説明

キノリジノンM1受容体ポジティブアロステリックモジュレーター

本発明は、M1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターであり、M1受容体が関与する疾患(例えば、アルツハイマー病、統合失調症、疼痛または睡眠障害)の治療において有用な式(I):


のスピロピペリジン化合物に関する。本発明はまた、前記化合物を含む医薬組成物、並びに前記した化合物及び組成物のM1受容体が媒介する疾患の治療における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノリジノン化合物類、その塩、前記化合物を含む医薬組成物及びヒト身体の治療におけるその使用に関する。特に、本発明は、ムスカリンM1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターであり、よってアルツハイマー病及びムスカリンM1受容体が媒介する他の疾患の治療において有用なキノリジノン化合物類に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、段階的記憶障害、言語及び視空間スキルの喪失及び行動欠陥を生じさせる高齢者を襲う一般的な神経変性疾患である。この疾患の特徴は大脳皮質、海馬、基底前脳及び脳の他の領域におけるコリン作動性ニューロンの変性、神経原線維変化及びアミロイドβペプチド(Aβ)の蓄積を含む。Aβは、β−アミロイド前駆体タンパク質(APP)をβ−アミロイドタンパク質切断酵素(“β−セクレターゼ”または“BACE”)及びγ−セクレターゼによりプロセシングすることにより脳において産生される39−43アミノ酸である。APPがプロセシングされると、脳中にAβが蓄積する。
【0003】
コリン作動性神経伝達は、アセチルコリンのニコチンアセチルコリン受容体(nAChR)またはムスカリンアセチルコリン受容体(mAChR)のいずれかへの結合を含む。コリン作動性機能低下がアルツハイマー病を患っている患者の認知欠陥の原因となると仮定されている。従って、アセチルコリン加水分解を抑制するアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は米国においてアルツハイマー病患者の認知障害の治療に使用するために承認されている。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はアルツハイマー病患者で多少の認知強化を与えるが、この治療が根底の病理を変化させることは分かっていない。
【0004】
コリン作動性機能低下を相殺するための第2の可能性ある薬物療法の標的はムスカリン受容体の活性化である。ムスカリン受容体は身体全体に広く存在している。5つの異なるムスカリン受容体(M1〜M5)が哺乳動物において同定されている。中枢神経系ではムスカリン受容体が認知、挙動、感覚、運動及び自律神経機能に関与している。大脳皮脂、海馬及び線条体中に広く存在しているムスカリンM1受容体が認知プロセシングにおいて主要な役割を有していることは判明しており、アルツハイマー病の病態生理において役割を有していると考えられている。Eglenら,TRENDS in Pharmacological Sciences,2001,22:8,409−414を参照されたい。
【0005】
加えて、対症治療しか与えないと知られているアセチルコリンエステラーゼ阻害剤とは異なり、M1アゴニストはアルツハイマー病の根底にある疾患メカニズムを治療する可能性をも有している。アルツハイマー病のコリン作動性仮説はβ−アミロイド及び過リン酸化タウタンパク質の両方に結びついている。β−アミロイドが形成されると、ムスカリン受容体とG−タンパク質のカップリングが損なわれる恐れがある。M1ムスカリン受容体を刺激すると、神経保護性αAPP断片の形成が増加し、これによりAβペプチドの形成が防止されることが判明している。よって、M1アゴニストはAPPプロセシングを変更し、αAPP分泌を強化し得る。Fisher,Jpn.J.Pharmacol.,2000,84:101−112を参照されたい。
【0006】
しかしながら、アルツハイマー病のために開発、研究されているM1リガンドは他のムスカリン受容体リガンドに共通する副作用(例えば、発汗、嘔吐及び下痢)を生じる。Spaldingら,Mol.Pharmacol.,2002,61:6,1297−1302を参照されたい。
【0007】
ムスカリン受容体が1つ以上のアロステリック部位を含むことは知られており、前記アロステリック部位は主要結合またはオルトステリック部位に結合するムスカリンリガンドとの親和性を変化させ得る。例えば、S.Lazarenoら,Mol.Pharmacol.,2002,62:6,1491−1505;S.Lazarenoら,Mol.Pharmacol.,2000,58,194−207を参照されたい。
【0008】
よって、ムスカリンM1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターである本発明の化合物はアルツハイマー病及びムスカリンM1受容体が媒介する他の疾患の治療において有用であると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Eglenら,TRENDS in Pharmacological Sciences,2001,22:8,409−414
【非特許文献2】Fisher,Jpn.J.Pharmacol.,2000,84:101−112
【非特許文献3】Spaldingら,Mol.Pharmacol.,2002,61:6,1297−1302
【非特許文献4】S.Lazarenoら,Mol.Pharmacol.,2002,62:6,1491−1505
【非特許文献5】S.Lazarenoら,Mol.Pharmacol.,2000,58,194−207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、M1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターとして有用な一般式(I):
【0011】
【化1】

を有する新規化合物またはその医薬的に許容され得る塩に関する。
【0012】
本発明は更に、患者(好ましくは、ヒト)に対して治療有効量の一般式(I)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩を投与することによるM1受容体が関与する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、認知障害、疼痛障害及び睡眠障害)の前記患者の治療方法に関する。本発明はまた、有効量の式(I)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物、並びに本発明の化合物及び医薬組成物の前記疾患の治療における使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1つの実施形態で、本発明は、一般式(I):
【0014】
【化2】

[式中、

(1)シアノ、
(2)−C(=O)−OR4A
(3)−C(=O)−R4A
(4)−OH、及び
(5)フェニル
からなる群から選択され;

(1)−(CH−アリール、及び
(2)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアリールまたはヘテロアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)−O−C1−6アルキル、
(d)−C1−6アルキル、
(e)−C2−6アルケニル、
(f)−S(O)−R4A
(g)−C2−6アルキニル、及び
(h)−N(R4A4B
で置換されており;

(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、及び
(3)−CH−アリール
からなる群から選択され、前記したRアルキルまたはアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、及び
(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1つ以上のハロで置換されている)
で置換されており;
4A及びR4Bは独立して
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−(CH−アリール
からなる群から選択され、前記したR4AまたはR4Bアルキルまたはアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、及び
(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1つ以上のハロで置換されている)
で置換されており;
は場合により環炭素原子の1つ以上に存在し、各Rは独立して
(1)ハロゲン、
(2)−C1−6アルキル、及び
(3)−(CH−アリール
からなる群から選択され、前記したRアルキルまたはアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、及び
(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1つ以上のハロで置換されている)
で置換されており;
mは0、1または2であり;
nは0、1または2である]
を有する化合物及びその医薬的に許容され得る塩に関する。
【0015】
式(I)を有する化合物の特定実施形態では、Rはシアノである。
【0016】
式(I)を有する化合物の代替実施形態では、R
(1)−C(=O)−OR4A
(2)−C(=O)−R4A、及び
(3)−OH
からなる群から選択される。この実施形態中のR基の例には−(C=O)−CH、フェニル、ヒドロキシ及び−C(=O)−OCHCHが含まれる。
【0017】
特定実施形態では、R4A及びR4Bは各々独立してC1−6アルキル、好ましくはC1−3アルキルから選択される。
【0018】
式(I)を有する化合物の特定実施形態では、Rはピリジル、好ましくはピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル及びピリジン−4−イルである。ある実施形態では、ピリジル基は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)−O−C1−6アルキル、
(d)−C1−6アルキル、及び
(e)−C2−6アルケニル
で置換されている。
【0019】
他の実施形態では、Rは別のヘテロアリール、例えばキノキサリニル(好ましくは、2−キノキサリニル)、ベンゾオキサゾリル(好ましくは、ベンゾオキサゾル−2−イル)、チアゾリル(好ましくは、チアゾル−2−イル)及びベンゾチアゾリル(好ましくは、ベンゾチアゾル−2−イル)である。代替ヘテロアリールは場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)−O−C1−6アルキル、
(d)−C1−6アルキル、及び
(e)−C2−6アルケニル
で置換されている。
【0020】
代替実施形態では、Rは場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)−O−C1−6アルキル、
(d)−C1−6アルキル、または
(e)−C2−6アルケニル.
で置換されているフェニルである。
【0021】
基の例には、2−ピリジル、4−フルオロフェニル、2−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、4−シアノフェニル、3−メチルフェニル、2−メトキシフェニル、3−フルオロ−2−ピリジル、3−ブロモ−2−ピリジル、3−メチル−2−ピリジル、5−ブロモ−2−ピリジル、5−メチル−2−ピリジル、5−フルオロ−2−ピリジル、5−クロロ−2−ピリジル、5−シアノ−2−ピリジル、5−トリフルオロメチル−2−ピリジル、5−エチル−2−ピリジル、5−シアノ−2−ピリジル、5−メトキシ−2−ピリジル、5−スルフィド−メチル−2−ピリジル、5−スルホニル−メチル−2−ピリジル、4−メトキシ−2−ピリジル、4−トリフルオロメチル−2−ピリジル、4−エチル−2−ピリジル、4−メチル−2−ピリジル、6−クロロ−2−ピリジル、6−フルオロ−2−ピリジル、6−メチル−2−ピリジル、6−エチル−2−ピリジル、6−トリフルオロメチル−2−ピリジル、6−メトキシ−2−ピリジル、6−スルフィド−メチル−2−ピリジル、6−スルホニルメチル−2−ピリジル、6−ジメチルアミノ−2−ピリジル、フェニル、ベンジル、2−クロロ−4−ピリジル、キノキサリン−2−イル、チアゾル−2−イル、ベンゾオキサゾル−2−イル、ベンゾチアゾル−2−イル、3−フルオロフェニル、3−ピリジル、3−ブロモ−2−ピリジル、3−エテニル−2−ピリジル及び5−エテニル−2−ピリジルが含まれる。
【0022】
式(I)を有する化合物の特定実施形態では、Rは水素である。
【0023】
式(I)を有する化合物の特定実施形態では、Rは存在しない。式(I)を有する化合物の他の実施形態では、Rは1つの環炭素原子に存在するハロゲンである。
【0024】
1つの実施形態で、本発明は、患者(好ましくは、ヒト)に対して治療有効量の一般式(I)を有する化合物を投与することによる前記患者のM1受容体が関与する疾患(例えば、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症、疼痛障害及び睡眠障害)の治療方法に関する。
【0025】
本発明はまた、M1受容体が関与する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症、疼痛障害及び睡眠障害)を治療するための式(I)を有する化合物の使用に関する。
【0026】
本発明はまた、式(I)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を含むM1受容体が関与する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症、疼痛障害及び睡眠障害)を治療するための薬剤または医薬組成物に関する。
【0027】
本発明は更に、式(I)を有する化合物を1つ以上の医薬的に許容され得る担体を混合することを含むM1受容体が関与する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症、疼痛障害及び睡眠障害)の治療用薬剤または組成物の製造方法に関する。
【0028】
式(I)を有する化合物の属の中に、式(II):
【0029】
【化3】

(式中、
は上記した通りであり;

(1)−(CH−アリール、及び
(2)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアリールまたはヘテロアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)−O−C1−6アルキル、
(d)−C1−6アルキル、
(e)−C2−6アルケニル
で置換されており;
nは0、1または2である)
を有する化合物及びその医薬的に許容され得る塩の亜属がある。典型的には、Rは存在しない。
【0030】
式(I)を有する化合物の属の中の別の亜属には、式(III):
【0031】
【化4】

(式中、
は上記した通りであり;
Xは
(1)CH、及び
(2)N
からなる群から選択され;
は場合により存在し、
(1)ハロゲン、
(2)ヒドロキシ、
(3)−O−C1−6アルキル、
(4)−C1−6アルキル、及び
(5)−C2−6アルケニル
からなる群から選択される)
を有する化合物及び医薬的に許容され得る塩がある。典型的には、Rは存在しない。
【0032】
式(I)を有する具体的実施形態は実施例1〜50、例えば
1−[(4−シアノ−4−ピリジン−2−イルピペリジン−1−イル)メチル]−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸(実施例1)、
1−{[4−シアノ−4−(4−メチルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸(実施例2)、
1−{[4−シアノ−4−(3−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4Η−キノリジン−3−カルボン酸(実施例46)、
1−[(4−シアノ−4−ピリジン−3−イルピペリジン−1−イル)メチル]−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸(実施例47)、
1−{[4−(3−ブロモピリジン−2−イル)−4−シアノピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸(実施例48)、
1−{[4−シアノ−4−(3−ビニルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸(実施例49)、
1−{[4−シアノ−4−(5−ビニルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸(実施例50)、及び
1−[(4−シアノ−4−ピリジン−2−イルピペリジン−1−イル)メチル]−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸ナトリウム(実施例51)、
並びにその医薬的に許容され得る塩として本明細書中に記載されている。
【0033】
本発明はまた、患者(好ましくは、ヒト)に対して治療有効量の一般式(II)または(III)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩を投与することによる前記患者のM1受容体が関与する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症、疼痛障害及び睡眠障害)の治療方法に関する。
【0034】
本発明はまた、患者に対して式(II)または(III)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩を投与することによるM1受容体が関与する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症、疼痛障害及び睡眠障害)を治療するための式(II)または(III)を有する化合物の使用に関する。
【0035】
本発明はまた、式(II)または(III)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を含む患者(好ましくは、ヒト)におけるM1受容体が関与する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症、疼痛障害及び睡眠障害)の治療用薬剤または医薬組成物に関する。
【0036】
本発明はまた、式(II)または(III)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩を医薬的に許容され得る担体と混合することを含むM1受容体が関与する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症、疼痛障害及び睡眠障害)を治療するための薬剤または医薬組成物の製造方法に関する。
【0037】
変数が式(I)〜(III)またはその置換基中に2回以上現れる場合、別段の記載がない限り変数は毎回相互に独立している。
【0038】
本明細書中、特にR、R、R4A、R4B及びRの定義中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「アルキル」は、指定されている炭素原子数を有している飽和直鎖または分岐状炭化水素基を意味する(例えば、C1−10アルキルは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルキル基は1〜6個の原子を有するC1−6アルキル基である。アルキル基の例にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が含まれる。Cアルキルは結合を意味する。
【0039】
本明細書中、特にRの定義中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「アルケニル」は、1つの炭素−炭素二重結合及び指定されている炭素原子数を有している直鎖または分岐状炭化水素基を意味する(例えば、C2−10アルケニルは2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルケニル基は2〜6個の炭素原子を有するC2−6アルケニル基である。アルケニル基の例にはエテニル及びプロペニルが含まれる。
【0040】
本明細書中、特にRの定義中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「アルキニル」は、1つの炭素−炭素三重結合及び指定されている炭素原子数を有している直鎖または分岐状炭化水素基を意味する(例えば、C2−10アルキニルは2〜10個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルキニル基は2〜6個の炭素原子を有するC2−6アルキニル基である。アルキニル基の例にはエチニル及びプロピニルが含まれる。
【0041】
本明細書中、特にR、R、R4A、R4B及びRの定義中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「アリール」は芳香族環状炭化水素基を意味する。好ましいアリール基は6〜10個の炭素原子を有する。用語「アリール」には多環系及び単環系が含まれる。本発明で使用するのに好ましいアリール基にはフェニル及びナフチルが含まれる。
【0042】
用語「アリール」には、部分的に芳香族である(すなわち、縮合環の1つが芳香族であり、他が非芳香族である)縮合環状炭化水素環も含まれる。部分的に芳香族であるアリール基の例はインダニルである。
【0043】
本明細書中で使用されている用語「ハロ」または「ハロゲン」にはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが含まれる。
【0044】
本明細書中、特にRの定義中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「ヘテロアリール」は、環炭素原子及び少なくとも1個の環ヘテロ原子(O、NまたはS)を有し、構成環の少なくとも1つが芳香族である環状または多環状基を意味する。本発明で使用するためのヘテロアリール基の例にはカルバゾイル、カルボリニル、クロメニル、シンノリニル、フラニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、イソベンゾフラニル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾロニル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インドラジニル、インジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ベンゾピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、キノキサリニル、トリアジニル及びトリアゾリル、並びにそのN−オキシドが含まれる。
【0045】
好ましいRヘテロアリール基は5〜12個の環原子を有している。1つの前記実施形態では、ヘテロアリール基は5または6個の環原子を有している。
【0046】
例えば、Rヘテロアリール基の1つの亜群は5または6個の環原子及び1個の窒素であるヘテロ原子を有している。この実施形態におけるヘテロアリール基の例はピリジルまたはピロリルである。
【0047】
ヘテロアリール基の別の亜群は5または6個の環原子及び2個の硫黄及び窒素から選択されるヘテロ原子を有している。この実施形態におけるヘテロアリール基の例はピラゾリル、イミダゾリル、チエニル及びイソチアゾリルである。
【0048】
ヘテロアリール基の別の亜群は7または8個の環原子及び2個の酸素、硫黄及び窒素から選択されるヘテロ原子を有している。この実施形態におけるヘテロアリール基の例はベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル及びキノキサリニルである
用語「ヘテロアリール」は、部分的に芳香族(すなわち、縮合環の1つが芳香族であり、他が非芳香族である)である縮合環状ヘテロ環式環をも含む。部分的に芳香族であるヘテロアリール基の例はベンゾジオキソールである。
【0049】
本明細書中で定義されているヘテロアリール基が置換されている場合、置換基はヘテロアリール基の環炭素原子、または置換を可能とする原子価を有する環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素または硫黄)に結合され得る。好ましくは、置換基は環炭素原子に結合している。また、ヘテロアリール基が本明細書中に置換基として定義されている場合、結合点はヘテロアリール基の環炭素原子、または結合を可能とする原子価を有する環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素または硫黄)上にあり得る。好ましくは、結合は環炭素原子にある。
【0050】
本発明の化合物は少なくとも1つの不斉中心を有し得る。不斉中心を有する化合物によりエナンチオマー(光学異性体)及び/またはジアステレオマー(立体配置異性体)が生じ、混合物の形態及び純粋なまたは部分的に精製されている化合物としての考えられるエナンチオマー及びジアステレオマーのすべてが本発明の範囲に含まれると意図される。本発明は式(I)〜(III)を有する化合物のすべての異性体を包含すると意味する。
【0051】
式(I)〜(III)は、特定位置での明確な立体化学なしに上に示されている。本発明は式(I)〜(III)を有するすべての立体異性体及びその医薬的に許容され得る塩を含む。
【0052】
エナンチオマー的またはジアステレオマー的に富む化合物の独立合成またはそのクロマトグラフ分離は、本明細書中に開示されている方法を適当に修飾することにより当業界で公知のようになされ得る。その絶対立体化学は、所要により公知の絶対配置を有する不斉中心を含む試薬を用いて誘導体化される結晶性生成物または結晶性中間体をX線結晶学にかけることにより決定され得る。
【0053】
所望により、化合物のラセミ混合物は、個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーが単離されるように分離され得る。この分離は当業界で公知の方法により、例えば化合物のラセミ混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物にカップリングさせてジアステレオマー混合物を形成した後、標準方法(例えば、分別結晶またはクロマトグラフィー)により個々のジアステレオマーを分離する。カップリング反応はしばしばエナンチオマー的に純粋な酸または塩基を用いる塩の形成である。次いで、ジアステレオマー誘導体は、付加したキラル残基を切断することにより純粋なエナンチオマーに変換され得る。化合物のラセミ混合物は、キラル固定相を用いるクロマトグラフ方法によっても直接分離され得、この方法は当業界で公知である。
【0054】
或いは、化合物のエナンチオマーまたはジアステレオマーは、公知の立体配置を有する光学的に純粋な出発物質または試薬を用いて当業界で公知の方法により立体選択的に合成することにより得られ得る。
【0055】
本発明の化合物は、以下の反応スキーム(スキーム中の変数は先に定義されており、または誘導される)に従って容易に入手し得る出発物質を用いて試薬及び一般的合成手順から製造され得る。それ自体有機合成分野の当業者に公知であるが、詳細に記載されていない変異体を使用することも可能である。
【0056】
【化5】

【0057】
化合物は文献(J.Am.Chem.Soc.,126;50;2004;16353−16360)に記載されており、適切な溶媒(例えば、DCEまたはTHF)中で還元剤(例えば、シアノホウ水素化ナトリウム)を用いてのようなアミンと還元アミノ化を受け得る。エステル基の加水分解は溶媒(例えば、THF、エタノールまたはDMSO)中で塩基(例えば、水酸化ナトリウム)(及び、場合によりクエン酸のような酸)を用いて実施され、実施例が得られ得る。
【0058】
【化6】

【0059】
のようなアミンはスキーム2に示すように製造され得る。適切なシアノメチル誘導体の適当に保護されているビス−(クロロエチル)アミンを用いるビスアルキル化はDMSO中で塩基(例えば、水素化ナトリウム)を用いて実施され、生成物が得られ得る。Boc保護基の除去は溶媒(例えば、酢酸エチル)中で酸(例えば、HCl)を用いて実施され、化合物が得られ得る。
【0060】
【化7】

【0061】
或いは、スキーム3に示すように、のような化合物は、溶媒(例えば、トルエンまたはTHF)中での6のようなハロピリジン(例えば、2−フルオロピリジン及び2−クロロピリジン)をのアニオンで求核置換することにより製造され得る。化合物のアニオンは塩基(例えば、カリウムヘキサメチルジシラザン、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LHMDS)またはリチウムジイソプロピルアミド)を用いて発生させ得る。
【0062】
【化8】

【0063】
実施例1の化合物への追加アプローチをスキーム4に示す。適切なハロ(クロロ、ブロモまたはヨード)置換されているピリジンはスキーム1〜3に記載されているように製造され得、溶媒(例えば、DMSO)中、ホスフィンリガンドの存在下で遷移金属(例えば、パラジウム)を用いて適切な有機金属試薬とクロスカップリングを受け得る。例えば、有機金属試薬は芳香族またはアルキルであり得、金属はスズ、ホウ素、亜鉛またはマグネシウムであり得る。スキ−ム1に既に示したエステル加水分解すると、最終実施例が得られる。
【0064】
本発明は、本発明の化合物の製造において中間体として有用な化合物の合成方法も提供する。
【0065】
上記合成シーケンスの間、当該分子上の感受性または反応性基を保護することが必要であったり、または望ましいことがある。これは、Protective Groups in Organic Chemistry,J.F.W.McOmie編,Plenum Press,1973;及びT.W.Greene & P/G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,1991に記載されているような慣用の保護基を用いてなされ得る。保護基は当業界で公知の方法により都合のよい後続段階で除去され得る。
【0066】
本発明の化合物及びその製造方法の具体的実施態様は本明細書中の実施例に記載されている。
【0067】
用語「実質的に純粋」は、単離物質が当業界で公知の分析技術により検定して少なくとも90%の純度、好ましくは95%の純度、より好ましくは99%の純度を有していることを意味する。
【0068】
本明細書中で使用されている用語「ムスカリンM1受容体」は、Gタンパク質結合受容体のスーパーファミリーに由来するムスカリンアセチルコリン受容体の5つのサブタイプの1つを指す。ムスカリン受容体のファミリーは、例えばPharmacol.Ther.,1993,58:319−379;Eur.J.Pharmacol.,1996,295:93−102;及びMol.Pharmacol.,2002,61:1297−1302に記載されている。ムスカリン受容体が1つ以上のアロステリック部位を含んでいることは知られており、主要結合またはオルトステリック部位に結合するムスカリンリガンドとのアフィニテイーを変更し得る。例えば、S.Lazarenoら,Mol.Pharmacol.,2002,62:6,1491−1505を参照されたい。
【0069】
本明細書中で使用されている用語「ポジティブアロステリックモジュレーター」及び「アロステリック増強剤」は互換可能に使用され、受容体のアロステリック部位と相互作用して主要結合部位を活性化するリガンドを指す。本発明の化合物はムスカリンM1受容体のポジティブアロステリックモジュレーターである。例えば、モジュレーターまたは増強剤は動物、特にヒトにおいてムスカリンM1受容体のオルトステリック部位で内因性リガンド(例えば、アセチルコリンまたはキサノメリン)により生ずる応答を直接または間接的に増大させ得る。
【0070】
アロステリック受容体部位でのリガンドの作用は、当業者に公知の「アロステリック三元複合体モデル」に従っても理解され得る。アロステリック三元複合体モデルは、ムスカリン受容体のファミリーに関連してBirdsallら,Life Sciences,2001,68:2517−2524に記載されている。アロステリック結合部位の役割に関する一般的記載については、Christopoulos,Nature Reviews:Drug Discovery,2002,1:198−210を参照されたい。
【0071】
本発明の化合物はムスカリンM1受容体のオルトステリックアセチルコリン部位とは異なるアロステリック結合部位に結合して、M1受容体のオルトステリック部位での内因性リガンドアセチルコリンにより生ずる応答を増大させると考えられている。また、本発明の化合物はムスカリンM1受容体のキサノメリン部位とは異なるアロステリック部位に結合して、M1受容体のオルトステリック部位での内因性リガンドキサノメリンにより生ずる応答を増大させるとも考えられている。
【0072】
用語「医薬的に許容され得る塩」は、無機または有機の塩基及び無機または有機の酸を含めた医薬的に許容され得る非毒性の塩基または酸から製造される塩を指す。本発明の化合物は、遊離塩基形態の化合物中に存在する酸官能基の数に応じてモノ、ジまたはトリ塩であり得る。遊離塩基及び無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第一鉄、第二鉄、リチウム、マグネシウム、第一マンガン、第二マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が含まれる。
【0073】
固体形態の塩は2つ以上の結晶構造で存在し得、水和物の形態もとり得る。医薬的に許容され得る有機非毒性塩基から誘導される塩には、第1級、第2級及び第3級アミン、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレン−ジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩が含まれる。
【0074】
本発明の化合物が塩基性の場合、塩は無機酸及び有機酸を含めた医薬的に許容され得る非毒性酸から製造され得る。前記酸には、酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が含まれる。
【0075】
本発明は、有効量の本明細書中に開示されている式(I)〜(III)を有する化合物を投与することを含む前記活性を要する患者または被験者(例えば、哺乳動物)におけるM1アロステリックモジュレーターとしての前記化合物の使用に関する。ヒトに加えて、各種の他の哺乳動物が本発明の方法に従って治療され得る。
【0076】
本発明の化合物はアルツハイマー病の治療または回復において有用である。本発明の化合物はムスカリンM1受容体が媒介する他の疾患、例えば統合失調症SCHIZO睡眠障害、(急性疼痛、炎症性疼痛及び神経障害性疼痛を含めた)疼痛障害、及び(軽度認知障害を含めた)認知障害の治療または回復においても有用であり得る。本発明の化合物により治療され得る他の状態には、パーキンソン病、肺性高血圧、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、尿失禁、緑内障、統合失調症、21トリソミー(ダウン症候群)、脳アミロイドアンギオパチー、退行性認知症、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA−D)、クロイツフェルト・ヤコブ病、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、頭部外傷、卒中、膵炎、封入体筋炎、他の末梢アミロイドーシス、糖尿病、自閉症及びアテローム性動脈硬化症が含まれる。
【0077】
好ましい実施態様において、本発明の化合物はアルツハイマー病、認知障害、統合失調症、疼痛障害及び睡眠障害の治療において有用である。例えば、本発明の化合物は、アルツハイマー型認知症を予防するため、アルツハイマー型の早期、中期または後期認知症を治療するために有用であり得る。
【0078】
本発明の化合物が有用であり得る潜在的統合失調症状態または障害には、1つ以上の下記状態または疾患:統合失調症及び精神病、例えば(偏執型、解体型、緊張型または鑑別不能型)統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想性障害、短期精神障害、共有精神障害、一般的医学状態及び物質誘発性または薬物誘発性(フェンシクリジン、ケタミン及び他の解離性麻酔薬、アンフェタミン及び他の精神刺激薬、並びにコカイン)精神病及び精神障害に起因する精神障害、情動障害を伴う精神病、短期反応性精神病、統合失調感情精神病、「統合失調症スペクトル」障害、例えば統合失調症及び他の精神病の陽性及び陰性症状の両方を含めた統合失調質または統合失調型人格障害、或いは精神病(例えば、大鬱病、躁鬱病性(双極性)障害、アルツハイマー病及び外傷後ストレス症候群)に関連する病気;(アルツハイマー病、虚血、多発梗塞、外傷、血管の問題または卒中、HIV疾患、パ−キンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病、周産期低酸素症、他の一般的医学状態または物質乱用に関係する)認知症を含めた認知障害;せん妄、健忘性障害または加齢性認知機能低下が含まれる。
【0079】
別の具体的実施形態で、本発明は、統合失調症または精神病の治療を要する患者に対して有効量の本発明の化合物を投与することを含む統合失調症または精神病の治療方法を提供する。具体的な統合失調症または精神病症状は偏執型、解体型、緊張型または鑑別不能型統合失調症及び物質誘発性精神障害である。現在、精神障害の診断及び統計の手引きの第4版の改訂版(DSM−IV−TR)(2000,米国精神医学会,ワシントンDC)が偏執型、解体型、緊張型または鑑別不能型統合失調症及び物質誘発性精神障害を含む診断ツールを提供している。本明細書中で使用されている用語「統合失調症または精神病」はDSM−IV−TRに記載されている精神障害の治療を含む。当業者は、精神障害の別の命名法、疾病分類及び分類システムがあること並びに医学及び科学の進歩と共にこれらのシステムが発展することを認識している。よって、用語「統合失調症または精神病」は他の診断ソースに記載されている類似の障害を含むと意図される。
【0080】
化合物の配合剤の例には、統合失調症の治療薬、例えば鎮静薬、催眠薬、不安緩解剤、抗精神病薬、抗不安薬、シクロピロロン、イミダゾピリジン、ピラゾロピリミジン、マイナートランキライザー、メラトニンアゴニスト及びアンタゴニスト、メラトニン作動薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、5HT−2アンタゴニスト等、例えばアジナゾラム、アロバルビタール、アロニミド、アイプラゾラム、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アリピプラゾール、ベンタゼパム、ベンゾクタミン、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブスプリロン、ブタバルビタール、ブタルビタール、カプリド、カルボクローラル、クロラールベタイン、クロラール水和物、クロミプラミン、クロナゼパム、クロペリドン、クロラゼペート、クロロジアゼポキシド、クロレテート、クロロプロマジン、クロザピン、シプラゼパム、デシプラミン、デクスクラモール、ジアゼパム、ジクロラルフェナゾン、ジバルプロエクス、ジフェンヒドラミン、ドクセピン、エスタゾラム、エスクロルビノール、エトミデート、フェノバム、フルニトラゼパム、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルラゼパム、フルボキサミン、フルオキセチン、ホサゼパム、グルテチミド、ハラゼパム、ハロペリドール、ヒドロキシジン、イミプラミン、リチウム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、マプロチリン、メクロクアロン、メラトニン、メフォバルビタール、メプロバメート、メタクアロン、ミダフルル、ミダゾラム、ネファゾドン、ニソバメート、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オランザピン、オキサゼパム、パラアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロメタジン、プロポホル、プロトリプチリン、クアゼパム、クエチアピン、レクラゼパム、リスペリドン、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロエロン、テマゼパム、チオリダジン、チオチキセン、トラカゾレート、トラニルシプロマイン、トラゾドン、トリアゾラム、トレピパム、トリセタミド、トリクロホス、トリフルオペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、ベンラファキシン、ザレプロン、ジプラシドン、ゾラゼパム、ゾルピデム及びその塩、並びにその組合せ等との配合剤が含まれる。或いは、本発明の化合物を物理的方法、例えば光線治療または電気刺激と併用して投与してもよい。
【0081】
別の実施形態では、本発明の化合物はレボドーパ(場合により、カルビドーパまたはベンセラジドのような選択的脳外デカルボキシラーゼ阻害剤と一緒に);抗コリン作動薬、例えばビペリデン(場合により、その塩酸塩または乳酸塩として)及びトリヘキシフェニジル(ベンズヘキソール)塩酸塩;COMT阻害剤、例えばエンタカポン;MOA−B阻害剤;抗酸化剤;A2aアデノシン受容体アンタゴニスト;コリン作動性アゴニスト;NMDA受容体アンタゴニスト;セロトニン受容体アンタゴニスト及びドーパミン受容体アゴニスト、例えばアレンテモール、ブロモクリプチン、フェノルドパム、リスリド、ナキサゴリド、ペルゴリド及びプラミペキソールと一緒に使用され得る。ドパーミンアゴニストは医薬的に許容され得る塩、例えばアレンテモール臭化水素酸塩、ブロモクリプチンメシル酸塩、フェノルドパムメシル酸塩、ナキサゴリド塩酸塩及びペルゴリドメシル酸塩の形態をとり得ると認められる。
【0082】
別の実施形態では、本発明の化合物は神経遮断薬のフェノチアジン、チオキサンテン、ヘテロ環式ジベンザゼピン、ブチロフェノン、ジフェニルブチルピペリジン及びインドロンクラスの化合物と一緒に使用され得る。フェノチアジンの適当な例にはクロロプロマジン、メソリダジン、チオリダジン、アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジン及びトリフルオペラジンが含まれる。チオキサンテンの適当な例にはクロロプロチキセン及びチオチキセンが含まれる。ジベンザゼピンの例はクロザピンである。ブチロフェノンの例はハロペリドールである。ジフェニルブチルピペリジンの例はピモジドである。インドロンの例はモリンドロンである。他の神経遮断薬にはロキサピン、スルピリド及びリスペリドンが含まれる。本発明の化合物と併用するとき、神経遮断薬は医薬的に許容され得る塩、例えばクロプロマジン塩酸塩、メソリダジンベシル酸塩、チオリダジン塩酸塩、アセトフェナジンマレイン酸塩、フルフェナジン塩酸塩、フルフェナジンエナント酸塩、フルフェナジンデカン酸塩、トリフルオペラジン塩酸塩、チオチキセン塩酸塩、ハロペリドールデカン酸塩、ロキサピンコハク酸塩及びモリンドン塩酸塩の形態をとり得ると認められる。ペルフェナジン、クロロプロチキセン、クロザピン、ハロペリドール、ピモジド及びリスペリドンは通常非塩形態で使用される。よって、本発明の化合物はアセトフェナジン、アレンテモル、アリピラゾール、アミスルプリド、ベンゾヘキソール、ブロモクリプチン、ビペリデン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ジアゼパム、フェノルドパム、フルフェナジン、ハロペリドール、レボドーパ、レボドーパ+ベンセラジド、レボドーパ+カルビドパ、リスリド、ロキサピン、メソリダジン、モリンドロン、ナキサゴリド、オランザピン、ペルゴリド、ペルフェナジン、ピモジド、プラミペキソール、クエチアピン、リスペリドン、スルピリド、テトラベナジン、トリヘキシルフェニジル、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジンまたはジプラシドンと一緒に使用され得る。
【0083】
本発明の化合物が有用であり得る潜在的睡眠状態または障害には、睡眠の質の強化;睡眠の質の向上;睡眠維持の増大;被験者が眠ろうと試みた時間で割った被験者が眠っている時間から計算される値の上昇;睡眠の潜伏または開始の減少(寝入るのにかかる時間);寝入り難さの減少;睡眠連続性の増加;睡眠中に覚醒する回数の減少;夜間覚醒の減少;最初寝始めた後覚醒するまでの時間の減少;全睡眠量の増加;睡眠の断片化の減少;レム睡眠発作のタイミング、頻度または期間の変化;徐波(すなわち、ステージ3または4)睡眠発作のタイミング、頻度または期間の変化;ステージ2睡眠の量及び%の増加;徐波睡眠の促進;睡眠中のEEG−デルタ活性の強化;昼間機敏さの増加;昼間傾眠の減少;過度の昼間眠気の治療または抑制;不眠;過眠症;ナルコレプシー;睡眠の中断;睡眠時無呼吸;覚醒;夜間ミオクローヌス;レム睡眠中断;時差ぼけ;交替勤務者の睡眠障害;睡眠異常;夜鷹症;うつ病、情緒/気分障害、並びに夢遊病及び夜尿症に関連する不眠、並びに老化に伴う睡眠障害;アルツハイマーの日没症候群;日周期リズムに関連する状態、並びに時間帯を横切る旅行及び交替勤務のローテーションスケジュールに関連する精神的及び肉体的障害;副作用としてレム睡眠を減少させる薬物に起因する状態;非元気回復睡眠及び筋肉痛により発現される症候群、または睡眠中の呼吸異常に関連する睡眠時無呼吸;及び睡眠の質の低下により生ずる状態が含まれる。
【0084】
本発明の化合物が有用であり得る疼痛障害には、神経障害性疼痛(例えば、帯状疱疹後神経痛、神経損傷、“ジニア”(例:外陰痛)、幻肢痛、根引き抜き損傷、有痛性糖尿病性ニューロパシー、有痛性外傷モノニューロパシー、有痛性多発性ニューロパシー);(可能性として中枢神経系の任意のレベルの病巣に起因する)中枢痛症候群;術後痛症候群(例えば、乳房切除術後症候群、開胸術後症候群、断端痛);骨及び関節痛(変形性関節症)、反復運動痛、歯痛、癌痛、筋筋膜痛(筋肉損傷、線維筋痛);術中痛(一般手術、婦人科手術)、慢性痛、月経困難症、並びに狭心症に関連する疼痛及びいろいろな起源(例えば、変形性関節症、関節リウマチ、リウマチ性疾患、腱鞘炎及び痛風)の炎症性疼痛、頭痛、偏頭痛及び群発頭痛、一次痛覚過敏、二次痛覚過敏、一次アロディニア、二次アロディニア、或いは中枢感作に起因する他の疼痛が含まれる。
【0085】
本発明の化合物はジスキネジアを治療または予防するためにも使用され得る。更に、本発明の化合物は疼痛のオピオイド治療に対する耐性及び/または依存性を減らすため、及び例えばアルコール、オピオイド及びコカインの禁断症状を治療するために使用され得る。
【0086】
本発明の化合物が投与される被験者または患者は通常、M1アロステリックモジュレーションを望んでいる男性または女性のヒトであるが、上記した障害の治療を望んでいる他の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、家兎、サル、チンパンジーまたは他の類人猿、或いは霊長類も含まれ得る。
【0087】
本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾患または状態の治療において1つ以上の他の薬物と併用され得、こうした併用はいずれかの薬物の単独よりもより安全であるかまたはより有効である。加えて、本発明の化合物は、本発明の化合物の副作用または毒性を治療する、予防する、コントロールする、回復させるまたはそのリスクを軽減させる他の薬物の1つ以上と併用され得る。前記した他の薬物は、当該薬物について一般的に使用されているルート及び量で本発明の化合物と同時にまたは逐次投与され得る。従って、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて1つ以上の他の活性成分を含有するものが含まれる。配合剤は、単位投与形態の配合品の一部として、または1つ以上の追加薬物を治療レジメンの一部として別々の投与形態で投与するキットまたは治療プロトコルとして投与され得る。
【0088】
本発明の化合物の配合剤の例には、抗アルツハイマー病剤、例えばβ−セクレターゼ阻害剤;アルファ7ニコチンアゴニスト、例えばABT089、SSR180711及びMEM63908;ADAM10リガンドまたはアクチベーター;γ−セクレターゼ阻害剤、例えばLY450139及びTAK 070;γ−セクレターゼモジュレーター;タウリン酸化阻害剤;グリシン輸送阻害剤;LXR βアゴニスト;ApoE4配座モジュレーター;NR2Bアンタゴニスト;アンドロゲン受容体モジュレーター;Aβオリゴマー形成のブロッカー;5−HT4アゴニスト、例えばPRX−03140;5−HT6アンタゴニスト、例えばGSK 742467、SGS−518、FK−962、SL−65.0155、SRA−333及びキサリプロデン;5−HT1aアンタゴニスト、例えばレコゾタン;p25/CDK5阻害剤;NK1/NK3受容体アンタゴニスト;COX−2阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;イブプロフェンを含めたNSAID;ビタミンE;(抗アミロイドヒト化モノクローナル抗体を含めた)抗アミロイド抗体、例えばバピネズマブ、ACC001、CAD106、AZD3102、H12A11V1;抗炎症性化合物、例えば(R)−フルルビプロフェン、ニトロフルルビプロフェン、ND−1251、VP−025、HT−0712及びEHT−202;PPARγアゴニスト、例えばピオグリタゾン及びロシグリタゾン;CB−1受容体アンタゴニストまたはCB−1受容体逆アゴニスト、例えばAVE1625;抗生物質、例えばドキシサイクリン及びリファンピン;N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニスト、例えばメマンティン、ネラメキサン及びEVT101;コリンエステラーゼ阻害剤、例えばガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル、タクリン、フェンセリン、ラドスチギル及びABT−089;成長ホルモン分泌促進物質、例えばイブタモレン、メシル酸イブタモレン及びカプロモレリン;ヒスタミンH受容体アンタゴニスト、例えばABT−834、ABT 829、GSK 189254及びCEP16795;AMPAアゴニストまたはAMPAモジュレーター、例えばCX−717、LY 451395、LY404187及びS−18986;MEM1414、HT0712及びAVE8112を含めたPDE IV阻害剤;GABA逆アゴニスト;AZD1080、SAR502250及びCEP16805を含めたGSK3β阻害剤;ニューロンニコチンアゴニスト;選択的M1アゴニスト;HDAC阻害剤;並びに微小管アフィニティー調節キナーゼ(MARK)リガンド;或いは、本発明の化合物の効果、安全性、便宜性を高めるかまたは本発明の化合物の望ましくない副作用または毒性を低下させる受容体または酵素に影響を与える他の薬物との配合剤が含まれる。
【0089】
本発明の化合物の配合剤の例には、疼痛治療薬、例えば非ステロイド系抗炎症剤、例えばアスピリン、ジンロフェナク、ジフルニサル、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク及びトルメチン;COX−2阻害剤、例えばセレコキシブ、ロフェコキシ、バルデコキシブ、406381及び644784;CB−2アゴニスト、例えば842166及びSAB378;VR−1アンタゴニスト、例えばAMG517、705498、782443、PAC20030、V114380及びA425619;ブラジキニンB1受容体アンタゴニスト、例えばSSR240612及びNVPSAA164;ナトリウムチャネルブロッカー及びアンタゴニスト、例えばVX409及びSPI860;(iNOS及びnNOS阻害剤を含めた)一酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤、例えばSD6010及び274150;ラコサミドを含めたグリシン部位アンタゴニスト;ニューロンニコチンアゴニスト、例えばABT 894;NMDAアンタゴニスト、例えばAZD4282;カリウムチャネルオープナー;AMPA/カイニン酸受容体アンタゴニスト;カルシウムチャネルブロッカー、例えばジコノチド及びNMED160;GABA−A受容体IOモジュレーター(例えば、GABA−A受容体アゴニスト);マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤;血栓溶解剤;オピオイド鎮痛剤、例えばコデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロポキシフェン;好中球阻害因子(NIF);プラミペキソール、ロピニロール;抗コリン作動薬;アマンタジン;モノアミンオキシダーゼB15(“MAO−B”)阻害剤;5HT受容体アゴニストまたはアンタゴニスト;mGlu5アンタゴニスト、例えばAZD9272;アルファアゴニスト、例えばAGNXX/YY;ニューロンニコチンアゴニスト、例えばABT894;NMDA受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、例えばAZD4282;NKIアンタゴニスト;選択的セロトニン再取込み阻害剤(“SSRI”)及び/または選択的セロトニン及びノルエピネフリン再取込み阻害剤(“SSNRI”)、例えばデュロキセチン;三環式抗うつ薬、ノルエピネフリンモジュレーター;リチウム;バルプロエート;ガバペンチン;プレガバリン;リザトリプタン;ゾルミトリプタン;ナラトリプタン及びスマトリプタンとの配合剤が含まれる。
【0090】
本発明の化合物は、睡眠の質を高めるため、睡眠障害や睡眠妨害を予防及び治療するために有用な化合物、例えば鎮静薬、催眠薬、不安緩解薬、抗精神病薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、シクロピロロン、オレキシンアンタゴニスト、アルファ−1アンタゴニスト、GABAアゴニスト、5HT−2Aアンタゴニスト及び5HT−2A/2Cアンタゴニストを含めた5HT−2アンタゴニスト、ヒスタミンH3アンタゴニストを含めたヒスタミンアンタゴニスト、ヒスタミンH3逆アゴニスト、イミダゾピリジン、マイナートランキライザー、メラトニンアゴニスト及びアンタゴニスト、メラトニン作動薬、他のオレキシンアンタゴニスト、オレキシンアゴニスト、プロキネチシンアゴニスト及びアンタゴニスト、ピラゾロピリミジン、T型カルシウムチャネルアンタゴニスト、トリアゾロピリジン等と一緒に投与され得、前記薬物としてアジナゾラム、アロバルビタール、アロニミド、アルプラゾラム、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アルモダフィニル、APD−125、ベンタゼパム、ベンゾクタミン、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブスピロン、ブタバルビタール、ブタルビタール、カプロモレリン、カプリド、カルボクロラール、クロラールベタイン、水和クロラール、クロルジアゼポキシド、クロミプラミン、クロナゼパム、クロペリドン、クロラゼペート、クロレテート、クロザピン、クロナゼパム、シプラゼパム、デシプラミン、デキスクラモール、ジアゼパム、ジクロラールフェナゾン、ダイバルプロエックス、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、EMD−281014、エプリバンセリン、エスタゾラム、エスゾピクロン、エスクロルビノール、エトミデート、フェノバム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルボキサミン、フルオキセチン、ホサゼパム、ガボクサドール、グルテチミド、ハラゼパム、ヒドロキシジン、イブタモレン、イミプラミン、インディプロン、リチウム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、LY−156735、マプロチリン、MDL−100907、メクロクアロン、メラトニン、メホバルビタール、メプロバメート、メタカロン、メチプリロン、ミダフルル、ミダゾラム、モダフィニル、ネファゾドン、NGD−2−73、ニソバメート、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オキサゼパム、パラアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロメタジン、プロポフォール、プロトリプチリン、クアゼパム、ラメルテオン、レクラゼパム、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロクロン、TAK−375、テマゼパム、チオリダジン、チアガビン、トラカゾレート、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリアゾラム、トレピパム、トリセタミド、トリクロホス、トリフロペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、ベンラファキシン、ザレプロン、ゾラゼパム、ゾピクロン、ゾルピデム及びその塩、並びにその組合せ等が例示される。或いは、本発明の化合物は物理的方法(例えば、光線治療または電気刺激)の使用と一緒に投与され得る。
【0091】
別の実施態様では、本発明の化合物は、レボドーパ(場合により、カルビドパまたはベンセラジドのような選択的脳外デカルボキシラーゼ阻害剤と一緒に)、抗コリン作動薬、例えばビペリドン(場合により、その塩酸塩または乳酸塩として)及び塩酸トリヘキシフェニジル(ベンズヘキソール)、COMT阻害剤、例えばエンタカポン、MOA−B阻害剤、抗酸化剤、A2aアデノシン受容体アンタゴニスト、コリン作動性アゴニスト及びドパーミン受容体アゴニスト、例えばアレンテモール、ブロモクリプチン、フェノルドパム、リスリド、ナキサゴリド、ペルゴリド及びプラミペキソールと一緒に使用され得る。
【0092】
本明細書中で使用されている用語「組成物」は、所定の量または比率で特定成分を含む製品及び特定量の特定成分の組合せから直接または間接的に生ずる製品を包含すると意図される。医薬組成物に関連してこの用語は、1つ以上の活性成分及び不活性成分からなる担体を含む製品;及び2つ以上の成分の組合せ、複合体化または集合から、1つ以上の成分の解離から、または1つ以上の成分の他のタイプの反応または相互作用から直接または間接的に生ずる製品を包含すると意図される。
【0093】
通常、医薬組成物は活性成分を液体担体及び/または微細な固体担体と均一及び均密に混合した後、必要ならば生成物を所望製剤に成形することにより製造される。式(I)〜(VIII)を有する化合物である活性成分は、疾患のプロセスまたは状態に対して所望の効果を生じさせるのに十分な量で医薬組成物中に含まれている。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物を医薬的に許容され得る担体と混合することにより製造される組成物を包含する。
【0094】
担体は、投与、例えば経口または(静脈内を含めた)非経口のために所望する製剤の形態に応じて広範囲の各種形態をとり得る。よって、本発明の医薬組成物は経口投与に適したばらばらの単位、例えば各々が所定量の活性成分を含有しているカプセル剤、カシェ剤または錠剤として提供され得る。更に、組成物は散剤、顆粒剤、溶液剤、または水性液体中懸濁液剤、非水性液剤、水中油型エマルジョン剤または油中水型エマルジョン剤として提供され得る。上記した一般的な剤形に加えて、本発明の化合物またはその医薬的に許容され得る塩は制御放出手段及び/またはデリバリーデバイスによっても投与され得る。
【0095】
経口用医薬組成物は医薬組成物を製造するために当業界で公知の方法に従って製造され得、医薬組成物は、医薬的に上品で口にあう製剤を提供するために甘味料、着香料、着色料及び保存料からなる群から選択される1つ以上の物質を含み得る。錠剤は、活性成分を錠剤の製造に適した非毒性の医薬的に許容され得る賦形剤と混合して含み得る。賦形剤の例は、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;顆粒化及び崩壊剤、例えばトウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシア;及び滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤にコーティングを被せていなくても、胃腸管での崩壊及び吸収を遅らせて、長期間にわたり持続作用を与えるためにコーティングを公知技術により被せてもよい。
【0096】
本発明の組成物を含有する錠剤は、場合により1つ以上の補助成分または佐剤と一緒に圧縮または成形することにより製造され得る。圧縮錠は、自由流動形態(例えば、粉末または顆粒状)の活性成分を場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性または分散剤と混合して適当な機械において圧縮することにより製造され得る。成形錠は、適当な機械において不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を成形することにより製造され得る。各錠剤が約0.1〜約500mgの活性成分を含有していることが好ましく、各カシェ剤またはカプセル剤は約0.1〜約500mgの活性成分を含有していることが好ましい。
【0097】
経口用組成物は、活性成分が不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合されてなる硬ゼラチンカプセル剤として、または活性成分が水または油性媒体(例えば、落花生油、流動パラフィンまたはオリーブ油)と混合されてなる軟ゼラチンカプセル剤としても提供され得る。
【0098】
他の医薬組成物には、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して活性物質を含有している水性懸濁液剤が含まれる。加えて、油性懸濁液剤は、活性成分を植物油(例えば、アラキス油、オリーブ油、ゴマ油または落花生油)または鉱油(例えば、流動パラフィン)中に懸濁させることにより製剤化され得る。油性懸濁液剤は各種賦形剤をも含み得る。本発明の医薬組成物は、甘味料及び着香料のような賦形剤をも含んでいてもよい水中油型エマルション剤の形態をもとり得る。
【0099】
医薬組成物は、滅菌注射用水性または油性懸濁液の形態、または前記した滅菌注射用溶液剤または分散液剤を即時調合するための滅菌粉末の形態であり得る。いずれの場合も、最終注射形態は滅菌されていなければならず、容易に注射し得るように十分に流動性でなければならない。医薬組成物は製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならない。好ましくは、医薬組成物は微生物(例えば、細菌及び真菌)の汚染作用から保護されていなければならない。
【0100】
本発明の医薬組成物は、エアゾール剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ダスティングパウダー等のような局所使用に適した形態であり得る。更に、組成物は経皮デバイスで使用するのに適した形態であり得る。これらの製剤は慣用の加工方法により製造され得る。例えば、クリーム剤または軟膏剤は、所望のコンシステンシーを有するクリーム剤または軟膏剤を作成すべく親水性材料及び水を約5〜約10重量%の化合物と混合することにより製造される。
【0101】
本発明の医薬組成物は、担体が固体である直腸内投与に適した形態でもあり得る。混合物が単位投与座剤を形成することが好ましい。適当な担体にはカカオ脂及び当業界で一般的に使用されている他の材料が含まれる。
【0102】
「医薬的に許容され得る」とは、担体、希釈剤または賦形剤が製剤の他の成分と相容性でなければならず、そのレシピエントにとって有害であってはならないことを意味する。
【0103】
用語「化合物の投与」または「化合物を投与する」は、治療を要する個人に対して本発明の化合物を個人の身体に導入され得る形態で治療有用な形態及び治療有用な量で与えることを意味する。前記形態には経口剤形、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液剤等;注入可能剤形、例えばIV、IM、IP等;経皮剤形、例えばクリーム剤、ゼリー剤、散剤またはパッチ剤;口腔内剤形;吸入用散剤、スプレー剤、懸濁液剤等;及び直腸内座剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
用語「有効量」または「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を引き出す当該化合物の量を意味する。
【0105】
本明細書中で使用されている用語「治療」または「治療する」は本発明の化合物の投与を意味し、(1)疾患の病理または総合的症状を患っているかまたは呈している動物における疾患の抑制(すなわち、病理及び/または総合的症状の更なる発生の停止)、または(2)疾患の病理または総合的症状を患っているかまたは呈している動物における疾患の回復(すなわち、病理及び/または総合的症状の逆転)が含まれる。
【0106】
本発明の化合物を含有する組成物は有利には単位投与形態で提供され得、製薬業界で公知の方法により製造され得る。用語「単位投与形態」は、患者または患者に対して薬物を投与する人が全投与成分が収容されている1つの容器またはパッケージを開けるだけですみ、2つ以上の容器またはパッケージから成分を一緒に混合する必要がないようにすべての活性成分及び不活性成分が適当な系中で組み合わされている単一投与形態を意味する。単位投与形態の典型的な例は、経口投与用錠剤またはカプセル剤、注射用1回投与バイアル、直腸内投与用座剤である。この単位投与形態のリストは決して限定するものと意図されず、単位投与形態の典型例を表しているにすぎない。
【0107】
本発明の化合物を含有する組成物は有利には、患者または患者に対して薬物を投与する人が実際の投与形態を作成するための説明書と一緒に活性成分または不活性成分、担体、希釈剤等であり得る2つ以上の成分が備えられているキットとして提供され得る。前記キットには必要なすべての物質及び成分が用意されており、または患者または患者に対して薬物を投与する人が独立して入手しなければならない材料または成分を使用または作成するための説明書を含んでいてもよい。
【0108】
本発明の化合物が適応される障害または疾患を治療または回復させる場合、通常本発明の化合物を動物の体重1kgあたり約0.1〜約100mgの一日用量で投与すると満足な結果が得られ、前記した1日用量を1日1回で、2〜6回/日に分割して、または持続放出形態で投与することが好ましい。全1日用量は約1.0〜約2000mg/kg体重、好ましくは約0.1〜約20mg/kg体重である。70kgの成人の場合、全1日用量は通常約7〜約1,400mgである。この投与レジメンは最適の治療応答を与えるように調節され得る。化合物は1〜4回/日、好ましくは1〜2回/日のレジメンで投与され得る。
【0109】
単一投与形態を生ずるように担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、治療対象の宿主及び具体的投与モードに応じて異なる。例えば、ヒトに対して経口投与しようとする製剤は有利には約0.005mg〜約2.5gの活性物質を含有し、これは適切で便利な量の担体材料とコンパウンドされている。単位投与形態は通常約0.005〜約1000mgの活性成分、典型的には0.005mg、0.01mg、0.05mg、0.25mg、1mg、5mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mgまたは1000mgを含有し、1日1〜3回で投与される。
【0110】
しかしながら、特定患者に対する具体的な用量レベル及び投与頻度は変更可能であり、使用する具体的化合物の活性、該化合物の代謝安定性及び作用時間、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与モード及び時間、排泄率、薬物の組合せ、具体的状態の重症度及び治療を受ける宿主を含めた各種要因に依存している。
【0111】
本発明の化合物を製造するための幾つかの方法が本明細書中のスキーム及び実施例に示されている。出発物質は当業界で公知の手順に従って、または本明細書中に例示されているように製造される。本発明がより十分に理解されるように以下の実施例を提示する。
【0112】
下記実施例は本発明を例示するために提示されており、決して本発明を限定すると解釈されるべきでない。
【実施例】
【0113】
実施例1
1−[(4−シアノ−4−ピリジン−2−イルピペリジン−1−イル)メチル]−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸
【0114】
【化9】

4−シアノピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(220mg,1.05ミリモル)及び2−フルオロピリジン(0.094mL,1.10ミリモル)の混合物をTHF(5.2mL)中に溶解した。反応物に窒素流をパージし、−78℃まで冷却した。この反応物にTHF中1M ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(1.47mL,1.47ミリモル)を添加し、1時間攪拌した。反応物を周囲温度まで加温し、1時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。混合物をジクロロメタン(3×10mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、ヘキサン中0〜20% EtOAcで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。生成物含有画分を集め、溶媒を除去して、4−シアノ−4−ピリジン−2−イルピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルを得た。
【0115】
上記カルボン酸エステル(3.11g,10.8ミリモル)を乾燥EtOAc(54mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。次いで、溶液に無水HClガスを5分間通気した。反応物を周囲温度まで加温し、2時間攪拌した。反応混合物をジクロロメタン(100mL)に取り、飽和炭酸水素ナトリウム溶液でゆっくり中和した。混合物を水とジクロロメタンに分配した。水性層をジクロロメタン(6×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、4−ピリジン−2−イルピペリジン−4−カルボニトリルを得た。
【0116】
10〜20mL容量のEmrys(商標)プロセスバイアルにおいて1−ホルミル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチル(684mg,2.79ミリモル)、4−ピリジン−2−イルピペリジン−4−カルボニトリル(627mg,3.35ミリモル)、氷酢酸(0.96mL,16.7ミリモル)及びジクロロエタン(4.1mL)の混合物を激しく攪拌した。混合物を攪拌しながら、ここに樹脂結合MP−シアノホウ水素化物(2.74g,5.58ミリモル)を添加した。混合物をEmrys Optimizer(商標)マイクロ波を用いて120℃に30分間加熱した。濾過し、溶媒を除去すると、物質が生じた。これをヘキサン中55〜75% EtOAcで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。生成物含有画分を集め、溶媒を除去して、4−[(4−シアノ−4−ピリジン−2−イルピペリジン−1−イル)メチル]−1−オキソ−1,8a−ジヒドロナフタレン−2−カルボン酸エチルを得た。
【0117】
上記カルボン酸エステル(705mg,1.69ミリモル)を2:1 THF:EtOH溶液(8.4mL)中に溶解し、1N NaOH(1.78mL,1.78ミリモル)で処理し、60℃まで16時間加温した。反応物の容量を真空中で減量すると、物質が生じた。これを分取逆相HPLCにかけた。生成物含有画分を集め、溶媒を除去して、標記化合物を得た。これを1N NaOH(2.74mL,2.74ミリモル)で処理してナトリウム塩に変換した。1時間後、反応物を濃縮乾固し、ブフナー漏斗を用いて最少量の冷水(5mL)で洗浄した。残渣をメタノールを用いて溶解し、溶液を真空中で濃縮して、標記化合物を得た。このプロトンNMRスペクトルは理論と一致し、高分解能質量スペクトル(ES+)m/zは389.1626(M+H)[C2220:389.1608]であった。H NMR(500MHz,CDOD)δ 9.37(d,J=7.2Hz,1H),8.55(d,J=3.9Hz,1H),8.30(s,1H),8.18(d,J=8.9Hz,1H),7.85(t,J=7.8Hz,1H),7.69(t,J=6.3Hz,1H),7.62(d,J=8.0Hz,1H),7.32−7.36(m,1H),7.29(t,J=7.0Hz,1H),3.82(s,2H),3.09(d,J=12.2Hz,2H),2.55(t,J=12.1Hz,2H),2.23(t,J=12.7Hz,2H),2.13(d,J=11.7Hz,2H)。
【0118】
実施例2
1−{[4−シアノ−4−(4−メチルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸
【0119】
【化10】

4−シアノピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(15.2g,72.3ミリモル)及び2−フルオロ−4−メチルピリジン(9.64g,87.0ミリモル)の混合物をTHF(361mL)中に溶解した。反応物に窒素流をパージし、−78℃まで冷却した。この反応物にTHF中1.0M ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(101mL,101ミリモル)を添加し、1時間攪拌した。反応物を周囲温度まで加温し、36時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。混合物をジクロロメタン(3×200mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、ヘキサン中0〜25% EtOAcで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーにかけて、4−シアノ−4−(4−メチルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルを得た。
【0120】
上記カルボン酸エステル(12.8g,42.5ミリモル)を1:1 EtOAc:DCM(424mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。次いで、溶液中に無水HClガスを5分間通気した。反応物を周囲温度まで加温し、1時間攪拌した。反応混合物の揮発物を濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液でゆっくり中和した。生じたスラリーをDCM中10% MeOHで洗浄し、真空中をブフナー漏斗を用いて濾過した。濾液を濃縮して、4−(4−メチルピリジン−2−イル)ピペリジン−4−カルボニトリルを得た。
【0121】
1−ホルミル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチル(2.60g,10.6ミリモル)、4−(4−メチルピリジン−2−イル)ピペリジン−4−カルボニトリル(1.78g,8.83ミリモル)及び無水THF(36.8mL)の混合物を10℃まで冷却し、激しく攪拌した。混合物を攪拌しながら、ここにトリアセトキシホウ水素化ナトリウム(2.62g,12.4ミリモル)を1時間かけて少しずつ添加した。混合物を50℃に18時間加熱した。反応物を10% 炭酸水素ナトリウム溶液でクエンチし、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機層を合わせ、1N HClで酸性化し、DCM(8×150mL)で抽出した。500mL容量の三角フラスコにおいて水性層をpHが〜7−8になるまで連続攪拌しながら固体炭酸ナトリウムでゆっくり中和した後、DCM(3×200mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、1−{[4−シアノ−4−(4−メチルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチルを得た。このプロトンNMRスペクトルは理論と一致し、質量スペクトル(ES+)m/zは431.0(M+H)であった。H NMR(400MHz,CDCl)δ 9.51(d,J=7.1Hz,1H),8.43(d,J=4.95Hz,1H),8.32(s,1H),8.14(d,J=8.9Hz,1H),7.70(t,J=7.8Hz,1H),7.43(s,1H),7.26(m,1H),7.06(d,J=4.9Hz,1H),4.44(q,J=7.1Hz,2H),3.75(s,2H),3.01(d,J=12.0Hz,2H),2.56(t,J=11.3Hz,2H),2.39(s,3H),2.29(t,J=12.9Hz,2H),2.05(d,J=12.4Hz,2H),1.44(t,J=7.1Hz,3H)。
【0122】
上記カルボン酸エステル(1.55g,3.60ミリモル)を2:1 THF:EtOH溶液(36mL)中に溶解し、1N NaOH(3.78mL,3.78ミリモル)で処理し、50℃まで20時間加温した。反応温度を2時間で60℃に上げた。反応物を追加の1N NaOH(0.18mL,0.18ミリモル)で処理し、70℃まで4時間加温した。反応物の容量を真空下で減量し、脱イオン水(50mL)で希釈し、EtOAc(2×100mL)で抽出した。水性層を濃縮乾固して、標記化合物を得た。このプロトンNMRスペクトルは理論と一致し、高分解能質量スペクトル(ES+)m/zは403.1772(M+H)[C2322:403.1765]であった。H NMR(500MHz,CDOD)δ 9.36(d,J=7.3Hz,1H),8.38(d,J=5.0Hz,1H),8.29(s,1H),8.18(d,J=9.0Hz,1H),7.68(t,J=7.5Hz,1H),7.45(s,1H),7.29(t,J=6.7Hz,1H),7.18(d,J=5.0Hz,1H),3.81(s,2H),3.09(d,J=12.1Hz,2H),2.51(t,J=10.9Hz,2H),2.40(s,3H),2.21(t,J=12.7Hz,2H),2.11(d,J=12.1Hz,2H)。
【0123】
以下の化合物は実施例1に記載されている一般的手順に従って製造した。出発物質は市販されているか、文献から公知であるか、または市販されている試薬から当業界で公知の一般的反応を用いて製造され得る。
【0124】
【化11】

【0125】
【表1】




【0126】
実施例46
1−{[4−シアノ−4−(3−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸
【0127】
【化12】

2−クロロ−N−(2−クロロエチル)エタンアミニウムクロリド(12.5g,70.2ミリモル)をTHF(351mL)中で攪拌した。この混合物にトリエチルアミン(10.3mL,73.7ミリモル)、次いで炭酸水素ジ−tert−ブチル(16.1g,73.7ミリモル)を添加した。これを19時間攪拌した。反応物をジクロロメタン(250mL)で希釈し、水(3×250mL)で洗浄し、水とジクロロメタンに分配した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮すると、ビス(2−クロロエチル)カルバミン酸tert−ブチルが生じた。
【0128】
3−フルオロフェニルアセトニトリル(200mg,1.48ミリモル)及びビス(2−クロロエチル)カルバミン酸tert−ブチル(358mg,1.48ミリモル)の混合物を無水DMSO(14.8mL)中に溶解した。反応物に窒素流をパージし、18℃まで冷却した。この反応物に水素化ナトリウム(358mg,1.48ミリモル)を添加した後、周囲温度まで加温し、2時間攪拌した。反応物を50℃まで加温し、17時間攪拌した。混合物をジクロロメタン(40mL)で希釈し、水(3×40mL)で洗浄し、水とジクロロメタンに分配した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、ヘキサン中0〜20% EtOAcで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。生成物含有画分を集め、溶媒を除去して、4−シアノ−4−(3−フルオロフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルを得た。
【0129】
標記化合物を実施例1に記載されている方法と同様にして製造した。このプロトンNMRスペクトルは理論と一致し、高分解能質量スペクトル(ES+)m/zは406.1575(M+H)[C2320:406.1562]であった。H NMR(500MHz,CDOD)δ 9.56(d,J=7.1Hz,1H),8.70(s,1H),8.47(d,J=9.0Hz,1H),8.18(t,J=7.9Hz,1H),7.72(t,J=6.8Hz,1H),7.46−7.51(m,1H),7.37(d,J=8.6Hz,1H),7.30(d,J=10.0Hz,1H),7.16(t,J=8.4Hz,1H),4.67(bs,2H),3.65(m,2H),3.37(m,2H),2.46(d,J=14.2Hz,2H),2.29(m,2H)。
【0130】
実施例47
1−[(4−シアノ−4−ピリジン−3−イルピペリジン−1−イル)メチル]−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸
【0131】
【化13】

標記化合物は実施例20に記載されている方法と同様にしてトリフルオロ酢酸塩として製造した。このプロトンNMRスペクトルは理論と一致し、高分解能質量スペクトル(ES+)m/zは389.1614(M+H)[C2220:389.1608]であった。H NMR(500MHz,CDOD)δ 9.57(d,J=7.1Hz,1H),8.82(s,1H),8.74(s,1H),8.66(s,1H),8.47(d,J=8.55Hz,1H),8.18(t,J=7.8Hz,1H),8.12(d,J=7.8Hz,1H),7.72(t,J=7.0Hz,1H),7.63(m,1H),4.78(s,2H),3.76(m,2H),3.48(m,2H),2.56(d,J=13.4Hz,2H),2.42(m,2H)。
【0132】
実施例48
1−{[4−(3−ブロモピリジン−2−イル)−4−シアノピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸
【0133】
【化14】

3−ブロモ−2−メチルピリジン(10.0g,58.1ミリモル)、無水ジフェニルペルオキシ(2.82g,11.6ミリモル)、1−ブロモピロリジン−2,5−ジオン(10.9g,61.0ミリモル)を四塩化炭素(233mL)中で144時間還流した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、水(3×200mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮し、ヘキサン中0〜30% EtOAcで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、3−ブロモ−2−(ブロモメチル)ピリジンを得た。
【0134】
上記ピリジン(5.13g,20.4ミリモル)をエタノール:脱イオン水の5.6:1溶液(50.1mL)中で攪拌した。この混合物にシアン化ナトリウム(1.20g,24.5ミリモル)を添加し、2時間半攪拌した。反応混合物をジクロロメタン(100mL)で希釈し、水(3×100mL)で洗浄し、水とジクロロメタンに分配した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、ヘキサン中5〜30% EtOAcで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーにかけて、(3−ブロモピリジン−2−イル)アセトニトリルを得た。
【0135】
上記(3−ブロモピリジン−2−イル)アセトニトリル(2.00g,10.2ミリモル)及びビス(2−クロロエチル)カルバミン酸tert−ブチル(2.46g,10.2ミリモル)をDMSO(102mL)中に溶解した。反応物に窒素流をパージし、18℃まで冷却した。この反応物に水素化ナトリウム(0.564g,22.3ミリモル)を添加した後、50℃まで加温し、18時間攪拌した。混合物をジクロロメタン(150mL)で希釈し、水(3×150mL)で洗浄し、水とジクロロメタンに分配した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、ヘキサン中5〜30% EtOAcで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーにかけて、4−(3−ブロモピリジン−2−イル)−4−シアノピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルを得た。
【0136】
上記カルボン酸エステル(290mg,0.79ミリモル)を乾燥EtOAc:ジクロロメタンの1:1溶液(7.9mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。次いで、溶液中に無水HClガスを5分間通気した。反応物を周囲温度まで加温し、2時間攪拌した。反応混合物をジクロロメタン(10mL)に取り、飽和炭酸水素ナトリウム溶液でゆっくり中和した。混合物を水とジクロロメタンに分配した。水性層をジクロロメタン(6×10mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、4−(3−ブロモピリジン−2−イル)ピペリジン−4−カルボニトリルを得た。
【0137】
2〜5mL容量のEmrys(商標)プロセスバイアルにおいて1−ホルミル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチル(150mg,0.61ミリモル)、4−ピリジン−2−イルピペリジン−4−カルボニトリル(179mg,0.67ミリモル)、氷酢酸(0.21mL,3.67ミリモル)及びジクロロエタン(3.1mL)の混合物を激しく攪拌した。混合物を攪拌しながら、ここに樹脂結合MP−シアノホウ水素化物(600mg,1.22ミリモル)を添加した。混合物をEmrys Optimizer(商標)マイクロ波を用いて120℃に20分間加熱した。濾過し、溶媒を除去すると、粗な物質が生じた。これを分取逆相HPLCにより精製して、1−{[4−(3−ブロモピリジン−2−イル)−4−シアノピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチルを得た。
【0138】
上記1−{[4−(3−ブロモピリジン−2−イル)−4−シアノピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチル(30mg,0.061ミリモル)をDMSO(1.0mL)中に溶解し、水酸化リチウム(0.15mL,0.80ミリモル)で処理し、周囲温度まで96時間加温した。反応混合物を分取逆相HPLCにより精製して、標記化合物をトリフルオロ酢酸塩として得た。このプロトンNMRスペクトルは理論と一致し、低分解能質量スペクトル(ES+)m/zは468.8(M+H)[C2219BrN]であった。H NMR(400MHz,CDOD)δ 9.57(d,J=6.8Hz,1H),8.75(s,1H),8.59(m,1H),8.46(d,J=8.9Hz,1H),8.16−8.22(m,2H),7.73(t,J=7.1Hz,1H),7.37(dd,J=4.6Hz,1H),3.77(bs,2H),3.59(t,J=12.0Hz,2H),2.84(m,2H),2.65(m,2H)。
【0139】
実施例49
1−{[4−シアノ−4−(3−ビニルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸
【0140】
【化15】

2〜5mL容量のEmrys(商標)プロセスバイアルにおいて1−{[4−(3−ブロモピリジン−2−イル)−4−シアノピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチル(50mg,0.10ミリモル)を無水THF(0.40mL)中に溶解し、カリウムビニルトリフルオロボラート(40.6mg,0.30ミリモル)及び1M 炭酸セシウム溶液(0.20mL,0.20ミリモル)で処理した。反応物に窒素流をパージし、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(5.2mg,0.010ミリモル)を充填し、Emrys Optimizer(商標)マイクロ波を用いて160℃に10分間加熱した。濾過し、溶媒を除去すると、物質が生じた。これを分取逆相HPLCにかけた。生成物含有画分を集め、溶媒を除去して、1−{[4−シアノ−4−(3−ビニルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチルを得た。
【0141】
標記化合物を実施例1に記載されている方法と同様にしてトリフルオロ酢酸塩として製造した。その低分解能質量スペクトル(ES+)m/zは415.0(M+H)[C2422]であった。H NMR(400MHz,CDOD)δ 9.57(d,J=7.1Hz,1H),8.74(s,1H),8.50(s,1H),8.45(d,J=9.1Hz,1H),8.19(t,J=8.0Hz,1H),7.99(d,J=7.6Hz,1H),7.72(t,J=7.1Hz,1H),7.42−7.48(m,2H),5.82(d,J=17.0Hz,1H),5.61(d,J=0.9Hz,1H),3.75(bs,2H),3.59(t,J=13.5Hz,2H),2.55−2.65(m,4H)。
【0142】
実施例50
1−{[4−シアノ−4−(5−ビニルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸
【0143】
【化16】

標記化合物を実施例1及び22に記載されている方法と同様にして製造した。その低分解能質量スペクトル(ES+)m/zは415.0(M+H)[C2422]であった。
【0144】
実施例51
1−[(4−シアノ−4−ピリジン−2−イルピペリジン−1−イル)メチル]−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸ナトリウム
【0145】
【化17】

LDA(TΗF/ヘプタン/エチルベンゼン中1.8M,64.8mL,117ミリモル)をTHF(200mL)中に含む溶液に−78℃でTΗF(62mL)中2,3−ルチジン(10.6mL,93.3ミリモル)を10分間かけて1滴ずつ添加した。混合物を−78℃で更に40分間攪拌した後、TΗF(30mL)中エトキシメチレンマロン酸ジエチル(21.7mL,107ミリモル)を15分間かけてゆっくり添加した。混合物を2.5時間かけてゆっくり室温まで加温した。生じた溶液を飽和水性NHClでクエンチし、CHCl(3×)で抽出した。合わせた抽出物を乾燥し(NaSO)、濃縮した。中間体をo−キシレン(93mL)中に溶解し、16時間還流加熱した。室温まで冷却した後、混合物を濃縮した。0〜5% MeOH:CHClで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチルを黄色固体として得た。
【0146】
上記キノリジノン(15.3g,66.2ミリモル)をDMF(100mL)中に含む溶液に0℃でPOCl(15.4mL,165ミリモル)を滴下漏斗を用いて20分間かけて1滴ずつ添加した。混合物を室温まで加温し、20時間攪拌した。生じた溶液を氷水(300mL)を収容している1L容量の三角フラスコに注いだ。生じたスラリーを氷浴で冷却すると、黄褐色沈殿が形成された。固体を濾過し、水及びエーテルで洗浄した。固体を集め、真空中で乾燥して、1−ホルミル−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチルを黄色固体として得た。
【0147】
上記アルデヒドを、実施例1に上記されている手順と同じ手順に従って1−[(4−シアノ−4−ピリジン−2−イルピペリジン−1−イル)メチル]−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸ナトリウムに変換した。
【0148】
1−[(4−シアノ−4−ピリジン−2−イルピペリジン−1−イル)メチル]−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸ナトリウム:H NMR(400MHz,CDOD)δ 9.37(d,J=7.2Hz,1H),8.50(br d,J=4.9Hz,1H),8.23(s,1H),7.80(dt,J=1.9,7.6Hz,1H),7.57(d,J=8.1Hz,1H),7.46(d,J=7.2Hz,1H),7.29(ddd,J=1.1,4.9,7.6Hz,1H),7.09(t,J=7.2Hz,1H),3.85(s,2H),2.99(m,2H),2.97(s,3H),2.47(t,J=11.8Hz,2H),2.15(t,J=13.1Hz,2H),2.09(t,J=13.1Hz,2H)。ESI−HRMS(MH) 計算値(C2323)=403.1765,実測値=403.1771。
【0149】
化合物のM1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターとしての有用性は下記するアッセイを含めた当業界で公知の方法により立証され得る。このアッセイは、細胞内カルシウムをFLIPR384蛍光測定画像分析用プレートリーダーシステムを用いて測定することによりCHOnfat細胞において発現させたアセチルコリンムスカリンM1受容体または他のムスカリン受容体でモジュレーター活性を有する化合物を選択するように設計されている。このアッセイは、FLIPRを用いて基礎またはアセチルコリン刺激Ca2+レベルに対する1つまたは幾つかの濃度の試験化合物の効果を研究する。
【0150】
化合物を製造し、4分間プレインキュベートする。その後、1つのEC20濃度のアセチルコリンを各ウェルに添加する(最終3nM)。各サンプルの細胞内Ca2+レベルを測定し、アセチルコリン対照と比較して、モジュレーター活性を調べる。
【0151】
細胞:CHOnfat/hM1、hM2、hM3またはhM4細胞を384ウェルプレートにおいて18,000細胞/ウェル(100μL)の密度でアッセイ前24時間平板培養する。CHOnfat/hM1及びCHOnfat/hM3増殖培地:90% DMEM(高グルコース)、10% HI FBS、2mM L−グルタミン、0.1mM NEAA、Pen−Strep及び1mg/ml ジェネティシンを添加する。M2Gqi5CHOnfat及びM4Gqi5CHOnfat細胞の場合、追加の600ug/mlのハイグロマイシンを添加する。
【0152】
装置:384ウェルプレート、120μL 添加プレート;96ウェルのWhatman 2ml Uniplateインキュベーター、37℃、5% CO;Skatron EMBLA−384プレート洗浄機;Multimekピペッティングシステム;Genesis Freedom 200システム;Mosquitoシステム;Temo Nanolitteピペッティングシステム;及びFLTPR384蛍光測定画像解析用プレートリーダーシステムを使用する。
【0153】
バッファー:アッセイバッファー:20mM Hepes、1N NaOH中にまず溶解させた2.5mM プロベネシド(Sigma P−8761)、1% ウシ血清アルブミン(Sigma A−9647)を含むハンクス平衡塩溶液。染料ローディングバッファー:アッセイバッファー+1% ウシ胎児血清及びFluo−4AM/プルロニック酸混合物。DMSO(Molecular Probes F−14202)中2mM Fluo−4AMエステルストック。アッセイ中1μMの最終濃度に対してバッファー中の2uMの濃度。バッファー中0.04%、アッセイ中0.02%の濃度の20% プルロニック酸溶液ストック。
【0154】
2mM Fluo−4AM(65μL)を20% プルロニック酸(130μL)と混合する。65mLの全容量に対して生じた溶液及びFBS(650μL)をアッセイバッファーに添加する。ポジティブ対照:4−Br−A23187:DMSO中10mM;最終濃度10μM。アセチルコリン:水中10mM、アッセイバッファー中20uM及び30uMの作業ストック、10μMの最終濃度。これを使用して、CHOK1/hM1細胞の最大刺激をチェックする。アッセイのプレインキュベーション部において20uM(2×)アセチルコリンを添加し、第2部において30uM(3×)ストックを添加する。(EC20)アセチルコリン:水中10mM、9nM(3×)の作業ストック、アッセイ中の最終濃度は3nMである。試験化合物でプレインキュトした後これを使用する。試験化合物を含む各ウェルにEC20アセチルコリンを添加して、モジュレーター活性を確認する。24ウェルは対照として3nM アセチルコリンのみを含有している。
【0155】
推定される化合物の活性の測定:
スクリーニングプレート:化合物を96ウェルプレート(カラム2〜11)において100% DMSO、15mMの濃度(150×ストック濃度)で始め、3倍連続希釈してGenesis Freedom 200システムを用いて滴定する。連続希釈化合物(1ul)を各ウェルに移すことにより4つの96ウェルプレートをMosquito Nanolitreピペッティングシステムを用いて384ウェルプレートに組み合わせ、1mM アセチルコリン(100×ストック濃度)を対照として添加する。アッセイ直前に、Temoを用いてアッセイバッファー(49μl)を384ウェルプレートの各ウェルに添加する。
【0156】
96ウェルのWhatman 2ml Uniplateにおいて、9nM アセチルコリン(3×)をスクリーニング化合物に対応するウェル及び対照ウェルにピペットで入れる。30uM アセチルコリン対照(3×)を対照ウェルに添加し、3×アゴニストプレートを384ウェルプレートに移す。
【0157】
細胞をバッファー(100μL)で3回洗浄して、各ウェルに30μLのバッファーを残す。Multimekを用いて、各ウェルに染料ローディングバッファー(30μL)を添加し、37℃、5% COで最長1時間インキュベートする。
【0158】
60分後、細胞をバッファー(100μL)で3回洗浄して、各ウェルに30μLのバッファーを残す。細胞プレート、スクリーニングプレート及びアゴニスト添加プレートをFLIPRのプラットフォーム上に載せ、ドアを閉じる。バッグランウンド蛍光及び基礎蛍光シグナルをチェックするためのシグナル試験を実施する。所要によりレーザー強度を調節する。
【0159】
試験化合物と4分間プレインキュベートすると、1mM アセチルコリン対照と比較することによりM1受容体に対するアゴニスト活性が調べられる。プレインキュベートした後、アセチルコリン(最終3nM)のEC20値を添加して、モジュレーター活性を調べる。
【0160】
ムスカリンFLIPRアッセイの更なる記載は国際公開第2004/073639号パンフレット中に見つけることができる。
【0161】
特に、以下の実施例の化合物は上記アッセイにおいて活性を有しており、通常IP(変曲点)は10μM(10,000nM)未満であった。変曲点はFLIPR値から計算し、活性の目安である。この結果は、M1アロステリックモジュレーターとして使用する際の化合物の固有活性を示している。
【0162】
本発明の(本明細書中に記載されている)代表例化合物の上記アッセイからのIP値を下表1に示す。
【0163】
【表2】

【0164】
明細書を通して以下の略語が使用されている:
Me:メチル、
Et:エチル、
t−Bu:tert−ブチル
Ar:アリール、
Ph:フェニル、
Bn:ベンジル、
DCE:ジクロロエチレン、
DCM:ジクロロメタン、
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、
LDA:リチウムジイソプロピルアミド、
BOC:t−ブチルオキシカルボニル、
HMDS:ヘキサメチルジシラザン、
THF:テトラヒドロフラン、
Ac:アセチル、
DMSO:ジメチルスルホキシド、
DMEM:ダルベッコ変法イーグル培地(高グルコース)、
FBS:ウシ胎児血清、
rt:室温、
aq:水性、
HPLC:高速液体クロマトグラフィー、
MS:質量分析。
【0165】
本発明を特定の具体的実施形態を参照して記載し、説明してきたが、当業者は本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく手順及びプロトコルに各種の改変、変化、修飾、置換、削除または付加を加え得ることを認識している。従って、本発明は以下の特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲は合理的な限り広く解釈されると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、

(1)シアノ、
(2)−C(=O)−OR4A
(3)−C(=O)−R4A
(4)−OH、及び
(5)フェニル
からなる群から選択され;

(1)−(CH−アリール、及び
(2)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアリールまたはヘテロアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)−O−C1−6アルキル、
(d)−C1−6アルキル、
(e)−C2−6アルケニル、
(f)−S(O)−R4A
(g)−C2−6アルキニル、及び
(h)−N(R4A4B
で置換されており;

(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、及び
(3)−CH−アリール
からなる群から選択され、前記したRアルキルまたはアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、及び
(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1つ以上のハロで置換されている)
で置換されており;
4A及びR4Bは各々独立して
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−(CH−アリール
からなる群から選択され、前記したR4AまたはR4Bアルキルまたはアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、及び
(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1つ以上のハロで置換されている)
で置換されており;
は場合により環炭素原子の1つ以上に存在し、各Rは独立して
(1)ハロゲン、
(2)−C1−6アルキル、及び
(3)−(CH−アリール
からなる群から選択され、前記したRアルキルまたはアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、及び
(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1つ以上のハロで置換されている)
で置換されており;
mは0、1または2であり;
nは0、1または2である]
の化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項2】
はシアノである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】

(1)−C(=O)−OR
(2)−C(=O)−R
(3)−OH
からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
4A及びR4Bは各々独立してC1−6アルキルから選択される請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
はピリジルであり、このピリジル基は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)−O−C1−6アルキル、
(d)−C1−6アルキル、及び
(e)−C2−6アルケニル
で置換されている請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
ピリジルは2−ピリジルである請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
は、場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)−O−C1−6アルキル、
(d)−C1−6アルキル、または
(e)−C2−6アルケニル
で置換されているフェニルである請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
は水素である請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
は存在しない請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
は1つの環炭素原子に存在しているハロゲンである請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
式(I)の化合物が、式(II):
【化2】

[式中、

(1)−(CH−アリール、及び
(2)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアリールまたはヘテロアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)−O−C1−6アルキル、
(d)−C1−6アルキル、
(e)−C2−6アルケニル
で置換されており;
は場合により環炭素原子の1つ以上に存在し、各Rは独立して
(1)ハロゲン、
(2)−C1−6アルキル、及び
(3)−(CH−アリール
からなる群から選択され、前記したRアルキルまたはアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、及び
(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1つ以上のハロで置換されている)
で置換されており;
nは0、1または2である]
の化合物である請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項12】
式(I)の化合物が式(III):
【化3】

[式中、
Xは
(1)CH、及び
(2)N
からなる群から選択され;
は場合により存在し、
(1)ハロゲン、
(2)ヒドロキシ、
(3)−O−C1−6アルキル、
(4)−C1−6アルキル、及び
(5)−C2−6アルケニル
からなる群から選択され;
は場合により環炭素原子の1つ以上に存在し、各Rは独立して
(1)ハロゲン、
(2)−C1−6アルキル、及び
(3)−(CH−アリール
からなる群から選択され、前記したRアルキルまたはアリール部分は場合により1つ以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、及び
(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1つ以上のハロで置換されている)
で置換されている]
の化合物である請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項13】
XはNである請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
1−[(4−シアノ−4−ピリジン−2−イルピペリジン−1−イル)メチル]−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸、
1−{[4−シアノ−4−(4−メチルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸、
1−{[4−シアノ−4−(3−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4Η−キノリジン−3−カルボン酸、
1−[(4−シアノ−4−ピリジン−3−イルピペリジン−1−イル)メチル]−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸、
1−{[4−(3−ブロモピリジン−2−イル)−4−シアノピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸、
1−{[4−シアノ−4−(3−ビニルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸、
1−{[4−シアノ−4−(5−ビニルピリジン−2−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸、及び
1−[(4−シアノ−4−ピリジン−2−イルピペリジン−1−イル)メチル]−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸ナトリウム
からなる群から選択される請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項15】
は水素であり、R及びRは以下に定義されている通りである
【表1】




請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項16】
治療有効量の請求項1〜15のいずれかに記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
治療有効量の請求項1〜15のいずれかに記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を含むアルツハイマー病、統合失調症、疼痛または睡眠障害からなる群から選択されるムスカリンM1受容体が媒介する疾患または障害を治療するために医薬組成物。
【請求項18】
アルツハイマー病、統合失調症、疼痛または睡眠障害からなる群から選択されるムスカリンM1受容体が媒介する疾患または障害を治療するための請求項1〜15のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
アルツハイマー病、統合失調症、疼痛または睡眠障害からなる群から選択されるムスカリンM1受容体が媒介する疾患または障害の治療用薬剤を製造するための請求項1〜15のいずれかに記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体の使用。
【請求項20】
アルツハイマー病、統合失調症、疼痛または睡眠障害からなる群から選択されるムスカリンM1受容体が媒介する疾患または障害の治療を要する患者に対して治療有効量の請求項1〜15のいずれかに記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を投与することを含む前記患者における前記した疾患または障害の治療方法。

【公表番号】特表2011−500678(P2011−500678A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529934(P2010−529934)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/011752
【国際公開番号】WO2009/051715
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】