説明

キノコ栽培用培地組成物

【課題】夏場にキノコの栽培を始めるために、米糠の代替となり、かつ、安定的に供給できるキノコ栽培用培地組成物を提供する。
【解決手段】おがくずと米糠を含有するキノコ栽培用培地組成物であって、米糠の一部または全部が廃白土で置き換えられていることを特徴とするキノコ栽培用培地組成物。廃白土に含まれる油脂が植物油であることが好ましく、植物油が米油、大豆油、ゴマ油、コーン油、綿実油、パーム油、ココナッツ油、オリーブ油、菜種油、サフラワー油またはヒマワリ油であることがより好ましい。廃白土における白土が酸性白土または活性白土であることが好ましく、廃白土が油脂製造の脱色工程に使用された経歴を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おがくずと米糠を含有するキノコ栽培用培地組成物であって、米糠の一部または全部が廃白土で置き換えられていることを特徴とするキノコ栽培用培地組成物に関する。また、該培地組成物を用いたキノコの栽培方法に関する。さらに、該培地組成物を含むキノコを栽培する栽培キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キノコなどの栽培においておがくず等に米糠等の栄養源を配合した培養基を用いて、ビンまたは箱で栽培を行う菌床人工栽培法が確立され、1年を通じてキノコを収穫できるようになってきた(例えば、特許文献1参照)。特に食生活上、冬場に需要が増すキノコを栽培するには、3〜4ヶ月の栽培期間を考慮すると、夏場に栽培を始めることが必要となる。しかしながら、キノコ栽培の培地組成物で重要な位置を占める米糠は、白米の需要が減少する夏場においては、供給量が不足し、コスト高となっているのが現状である。このため、需要の増す冬場に、安定した供給ができない場合も起こり、生産コストにも問題が出ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−113670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、夏場にキノコの栽培を始めるために、米糠の代替となり、かつ、安定的に供給できるキノコ栽培用培地組成物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために、米糠の一部または全部の代替となる素材を見いだすために極めて多数の材料につき、膨大な試行錯誤による実験を繰り返した結果、驚くべきことに、活性白土を油脂の脱色等に使用した後に排出される廃白土が米糠の代替となることを見出し、さらに鋭意検討を重ねて、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)おがくずと米糠を含有するキノコ栽培用培地組成物であって、米糠の一部または全部が廃白土で置き換えられていることを特徴とするキノコ栽培用培地組成物、
(2)廃白土に含まれる油脂が植物油であることを特徴とする上記(1)記載のキノコ栽培用培地組成物、
(3)植物油が米油、大豆油、ゴマ油、コーン油、綿実油、パーム油、ココナッツ油、オリーブ油、菜種油、サフラワー油またはヒマワリ油であることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物、
(4)廃白土における白土が酸性白土または活性白土であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物、
(5)廃白土が油脂製造の脱色工程に使用された経歴を有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物、
(6)さらに植物油の脱ガム工程、脱酸工程、脱臭工程、脱ロウ工程又は脱色工程のいずれかで得た廃棄油を含む上記(1)〜(5)のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物。
(7)廃棄油が植物油の脱ガム工程で得た廃棄油である上記(6)に記載のキノコ栽培用培地組成物、
(8)米糠の一部又は全部が脱脂糠であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物、
(9)キノコが、おがくず−米糠培地にて栽培可能なキノコであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物、
(10)キノコが、ブナシメジ、エノキ、エリンギ、マイタケ、シイタケ、マツタケ、マッシュルーム、ナメコ、トリュフ、ハナビラタケ、アガリクス、サルノコシカケ、ヒラタケ、ナメコ、シロタモギタケまたはマンネンタケであることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物、
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物を用いてキノコを栽培することを特徴とするキノコの栽培方法、
(12)上記(1)〜(10)のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物を含むキノコ栽培用キット
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、夏場に供給の不足する米糠に変え、安価な廃白土を用いることで、低コストかつ安定的にキノコを供給することができる。また、夏場から安定的にキノコの生産ができるため、キノコの需要の増す冬場に、低コストで十分な量のキノコを供給することができる。
さらに、油脂の脱色工程にて排出される廃白土を有効利用できるため、産業廃棄物の削減及び環境保護にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のキノコ栽培用培地組成物を用いたキノコの栽培方法の一例を示す。
【図2】図1に示した方法とは異なる、本発明のキノコ栽培用培地組成物を用いたキノコの栽培方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のキノコ栽培用培地組成物は、おがくずと米糠を含有するキノコ栽培用培地組成物であって、米糠の一部または全部が廃白土で置き換えられている。
【0010】
(キノコ)
本発明のキノコ栽培用培地組成物によって栽培されるキノコとしては、特に限定されないが、おがくず−米糠培地にて栽培可能なキノコであることが好ましい。本発明のキノコ栽培用培地組成物によって栽培されるキノコとしては、例えば、ブナシメジ、エノキ、エリンギ、マイタケ、シイタケ、マツタケ、マッシュルーム、ナメコ、トリュフ、ハナビラタケ、アガリクス、サルノコシカケ、ヒラタケ、ナメコ、シロタモギタケ、マンネンタケ等が挙げられる。
【0011】
(米糠)
本発明に使用される米糠は、特に限定されず、いずれの品種の米に由来する米糠であってもよい。本発明に使用される米糠の一部又は全部が脱脂糠であってもよい。すなわち本発明に使用される米糠は、脱脂前の米糠のみ用いてもよいし、脱脂糠のみ用いてもよいし、脱脂前の米糠と脱脂糠を混合して用いてもよい。
【0012】
(廃白土)
廃白土は、使用後の白土ものであれば特に限定されないが、油脂製造の脱色工程に使用された経歴を有することが好ましい。廃白土は油脂製造等の製造における産業廃棄物であるため、当該廃白土を用いることで、本発明のキノコ栽培用培地組成物を低コストで製造することができる。また、植物油の精製工程において使用された廃白土には油脂が付着しているため、当該油脂がキノコの生育に好結果を与えることもできる。
廃白土における白土は特に限定されないが、酸性白土または活性白土であることが好ましい。酸性白土及び活性白土は、一般的な化学成分として、SiO、Al、Fe、CaO、MgO等を含有する。酸性白土及び活性白土は、例えば市販品又は公知の方法により製造したものを用いることができる。
【0013】
本発明のキノコ栽培用培地組成物において、米糠と廃白土との使用割合は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、99.9:0.1〜0:100(重量比)とすることができ、99:1〜1:99(重量比)が好ましく、より好ましくは、95:5〜40:60(重量比)、最も好ましくは、90:10〜60:40(重量比)である。
【0014】
(廃白土に含まれる油脂)
廃白土に含まれる油脂としては、食品衛生上安全な油脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、植物油、動物油、加工油脂等が挙げられる。特に好適には植物油であり、それらの例としては、例えば、米油、大豆油、ゴマ油、コーン油、綿実油、パーム油、ココナッツ油、オリーブ油、菜種油、ヤシ油、サフラワー油、ヒマワリ油、パーム核油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、モンゴンゴ油、ペカン油、松の実油、クルミ油等が挙げられ、キノコの生育性の観点より、米油、大豆油、ゴマ油、コーン油、綿実油、パーム油、ココナッツ油、オリーブ油、菜種油、サフラワー油またはヒマワリ油が好ましい。
廃白土に含まれる油脂である植物油は、植物油の精製工程において白土に付着したものでもよいし、白土に植物油を別途添加してもよい。
廃白土と植物油の含有比は特に限定されず、例えば95:5〜40:60(重量比)とすることができ、90:10〜70:30とすることが好ましい。
【0015】
(廃棄油)
本発明のキノコ栽培用培地組成物は、さらに植物油の脱ガム工程、脱酸工程、脱臭工程、脱ロウ工程又は脱色工程のいずれかで得た廃棄油を含むことが好ましい。廃棄油は植物油の脱ガム工程で得た廃棄油であることがより好ましい。廃棄油を用いることで、本発明のキノコ栽培用培地組成物を低コストで製造することができる。
廃棄油は、植物油の脱ガム工程、脱酸工程、脱臭工程、脱ロウ工程又は脱色工程で得られたものであれば特に限定されない。廃棄油を得るための植物油としては、例えば、米油、大豆油、ゴマ油、コーン油、綿実油、パーム油、ココナッツ油、オリーブ油、菜種油、ヤシ油、サフラワー油、ヒマワリ油、パーム核油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、モンゴンゴ油、ペカン油、松の実油、クルミ油等が挙げられる。廃棄油は、上記廃白土に含まれる植物油と同じ植物油に由来するものでもよく、異なる植物油に由来するものでもよい。
廃棄油の添加量は特に限定されず、例えばキノコ栽培用培地組成物100重量部に対し0.1〜40重量部とすることができ、5〜30重量部とすることが好ましい。
【0016】
(おがくず)
本発明に使用されるおがくずとしては、特に限定されないが、例えば、クヌギ、ナラ、ブナ、シイ等の広葉樹のおがくず、スギ等の針葉樹のおがくずが好ましい。
おがくずと米糠の使用割合は、特に限定されず、従来公知の割合によることができる。おがくずと米糠の使用割合は、例えば1:9〜9:1(重量比)とすることが好ましい。
【0017】
(任意成分)
本発明のキノコ栽培用培地組成物は、任意成分として栄養剤、添加剤及び他の成分を含むことができる。栄養剤、添加剤及び他の成分は、本発明の効果を達成できる範囲で、従来公知のものを自由に組み合わせて用いることが可能である。
【0018】
栄養剤、添加剤としては、例えば、コーンコブ、コーンブラン、グレインソルガム、トウモロコシの茎、ワタミガラ、マメカワ、フスマ、キトサン、オカラ、マイロ、ビートパルプ、ビタミン、ミネラル、タンパク質(大豆粕、大豆ミール、コーングルテンフィード、ポテトプロテイン、綿実粕、ナタネ粕、ラッカセイ粕、トウフ粕、酒粕、ビール粕、乾燥ビール酵母等)、糖分、タカラクリーン(宝酒造株式会社製、登録商標)、キノコライム(丸栄株式会社製、登録商標)等が挙げられる。栄養剤及び添加剤は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造してもよい。
他の成分としては、例えば、稲わら、麦わら、とうもろこしの雌花穂の中軸、ふすま、もみがら、枯草類を破砕、粉砕した有機質材、もしくは珪藻土、白土、火山灰質土等の無機質材、山土、松林の土などの松茸の培養に適した土壌に所要量の白土、腐葉土を混合したもの、窒素源、ビタミン、ミネラル、糖分等が挙げられる。
【0019】
(キノコ栽培用培地組成物の製造方法)
本発明のキノコ栽培用培地組成物は、例えばおがくずと廃白土、所望により米糠、廃棄油及び他の任意成分を混合することによって製造することができる。各成分の混合方法は特に限定されず、例えば常法により行うことができる。
本発明のキノコ栽培用培地組成物は、さらに殺菌処理を行うことが好ましい。殺菌処理は特に限定されず、例えば常法により行うことができる。
本発明のキノコ栽培用培地組成物は、少量の消石灰やPH5〜6の酸性水を加えることで、栽培するキノコに適したPHとすることができる。
【0020】
(キノコ栽培用キット)
本発明のキノコ栽培用キットは、上記キノコ栽培用培地組成物を用いる。本発明のキノコ栽培用キットは、キノコ栽培用培地組成物にキノコ菌を接種したものであり、キノコ栽培用容器により供給されていてもよい。本発明のキノコ栽培用キットは、水の添加、温度の調節等によりキノコの生育に好適な環境におくことで、キノコを栽培することができる。
本発明のキノコ栽培用キットに接種するキノコの種菌としては、上記したキノコと同じものが挙げられる。本発明のキノコ栽培用キットに用いるキノコの種菌としては特に限定されない。キノコ栽培に用いるキノコの種菌は、市販のキノコあるいは天然に生じる子実体から採取した菌糸または組織から作成してもよいし、寄託機関あるいは研究機関に保存されている菌株を入手して培養して得られた菌糸または組織から作成してもよい。
またキノコの種菌の接種方法は特に限定されず、常法により行うことができる。
本発明のキノコ栽培用キットに用いるキノコ栽培用容器としては、その形状、大きさ、材料等は特に制限されず、栽培するキノコの種類により適宜選択して用いることができる。キノコ栽培用容器は、滅菌処理に耐える容器であることが好ましい。キノコ栽培用容器の容量としては、例えば700ml、800ml、850ml、あるいは1000mlのものが挙げられる。キノコ栽培用容器の口径としては、例えば65mm、58mm、あるいは52mmのものが挙げられる。キノコ栽培用容器の素材としては、例えばポリ容器、ビン容器、箱容器等が挙げられる。
【0021】
(キノコの栽培方法)
本発明のキノコの栽培方法は、上記キノコ栽培用培地組成物を用いる。本発明のキノコの栽培方法は、キノコ菌の種類に応じて適当な方法により実施することができるが、従来十分に確立されているのでこれらに従ってもよい。本発明のキノコの栽培方法は、例えば図1及び図2に示したものが挙げられる。
本発明のキノコの栽培方法に用いるキノコの種菌及びキノコ栽培用容器としては、上記キノコ栽培用キットと同じものが挙げられる。
本発明のキノコの栽培方法は、例えば約15〜28℃の温度で数週間〜数カ月の期間を費やすことで実施することができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を示し、さらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0023】
栽培きのこ収穫管理基準
以下の基準を用いてキノコの収穫管理を行った。
【0024】
(ブナシメジ)
菌回り完了日:培養ビン16本(1ケース)あたり14本菌回りが完了した日
収穫完了日:生育ビン16本(1ケース)あたり14本収穫が完了した日
一株の揃い(株揃):傘の大きさの揃い、茎の長さやそろいの良否を5段階で評価(評価:1(良)−2(やや良い)−3(中)−4(やや否)−5(否))
一株の収量(収量):きのこをビンからとり株もとのオガコを取り除き計量
一株の高さ(株高):きのこの株元から傘上までの長さを測定
傘の直径(傘径):一株内の平均的な大きさの傘(目安5番目に大きい傘)の長さを測定
傘の厚さ(傘厚):傘径を測定後、傘の厚さを測定
茎の直径(茎径):傘厚を測定後、傘下の茎の直径を測定
有効茎数(茎数):一株内で傘の径が1cm以上の大きさ茎を数える
傘の奇形(奇形):傘の形が楕円等の変形した茎数を数える
【0025】
(エノキ)
菌回り完了日:培養ビン16本(1ケース)あたり14本菌回りが完了した日
収穫完了日:生育ビン16本(1ケース)あたり14本収穫が完了した日
一株の揃い(株揃):傘の大きさの揃い、茎の長さやそろいの良否を5段階で評価(評価:1(良)−2(やや良い)−3(中)−4(やや否)−5(否))
一株の収量(収量):きのこをビンからとり株もとのオガコを取り除き計量
一株の高さ(株高):収穫後、基部のオガを取り除いた後の高さ(mm)を測定
傘の直径(傘径):一株内の平均的な大きさの傘径(mm)を測定
傘の厚さ(傘厚):一株内の平均的な大きさの傘厚(mm)を測定
茎の直径(茎径):一株内の平均的な大きさの茎径(mm)を測定
傘の奇形(奇形):真上から見た際に奇形である本数を数えた
【0026】
製造例1:ブナシメジ(やまびこしめじ)の栽培
ブナシメジ(やまびこしめじ)の栽培方法自体は従来十分に確立されており、本発明においてもそれに従ってよい。より詳しくは、ブナシメジを常法に従って以下のように栽培し、収穫した。
【0027】
1.栽培条件
品種:NN−12(長野県ブナシメジ主要品種)
培地:YKB−1培地(培地水分率;65%(w/w)、培地詰め重;505g±10g、おがくず;スギ、栄養剤;1ビン当たり130g(米糠と廃白土の総量50g・コーンコブミール30g・ワタミガラ30g・マメカワ20g)、添加剤;タカラクリーン(宝酒造株式会社製)2.5g、表1参照)
【0028】
【表1】

【0029】
栽培容器:ポリプロピレン製ビン、ポリプロピレン製キャップ(口径58mm、容量850mL)
培地殺菌:ボイラー式高圧殺菌釜、殺菌温度118℃、殺菌時間30分
接種:種菌量1ビン当たり10g
培養および熟成:温度22℃±1℃、湿度70±5%、80〜90日(菌回り30〜35日)(※ビン培地内に菌糸が蔓延するまでが培養、培養完了後菌かきまでが熟成)
菌かき:まんじゅう型菌かき、加水約1時間
芽出し:温度15℃±1℃、湿度100%、薄暗い場所、菌かき後1〜12日(※菌かき後7日前後有孔ポリフィルムで被覆)
生育:温度15℃±1℃、湿度100%、光照射・白色蛍光灯1000Lux(12h/1日・15分ON-OFF)、菌かき後12日目から光照射開始
収穫:子実体の傘が7〜8分開きになったら実施
【0030】
2.試験結果
試験結果を表2に示す。なお、数値は2回栽培の平均値を示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表2から、米糠を含有するキノコ栽培用培地組成物において、廃白土を米糠の一部として使用し、米糠のみを用いた培地と同程度またはこれを上回る株揃及び収量のキノコを栽培できることが分かる。
【0033】
製造例2:エノキ(えのきたけ)の栽培
エノキ(えのきたけ)の栽培方法自体は従来十分に確立されており、本発明においてもそれに従ってよい。より詳しくは、エノキを常法に従って以下のように栽培し、収穫した。
【0034】
1.栽培条件
品種:長野農工研G−5(F)号(社団法人長野県農村工業研究所)
培地:F−YK2培地(培地水分率;65%(w/w)、培地詰め重;580g±10g、栄養剤;1ビン当たり198g(米糠と培地素材の総量75g・コーンコブ70g・ビート34g・フスマ16g・ワタミガラ10g・グレインソルガム12g・大豆粕6g)、添加剤;キノコライム(丸栄株式会社製)4g、表3参照
【0035】
【表3】

【0036】
栽培容器:ポリプロピレン製ビン、ポリプロピレン製キャップ(口径58mm、容量850mL)
培地殺菌:ボイラー式高圧殺菌釜、殺菌温度118℃、殺菌時間30分
接種:種菌量1ビン当たり10g
培養:温度17℃±1℃、湿度70±5%、22日前後で菌かき
(エノキは他のキノコと異なり、菌回りした後に数日培養を続けると芽出しの揃いが悪くなったり、終了が低下したりする場合がある。そのため8割〜菌回り完了後直ぐに菌かきを行った。)
菌かき:ぶっかき後菌かき、菌かき面に水を軽く噴霧
芽出し:温度14℃±1℃、湿度95%、暗黒状態、菌かき後10〜11日で抑制工程に移動
抑制:温度4.5℃±0.5℃、湿度95%前後、暗黒状態、子実体がビン口から0.5〜1cm程度に生長した後、上面から光を照射(2h/day、2〜3日間)
紙巻き:ビン口に紙を巻き、生育工程に移動
(エノキの栽培方法は、生産者や品種により異なる。例えば、大規模栽培施設では1ルーム栽培方式(大型の栽培室にて、芽出し〜収穫まで空調を管理して栽培)を用いる。本実施例において、各工程用の部屋を設け、栽培容器を移動させる方式を用いた。)
生育:温度5℃±1℃、湿度90%前後、暗黒状態
収穫:子実体の傘が7〜8分開きになったら実施
【0037】
2.試験結果
試験結果を表4に示す。なお、数値は2回栽培の平均値を示す。
【0038】
【表4】

【0039】
表4から、米糠を含有するキノコ栽培用培地組成物において、廃白土を米糠の一部として使用し、米糠のみを用いた培地と同程度の株揃及び収量のキノコを栽培できることが分かる。
【0040】
製造例3:エノキ(えのきたけ)の栽培
1.栽培条件
脱脂糠100重量部に対し、パーム油廃油白土を200重量部混合し、培地素材(A)とした。また、脱脂糠100重量部に対し、ナタネ油廃油白土を200重量部混合し、培地素材(B)とした。
各実施例及び比較例の組成を表5の通りとした以外は製造例2と同様に実験を行った。
【0041】
【表5】

【0042】
2.試験結果
試験結果を表6に示す。なお、数値は1回栽培の値を示す。
【表6】

【0043】
表6から、米糠を含有するキノコ栽培用培地組成物において、米糠の一部を脱脂糠及び廃白土の混合物に置き換えた場合、米糠のみを用いた培地を上回る株揃及び収量のキノコを栽培できることが分かる。
【0044】
製造例4:エノキ(えのきたけ)の栽培
1.栽培条件
脱脂糠49重量部、米油の脱ガム工程で得られた廃棄油11重量部及び米油廃白土40重量部を混合し、培地素材(C)とした。
各実施例及び比較例の組成を表7の通りとした以外は製造例2と同様に実験を行った。
【0045】
【表7】

【0046】
2.試験結果
試験結果を表8に示す。なお、数値は2回栽培の平均値を示す。
【0047】
【表8】

【0048】
表6から、米糠を含有するキノコ栽培用培地組成物において、米糠の一部を廃白土で置き換え、米糠の一部が脱脂糠である培地を用い、培地に廃棄油を添加した場合、米糠のみを用いた培地と同程度またはこれを上回る株揃及び収量のキノコを栽培できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、夏場に供給が不足する米糠の代わりに廃白土を用いてキノコの工業的有利な栽培を始めることができるので、キノコの需要の増す冬場に、低コストでキノコを安定して供給することができる。また、活性白土を油脂の脱色等に使用した後に排出される産業廃棄物である廃白土を有効に利用することができるため、産業廃棄物の削減及び環境への負荷を減少することができる。
よって、本発明は産業上利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
おがくずと米糠を含有するキノコ栽培用培地組成物であって、米糠の一部または全部が廃白土で置き換えられていることを特徴とするキノコ栽培用培地組成物。
【請求項2】
廃白土に含まれる油脂が植物油であることを特徴とする請求項1記載のキノコ栽培用培地組成物。
【請求項3】
植物油が米油、大豆油、ゴマ油、コーン油、綿実油、パーム油、ココナッツ油、オリーブ油、菜種油、サフラワー油またはヒマワリ油であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物。
【請求項4】
廃白土における白土が酸性白土または活性白土であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物。
【請求項5】
廃白土が油脂製造の脱色工程に使用された経歴を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物。
【請求項6】
さらに植物油の脱ガム工程、脱酸工程、脱臭工程、脱ロウ工程又は脱色工程のいずれかで得た廃棄油を含む請求項1〜5のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物。
【請求項7】
廃棄油が植物油の脱ガム工程で得た廃棄油である請求項6に記載のキノコ栽培用培地組成物。
【請求項8】
米糠の一部又は全部が脱脂糠であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物。
【請求項9】
キノコが、おがくず−米糠培地にて栽培可能なキノコであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物。
【請求項10】
キノコが、ブナシメジ、エノキ、エリンギ、マイタケ、シイタケ、マツタケ、マッシュルーム、ナメコ、トリュフ、ハナビラタケ、アガリクス、サルノコシカケ、ヒラタケ、ナメコ、シロタモギタケまたはマンネンタケであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物を用いてキノコを栽培することを特徴とするキノコの栽培方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のキノコ栽培用培地組成物を含むキノコ栽培用キット。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−90625(P2012−90625A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207535(P2011−207535)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(591066362)築野食品工業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】