説明

キノリンカルバルデヒド類の製造方法

アミノベンゾフェノン類(I)とβ−ケトアルデヒド誘導体(II)を、酸の存在下に反応させてキノリンカルバルデヒド誘導体(III)を得、次いで、該キノリンカルバルデヒド誘導体を加水分解することからなるキノリンカルバルデヒド類(IV)の新規製造方法、および、金属アルコキシド化合物(V)とジオール誘導体化合物(VI)を酸の存在下に反応させることからなる、新規なβ−ケトアルデヒド誘導体(II−1)を製造する方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、キノリンカルバルデヒド類の製造方法、およびその製造方法における新規な原料ないし中間体であるβ−ケトアルデヒド誘導体とキノリンカルバルデヒド誘導体、さらには、該新規なβ−ケトアルデヒド誘導体の製造方法に関する。本発明により得られるキノリンカルバルデヒド類は医薬・農薬などの合成中間体、例えばコレステロール生合成の律速酵素であるHMG−CoA還元酵素の阻害剤として知られるキノリン系メバロラクトン誘導体の合成中間体として有用である。
【背景技術】
従来、キノリンカルバルデヒド類、例えば2−シクロプロピル−4−(4’−フルオロフェニル)キノリン−3−カルバルデヒドの製造方法としては、(1)相当するキノリンカルボン酸エステルをジイソブチルアルミニウムヒドリドなどの金属水素化物を用いて還元して対応するキノリンカルビノール、すなわち4−(4’−フルオロフェニル)−2−シクロプロピル−3−ヒドロキシメチルキノリンを得、次いで該化合物を、ピリジニウムクロロクロメート、オキザリルクロリド/ジメチルスルホキシド/第3級アミン(Swern酸化)、三酸化硫黄ピリジン錯体などの酸化剤を用いて酸化する方法(例えば、特開平01−279866号公報、特開平06−329540号公報参照)、(2)4−(4’−フルオロフェニル)−2−シクロプロピル−3−ヒドロキシメチルキノリンを、ジクロロメタンなどの溶媒中で、ニトロキシルラジカル誘導体の存在下に次亜ハロゲン酸塩を用いて酸化する方法(例えば、特開平08−27114号公報参照)が知られている。
しかし、上記の方法(1)および方法(2)はいずれも、キノリンカルバルデヒド類を製造するに際して、対応するキノリンカルビノールを原料として用い、アルコール部分をアルデヒドに酸化する方法であり、このキノリンカルビノールは、相当するキノリンカルボン酸エステルを還元して得る必要があることから、工程が煩雑である。また、方法(1)は、酸化剤としてピリジニウムクロロクロメートを用いる場合、環境上有害なクロムイオンを含有する廃液処理の問題があり、Swern酸化反応や三酸化硫黄ピリジン錯体を用いる酸化反応においては臭気の甚だしいジメチルスルフィドが副生するという問題点を有している。また、方法(2)は、通常、溶媒としてジクロロメタンなどの環境上有害なハロゲン化炭化水素を用いる必要があるなどの問題を有している。
したがって、これらの方法はいずれもキノリンカルバルデヒド類の工業的に有利な製造方法とは言い難く、短い工程で、効率よく工業的に有利に製造し得る方法が求められている。
また、本明細書において述べる新たな発明のキノリンカルバルデヒド類の製造方法における原料化合物の1つであるβ−ケトアルデヒド誘導体として、例えば3−シクロプロピル−1,1−ジエトキシ−3−オキソプロパンが知られており、該化合物は、ナトリウムホルミルシクロプロピルメチルケトンを、硫酸存在下にエタノールと反応させることによって製造される(ウクラインスキー・キミシェスキー・ジャーナル(Ukr.Khim.Zh.)第42頁、第4号、第407頁(1976年)参照)。
しかし、該化合物は安定性が低く、例えば塩基性条件下ではエトキシ基がベータ脱離、エノール化し、また酸性条件下ではアセタール部位が容易に加水分解しやすいという問題があるため、この化合物を原料として使用する場合には、分解が生じ、目的化合物の収率が低下するなどの問題点があった。そのため、酸性条件下でも安定なβ−ケトアルデヒド誘導体が求められていた。
【発明の開示】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、キノリンカルバルデヒド類を従来法に比較して短工程で、簡便で、工業的に有利に製造し得る方法を見出し、また、該製造方法における原料化合物として有用なβ−ケトアルデヒド誘導体を見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
(1)一般式(I)

[式中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、またはR10N−(RおよびR10はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)を表す。また、RとRは一緒になって−CH=CH−CH=CH−を表してもよい。]
で示されるアミノベンゾフェノン類[以下、これをアミノベンゾフェノン類(I)と略記する]と一般式(II)

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表し、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基もしくは置換基を有していてもよいアラルキル基、または一緒になって、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基もしくはアラルキレン基を表し、XおよびYは同一または異なって酸素原子または硫黄原子を表す。)
で示されるβ−ケトアルデヒド誘導体[以下、これをβ−ケトアルデヒド誘導体(II)と略記する]を酸の存在下に反応させることにより一般式(III)

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、XおよびYは上記定義のとおりである。)
で示されるキノリンカルバルデヒド誘導体[以下、これをキノリンカルバルデヒド誘導体(III)と略記する]を得、次いで該キノリンカルバルデヒド誘導体(III)を加水分解することを特徴とする一般式(IV)

(式中、R、R、R、R、RおよびRは上記定義のとおりである。)
で示されるキノリンカルバルデヒド類[以下、これをキノリンカルバルデヒド類(IV)と略記する]の製造方法。
(2)アミノベンゾフェノン類(I)とβ−ケトアルデヒド誘導体(II)を酸の存在下に反応させることを特徴とするキノリンカルバルデヒド誘導体(III)の製造方法。
(3)キノリンカルバルデヒド誘導体(III)を加水分解することを特徴とするキノリンカルバルデヒド類(IV)の製造方法。
(4)各一般式中、R、R、RおよびRが水素原子であり、Rがハロゲン原子であり、Rが炭素数1〜6のアルキル基であり、RおよびRが一緒になってアルキレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である(1)に記載のキノリンカルバルデヒド類(IV)の製造方法。
(5)各一般式中、R、R、RおよびRが水素原子であり、Rがフッ素原子であり、Rがシクロプロピル基であり、RおよびRが一緒になってエチレン基、トリメチレン基、2−メチルトリメチレン基または2,2−ジメチルトリメチレン基のいずれかの基であり、XおよびYがともに酸素原子である(4)に記載のキノリンカルバルデヒド類(IV)の製造方法。
(6)上記製造方法における中間体であるキノリンカルバルデヒド誘導体(III)。
(7)R、R、RおよびRが水素原子であり、Rがハロゲン原子であり、Rが炭素数1〜6のアルキル基であり、RおよびRが一緒になってアルキレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である(6)に記載のキノリンカルバルデヒド誘導体(III)。
(8)R、R、RおよびRが水素原子であり、Rがフッ素原子であり、Rがシクロプロピル基であり、RおよびRが一緒になってエチレン基、トリメチレン基、2−メチルトリメチレン基または2,2−ジメチルトリメチレン基のいずれかの基であり、XおよびYがともに酸素原子である(7)に記載のキノリンカルバルデヒド誘導体(III)。
(9)一般式(II−1)

(式中、R11は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R12は置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基もしくはアラルキレン基を表し、XおよびYは同一または異なってそれぞれ酸素原子または硫黄原子を表す。)
で示されるβ−ケトアルデヒド誘導体[以下、これをβ−ケトアルデヒド誘導体(II−1)と略記する]。
(10)R12が置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である(9)に記載のβ−ケトアルデヒド誘導体(II−1)。
(11)R11が置換基を有していてもよい環状のアルキル基であり、R12がエチレン基、トリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、または2,2−ジメチルトリメチレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である(10)に記載のβ−ケトアルデヒド誘導体(II−1)。
(12)R11が置換基を有していてもよい環状のアルキル基であり、R12がエチレン基であり、XおよびYがそれぞれ酸素原子および硫黄原子である(9)に記載のβ−ケトアルデヒド誘導体(II−1)。
(13)一般式(V)

(式中、R11は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Mはアルカリ金属を表す。)
で示される金属アルコキシド化合物[以下、これを金属アルコキシド化合物(V)と略記する]と、一般式(VI)

(式中、R12は置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基もしくはアラルキレン基を表し、XおよびYは同一または異なってそれぞれ酸素原子または硫黄原子を表す。)
で示される化合物[以下、これを化合物(VI)と略記する]を酸の存在下に反応させることを特徴とするβ−ケトアルデヒド誘導体(II−1)の製造方法。
(14)R11が置換基を有していてもよい環状のアルキル基であり、R12が炭素数2〜6のアルキレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である(13)に記載の製造方法。
(15)R11が置換基を有していてもよい環状のアルキル基であり、R12がエチレン基、トリメチレン基、2−メチルトリメチレン基または2,2−ジメチルトリメチレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である(14)に記載の製造方法。
(16)R11が置換基を有していてもよい環状のアルキル基であり、R12がエチレン基であり、XおよびYがそれぞれ酸素原子および硫黄原子である(13)に記載の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
(化合物)
上記各一般式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11がそれぞれ表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでもよい。好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などが、また好ましくは炭素数3〜6の環状アルキル基、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば水酸基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの好ましくは炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。また、シクロアルキル基の場合、さらに、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などの好ましくは炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基で置換されていてもよい。
、R、R、R、RおよびRがそれぞれ表すアリール基としては、好ましくは炭素数6〜10のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。R、R、R、R、R、RおよびRがそれぞれ表すアラルキル基としては、アルキル部分として好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を有し、アリール部分としては炭素数6〜10のアリール基を有するアラルキル基、例えばベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。これらのアリール基およびアラルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば水酸基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの好ましくは炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの好ましくは炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
、R、R、RおよびRがそれぞれ表すアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシ基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば水酸基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの好ましくは炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
、R、R、RおよびRがそれぞれ表すアリールオキシ基としては、アリール部分として好ましくは炭素数6〜10のアリール基を有するアリールオキシ基、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。これらのアリールオキシ基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば水酸基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの好ましくは炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの好ましくは炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
、R、R、RおよびRがそれぞれ表すハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、これらの中でもフッ素原子が好ましい。
、R、R、RおよびRがそれぞれ表す保護されていてもよい水酸基における水酸基の保護基としては、水酸基を保護する目的のために通常用いられる保護基であれば特に制限はなく、例えばベンジル基などのアラルキル基;トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などの三置換シリル基;メトキシメチル基、1−エトキシエチル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基などのエーテル型保護基などが挙げられる。
およびRがそれぞれ表すアシル基としては、例えばアセチル基などの好ましくはアルキル部分として炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアルキルカルボニル基;ベンゾイル基などの好ましくはアリール部分として炭素数6〜10のアリール基を有するアリールカルボニル基などが挙げられる。これらのアシル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば水酸基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの好ましくは炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの好ましくは炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基などが挙げられる。
およびRが一緒になって表すアルキレン基、およびR12が表すアルキレン基としては、好ましくは炭素数2〜6の直鎖状または分岐状のアルキレン基、例えばエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、2−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基などが挙げられる。なかでも、エチレン基、トリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基が特に好ましい。これらのアルキレン基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの好ましくは炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
およびRが一緒になって表すアリーレン基、およびR12が表すアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基、例えばo−フェニレン基、2,3−ナフタレンジイル基などが挙げられる。これらのアリーレン基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの好ましくは炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの置換基を有していてもよい好ましくは炭素数6〜10のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
Mで表されるアルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
およびRが一緒になって表すアラルキレン基、およびR12が表すアラルキレン基としては、アルキレン部分に好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基を有し、アリーレン部分に好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基を有するアラルキレン基、例えば、1,2−ベンゾ−2−ブテン基、2,3−ナフト−2−ブテン基などが挙げられる。
アミノベンゾフェノン類(I)として、好ましくはR、R、RおよびRが水素原子であり、Rがハロゲン原子である化合物が挙げられる。
アミノベンゾフェノン類(I)として、より好ましくはR、R、RおよびRが水素原子であり、Rがフッ素原子である化合物が挙げられる。
β−ケトアルデヒド誘導体(II)として、好ましくはRが炭素数1〜6のアルキル基であり、XおよびYがともに酸素原子であり、RおよびRが一緒になってアルキレン基である化合物が挙げられる。
β−ケトアルデヒド誘導体(II)のうち、特に好ましいものは、Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RおよびRが一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基もしくはアラルキレン基を形成する化合物[以下、これをβ−ケトアルデヒド誘導体(II−1)と略記する]である。
さらに、β−ケトアルデヒド誘導体(II−1)として、特に好ましいものは、R11が置換基を有していてもよいシクロアルキル基、R12がエチレン基、トリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、または2,2−ジメチルトリメチレン基のいずれかの基、XおよびYがともに酸素原子であるか、それぞれ酸素原子および硫黄原子である化合物であり、例えば2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキサン、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−5−メチル−1,3−ジオキサン、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキソラン、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−4−メチル−1,3−ジオキソラン、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1−オキサ−3−チオラン、2−アセトニル−5−メチル−1,3−ジオキサン、2−アセトニル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、2−(2−シクロヘキシル−2−オキソ−エチル)−5−メチル−1,3−ジオキサン、2−(2−シクロヘキシル−2−オキソ−エチル)−4−メチル−1,3−ジオキソランなどが挙げられる。
本発明に係る新規なβ−ケトアルデヒド誘導体(II−1)、および新規な中間体であるキノリンカルバルデヒド誘導体(III)は、コレステロール生合成の律速酵素であるHMG−CoA還元酵素の阻害剤として知られるキノリン系メバロラクトン誘導体などの合成中間体として有用なキノリンカルボアルデヒド誘導体を工業的に有利に製造する本発明の製造方法における原料ないし中間体として有用であるばかりでなく、各種の医薬・農薬の合成中間体として広く利用することができる。
(製造方法)
工程1 アミノベンゾフェノン類(I)とβ−ケトアルデヒド誘導体(II)を酸の存在下に反応させることによりキノリンカルバルデヒド誘導体(III)を得る工程:
工程1は、溶媒の不存在下または存在下に行うことができる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド;ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;ブタノール、エチレングリコール、2−メチルプロパンジオールなどのアルコールなどが挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量は特に制限されないが、生産性および経済性などの観点から、アミノベンゾフェノン類(I)に対して2〜20質量倍の範囲であるのが好ましい。
工程1において使用する酸としては、例えばp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などのスルホン酸;トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸などのカルボン酸;硫酸、塩酸などの鉱酸;塩化亜鉛、塩化チタンなどのルイス酸などが挙げられる。これらの中でも、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などのスルホン酸を用いるのが好ましい。酸の使用量は特に制限されないが、通常、アミノベンゾフェノン類(I)1モルに対して、0.01〜2モルの範囲であるのが好ましく、経済性および選択率向上の観点から、0.05〜1.2モルの範囲であるのがより好ましい。また、これらの酸とアミノベンゾフェノン類(I)の塩を工程1における酸として用いることもできる。
β−ケトアルデヒド誘導体(II)の使用量は、アミノベンゾフェノン類(I)1モルに対して、通常、0.8モル以上であるのが好ましく、経済性の観点から、0.8〜2モルの範囲であるのが好ましく、1〜1.5モルの範囲であるのが特に好ましい。
工程1の温度は、50〜120℃の範囲であるのが好ましく、60〜90℃の範囲であるのがより好ましい。
工程1では、反応に伴い水が副生する。工程1はかかる水を反応系外に除去しながら行ってもよく、例えば、減圧下で水を留去させながら反応を行う方法;水と共沸する溶媒を共存させて共沸蒸留により水を留去させながら反応を行う方法;モレキュラーシーブス、硫酸マグネシウムなどの脱水剤の存在下に反応を行う方法などを挙げることができる。
工程1は、例えば、アミノベンゾフェノン類(I)、β−ケトアルデヒド誘導体(II)、酸および必要に応じて溶媒を混合し、所定温度で攪拌することにより行うことができる。
工程1により得られた反応混合物は、そのまま以下に述べる次工程に供することもできる。また、該反応混合液に水;炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を加えて有機層と水層を分液した後、有機層を濃縮し、得られる残留物を必要に応じて再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどにより精製した後、以下に述べる工程2に用いてもよい。
なお、工程1における一方の原料であるβ−ケトアルデヒド誘導体(II)の好適な一態様であるβ−ケトアルデヒド誘導体(II−1)は金属アルコキシド化合物(V)と化合物(VI)を、酸の存在下に反応させることにより製造することができる。
本反応の原料である金属アルコキシド化合物(V)としては、例えばナトリウムホルミルシクロプロピルメチルケトンなどが挙げられ、また、他方の原料の化合物(VI)としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、(1,2−、1,3−または2,3−)ブタンジオール、2−メルカプトエタノールなどが挙げられる。
反応は、化合物(VI)を金属アルコキシド化合物(V)に対して、過剰に、例えば、1.5〜4モル倍程度使用して行うのが好ましい。
また、本工程において使用する酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、燐酸、過塩素酸などの鉱酸;酢酸、プロピオン酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、シュウ酸、グリコール酸またはその水和物もしくはその塩などの有機酸;三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、塩化チタンなどのルイス酸などが挙げられる。これらの酸は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。酸の使用量は、使用する金属アルコキシド化合物(V)に対して1当量以上あればよく、反応速度、経済性の観点から、通常、1.2〜5当量の範囲であるのが好ましい。
反応は有機溶媒の存在下に行うことができる。有機溶媒の種類は反応に影響を及ぼさない限り特に制限はないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド、またはこれらの混合溶媒を用いてもよい。これらの有機溶媒の使用量は特に制限されないが、経済的な観点から使用する金属アルコキシド化合物(V)に対して100質量倍以下の範囲であるのが好ましい。
反応温度は、使用する酸の種類、溶媒の種類などにより異なるが、通常、0〜120℃の範囲であるのが好ましい。反応時間は、反応温度によっても異なるが、通常、1〜10時間の範囲である。
β−ケトアルデヒド誘導体(II)としては、例えば2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキサン、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−5−メチル−1,3−ジオキサン、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキソラン、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1−オキサ−3−チオランなどが挙げられる。
工程2 キノリンカルバルデヒド誘導体(III)を加水分解することによりキノリンカルバルデヒド類(IV)を得る工程:
工程2は、好ましくは、酸の共存下で加水分解させる方法により行う。酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、過塩素酸などの鉱酸;酢酸、プロピオン酸、ギ酸、シュウ酸、グリコール酸などのカルボン酸;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などのスルホン酸またはそれらの水和物もしくはそれらの塩;三フッ化ホウ素、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。酸の使用量は特に制限されないが、通常、キノリンカルバルデヒド誘導体(III)1モルに対して0.01〜5モルの範囲であるのが好ましく、1〜5モルの範囲であるのがより好ましい。
工程2において、水の使用量は特に制限されないが、通常、キノリンカルバルデヒド誘導体(III)1モルに対して1モル以上であるのが好ましく、生産性および経済性などの観点から、1〜200モルの範囲であるのがより好ましい。
工程2においては、反応を促進させるため、反応系中にケトンをさらに共存させてもよい。使用できるケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。ケトンを共存させる場合、その使用量は特に制限されないが、キノリンカルバルデヒド誘導体(III)1モルに対して、0.01〜200モルの範囲であるのが好ましく、1〜10モルの範囲であるのがより好ましい。
工程2は、溶媒の不存在下または存在下に行うことができる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド;ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量は特に制限されないが、経済的な観点から、キノリンカルバルデヒド誘導体(III)に対して、100質量倍以下であるのが好ましい。これらの溶媒のうち、水と層分離するものは二層系で反応を行ってもよい。
工程2の温度は、使用する酸の種類、溶媒の種類などにより異なるが、通常、0〜120℃の範囲であるのが好ましい。反応時間は、反応温度によっても異なるが、通常、1〜60時間の範囲である。
工程2は、例えば、キノリンカルバルデヒド誘導体(III)、水、酸、必要に応じて溶媒およびケトンを混合し、所定温度で攪拌することにより行うことができる。
このようにして得られたキノリンカルバルデヒド類(IV)の反応混合物からの単離・精製は、有機化合物の単離・精製において一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、反応混合物に、水;炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を加えて有機層と水層を分液した後、該有機層を濃縮し、得られる残留物を必要に応じて再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどにより精製する。
本発明において原料として使用する金属アルコキシド化合物(V)、例えばナトリウムホルミルシクロプロピルメチルケトンは特開昭49−124073号公報に記載の方法に従い合成することができる。
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【実施例1】
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計および滴下ロートを備えた内容量200mlの4つ口フラスコに、1,3−プロパンジオール31.8g(417mmol)および硫酸31.28g(312mmol)を加え、次いで、ナトリウムホルミルシクロプロピルメチルケトン27.96g(208.5mmol)をメタノール20gに溶解させた溶液を、攪拌下、内温25℃にて1時間かけて滴下した。滴下終了後、内温を60℃に昇温してさらに1時間攪拌した後、得られた反応混合液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40gに加え、有機層と水層を分液した。得られた有機層をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキサンが27.0g含まれていた(収率76%)。この有機層を濃縮した後、残留物を50Paにて蒸留し、82〜83℃の留分として2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキサン26.22gを得た。
2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキサン
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS,ppm) δ:0.82−0.89(m,2H)、0.99−1.04(m,2H)、1.88−1.95(m,1H)、1.96−2.12(m,1H)、2.80(dd,J=1.4Hz,5.0Hz,2H)、3.78(t,J=12.0Hz,2H)、4.06(dd,J=5.0Hz,J=12.0Hz,2H)、4.97(t,J=5.0Hz,1H)
【実施例2】
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計および滴下ロートを備えた内容量100mlの4つ口フラスコに、2−メチル−1,3−プロパンジオール26.86g(298mmol)および硫酸8.2g(82mmol)を加え、次いで、ナトリウムホルミルシクロプロピルメチルケトン10g(74.6mmol)をメタノール20gに溶解させた溶液を、攪拌下、内温25℃にて1時間かけて滴下した。滴下終了後、内温を60℃に昇温してさらに1時間攪拌した後、得られた反応混合液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40gに加え、有機層と水層を分液した。得られた有機層をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−5−メチル−1,3−ジオキサンが9.92g含まれていた(収率72%)。この有機層を濃縮した後、残留物を50Paにて蒸留し、91〜92℃の留分として2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−5−メチル−1,3−ジオキサン9.11gを得た。
トランス−2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−5−メチル−1,3−ジオキサン
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS,ppm) δ:0.70(d,J=6.6Hz,3H)、0.86−0.92(m,2H)、1.04−1.09(m,2H)、1.95−2.00(m,1H)、2.86(d,J=4.4Hz,2H)、3.26(t,J=11.6Hz,2H)、4.03(dd,J=11.8Hz,4.7Hz,2H)、4.92(t,J=5.2Hz,1H)
シス−2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−5−メチル−1,3−ジオキサン
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS,ppm) δ:0.86−0.92(m,2H)、1.04−1.09(m,2H)、1.28(d,J=6.6Hz,3H)、2.00−2.15(m,1H)、2.86(d,J=4.4Hz,2H)、3.79(d,J=11.4Hz,1H)、3.96(d,J=11.4Hz,2H)、4.99(t,J=5.2Hz,1H)
【実施例3】
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計および滴下ロートを備えた内容量100mlの4つ口フラスコに、エチレングリコール17.88g(298mmol)および硫酸8.2g(82mmol、1.1モル倍)を加え、次いで、ナトリウムホルミルシクロプロピルメチルケトン10g(74.6mmol)をメタノール20gに溶解させた溶液を、撹拌下、内温25℃にて1時間かけて滴下した。滴下終了後、内温を60℃に昇温してさらに1時間攪拌した後、得られた反応混合液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40gに加え、有機層と水層を分液した。得られた有機層をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキソランが8.77g含まれていた(収率75%)。この有機層を濃縮した後、残留物を50Paにて蒸留し、93〜96℃の留分として2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキソラン8.24gを得た。
2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキソラン
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS,ppm) δ:0.88−0.94(m,2H)、1.03−1.13(m,2H)、1.96−2.04(m,1H)、2.92(d,J=5.0Hz,2H)、3.81−4.00(m,4H)、5.28(t,J=5.0Hz,1H)
【実施例4】
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計および滴下ロートを備えた内容量200mlの4つ口フラスコに、プロピレングリコール31.8g(417mmol、2モル倍)および硫酸31.28g(312mmol、1.5モル倍)を加え、次いで、ナトリウムホルミルシクロプロピルメチルケトン27.96g(208.5mmol)をメタノール20gに溶解させた溶液を、撹拌下、内温25℃にて1時間かけて滴下した。滴下終了後、内温を60℃に昇温してさらに1時間攪拌した後、得られた反応混合液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40gに加え、有機層と水層を分液した。得られた有機層をガスクロマトグラフィーにて分析したところ2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキサンが27.0g含まれていた(収率76%)。この有機層を濃縮した後、残留物を50Paにて蒸留し、82〜83℃の留分として2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキサン26.22gを得た。
2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキサン
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS,ppm) δ:0.82−0.89(m,2H)、0.99−1.04(m,2H)、1.88−1.95(m,1H)、1.96−2.12(m,1H)、2.80(dd,J=1.4Hz,J=5Hz,2H)、3.78(t,J=12Hz,2H)、4.06(dd,J=5Hz,J=12Hz,2H)、4.97(t,J=5.0Hz,1H)
【実施例5】
窒素雰囲気下、攪拌機、温度計および滴下ロートを備えた内容量300mlの4つ口フラスコに、メルカプトエタノール46.8g(400mmol、2モル倍)および硫酸30.0g(300mmol、1.5モル倍)を加え、次いで、ナトリウムホルミルシクロプロピルメチルケトン26.8g(200mmol)をメタノール60gに溶解させた溶液を、撹拌下、内温25℃にて1時間かけて滴下した。滴下終了後、内温を60℃に昇温してさらに1時間攪拌した後、得られた反応混合液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40gに加え、得られた混合液に塩化メチルを加え有機層と水層を分液した。得られた水層をさらに塩化メチレンにて3回抽出し、これを先の有機層と合わせて濃縮した後、残留物を50Paにて蒸留し、99℃の留分として2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1−オキサ−3−チオラン8.96g(収率28%)を得た。
2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1−オキサ−3−チオラン
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS,ppm) δ:0.88−0.96(m,2H)、1.06−1.10(m,2H)、1.93−2.00(m,1H)、2.96−3.06(m,4H)、2.26(dd,J=6.0Hz,J=17Hz,1H)、3.72−3.89(m,2H)、4.30−4.37(m,1H),5.43(t,J=9.0Hz,1H)
【実施例6】
(a)ディーン・スターク受器を備えた内容量200mlのフラスコに、2−アミノ−4’−フルオロベンゾフェノン2.15g(10mmol)、実施例1で得られた2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−1,3−ジオキサン1.56g(12mmol)、メタンスルホン酸290mg(3mmol)およびトルエン9.69gを入れ、0.25MPa、70〜75℃の条件下に10時間攪拌した。この間、反応の進行に伴い副生する水を、トルエンとの共沸蒸留で留去することにより反応系外に除去した。得られた反応混合物を室温、常圧に戻した後、5質量%炭酸ナトリウム水溶液41.2g(51.5mmol)を滴下し、次いでトルエン40.5gを加えて有機層と水層を分液した。得られた有機層をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−[2’−シクロプロピル−4’−(4’’−フルオロフェニル)キノリン−3’−イル]−1,3−ジオキサンが2.16g含まれていた(収率68.5%)。
2−[2’−シクロプロピル−4’−(4’’−フルオロフェニル)キノリン−3’−イル]−1,3−ジオキサン
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS,ppm) δ:0.9−1.05(m,2H)、1.36−1.41(m,2H)、2.55−2.68(m,1H)、3.80−3.94(m,1H)、4.00−4.15(m,2H)、5.77(d,J=1.3Hz,1H)、7.10−7.42(m,8H)、7.63(dd,J=6.6Hz,8.3Hz,1H)、7.95(d,J=8.3Hz,1H)
(b)上記(a)で得られた有機層に2質量%塩酸20gを加え、40℃で10時間攪拌した。得られた反応混合物に、5質量%炭酸ナトリウム水溶液41.2g(51.5mmol)を加えて有機層と水層を分液し、得られた有機層をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−シクロプロピル−4−(4’−フルオロフェニル)キノリン−3−カルバルデヒド1.96gが含まれていた(収率93%)。
【実施例7】
ディーン・スターク受器を備えた内容量200mlのフラスコに、2−アミノ−4’−フルオロベンゾフェノン2.15g(10mmol)、実施例2で得られた2−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)−5−メチル−1,3−ジオキサン2.29g(12mmol)、メタンスルホン酸290mg(3mmol)およびトルエン9.69gを入れ、0.35MPa、80〜85℃の条件下に10時間攪拌した。この間、反応の進行に伴い副生する水を、トルエンとの共沸蒸留で留去することにより反応系外に除去した。得られた反応混合物を室温、常圧に戻した後、5質量%炭酸ナトリウム水溶液41.2g(51.5mmol)を滴下し、次いでトルエン40.5gを加えて有機層と水層を分液した。得られた有機層をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−[2’−シクロプロピル−4’−(4’’−フルオロフェニル)キノリン−3’−イル]−5−メチル−1,3−ジオキサンが2.73g含まれていた(収率75.4%)。
トランス−2−[2’−シクロプロピル−4’−(4’’−フルオロフェニル)キノリン−3’−イル]−5−メチル−1,3−ジオキサン
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS,ppm) δ:0.70(d,J=6.6Hz,3H)、1.01−1.09(m,2H)、1.36−1.41(m,2H)、2.15−2.30(m,1H)、3.20(t,J=11.6Hz,1H)、3.24−3.30(m,1H)、4.00−4.15(m,2H)、5.37(s,1H)、7.18−7.42(m,8H)、7.55−7.62(m,1H)、7.92(d,J=8.3Hz,1H)
シス−2−[2’−シクロプロピル−4’−(4’’−フルオロフェニル)キノリン−3’−イル]−5−メチル−1,3−ジオキサン
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS,ppm) δ:1.02−1.09(m,2H)、1.36−1.41(m,2H)、1.56(d,J=6.6Hz,3H)、3.34−3.38(m,1H)、3.80(d,J=9.7Hz,1H)、3.90(d,J=9.7Hz,1H)、4.05−4.15(m,2H)、5.43(s,1H)、7.18−7.42(m,8H)、7.55−7.62(m,1H)、7.93(d,J=8.3Hz,1H)
【産業上の利用可能性】
本発明の製造方法によれば、医薬、農薬などの合成中間体として有用なキノリンカルバルデヒド類、例えばコレステロール生合成の律速酵素であるHMG−CoA還元酵素の阻害剤として知られるキノリン系メバロノラクトン誘導体の合成中間体として有用である2−シクロプロピル−4−(4’−フルオロフェニル)キノリン−3−カルバルデヒドなどのキノリンカルバルデヒド類を、従来法に比較して短く簡単な工程で、かつ効率よく工業的に有利に製造することができる。
また、本発明による新規なβ−ケトアルデヒド誘導体(II−1)は酸性条件下においても安定であるため、酸性条件下で実施する上記製造方法における原料として特に有利であるばかりでなく、本発明における新規な中間体であるキノリンカルバルデヒド誘導体(III)とともに、各種医薬・農薬の合成中間体として広く利用可能である。
本出願は、日本で出願された特願2002−322170、及び特願2002−322172を基礎としており、それらの内容は、本明細書に全て包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)

[式中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、またはR10N−(RおよびR10はそれぞれ置換基を有していそもよいアルキル基を表す。)を表す。また、RとRは一緒になって−CH=CH−CH=CH−を表してもよい。]
で示されるアミノベンゾフェノン類と一般式(II)

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表し、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基もしくは置換基を有していてもよいアラルキル基、または一緒になって、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基もしくはアラルキレン基を表し、XおよびYは同一または異なって酸素原子または硫黄原子を表す。)
で示されるβ−ケトアルデヒド誘導体を酸の存在下に反応させることにより一般式(III)

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、XおよびYは上記定義のとおりである。)
で示されるキノリンカルバルデヒド誘導体を得、次いで該キノリンカルバルデヒド誘導体を加水分解することを特徴とする一般式(IV)

(式中、R、R、R、R、RおよびRは上記定義のとおりである。)
で示されるキノリンカルバルデヒド類の製造方法。
【請求項2】
一般式(I)

[式中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、またはR10N−(RおよびR10はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)を表す。また、RとRは一緒になって−CH=CH−CH=CH−を表してもよい。]
で示されるアミノベンゾフェノン類と一般式(II)

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表し、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基もしくは置換基を有していてもよいアラルキル基、または一緒になって、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基もしくはアラルキレン基を表し、XおよびYは同一または異なって酸素原子または硫黄原子を表す。)
で示されるβ−ケトアルデヒド誘導体を酸の存在下に反応させることを特徴とする一般式(III)

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、XおよびYは上記定義のとおりである。)
で示されるキノリンカルバルデヒド誘導体の製造方法。
【請求項3】
一般式(III)

[式中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、またはR10N−(RおよびR10はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)を表す。また、RとRは一緒になって−CH=CH−CH=CH−を表してもよく、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表し、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基もしくは置換基を有していてもよいアラルキル基、または一緒になって、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基もしくはアラルキレン基を表し、XおよびYは同一または異なって酸素原子または硫黄原子を表す。]
で示されるキノリンカルバルデヒド誘導体を加水分解することを特徴とする一般式(IV)

(式中、R、R、R、R、RおよびRは上記定義のとおりである。)
で示されるキノリンカルバルデヒド類の製造方法。
【請求項4】
各一般式中、R、R、RおよびRが水素原子であり、Rがハロゲン原子であり、Rが炭素数1〜6のアルキル基であり、RおよびRが一緒になってアルキレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である請求の範囲第1項に記載のキノリンカルバルデヒド類の製造方法。
【請求項5】
各一般式中、R、R、RおよびRが水素原子であり、Rがフッ素原子であり、Rがシクロプロピル基であり、RおよびRが一緒になってエチレン基、トリメチレン基、2−メチルトリメチレン基または2,2−ジメチルトリメチレン基のいずれかの基であり、XおよびYがともに酸素原子である請求の範囲第4項に記載のキノリンカルバルデヒド類の製造方法。
【請求項6】
一般式(III)

[式中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、またはR10N−(RおよびR10はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)を表す。また、RとRは一緒になって−CH=CH−CH=CH−を表してもよく、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表し、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基もしくは置換基を有していてもよいアラルキル基、または一緒になって、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基もしくはアラルキレン基を表し、XおよびYは同一または異なって酸素原子または硫黄原子を表す。]
で示されるキノリンカルバルデヒド誘導体。
【請求項7】
、R、RおよびRが水素原子であり、Rがハロゲン原子であり、Rが炭素数1〜6のアルキル基であり、RおよびRが一緒になってアルキレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である請求の範囲第6項に記載のキノリンカルバルデヒド誘導体。
【請求項8】
、R、RおよびRが水素原子であり、Rがフッ素原子であり、Rがシクロプロピル基であり、RおよびRが一緒になってエチレン基、トリメチレン基、2−メチルトリメチレン基または2,2−ジメチルトリメチレン基のいずれかの基であり、XおよびYがともに酸素原子である請求の範囲第7項に記載のキノリンカルバルデヒド誘導体。
【請求項9】
一般式(II−1)

(式中、R11は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R12は置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基もしくはアラルキレン基を表し、XおよびYは同一または異なってそれぞれ酸素原子または硫黄原子を表す。)
で示されるβ−ケトアルデヒド誘導体。
【請求項10】
12が置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である請求の範囲第9項に記載のβ−ケトアルデヒド誘導体。
【請求項11】
11が置換基を有していてもよい環状のアルキル基であり、R12がエチレン基、トリメチレン基、2−メチルトリメチレン基または2,2−ジメチルトリメチレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である請求の範囲第10項に記載のβ−ケトアルデヒド誘導体。
【請求項12】
11が置換基を有していてもよい環状のアルキル基であり、R12がエチレン基であり、XおよびYがそれぞれ酸素原子および硫黄原子である請求の範囲第9項に記載のβ−ケトアルデヒド誘導体。
【請求項13】
一般式(V)

(式中、R11は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Mはアルカリ金属を表す。)
で示される金属アルコキシド化合物と、一般式(VI)

(式中、R12は置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基もしくはアラルキレン基を表し、XおよびYは同一または異なってそれぞれ酸素原子または硫黄原子を表す。)
で示される化合物を酸の存在下に反応させることを特徴とする一般式(II−1)

(式中、R11、R12、XおよびYは上記定義のとおりである。)
で示されるβ−ケトアルデヒド誘導体の製造方法。
【請求項14】
11が置換基を有していてもよい環状のアルキル基であり、R12が炭素数2〜6のアルキレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である請求の範囲第13項に記載の製造方法。
【請求項15】
11が置換基を有していてもよい環状のアルキル基であり、R12がエチレン基、トリメチレン基、2−メチルトリメチレン基または2,2−ジメチルトリメチレン基であり、XおよびYがともに酸素原子である請求の範囲第14項に記載の製造方法。
【請求項16】
11が置換基を有していてもよい環状のアルキル基であり、R12がエチレン基であり、XおよびYがそれぞれ酸素原子および硫黄原子である請求の範囲第13項に記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/041787
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【発行日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549621(P2004−549621)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014134
【国際出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】