミドを得、さらに保護、クロロ→アミノ置換、および脱保護を行って最終生成物アミノチアゾール−ベンズアミドに合成することから成る方法が記載されている。
【化3】

【0006】
‘410出願には、最初にたとえば反応式:
【化4】

で示されるように、N−非置換アミノチアゾールカルボン酸メチルまたはエチルエステルを、t−ブチルニトリルによるジアゾ化、次いでCuBr処理を介してブロモチアゾールカルボン酸エステルに変換し、
次いで、たとえば反応式:
【化5】

で示されるように、得られるブロモチアゾールエステルを対応するカルボン酸に加水分解し、かつ該酸を対応するアシルクロリドに変換し、
【0007】
最後に、たとえば反応式:
【化6】

で示されるように、上記アシルクロリドをアニリンとカップリング反応させて、ブロモチアゾール−ベンズアミド中間体を得、さらに最終生成物アミノチアゾール−ベンズアミドに合成することから成る多段方法が記載されている。
【0008】
2−アミノチアゾール−5−カルボキサミド化合物を製造する他のアプローチとしては、種々のカップリング条件、たとえばDCC[Roberts らの J.Med.Chem.(1972), 15, p. 1310]やDPPA[Marsham らの J.Med.Chem. (1991), 34, p.1594]を用いる、2−アミノチアゾール−5−カルボン酸とアミンのカップリング反応が包含される。
これらの方法は、副生成物の生成、高価なカップリング試薬の使用、所望収率の低下、および2−アミノチアゾール−5−カルボキサミド化合物の収得に多段反応工程の必要に関する欠点がある。
【0009】
N,N−ジメチル−N’−(アミノチオカルボニル)−ホルムアミジンをα−ハロケトンおよびエステルと反応させて、5−カルボニル−2−アミノチアゾールを得る方法が報告されている[Lin Y らの J.Heterocycl.Chem. (1979), 16, p.1377 ; Hartmann H. らのJ.Chem.Soc.Perkin Trans. (2000), 1, p.4316 ; Noack A. らの Tetrahedron (2002), 58, p.2137 ; Noack A. らの Angew.Chem. (2001), 113, p.3097 ; および Kantlehner W.らの J.Prakt.Chem./Chem.-Ztg. (1996), 338, p.403参照]。またβ−エトキシアクリレートとチオ尿素化合物の反応による2−アミノチアゾール−5−カルボキシレートの製造も報告されている[Zhao R. らの Tetrahedron Lett. (2001), 42, p.2101 参照]。
【0010】
しかしながら、アクリルアニリドやクロトンアニリドの求電子性ブロム化は、芳香族ブロム化およびα,β−不飽和炭素−炭素二重結合への付加の両方を受けることが知られている[Autenrieth の Chem. Ber. (1905), 38, p.2550 ; Eremeev らの Chem. Heterocycl.Compd.Engl.Transl. (1984), 20, p.1102 参照]。
2−アミノチアゾール−5−カルボキサミド化合物の新規で有効な製造法が望まれる。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、式(I):
【化7】

【0012】
(式中、L,Ar,R,R,R,Rおよびmは下記と同意義である)
で示される2−アミノチアゾール−5−芳香族アミド化合物の製造に関し;該製造法は、式(II):
【化8】

【0013】
(式中、Qは−O−P基、ここでPはそれが結合する酸素原子といっしょに考えると、Qが脱離可能基となるように選択され、およびAr,L,R,Rおよびmは下記と同意義である)
の化合物を水の存在下ハロゲン化試薬と反応させた後、式(III):
【化9】

【0014】
(式中、RおよびRは下記と同意義である)
のチオ尿素化合物と反応させて、式(I):
【化10】

【0015】
(式中、Arは式(I)と(II)とで同一で、アリールまたはヘテロアリール;
Lは式(I)と(II)とで同一で、必要に応じて置換されるアルキレン;
は式(I)と(II)とで同一で、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロから選ばれ;
【0016】
は式(I)と(II)とで同一で、水素、ハロゲン、シアノ、ハロアルキル、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロから選ばれ;
は式(I)と(II)とで同一で、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロから選ばれ、またはRはRと共に合してヘテロアリールまたはヘテロシクロを形成;
【0017】
は式(I)と(II)とで同一で、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロから選ばれ、またはRはRと共に合してヘテロアリールまたはヘテロシクロを形成;および
mは0または1
である)
の化合物を得ることから成る。
【0018】
本発明者らは驚くべきことに、β−(P)オキシアクリル芳香族アミドおよびチオ尿素化合物を2−アミノチアゾール誘導体に変換でき、かつ芳香族アミドをさらに、他の副生成物を生成するハロゲン化に付す必要がない方法を見出した。すなわち、この方法によれば、アミノチアゾール−芳香族アミド化合物、特に2−アミノチアゾール−5−ベンズアミド化合物を高収率で有効に製造することができる。
本発明は他の側面において、式(IV)の化合物の結晶体に指向される。
【0019】
本発明は、下記の添付図面を参考にして説明される。
図1は、式(IV)の化合物の結晶性モノ水和物の模擬(室温で生じる原子座標から算定)PXRD(上)と実験PXRD(下)を示す。
図2は、式(IV)の化合物のモノ水和物結晶体のDSCおよびTGAを示す。
図3は、式(IV)の化合物の結晶性ブタノール溶媒化合物の模擬(室温で改善した原子パラメーターから)PXRD(下)と実験PXRD(上)を示す。
【0020】
図4は、式(IV)の化合物の結晶性エタノール溶媒化合物の模擬(−40℃で改善した原子パラメーターから)PXRD(下)と実験PXRD(上)を示す。
図5は、式(IV)の化合物の結晶性ニート形状(N−6)の模擬(室温で改善した原子パラメーターから)PXRD(下)と実験PXRD(上)を示す。
図6は、式(IV)の化合物の結晶性ニート形状(T1H1−7)の模擬(室温で改善した原子パラメーターから)PXRD(下)と実験PXRD(上)を示す。
【0021】
(発明の詳細)
略語
表示を容易にするため、以下に示す略語を使用しうる。
Ph=フェニル
Bz=ベンジル
t−Bu=t−ブチル
Me=メチル
Et=エチル
Pr=プロピル
Iso−P=イソプロピル
MeOH=メタノール
EtOH=エタノール
EtOAc=酢酸エチル
Boc=t−ブチルオキシカルボニル
CBZ=カルボベンジルオキシまたはカルボベンゾキシまたはベンジルオキシカルボニル
DMF=ジメチルホルムアミド
DMF−DMA=N,N−ジメチルホルムアミド・ジメチルアセタール
DMSO=ジメチルスルホキシド
【0022】
DPPA=ジフェニルホスホリルアジド
DPPF=1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
HATU=O−ベンゾトリアゾール−1−イル・N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
LDA=リチウム・ジイソプロピルアミド
TEA=トリエチルアミン
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
KOH=水酸化カリウム
CO=炭酸カリウム
POCl=オキシ塩化リン
EDCまたはEDCI=3−エチル−3’−(ジメチルアミノ)プロピル−カルボジイミド
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
HOBt=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
NBS=N−ブロモスクシンアミド
NMP=N−メチル−2−ピロリジノン
【0023】
NaH=水素化ナトリウム
NaOH=水酸化ナトリウム
Na=チオ硫酸ナトリウム
Pd=パラジウム
Pd−CまたはPd/C=パラジウム/炭素
min=分
L=リットル
mL=ミリリットル
μL=ミクロリットル
g=グラム
mol=モル
mmol=ミリモル
meq=ミリ当量
RTまたはrt=室温
【0024】
RBF=丸底フラスコ
ret.t.=HPLC保持時間(分)
sat or sat’d =飽和
aq. =水性
TLC=薄層クロマトグラフィー
HPLC=高性能液体クロマトグラフィー
LC/MS=高性能液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー
MS=マススペクトロメトリー
NMR=核磁気共鳴
mp=融点
DSC=示差走査熱量測定
TGA=熱重量分析
XRPD=X線粉末回折図
PXRD=X線粉末回折図
【0025】
定義
本明細書および特許請求の範囲で用いる語句の定義は、以下の通りである。本明細書における基または語句に対して規定される最初の定義は、他に特別な指示がない限り、明細書および特許請求の範囲を通じて、個別にまたは別の基の一部としての基または語句に適用される。
本明細書でそれ自体または別の基の一部として用いる語句“アルキル”とは、炭素数1〜20、1〜10または1〜8の直鎖および分枝鎖飽和炭化水素を指称し、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、これらの各種分枝鎖異性体等が挙げられる。低級アルキル基、すなわち、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0026】
語句“置換アルキル”とは、有効な結合点のいずれかが1以上の置換基(たとえば1〜4の置換基、または1〜2の置換基)で置換されたアルキル基を指称する。置換基の具体例は、下記の群の1以上(または1〜3)から選ばれてよい。
(i)ハロゲン(たとえば単一ハロ置換基または多数ハロ置換基、後者の場合は、パーフルオロアルキル基あるいはClもしくはCFを有するアルキル基などが含まれる)、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、オキソ(=O)、
-ORa, -SRa, -S(=O)Re, -S(=O)2Re, -S(=O)3H, -P(=O)2-Re, -S(=O)2ORe, -P(=O)2ORe, -U1-NRbRc, -U1-N(Rd)-U2-NRbRc, -U1-NRd-U2-Rb, -NRbP(=O)2Re, -P(=O)2NRbRc, -C(=O)ORe, -C(=O)Ra, -OC(=O)Ra, -NRdP(=O)2NRbRc, -RbP(=O)2Re,
−U−アリール、−U−ヘテロアリール、−U−シクロアルキル、−U−ヘテロシクロ、−U−アリーレン−Re、−U−ヘテロアリーレン−Re、−U−シクロアルキレン−Reおよび/または−U−ヘテロシクレン−Re
【0027】
群(i)において、
(ii)−U−および−U−はそれぞれ独立して、単結合、
-U3-S(O)t-U4-, -U3-C(O)-U4-, -U3-C(S)-U4-, -U3-O-U4-, -U3-S-U4-, -U3-O-C(O)-U4-, -U3-C(O)-O-U4-, or -U3-C(=NRg)-U4-;
ここで、
(iii)UおよびUはそれぞれ独立して、単結合、アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン;
【0028】
群(i)において、
(iv)Ra,Rb,Rc,RdおよびReはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、へテロシクロまたはヘテロアリールで、これらのそれぞれは非置換あるいは1〜4のRf基で置換され(但し、Reは水素でない);あるいはRbとRcはそれらが結合する原子と共に合して、3〜8員飽和または不飽和環を形成し、該環は非置換あるいは下記Rfに対して列挙する基の1〜4で置換され;あるいはRbとRcはそれらが結合する窒素原子と共に合して、−N=CRgRh基(ここで、RgおよびRhはそれぞれ独立して、水素、アルキル、またはRf基で置換されたアルキル)を形成し;
【0029】
ここで、
(v)上記各存在する場合のRfは、アルキル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、−O(アルキル)、SH、−S(アルキル)、アミノ、アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、または1〜2のハロゲン,シアノ,ヒドロキシ,−O(アルキル),SH,−S(アルキル),アミノ,アルキルアミノ,ハロアルキル,および/またはハロアルコキシで置換された低級アルキルから独立して選ばれ;および
群(ii)において、
(vi)tは0、1または2である。
【0030】
本明細書でそれ自体または別の基の一部として用いる語句“アルケニル”とは、ノルマル鎖の炭素数2〜20、別法として2〜12および/または1〜8で、ノルマル鎖に1〜6の二重結合を有する直鎖または分枝鎖基を指称し、たとえばビニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ブテニル、4−ペンテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、4−ヘプテニル、3−オクテニル、3−ノネニル、4−デセニル、3−ウンデセニル、4−ドデセニル、4,8,12−テトラデカトリエニル等が挙げられる。置換アルケニルとは、上記置換アルキルの場合に定義したものから選ばれる1以上の置換基(たとえば1〜3の置換基、あるいは1〜2の置換基)を有するアルケニルを指称する。
【0031】
本明細書でそれ自体または別の基の一部として用いる語句“アルキニル”とは、2〜12の炭素原子、別法として2〜4の炭素原子、および少なくとも1の三重炭素−炭素結合を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を指称し、たとえばエチニル、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、2−ヘプチニル、3−ヘプチニル、4−ヘプチニル、3−オクチニル、3−ノニニル、4−デシニル、3−ウンデシニル、4−ドデシニル等が挙げられる。置換アルキニルとは、上記置換アルキルの場合に定義したものから選ばれる1以上の置換基(たとえば1〜4の置換基、あるいは1〜2の置換基)を有するアルキニルを指称する。
【0032】
語句“アルキル”を別の基の接尾辞として、たとえば(アリール)アルキルまたはアリールアルキルを用いるとき、この連結語は、その中の少なくとも1の置換基が明確に指定された基である置換アルキル基を指称することを意味する。たとえば、(アリール)アルキルとは、アルキル置換基の少なくとも1つがアリールである上記規定の置換アルキル基、たとえばベンジルを指称する。しかして、指定の−O(アルキル)および−S(アルキル)基において、これらの場合の結合点はそれぞれ、酸素および硫黄原子にあることを理解すべきである。
【0033】
上記規定のアルキル基が二価、すなわち、2つの他の基に結合するのに2つの単結合を有する場合、それは“アルキレン”基と称せられる。同様に、上記規定のアルケニル基およびアルキニル基がそれぞれ、2つの他の基に結合する単結合を有する二価の基である場合、それらはそれぞれ、“アルケニレン”基および“アルキニレン”基と称せられる。
【0034】
アルキレン、アルケニレンおよびアルキニレン基の具体例としては、
【化11】

等が挙げられる。
【0035】
アルキレン基は必要に応じて、結合価が置換アルキル基の場合に定義した1以上の基との結合を可能にするように置換されてよい。すなわち、たとえば置換アルキレン基としては、
【化12】

などが挙げられる。
【0036】
本明細書でそれ自体または別の基の一部として用いる語句“シクロアルキル”とは、単環式アルキル、二環式アルキルおよび三環式アルキルを含む、複数環構成のトータル炭素数3〜20、または単環構成の炭素数3〜7の、1〜3の環を含有する必要に応じて置換される飽和および部分不飽和(1または2の二重結合含有)環式炭化水素基を指称する。多環シクロアルキルにおける他の環は、縮合、架橋および/または1以上のスピロ結合を介して結合してもよい。
【0037】
シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、シクロペンテニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、
【化13】

等が挙げられる。
【0038】
シクロアルキルへの言及は、シクロアルキルの場合になされる置換基の特定選択についての言及(たとえば、シクロアルキルは1以上のRf基で置換されている)がなされていない限り、すぐ下に規定の置換および非置換シクロアルキル基の両方を含むことが意図される。特定選択が全く列挙されていないとき、シクロアルキル基の置換基として任意に、以下に示す群から選ばれてよい。
【0039】
(i)ハロゲン(たとえば単一ハロ置換基または多数ハロ置換基、後者の場合は、パーフルオロアルキル基あるいはClもしくはCFを有するアルキル基などが含まれる)、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、オキソ(=O)、
-ORa, -SRa, -S(=O)Re, -S(=O)2Re, -S(=O)3H, -P(=O)2-Re, -S(=O)2ORe, -P(=O)2ORe, -U1-NRbRc, -U1-N(Rd)-U2-NRbRc, -U1-NRd-U2-Rb, -NRbP(=O)2Re, -P(=O)2NRbRc, -C(=O)ORe, -C(=O)Ra, -OC(=O)Ra, -NRdP(=O)2NRbRc, -RbP(=O)2Re,
および/または−U−Re、および/または
(ii)−U−アルキル、−U−アルケニルまたは−U−アルキニル(ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、上記(i)で列挙した1以上(または1〜3)の基で置換されている)
【0040】
群(i)および(ii)において、
(iii)−U−および−U−はそれぞれ独立して、単結合、
-U3-S(O)t-U4-, -U3-C(O)-U4-, -U3-C(S)-U4-, -U3-O-U4-, -U3-S-U4-, -U3-O-C(O)-U4-, -U3-C(O)-O-U4-, or -U3-C(=NRg)-U4-;
ここで、
(iv)UおよびUはそれぞれ独立して、単結合、アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン;
【0041】
群(i)において、
(v)Ra,Rb,Rc,RdおよびReはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、へテロシクロまたはヘテロアリールで、これらのそれぞれは非置換あるいは1以上のRf基で置換され(但し、Reは水素でない);あるいはRbとRcはそれらが結合する原子と共に合して、3〜8員飽和または不飽和環を形成し、該環は非置換あるいは下記Rfに対して列挙する基の1以上で置換され;あるいはRbとRcはそれらが結合する窒素原子と共に合して、−N=CRgRh基(ここで、RgおよびRhはそれぞれ独立して、水素、アルキル、またはRf基で置換されたアルキル)を形成し;
【0042】
ここで、
(vi)上記各存在する場合のRfは、アルキル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、−O(アルキル)、SH、−S(アルキル)、アミノ、アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、または1〜2のハロゲン,シアノ,ヒドロキシ,−O(アルキル),SH,−S(アルキル),アミノ,アルキルアミノ,ハロアルキル,および/またはハロアルコキシで置換された低級アルキルから独立して選ばれ;および
群(iii)において、
(vii)tは0、1または2である。
【0043】
接尾辞“エン”が環式基と共に用いられているとき、これは他の基への結合点として2つの単結合を有する本明細書規定の環式基を意味するものである。すなわち、たとえば本明細書で用いる語句“シクロアルキレン”とは、
【化14】

などの結合基である上記規定の“シクロアルキル”基を指称する。
【0044】
語句“アルコキシ”とは、酸素原子(−O−)を介して結合する上記のアルキルまたは置換アルキル基、すなわち、−ORi基(ここで、Riはアルキルまたは置換アルキル)を指称する。
語句“アルキルチオ”とは、硫黄原子(−S−)を介して結合する上記のアルキルまたは置換アルキル基、すなわち、−SRi基(ここで、Riはアルキルまたは置換アルキル)を指称する。
語句“アシル”とは、カルボニル基がたとえば、これらに限定されないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボシクリル、ヘテロシクリルに結合したもの、より詳しくは、C(=O)Rj基(ここで、Rjはアルキル、アルケニル、置換アルキルまたは置換アルケニル)を指称する。
【0045】
語句“アルコキシカルボニル”とは、カルボキシ基(−COO−)がアルキル基に結合したもの、すなわち、CORj(ここで、Rjは上記アシルの場合と同意義)を指称する。表示“CO”を本明細書で用いるとき、これは−COO−基を指称することが意図される。
語句“アルキルアミノ”とは、水素原子の一方または両方がアルキル基で置換されたアミノ基、すなわち、NRkRl(ここで、RkとRlの一方が水素で、他方がアルキル、またはRkとRlの両方がアルキル)を指称する。
語句“ハロ”または“ハロゲン”とは、クロロ、ブロモ、フルオロおよびヨードを指称する。
語句“ハロアルキル”とは、1以上のハロ置換基を有する置換アルキルを意味する。たとえば、“ハロアルキル”としては、モノ、ジおよびトリフルオロメチルが挙げられる。
【0046】
語句“ハロアルコキシ”とは、1以上のハロ置換基を有するアルコキシ基を意味する。たとえば、“ハロアルコキシ”としては、OCFが挙げられる。
本明細書でそれ自体または別の基の一部として用いる語句“ar”または“アリール”とは、必要に応じて置換される芳香族同素環式(すなわち、炭化水素)の、環部に6〜14の炭素を含有する単環式、二環式または三環式芳香族基[たとえばフェニル、ビフェニル、ナフチル(1−ナフチルおよび2−ナフチルを含む)およびアントラセニル]を指称し、かつ必要に応じて、これに縮合する1〜3の追加の環(シクロアルキル、へテロシクロまたはヘテロアリール)を含有してもよい。
【0047】
具体的には、
【化15】

等が挙げられる。
【0048】
アリールへの言及は、アリールの場合になされる置換基の特定選択についての言及(たとえば、アリールは上記1以上のRf基で置換されている)がなされていない限り、本明細書規定の置換および非置換アリール基の両方を含むことが意図される。特定選択が全く列挙されていないとき、アリール基の置換基として、上記シクロアルキル基の場合に列挙したものから任意に選択されてよい。
【0049】
本明細書でそれ自体または別の基の一部として用いる語句“ヘテロアリール”とは、窒素、酸素または硫黄などの1〜4のヘテロ原子を含有し、5〜10原子の必要に応じて置換される単環式および二環式芳香族環、並びにかかる環がアリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロ環に縮合したものを指称し、この場合、窒素および硫黄へテロ原子は、必要に応じて酸化されてよく、また窒素へテロ原子は必要に応じて4級化されてよい。
【0050】
ヘテロアリール基の具体例としては、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジル、ジヒドロイソインドリル、テトラヒドロキノリニル、カルバゾリル、ベンジドリル、フェナントロリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニル、
【化16】

等が挙げられる。
【0051】
ヘテロアリールへの言及は、ヘテロアリールの場合になされる置換基の特定選択についての言及(たとえば、ヘテロアリールは上記1以上のRf基で置換されている)がなされていない限り、本明細書規定の置換および非置換ヘテロアリール基の両方を含むことが意図される。特定選択が全く列挙されていないとき、ヘテロアリール基の置換基として、上記シクロアルキル基の場合に列挙したものから任意に選択されてよい。
【0052】
本明細書でそれ自体または別の基の一部として用いる語句“複素環式”または“ヘテロシクロ”とは、少なくとも1の炭素原子含有環に少なくとも1のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換される非芳香族、完全飽和または部分不飽和環式基(たとえば、3〜13員単環式、7〜17員二環式または10〜20員三環式環系、またはトータル3〜10の環原子含有)を指称する。
【0053】
ヘテロ原子含有の複素環式基の各環は、窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子から選ばれる1、2、3または4のヘテロ原子を有することができ、この場合、窒素および硫黄ヘテロ原子は、必要に応じて酸化されてよく、また窒素へテロ原子は必要に応じて4級化されてもよい。複素環式基は、環または環系の、結合価が許容するヘテロ原子または炭素原子のいずれかで結合しうる。多環複素環の環は、縮合、架橋および/または1以上のスピロ結合を介して結合していてもよい。
【0054】
複素環式基の具体例としては、オキセタニル、イミダゾリニル、オキサゾリニル、イソキサゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロロジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、4−ピペリドニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニル・スルホキシド、チアモルホリニル・スルホン、1,3−ジオキソランおよびテトラヒドロ−1,1−ジオキソチエニル、
【化17】

等が挙げられ、これらは必要に応じて置換されてよい。
【0055】
ヘテロシクロへの言及は、ヘテロシクロの場合になされる置換基の特定選択についての言及(たとえば、ヘテロシクロは上記1以上のRf基で置換されている)がなされていない限り、本明細書規定の置換および非置換ヘテロシクロ基の両方を含むことが意図される。特定選択が全く列挙されていないとき、ヘテロシクロ基の置換基として、上記シクロアルキル基の場合に列挙したものから任意に選択されてよい。
【0056】
語句“環”とは、本明細書使用の同素環式(すなわち、環原子の全てが炭素)あるいは本明細書使用の“複素環式”(すなわち、環原子として炭素と、N、Oおよび/またはSから選ばれる1〜4のヘテロ原子を含有、ヘテロシクロとも称せられる)を包含し、この場合、それぞれ(同素環式または複素環式)は、飽和または部分もしくは完全不飽和であってよい。
【0057】
明確に指定されたアリール(たとえばフェニル)、シクロアルキル(たとえばシクロヘキシル)、ヘテロシクロ(たとえばピロリジニル)またはヘテロアリール(たとえばイミダゾリル)について言及がなされているとき、他に特別に明確な指示がない限り、その言及は、上記アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロおよび/またはヘテロアリール基の場合に列挙したものから適切に選択した0〜3または0〜2の置換基を有する環を含むことが意図される。
【0058】
語句“ヘテロ原子”とは、酸素、硫黄および窒素を含む。
語句“炭素環式”とは、環すべての全原子が炭素である飽和または不飽和の単環式または二環式環を意味する。すなわち、この語句にはシクロアルキルおよびアリール環が含まれる。炭素環式環は置換されてよく、この場合の置換基は、上記シクロアルキルおよびアリール基の場合に列挙したものから選ばれる。
本明細書で環または基について言及するのに、語句“不飽和”を用いるとき、他に特別な明示がない限り、その環または基は完全不飽和あるいは部分不飽和であってよい。
【0059】
本明細書で用いる“塩基”とは、水または溶媒中でプロトンを受け入れる、酸化物、水酸化物もしくはアルコキシド、水素化物またはアンモニアなどの化合物を包含する。すなわち、塩基の具体例としては、これらに限定されないが、水酸化アルカリ金属およびアルカリ金属アルコキシド(すなわち、MOR、ここで、Mはカリウム、リチウムまたはナトリウムなどのアルカリ金属、およびRは水素または上記規定のアルキルであるか、またはRは直鎖もしくは分枝鎖C1−5アルキルで、これらに限定されないが、水酸化カリウム、カリウム・t−ブトキシド、カリウム・t−ペントキシド、水酸化ナトリウム、ナトリウム・t−ブトキシド、水酸化リチウム等が包含される);他の水酸化物、たとえば水酸化マグネシウム(Mg(OH))または水酸化カルシウム(Ca(OH));水素化アルカリ金属(すなわち、MH、ここで、Mは上記と同意義で、これらに限定されないが、水素化ナトリウムおよび水素化リチウムが包含される);アルキル化ジシラジド、たとえばカリウム・ヘキサメチルジシラジドおよびリチウム・ヘキサメチルジシラジドなど;炭酸塩、たとえば炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、重炭酸カリウム(KHCO)および重炭酸ナトリウム(NaHCO);水酸化アルキルアンモニウム、たとえば水酸化N−テトラブチルアンモニウム(TBAH)等が挙げられる。
【0060】
本明細書で用いる語句“カップリング試薬”とは、カルボン酸とアミンまたはアニリンをカップリング反応させて、アミド結合を形成するのに用いる試薬を指称する。それはカップリング添加剤、たとえばCDI、HOBt、HOAt、HODhbt、HOSuまたはNEPISを包含でき、これらは、カップリングプロセスのスピードアップや副反応の抑制に別のカップリング剤と組合せて使用される。個々のペプチド−カップリング試薬としては、CDI、DCC、EDC、BBC、BDMP、BOMI、HATU、HAPyU、HBTU、TAPipU、AOP、BDP、BOP、PyAOP、PyBOP、TDBTU、TNTU、TPTU、TSTU、BEMT、BOP−Cl、BroP、BTFFH、CIP、EDPBT、Dpp−Cl、EEDQ、FDPP、HOTT−PF6、TOTT−BF4、PyBrop、PyClopおよびTFFHが挙げられる(“Peptide Coupling Reagents:Names, Acronysm and References,”Albany Molecular Research,Inc.,Technical Reports.Vol.4,No.1参照)。
【0061】
語句“ハロゲン化剤”または“ハロゲン化試薬”とは、本明細書における式(II)の化合物をハロゲン化しうる物質を意味する。ハロゲン化試薬は、無機および有機ハロゲン化試薬を包含する。無機ハロゲン化試薬の具体例としては、塩素、臭素、沃素、弗素、および次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。有機ハロゲン化試薬としては、N−クロロスクシンイミド(NCS)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−ヨードスクシンイミド(NIS)、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、および1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインが挙げられる。
【0062】
本明細書で用いる“高収率”とは、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上の収率を意味する。
“脱離可能基”とは、I、Br、Cl、R10SOO−(ここで、R10はアルキル、置換アルキル、アリールまたはヘテロアリール)、および弱塩基、たとえばHSOなどを含む、求核分子との反応時に置換される能力を持つ基を意味する。脱離可能基の具体例としては、I、Br、Cl、およびメチルスルフェート、メシレート(メタンスルホネート)、トリフルオロメタンスルホネート、およびトシレート(p−トルエンスルホネート)のイオンが挙げられる。
【0063】
本明細書で式(II)の化合物において、Q基は−O−P、ここで、Pはそれが結合する酸素原子といっしょに考えると、Qが脱離可能基となるように、すなわち、Qが求核分子との反応時に置換される能力を有するように選択される。従って、P基はアルキル、−SOOR10、−SO10、−C(=O)R11および−Si(R12(ここで、R10は上記“脱離可能基”の定義と同意義、R11はアルキル、アリールまたはヘテロアリール、およびR12はアルキルおよびアリールから選ばれる)から選ばれてよい。
【0064】
本明細書で用いる“適当な溶媒”とは、単一溶媒並びに溶媒混合物を指称することが意図される。溶媒は所定の反応工程に対し適切に、たとえばDMF、DMA、DMSO、ジメチルプロピレン尿素、N−メチルピロリドン(NMP)、およびヘキサメチルリン酸トリアミドなどの非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン、メチルtブチルエーテル、ジメトキシメタン、およびエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル溶媒;MeOH、EtOH、およびイソプロパノールなどのアルコール溶媒;および塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、および1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン含有溶媒から選ばれてよい。また溶媒混合物は、二相混合物も包含しうる。
【0065】
本明細書で用いる語句“スラリー”とは、式(IV)の化合物の飽和溶液に追加量の式(IV)の化合物を加え、式(IV)の化合物と溶媒の不均質溶液としたものを意味するものである。
本発明は、実質的に純粋形状の式(IV)の化合物の結晶体を提供する。本明細書で用いる“実質的に純粋”とは、90%以上(90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および100%を含む)の純度を有する化合物を意味する。
【0066】
式(IV)の化合物の結晶体は一例として、90%以上の純度を有することで実質的に純粋と云えるが、この場合、残りの10%以下の物質は、他の形状の式(IV)の化合物、および/またはその製造から生じる反応不純物および/または加工処理不純物からなる。従って、実質的純粋形状の式(IV)の化合物の結晶体は、医薬組成物の中に使用することができ、これに他の所望の成分、たとえば賦形剤、担体、または分子構造の異なる活性化学物質が加えられる。
【0067】
式(IV)の化合物の結晶体は、溶解すると、その結晶構造を喪失し、このため、式(IV)の化合物の溶液と称せられる。しかしながら、本発明の全ての形状は、薬物が溶解または懸濁した液体配合物の調製に使用しうる。加えて、式(IV)の化合物の結晶体は、固体配合物にも組み入れることができる。
【0068】
治療上有効量の式(IV)の化合物の結晶体を、医薬的に許容しうる担体とコンバインして、本発明の医薬組成物を得る。“治療上有効量”とは、単独投与したときに、または追加治療剤といっしょに投与したときに、疾患または病態もしくはそれらの進行を予防、抑制または改善するのに有効な量を意味する。
【0069】
概括的方法
本発明は、キナーゼ、特にたん白チロシンキナーゼおよびp38キナーゼの阻害薬として有用な、2−アミノチアゾリル−5−芳香族アミド化合物の製造法に関する。この方法は、β−(P)オキシ−α,β−不飽和カルボキシル芳香族アミド化合物(II)(ここで、Pは本明細書で規定)、たとえばβ−(アルキル)オキシ−α,β−不飽和カルボキシルベンズアミドのハロゲン化と、チオ尿素化合物(III)との反応を必要とし、これによって式(I)の2−アミノチアゾール−5−芳香族アミド化合物を得る。
【0070】
2−アミノ基および/または5−芳香族基上の所望の置換基は、アミノチアゾール形成の前または後のいずれかで結合させることができる。たとえば、1つの実施態様において、Rが水素であるチオ尿素化合物の反応を介して、式(I)の化合物を製造し、次いでR水素原子をより官能性の基、たとえば一例として置換ピリミジン基に合成する。別の実施態様において、Rがピリミジニルであるチオ尿素化合物の反応を介して、式(I)の化合物を製造し、該ピリミジニルを必要に応じ、さらに追加の置換基を用いて合成する。
【0071】
この方法は、高価なカップリング試薬あるいは触媒を使用せず、本質的に1工程および高収率で、2−アミノチアゾリル−5−芳香族アミド化合物を製造する有効なルートを提供する。驚くべきことに、この方法によれば、ハロゲン化の後のアミノチアゾールを形成するチオ尿素化合物との反応は、望ましくない芳香族ハロゲン化を伴なうことなく行なわれる。
【0072】
本発明の1実施態様を、下記反応式1に示す。
反応式1:
【化18】

【0073】
反応式1において、Arはアリールまたはヘテロアリール、より好ましくはアリール、より一層好ましくは必要に応じて置換されるフェニルである。最も好ましい方法は、Arがアルキル、ハロゲン、−C(=O)NRおよび/またはNRC(=O)の1〜3で置換されたフェニルで、ここで、Rはアルキル、シクロアルキルまたはヘテロアリール、より好ましくはRはシクロプロピルまたはメチル、より一層好ましくはArが2−クロロ−6−メチルフェニル、N−シクロプロピル−1−メチル−ベンズアミド、およびN,1−ジメチル−ベンズアミドである化合物を必要とする。本発明方法は、式Iで示されるように結合基Lが存在する場合も実施しうるが、Ar基は式(Ia)で示されるように、カルボキシルアミドの窒素原子に直接結合しているのが有利である。
【0074】
注目されるように、ハロゲン化および環化プロセスの前後のいずれかで、所望の置換基がAr基に結合しうる。またチオ尿素化合物(III)は、所望の最終生成物の基に対応する、所望のRおよびR基を有して環化の前に製造することができ、あるいは別法として、環化の後に所望の基をアミノ−チアゾリルに結合させてもよい。たとえば、チオ尿素化合物(III)を製造し、最終の所望生成物のそれらとは異なる、RおよびRが共に水素、またはRおよびRが他の基である反応に使用してもよく、次いでアミノチアゾール(I)または(Ia)の形成後に、RおよびR基を最終所望生成物の置換基に合成する。かかる別法実施態様およびそれらのバリエーションの全ては、本発明の技術的範囲に属することが意図される。
【0075】
式(II)および(IIa)の中間体において、好ましくはP基は、上述のアルキル、−SOOR10、−SO10、−C(=O)R11および−Si(R12から選ばれてよいが、好ましいPはアルキル、より好ましくは低級アルキル、すなわち、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、または直鎖もしくは分枝鎖ブチルである。好ましいR基は、水素または低級アルキル、より好ましくは水素であり、Rは水素が好ましい。化合物(II)の場合、β−アルキルオキシ−α,β−不飽和カルボキシルベンズアミド化合物が好ましく、β−置換およびβ−非置換β−アルキルオキシ−α,β−不飽和カルボキシルベンズアミド化合物(後者がより好ましい)が含まれ、ここで、ベンズアミドのフェニル基は、必要に応じて式(Ia)中のArの場合に記載したように置換されてよい。
【0076】
また好ましいβ−非置換β−アルキルオキシ−α,β−不飽和カルボキシルベンズアミド化合物は、β−エトキシアクリルベンズアミド化合物であって、ここでも、ベンズアミドのフェニル基は必要に応じて、Arの場合の記載に準じ置換されてよい。中間体(II)および(IIa)は、対応するアニリン化合物,NHR−Arとアルコキシアクリロイル化合物の反応で製造することができる。またβ−エトキシアクリルベンズアミド化合物の製造法は、たとえば Ashwell M.A.らの J.Bioorg,Med.Chem.Lett.(2001),24,3123 頁および Yoshizaki S. らの Chem.Pharm.Bull.(1980),28,3441 頁に記載されている。
【0077】
この方法で用いるハロゲン化剤は、前記規定の、化合物(II)をハロゲン化しうる物質であってよい。好ましい物質としては、NBSおよびN−ハロヒダントインが挙げられる。チオ尿素化合物(III)としては、非置換チオ尿素化合物、N−モノ置換チオ尿素化合物およびN,N−ジ置換チオ尿素化合物が挙げられる。ハロゲン化および環化の工程は、炭化水素類、エーテル類、エステル類、アミド類、およびケトン類とエーテル類などの溶媒の1種以上(ジオキサンが好ましい)を含みうる適当な溶媒中で実施される。
【0078】
本発明の別の実施態様を、下記反応式2に示す。
反応式2:
【化19】

【0079】
反応式2でわかるように、β−(P)オキシ−アクリルベンズアミド化合物(IIb)(ここで、RおよびRは水素、およびPは前記と同意義、好ましくは低級アルキル)を、適当な溶媒中水の存在下で、NBSなどのハロゲン化剤でハロゲン化し、次いで非置換チオ尿素(IIIa)を用いて環化する。得られる2−(非置換)アミノ−チアゾール−5−芳香族アミド(Ib)を、ピリミジン化合物4(ここで、RおよびR’は水素または任意の置換基、より好ましくは水素または低級アルキル、およびXおよびYは共に本明細書規定の脱離可能基)と反応させて、化合物Icを得る。
【0080】
脱離可能基XおよびYは、好ましくはI、Br、ClまたはR10SOO−(ここで、R10はアルキル、置換アルキル、アリールまたはヘテロアリール)、より好ましくはXおよびYは、I、Br、Cl、硫酸メチル、メシレート、トリフルオロメタンスルホネートおよびトシレートから選ばれ、より一層好ましくはClおよびBrから選ばれる。すなわち、ピリミジン化合物4としては、ビス−ハロゲンおよびスルホニルオキシ置換ピリミジン化合物が挙げられる(ビス−クロロ置換ピリミジン化合物などの前者が好ましい)。有利にはこの工程は、塩基の存在下で実施され、ここで、塩基としては水素化アルカリやアルカリ・アルコキシドが包含され、ナトリウム・t−ブトキシドなどの後者が好ましい。適当な溶媒としては、炭化水素類、エーテル類、エステル類、アミド類、ケトン類およびアルコール類、またはこれらの混合物などの溶媒が挙げられ、THFなどのエーテル類が好ましい。
【0081】
次に化合物(Ic)をアミンNHR2021(5)と反応させて、式(Id)の化合物を得ることができる。たとえば、R20およびR21は共に水素、またはR20およびR21はそれぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロ、アリールおよびヘテロアリールから選ばれ、あるいはR20とR21は共に合してヘテロシクロを形成することができる。好ましくはR20とR21は共に合して、NHR2021が必要に応じて置換されるピペラジン、より好ましくは置換アルキル、より好ましくはヒドロキシエチルで置換されたピペラジンN’−置換体を形成する。
【0082】
有利にはこの工程は、無機および有機塩基を含む塩基(3級アミンなどの有機塩基が好ましい)の存在下で実施される。適当な溶媒としては、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、エステル類、アミド類、ケトン類、ラクタム類およびアルコール類、およびこれらの混合物などの溶媒が挙げられ、1つの非制限的具体例としてn−ブタノールなどのアルコール類や、他の具体例としてDMF(ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセタミド)およびNMP(N−メチルピロリドン)が挙げられる。このように形成した式(Id)の化合物は必要に応じて、さらに所望形状に合成および/または精製および環化されてもよい。
【0083】
別法アプローチを下記反応式3に示すが、ここで、モノ置換チオ尿素化合物(IIIb)を用いる。
反応式3:
【化20】

【0084】
反応式3でわかるように、β−(P)オキシ−アクリルベンズアミド化合物(IIb)を、反応式2の場合と同様、ハロゲン化剤でハロゲン化し、次いでさらに、官能性ピリミジン基を結合したモノ置換チオ尿素(IIIb)(ここで、R,R’およびYは反応式2の場合と同意義)と反応させて、式(Ic)の中間体,2−置換アミノチアゾール−芳香族アミド化合物を得る。次いで式(Ic)の化合物を必要に応じて、アミンNHR2021(5)と反応させて式(Id)の化合物を得てもよく、および/または必要に応じてさらに、所望形状に合成、および/または精製および環化してもよい。
【0085】
さらなる実施態様
1つの実施態様において、本発明方法は、
式(Ie):
【化21】

(式中、ZおよびZは水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシおよびアルコキシから選ばれ;
,ZおよびZは水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、C(=O)NRおよび/またはNRC(=O)から選ばれ、ここで、Rはアルキル、シクロアルキルまたはヘテロアリール
である)
で示される化合物を製造する方法であって、
【0086】
式:
【化22】

(式中、Qは−O−P基、ここで、Pはそれが結合する酸素原子といっしょに考えると、Qが脱離可能基となるように選定され、およびZ,Z,Z,ZおよびZは上記と同意義である)
の化合物を水の存在下でハロゲン化試薬と反応させた後、
式:
【化23】

のチオ尿素化合物と反応させて、式(Ie):
【化24】

の化合物を得ることから成る。
【0087】
上記の方法において、1実施態様として、Rが水素により式(If):
【化25】

の化合物が得られる。
【0088】
別の実施態様において、Rは式:
【化26】

(式中、R15およびR16は本明細書の記載と同意義である)
の基であってよく、これにより、式(Ih):
【化27】

(式中、R15,R16,Z,Z,Z,Z,Z,R20およびR21は本明細書の記載と同意義である)
の化合物が得られる。
【0089】
さらに別の実施態様において、Rは式:
【化28】

(式中、Y,R15およびR16は、本明細書の記載と同意義である)
の基であって、ここで、式(Ii):
【化29】

の化合物が得られる。
【0090】
さらに別の実施態様において、Rは式:
【化30】

の基である。
【0091】
上記方法の別の実施態様において、たとえばRが水素であって下記化合物(If)を得るとき、さらに式:
【化31】

の化合物を式:
【化32】

(式中、XおよびYは脱離可能基;およびR15およびR16はそれぞれ独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルから選ばれる)
のピリミジン化合物と反応させて、式:
【化33】

(式中、Y,R15,R16,Z,Z,Z,ZおよびZは上記と同意義である)
の化合物を得てもよい。
【0092】
上記方法の別の実施態様において、たとえばRが水素であって下記化合物(If)を得るとき、さらに式:
【化34】

の化合物を式:
【化35】

(式中、XおよびYは脱離可能基、およびR15およびR16はそれぞれ独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルから選ばれる)
のピリミジン化合物と反応させて(たとえば塩基と共にまたは金属接触反応により反応させて)、式:
【化36】

(式中、Y,R15,R16,Z,Z,Z,ZおよびZは上記と同意義である)
の化合物を得てもよい。
【0093】
化合物(Ig)を必要に応じて、さらに式:NHR2021(式中、R20およびR21はそれぞれ独立して水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロ、アリールおよびヘテロアリールから選ばれ、またはR20とR21は共に合してヘテロシクロを形成する)のアミンと反応させて、式(Ih):
【化37】

(式中、R15,R16,Z,Z,Z,Z,Z,R20およびR21は上記と同意義である)
の化合物を得てもよい。
【0094】
1つの実施態様において、アミンNHR2021は、必要に応じてヒドロキシ(アルキル)、より好ましくはヒドロキシエチルで置換されるピペラジンである。
1つの実施態様において、アミンNHR2021は、
【化38】

である。
【0095】
別の実施態様において、Rが水素であって下記化合物(If)を得るとき、式:
【化39】

の化合物を式:
【化40】

(式中、R15,R16,R20およびR21は上記と同意義である)
のピリミジン化合物と反応させて、式(Ih):
【化41】

の化合物を得てもよい。
【0096】
また上記方法の他のバリエーションも、本発明の技術的範囲に属することが意図され、さらに2−アミノ−チアゾール−5−芳香族アミド化合物の合成を必須とする方法が含まれる。
1つの実施態様において、本発明は式(IV):
【化42】

の化合物の結晶性モノ水和物を提供する。
【0097】
別の実施態様において、モノ水和物形状は実質的に純粋な形状にある。
別の実施態様において、モノ水和物形状は、実質的純粋が純度90%以上である実質的に純粋な形状にある。
別の実施態様において、式(IV)の化合物のモノ水和物形状は、図1に示されるものに実質的に一致するX線粉末回折図を特性とする。
別の実施態様において、式(IV)の化合物のモノ水和物形状は、図2に示されるものに実質的に一致する示差走査熱量サーモグラムおよび熱重量分析を特性とする。
【0098】
別の実施態様において、式(IV)の化合物のモノ水和物形状は、18.0±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、19.6±0.2、21.2±0.2、24.5±0.2、25.9±0.2および28.0±0.2からなる群から選ばれる4つ以上の2θ値を包含(別法として、5以上もしくは6以上の2θ値を包含、または2θ値を包含)するX線粉末回折図(CuKα λ=1.5418Å、温度約23℃)を特性とする。
別の実施態様において、式(IV)の化合物のモノ水和物形状は、4.6±0.2、11.2±0.2、13.8±0.2、15.2±0.2、17.9±0.2、19.1±0.2、19.6±0.2、23.2±0.2、23.6±0.2からなる群から選ばれる4以上の2θ値を包含(別法として、5以上もしくは6以上の2θ値を包含、または2θ値を包含)するX線粉末回折図(CuKα λ=1.5418Å、温度約23℃)を特性とする。
【0099】
別の実施態様において、式(IV)の化合物のモノ水和物形状は、
格子寸法(cell dimensions):
a(Å)=13.862(1)
b(Å)=9.286(1)
c(Å)=38.143(2)
体積=4910(1)Å
空間群 Pbca
分子数/単位胞:8
密度(g/cm):1.300(計算値)
にほぼ匹敵する単位胞パラメーター(unit cell parameters)を特性とし、該化合物は約−50℃の温度にある。
別の実施態様において、式(IV)の化合物のモノ水和物形状は、式(IV)の1分子当り1つの水分子が存在する。
【0100】
別の実施態様において、本発明は式(IV):
【化43】

の化合物の結晶性ブタノール溶媒化合物を提供する。
【0101】
別の実施態様において、式(IV)の化合物のブタノール溶媒化合物形状は、
格子寸法:
a(Å)=22.8102(6)
b(Å)=8.4691(3)
c(Å)=15.1436(5)
体積=2910.5(2)Å
空間群 P2/a
分子数/単位胞:4
密度(g/cm):1.283(計算値)
にほぼ匹敵する単位胞パラメーターを特性とする。
【0102】
別の実施態様において、式(IV)の化合物の結晶性ブタノール溶媒化合物は、5.9±0.2、12.0±0.2、13.0±0.2、17.7±0.2、24.1±0.2および24.6±0.2からなる群から選ばれる4以上の2θ値を包含(別法として、5以上もしくは6以上の2θ値を包含、または2θ値を包含)するX線粉末回折図(CuKα λ=1.5418Å、温度約23℃)を特性とする。
【0103】
別の実施態様において、本発明は式(IV)の化合物の結晶性エタノール溶媒化合物に指向される。
別の実施態様において、式(IV)の化合物の結晶性エタノール溶媒化合物は、5.8±0.2、11.3±0.2、15.8±0.2、17.2±0.2、19.5±0.2、24.1±0.2、25.3±0.2および26.2±0.2からなる群から選ばれる4以上の2θ値を包含(別法として、5以上もしくは6以上の2θ値を包含、または2θ値を包含)するX線粉末回折図(CuKα λ=1.5418Å、温度約23℃)を特性とする。
【0104】
別の実施態様において、本発明は式(IV)の化合物の結晶性ニート(neat)形状に指向される。
別の実施態様において、式(IV)の化合物の結晶性ニート形状は、6.8±0.2、11.1±0.2、12.3±0.2、13.2±0.2、13.7±0.2、16.7±0.2、21.0±0.2、24.3±0.2および24.8±0.2からなる群から選ばれる4以上の2θ値を包含(別法として、5以上もしくは6以上の2θ値を包含、または2θ値を包含)するX線粉末回折図(CuKα λ=1.5418Å、温度約23℃)を特性とする。
【0105】
別の実施態様において、本発明は、治療上有効量の式(IV)の化合物の結晶性形状の少なくとも1種および医薬的に許容しうる担体から成る医薬組成物を記載する。
別の実施態様において、本発明は、癌の処置法であって、該処置を必要とする宿主に対し治療上有効量の式(IV)の化合物の結晶性形状の少なくとも1種を投与することから成る処置法を記載する。
【0106】
別の実施態様において、本発明は、腫瘍学的障害を処置する方法であって、該処置を必要とする宿主に対し治療上有効量の式(IV)の化合物の結晶性形状の少なくとも1種を投与し、上記障害が慢性骨髄性白血病(CML)、胃腸支質腫瘍(GIST)、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、黒色腫、肥満細胞症、生殖細胞腫、急性骨髄性白血病(AML)、小児肉腫、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌および前立腺癌から選ばれる処置法を記載する。
【0107】
別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載されるような腫瘍学的障害の処置用医薬品の製造における、式(IV)の化合物の結晶性形状の少なくとも1種の使用に指向される。
別の実施態様において、本発明は、本明細書記載の、Gleevec(登録商標)(STI−571)に対し抵抗性または不耐性の、腫瘍学的障害の処置法に指向され、該処置法は、かかる処置を必要する宿主に対し治療上有効量の式(IV)の化合物または式(IV)の化合物の結晶性形状の少なくとも1種を投与することから成る。
【0108】
また本発明は、本明細書で注目される発明の選択的側面の全ての組合せを包含する。本発明の追加の実施態様を説明するのに、本発明のいずれかの実施態様および全ての実施態様を、他のいずれかの実施態様と共に採用しうることが理解される。さらに、追加の実施態様を説明するのに、該実施態様からのいずれのおよび他の全ての要素と、1つの実施態様のいずれの要素もコンバインしうるものである。
【0109】
有用性
本発明方法に従って製造される式(I)の化合物は、たん白チロシンキナーゼ、特にSrc−ファミリーキナーゼ、たとえばLck、Fyn、Lyn、Src、Yes、Hck、FgrおよびBlkを阻害し、このため、たん白チロシンキナーゼ関連障害、たとえば免疫学的および腫瘍学的障害の、予防および治療を含む処置に有用である。また式(I)の化合物は、HER1およびHER2を含むレセプタチロシンキナーゼも阻害でき、従って、乾癬や癌などの増殖性障害の処置にも有用である。これら化合物のHER1や他のレセプタキナーゼを阻害する能力は、癌や糖尿病網膜症などの障害を処置する抗脈管形成剤としてのその使用を可能ならしめるだろう。
【0110】
“たん白チロシンキナーゼ関連障害”とは、迷入性チロシンキナーゼ活性から生じる障害、および/またはこれら酵素の1種以上の阻害によって軽減される障害である。たとえば、Lck阻害薬は、Lck阻害がT細胞活性化をブロックするので、上記障害の幾つかの処置(たとえば自己免疫疾患の処置)に価値がある。T細胞仲介疾患の処置は、T細胞活性化および増殖の阻害を包含し、特に本発明方法に従って製造される式(I)の化合物の使用が好ましい。
【0111】
式(I)の化合物のたん白チロシンキナーゼ関連阻害の処置における使用としては、これらに限定されないが、一定範囲の疾患、たとえば移植(たとえば器官移植、急性移植または異種移植)または同種移植(たとえば熱傷処置で採用)拒絶;器官移植、心筋梗塞、発作または他の原因中に起こるような虚血または再灌流損傷からの防護;移植寛容誘導;関節炎(たとえば慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎または変形性関節症);多発硬化症;慢性閉塞性肺疾患(COPD)、たとえば気腫;潰瘍性大腸炎やクローン病を含む炎症性腸疾患;狼瘡(全身性エリテマトーデス);
【0112】
対宿主性移植片病;接触過敏症;遅延型過敏症およびグルテン−敏感腸症(セリアック病)を含むT細胞仲介過敏症病;乾癬;接触皮膚炎(ウルシによる皮膚炎を含む);橋本甲状腺炎;シェーグレン症候群;自己免疫甲状腺機能亢進症、たとえばグレーヴズ病;アディソン病(副腎の自己免疫疾患);自己免疫多腺性病(自己免疫多腺性症候群としても公知);自己免疫脱毛症;悪性貧血;白斑;自己免疫下垂体低下症;ギャン−バレー症候群;他の自己免疫疾患;
【0113】
Lckまたは他のSrc−ファミリーキナーゼ、たとえばSrcが活性化または過大発現(overexpressed)される癌、たとえば結腸癌腫および胸腺腫や、Src−ファミリーキナーゼ活性が腫瘍成長あるいは生存を助長する癌を含む癌;糸球体腎炎;血清病;じんま疹;アレルギー疾患、たとえば呼吸アレルギー(ぜん息、枯草熱、アレルギー鼻炎)または皮膚アレルギー;強皮症;菌状息肉腫;急性炎症反応(たとえば急性呼吸窮迫症候群および虚血/再灌流損傷);皮膚筋炎;円形脱毛症;慢性光線性皮膚炎;湿疹;ベーチェット病;掌蹠膿胞症;壊疽性膿皮症;セザリ−症候群;アトピー性皮膚炎;全身性硬化症;および限局性強皮症の処置が例示される。
【0114】
本発明の化合物は、慢性骨髄性白血病(CML)、胃腸支質腫瘍(GIST)、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、黒色腫、肥満細胞症、生殖細胞腫、急性骨髄性白血病(AML)、小児肉腫、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌および他のたとえばSRC、BCR−ABLおよびc−KITなどのたん白チロシンキナーゼに関連することが知られているものなどの癌の処置に有用である。
【0115】
また本発明の化合物は、BCR−ABLやc−KITを標的とするたとえば Gleevec(登録商標)(STI−571)などの化学療法薬に対し敏感で抵抗性がある癌の処置にも有用である。本発明の1つの実施態様において、たとえば式(IV)の化合物(これに限定されないが、本明細書記載の化合物の結晶性形状、たとえば結晶性モノ水和物を包含)は、本明細書記載の、慢性骨髄性白血病(CML)あるいは他の癌(他の白血病も含む)などの病気用の Gleevec(登録商標)(STI−571)に対し抵抗性または不耐性の患者の処置に有用である。
【0116】
本発明の別の実施態様において、式Iの化合物は抗腫瘍形成剤の少なくとも1種といっしょに投与される。
本明細書で用いる語句“抗腫瘍形成剤”または“抗癌剤”とは、“化学療法薬”および/または“抗増殖剤”と同義であって、癌もしくは過増殖性細胞の増加を防止する化合物を指称する。
【0117】
抗増殖性細胞毒剤および/または抗増殖剤として使用しうる化合物の種類としては、以下ものが挙げられる:
アルキル化剤(非限定で、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレアおよびトリアゼンを含む):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(Cytoxan)、Ifosfamide 、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン−メラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジンおよび Temozolomide
【0118】
代謝拮抗物質(非限定で、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類縁体、プリン類縁体およびアデノシンデアミナーゼ阻害薬を含む):メトトレキサート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、Pentostatine および Gemcitabine
天然産物およびその誘導体(たとえばビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンフォカインおよびエピポドフィロトキシン(epipodophyllotoxins)):ビンブラスチン、ビンクリスチン、Vindesine、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、Ara−C、パクリタキセル(パクリタキセルは Taxol(登録商標)として商業上入手可能)、ミトラマイシン、デオキシコ−ホルマイシン(Deoxyco-formycin)、ミトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、インターフェロン(特にIFN−α)、エトポシドおよび Teniposide
【0119】
他の抗増殖性細胞毒剤および/または抗増殖剤は、ナベルベン(navelbene)、CPT−11、アナストラゾール(anastrazole)、レトラゾール(letrazole)、カペシタビン(capecitabine)、レロキサフイン(reloxafine)、シクロホスファミド、イホサミド(ifosamide)およびドロロキサフイン(droloxafine)である。
語句“放射線療法”とは、これらに限定されないが、外部から適用の源(たとえばビーム)からあるいは小さな放射性源の移植によって放たれるX線またはガンマ線を包含する。放射線療法は、本発明化合物と組合せて使用しうる。
【0120】
また以下に示すものも、本発明化合物と組合せて投与することにより使用しうる。
すなわち、微小管作用物質は細胞有糸分裂を妨害し、そして当該分野で、その抗増殖性細胞毒活性がよく知られている。
【0121】
本発明で使用される微小管作用物質としては、これらに限定されないが、アロコルヒチン(NSC406042)、ハリコンドリン(Halichondrin)B(NSC609395)、コルヒチン(NSC757)、コルヒチン誘導体(たとえばNSC33410)、ドラスタチン(dolastatin)10(NSC376128)、メイタンシン(maytansine)(NSC153858)、リゾキシン(rhizoxin)(NSC332598)、パクリタキセル(Taxol(登録商標),NSC125973)、Taxol誘導体(たとえばNSC608832)、チオコルヒチン(NSC361792)、トリチルシステイン(NSC83265)、硫酸ビンブラスチン(NSC49842)、硫酸ビンクリスチン(NSC67574)、天然および合成エポチロン(これらに限定されないが、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、デスオキシエポチロンA、デスオキシエポチロンBを含む)、
【0122】
[1S−[1R,3R(E),7R,10S,11R,12R,16S]]−7,11−ジヒドロキシ−8,8,10,12,16−ペンタメチル−3−[1−メチル−2−(2−メチル−4−チアゾリル)エテニル]−4−アザ−17−オキサビシクロ[14.1.0]ヘプタデカン−5,9−ジオン(2001年7月17日発行のUS特許6262094に開示)、[1S−{1R,3R(E),7R,10S,11R,12R,16S]]−3−[2−[2−(アミノメチル)−4−チアゾリル]−1−メチルエテニル]−7,11−ジヒドロキシ−8,8,10,12,16−ペンタメチル−4,17−ジオキサビシクロ[14.1.0]ヘプタデカン−5,9−ジオン(2000年2月17日出願のUSSN09/506481およびその実施例7および8に開示)、[1S−[1R,3R(E),7R,10S,11R,12R,16S]]−7,11−ジヒドロキシ−8,8,10,12,16−ペンタメチル−3−[1−メチル−2−(2−メチル−4−チアゾリル)エテニル]−4−アザ−17−オキサビシクロ[14.1.0]ヘプタデカン−5,9−ジオン、
【0123】
[1S−[1R,3R(E),7R,10S,11R,12R,16S]]−3−[2−[2−(アミノメチル)−4−チアゾリル]−1−メチルエテニル]−7,11−ジヒドロキシ−8,8,10,12,16−ペンタメチル−4,17−ジオキサビシクロ[14.1.0]ヘプタデカン−5,9−ジオンおよびその誘導体および他の微小管−崩壊剤
が挙げられる。追加の抗腫瘍形成剤としては、ジスコデルモリド(discodermolide)(Service,(1996)Science, 274: 2009 参照)、エストラムスチン、ノコダゾール(nocodazole)、MAP4等が挙げられる。またかかる抗腫瘍形成剤の具体例は、科学および特許文献、たとえば Bulinski の (1997) J.Cell.Sci. 110:3055、3064; Panda の (1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA94:10560-10564; Muhlradt の(1997) Canser Res.57: 3344-3346;Nicolaou の(1997)Nature 387:268-272; Vasquez の(1997)Mol.Biol.Cell.8: 973-985;Panda の(1996) J.Biol.Chem. 271:29807-29812 にも記載されている。
【0124】
本発明の化学療法による処理といっしょにあるいは該処理の前に、迷入増殖性細胞を静態にするのが望まれる場合、ホルモンおよびステロイド(合成類縁体を含む):17a−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸、ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチル−テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン(Toremifene)、ゾラデクス(Zoladex)を患者に投与することもできる。
【0125】
本発明の組合せ化学療法において、抗脈管形成薬、たとえばマトリックス金属プロティナーゼ阻害薬の使用も適当であり、他のVEGF阻害薬、たとえば抗−VEGF抗体や小分子、たとえばZD6474およびSU6668も含まれる。また Genetech の抗−Her2抗体も利用しうる。適当なEGFR阻害薬は、EKB−569(不可逆性阻害薬)である。またEGFRに対し免疫特異性のイムクローン(Imclone)抗体C225、およびsrc阻害薬も含まれる。
【0126】
また Casodex(登録商標)も、抗増殖性の細胞増殖抑制剤としての使用に適当であり、アンドロゲン−依存癌腫を非増殖性とする。細胞増殖抑制剤のなお別の具体例は、抗エストロゲンのタモキシフェンであって、エストロゲン依存性乳癌の増殖あるいは成長を阻害する。細胞増殖シグナルの形質導入の阻害薬は、細胞増殖抑制剤である。具体例は、表皮成長因子阻害薬、Her−2阻害薬、MEK−1キナーゼ阻害薬、MAPKキナーゼ阻害薬、PI3阻害薬、Srcキナーゼ阻害薬、およびPDGF阻害薬である。
【0127】
言及したように、一定の抗増殖剤は、抗脈管形成および抗血管剤であって、固体腫瘍への血流を中断することにより、癌細胞から栄養を奪って該癌細胞を静態にする。去勢は、これもアンドロゲン依存性癌腫を非増殖性とし、利用することができる。血流の外科的中断以外の手段による飢餓は、細胞増殖抑制剤の別の例である。
【0128】
特定種の抗血管細胞増殖抑制剤は、コンブレタスタチン(combretastatins)である。他の具体的な細胞増殖抑制剤としては、METキナーゼ阻害薬、MAPキナーゼ阻害薬、非レセプタおよびレセプタチロシンキナーゼの阻害薬、インテグリン・シグナル(integrin signaling)の阻害薬、およびインスリン様成長因子レセプタの阻害薬が挙げられる。
またアントラシクリン(たとえばダウノルビシン、ドキソルビシン)、シタラビン(ara−C;Cytosar−U(登録商標))、6−チオグアニン(Tabloid(登録商標))、ミトザントロン(Novantrone(登録商標))、エトポシド(Vepesid(登録商標))、アムサクリン(amsacrine)(AMSA)、およびオール−transレチン酸(ATRA)も適当である。
【0129】
本発明化合物は、BCR−ABL阻害薬、たとえばこれらに限定されないが、Gleevec(登録商標)(イマチニブ(imatinib)、STI−571)またはAMN−107,式:
【化44】

で示される化合物と組合せて使用しうる。
【0130】
本発明化合物は、抗癌化合物、たとえばフエンタニル、ドキソルビシン、インターフェロン・アルファ−n3、パロノセトロン(palonosetron)、ドラセトロン(dolasetron)、アナストロゾール(anastrozole)、エクセメスタン(exemestane)、ベバシズマブ(bevacizumab)、ビカルタミド(bicalutamide)、シスプラチン、ダカルバジン、シタラビン、クロニジン、エピルビシン、レバミソール(levamisole)、トレミフエン(toremifene)、フルベストラント(fulvestrant)、レトロゾール(letrozole)、タンスロシン(tamsulosin)、硝酸ガリウム、トラスツズマブ(trastuzumab)、アルトレタミン(altretamine)、ヒドロキシカルバミド、イフォスファミド(ifosfamide)、インターフェロン・アルファコン−1、ゲフィチニブ(gefitinib)、グラニセトロン(granisetron)、ロイプロレリン(leuprorelin)、ドロナビノール、メゲストロール、ペチジン(pethidine)、プロメタジン、モルフィネ、ビノレルビン(vinorelbine)、ペグフィルグラスチン(pegfilgrastim)、フィルグラスチン(filgrastim)、ニルタミド(nilutamide)、チエチルペラジン、ペガスパルガセ(pegaspargase)、マウス−モノクローナル抗CD3抗体、ポルファイマー(porfimer)・ナトリウム、シスプラチン、アバレリクス(abarelix)、カプロマブ(capromab)、サマリウムSM153レキシドロナム(lexidronam)、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、トリプトレリン、バルルビシン、ノフェツモマブ(nofetumomab)・メルペンタン(merpentan)テクネチウム99mTc、ビンクリスチン、ケープシタビン(capecitabine)、ストルプトゾシン(strptozocin)、およびオンダンセトロン(ondansetron)と組合せて使用しうる。
【0131】
すなわち、本発明は、これらに限定されないが、以下のものを含む種々の癌の処置のための方法を提供する:
膀胱の癌腫(加速および転移膀胱癌を含む)、乳房、結腸の癌腫(結腸直腸癌を含む)、腎臓、肝臓、肺の癌腫(小および非小細胞肺癌および肺腺癌を含む)、卵巣、前立腺、精巣、尿生殖器官、リンパ管系、直腸、喉頭、膵臓の癌腫(外分泌膵臓癌腫を含む)、食道、胃、胆のう、頸、甲状腺、および皮膚の癌腫(扁平上皮細胞癌腫を含む)を包含する癌腫;
【0132】
白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫、細網肉腫、およびバーキットリンパ腫を包含するリンパ系統の造血腫瘍;
急性および慢性骨髄性白血病、脊髄形成異常症候群、骨髄性白血病、および前骨髄細胞白血病を包含する骨髄系統の造血腫瘍;
【0133】
星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、および神経線維腫を包含する中枢および末梢神経系の腫瘍;
線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫を包含する間葉起点の腫瘍;および
黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺小胞癌、および奇形癌を包含する他の腫瘍。
本発明は、種々の非癌性増殖疾患の処置のための方法を提供する。
【0134】
本発明は、GIST、乳癌、膵臓癌、結腸癌、NSCLC、CMLおよびALL、肉腫、および各種小児癌の処置に有用である。
本発明化合物は、たん白チロシンキナーゼ阻害薬であって、それ自体、腫瘍学的障害に加えて免疫学的障害の処置に使用される。U.S.特許No.6596746に、免疫学的障害での化合物の有用性が記載され、かかる免疫学的障害での化合物の説明の参考として、これを本明細書に導入する。
【0135】
また本発明は、癌の処置に有用な医薬組成物も包含し、該医薬組成物は、医薬的に許容しうる担体または希釈剤を使用または使用しない、治療上有効量の本発明の組合せから成る。本発明の医薬組成物は、抗腫瘍剤の式I化合物と、医薬的に許容しうる担体を含有する。
【0136】
本発明組成物はさらに、医薬的に許容しうる追加成分、たとえばミョウバン、安定化剤、抗菌剤、緩衝剤、着色剤、フレーバー、アジュバント等の1種以上を含有しうる。本発明の抗腫瘍形成剤,式I化合物および組成物は、経口投与または静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸および局所投与ルートを含む非経口投与を行うことができる。
【0137】
また本発明は、上述の病態を含むSrc−キナーゼ関連病態を処置しうる医薬組成物の製造のための、本発明方法で得られる化合物の使用をも提供する。上記医薬組成物は、他の治療剤を含有しうる。医薬組成物は、医薬処方の分野で周知の如き技法に従って、通常の固体または液体ビヒクルもしくは希釈剤、並びに所望の投与モードに適する種類の医薬用添加成分(たとえば賦形剤、結合剤、保存剤、安定化剤、フレーバー等)を用いて配合されてよい。
【0138】
上記医薬組成物は、処置すべき病態に適する手段によって投与でき、該手段は処置に特異的な部位あるいはデリバリーされる薬物の量に対するニーズに依存しうる。皮膚−関連疾患には一般に局所投与が好ましく、また癌あるいは前癌病態には全身処置が好ましいが、他のデリバリーモードも意図される。たとえば、式(I)の化合物は、経口投与で、たとえば錠剤、カプセル剤、粒剤、粉剤、またはシロップを含む液体製剤の形状で;局所投与で、たとえば溶液、懸濁液、ゲルまたは軟膏の形状で;舌下投与で;バッカル投与で;皮下、静脈内、筋肉内もしくは胸骨内注射または注入技法(たとえば殺菌注射水溶液もしくは非水溶液または懸濁液で)などによる非経口投与で;吸入噴霧などによる鼻腔投与で;クリームまたは軟膏の形状などでの局所投与で;坐剤の形状などでの直腸投与で;またはリポソーム投与でデリバリーされてよい。
【0139】
非毒性で医薬的に許容しうるビヒクルまたは希釈剤を含有する投与単位製剤を投与しうる。本発明方法に従って製造した式(I)の化合物は、即時放出または長期放出に適する形状で投与されてよい。即時放出または長期放出は、適当な医薬組成物により、または特に長期放出の場合は、皮下インプラントまたは浸透ポンプなどの器具によって行なうことができる。
局所投与用の組成物の具体例は、PLASTIBASE(登録商標)(鉱油をポリエチレンでゲル化したもの)などの局所用担体を包含する。
【0140】
経口投与用組成物の具体例としては、たとえば嵩を付与する微結晶セルロース、沈殿防止剤としてのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、増粘剤としてのメチルセルロース、および当該分野で知られているような甘味剤またはフレーバーを含有しうる懸濁液;およびたとえば微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、スターチ、ステアリン酸マグネシウムおよび/またはラクトースおよび/または当該分野で知られているような他の賦形剤、結合剤、エキステンダー、崩壊剤、希釈剤および潤滑剤を含有しうる即時放出錠剤が挙げられる。また式(I)の化合物は、舌下および/またはバッカル投与により、たとえば成形、圧縮または凍結乾燥錠剤を用いて経口投与でデリバリーしてもよい。
【0141】
典型的な組成物は、速溶解希釈剤、たとえばマンニトール、ラクトース、スクロース、および/またはシクロデキストリンを含有しうる。かかる配合物に、高分子量賦形剤、たとえばセルロース(AVICEL(登録商標))またはポリエチレングリコール(PEG);粘膜接着を助成する賦形剤、たとえばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(SCMC)、および/または無水マレイン酸コポリマー(たとえばGANTREZ(登録商標));および放出を制御する物質、たとえばポリアクリル酸コポリマー(たとえばCARBOPOL934(登録商標))を含ませてもよい。また成形加工や使用を容易にするため、潤滑剤、滑剤、フレーバー、着色剤および安定化剤を加えてもよい。
【0142】
経口投与用組成の一例は、式(IV)の化合物、ラクトース・モノ水和物(粒状相内)、微結晶セルロース(粒状相内)、クロスカルメロース(croscarmellose)・ナトリウム(粒状相内)、ヒドロキシプロピルセルロース(粒状相内)、微結晶セルロース(粒状相外)、クロスカルメロース・ナトリウム(粒状相外)、およびステアリン酸マグネシウム(粒状相外)である。
【0143】
鼻腔エアゾールまたは吸入投与用組成物の具体例としては、たとえばベンジルアルコールまたは他の適当な保存剤、吸収および/または生物学的利用能を高める吸収促進剤、および/または当該分野で知られているような他の可溶化または分散剤を含有しうる溶液が挙げられる。
非経口投与用組成物の具体例としては、たとえば適当な非毒性で非経口的に許容しうる希釈剤または溶剤、たとえばマンニトール、1,3−ブタンジオール、水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液、または合成モノもしくはジグリセリドを含む他の適当な分散または湿潤および沈殿防止剤、およびオレイン酸を含む脂肪酸を含有しうる注射溶液または懸濁液が挙げられる。
【0144】
直腸投与用組成物の具体例としては、たとえばカカオ脂、合成グリセリドエステルまたはポリエチレングリコールなどの適当な非刺激性賦形剤を含有しうる坐剤が挙げられ、該坐剤は常温で固体であるが、薬物を放出する直腸腔内で液化および/または溶解する。
式(I)の化合物の有効量は、当業者によって決定でき、哺乳類への典型的な投与用量として1日当り活性化合物約0.05〜100mg/体重(kg)が挙げられ、たとえば1日当り1回の単一用量または2〜4回の分割用量で投与されてよい。
【0145】
個々の被験者に対する特定の用量レベルや投与回数については適宜変化させてよく、また種々の要因、たとえば使用する特定化合物の活性、該化合物の代謝安定性および作用長さ、被験者(体)の種、年令、体重、健康状態、性別およびダイエット、投与のモードおよび時間、排泄の速度、薬物の組合せ、および個々の病態のきびしさに左右されることが理解されよう。処置するのに好ましい被験体としては、動物、最も好ましくは哺乳類種、たとえばヒトや、イヌ、ネコ、ウマなどの家畜等が挙げられる。すなわち、本明細書で語句“患者”を用いるとき、この語句は全ての被験体、最も好ましくは、Srcキナーゼレベルの仲介によって影響される哺乳動物種を包含することが意図される。
【0146】
本発明化合物は、式(IV)の化合物の結晶性形状を包含するが、静脈内に投与するとき、本発明の配合物を用いて投与される。一例として、本発明化合物は、約10分〜3時間、好ましくは約30分〜2時間、より好ましくは約45〜90分、最も好ましくは約1時間の期間にわたって注入で投与される。典型例として化合物は、約0.5〜65mg/m、好ましくは約1〜50mg/m、より好ましくは約2.5〜30mg/m、最も好ましくは約25mg/mの用量で静脈内に投与される。
【0147】
患者の高さや重さの一方または両方が一定であれば、用量をmg/kgからmg/mに変換することは当業者であれば容易であろう(たとえば http://www.fda.gov/cder/cancer/animalframe.htm 参照)。
上述の通り、式(IV)の化合物の結晶性形状を含む本発明化合物は、経口、静脈内または両方で投与できる。特に本発明の方法は、2〜10日間にわたり1日1回、好ましくは3〜9日に1回、より好ましくは4〜8日に1回、最も好ましくは5日に1回の投与プロトコルを包含する。
【0148】
1つの実施態様において、処置を行なわないサイクルとサイクル間に3日〜5週、別法として4日〜4週、あるいは5日〜3週、あるいは1〜2週の期間である。別の実施態様において、式IVの化合物の結晶性形状を含む本発明化合物は、処置を行なわないサイクルとサイクル間の期間が1〜3週で、3日間にわたり1日1回、経口、静脈内または両方で投与できる。なお別の実施態様において、式IVの化合物の結晶性形状を含む本発明化合物は、処置を行なわないサイクルとサイクル間の期間が1〜3週で、5日間にわたり1日1回、経口、静脈内または両方で投与できる。
【0149】
別の実施態様において、式IVの化合物の結晶性形状を含む本発明化合物の投与の処置サイクルは、5日続けて1日1回であり、処置サイクル間の期間は2〜10日、別法として1週である。1つの実施態様において、本発明化合物、たとえば式IVの化合物は、5日続けて1日1回投与した後、2日間処置しない。
【0150】
また式IVの化合物の結晶性形状,本発明化合物は、1〜10週に1回、2〜8週に1回、3〜6週に1回、別法として3週に1回、経口、静脈または両方で投与できる。
別の本発明方法において、本発明化合物,式IVの化合物の結晶性形状は、28日サイクルで投与され、ここで、化合物は1、7および14日目に静脈内投与され、21日目に経口投与される。別法として、本発明化合物,式IVの化合物の結晶性形状は、28日サイクルで投与され、ここで、式IVの化合物は1日目に経口投与され、7、14および28日目に静脈内投与される。
【0151】
本発明方法によれば、式IVの化合物を含む本発明化合物は、患者がレスポンス、たとえば腫瘍寸法の減少を示すまで、あるいは毒性を制限する用量に達するまで投与される。
式(I)の範囲内の化合物は、当業者のレベル範囲にある、下記のアッセイまたはそのバリエーションを用いて、たん白キナーゼの阻害薬としての活性を試験することができる。
【0152】
細胞アッセイ:
(1)細胞のチロシンリン酸化
Jurkat T細胞を試験化合物といっしょにインキュベーションし、次いでCD3に対する抗体(モノクローナル抗体G19−4)の添加で刺激する。4分後または別の所望時間に、NP−40洗剤を含有するリーシス緩衝剤の添加で細胞を溶解する。たん白のリン酸化を、抗−ホスホチロシン・免疫ブロッティング(immunoblotting)で検出する。ZAP−70などの興味のある特定たん白のリン酸化の検出は、抗−ZAP−70による免疫沈降反応、次いで抗ホスホチロシン・免疫ブロッティングで行なう。
【0153】
このような操作は、Schieven G.L., Mittler R.S., Nadler S.G., Kirihara J.M., Bolen J.B., Kanner S.B. および Ledbetter J.A. の “ZAP−70 tyrosine kinase,CD45 and T cell receptor involvement in UV and H induced T cell signal transduction”,J.Biol.Chem.,269, 20718-20726(1994) に記載されている。Lck阻害薬は、抗−CD3抗体によって誘発する細胞たん白のチロシンリン酸化を阻害する。
【0154】
G19−4の製造の場合は、Hansen J.A.,Martin P.J., Beatty P.G., Clark E.A. および Ledbetter J.A. の“Human T lymphocyte cell surface molecules defined by the workshop monoclonal antibodies”,in Leukocyte Typing I,A.Bernard,J.Boumsell, J.Dausett,C.Milstein および S.Schlossman 編 (New York:Springer Verlag),p.195-212(1984); および Ledbetter J.A., June C.H., Rabinovitch P.S., Grossman A.,Tsu T.T.,および Imboden J.B. の“Signal transduction through CD4 receptors:stimulatory vs.inhibitory activity is regulated by CD4 proximity to the CD3/T cell receptor”,Eur.J.Immunol., 18,525(1988) を参照。
【0155】
(2)カルシウムアッセイ
Lck阻害薬は、抗−CD3抗体で刺激したT細胞におけるカルシウム動員をブロックする。細胞にカルシウム指示薬染料インド(indo)−1を加え、抗−CD3抗体、たとえばモノクロナール抗体G19−4で処理し、次いで Schieven G.L., Mittler R.S.,Nadler S.G., Kirihara J.M.,Boler J.B., Kanner S.B. および Ledbetter J.A. の“ZAP−70 tyrosine kinase, CD45 and T cell receptor involvement in UV and H induced T cell signal transduction”,J.Biol.Chem., 269,20718-20726(1994) の記載に準じ、フロー血球計算法を用い、ブルー/バイオレット・インドー1比の変化を記録してカルシウム動員を測定する。
【0156】
(3)増殖アッセイ
Lck阻害薬は、抗−CD3プラス抗−CD28抗体によって刺激され成長する正常なヒト末梢血T細胞の増殖を阻害する。96ウエル平板に、CD3に対するモノクローナル抗体(たとえばG19−4)をコーティングし、該抗体を結合せしめ、次いで平板を洗う。平板に結合した抗体は、細胞の刺激に役立つ。上記ウエルに、試験化合物プラス抗−CD28抗体といっしょに正常なヒト末梢血T細胞を加えて、共同刺激を得る。所望の時間(たとえば3日)後に、細胞に[3H]−チミジンを加え、さらにインキュベーション後、新しく合成したDNAへの標識の取り込みを可能ならしめ、細胞を採取し、シンチレーション計数計でカウントして、細胞増殖を測定する。
【実施例】
【0157】
次に挙げる実施例は、本発明の例示であって、これに限定すると解釈すべきでない。
実施例1
中間体の製造:
(S)−1−sec−ブチルチオ尿素
【化45】

クロロホルム(80mL)中のS−sec−ブチルアミン(7.31g、0.1モル)の溶液に0℃にて、ベンゾイルイソチオシアネート(13.44mL、0.1モル)をゆっくり加えた。混合物を10℃に加温せしめ、10分間攪拌した。次いで溶媒を減圧除去し、残渣をMeOH(80mL)に溶解した。この溶液にNaOH(4g、0.1モル)の水溶液(10mL)を加え、混合物を60℃でさらに2h攪拌した。次にMeOHを減圧除去し、残渣を水(50mL)中で攪拌した。
【0158】
沈殿物を減圧濾過で集め、乾燥してS−1−sec−ブチルチオ尿素を得た(12.2g、収率92%)。mp133−134℃。
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) δ7.40 (s, 1H), 7.20 (br s, 1H), 6.76 (s, 1H), 4.04 (s, 1H), 1.41 (m, 2H), 1.03 (d, J = 6.1 Hz, 3H), 0.81 (d, J = 7.7 Hz, 3H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-D6) δ182.5, 50.8, 28.8, 19.9, 10.3; LRMS m/z 133.2 (M+H);
元素分析(C12Sとして)
計算値:C45.41、H9.14、N21.18、S24.25
実測値:C45.49、H8.88、N21.32、S24.27
【0159】
実施例2
中間体の製造:
(R)−1−sec−ブチルチオ尿素
【化46】

実施例1で略説した一般法に従って、(R)−1−sec−ブチルチオ尿素を収率92%で製造した。mp133−134℃。
1H NMR(500 MHz, DMSO) δ0.80(m, 3H, J=7.7), 1.02(d, 3H, J=6.1), 1.41(m, 2H), (3.40, 4.04)(s, 1H), 6.76(s, 1H), 7.20(s, br, 1H), 7.39(d, 1H, J=7.2); 13C NMR (500MHz, DMSO) δ: 10.00, 19.56, 28.50, 50.20, 182.00; m/z 133.23 (M+H);
元素分析(C12Sとして)
計算値:C45.41、H9.14、N21.18、S24.25
実測値:C45.32、H9.15、N21.14、S24.38
【0160】
実施例3
【化47】

の製造:
3A.
【化48】

アセトン(10mL)中の3−アミノ−N−メチル−4−メチルベンズアミド塩酸塩(1.0g、5ミリモル)の溶液に0℃にて、注射器でピリジン(1.2mL、15ミリモル)を滴下した。3−メトキシアクリロイルクロリド(0.72mL、6.5ミリモル)を加え、反応液を室温で1h攪拌した。溶液を再度0℃に冷却し、ピペットで1N−HCl(1.5mL)を滴下した。
【0161】
反応混合物を5分間攪拌し、次いで水(8.5mL)を滴下濾斗で加えた。アセトンを減圧除去し、得られる溶液を4h攪拌した。15分以内で晶出が始まった。4hの攪拌後、反応容器を氷浴で30分間冷却し、濾過し、氷冷水(3mL×2)でリンスして、化合物3A(0.99g、収率78%)を白色固体で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.95 (s, 1H), 8.12 (br s, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.29 (m, 2H), 7.05 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 5.47 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 3.48 (s, 3H), 2.54 (d, J = 4.7 Hz, 3H), 2.03 (s, 3H); HPLC rt 2.28 min (条件A).
【0162】
3B.実施例3化合物
上記化合物3A(0.5g、2.0ミリモル)を含有するRBF50mLに、THF(2.5mL)および水(2mL)を加えた後、NBS(0.40g、2.22ミリモル)を加え、溶液を90分間攪拌した。R−sec−ブチルチオ尿素(Ex.2)(267mg)を加え、溶液を75℃に8h加熱した。濃NHOHを加えてpH10に調整した後、EtOH(15mL)を加えた。水(15mL)を加え、スラリーを16h攪拌し、濾過し、水で洗って実施例3化合物を明褐色固体で得た(0.48g、収率69%、純度98%)。MS347.1;HPLC2.59。
【0163】
実施例4
【化49】

の製造:
適当なアクリルベンズアミドと実施例1化合物を用いる以外は、実施例3の方法を行って実施例4化合物を製造する。
【0164】
実施例5
N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミド(下式(IV)の化合物)の製造:
【化50】

【0165】
5A.1−(6−クロロ−2−メチルピリミジン−4−イル)チオ尿素
【化51】

THF(24mL)中の4−アミノ−5−クロロ−2−メチルピリミジン(6.13g、42.7ミリモル)の攪拌スラリーに、エチルイソチオシアナトホルメート(7.5mL、63.6ミリモル)を加え、混合物を加熱還流した。5h後、別途エチルイソチオシアナトホルメート(1.0mL、8.5ミリモル)を加え、10h後最終部(1.5mL、12.7ミリモル)を加え、混合物を6h攪拌した。スラリーを減圧蒸発し、溶媒のほとんどを除去し、残渣にヘプタン(6mL)を加えた。減圧濾過で固体を集め、ヘプタン(5mL×2)で洗って、8.01g(収率68%)の中間体,エチル6−クロロ−2−メチルピリミジン−4−イルカルバモチオイルカルバメートを得た。
【0166】
エチル 6−クロロ−2−メチルピリミジン−4−イルカルバモチオイルカルバメート(275mg、1.0ミリモル)および1N水酸化ナトリウム(3.5当量)の溶液を加熱し、50℃で2h攪拌した。得られるスラリーを20〜22℃に冷却した。減圧濾過で固体を集め、水洗し、乾燥して185mgの1−(6−クロロ−2−メチルピリミジン−4−イル)チオ尿素を得た(収率91%)。
1H NMR (400MHz, DMSO-d6): δ2.51 (S, 3H), 7.05 (s, 1H), 9.35 (s,1H), 10.07 (s, 1H), 10.91 (s, 1H) ; 13C NMR (125MHz, DMSO-d6) δ: 25.25, 104.56, 159.19, 159.33, 167.36, 180.91.
【0167】
5B.(E)−N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−3−エトキシアクリルアミド
【化52】

THF(600mL)中の2−クロロ−6−メチルアニリン(59.5g、0.42モル)およびピリジン(68mL、0.63モル)の冷攪拌溶液に、温度を0〜5℃に保持しながら、3−エトキシアクリロイルクロリド(84.7g、0.63モル)をゆっくりと加えた。次いで混合物を加温し、20℃で2h攪拌した。塩酸(1N、115mL)を0〜10℃で加えた。混合物を水(310mL)で希釈し、得られる溶液を減圧濃縮して、粘稠スラリーとした。該スラリーをトルエン(275mL)で希釈し、20〜22℃で15分、次いで0℃で1h攪拌した。
【0168】
減圧濾過で固体を集め、水(75mL×2)で洗い、乾燥して74.1g(収率73.6%)の(E)−N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−3−エトキシアクリルアミドを得た。
1H NMR (400 Hz, DMSO-d6) δ1.26 (t, 3H, J= 7 Hz), 2.15 (s, 3H), 3.94 (q, 2H, J= 7 Hz), 5.58 (d, 1H, J=12.4 Hz), 7.10-7.27 (m, 2H, J=7.5 Hz), 7.27-7.37 (d, 1H, J=7.5 Hz), 7.45(d, 1H, J=12.4 Hz), 9.28 (s, 1H) ; 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ: 14.57, 18.96, 67.17, 97.99, 126.80, 127.44, 129.07, 131.32, 132.89, 138.25, 161.09, 165.36.
【0169】
5C.2−アミノ−N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)チアゾール−5−カルボキサミド
【化53】

1,4−ジオキサン(27mL)および水(27mL)中の化合物5B(5.00g、20.86ミリモル)の混合物に、NBS(4.08g、22.9ミリモル)を−10〜0℃で加えた。スラリーを加温し、20〜22℃で3h攪拌した。チオ尿素(1.60g、21ミリモル)を加え、混合物を80℃に加熱した。2h後、得られる溶液を20〜22℃に冷却し、濃水酸化アンモニウム(4.2mL)を滴下した。
【0170】
得られるスラリーを減圧濃縮して約半容量とし、0〜5℃に冷却した。減圧濾過で固体を集め、冷水(10mL)で洗い、乾燥して5.3g(収率94.9%)の2−アミノ−N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)チアゾール−5−カルボキサミドを得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δδ2.19 (s, 3H), 7.09-7.29 (m, 2H, J=7.5), 7.29-7.43 (d, 1H, J=7.5), 7.61 (s, 2H), 7.85 (s, 1H), 9.63 (s, 1H) ; 13C NMR (125MHz, DMSO-d6) δ: 18.18, 120.63, 126.84, 127.90, 128.86, 132.41, 133.63, 138.76, 142.88, 159.45, 172.02.
【0171】
5D.2−(6−クロロ−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)−N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)チアゾール−5−カルボキサミド
【化54】

THF(65mL)中の化合物5C(5.00g、18.67ミリモル)および4,6−ジクロロ−2−メチルピリミジン(3.65g、22.4ミリモル)の攪拌溶液に、温度を10〜20℃に冷却保持しながら、ナトリウム・t−ブトキシド/THFの30重量%溶液(21.1g、65.36ミリモル)をゆっくり加えた。混合物を室温で1.5h攪拌し、0〜5℃に冷却した。塩酸(2N、21.5mL)をゆっくり加え、混合物を0〜5℃で1.75h攪拌した。減圧濾過で固体を集め、水(15mL)で洗い、乾燥して6.63g(収率86.4%)の化合物5Dを得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ2.23 (s, 3H), 2.58 (s, 3H), 6.94 (s, 1H), 7.18-7.34, ( m, 2H, J=7.5), 7.34-7.46 (d, 1H, , J=7.5), 8.31 (s, 1H), 10.02 (s, 1H), 12.25 (s, 1H).
【0172】
5E.実施例5化合物
n−ブタノール(40mL)中の化合物5D(4.00g、10.14ミリモル)およびヒドロキシエチルピペラジン(6.60g、50.69ミリモル)の混合物に、DIPEA(3.53mL、20.26ミリモル)を加えた。スラリーを118℃で4.5h加熱し、次いで室温までゆっくり冷却した。減圧濾過で固体を集め、n−ブタノール(5mL)で洗い、乾燥した。生成物(5.11g)を、温80%EtOH−HO(80mL)に溶解し、溶液を濾過で清浄にした。温溶液を水(15mL)でゆっくり希釈し、室温までゆっくり冷却した。
【0173】
減圧濾過で固体を集め、50%エタノール−水(5mL)で洗い、乾燥して4.27g(収率83.2%)のN−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミドをモノ水和物で得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ2.23 (s, 3H), 2.40 (s, 3H), 2.42 (t, 2H, J=6), 2.48 (t, 4H, J=6.3), 3.50 (m, 4H), 3.53 (q, 2H, J=6), 4.45 (t, 1H, J=5.3), 6.04 (s, 1H), 7.25 (t, 1H, J=7.6), 7.27 (dd, 1H, J=7.6, 1.7), 7.40 (dd, 1H, J=7.6, 1.7), 8.21 (s, 1H), 9.87 (s, 1H), 11.47.
【0174】
実施例6
N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミドの製造:
【化55】

【0175】
THF(0.75mL)および水(0.5mL)中の(E)−N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−3−エトキシアクリルアミド5B(120mg、0.50ミリモル)のスラリーに、NBS(98mg、0.55ミリモル)を0℃で加えた。混合物を加温し、20〜22℃で3h攪拌した。これに1−(6−クロロ−2−メチルピリミジン−4−イル)チオ尿素5A(100mg、0.49ミリモル)を加え、スラリーを加熱し、2h還流攪拌した。スラリーを20〜22℃に冷却し、減圧濾過で固体を集めて、140mg(収率71%)の2−(6−クロロ−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)−N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)チアゾール−5−カルボキサミド5Dを得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ2.23 (s, 3H), 2.58 (s, 3H), 6.94 (s, 1H), 7.18-7.34, ( m, 2H, J=7.5), 7.34-7.46 (d, 1H, , J=7.5), 8.31 (s, 1H), 10.02 (s, 1H), 12.25 (s, 1H).
工程5Eを行って、化合物5DをN−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミドに合成した。
【0176】
実施例7
N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミドの製造:
7A.2−[4−(6−クロロ−2−メチルピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル]エタノール
【化56】

ジクロロメタン(80ml)中の4,6−ジクロロ−2−メチルピリミジン(5.2g、31.9ミリモル)の溶液にrtにて、2−ピペラジン−1−イル−エタノール(8.2g、63.1ミリモル)を加えた。混合物を2時間攪拌し、トリエチルアミン(0.9mL)を加えた。混合物をrtで20h攪拌した。得られる固体を濾別した。ケークをジクロロメタン(20mL)で洗った。濾液を濃縮して、油状物を得た。この油状物を高減圧下で20h乾燥して、固体を得た。この固体をヘプタン(50mL)と共にrtで5h攪拌した。濾過を行って、化合物7C(8.13g)を白色固体で得た。
【0177】
7B.実施例7化合物
【化57】

250mLの丸底フラスコに、化合物5C(1.9g、7.1ミリモル)、化合物7C(1.5g、5.9ミリモル)、KCO(16g、115.7ミリモル)、Pd(OAc)(52mg、0.23ミリモル)およびBINAP(291mg、0.46ミリモル)を入れた。
【0178】
フラスコを減圧下に置き、窒素でフラッシする。トルエン(60mL)を加えた。懸濁液を100〜110℃に加熱し、同温で20h攪拌した。室温まで冷却後、混合物をシリカゲルカラムに加えた。カラケを最初にEtOAcで溶離し、次に10%MeOH/EtOAcで溶離した。最後にカラムを、2MアンモニアMeOH溶液10%/EtOAc90%で洗った。所望生成物を含有する画分を集め、濃縮して化合物IVを黄色固体で得た(2.3g)。
【0179】
分析法
固体状態核磁気共鳴(SSNMR):
固体状態C−13NMR測定の全ては、Bruker DSX−400,400MHz NMR分光計で行なった。高性能プロトン・デカップリングと、TPPMパルス系列および約12kHzのマジックアングルスピニング法(MAS)によるランプ振幅交差分極(ramp amplitude cross−polarization)(RAMP−CP)を用い、高分解能スペクトルを得た(A. E. Bennettらの J. Chem. Phys., 1995, 103, 6951),(G. Metz, X. Wuおよび S. O. Smith の J. Magn. Reson. A., 1994, 110, 219-227)。各実験に当り、約70mgのサンプルをキャニスターデザインの酸化ジルコニウム回転子に充填して使用した。高周波共鳴を38.56ppmにセットして、化学シフト(δ)を外部アダマンタンに参照した(referenced)(W. L. Earl および D. L. VanderHartの J. Magn. Reson., 1982, 48, 35-54)。
【0180】
X線粉末回折:
当業者であれば、X線回折図が採用する測定条件に基づく測定誤差を伴なって得られうることを認識するだろう。特に、X線回折図における強度は、採用する測定条件に基づいて変動しうることが一般に知られている。さらに理解すべき点は、相対強度もまた実験条件に基づき変化し、従って、強度の正確な程度を考慮に入れるべきでないことである。加えて、通常のX線回折図の場合の回折角の測定誤差は、典型例として約5%もしくはそれ以下であって、かかる測定誤差の程度は、上記回折角との関係で考慮に入れるべきである。
【0181】
結果として、本発明の結晶形が、添付図面に示されるX線回折図と完全に同一であるX線回折図を付与する結晶形に限定されないことを理解すべきである。添付図面に開示のものと実質的に同一であるX線回折図を付与するいずれの結晶形も、本発明の技術的範囲に属する。X線回折図の実質的な同一性を確かめる能力は、当業者の視野にある。
【0182】
化合物(IV)の結晶性形状のX線粉末回折データは、Bruker GADDS(General Area Detector Diffraction System)(USA、WI53711、マディソン、イースト・チェリル・パークウェイ5465番のBRUKER AXS.Inc.)を用いて得られた。直径1mm以下の薄厚ガラス毛細管に、粉末サンプルを入れた。サンプルと検出器の距離は17cmであった。放射線は、Cu Kα(45kV 111mA,λ=1.5418Å)であった。3<2θ<35°のデータを集め、サンプル照射時間は少なくとも300秒であった。
【0183】
単結晶X線:
単結晶データの全ては、Bruker−Nonius(USA、WI53711、マディソン、イースト・チェリル・パークウェイ5465番のBRUKER AXS,Inc.)Kappa CCD2000システムにて、Cu Kα放射線(λ=1.5418Å)を用いて集め、Lorentz−分極因子のみを修正した。測定した強度データの指数付けおよびプロセシングは、コレクト(Collect)プログラム・スィート(suite)(データ収集およびプロセシング・ユーザーインターフェース:コレクト:データ収集ソフトウェア、R. Hooft, Nonius B. V.、1998)にて、HKL2000ソフトウェア・パッケージ(Otwinowski Z. & Minor W. (1997) in Macromolecular Crystallography, eds. Carter W. C. Jr & Sweet R.H. (Academic, NY),vol. 276、pp. 307−326)を用いて実施した。
【0184】
構造は、直接法で解き、次いで実測鏡映(observed reflections)に基づき、SDP(Structure Determination Package、構造決定パーッケージ)(Enraf−Nonius, Bohemia NY11716散乱因子(f'およびf”を含む)、“International Tables for Crystallography”からSDPソフトウェアを得る、英国、バーミンガムのKynoch Press, 1974:Vol. IV, Tables 2.2Aおよび2.3.1), 少し局部修正したソフトウェアまたは結晶学的パッケージ,MAXUS(maXus解法および改善ソフトウエア・スィート:S. Mackay、C. J. Gilmore、C. Edwards、M. Tremayne、N. Stewart、K. Shankland、maXus:回折データから結晶構造の解法および改善(refinement)のコンピュータープログラム)のいずれかを用い、改善した(refined)。
【0185】
得られる原子パラメーター(座標および温度因子)を、全行列・最小二乗法(full matrix least−squares)を介して改善した。改善で最小の関数は、Σw(|Fo|−|Fc|)であった。RはΣ||Fo|−|Fc||/Σ|Fo|で定義されるが、Rw=[Σw(|Fo|−|Fc|)/Σw|Fo|1/2、ここで、wは実測強度の誤差に基づく適正な重さ関数である。全ての改善段階で、差分写像(difference maps)を調べた。等方性温度因子を持つ理想点に水素を導入したが、水素パラメーターの変化はなかった。
【0186】
示差走査熱量測定:
結晶性形状の試験に用いるDSC器具は、TA Instruments(登録商標)モデルQ1000であった。DSCセル/サンプルのチャンバーに、100mL/分の超高純度窒素ガスをパージした。器具を高純度インジウムで較正した。この方法による測定サンプル温度の精度は、約±1℃であり、融解熱は約±5%の相対誤差以内で測定できる。
【0187】
サンプルを、開放したアルミニウム製DSC皿に入れ、空の対照皿に対して計量した。皿の底に少なくとも2mgのサンプル粉末を入れ、軽くたたいて、皿との良好な接触を確保した。サンプルの重量を正確に測定し、100分の1ミリグラム単位まで記録した。器具は予定どおり、25〜350℃の温度範囲において1分当り10℃で加熱した。
【0188】
熱流をサンプル重量によって標準化し、これをサンプルの測定温度に対してプロットした。データは、ワット/グラム(“W/g”)の単位で報告する。プロットは、吸熱ピークを下にして行なった。この分析における、外挿した開始温度、ピーク温度、および融解熱の吸熱溶融ピークの数値を求めた。
【0189】
熱重量分析(TGA):
結晶性形状の試験に用いTGA器具は、TA Instruments(登録商標)モデルQ500であった。25〜約350℃の温度範囲において、1分当り10℃の加熱速度で少なくとも10mgのサンプルを分析した。
【0190】
実施例8
N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミド(IV)の結晶性モノ水和物の製造:
結晶性モノ水和物形状を得る結晶化操作の一例を以下に示す:
48gの式(IV)の化合物を装入し、
約1056mL(22mL/g)のエチルアルコール、または他の適当なアルコールを装入し、
約144mLの水を装入し、
懸濁液を約75℃に加熱して溶解し、
必要に応じ、予め加熱したフィルターを通して75℃の式(IV)の化合物溶液を受器に移して、該フィルターを洗練し、
溶解反応器をリンスし、エタノール43mLおよび水5mLの混合物を用いてライン(lines)を移し、
受器の内容物を75〜80℃に加熱し、75〜80℃で維持して完全に溶解せしめ、
【0191】
約384mLの水を、バッチ温度が75〜80℃に維持されるような速度で装入し、
75℃に冷却し、必要に応じてモノ水和物種結晶を装入し(なお、種結晶はモノ水和物を得るのに必須ではないが、結晶化の良好なコントロールを付与する)、
70℃に冷却し、70℃で約1h維持し、
70℃から5℃に2hにわたって冷却し、次いで温度を0〜5℃に少なくとも2h維持し、
結晶スラリーを濾過し、
濾過ケークを、エタノール96mLおよび水96mLの混合物で洗い、
かかる材料を減圧下<50℃で乾燥して、含水率をKFで3.4〜4.1%として、41g(85M%)を得る。
【0192】
別法として、モノ水和物は以下の手順によって得ることができる:
1)化合物IVのアセテート塩の水溶液に、種結晶としてモノ水和物を加え、80℃で加熱してモノ水和物バルクを得る。
2)化合物IVのアセテート塩の水溶液に、種結晶としてモノ水和物を加える。室温で数日間静置させると、モノ水和物バルクが形成する。
3)化合物IVの水性懸濁液に、種結晶(種晶)としてモノ水和物を加え、70℃で4時間加熱してモノ水和物バルクを得る。種晶添加がないと、室温で82日後も化合物IVの水性スラリーは変化しない。
【0193】
4)NMPまたはDMAなどの溶剤中の化合物IVの溶液を、溶液が濁ってくるまで水で処理し、75〜85℃で数時間保持する。冷却および濾過後、モノ水和物を単離する。
5)エタノール、ブタノールおよび水中の化合物IVの溶液を加熱する。該温溶液に種晶のモノ水和物を加え、次いで冷却する。冷却および濾過し、モノ水和物を単離する。
当業者であれば、式(IV)の化合物のモノ水和物を、図1に示すXRPDあるいは下記表1に示すピークの代表的サンプリングのいずれによって表わしてもよいことを認識するだろう。
【0194】
式(IV)の化合物のモノ水和物のXRPDによって得られた代表的ピークを表1に示す。
【表1】

【0195】
またXRPDは、以下に示す:4.6±0.2、11.2±0.2、13.8±0.2、15.2±0.2、17.9±0.2、19.1±0.2、19.6±0.2、23.2±0.2、23.6±0.2からなる群から選ばれる2θ値を包含するリストを特性とした。またXRPDは、18.0±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、19.6±0.2、21.2±0.2、24.5±0.2、25.9±0.2および28.0±0.2からなる群から選ばれる2θ値のリストを特性とした。
単結晶X線データは、室温(+25℃)で得られた。分子構造は、式(IV)の化合物のモノ水和物形状として確認された。
【0196】
式(IV)の化合物のモノ水和物の、以下に示す単位胞パラメーターを25℃のX線分析から得た:
a(Å)=13.8632(7);b(Å)=9.3307(3);c(Å)=38.390(2);
V(Å)4965.9(4);Z’=1;Vm=621
空間群 Pbca
分子数/単位胞(unit cell、単位格子):8
密度(g/cm):1.354(計算値)
ここで、Z’=1不斉単位当りの薬物分子数、Vm=V(単位胞)/Z(1格子当りの薬物分子数)
【0197】
また単結晶X線データは、−50℃でも得られた。式(IV)の化合物のモノ水和物形状は、以下に示す単位胞パラメーターにほぼ匹敵するものを特性とした:
格子寸法:
a(Å)=13.862(1)
b(Å)=9.286(1)
c(Å)=38.143(2)
体積=4910(1)Å
空間群 Pbca
分子数/単位胞:8
密度(g/cm):1.300(計算値)
ここで、化合物は約−50℃の温度であった。
【0198】
模擬XRPDは、室温で改善原子パラメーターから算定した。
式(IV)の化合物のモノ水和物は、図2に示すDSCによって表わされた。DSCは、約95〜130℃間の広いピークを特性とした。このピークはブロードで、変わりやすく、かつTGAグラフで見られる1水和水の損失に相当した。またDSCは、約287℃で特有のピークを有し、これは式(IV)の化合物の脱水形状の溶融物に相当した。
式(IV)の化合物のモノ水和物のTGAを、DSCと共に図2に示す。TGAは、50℃から175℃までの重量損失3.48%を示した。重量損失は、式(IV)の化合物から水和水1の損失に相当した。
またモノ水和物は、アルコール性溶媒、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよび水よりの水晶化によっても製造しうる。
【0199】
実施例9
N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミド(IV)の結晶性n−ブタノール溶媒化合物の製造:
式(IV)の化合物の結晶性ブタノール溶媒化合物は、化合物(IV)を1−ブタノール中還流温度(116〜118℃)にて、溶媒25mL当り約1gの濃度で溶解することによって製造された。溶液を冷却すると、ブタノール溶媒化合物が溶液から晶出した。濾過、ブタノールによる洗浄および乾燥を行なった。
【0200】
結晶性ブタノール溶媒化合物の、以下に示す単位胞パラメーターを室温でのX線分析から得た:
a(Å)=22.8102(6);b(Å)=8.4691(3);c(Å)=15.1436(5);
V(Å)2910.5(2);Z’=1;Vm=728
空間群 P2/a
分子数/単位胞:4
密度(g/cm):1.283(計算値)
ここで、Z’=1不斉単位当りの薬物分子数、Vm=V(単位胞)/Z(1格子当りの薬物分子数)
【0201】
当業者であれば、式(IV)の化合物のブタノール溶媒化合物を、図3に示すXRPDあるいは以下に示すピークの代表的サンプリングのいずれによって表わしてもよいことを認識するだろう。結晶性ブタノール溶媒化合物の代表的ピークは、5.9±0.2、12.0±0.2、13.0±0.2、17.7±0.2、24.1±0.2および24.6±0.2の2θ値であった。
【0202】
実施例10
N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミド(IV)の結晶性エタノール溶媒化合物の製造:
【化58】

【0203】
100mL丸底フラスコに、4.00g(10.1ミリモル)の化合物5D(2.3面(Area)%の化合物5Cを含有)、6.60g(50.7ミリモル)の化合物7B、80mLのn−ブタノールおよび2.61g(20.2ミリモル)のDIPEAを入れた。得られたスラリーを120℃に加熱し、120℃で4.5h維持することにより、HPLC分析で化合物IVに対し0.19相対面%の残留物5Dが認められた。均質混合物を20℃に冷却し、一夜攪拌を続けた。得られた結晶を濾別した。湿潤ケークを10mL部のn−ブタノールで2回洗い、白色結晶性生成物を得た。HPLC分析でこの物質は、99.7面%の化合物IVと0.3面%の化合物5Cを含有することが認められた。
【0204】
得られた湿潤ケークを100mL反応器に戻し、これに56mL(12mL/g)の200プルーフのアルコールを入れた。80℃でさらに25mLのエタノールを加えた。この混合物に10mLの水を加えて、急速な溶解をもたらした。加熱を除き、75〜77℃で結晶化を観察した。結晶スラリーをさらに20℃に冷却し、濾過した。湿潤ケークをエタノール/水(1:1)10mLで1回および10mLのn−ヘプタンで1回洗った。湿潤ケークはKFにより1.0%の水およびLODにより8.10%の揮発分を含有した。物質を60℃/30 in Hgで17h乾燥して、KFにより0.19%のみの水を含有する3.55g(70M%)の物質を得た。HPLCにより99.87面%。しかして、H−NMR分析により、エタノール溶媒化合物の形成が明らかになった。
【0205】
結晶性エタノール溶媒化合物(ジエタノラート)の、以下に示す単位胞パラメーターを−40℃でのX線分析から得た:
a(Å)=22.076(1);b(Å)=8.9612(2);c(Å)=16.8764(3);
V(Å)3031.1(1);Z’=1;Vm=758
空間群 P2/a
分子数/単位胞:4
密度(g/cm):1.271(計算値)
ここで、Z’=1不斉単位当りの薬物分子数、Vm=V(単位胞)/Z(1格子当りの薬物分子数)
当業者であれば、式(IV)の化合物のエタノール溶媒化合物を、図4に示すXRPDあるいは以下に示すピークの代表的サンプリングのいずれによって表わしてもよいことを認識するだろう。結晶性エタノール溶媒化合物の代表的ピークは、5.8±0.2、11.3±0.2、15.8±0.2、17.2±0.2、19.5±0.2、24.1±0.2、25.3±0.2および26.2±0.2の2θ値であった。
【0206】
実施例11
結晶性N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミド(IV)(ニート形状N−6)の製造:
NMP(1168mL)中の化合物5D(175.45g、0.445モル)およびヒドロキシエチルピペラジン(289.67g、2.225モル)の混合物に、DIPEA(155mL、0.89モル)を加えた。懸濁液を110℃で25分間加熱し(溶液が得られる)、次いで約90℃に冷却した。得られた温溶液を、温度を約80℃で維持しながら、温(80℃)水(8010mL)に滴下した。得られた懸濁液を80℃で15分攪拌し、次いで室温までゆっくりと冷却した。減圧濾過で固体を集め、水(1600mL×2)で洗い、55〜60℃で減圧乾燥して、192.45g(収率88.7%)のN−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミドを得た。
【0207】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ2.24 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 2.43 (t, 2H, J=6), 2.49 (t, 4H, J=6.3), 3.51 (m, 4H), 3.54 (q, 2H, J=6), 4.46 (t, 1H, J=5.3), 6.05 (s, 1H), 7.26 (t, 1H, J=7.6), 7.28 (dd, 1H, J=7.6, 1.7), 7.41 (dd, 1H, J=7.6, 1.7), 8.23 (s, 1H), 9.89 (s, 1H), 11.48. KF0.84; DSC: 285.25℃ (開始), 286.28℃ (max).
【0208】
ニート結晶性化合物IVの、以下に示す単位胞パラメーターを23℃でのX線分析から得た:
a(Å)=22.957(1);b(Å)=8.5830(5);c(Å)=13.803(3);
V(Å)=2521.0(5);Z’=1;Vm=630
空間群 P2/a
分子数/単位胞:4
密度(g/cm):1.286(計算値)
ここで、Z’=1不斉単位当りの薬物分子数、Vm=V(単位胞)/Z(1格子当りの薬物分子数)
当業者であれば、式(IV)の化合物の結晶性形状が、図5に示すXRPDあるいは以下に示すピークの代表的サンプリングのいずれによって表わしてもよいことを認識するだろう。結晶性ニート形状(N−6)の代表的ピークは、6.8±0.2、11.1±0.2、12.3±0.2、13.2±0.2、13.7±0.2、16.7±0.2、21.0±0.2、24.3±0.2および24.8±0.2の2θ値であった。
【0209】
実施例12
結晶性N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−(6−(4−(3−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ)チアゾール−5−カルボキサミド(IV)(ニート形状T1H1−7)の製造:
標記のニート形状は、式(IV)の化合物のモノ水和物形状を脱水温度以上で加熱することによって製造しうる。
ニート結晶性(T1H1−7)化合物IVの、以下に示す単位胞パラメーターを、25℃でのX線分析から得た:
a(Å)=13.4916;b(Å)=9.3992(2);c(Å)=38.817(1);
V(Å)=4922.4(3);Z’=1;Vm=615
空間群 Pbca
密度(g/cm):1.317(計算値)
ここで、Z’=1不斉単位当りの薬物分子数、Vm=V(単位胞)/Z(1格子当りの薬物分子数)
【0210】
当業者であれば、式(IV)の化合物のニート結晶性形状(T1H1−7)が、図6に示すXRPDあるいは以下に示すピークの代表的サンプリングのいずれにより表わしてもよいことを認識するだろう。結晶性ニート形状(T1H1−7)の代表的ピークは、8.0±0.2、9.7±0.2、11.2±0.2、13.3±0.2、17.5±0.2、18.9±0.2、21.0±0.2、22.0±0.2の2θ値であった。
上記の教えに照らして、本発明の多数の改変およびバリエーションが明らかに可能である。従って、特許請求の範囲の技術的範囲内で、本明細書記載以外の方法で本発明を実施しうることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】化合物(IV)の結晶性モノ水和物のX線粉末回折図である。
【図2】化合物(IV)の結晶性モノ水和物の示差走査熱量測定および熱重量分析の結果を示すグラフである。
【図3】化合物(IV)の結晶性ブタノール溶媒化合物のX線粉末回折図である。
【図4】化合物(IV)の結晶性エタノール溶媒化合物のX線粉末回折図である。
【図5】化合物(IV)の結晶性ニート形状のX線粉末回折図である。
【図6】化合物(IV)の他の結晶性ニート形状のX線粉末回折図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、L,Ar,R,R,R,Rおよびmは下記と同意義である)
で示される化合物を製造する方法であって、
式(II):
【化2】

(式中、Qは−O−P基、ここでPはそれが結合する酸素原子といっしょに考えると、Qが脱離可能基となるように選択され、およびAr,L,R,Rおよびmは下記と同意義である)
の化合物をハロゲン化試薬と反応させた後、式(III):
【化3】

(式中、RおよびRは下記と同意義である)
のチオ尿素化合物と反応させて、式(I):
【化4】

(式中、Arは式(I)と(II)とで同一で、アリールまたはヘテロアリール;
Lは式(I)と(II)とで同一で、必要に応じて置換されるアルキレン;
は式(I)と(II)とで同一で、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロから選ばれ;
は式(I)と(II)とで同一で、水素、ハロゲン、シアノ、ハロアルキル、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロから選ばれ;
は式(I)と(II)とで同一で、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロから選ばれ、またはRはRと共に合してヘテロアリールまたはヘテロシクロを形成;
は式(I)と(II)とで同一で、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロから選ばれ、またはRはRと共に合してヘテロアリールまたはヘテロシクロを形成;および
mは0または1
である)
の化合物を得ることを特徴とする製造法。
【請求項2】
式(Ie):
【化5】

(式中、ZおよびZは水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシおよびアルコキシから選ばれ;
,ZおよびZは水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、C(=O)NRおよび/またはNRC(=O)から選ばれ、ここで、Rはアルキル、シクロアルキルまたはヘテロアリール
である)
で示される化合物を製造する方法であって、
式:
【化6】

(式中、Qは請求項1の記載と同意義;およびZ,Z,Z,ZおよびZは上記と同意義である)
の化合物をハロゲン化試薬と反応させた後、式:
【化7】

のチオ尿素化合物と反応させて、式:
【化8】

の化合物を得る請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
が水素で、式(If):
【化9】

の化合物を得る請求項2に記載の製造法。
【請求項4】
さらに式:
【化10】

の化合物を式:
【化11】

(式中、XおよびYは脱離可能基;およびR15およびR16はそれぞれ独立して水素、アルキルおよび置換アルキルから選ばれる)
のピリミジン化合物と反応させて、式:
【化12】

(式中、Y,R15,R16,Z,Z,Z,ZおよびZは請求項2の記載と同意義である)
の化合物を得る請求項3に記載の製造法。
【請求項5】
さらに式:
【化13】

の化合物を式:NHR2021(式中、R20およびR21はそれぞれ独立して水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、へテロシクロ、アリールおよびヘテロアリールから選ばれ、またはR20とR21は共に合してヘテロシクロを形成する)のアミンと反応させて、式(Ih):
【化14】

(式中、R15,R16,Z,Z,Z,Z,Z,R20およびR21は上記と同意義である)
の化合物を得る請求項4に記載の製造法。
【請求項6】
式:NHR2021のアミンが、必要に応じてヒドロキシ(アルキル)で置換されるピペラジンである請求項5に記載の製造法。
【請求項7】
式:
【化15】

の化合物を製造する請求項1に記載の製造法。
【請求項8】
さらに式(If):
【化16】

(式中、Z,Z,Z,ZおよびZは請求項2の記載と同意義である)
の化合物を式:
【化17】

(式中、R15およびR16はそれぞれ独立して水素、アルキルおよび置換アルキルから選ばれ;およびR20およびR21はそれぞれ独立して水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、へテロシクロ、アリールおよびヘテロアリールから選ばれ、またはR20とR21は共に合してヘテロシクロを形成する)
のピリミジン化合物と反応させて、式(Ih):
【化18】

(式中、R15,R16,Z,Z,Z,Z,Z,R20およびR21は上記と同意義である)
の化合物を得る請求項3に記載の製造法。
【請求項9】
が式:
【化19】

(式中、R15およびR16はそれぞれ独立して水素、アルキルおよび置換アルキル;およびR20およびR21はそれぞれ独立して水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、へテロシクロ、アリールおよびヘテロアリールから選ばれ、またはR20とR21は共に合してヘテロシクロを形成する)
の基であって、これにより、式(Ih):
【化20】

(式中、R15,R16,Z,Z,Z,Z,Z,R20およびR21は上記と同意義である)
の化合物を得る請求項2に記載の製造法。
【請求項10】
が式:
【化21】

(式中、Yは脱離可能基;およびR15およびR16はそれぞれ独立して水素、アルキルおよび置換アルキルから選ばれる)
の基であって、これにより、式(Ii):
【化22】

(式中、Y,R15,R16,Z,Z,Z,ZおよびZは上記と同意義である)
の化合物を得る請求項2に記載の製造法。
【請求項11】
さらに式(Ii)の化合物を、式:NHR2021のアミンと反応させて、式(Ih):
【化23】

(式中、R15,R16,Z,Z,Z,Z,Z,R20およびR21は請求項10の記載と同意義である)
の化合物を得る請求項10に記載の製造法。
【請求項12】
が式:
【化24】

の基である請求項2に記載の製造法。
【請求項13】
Arが必要に応じて置換されるフェニルである請求項1に記載の製造法。
【請求項14】
Arが
【化25】

から選ばれる請求項1に記載の製造法。
【請求項15】
Lが必要に応じて置換されるアルキレンおよびmが1である請求項1に記載の製造法。
【請求項16】
mが0である請求項1に記載の製造法。
【請求項17】
が水素または低級アルキル;
が水素または低級アルキル;および
が水素
である請求項1に記載の製造法。
【請求項18】
ハロゲン化試薬がNBS、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、および1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインから選ばれる請求項1に記載の製造法。
【請求項19】
キナーゼ阻害薬として有用な化合物の製造に用いる、式:
【化26】

(式中、R18はC1−4アルキル;
およびZは水素、低級アルキルおよびハロゲンから選ばれ;および
は水素または−C(=O)NR、ここで、Rはアルキル、シクロアルキルまたはヘテロアリール
である)
で示される中間体。
【請求項20】
式(IV):
【化27】

で示される化合物の結晶性モノ水和物。
【請求項21】
図1に示されるものに実質的に一致するX線粉末回折図を特性とする請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
図2に示されるものに実質的に一致する示差走査熱量サーモグラムおよび熱重量分析を特性とする請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
18.0±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、19.6±0.2、21.2±0.2、24.5±0.2、25.9±0.2および28.0±0.2からなる群から選ばれる4つ以上の2θ値を包含するX線粉末回折図(CuKa λ=1.5418Å、温度約23℃)を特性とする請求項20に記載の化合物。
【請求項24】
治療上有効量の請求項20に記載の化合物および医薬的に許容しうる担体から成る医薬組成物。
【請求項25】
癌の処置法であって、該処置を必要とする宿主に対し治療上有効量の請求項20に記載の化合物を投与することから成る処置法。
【請求項26】
格子寸法:
a(Å)=13.8637(7)
b(Å)=9.3307(3)
c(Å)=38.390(2)
体積=4965.9(4)Å
空間群 Pbca
分子数/単位胞:8
密度(g/cm):1.354(計算値)
にほぼ匹敵する単位胞パラメーターを特性とする請求項20に記載の化合物。
【請求項27】
式(IV)の1分子当り1つの水分子が存在する請求項20に記載の化合物。
【請求項28】
腫瘍学的障害を処置する方法であって、該処置を必要とする宿主に対し治療上有効量の請求項20に記載の化合物を投与し、上記障害が慢性骨髄性白血病(CML)、胃腸支質腫瘍(GIST)、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、黒色腫、肥満細胞症、生殖細胞種、急性骨髄性白血病(AML)、小児肉腫、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌および前立腺癌から選ばれる処置法。
【請求項29】
式(IV):
【化28】

で示される化合物の結晶性ブタノール溶媒化合物。
【請求項30】
格子寸法:
a(Å)=22.8102(6)
b(Å)=8.4691(3)
c(Å)=15.1436(5)
体積=2910.5(2)Å
空間群 P2 1/a
分子数/単位胞:4
密度(g/cm):1.283(計算値)
にほぼ匹敵する単位胞パラメーターを特性とする請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
式(IV):
【化29】

で示される化合物の結晶性モノ水和物を製造する方法であって、
式(IV)の化合物をエタノール/水混合物中、加熱および溶解し、次いで冷却してエタノール/水混合物から上記モノ水和物を晶出させることを特徴とする製造法。
【請求項32】
式(IV)の化合物のブタノール溶媒化合物を、エタノール/水混合物に溶解する請求項31に記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188446(P2012−188446A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−129253(P2012−129253)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2006−552303(P2006−552303)の分割
【原出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】