説明

キノコから抽出したエルゴチオネインを高含有する組成物

【課題】本発明の課題は、キノコからエルゴチオネインを高濃度に含有する、安価でかつ安全性に優れた抽出物を製造する方法を見つけることにある。また得られた組成物に有効性を見出し、皮膚用医薬組成物、化粧料、機能性食品に配合し、老化、メタボリックシンドロームといった悩みを予防・改善するのに有効な組成物の開発が望まれている。
【解決手段】キノコからエルギチオネインを高濃度に含有する、安価で安全性に優れた抽出物を製造する方法を見出し、さらにその抽出物には有効な機能、すなわち抗老化作用、抗メタボリックシンドローム作用、抗酸化作用、チロシナーゼ阻害作用、リパーゼ阻害作用、5α−レダクターゼ阻害作用を有することが分かり、老化やメタボリックシンドロームといった悩みに対して有効であることが分かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノコから抽出したエルゴチオネインを高含有する組成物、及びこの組成物を有効成分として含んでなる、抗酸化作用、美白作用、抗アクネ作用、脱毛予防、養毛作用、抗老化作用、抗メタボリックシンドローム作用を有する剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エルゴチオネインは、その抗酸化特性に注目され、食品用、化粧用あるいは医薬用として注目されつつある。かかるエルゴチオネインは人間が体内で合成できないため、外から摂取しなければならない。エルゴチオネインを人間が摂取するには、通常、菌類とマイコバクテリアによって生合成されたエルゴチオネインを、根から吸収した植物を摂取することによって可能である。しかし、植物中に存在するエルゴチオネインは極めて少量であるため、充分な量のエルゴチオネインを摂取するには極めて大量の植物を食しなければならない。このため、エルゴチオネインを大量に製造すべく、エルゴチオネインの製造方法として、化学合成法(特許文献1)や発酵法(特許文献2)が提案されている。
【0003】
このエルゴチオネインの製造方法としての化学合成法や発酵法によれば、植物を食することなくエルゴチオネインを摂取可能にできる。しかし、化学合成法によれば、その工程が複雑となるため、得られるエルゴチオネインの製造コストが極めて高額となる。しかも、化学合成法では、その工程で種々の薬品を用いるため、得られたエルゴチオネインは安全面から問題がある。一方発酵法では、菌類を用いてエルゴチオネインを製造しており、化学合成法に比較して、安全面では優れているが、その収量が少ないため、得られるエルゴチオネインの製造コストは依然として極めて高額である。
【0004】
女性にとって外見の美しさは日常生活に欠かせない要素であり、また近年では女性の社会進出が進んでおり、とりわけ肌の美しさに多くの女性の関心が集まっている。一方で加齢や紫外線、生活上のストレスなどの要因で、シミ・そばかすや肌荒れ、シミ、たるみ、ニキビなどの肌上の悩みは進行してしまうのが現状であり、肌の種々の悩み・トラブルに対応した健康食品、化粧料が数多く販売されている。また主として男性の加齢とともに進行する悩みである薄毛も、外観に大きく影響し、発毛や育毛・養毛をコンセプトに謳った製品も近年多く見られる。こうした外観上の悩みを解決してくれる化粧料の開発は、機能性化粧品として数多く発売されているものの、高額であることが多々ある。
【0005】
飽食の時代と言われる現代において、メタボリックシンドロームに関心を示す人が多く見られる。メタボリックシンドロームとは動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)の危険性を高める複合型リスク症候群のことで、別名「内臓脂肪症候群」とも言われる。メタボリックシンドローム対応製品とは主として「高血圧」「高脂血症」「糖尿病」などの疾患に対する作用を持った医薬品や機能性食品を差し、その開発・発売は近年著しく増加している。また、高齢化社会が急速に進んでいる今日において、人々は、高齢化後も、活発に日常生活を送りたいという共通の願いを抱いている。その願望に応えるべく、医薬品や機能性食品分野における抗老化対応製品の企画、開発が目覚ましく行われている。しかしながら、このような医薬品・機能性食品の中には、伝承に基づいただけの製品も多く、使用においてその安全性が懸念される。また、化学合成医薬品においては副作用が懸念され、その服用に注意を払うことが必須とされる。従って、動物に対して有効かつ安心して使用できる組成物の開発が求められている。
【0006】
【特許文献1】特表平8−501575号公報
【特許文献2】特公昭43−20716号公報
【発明の開示】
【0007】
本発明者等は、エルゴチオネインを高収量でかつ安全に得ることができる製造方法を見出し、それによって得られた組成物を配合することで多くの悩みに応える安全で安価な組成物を提供することが可能になった。
【0008】
従って、本発明による組成物は、キノコから抽出したエルゴチオネインを含有するものである。また、本発明の別の態様によれば、本発明による組成物を有効成分として含んでなる、抗酸化剤、チロシナーゼ活性阻害剤、リパーゼ活性阻害剤、5α−レダクターゼ活性阻害剤、抗老化剤、抗メタボリックシンドローム剤を提供する。
【0009】
本発明による組成物及びそれを有効成分とし含有する剤、医薬組成物、皮膚用医薬組成物、医薬部外品、化粧品、(健康)食品は、シミやくすみ、ニキビ、脱毛といった外観上の悩みや、メタボリックシンドローム、加齢に伴っておこる健康上の悩みに対して極めて優れた効果を発揮しうることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
定義
本明細書において、用いられる用語は下記の意味において使用される。
「抽出物又はエキス」とは、原料であるキノコを溶媒で抽出し、両イオン性構造のエルゴチオネインを吸着する吸着能を有するイオン交換樹脂と吸着クロマトグラフィーとを用いて分画処理し、非イオン性化合物及びエルゴチオネインを除くイオン性化合物を除去することによって得られた、抽出液、抽出液の希釈液若しくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは濃縮液のいずれをも包含する意である。
【0011】
エルゴチオネイン含有組成物
前記エルゴチオネインを図1に示す。

【0012】
本発明による組成物は、エルゴチオネインが、0.05重量%以上で含有されてなるものが好ましい。
【0013】
原料
原料は、本発明にあっては、ヒラタケ科に属するキノコであって、エルゴチオネインを含有するものであればいずれのものも使用することができる。本発明において好ましいキノコとしては、その種類、産地等は特に限定されず、具体的には、ヒラタケ科のタモギタケ、ヒラタケ、エリンギ、エノキタケ等が挙げられ、中でもタモギタケ(Pleurotus cornucopiae(Pers)Rolland.)が好ましい。なお本発明において言う「キノコ」とは、茎部分と傘部分とから成る子実体はもちろんのこと、石槌部分も含む。また、「キノコ」は生のものでも乾燥したものでも使用することができる。
【0014】
本発明において、キノコとして人工栽培されたキノコ及び液体培養した菌子体を用いることによって、さらにエルゴチオネインの製造コストを安価にできる。
【0015】
抽出
本発明では、エルゴチオネイン含有のキノコを溶媒によってエルゴチオネインを抽出する。この抽出は、キノコを粉砕し溶媒で抽出すること、特にキノコの粉砕を溶媒中で行い、キノコを粉砕しつつ抽出することが、キノコからエルゴチオネインを短時間でかつ充分に抽出でき好ましい。この粉砕は、市販の粉砕機で行うことができる。
かかる溶媒としては、キノコ中のエルゴチオネインを抽出できる溶媒、例えばアセトンでも用いることができるが、人体に摂取しても問題のない溶媒、例えば水やエチルアルコールが好ましい。
キノコを粉砕し溶媒で抽出した場合には、キノコの粉砕物と溶媒からなるスラリーから、エルゴチオネインを抽出した抽出液を固形分と分離する。かかる分離操作では、スラリーをろ紙などのろ材を用いて吸引した後、ろ液にアルコール溶液を添加し静置して沈殿物を沈澱させた後、沈殿物と液体とをろ紙等のろ材を用いて吸引ろ過して分離した抽出液を得る。あるいは、スラリーをろ紙などのろ材を用いて吸引ろ過した後、ろ液を凍結乾燥しても良い。
この様に、エルゴチオネイン含有キノコをスラリー状とするには、キノコを粉砕してスラリー化することを要する。
この点、エルゴチオネイン含有のキノコからエルゴチオネインの抽出を熱水抽出で行うことによって、キノコをスラリー化することなく行うことができる。かかる熱水抽出によれば、手で千切ったキノコを熱水中で保持することによって、エルゴチオネインを抽出できる。このため、キノコの粉砕およびスラリー化等の工程を省略できかつエルゴチオネイン含有の抽出液のろ過等を容易に行うことができる。
【0016】
濃縮/精製
この様にして得られた抽出物を、吸着クロマトグラフィーを用いた分画手段によって分画する。この吸着クロマトグラフィーとしては、カラムに粒状の吸着剤が充填されたカラムクロマトグラフィーを好適に用いることができる。
さらに、かかるカラムクロマトグラフィーによって分画された複数の分画液について、ゲル状の吸着剤が薄層に形成された薄層クロマトグラフィーを用いて検査し、エルゴチオネインを含有する分画液を集める。この様に、エルゴチオネインを含有する分画液を集めることによって、その後の処理を効率的に施すことができる。
このカラムクロマトグラフィーでは、アルミナ等の粒状の吸着剤に、分離操作で分離した抽出物を付着させた後、吸着剤をカラムに充填してエタノール−水で展開し、溶出液をフリクションコレクターで分画する。
また、薄層クロマトグラフィーでは、シリカゲル等のゲル状の吸着剤から成る薄層に、複数の分画液をスポット状に滴下し、メタノール−水で展開する。スポットの移動距離を溶媒の移動距離で割ったRf値が、0.27でかつUV(254nm)でクエンチングを示す成分を含む分画液を集める。かかる分画液中には、エルゴチオネインを含有している。
【0017】
ところで、エルゴチオネインは、両性イオン構造を有するため、分離操作で分離したエルゴチオネイン含有抽出液をイオン交換樹脂に通液することによって、エルゴチオネインを糖類等の非イオン性化合物から分離できる。ただし、アミノ酸などのイオン性化合物は、イオン交換樹脂に吸着されやすく、イオン交換樹脂のみでは、エルゴチオネインをアミノ酸等のイオン性化合物と分離できない。
このため、エルゴチオネイン含有の抽出液を分画する分画手段としては、イオン交換樹脂と吸着クロマトグラフィーとを併用した分画手段を採用できる。このイオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂を好適に用いることができる。
かかる分画手段では、分離操作で分離したエルゴチオネイン含有の抽出液をイオン交換樹脂に通液し、複数の分取液を分取する。この際に、エルゴチオネイン含有の抽出液をイオン交換樹脂に付着させた後、アンモニア希釈液などのアルカリ溶液を通液して、イオン交換樹脂に付着していたエルゴチオネインを溶出させて分取する。分取した複数の分取液については、ゲル状の吸着剤が薄層に形成された薄層クロマトグラフィーを用いて検査し、エルゴチオネインを含有する分取液を集める。
【0018】
集めた分取液は、必要に応じて塩酸等の酸を用いて中和した後、塩化アンモニウム等の塩や不純物を除去すべく、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーを用いて複数の分画液に分画しても良い。この場合も、ゲル状の吸着剤が薄層に形成された薄層クロマトグラフィーを用いて検査し、エルゴチオネインを含有する分取液を集める。なお脱塩には電気透析装置を用いることもできる。
集められたエルゴチオネインを含有する分取液は、吸着クロマトグラフィーを用いて複数の分画液に分画する。この吸着クロマトグラフィーは、カラムに粒状の吸着剤が充填されたカラムクロマトグラフィーを好適に用いることができる。
さらにかかるカラムクロマトグラフィーによって分画された複数の分画液についても、ゲル状の吸着剤が薄層に形成された薄層クロマトグラフィーを用いて検査し、エルゴチオネインを含有する分画液を集める。
【0019】
乾燥/乾燥物
本発明の別の態様によれば、抽出物または溶媒を除去した抽出物を、乾燥し、乾燥物を得ることができる。本発明において、乾燥方法は、天日乾燥、(熱)風乾燥、真空乾燥、通気乾燥、流動乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、高周波乾燥、およびその他の乾燥法、またはこれらの混合方法が用いられるが、本発明においては、凍結乾燥が好ましくは利用される。この凍結乾燥を行う場合、凍結温度、乾燥(湿度)は得られる凍結乾燥物の量に併せて適宜設定することができる。
【0020】
以上、説明してきた本発明に係るエルゴチオネインを高含有する組成物の製造方法では、原料として用いるキノコに含まれているエルゴチオネインを、容易に抽出、濃縮及び精製できる。このため、エルゴチオネインの製造コストを、合成法や発酵法に比較して大幅に低減できる。
また、抽出液や展開液を水や水−エタノールを用いることができ、人体に対して安全でかつ処理済液の処理も容易である。
さらに、人工栽培のキノコを原料に用いることができ、キノコの消費量が低下して生産調整がされる夏場でも安定してキノコを栽培できる。このため、キノコの人工栽培を年間を通じて安定して行うことができる。
【0021】
2.用途
医薬組成物
本発明は、本発明によるエルゴチオネインを高含有する抽出組成物を含んでなる医薬組成物を提案することができる。この医薬組成物は、具体的には、本発明によるエルゴチオネインを高含有する組成物を含んでなる、抗酸化剤、チロシナーゼ阻害剤、リパーゼ活性阻害剤、5α−レダクターゼ阻害剤、抗老化剤、抗メタボリックシンドローム剤である。
【0022】
本発明による医薬組成物は、経口および非経口(例えば、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で、人を含む動物に投与することができる。本発明による医薬組成物は、投与経路に応じた適切な剤形として提供されることが好ましい。例えば、液剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠等の経口剤、直腸投与剤等の種々に調製して使用することが可能である。
【0023】
医薬組成物としての効果をより確実なものとするために、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤等、薬学上許容される担体または添加剤を適宜選択し、組み合わせたものを本発明による抽出物等に添加してよい。使用可能な無毒性の上記添加剤は、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0024】
本発明による医薬組成物は、成人1日当たりの摂取量として、キノコの抽出物の質量換算で1.0mg以上であることが好ましい。
【0025】
皮膚用医薬組成物
本発明による抽出組成物は、皮膚に適応した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚用医薬組成物(特に皮膚外用剤)に配合するのに好適である。この皮膚用医薬組成物は、具体的にはエルゴチオネインを高含有する組成物を含んでなる、抗酸化剤、チロシナーゼ阻害剤、リパーゼ活性阻害剤、5α−レダクターゼ阻害剤、抗老化剤、抗メタボリックシンドローム剤である。皮膚用医薬組成物の種類としては、例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、入浴剤等が挙げられる。キノコの抽出物の添加量は、皮膚用医薬組成物の総重量に対して、乾燥固形物に換算して、0.00001重量%以上である。本発明による抽出組成物をそのまま使用する場合は、溶質である乾燥固形分の含有量が上記範囲内であれば、その抽出液濃度等は何ら限定されるものではない。
【0026】
本発明における皮膚用医薬組成物は、任意成分を含んでなることができる。任意成分の具体例としては、通常化粧品、医薬部外品、医薬品等の皮膚(外)用剤に用いられる成分、例えば増粘度剤、金属イオン封鎖剤、アルコール類、香料、水性成分、水、各種皮膚美容剤、保湿剤、紫外線吸収剤、複合脂質、活性酸素消去作用を有する物質、抗炎症剤、ビタミンおよびその誘導体、油性成分、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、コレステロール類、植物ステロール類、リポプロテイン類、微生物由来成分、藻類抽出物、血行促進剤、抗脂漏剤、増粘剤、着色料等が挙げられる。また、老化防止剤、保湿剤、美白剤、活性酸素消去剤、酸化防止剤、防腐・抗菌剤、抗アレルギー剤、皮膚分泌調整剤、消炎剤、収斂剤等の生理活性化剤を適宜配合することができる。
【0027】
生理活性化剤は、植物抽出物、微生物由来の具体例として、クララ、トウキ、ヨクイニン、アシタバ、アセンヤク、チンピ、オトギリソウ、オランダカラシ、カミツレ、カラスムギ、クマザサ、クレマティス、サンザシ、シソ、ショウガ、スギナ、ゼニアオイ、ダイズ、トウキセンカ、パセリ、ビワ、シナノキ、ホップ、ホホバ、メリロート、モモ、ヤグルマギク、ユキノシタ、ヨモギ、オタネニンジン、サボテン、ノバラ、ガマ、クチナシ、ゲンノショウコウ、ジオウ、ショウブ、シモツケソウ、セイヨウハッカ、トウキンセンカ、ノイバラ、エンメイソウ、ベニバナ、パシャンベ、ソウハクヒ、ユーカリ、ラベンダー、タイム、トウガラシ、ウイキョウ、シャクヤク、オウゴン、コメヌカ、チャ、センブリ、ビワ、メリッサ、シラカバ、アロエ、オウレン、オドリコソウ、ゴボウ、ハマメリス、ユリ、マロニエ、シコン、イラクサ、イチョウ、ドクダミ、ヒバマタ、レモン、フトモモ、アルテア、ユキノシタ、ショウブ、セージ、オゴノリ、オリーブ、ザクロの花、金時ショウガ、紅景天、サラシア、チャの花の抽出物の一種又は二種以上配合することが好ましい。
【0028】
化粧品
本発明の別の態様によれば、本発明によるエルゴチオネインを高含有する抽出組成物を有効成分として含んでなる、化粧品等が提案される。この化粧品は、具体的にはエルゴチオネインを高含有する組成物を含んでなる抗酸化剤、チロシナーゼ阻害剤、リパーゼ活性阻害剤、5α−レダクターゼ阻害剤、抗老化剤、抗メタボリックシンドローム剤である。化粧品は、医薬品、医薬部外品、薬用化粧料の範疇を問わないものである。化粧品における本発明による抽出組成物の添加量、添加される任意成分等は、上記した医薬組成物、皮膚用医薬組成物で記載したのと同様であってよい。化粧品は、可溶化系、乳化系、粉末分散系、粉末系等何れの形態であってもよく、用途も、化粧水、乳液、クリーム、パック等の基礎化粧料、ファンデーション等のメークアップ化粧料、シャンプー、リンス、石けん、ボディーシャンプーなどのトイレタリー製品、浴用剤等を問わない。
【0029】
食品添加剤/機能性食品(健康食品)
本発明によるエルゴチオネインを高含有する抽出組成物は食品添加剤として使用されてよい。また、本発明の別の態様によれば、本発明による抽出組成物を含んでなる機能性食品(健康食品)が提案される。本発明による食品添加剤又は機能性食品(健康食品)は、抗酸化剤、チロシナーゼ阻害剤、リパーゼ活性阻害剤、5α−レダクターゼ活性阻害剤、抗老化剤、抗メタボリックシンドローム剤として作用するものである。
【0030】
本発明による機能性食品(健康食品)は、本発明によるエルゴチオネインを高含有する抽出組成物がその薬理効果を実現できる形態で食品に添加されてなる
ものである。本発明による機能性食品(健康食品)の具体例としては、本発明によるエルゴチオネインを高含有する抽出物を含んでなる、麺類、パン、米飯、餅等の穀物加工品;マーガリン、マヨネーズ等の油脂加工品;ハム、ソーセージ等の食肉加工品;かまぼこ、ちくわ等の水産加工品;ヨーグルト、バター、チーズ、アイスクリーム等の乳製品;ジャムなどの果実加工品;漬物などの野菜加工品;チョコレート、クッキー、ケーキ、キャンディー、チューイングガム、ゼリー等の菓子類;ジュース、コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、炭酸飲料、牛乳等の各種飲料;醤油、ソース、みりんなどの調味料;の様々な機能性食品(健康食品)が提案される。
【0031】
本発明による機能性食品(健康食品)は、成人1日当たりの摂取量として、本発明による抽出組成物の質量換算で1.0mg以上である。
【実施例】
本発明の内容を下記の実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
【0032】
薬理効果試験
下記試験例1〜9の試験を行い、その結果を表1に記載した。
抽出物調製
抽出物:原料であるタモギタケ(Pleurotus cornucopiae(Pers)Rolland.)を熱水抽出処理によって得られた、エルゴチオネインを含有する抽出物。
【0033】
試験例1:DPPHラジカル消去試験
試料調製
抽出物についてDPPHラジカル(ジフェニルピクリルヒドラジルラジカル)消去能を測定した。DPPHラジカル(Sigma社)をエタノールに溶解し0.1mM溶液とした。0.1mMDPPHラジカル溶液3mLを試験管にとり、各濃度に精製水にて希釈した試験溶液0.5mLを加え、室温で10分間放置後、波長517nmで吸光度を測定した。また、陽性試料として、アスコルビン酸ナトリウムを用いた。
評価
阻害率は検出されたDPPHラジカルの吸光度値を用いて以下の計算方法により算出した。得られた阻害率と作用濃度から50%阻害活性濃度(IC50:mg/mL)を算出した。
阻害率(%)=[(反応−未反応)−(試料−ブランク)]/(水−未反応)×100
試料;タモギタケの抽出物
反応;抽出物ぬき(抽出物の変わりに水)
未反応;DPPHラジカル抜き(DPPHの代りに水)
【表1】

【0034】
評価結果
タモギタケの抽出物はアスコルビン酸ナトリウムと同等の効果があることが確認された。
【0035】
試験例2:チロシナーゼ活性阻害試験
試料調製
基質溶液として水に溶解したチロシン溶液を用い、水で任意の濃度に希釈した抽出物或いは水と混合した。混合液中にチロシナーゼ溶液を加え37℃で反応させた。反応後、反応液中に存在するメラニン量を吸光光度計にて475nmの波長で測定した。
ブランク調製
抽出物のかわりに精製水を用いた群をブランクとした。また、陽性試料として、コウジ酸を用いた。
評価
阻害率は検出されたメラニンの吸光度値を用いて以下の計算方法により算出した。得られた阻害率と作用濃度から50%阻害活性濃度(IC50:mg/mL)を算出した。
阻害率(%)=[(反応−未反応)−(試料−ブランク)]/(水−未反応)×100
試料;タモギタケの抽出物
反応;抽出物ぬき(抽出物の変わりに水)
未反応;チロシナーゼ抜き(チロシナーゼの代りに水)
【表2】

【0036】
評価結果
タモギタケの抽出物は、コウジ酸と同等の効果があることが確認された。
【0037】
試験例3:リパーゼ活性阻害試験
試料調製
4−メチルウンベリフェリルオレート溶液に試料と0.1M Mullvaine Buffer、ヒト皮膚常在微生物由来リパーゼを混和させ、37℃で反応した後、0.1NHCLで停止させ、0.2M クエン酸ナトリウム溶液を加え、生成した4−メチルウンベリフェロンの蛍光を励起波長320nm、蛍光波長450nmで定量した。
評価
試料無添加時の反応率を100%としたときの試料添加時の反応阻害率を算出し、そこから50%反応阻害濃度を求めた。
【表3】

【0038】
試験例4:5α−レダクターゼ活性阻害試験
試料調製
テストステロン溶液にNADPH含有5mMトリス塩酸緩衝液(pH7.2)を加えて混合し、さらに各濃度に希釈した試料及びS−9(オリエンタル酵母社製)を混合し、37℃でインキュベートした。その後、塩化メチレンを加えて反応を停止させ、塩化メチレン層を分取して、テストステロンの残存量をHPLCにより定量した。別に対照として、上記の資料の代わりにその溶媒だけを同量添加した場合について同様に処理し分析した。また、陽性試料として、エチニルエストランジオールを用いた。
評価
サンプル無添加時の反応率を100%としたときの各試料添加時の反応阻害率を算出し、そこから50%反応阻害濃度を求めた。
【表4】

【0039】
試験例5:抗老化効果試験
下記表の組成成分に従って、実施例及び比較例を調製した。配合量は重量部で示す。作成方法は常法により行った。なお表5は美容液の処方で、配合量は重量部で示す。
【表5】


【0040】
表5記載の実施例1〜2、比較例1の抗老化効果試験を実施した。試験方法は40〜60歳の女性30名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、12週間に渡って洗顔後に被験外用剤の適量を顔面に塗布した。塗布による抗老化効果の結果を表6に示す。
評価基準
上記評価項目について被験者(30名)が下記評価基準により評価した。
評価◎:被験者の60%超過の者が顕著な効果が有ると認識した。
評価○:被験者の40%超過60%以下の者が明らかな効果が有ると認識した。
評価△:被験者の20%超過40%未満の者が僅かに効果有りと認識した。
評価×:被験者の20%未満の者が効果なしと認識した。
【0041】
【表6】

【0042】
評価結果
タモギタケの抽出物は抗酸化作用を有することが確認され、抗老化効果があることが分かった。
【0043】
試験例6:抗メタボリックシンドローム効果試験
実施例及び比較例の比率を表7に示す。なお表7の配合量は重量部で示す。これらを混合した後に打錠剤とし、質量が0.3gの楕円形錠剤状の食品製剤を得た。
【表7】

【0044】
評価試験
実施例及び比較例の食品製剤について、抗メタボリックシンドローム効果に関する試験を行った。具体的には、肥満、からだのだるさなどの悩みのある40〜50歳の男女7例に、食品製剤を1日5錠、半年間摂取させた。各例の摂取前及び摂取後の身体状態を聞き取りした。聞き取りした下記評価項目について下記評価基準に従って評価した。その結果を表8に示す。
評価基準
上記評価項目について被験者(7名)が下記評価基準により評価した。
評価◎:被験者の60%超過の者が顕著な効果が有ると認識した。
評価○:被験者の40%超過60%以下の者が明らかな効果が有ると認識した。
評価△:被験者の20%超過40%未満の者が僅かに効果有りと認識した。
評価×:被験者の20%未満の者が効果なしと認識した。
【0045】
【表8】

【0046】
評価結果
タモギタケの抽出物は抗メタボリックシンドローム効果があることが分かった。
【0047】
試験例7:美白効果試験
下記表の組成成分に従って、実施例及び比較例を調製した。配合量は重量部で示す。
【表9】

【0048】
評価試験
実施例及び比較例の美白効果試験を実施した。試験方法は35〜60歳の、顔にシミのある女性30名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、3か月に渡って洗顔後に被験外用剤の適量を顔面に塗布し、塗布による美白効果を下記評価項目について下記評価基準に従って評価した。その結果を表10に示す。
評価基準
上記評価項目について被験者(30名)が下記評価基準により評価した。
評価◎:被験者の60%超過の者が顕著な効果が有ると認識した。
評価○:被験者の40%超過60%以下の者が明らかな効果が有ると認識した。
評価△:被験者の20%超過40%未満の者が僅かに効果有りと認識した。
評価×:被験者の20%未満の者が効果なしと認識した。
【0049】
【表10】

【0050】
評価結果
タモギタケの抽出物はチロシナーゼ阻害作用を有することが確認され、美白効果があることが分かった。
【0051】
試験例8:抗ニキビ効果試験
実施例および比較例の処方を表11に示す。作成方法は常法により行った。なお表11は美容液の処方で、配合量は重量部で示す。
【表11】


【0052】
評価試験
表11記載の実施例7、比較例4のアクネ炎症・過剰皮脂分泌改善効果試験を実施した。試験方法は25〜60歳の女性30名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、12週間に渡って洗顔後に被験外用剤の適量を顔面に塗布した。塗布によるアクネ炎症・過剰皮脂分泌改善効果の結果を表12に示す。
評価基準
上記評価項目について被験者(30名)が下記評価基準により評価した。
評価◎:被験者の60%超過の者が顕著な効果が有ると認識した。
評価○:被験者の40%超過60%以下の者が明らかな効果が有ると認識した。
評価△:被験者の20%超過40%未満の者が僅かに効果有りと認識した。
評価×:被験者の20%未満の者が効果なしと認識した。
【0053】
【表12】

【0054】
評価結果
タモギタケの抽出物はリパーゼ阻害作用を有することが確認され、抗ニキビ効果があることが分かった。
【0055】
試験例9:脱毛予防効果試験
実施例および比較例の処方を表13に示す。作成方法は常法により行った。なお表13の配合量は重量部で示す。
【表13】

【0056】
評価試験
表13記載の実施例8、比較例5の養毛効果試験を実施した。試験方法は35〜65歳の男性30名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、24週間に渡って被験外用剤の適量を頭皮に塗布した。頭皮による養毛効果の結果を表14に示す。
評価基準
上記評価項目について被験者(30名)が下記評価基準により評価した。
評価◎:被験者の60%超過の者が顕著な効果が有ると認識した。
評価○:被験者の40%超過60%以下の者が明らかな効果が有ると認識した。
評価△:被験者の20%超過40%未満の者が僅かに効果有りと認識した。
評価×:被験者の20%未満の者が効果なしと認識した。
【0057】
【表14】


【0058】
評価結果
タモギタケの抽出物は5α−レダクターゼ活性阻害作用を有することが確認され、脱毛予防効果があることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコから抽出したエルゴチオネインを高含有する、組成物。
【請求項2】
前記キノコがヒラタケ科ヒラタケ属植物がタモギタケ(Pleurotus cornucopiae(Pers)Rolland.)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エルゴチオネインが、0.05重量%以上の重量で含有されてなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物を有効成分として含んでなる、抗酸化剤、チロシナーゼ活性阻害剤、リパーゼ活性阻害剤、5α−レダクターゼ活性阻害剤、抗老化剤、抗メタボリックシンドローム剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物を有効成分として含んでなる、皮膚用医薬組成物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物を有効成分として含んでなる、化粧品。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物を有効成分として含んでなる、機能性食品。

【公開番号】特開2009−126863(P2009−126863A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331023(P2007−331023)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(599000212)香栄興業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】