説明

キノリニル−ピロロピラゾール類

式II:
【化1】


で示される化合物およびその製薬的に許容される塩、ならびに癌の治療を必要とする患者において、上記化合物の投与により癌を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規キノリニル−ピラゾール化合物およびその医薬としての使用、具体的にはTGF−ベータシグナル伝達阻害剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
形質転換成長因子−ベータ(TGF−ベータ)(「TGF−β」)ポリペプチドは、多くの細胞型における成長、分化および遺伝子発現に影響する。このファミリーの最初に特徴付けられたポリペプチド、TGF−β1は、共有結合している二つの同一の112アミノ酸サブユニットを有する。TGF−β1は、単一のアミノ酸の違いでのみヒトとマウスを区別する高度に保存されたタンパク質である。哺乳動物にて発現するTGF−β遺伝子ファミリーの他の二つのメンバーがある。TGF−β2は、TGF−β1と71%相同である(de Martinら (1987) EMBO J. 6:3673-3677)一方で、TGF−β3は、TGF−β1と80%相同である(Derynckら (1988) EMBO J 7:3737-3743)。核磁気共鳴により決定されるTGF−β1の構造的特徴(Archerら (1993) Biochemistry 32:1164-1171)は、TGF−β2の結晶構造(Daopinら (1992) Science 257:369-374; SchluneggerおよびGrutter (1992) Nature 358:430-434)と一致する。
【0003】
TGF−β1、−β2および−β3の生物学的機能を含む、少なくとも3つの異なる細胞外TGF−β受容体、I型、II型およびIII型がある(講評のためにDerynck (1994) TIBS 19:548-553およびMassague (1990) Ann. Rev. Cell Biol. 6:597-641を参照のこと)。I型およびII型受容体は膜貫通型セリン/スレオニンキナーゼであり、TGF−βの存在下、ヘテロメリックシグナリング複合体を形成する(Wranaら (1992) Cell 71: 1003-1014)。
【0004】
細胞表面におけるヘテロメリックシグナリング複合体の活性化の機序が解明されている(Wranaら (1994) Nature 370: 341-347)。TGF−βはまず、本質的に活性な膜貫通型セリン/スレオニンキナーゼであるII型受容体を結合させる。次いでI型受容体は複合体に補充され、GSドメインにてリン酸化されて活性化し、下流のシグナリング成分(例えばSmadタンパク質)をリン酸化し、細胞内シグナル伝達系を開始する。本質的に活性なI型受容体(T204D変種)は、TGF−β応答を有効に変換し、従ってTGF−βおよびII型受容体についての必要性をバイパスすることが示されている(Wieserら (1995) EMBO J 14: 2199-2208)。シグナリング機能はIII型受容体について発見されていないが、該機能は、TGF−β2をTGF−β1およびTGF−β3と本質的に等効力にさせるII型受容体に対するTGF−β2の親和性を増大する(Lopez-Casillasら (1993) Cell 73:1435-1444)。
【0005】
血管内皮細胞にはIII型受容体が欠如している。代わりに内皮細胞は、構造的に関連するタンパク質いわゆるエンドグリンを発現し(Cheifetzら (1992) J. Biol. Chem. 267:19027-19030)、これは高親和性を有するTGF−β1およびTGF−β3を結合させるだけである。従って、TGF−βの相対力は、細胞および器官系に発現される受容体の型を反映する。TGF−βポリペプチドの合成の分布はまた、多因子性シグナリング経路における成分の調節に加え、生理的機能に作用する。TGF−β2およびTGF−β3の分布は、TGF−β1よりも制限されており(Derynckら (1988) EMBO J 7:3737-3743)、例えばTGF−β3は間葉に由来する組織に限定される一方、TGF−β1は間葉および内皮の両方に由来する組織に存在する。
【0006】
TGF−β1は、組織修正に重大な多機能サイトカインである。高濃度のTGF−β1は、血小板顆粒により損傷の部位に送達される(Assoian and Sporn (1986) J. Cell Biol. 102:1217-1223)。TGF−β1は、白血球、単球および線維芽細胞のような細胞の化学走性などの治癒促進、ならびに組織修正および炎症応答に伴う血管形成、細胞分裂を含む成長因子およびサイトカインの調節促進などの一連の事象を開始する。TGF−β1はまた、細胞外マトリックス成分の合成を刺激し(Robertsら (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:4167-4171; Spornら (1983) Science 219:1329-1330; Massague (1987) Cell 49:437-438)、TGF−β1の病態生理学を理解するためにもっとも重要なことに、TGF−β1はそれ自体の合成を自動調節する(Kimら (1989) J. Biol. Chem. 264:7041-7045)。
【0007】
本明細書に開示の化合物はまた、他のキナーゼ活性、例えばp38キナーゼ阻害および/またはKDR(VEGFR2)キナーゼ阻害を示すことができる。そのようなキナーゼ活性を決定するアッセイは当業者に知られ、当業者はそのような活性について開示されている化合物を試験することができよう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の要約)
開示されている発明はまた、式II:
【化1】

2-(6-メチル-ピリジン-2-イル)-3-[6-アミド-キノリン-4-イル)-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール
で示される化合物およびその製薬的に許容される塩の選択に関する。
【0009】
上記化合物は、2001年5月24日付の米国特許出願U.S.S.N. 60/293,464に優先権を主張して2002年5月13日付で出願されたPCT特許出願PCT/US02/11884に一般的に開示され、特許請求されており、該出願は本明細書に引用される。上記化合物は、上記引用される出願に具体的に開示されている化合物よりも顕著に優れた毒物学プロファイルを有するものとして選択されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の詳細な記載)
「有効な量の式Iの化合物」にて使用する用語「有効な量」は例えば、TGF−ベータを阻害することができる本発明化合物の量を意味する。
用語μMはマイクロモルを意味する。
本明細書にて使用する一般的な化学用語は、それらの通常の意味を有する。
【0011】
次の略語は、合成反応式および実施例を通して使用される。
DMFはジメチルホルムアミドを意味する。
THFはテトラヒドロフランを意味する。
Msはメチルスルホニルであるメシルを意味する。
THPはテトラヒドロピランを意味する。
【0012】
本明細書に開示される化合物は、次の反応式および実施例のように製造することができる。本実施例は、化合物をどのように製造することができるかという方法を何ら限定するものと理解されるべきものではない。
【0013】
次の反応式は、式Iの化合物の製造を説明する。
反応式I
【化2】

【0014】
次の反応式は、式IIの化合物の製造を説明する。
反応式II
【化3】

【実施例】
【0015】
次の実施例はさらに、反応式IおよびIIに概略的に示されている本発明化合物の製造を説明する。
【0016】
実施例1
7−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−4−(2−ピリジン−2−イル−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル)キノリンの製造
A. 4−(2−ピリジン−2−イル−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル)−7−[2−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)エトキシ]キノリンの製造
4−(2−ピリジン−2−イル−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル)キノリン−7−オール376mg(1.146mmol)、炭酸セシウム826mg(2.54mmol)および2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン380μL(2.52mmol)をDMF5mL中120℃にて4時間加熱した。飽和塩化ナトリウムで反応を停止した後、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。反応混合物をジクロロメタン〜10%メタノール/ジクロロメタンで溶出したシリカゲルカラムにより精製し、所望の標記中間体を黄色油状物424mg(81%)として得た。
MS ES+ m/e 457.0 (M+1).
【0017】
B. 2−[4−(2−ピリジン−2−イル−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル)キノリン−7−イルオキシ]エタノールの製造
4−(2−ピリジン−2−イル−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル)−7−[2−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)エトキシ]キノリン421mg(0.92mmol)の酢酸:テトラヒドロフラン:水(4:2:1)20mL溶液を加熱した。溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルム:イソプロピル(3:1)で回収した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した。その残渣は反応式の次の工程で使用するのに十分な純度を有する(425mg、100%)。
MS ES+ m/e 373.1 (M+1).
【0018】
C. メタンスルホン酸2−[4−(2−ピリジン−2−イル−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル)キノリン−7−イルオキシ]エチルエステルの製造
2−[4−(2−ピリジン−2−イル−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル)キノリン−7−イルオキシ]エタノール293mg(0.78mmol)および塩化メタンスルホニル68μL(0.81ml)の乾燥ピリジン5mL溶液を2時間撹拌した。ピリジンを減圧留去し、残渣をクロロホルムで回収した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、所望の標記中間体を白色泡状物425mg(100%)として得た。
MS ES+ m/e 451.1 (M+1).
【0019】
D. 7−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−4−(2−ピリジン−2−イル−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル)キノリンの製造
【化4】

メタンスルホン酸2−[4−(2−ピリジン−2−イル−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル)キノリン−7−イルオキシ]エチルエステル87mg(0.19mmol)をモルホリン1mLと50℃にて4時間加熱した。モルホリンを減圧留去した後、生成物をイソプロピルアルコール:クロロホルム(1:3)で抽出した。有機層を塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、所望の標記生成物をわずかに黄色の固体83mg(100%)として得た。
MS ES+ m/e 442.0 (M+1).
【0020】
実施例2
2−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−3−[6−アミド−キノリン−4−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾールの製造
A. 6−ブロモ−4−メチル−キノリンの製造
4−ブロモ−フェニルアミン1当量の1,4−ジオキサン溶液を撹拌し、約12℃まで冷却した。硫酸2当量をゆっくり加え、加熱還流した。メチルビニルケトン1.5当量を還流溶液に滴加した。添加完了後、溶液を1時間加熱した。反応溶液を留去し、乾燥し、ジクロロメタンに溶解した。溶液を1M炭酸ナトリウムでpH8に調節し、水で3回抽出した。残渣をSiO(70/30ヘキサン/酢酸エチル)でクロマトグラフィーし、所望の標記中間体を得た。
MS ES+ m/e = 158.2 (M+1).
【0021】
B. 6−メチル−ピリジン−2−カルボン酸メチルエステルの製造
6−メチル−ピリジン−2−カルボン酸10g(72.9mmol)をジクロロメタン200mL中にて懸濁させた。0℃まで冷却した。メタノール10mL、4−ジメチルアミノピリジン11.6g(94.8mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)18.2g(94.8mmol)を加えた。混合物を室温にて6時間撹拌し、水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。混合物をろ過し、減圧濃縮した。残渣をSiO(50%酢酸エチル/ヘキサン)でクロマトグラフィーし、所望の標記中間体9.66g(92%)を無色液体として得た。
1H NMR (CDCl3) δ 7.93-7.88 (m, 1H), 7.75-7.7 (m, 1H), 7.35-7.3 (m, 1H), 4.00 (s, 3H), 2.60 (s, 3H).
【0022】
C. 2−(6−ブロモ−キノリン−4−イル)−1−(6−メチル−ピリジン−2−イル)エタノンの製造
6−ブロモ−4−メチル−キノリン38.5g(153mmol)を乾燥THF600mLに溶解した。−70℃まで冷却し、温度を−65℃以下に維持しながら、0.5Mカリウムヘキサメチルジシラザン(KN(SiMe)400mL(200mmol)で2時間にわたり滴加処理した。得られた溶液を−70℃にて1時間撹拌し、6−メチルピリジン−2−カルボン酸メチルエステル27.2(180mmol)の乾燥THF100mL溶液を15分にわたって滴加した。添加の間、混合物は暗赤色から黄緑色に変化し、沈殿物を形成するだろう。混合物を−70℃にて2時間にわたり撹拌した後、撹拌しながら常温まで5時間昇温させた。混合物を冷却した後、12N塩酸でpH=1として反応を停止した。固体炭酸カリウムでpHを9まで上げた。溶液を固体からデカンテーションし、酢酸エチル200mLで2回抽出した。有機抽出物を集め、水で洗浄し、炭酸カリウムで乾燥した。先のデカンテーションした固体を水200mLおよび酢酸エチル200mL中にて撹拌し、さらに炭酸カリウムで処理した。有機部分を分離し、先の酢酸エチル抽出物とともに乾燥した。溶液を減圧濃縮し、暗色油状物を得た。油状物をジクロロメタン、次いで酢酸エチルにより300mLシリカプラグに通した。適切なフラクションを集め、減圧濃縮し、コハク色油状物を得た。油状物をジクロロメタンでフラスコの側面からすすぎ落とした後、フラスコを回転させながらヘキサンで希釈し、所望の標記中間体38.5g(73.8%)を黄色固体として得た。
MS ES+ = 341 (M+1).
【0023】
D. 1−[2−(6−ブロモ−キノリン−4−イル)−1−(6−メチル−ピリジン−2−イル)エチリデンアミノ]ピロリジン−2−オンの製造
2−(6−ブロモ−キノリン−4−イル)−1−(6−メチル−ピリジン−2−イル)エタノン38.5g(113mmol)および1−アミノピロリジノン塩酸塩20g(147mmol)の混合物をピリジン115mL中、常温にて10時間撹拌した。4Å不活性化シーブス約50gを加えた。さらに13時間撹拌し続け、シリカ10〜15gを加え、混合物を50gシリカプラグに通してろ過した。シリカプラグを酢酸エチル3Lで溶出した。ろ液を集め、減圧濃縮した。ヒドラゾン沈殿物をろ過により集め、真空乾燥し、所望の標記中間体33.3g(69.7%)を灰白色固体として得た。
MS ES+ = 423 (M+1).
【0024】
E. 6−ブロモ−4−[2−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル]キノリンの製造
炭酸セシウム1.2当量および1−[2−(6−ブロモ−キノリン−4−イル)−1−(6−メチル−ピリジン−2−イル)エチリデンアミノ]ピロリジン−2−オン33.3g(78.7mmol)の混合物に、乾燥N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加えた。混合物を100℃にて20時間撹拌した。反応の間、混合物は暗色に変化することがある。N,N−ジメチルホルムアミドを減圧留去した。残渣を水およびジクロロメタンで分液した。水性部分をさらにジクロロメタンで抽出した。有機溶液をジクロロメタン1.5L、酢酸エチル1.5Lおよびアセトン1.5Lで溶出した300mLシリカプラグに通してろ過した。適切なフラクションを集め、減圧濃縮した。得られた沈殿物をろ過により集め、所望の標記中間体22.7g(71.2%)を灰白色固体として得た。
MS ES+ = 405 (M+1).
【0025】
F. 4−[2−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル]キノリン−6−カルボン酸メチルエステルの製造
6−ブロモ−4−[2−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル]キノリン22.7g(45mmol)を酢酸ナトリウム19g(230mmol)およびパラジウム触媒[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)のジクロロメタンとの錯体(1:1)850mg(1.04mmol)の混合物にメタノール130mL中にて加えた。混合物を50psi一酸化炭素雰囲気下に置き、90℃まで昇温しながらさらに一酸化炭素を一定量充填し、1時間にわたって撹拌した。混合物を8時間にわたって冷却し、再び一酸化炭素で再充填し、90℃まで加熱した。圧力は約75psiまで上昇させることができる。圧力が安定で、TLC(1:1トルエン/アセトン)により臭化物の消失が示された約1時間で反応は完了した。混合物をジクロロメタン600mLおよび水1Lで分液した。水性部分をジクロロメタン400mLでさらに抽出した。有機溶液を300mLシリカプラグに通してろ過し、ジクロロメタン500mL、酢酸エチル1200mLおよびアセトン1500mLで洗浄した。アセトン部分を廃棄した。適切なフラクションを集め、濃縮し、所望の標記中間体18.8g(87.4%)を桃色粉状物として得た。
MS ES+ = 385 (M+1).
【0026】
G. 2−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−3−[6−アミド−キノリン−4−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾールの製造
【化5】

4−[2−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾール−3−イル]キノリン−6−カルボン酸メチルエステルの7Nアンモニア/メタノール60mL混合物をステンレス鋼圧力容器中にて90℃まで66時間昇温させた。圧力を約80psiまで上昇させた。反応中、圧力を維持した。容器を冷却し、茶色混合物を減圧濃縮した。得られた固体を、連続して連結させた2つの12gRedi-Pakカートリッジによりアセトンで溶出して精製した。適切なフラクションを集め、減圧濃縮した。得られた白色がかった固体をジクロロメタン中にて懸濁させ、ヘキサンで希釈し、ろ過した。集めた灰白色固体より、所望の標記生成物1.104g(63.8%)を得た。
MS ES+ = 370 (M+1).
【0027】
本明細書に開示の化合物を、TGF−β阻害についての次のプロトコルにより、以下のプロトコルの記述に記載のように試験した。
【0028】
TGF−β受容体Iの精製およびインビトロキナーゼ反応
TGF−βI型(RIT204D)受容体について:
各受容体の6X−HISのタグを付した細胞質キナーゼドメインを発現し、以下に簡単に記載したように、Sf9昆虫細胞溶解物から精製した。
感染の48〜72時間後の細胞ペレットを溶解緩衝液(LB: 50 mM Tris pH 7.5, 150 mM NaCl, 50 mM NaF, 20 mM β−メルカプトエタノールを加えたばかりの0.5% NP40, 10 mM イミダゾール, 1 mM PMSF, 1X EDTA不含コンプリートプロテアーゼ阻害剤(Boehringer Mannheim))に溶解した。
細胞溶解物は、遠心分離により分離し、0.45μMろ過した後、Ni/NTAアフィニティークロマトグラフィー(Qiagen)により精製した。
【0029】
クロマトグラフィープロトコル:
10CVのLB、充填サンプルを平衡化し、RIPA緩衝液10CV(新たに20 mM β−メルカプトエタノール, 1 mM PMSFを加えた、50 mM Tris pH 7.5, 150 mM NaCl, 1% NP40, 1mM EDTA, 0.25% デオキシコール酸ナトリウム)で洗浄し、LB10CVで洗浄し、10CV 1X KB(50 mM Tris pH 7.5, 150 mM NaCl, 4 mM MgCl2, 1 mM NaF, 2 mM β−メルカプトエタノール)で洗浄し、200mMイミダゾールを含む1X KBの直線勾配で溶出した。
両酵素は約90%純度であり、自己リン酸化活性を有した。
【0030】
反応: 1X KB中170-200 nM酵素, 1X KB/16% DMSO中化合物の連続希釈物/(最終濃度4%のDMSOを用いて20 μM〜1 nMの最終濃度に希釈したもの)に、1X KB中ATP混合物(4 μM ATP/1 μCi 33P-γ-ATP最終濃度)を加えることにより、反応を開始した。
【0031】
反応物を30℃にて1時間インキュベートした。反応を停止し、Millipore FBグラスファイバーフィルタープレート上にて標準TCA/BSA沈殿を用い、MicroBeta JETでカウントした液体シンチレーションにより定量した。
【0032】
本明細書に開示の化合物は、TGF−βI型(RIT204D)受容体キナーゼドメインをIC50値<20μMで阻害する一方、上記PCT特許出願PCT/US02/11884に開示されている構造的に関連する化合物よりもインビボにて低い毒性を示す。
【0033】
「増強されたTGF−β活性により特徴付けられる」状態としては、TGF−β合成が増大されたレベルにてTGF−βが存在するように刺激される状態、またはTGF−β潜伏タンパク質(latent protein)が望ましくなく活性化され、もしくは活性なTGF−βタンパク質に変換される状態、またはTGF−β受容体が上方調節される状態、またはTGF−βタンパク質が疾患の位置における細胞もしくは細胞外マトリックスへの増強された結合を示す状態が挙げられる。従っていずれの場合においても、「増強された活性」は、その原因にかかわらず、TGF−βの生物学的活性が望ましくなく高いいずれかの状態を意味する。
【0034】
多くの疾患がTGF−β1の生産過剰と関連している。TGF−β細胞内シグナリング経路の阻害剤が線維増殖性疾患(fibroproliferative disease)の治療に有用である。具体的に線維増殖性疾患としては、糸球体腎炎(GN)、例えばメサンギウム増殖性GN、免疫性GNおよび半月体形成性GNなどの非調節TGF−β活性および過剰線維形成と関連する腎障害が挙げられる。他の腎臓状態としては、糖尿病性ネフロパシー、腎間質線維症、サイクロスポリンを受けた移植患者における腎線維症およびHIV関連ネフロパシーが挙げられる。膠原病としては、全身性進行性硬化症、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、限局性強皮症またはレイノー症候群の発生と関連する状態が挙げられる。過剰TGF−β活性に起因する肺線維症としては、全身性エリテマトーデスおよび強皮症のような自動免疫疾患、化学的接触またはアレルギーと関連することが多い成人呼吸窮迫症候群、特発性肺線維症および間質性肺線維症が挙げられる。線維増殖性特質と関連する別の自動免疫疾患は、関節リウマチである。
【0035】
線維増殖性状態を伴う眼疾患としては、網膜復位術に伴う増殖性硝子体網膜症、眼内レンズ移植を伴う水晶体摘出が挙げられ、緑内障排水手術後はTGF−β1過剰生産を伴う。
【0036】
TGF−β1過剰生産と関連する線維疾患は、腎臓、肺および肝臓の線維症のような慢性的状態ならびに真皮の瘢痕および再狭窄のようなより急性の状態に分けることができる(Chamberlain, J. Cardiovascular Drug Reviews, 19(4):329-344)。TGF−β1の腫瘍細胞による合成および分泌はまた、悪性の脳または乳房の腫瘍をもつ患者に見られるように、免疫抑制を引き起こし得る(Arteagaら (1993) J. Clin. Invest. 92:2569-2576)。マウスにおけるリーシュマニア感染症のコースは、TGF−β1により大々的に修正される(Barral-Nettoら (1992) Science 257:545-547)。TGF−β1は疾患を悪化させたが、TGF−β1抗体は遺伝的に感受性の強いマウスにおいて疾患の進行を停止した。遺伝的に抵抗力のあるマウスは、TGF−β1の投与においてリーシュマニア感染症に感染しやすくなった。
【0037】
TGF−β1の細胞外マトリックス堆積への意味深い効果が講評され(Rocco and Ziyadeh (1991) in Contemporary Issues in Nephrology v.23, Hormones, autocoids and the kidney. ed. Jay Stein, Churchill Livingston, New York pp.391-410; Robertsら (1988) Rec. Prog. Hormone Res. 44:157-197)、細胞外マトリックス成分の合成の刺激および減成の阻害を含む。糸球体の構造およびろ過の性質は、メサンギウム細胞膜および糸球体細胞膜の細胞外マトリックス構成により大部分決定されるため、TGF−β1が腎臓において意味深い効果を有することは驚くべきことではない。増殖性糸球体腎炎(Borderら (1990) Kidney Int. 37:689-695)および糖尿病性ネフロパシー(Mauerら (1984) J. Clin. Invest. 74:1143-1155)におけるメサンギウムマトリックスの蓄積は疾患の明白の、そして優性の病理学的特徴である。TGF−β1レベルは、ヒト糖尿病性糸球体硬化症(進行性神経障害)において上昇する(Yamamotoら (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. 90:1814-1818)。TGF−β1は多くの動物モデルにおける腎線維症の発生の重要な仲介物質である(Phanら (1990) Kidney Int. 37:426; Okudaら (1990) J. Clin. Invest. 86:453)。ラットにおいて実験的に誘発された糸球体腎炎の抑制は、TGF−β1に対する抗血清(Borderら (1990) Nature 346:371)および細胞外マトリックスタンパク質、デコリン(decorin)により実証されており、デコリンはTGF−β1を結合させることができる(Borderら (1992) Nature 360:361-363)。
【0038】
あまりに多いTGF−β1は、真皮瘢痕組織形成を引き起こす。ラットにおける回復期創傷縁に注入されたTGF−β1抗体の中性化は、創傷治癒の速度または傷の伸張力に干渉しないで傷を抑制することが示されている(Shahら (1992) Lancet 339:213-214)。同時に、血管形成の減少、傷中のマクロファージおよび単球の数の減少、ならびに瘢痕組織中のでたらめなコラーゲン繊維堆積量の減少があった。
【0039】
TGF−β1は、バルーン血管形成術後の動脈における平滑筋細胞の増殖および細胞外マトリックスの堆積により生じる動脈壁の進行性肥厚における因子であることができる。再狭窄した動脈の直径は、この肥厚により90%減少することがあり、直径の減少の大半は平滑筋細胞体よりもむしろ細胞外マトリックスに起因するため、広範囲の細胞外マトリックス堆積をただ減少させることにより50%までこれらの管を開かせることが可能であり得る。インビボにてTGF−β1遺伝子とトランスフェクトさせた無傷のブタ動脈において、TGF−β1遺伝子発現は、細胞外マトリックス合成および肥厚化の両方と関連した(Nabelら (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10759-10763)。TGF−β1誘発型肥厚化は、PDGF−BBにより誘発されたものほど広範囲ではないが、細胞外マトリックスはTGF−β1トランスフェクタント(transfectant)を伴い、より広範囲であった。細胞外マトリックス堆積は、この遺伝子トランスファーブタモデルにおいてFGF−1(FGFの分泌された形態)誘発型肥厚化を伴わなかった(Nabel (1993) Nature 362:844-846)。
【0040】
腫瘍により生成されたTGF−β1が有害であることがある癌のいくつかの型がある。MATLyLuラット前立腺癌細胞(Steiner and Barrack (1992) Mol. Endocrinol 6:15-25)およびMCF−7ヒト乳癌細胞(Arteagaら (1993) Cell Growth and Differ. 4:193-201)は、マウスTGF−β1を発現する媒介動物によるトランスフェクション後、より発癌性および転移性となった。TGF−β1は、ヒト前立腺および進行性胃癌における血管形成、転移および不良な予後と関連している(Wikstrom, P.ら (1998) Prostate 37: 19-29; Saito, H.ら (1999) Cancer 86: 1455-1462)。乳癌において、不良な予後は、高められたTGF−βと関連し(Dicksonら (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:837-841; Kasidら (1987) Cancer Res. 47:5733-5738; Dalyら (1990) J. Cell Biochem. 43:199-211; Barrett-Leeら (1990) Br. J Cancer 61:612-617; Kingら (1989) J. Steroid Biochem. 34:133-138; Welchら (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:7678-7682; Walkerら (1992) Eur. J. Cancer 238:641-644)、タモキシフェン治療によるTGF−β1の誘発(Buttaら (1992) Cancer Res. 52:4261- 4264)は乳癌のタモキシフェン治療の失敗と関連している(Thompsonら (1991) Br. J. Cancer 63:609-614)。抗TGF−β1抗体は、胸腺欠損マウスにおけるMDA−231ヒト乳癌細胞の成長を阻害し(Arteagaら (1993) J. Clin. Invest. 92:2569-2576)、これは脾臓ナチュラルキラー細胞活性の増大に相互に関連がある治療である。潜伏TGF−β1によりトランスフェクトされたCHO細胞はまた、ヌードマウスにおいて軽減されたNK活性および増大された腫瘍成長を示した(Wallickら (1990) J. Exp. Med. 172:1777-1784)。従って、乳房の腫瘍により分泌されたTGF−βは、エンドクリン免疫抑制の原因となることがある。高血漿濃度のTGF−β1は、進行性乳癌患者について不良な予後を示すことが示されている(Anscherら (1993) N. Engl. J. Med. 328:1592-1598)。高用量の化学療法および自家骨髄移植前に高循環のTGF−βを有する患者は、肝内性肝静脈閉塞症(50%までの死亡率を有するすべての患者の15〜50%)および特発性間質性肺炎(すべての患者の40〜60%)の危険性が高い。これらの研究結果から推測されることは、1)TGF−β1の高められた血漿レベルは、危険な状態にある患者を認識するために使用することができ、そして2)TGF−β1の減少は、乳癌患者に対するこれらの一般的治療の死亡症例を軽減することができることである。
【0041】
多くの悪性細胞は、形質転換成長因子−β(TGF−β)、潜在的免疫抑制剤を分泌し、これはTGF−βの生成が、ホスト免疫学的監視からの有意の腫瘍回避機序を示すことができることを示唆する。腫瘍を有するホストにおいて分裂したTGF−βシグナリングを有する白血球亜母集団の構築は、癌の免疫療法について潜在的意義を提供する。T細胞において分裂したTGF−βシグナリングを有するトランスジェニック動物モデルは、リンパ腫腫瘍、EL4を過剰発現する、通常は致命的なTGF−βを全滅させることができる(Gorelik and Flavell, (2001) Nature Medicine 7(10): 1118-1122)。腫瘍細胞におけるTGF−β分泌のダウン・レギュレーションは、ホストにおける免疫原性の復元を生じる一方、TGF−βに対するT細胞の無感覚は、増進された分化および自己免疫を生じ、これらの要素は寛容化されたホストにおいて自己抗原発現腫瘍に有効であるために必要であることがある。TGF−βの免疫抑制効果はまた、HIV患者のCD4/CD8T細胞数に基づいて予測された免疫応答よりも低い免疫応答を有する患者の亜母集団に関わっている(Garbaら J. Immunology (2002) 168: 2247-2254)。TGF−β中性化抗体は、培養の効果を逆転させることができ、これはTGF−βシグナリング阻害剤が、このHIV患者の小集団に存在する免疫抑制を逆転する有用性を有することができることを示唆する。
【0042】
TGF−β1は、発癌の初期段階の間、潜在的腫瘍抑制剤として作用することができ、いくつかの化学抗癌剤の作用を仲介することがある。しかし、悪性新生物の進行および発達の間のいくつかの点にて、腫瘍細胞は、微環境における生物活性のTGF−βの出現と同時に、TGF−β依存成長阻害を回避するようである。TGF−βの腫瘍抑制/腫瘍促進の二つの役割は、ケラチノサイトにおいてTGF−βを過剰発現するトランスジェニック系においてほとんど明瞭に解明されている。トランスジェニックは良性の皮膚損傷の形成に、より抵抗力がある一方、トランスジェニックにおける転移変換の速度は劇的に増大した(Cuiら (1996) Cell 86(4):531-42)。原発腫瘍における悪性細胞によるTGF−β1の生成は、腫瘍発達の進展段階を伴って増大するようである。多くの主要な上皮癌における研究は、ヒト癌により増大したTGF−βの生成が腫瘍発達の間の比較的末期の事象として起こることを示唆する。さらにこの腫瘍関連性TGF−βは、選択的利点を有する腫瘍細胞を提供し、腫瘍発達を促進する。細胞/細胞および細胞/ストロマ相互作用へのTGF−βの効果は、侵入および転移についてのより大きな傾向を生じる。腫瘍関連性TGF−βは、活性化されたリンパ球のクローン性増殖の潜在的阻害剤であるため、腫瘍細胞を免疫監視から回避させることができる。TGF−βはまた、アンギオスタチンの生成を阻害することが示されている。放射性治療および化学療法のような癌治療様式は、腫瘍において活性化されるTGF−βの生成を誘発し、その結果、TGF−β成長阻害効果に抵抗力のある悪性細胞の副産物(outgrowth)が選択される。従ってこれらの抗癌治療は、危険性を増大し、促進された成長および侵襲性を有する腫瘍の発展を早める。この状況において、TGF−β仲介シグナル伝達を標的とする物質が、非常に有効な治療方針であることができる。TGF−βに対する腫瘍細胞の抵抗性は、放射性療法および化学療法の細胞毒性効果のほとんどをなくすことが示されており、ストロマにおけるTGF−βの治療依存性活性化は、腫瘍発達をより導く微環境を作ることができるように有害であり得、線維症を引き起こす組織損傷の原因となる。TGF−βシグナル伝達阻害剤の発展は、進行した癌の治療のみおよび他の治療との併用に有益であるようである。
【0043】
本化合物は、治療を必要とする患者への該化合物の投与により、そのような患者におけるTGF−βを阻害することによる、TGF−βに影響される癌および他の疾患状態の治療に有用である。TGF−βはまた、アテローム性動脈硬化症(T.A. McCaffrey: TGF-βs and TGF-β Receptors in Atherosclerosis: Cytokine and Growth Factor Reviews 2000, 11, 103-114)およびアルツハイマー病(Masliah, E.; Ho, G.; Wyss-Coray, T.: Functional Role of TGF-β in Alzheimer's Disease Microvascular Injury: Lessons from Transgenic Mice: Neurochemistry International 2001, 39, 393-400)に対して有用であろう。
【0044】
医薬組成物
本発明の組成物は、治療的に有効な量の上記TGF−βアンタゴニストである。組成物は、一般的な賦形剤、希釈剤もしくは担体とともに製剤化され、そして錠剤中に圧縮され、または便利な経口投与もしくは筋肉内静脈内経路による投与のためのエリキシル剤もしくは溶液剤に製剤化することができる。本化合物は、経皮投与することができ、持続放出投与形態などとして製剤化することがある。
【0045】
本発明によりヒト患者を治療する方法としては、TGF−βアンタゴニストの投与が挙げられる。TGF−βアンタゴニストは、経口および直腸経路により、局所的、非経口的、例えば注入によりおよび連続的または非連続的動脈内注入により、例えば錠剤、ロゼンジ、舌下錠、サシェ、カシェ、エリキシル剤、ゲル、懸濁剤、エアロゾル、例えば適切な基剤中1〜10重量%の活性化合物を含む軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、坐剤、生理的に許容される媒体中の注射用溶液剤および懸濁剤、ならびに注射用溶液を製造するための担持物質上に吸着された無菌パックされた散剤の形態にて、投与することができる製剤に製剤化される。この目的のために有利に、組成物は単位投与形態、好ましくは約5〜約500mg(非経口または吸入投与の場合には約5〜50mg、および経口または直腸投与の場合には約25〜500mg)の化合物を含む各単位用量にて提供することができる。もちろん実際に投与される化合物の量が、治療される状態、投与される化合物の選択および投与経路の選択などのすべての関連する環境に鑑みて、医師により決定されるだろうことは容易に理解されるが、約0.5〜約300mg/kg/日、好ましくは0.5〜20mg/kgの用量の活性成分を投与することができ、それゆえ上記好ましい投与範囲は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0046】
TGF−βアンタゴニストの別々の投与に有用な製剤は通常、担体と混合され、あるいは担体により希釈され、あるいはカプセル、サシェ、カシェ、ペーパーもしくは他の容器の形態にて摂取用担体により、またはアンプルのような使い捨て容器により、封入または被包された、本明細書に具体的に記載されている化合物から選択される少なくとも一つの化合物を含むであろう。担体または希釈剤は、活性な治療物質のためのビヒクル、賦形剤または媒体として機能しうる固体、半固体または液体物質であることができる。本発明の医薬組成物に用いることができる希釈剤または担体のいくつかの例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、流動パラフィン、白色軟パラフィン、カオリン、ヒュームド二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、ケイ酸カルシウム、シリカ、ポリビニルピロリドン、セトステアリルアルコール、デンプン、加工デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、ココアバター、エトキシル化エステル、カカオ脂、ラッカセイ油、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、乳酸エチル、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピル、三オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンおよびオレイルアルコール、ならびにトリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタンおよびジクロロテトラフルオロエタンのようなプロペラントである。錠剤の場合、錠剤成形機の金型および杵上の粉末化された成分の固着および結合を阻止するために、滑沢剤を組み込むことができる。そのような目的のために、例えばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、タルクまたは鉱油を用いることができる。
【0047】
本発明の好ましい医薬形態は、カプセル、錠剤、坐剤、注射用溶液剤、クリームおよび軟膏である。特に好ましくは、エアロゾルのような吸入用、注射用および経口用の製剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II:
【化1】

式II
で示される化合物およびその製薬的に許容される塩。
【請求項2】
2−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−3−[6−アミド−キノリン−4−イル)−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[1,2−b]ピラゾールである化合物およびその製薬的に許容される塩。
【請求項3】
請求項1記載の化合物またはその製薬的に許容される塩、エステルもしくはプロドラッグを、製薬的に許容される希釈剤または担体とともに含む医薬製剤。
【請求項4】
癌を治療する方法であって、その治療を必要とする患者に、治療的に有効な量の請求項1記載の化合物またはその製薬的に許容される塩、エステルもしくはプロドラッグを投与する方法。

【公表番号】特表2006−514012(P2006−514012A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555329(P2004−555329)
【出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/032747
【国際公開番号】WO2004/048382
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(590005922)イーライ・リリー・アンド・カンパニー (15)
【氏名又は名称原語表記】ELI LILLY AND COMPANY
【Fターム(参考)】