説明

キノリン誘導体とチロシンキナーゼ阻害剤としてのその使用

式(I)の化合物、並びにその医薬的に許容される塩。本化合物の治療有効量を含んでなる医薬組成物。本化合物は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢関連黄斑変性、炎症、卒中、虚血性心筋、アテローム性動脈硬化症、黄斑浮腫、又は乾癬の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノリン誘導体に、そして療法におけるその使用に関する。より特別には、本発明は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢関連黄斑変性、炎症、卒中、虚血性心筋、アテローム性動脈硬化症、黄斑浮腫、及び乾癬の治療のためのキノリン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、既存の血管からの新たな毛細管の伸出であり、胚発生、器官形成、組織再生、及び再構築に不可欠である[Folkman, J. & Shing, Y. (1992) J. Biol. Chem. 267, 10931-10934]。それはまた、腫瘍の成長及び転移、心臓血管系疾患、糖尿病性網膜障害、慢性関節リウマチ、及び乾癬が含まれる多様な病理学的状態の発症及び進行に貢献する[Folkman, J. (1995) Nat. Med. 1, 27-312]。血管新生と脈管形成は、内皮細胞の増殖、遊走、及び分化、細胞外マトリックスの分解、管形成、及び新たな毛細枝の出芽が含まれる複雑な多工程プロセスである[Hanahan, D. & Folkman, J. (1996) Cell 86, 353-364; Risau, W. (1997) Nature (London) 386, 671-674]。血管新生プロセスの複雑性は、一過的にスイッチをオン・オフすることが可能である、多数の制御部分がこの系に存在することを示唆する。組織中の血管新生表現型のスイッチは、血管新生の刺激因子と阻害剤の間の均衡の局所的な変化に依存すると考えられている[Folkman, J. (1995) N. Engl. J. Med. 333, 1757-1763]。
【0003】
記載されている多くの血管新生因子の中で、血管内皮増殖因子(VEGF)/血管透過性亢進因子は、血管内皮細胞への顕著な特異性がある、最もよく特性決定された陽性調節因子の1つである[Senger, D. R., Galli, S. J., Dvorak, A. M., Perruzzi, C. A., Harvey, V. S. & Dvorak. H. F. (1983) Science 219, 983-985; Ferrara, N. & Henzel, W. J. (1989) Biochem. Biophys. Res. Commun. 161,851-858; Gospodarowicz, D., Abraham, J. A. & Schilling, J. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 7311-7315]。VEGFの生体作用には、内皮細胞の増殖、遊走、分化の刺激、管形成、血管透過性の増加、及び血管完全性の維持が含まれる[Mustonen, T. & Alitalo, K. (1995) J. Cell Biol. 129, 895-898; Ferrara, N. & Davis-Smyth, T. (1997) Endocr. Rev. 18, 4-25; Thomas, K. (1996) J. Biol. Chem. 271, 603-606; Risau, W. (1997) Nature (London) 386, 671-674; Breier, G. & Risau, W. (1997) Trends Cell Biol. 6, 454-456]。VEGFによって誘導される血管新生応答は、内皮系統の血管細胞上で主に発現されているチロシンキナーゼ受容体によって媒介される[Mustonen, T. & Alitalo, K. (1995) J. Cell Biol. 129, 895-898; De Vries, C., Escobedo, J. A., Ueno, H., Huck, K., Ferrara, N. & Williams, L. T. (1992) Science 255, 989-99; Terman, B. I., Dougher-Vermazen, M., Carrion, M. E., Dimitrov, D., Armellino, D. C., Gospodorawicz, D. & Bohlen, P. (1992) Biochem. Biophys. Res. Commun.187, 1579-1586]。
【0004】
活性化された内皮細胞の活性化、生存、標的指向、及び遊走の基本的な工程である、内皮細胞膜(ECM)への細胞接着の阻害は、抗血管新生のために最も有望な標的機序の1つであろう。これらの機序には、VEGFが関与するだけでなく、これらの相互作用の多くは、多機能細胞接着受容体のファミリーであるインテグリンによっても媒介される。インテグリンファミリーのメンバーは、細胞−細胞、細胞−細胞外マトリックス、及び細胞−病原体の相互作用に媒介する非共有結合性のα/βヘテロ二量体である。今日までに、19種の異なるインテグリンαサブユニットと8種の異なるβサブユニットが知られていて、これらは、組み合わされて、リガンド特異性が異なる少なくとも25種の異なるα/βヘテロ二量体を形成する。多くのインテグリンの細胞外ドメインのリガンドは、細胞外マトリックスのタンパク質であり、インテグリンの細胞内ドメインは、キナーゼのような細胞内成分や細胞骨格へ直接的又は間接的に連結している。インテグリンは、二方向性のシグナル伝達受容体として役立ち、それによりタンパク質の活性と遺伝子発現は、その細胞外ドメインへのリガンド結合に応じてインテグリンによって変化される(これは、表返しの(outside-in)シグナル伝達とも呼ばれる)。一方、インテグリンの親和性は、インテグリンの細胞外ドメインへのタンパク質の結合のような、細胞内の変化に応じて調整される(これは、裏返しの(inside-out)シグナル伝達と呼ばれる)[Humphries (2000) Biochem Soc Trans. 28, 311; Hynes (2002) Cell, 110, 673]。
【0005】
活性化内皮細胞に対するインテグリンパターンに関するいくつかの研究、血管新生動物モデルにおいて抗体、ペプチド、及び低分子を用いたマウス遺伝子ノックアウト及び阻害の研究は、血管新生の必須工程に関与するインテグリンとECMタンパク質についての情報を提供してきた[Brooks (1994) Science, 264, 569; Brooks (1996) Eur J Cancer, 32A, 2423; Mousa (2002), Curr Opin Chem Biol, 6, 534; Hynes (2002) Nature Medicine, 8, 918; Kim (2000) Am J Pathol, 156, 1345]。この研究より、フィブロネクチン受容体のα−v−β−3、α−v−β−5、及びフィブロネクチン受容体のα5β1が血管新生に必須の役割を担うと思われた。ヒト腫瘍の血管ではα5β1発現が有意にアップレギュレートされていて、増殖因子での刺激後、そしてひとたび発現されたならば、α−5−β−1は、内皮細胞の生存及び遊走を in vitro 及び in vivo で調節する。
【発明の概要】
【0006】
本発明者が実施した実験によれば、フィブロネクチン受容体、α−5−β−1の阻害だけが、血管新生におけるその仮説の役割と完全に一致している生物学的データをこれまでもたらしてきた。故に、どの理論にも束縛されることを望まずに言えば、α−5−β−1は、抗血管新生薬の開発に好ましい標的である可能性があり、必然的に、腫瘍、眼、及び炎症プロセスにおける新血管形成の治療に対して大きな療法ポテンシャルを有する可能性があると考えられる。
【0007】
今回、本発明者は、ある種の側鎖パターンを有する新規キノリン誘導体がインテグリンと、潜在的にはチロシンキナーゼ、特にフィブロネクチン受容体、α−5−β−1を効果的に遮断することが可能であることを見出した。
【0008】
この分野の同様の類似体と比較すると、本発明の化合物は、改善された溶解特性も有する。
従って、1つの側面によれば、本発明は、式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
[式中:
nは、0、1、又は2であり;
とRは、水素、飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−10アルキル又はC3−12シクロアルキル;及び置換又は未置換のフェニル又はベンジルより独立して選択され;
は、水素、又は飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−10アルキル又はC3−12シクロアルキルであり;
は、置換又は未置換のC−C10アリール又はC−Cヘテロアリール(ここでヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される);又は、置換又は未置換の単環系又は二環系C3−12シクロアルキル又はC−Cヘテロシクリル(ここでヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される)である]の化合物、並びにその医薬的に許容される塩に関する。
【0011】
さらなる側面によれば、本発明は、療法に使用の、上記に定義されるような式(I)の化合物、又はその医薬的に許容される塩に関する。
さらなる側面によれば、本発明は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢関連黄斑変性、慢性炎症、卒中、虚血性心筋、アテローム性動脈硬化症、腫瘍成長、及び黄斑浮腫のような疾患の治療に使用の、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩に関する。
【0012】
なおさらなる側面によれば、本発明は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の、癌、糖尿病性網膜障害、加齢関連黄斑変性、慢性炎症、卒中、虚血性心筋、アテローム性動脈硬化症、腫瘍成長、及び黄斑浮腫のような疾患の治療用医薬品を製造することへの使用に関する。
【0013】
別の側面によれば、本発明は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の治療有効量をそのような治療を必要とする哺乳動物へ投与することによる、癌、糖尿病性網膜障害、加齢関連黄斑変性、慢性炎症、卒中、虚血性心筋、アテローム性動脈硬化症、腫瘍成長、及び黄斑浮腫より選択される障害の治療の方法を提供する。
【0014】
本発明のさらなる側面及び態様は、特許請求項において定義される通りである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、標識α−5−β−1受容体(上)及びα−v−β−3(下)とフィブロネクチン由来のペプチドより入手したSHGシグナルの時間の関数としてのプロットであり、この受容体のコンホメーション変化を示す。
【図2】図2は、本発明の化合物の存在下での標識α−5−β−1受容体(上)及びα−v−β−3(下)とフィブロネクチン由来のペプチドより入手したSHGシグナルの時間の関数としてのプロットであり、本発明の化合物によるα−5−β−1受容体の阻害(コンホメーション変化の欠落)と、α−v−β−3の非阻害(コンホメーション変化)を示す。
【図3】図3は、皮下移植肺癌細胞を受けたマウスの、本発明の化合物の経口及び静脈内(25mg/kg/日)投与による療法の日数を関数とする、担体のみの投与と比較した腫瘍体積(ml)のプロットである。
【図4】図4は、本発明の化合物を50mg/kgで経口投与したマウスにおける、レーザー誘発脈絡膜新血管形成(CNV)の阻害を表す棒グラフである。
【図5】図5は、レーザー誘発CNVマウスモデルにおける網膜上皮の画像である:ほとんど円形の領域は、破壊された網膜色素上皮(RPE)及びブルッフ膜(BM)である。白い領域は、血管のレーザースポット中への内方成長を示す。左側は、新血管の塊状の内方成長がある対照網膜であり、右側は、本発明の化合物での処置後に、ごくわずかな血管の内方成長(周縁部のみ)がある網膜である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢関連黄斑変性、炎症、卒中、虚血性心筋、アテローム性動脈硬化症、黄斑浮腫、及び乾癬、等のような疾患及び状態を哺乳動物において治療するために利用し得る、キノリン−3−カルボン酸誘導体とそのエステルに関する。
【0017】
本発明の化合物の製造は、十分当業者の能力内にある。1例として、本発明のキノリン−3−カルボン酸エステルは4工程手順で生成し得て、ここでは、はじめに好適なアニリン誘導体を好適なモノ若しくはジエチルエステルと反応させ、生成した中間体を環化させてキノリン−4−オール誘導体を得てから、これを対応するハロゲン誘導体へ変換して、最後に、好適なアミンと反応させて、キノリン−3−カルボン酸エステルを生成する。次いで、このキノリン−3−カルボン酸エステルを加水分解して、対応する酸を得ることができる。この合成全体を反応スキーム1に図解する。
【0018】
反応スキーム1
【0019】
【化2】

【0020】
上記の反応系列に関して言えば、好適な反応成分並びに反応条件を選択することは、十分に当業者の能力内にある。
本発明の化合物を製造するのに有用な別の合成法を反応スキーム2に図解する。この場合、合成は、p−ブロモアニリンより始めて、最終工程でアミド基を導入する。
【0021】
反応スキーム2
【0022】
【化3】

【0023】
要約すると、本発明の化合物へ行き着くには、基:R、R、R、及びRを導入する順序においていくつかの方法があり、そのいずれも当業者によく知られている。
本明細書に利用する「アルキル」という用語は、単独で、又は別の基の一部として、直鎖において1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の炭素を含有する、非環式の直鎖又は分岐鎖残基、即ち、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルを意味する。アルキル基は、好ましくは、直鎖に1、2、3、又は4の炭素を含有して、それはまた、1、2、又は3のハロゲン基で置換されてよく、該基は、それぞれの可変基(variable)に関して定義されるように、どの利用可能な点で同じであっても異なっていてもよい。そのような置換アルキル基が存在するとき、好ましいハロゲンは、−CF、−CHF、−CHF、−CHFCHF、等におけるように、フッ素である。
【0024】
他に示さなければ、別の基の一部として本明細書に利用される「低級アルキル」という用語には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、又はイソブチルのような、1、2、3、又は4の炭素を含有する、飽和又は不飽和で、直鎖及び分岐鎖の炭化炭素がともに含まれる。
【0025】
本明細書において上記に注記するように、考慮されるアルキル基は、不飽和(アルケニル又はアルキニル)ヒドロカービル残基であってよい。
本明細書においてそれ自体で、又は別の基の一部として使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の炭素の直鎖又は分岐鎖残基を意味する。好ましくは、直鎖のビニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ブテニル、4−ペンテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、4−ヘプテニル、3−オクテニル、3−ノネニル、4−デセニル、3−ウンデセニル、4−ドデセニル、等にあるように、1つの炭素−炭素二重結合が存在する。アルケニル基は、好ましくは、その直鎖に2、3、又は4の炭素を含有する。アルケニル基の直鎖又は分岐鎖部分は、1、2、又は3のハロゲンによって置換されていてもよく、該ハロゲンは、同じでも異なっていてもよく、好ましいハロゲンは、フッ素である。
【0026】
本明細書においてそれ自体で、又は別の基の一部として使用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の炭素の直鎖又は分岐鎖残基を意味する。好ましくは、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、2−ヘプチニル、3−ヘプチニル、4−ヘプチニル、3−オクチニル、3−ノニニル、4−デシニル、等のような直鎖に、1つの炭素−炭素三重結合が存在する。アルキニル基は、好ましくは、その直鎖に1、2、3、又は4の炭素を含有する。アルキニル基の直鎖部分は、1、2、又は3のハロゲン基によって置換されていてもよく、該ハロゲンは、同じでも異なっていてもよく、好ましいハロゲンは、フッ素である。
【0027】
本明細書に単独で、又は別の基の一部として利用する「シクロアルキル」という用語には、1つの環と全部で3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12の炭素、好ましくは3又は4の炭素を含有して、環を形成する、飽和の環式ヒドロカービル基、又は一部不飽和の(1又は2の二重結合を含有する)環式ヒドロカービル基が含まれ、これには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、等が含まれる。環式ヒドロカービルは、単環系、二環系、又は三環系でよい。シクロアルキル基は、同じでも異なっていてもよい、1、2、又は3のハロゲンによって置換されていてもよく、好ましいハロゲンは、フッ素である。
【0028】
本明細書に使用するように、そして他に特定されなければ、「ヘテロシクリル」という用語は、アジリジニル、アゼチジニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロピリジル、ジヒドロピロリル、ジオキソラニル、ジオキサニル、ジチアニル、ジチオラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、モルホリニル、オキサタニル、オキシラニル、ピロリジニル、ピロリジノニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、スルファロニル、3−スルホレニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジル、チエタニル、チイラニル、チオラニル、チオモルホリニル、トリチアニル、トロパニル、単糖、等のように、好ましくはN、O、及びSより選択される1以上のヘテロ原子(複数)を含有する非芳香族の環式基を意味する。
【0029】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を意味する。
本明細書に使用するように、「アリール」という用語は、フェニル又はナフチルのような芳香族基、等を意味する。
【0030】
本明細書に使用するように、「ヘテロアリール」という用語は、ピリジル、キノリニル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イソキノリニル、ナフチリジニル、イミダゾリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フタラジニル、インドリル、ピリダジニル、キナゾリニル、キノリジニル、キノキサリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ピラジニル、インダゾリル、インドリニル、ピリミジニル、チオフェネチル、ピラニル、カルバゾリル、クロマニル、シンノリニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキセピニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾモルホリニル、ベンゾセレナジアゾリル、ベンゾチエニル、プリニル、プテリジニル、等のような、好ましくはN、O、及びSより選択される1以上のヘテロ原子(複数)を含有する、単環系、二環系、又は三環系の複素芳香族基を意味する。
【0031】
本明細書に使用するように、そして他に特定されなければ、「置換(された)」という用語は、その実体が、飽和又は不飽和で、分岐鎖、非分岐鎖、又は環式の低級アルキル、ヒドロキシル、アミン、スルフィド、シリル、ハロゲン、ニトリル、カルボン酸、スルホン酸、低級アルコキシ、低級アルキル二級若しくは三級アミン、低級アルキルアミド、低級アルキルエーテル、低級アルキルケトン、低級アルキルスルフィド、低級アルキルカルボン酸エステル、低級アルキルスルホン酸エステル、低級アルキルスルホン、低級アルキルスルホキシド、低級アルキルスルホンアミド、低級アルキルアルコール、低級アルキルアセチル、低級ジアルキルジスルフィド、等より選択される少なくとも1つの部分で置換されていることを意味する。
【0032】
このように、第一の側面により、本発明は、式(I):
【0033】
【化4】

【0034】
[式中:
nは、0、1、又は2であり;好ましくは、nは、0又は1であり、より好ましくは、nは、0であり;
とRは、水素、飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−10アルキル又はC3−12シクロアルキル;及び置換又は未置換のフェニル又はベンジルより独立して選択され;
は、水素、又は飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−10アルキル又はC3−12シクロアルキルであり;
は、置換又は未置換のC−C10アリール又はC−Cヘテロアリール(ここでヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される);又は、置換又は未置換の単環系又は二環系C3−12シクロアルキル又はC−Cヘテロシクリル(ここでヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される)である]の化合物、並びにその医薬的に許容される塩に関する。
【0035】
本発明の1つの態様において、RとRは、水素と飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−10アルキル又はC3−12シクロアルキルより、例えば、水素と飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−6アルキル又はC3−6シクロアルキル、例えば、C1−4アルキル及びC3−4シクロアルキル、特に、飽和のC1−4アルキル及びC3−4シクロアルキルより独立して選択される。例えば、RとRは、水素と飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−4アルキル、特に、水素と飽和C1−4アルキル、例えば、水素、メチル、エチル、及びプロピル、特に、水素とメチルよりのように、水素と飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−6アルキルより独立して選択されてよい。
【0036】
1つの態様において、RとRの少なくとも1つは水素でない。1つの態様において、Rは水素であって、Rは水素でない。
式(I)の化合物において、Rは、水素、又は飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−10アルキル、例えば、C1−6アルキル、又はC1−4アルキル;又はC3−12シクロアルキル、例えば、C3−6シクロアルキル又はC3−4シクロアルキルである。
【0037】
1つの態様において、Rは、水素、又は飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−10アルキル、例えば、C1−6アルキル、又はC1−4アルキル;又はC3−12シクロアルキル、例えば、C3−6シクロアルキル又はC3−4シクロアルキルである。
【0038】
好ましくは、Rは、水素、又は好ましくは飽和C1−6アルキル、特に、水素、又は好ましくは飽和C1−4アルキルである。
1つの特別な態様において、Rは、水素である。別の特別な態様において、Rは、水素でない。
【0039】
本発明の式(I)の化合物において、Rは、置換又は未置換のC−C10アリール又はC−Cヘテロアリール(ここでヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される);又は置換又は未置換の単環系又は二環系C3−12シクロアルキル又はC−Cヘテロシクリル(ここでヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される)である。1つの態様において、Rは、置換又は未置換のC−C10アリール又はC−Cヘテロアリール(ここでヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される)であり;特にRは、置換又は未置換のC−C10アリール、例えば、置換又は未置換のフェニルである。
【0040】
このように、1つの態様において、式(I)の化合物は、式(I’):
【0041】
【化5】

【0042】
[式中、R、R、R、及びnは、上記に定義される通りであり、mは、0〜5、例えば、1〜3、又は1〜2、特に1であり;そしてRは、上記に定義されるような置換基であり、好ましくは、好ましくは飽和C−Cアルキル及びC−Cアルコキシ、より好ましくはC−Cアルキル及びC−Cアルコキシ、例えば、メチル、エチル、メトキシ、及びエトキシのようなC−Cアルキル及びC−Cアルコキシ、例えば、メチル及びメトキシより選択される]によって表すことができる。
【0043】
1つの態様では、式(I’)の化合物において、mは、0又は1、例えば1である。
1つの特別な態様では、式(I’)の化合物において、mは1であり、Rは、パラ位にあって、即ち、本発明の化合物は、式(I”)
【0044】
【化6】

【0045】
[式中、R、R、R、R、及びnは、上記に定義される通りである]によって表すことができる。
1つの態様において、本化合物は、6−(メチルカルバモイル)−4−[(4−メチルフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸;6−(メチルカルバモイル)−4−[(4−メチルフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチル;4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸エチル;4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸ブチル;4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸メチル;及び4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸、又はこれらの医薬的に許容される塩より選択される。
【0046】
反対のことが示されなければ、又は文脈より明らかでなければ、本明細書における式(I)の化合物へのどの言及にも、式(I’)又は(I”)の化合物へ言及することが企図されて、これらはともに式(I)の範囲内に含まれる態様である。
【0047】
本発明の化合物は、塩として提示し得て、これらも本発明の範囲内にある。医薬的に許容される(即ち、無毒の生理学的に許容される)塩が好ましい。
例えば、本発明の化合物は、例えば、アミノ官能基で、酸付加塩を形成することができる。これらは、例えば、鉱酸、例えば、硫酸、リン酸、又はハロゲン化水素酸のような強い無機酸;未置換であるか又は、例えば、ハロゲンによって置換されている1〜4の炭素原子のアルカンカルボン酸、例えば、酢酸、飽和又は不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテレフタル酸、ヒドロキシカルボン酸、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸、又はリジン又はアルギニン)、又は安息香酸のような強い有機カルボン酸とともに;又は、未置換であるか又は、例えば、ハロゲンによって置換されている(C−C)アルキル又はアリールスルホン酸、例えば、メチル又はp−トルエン−スルホン酸のような有機スルホン酸とともに生成されてよい。所望されるならば、追加的に存在する塩基性の中心を有する、対応する酸付加塩も生成することができる。
【0048】
少なくとも1つの酸基(例えば、COOH)を有する式Iの化合物も、塩基とともに塩を生成することができる。塩基との好適な塩は、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、又はマグネシウム塩のような金属塩、又はアンモニアとの塩、又はモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ、ジ、又はトリ低級アルキルアミン(例えば、エチル、tert−ブチル、ジエチル、ジイソプロピル、トリエチル、トリブチル、又はジメチル−プロピルアミン)、又はモノ、ジ、又はトリヒドロキシ低級アルキルアミン(例えば、モノ、ジ、又はトリエタノールアミン)のような有機アミンとの塩である。さらに、対応する内部塩も形成され得る。医薬使用に不適であるが、例えば、式Iの遊離化合物又はそれらの医薬的に許容される塩の単離又は精製に利用し得る塩も含まれる。
【0049】
本発明の治療薬剤の投与には、本発明の薬剤の治療有効量の投与が含まれる。本明細書に使用する「治療有効量」という用語は、本発明の組成物の投与によって治療可能な状態を治療又は予防する治療薬剤の量を意味する。その量は、検出可能な治療又は予防又は改善効果を示すのに十分な量である。その効果には、例えば、本明細書に収載する状態の治療又は予防を含めてよい。被検者にとっての正確な有効量は、その被検者のサイズと全般状態、治療される状態の特質及び程度、治療医の推奨事項、及び投与用に選択される治療薬剤又は治療薬剤の組合せに依存するものである。従って、正確な有効量を前もって正確に特定することは、有用でない。しかしながら、経口投与の場合、投与量は、式(I)の化合物の約0.01mg/日〜約1000mg/日、又はその医薬的に許容される塩の対応量を変動するだろう。
【0050】
本発明による組成物は、どの投与経路(例、経口、静脈内、皮膚又は皮下、経鼻、筋肉内、又は腹腔内)用にも製造することができる。担体又は他の材料の正確な特質は、投与経路に依存するものである。非経口投与では、発熱物質を含まずに、必須のpH、等張性、及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液剤を利用する。当業者には、好適な溶液剤を調製することが十分可能であり、数多くの方法が文献に記載されている。
【0051】
本明細書に記載の医薬的に許容される賦形剤、例えば、運搬体、アジュバント、担体、又は希釈剤は、当業者によく知られていて、誰もが容易に利用可能である。医薬的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であり、使用の条件下で有害な副作用も毒性も有さないものであり得る。医薬製剤の例は、「レミントン:調剤の科学及び実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」A. R. Gennaro, 監修、Lippincott, Williams and Wilkins, 第20版(2000)に見出すことができる。
【0052】
本発明の化合物のすべての立体異性体が、混合物において、又は純粋又は実質的に純粋な形態のいずれかで考慮される。本発明の化合物は、R置換基のいずれも含めて、炭素原子のいずれでも不斉中心を有する可能性がある。必然的に、式Iの化合物は、鏡像異性体又はジアステレオマーの形態、又はそれらの混合物で存在する可能性がある。その製造法は、出発材料として、ラセミ体、鏡像異性体、又はジアステレオマーを利用することができる。ジアステレオマー又は鏡像異性体の生成物を製造する場合、それらは、例えば、クロマトグラフィー又は分別結晶化である、慣用の方法によって分離することができる。
【0053】
式(I)による化合物は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢関連黄斑変性、炎症、卒中、虚血性心筋、アテローム性動脈硬化症、黄斑浮腫、及び乾癬のような様々な疾患を治療するのに有用であろう。この治療は、予防的、一時緩和的、又は治癒的であり得る。
【0054】
本発明の化合物は、過剰増殖疾患の治療に有用な1以上の追加薬物(例えば、細胞増殖抑制剤)と組み合わせて使用又は投与してよい。これらの成分は、同じ製剤中にあっても、同時又は連続投与のために別々の製剤にあってもよい。本発明の化合物はまた、癌の治療のために、放射線のような他の治療法と組み合わせて使用又は投与してよい。上記に示すような使用のための細胞増殖抑制剤の例は、DNAアルキル化化合物、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、RNA及びDNA合成に干渉する化合物、細胞骨格を重合化する化合物、並びに細胞骨格を脱重合化する化合物である。
【0055】
本発明を以下の非限定的な実施例によって例解する。
【実施例】
【0056】
実施例1:6−(メチルカルバモイル)−4−[(4−メチルフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチル
【0057】
【化7】

【0058】
(a)中間化合物:2−[(4−ブロモフェニルアミノ)メチレン]マロン酸ジエチルエステルの製造:
【0059】
【化8】

【0060】
20mLマイクロ波バイアルに4−ブロモアニリン(6.881g,40.0ミリモル)、エトキシメチレンマロン酸ジエチル(8.650g,40.0ミリモル)、及びトルエン(5mL)を入れた。このバイアルに蓋をして、この混合物を150℃で30分間マイクロ波加熱した。冷却後、この溶液を50mLの激しく撹拌したイソヘキサン上へ注いだ。濃厚な白色の沈殿が生成して、この懸濁液をさらに15分間撹拌した。この懸濁液を濾過して、生成物を20mLのイソヘキサンで洗浄した。生成物を真空で乾燥させて、11.678g(85%)の2−[(4−ブロモ−フェニルアミノ)メチレン]マロン酸ジエチルエステルを得た。MS (ESI+) m/z 342, 344 (MH+)。
【0061】
(b)中間化合物:6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステルの製造:
【0062】
【化9】

【0063】
20mLマイクロ波バイアルに2−[(4−ブロモ−フェニルアミノ)メチレン]マロン酸ジエチルエステル(1.711g,5.0ミリモル)とPOCl(塩化ホスホリル、10.0mL,16.8g,109ミリモル)を入れた。このバイアルに蓋をして、この混合物を180℃まで(気圧に注意しながら)5分にわたり段階的にマイクロ波加熱してから、180℃で30分間保った。過剰のPOClを蒸発させて、残渣をCHCl(40mL)と2N NaOH(水溶液)(40mL)の間で分配した。水層をCHCl(2x40mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaCOで乾燥させて、蒸発させた。残渣をカラム(シリカゲル、溶出液としてCHCl)で精製した。純粋な画分をプールし、蒸発させ、残渣を真空で乾燥させて、0.821g(52%)の6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステルを得た。MS (ESI+) m/z 314, 316 (MH+)。
【0064】
(c)中間化合物:6−ブロモ−4−p−トリル−アミノキノリン−3−カルボン酸エチルエステルの製造:
【0065】
【化10】

【0066】
20mLマイクロ波バイアルに6−ブロモ−4−クロロ−キノリン−3−カルボン酸エチルエステル(0.786g,2.50ミリモル)、p−トルイジン(0.268g,2.50ミリモル)及び乾燥1,4−ジオキサン(15mL)を入れた。このバイアルに蓋をして、この混合物を150℃で30分間マイクロ波加熱した。冷却後、黄色い沈殿が生成していた。この懸濁液を2N NaOH(水溶液)(100mL)上へ注いで、水層をCHCl(3x80ml)で抽出した。有機層を合わせてHO(100mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させて、蒸発させた。残渣をカラム(シリカゲル、イソヘキサン/EtOAc 1:1)で精製した。純粋な画分を合わせ、蒸発させ、残渣を真空で乾燥させて、0.748g(78%)の6−ブロモ−4−p−トリル−アミノキノリン−3−カルボン酸エチルエステルを得た。MS (ESI+) m/z 385, 387 (MH+)。
【0067】
(d)2mLマイクロ波バイアルに6−ブロモ−4−p−トリル−アミノキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(0.100ミリモル)、Herrmann パラダサイクル(trans−ジ(μ−アセタート)−ビス[o−(ジo−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II),4.7mg,0.0050ミリモル)、[(t−Bu)PH]BF(5.9mg,0.020ミリモル)、Mo(CO)(52.8mg,0.20ミリモル)、1.5当量のメチルアミン(THF中2M)、及び乾燥THF(1.0mL)を入れた。最後に、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、0.045μL,0.30ミリモル)を加えて、このバイアルにすぐに Teflon セプタムで蓋をして、130℃で5分間、マイクロ波で照射した。揮発物質を減圧で除去して、残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、6−(メチルカルバモイル)−4−[(4−メチルフェニル)アミノ]−キノリン−3−カルボン酸エチルを得た。
【0068】
実施例2:6−メチルカルバモイル−4−p−トリルアミノ−キノリン−3−カルボン酸
【0069】
【化11】

【0070】
6−(メチルカルバモイル)−4−[(4−メチルフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチルを、NaOH(水溶液)を使用する塩基性条件下で加水分解した。最終生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0071】
実施例3:4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸エチル
【0072】
【化12】

【0073】
(a)中間化合物:2−[(4−ブロモフェニルアミノ)メチレン]マロン酸ジエチルエステルの製造:
【0074】
【化13】

【0075】
4−ブロモアニリン(10g,0.058モル)と12.58gのジエトキシメチレンマロネート(1当量)を密封管において150℃で3時間加熱した。次いで、この反応混合物を冷やしてヘキサンで希釈すると、このとき固体生成物が析出した。この固形物を濾過し、ヘキサンで数回洗浄し、真空で乾燥させて、17.8g(89%)の2−[(4−ブロモ−フェニルアミノ)メチレン]マロン酸ジエチルエステルを得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 11.03 (d, 1H, J = 13 Hz, -NH-), 8.48 (d, 1H, J =13 Hz, -CH=C), 7.49 (m, 2H, 芳香族), 7.10-7.01 (m, 2H, 芳香族), 4.42-4.22 (m, 4H, -CH2-CH3), 1.45-1.26 (m, 6H, -CH2-CH3); LC-MS (m/z) 343.9 (M+1)。
【0076】
(b)中間化合物:6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステルの製造:
【0077】
【化14】

【0078】
2−[(4−ブロモフェニルアミノ)メチレン]マロン酸ジエチルエステル(5g)をPOCl(塩化ホスホリル、31.5mL)とともに密封管において150℃で約6時間加熱した。過剰のPOClをロータリーエバポレーターによって除去して、粗製の混合物をジクロロメタンで希釈した。このジクロロメタン抽出物を10% NaOH溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル 80:20)によって精製して、2.3g(50%)の6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステルを得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.22 (s, 1H, 芳香族), 8.60 (d, 1H, J = 2.1 Hz, 芳香族), 8.04 (d, 1H, J = 9 Hz, 芳香族), 7.95-7.85 (m, 1H, 芳香族), 4.53 (q, 2H, J = 7 Hz, -CH2-), 1.50 (t, 3H, J = 7 Hz, -CH3); LC-MS (m/z) 315.8 (M+1)。
【0079】
(c)中間化合物:6−ブロモ−4−[(4−メトキシフェニル)−アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチルの製造:
【0080】
【化15】

【0081】
p−アニシジン(0.43g)と6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(1g)をジオキサン中に混合して、マイクロ波反応器において150℃で30分間照射した。この反応混合物を石油エーテルで希釈した。入手した固体生成物を濾過して乾燥させて、1.3g(100%)の6−ブロモ−4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチルを得た。1H NMR ( 300 MHz, CDCl3) δ 11.41 (s, 1H, -NH-), 9.22 (s, 1H, 芳香族), 8.20 (d, 1H, J = 8.2 Hz, 芳香族), 7.77 (d, 1H, J = 8.2 Hz, 芳香族), 7.64 (s, 1H, 芳香族), 7.15 (d, 2H, J = 8.1 Hz, 芳香族), 6.99 (d, 2H, J = 8.1 Hz, 芳香族), 4.47 (q, 2H, J = 7 Hz, -CH2-), 3.89 (s, 3H, -OCH3), 1.47 (t, 3H, J = 7 Hz, -CH3); LC-MS (m/z) 401.0 (M+1)。
【0082】
(d)THFへ6−ブロモ−4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチル(0.25g,0.623ミリモル)に続いて Herrmann パラダサイクル(trans−ジ(μ−アセタート)−ビス[o−(ジo−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II),0.031ミリモル)、[(t−Bu)PH]BF(テトラフルオロホウ酸ホスホニウムトリ三級ブチル、0.125ミリモル)、Mo(CO)(モリブデンヘキサカルボニル、1.246ミリモル)、メチルアミン(1.5当量、THF中2N)、及びDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、1.869ミリモル)を加えた。この反応混合物をマイクロ波反応器において130℃で5分間照射した。この反応混合物を濃縮してから、カラム(シリカゲル、ジクロロメタン/メタノール 98:2)で精製して、0.25g(71%)の4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸エチルを得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 10.96 (s, 1H, -NH-) 9.24 (s, 1H, 芳香族), 8.14-7.98 (m, 2H, 芳香族), 7.73 (s, 1H, 芳香族), 7.16 (d, 2H, J = 9 Hz, 芳香族), 6.98 (d, 2H, J = 9 Hz, 芳香族), 4.46 (q, 2H, J = 7 Hz, -CH2-), 3.87 (s, 3H, -OCH3), 1.48 (t, 3H, J = 7Hz, -CH3); LC-MS (m/z) 380.0 (M+1)。
【0083】
実施例4:4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸
【0084】
【化16】

【0085】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸エチル(0.2g)をLiOH(85.5mg)とともに6mLのMeOH:THF:HO(2:2:2)において一晩撹拌した。この反応混合物を濃縮して、水層を酢酸エチルで洗浄した。水層を集めて、HCl水溶液で酸性化して、生じた沈殿を濾過して乾燥させて、0.142g(60%)の4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸を得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 9.05 (s, 1H, 芳香族), 8.20 (s, 1H, 芳香族), 8.12-7.81 (m, 2H, 芳香族), 7.27 (d, 2H, J = 9.9 Hz, 芳香族), 7.06 (d, 2H, J = 9.9 Hz, 芳香族), 3.88 (s, 1H, -OCH3), 2.82 (s, 3H, -NCH3); LC-MS (m/z) 352.0 (M+1)。
【0086】
実施例5:4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸ブチル
【0087】
【化17】

【0088】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(0.1g)のジクロロメタン懸濁液へEDC.HCl(1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、0.161g)、HOBt(N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、0.042g)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン、0.17g)、及びn−ブタノール(25mL)を加えて、この反応混合物を室温で3時間撹拌した。水系の後処理の後で、この反応混合物を抽出し、濃縮し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて粗生成物を得て、これを後にカラムクロマトグラフィーによって精製して、0.05g(収率55%)の4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸ブチルを得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 10.84 (s, 1H, -NH-), 9.21 (s, 1H, 芳香族), 8.05 (d, 1H, J = 8.8 Hz, 芳香族), 7.97 (d, 1H, J = 8.8 Hz, 芳香族), 7.80 (s, 1H, 芳香族), 7.16 (d, 2H,J = 8.7 Hz, 芳香族), 6.96 (d, 2H, J = 8.7 Hz, 芳香族), 5.60 (s,1H, -NHCH3-), 4.41 (t, 2H, J = 6.6Hz, -O-CH2-), 3.87 (s, 3H, -OCH3), 2.88 (s, 3H, -NCH3), 1.92-1.75 (m, 2H, -O-CH2-CH2-CH2-), 1.65-1.46 (m, 2H, -O-CH2-CH2-CH2-), 1.12-0.98 (m, 3H, -CH3); LC-MS (m/z) 407.9 (M+1)。
【0089】
実施例6:4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸メチル
【0090】
【化18】

【0091】
0.1gの4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸のジクロロメタン懸濁液へEDC.HCl(1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、0.161g)、HOBt(N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、0.042g)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン、0.17g)、及び20mLのメタノールを加えて、この反応混合物を室温で3時間撹拌した。水系の後処理の後で、この反応混合物を抽出し、濃縮し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて粗生成物を得て、これを後にカラムクロマトグラフィーによって精製して、0.062g(60%)の4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸メチルを得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 11.51 (s, 1H, -NH-), 9.12 (s, 1H, 芳香族), 8.38-8.15 (m, 2H, 芳香族), 8.10 (s, 1H, 芳香族), 7.23 (d, 2H, J = 9Hz, 芳香族), 7.02 (d, 2H, J = 9 Hz, 芳香族), 4.02 (s, 3H, -OCH3), 3.90 (s, 3H, -OCH3), 2.92 (s, 3H, -NCH3); LC-MS (m/z) 365.9 (M+1)。
【0092】
生物学的試験
インテグリンアッセイ
本アッセイは、Biodesy(カリフォルニア州バーリンゲーム、アメリカ)によって実施された。大学と市販の供給元より精製インテグリンを入手した。大学の供給元よりα−5−β−1及びα−v−β−3を組換え可溶性タンパク質(細胞外ドメイン)として入手した。
【0093】
上記3種のタンパク質のそれぞれに対して、インテグリン用に開発された標準標識プロトコールを適用した。すべてのタンパク質を、約4:1の平均標識:タンパク質比で成功裡に標識した。2種の可溶性標識タンパク質(α5β1及びαvβ3)は、バックグラウンドSHG(光第二次高調波発生)シグナルを産生した。それらはまた、GRGDSP(RGD−ペプチド、フィブロネクチン由来ペプチド:Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro)への曝露時に、コンホメーション変化シグナルをもたらした。このペプチドを400μMで加えると、シグナル変化は即時的であった(図1)。
【0094】
次に、実施例4を100μMで標識タンパク質とともに20分間プレインキュベートした。次いで、RGDペプチド(400μM)を加えてこのタンパク質を刺激して、各化合物について阻害を試験した。
【0095】
実施例4は、α−5−β−1におけるRGD誘導性のコンホメーション変化を妨げたので、RGD誘導性コンホメーション変化の有効な阻害剤である。一方、α−v−β−3におけるコンホメーション変化は明白であったので、実施例4は、このタンパク質に対しては効果を及ぼさなかった(図2)。
【0096】
腫瘍異種移植片モデル
雌性6週齢SCIDマウスを腫瘍試験に使用した。対数期で増殖しているほぼ10個のヒトCalu−6肺癌細胞を採取して培地に再懸濁させて、100ml容量中の単一細胞溶液を各動物の右脇腹に皮下移植した。10匹のマウスを処置群に使用して、10匹のマウスを対照群に使用した。腫瘍が300mmのサイズに達したときに、100μlの担体又は活性物質(25mg/kg/日)のいずれかでの経口投与又は静脈内注射による全身処置を開始して、1日1回で全17日間続けた。移植後5〜10日目には、目視できる腫瘍が存在した。指定日に、デジタルカリパスで一次腫瘍を測定した。既報の公式:長さx幅x0.52に従って腫瘍体積を計算した。実施例4をマウスへ投与(静脈内及び経口投与、25mg/kg/日)すると、本化合物のこの動物モデルにおける有効性の確信的な結果を示した(図3)。経口処置では52%、そして静脈内処置では71%の腫瘍体積の阻害があり、本発明のこの化合物は、大きな抗腫瘍効果を有する。本発明のこの化合物はまた、両群において血管新生を有意に阻害する。
【0097】
レーザー誘発性マウス眼モデル
このモデルにおいて、実施例4は、単独で、50mg/kg/日で経口投与したときに、眼におけるCNV(脈絡膜新血管形成)増殖を対照と比較して42%で有意に阻害した(図4及び図5)。このCNVのレーザー誘発性モデルは、高齢者の失明の主因である加齢関連黄斑変性(AMD)の滲出型において生じるCNVの多くの特徴を模倣するきわめて再現可能なモデルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
nは、0、1、又は2であり;
とRは、水素、飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−10アルキル又はC3−12シクロアルキル、及び置換又は未置換のフェニル又はベンジルより独立して選択され;
は、水素、又は飽和又は不飽和で分岐鎖又は非分岐鎖のC1−10アルキル又はC3−12シクロアルキルであり;
は、置換又は未置換のC−C10アリール又はC−Cヘテロアリール(ここでヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される);又は、置換又は未置換の単環系又は二環系C3−12シクロアルキル又はC−Cヘテロシクリル(ここでヘテロ原子は、N、O、及びSより独立して選択される)である]の化合物とその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
とRが、水素、C1−4アルキル、及びC3−4シクロアルキルより独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
とRが、水素及びC1−4アルキルより独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
とRが、水素及びメチルより独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
がH又はC1−4アルキルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
が置換又は未置換フェニルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
nが0である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
【化2】

6−(メチルカルバモイル)−4−[(4−メチルフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸;
【化3】

6−(メチルカルバモイル)−4−[(4−メチルフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチル;
【化4】

4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸エチル;
【化5】

4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸ブチル;
【化6】

4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸メチル;
【化7】

4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸である、請求項1に記載の化合物又はこれらの医薬的に許容される塩。
【請求項10】
療法に使用の、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の化合物又はその医薬的に許容される塩の治療有効量と少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのさらなる医薬活性化合物を含んでなる、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
さらなる医薬活性化合物が抗腫瘍活性を有する、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
癌、糖尿病性網膜障害、加齢関連黄斑変性、炎症、卒中、虚血性心筋、アテローム性動脈硬化症、黄斑浮腫、及び乾癬より選択される障害の治療に使用の、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩の、癌、糖尿病性網膜障害、加齢関連黄斑変性、炎症、卒中、虚血性心筋、アテローム性動脈硬化症、黄斑浮腫、及び乾癬より選択される障害の治療用医薬品の製造のための使用。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩を哺乳動物へ投与することを含んでなる、前記哺乳動物の療法的治療の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−503151(P2011−503151A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533600(P2010−533600)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065596
【国際公開番号】WO2009/063070
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(510133894)クラノテク・アクチボラグ (1)
【Fターム(参考)】